「……随分あっさりと正体を現しおったの。貴様が
今まで散々子供達や妖を食らった化け物じゃと?」
「えぇ、その通りです。
そしてここまで辿り着いたあなた方なら、
なぜ私がこれまでずっと隠して来た正体を
自ら吐露しているのか、お分かりでしょう?」
「───私達もこの場で消す、という事か。
そのためにわざわざ人払いまでするとは、
ご苦労な事だな」
全身の毛が、チリチリと奴の妖力に反応しておる。
……奇妙な感覚じゃ。目の前にいるのは間違いなく
此奴一人なのに、まるで無数の妖と
相対しておるかのような錯覚を起こしそうになる。
ござるが言っておった通り、これまで喰らって来た
妖の力を手に入れておるという事か。
今まで散々子供達や妖を食らった化け物じゃと?」
「えぇ、その通りです。
そしてここまで辿り着いたあなた方なら、
なぜ私がこれまでずっと隠して来た正体を
自ら吐露しているのか、お分かりでしょう?」
「───私達もこの場で消す、という事か。
そのためにわざわざ人払いまでするとは、
ご苦労な事だな」
全身の毛が、チリチリと奴の妖力に反応しておる。
……奇妙な感覚じゃ。目の前にいるのは間違いなく
此奴一人なのに、まるで無数の妖と
相対しておるかのような錯覚を起こしそうになる。
ござるが言っておった通り、これまで喰らって来た
妖の力を手に入れておるという事か。
「私の正体を都の人々に見られては困りますからねぇ。
さて、世間話はここまでにして、そろそろあなた方には
消えていただくとしましょう」
じり、と半歩下がり、妖力を全開にして臨戦態勢になる。
奴の方向からは相変わらず奇妙な妖気が流れてくるが、
どうにも雲を掴むような、捉え所のない気配しか
感じられない。
まるで、目の前にいるのに本物ではないような……。
さて、世間話はここまでにして、そろそろあなた方には
消えていただくとしましょう」
じり、と半歩下がり、妖力を全開にして臨戦態勢になる。
奴の方向からは相変わらず奇妙な妖気が流れてくるが、
どうにも雲を掴むような、捉え所のない気配しか
感じられない。
まるで、目の前にいるのに本物ではないような……。
「後ろだッ!!!猫!!!!」
「おや。まさか気付かれるとは。
そこのお嬢さん。なかなか鋭い感覚をお持ちのようで」
巨大な手のような物体は、スッと煙のように
夜の闇へと消える。今のは一体……!?
「た、助かったぞ神楽坂。オヌシ、
感知などした事がないと言う割にはやるのぉ」
「呑気に喋っている場合か!!次が来るぞ!!」
地面に着地しようとすると、再び巨大な手が迫る。
じゃが、このワシに二度同じ手が通じると思うな!!
「ふんっ!!!」
襟巻きを相手と同じ大きさの手に変形させ、
全力で殴り返す。
そこのお嬢さん。なかなか鋭い感覚をお持ちのようで」
巨大な手のような物体は、スッと煙のように
夜の闇へと消える。今のは一体……!?
「た、助かったぞ神楽坂。オヌシ、
感知などした事がないと言う割にはやるのぉ」
「呑気に喋っている場合か!!次が来るぞ!!」
地面に着地しようとすると、再び巨大な手が迫る。
じゃが、このワシに二度同じ手が通じると思うな!!
「ふんっ!!!」
襟巻きを相手と同じ大きさの手に変形させ、
全力で殴り返す。
ドッ!!!!!
凄まじい衝撃に吹き飛ばれそうになるが、
爪を地面に突き刺して踏ん張る。
「そらそらそらそらそらそら!!!!!」
爪を地面に突き刺して踏ん張る。
「そらそらそらそらそらそら!!!!!」
ドドドドドドドドド!!!!!!!
襟巻きの拳でひたすら連打を繰り出す。
流石の相手もぐらりと怯み、再び闇へと消えようとする。
「させるかッ!!!」
体勢を立て直し、襟巻きでその手を掴む。
……しかし、掴んだはずの手はふっと消え、
ワシの襟巻きは空を掴むばかりだった。
「な……に!?どういう事じゃ、これは……」
「なかなかしぶとい。しかし、私の正体は
暴けていないようですねぇ」
「貴様……何をした!!闇にこそこそ隠れてないで、
正々堂々戦ったらどうだ!!」
「何故そんな事をする必要が?
私は、最も確実性のある戦略を取っているだけですよ」
ふっと、すぐ横に気配を感じた、瞬間。
流石の相手もぐらりと怯み、再び闇へと消えようとする。
「させるかッ!!!」
体勢を立て直し、襟巻きでその手を掴む。
……しかし、掴んだはずの手はふっと消え、
ワシの襟巻きは空を掴むばかりだった。
「な……に!?どういう事じゃ、これは……」
「なかなかしぶとい。しかし、私の正体は
暴けていないようですねぇ」
「貴様……何をした!!闇にこそこそ隠れてないで、
正々堂々戦ったらどうだ!!」
「何故そんな事をする必要が?
私は、最も確実性のある戦略を取っているだけですよ」
ふっと、すぐ横に気配を感じた、瞬間。
バギィ!!!!!
「ごはっ……!!!」
今度は巨大な足が突然現れ、ワシの身体を蹴り飛ばした。
まずい……流石に、この衝撃、は……
意識、が…………!!
今度は巨大な足が突然現れ、ワシの身体を蹴り飛ばした。
まずい……流石に、この衝撃、は……
意識、が…………!!
ドゴォ!!!
諸に攻撃を食らってしまったために、
思い切り吹き飛ばされ身体が岩壁に叩きつけられる。
……自分の置かれた現状すら、ロクに分からない。
まずい……今あやつに襲われたら……!!
諸に攻撃を食らってしまったために、
思い切り吹き飛ばされ身体が岩壁に叩きつけられる。
……自分の置かれた現状すら、ロクに分からない。
まずい……今あやつに襲われたら……!!
「ようやく大人しくなりましたねぇ。
では、あなたの力をいただくとしましょうか」
大仁田が操る巨大な手が目の前に迫る。
では、あなたの力をいただくとしましょうか」
大仁田が操る巨大な手が目の前に迫る。
「────────!─────!!」
消え行く意識の中で、微かに神楽坂が
何かを叫んでいる声が聞こえた。
しかし、脳震盪を起こしてしまったのか
指先ひとつ動かす事ができない。
そして、そのまま夜の帳よりも暗い闇の中へと、
ワシの意識は落ちて行った…………。
消え行く意識の中で、微かに神楽坂が
何かを叫んでいる声が聞こえた。
しかし、脳震盪を起こしてしまったのか
指先ひとつ動かす事ができない。
そして、そのまま夜の帳よりも暗い闇の中へと、
ワシの意識は落ちて行った…………。
……………………
………………………………
…………………………………………
「……………………ん。
んんん。んんんんん???」
ガバッ!!と身体を起こす。
手は、ある。足も、ある。
見たところ、五体満足のようじゃ。
全く……不死の存在であるワシが、
またしても己の心配をせにゃならんとは、
厄介な事になったもんじゃの。
…それにしても、なぜワシは無事なのじゃ?
確かワシは大仁田の操る『何か』に吹き飛ばされ、
奴に取り込まれそうになっていた筈。
んんん。んんんんん???」
ガバッ!!と身体を起こす。
手は、ある。足も、ある。
見たところ、五体満足のようじゃ。
全く……不死の存在であるワシが、
またしても己の心配をせにゃならんとは、
厄介な事になったもんじゃの。
…それにしても、なぜワシは無事なのじゃ?
確かワシは大仁田の操る『何か』に吹き飛ばされ、
奴に取り込まれそうになっていた筈。
「目を覚ましたかの?のじゃの猫よ」
…………まさか。この声は。
…………嘘じゃろ……。
…………まさか。この声は。
…………嘘じゃろ……。
「はあああああぁ…………オヌシか、のじゃ狐」
「くっふっふ……不死の妖ともあろう者が、
無様じゃのぉ。妾が助けてやらなければ、
あの化け物の一部になってしまうところじゃったぞ?」
「フン、オヌシがワシを何の見返りもなく
助けたりはすまい。というか、オヌシこそ隙あらば
ワシを取り込もうとしておるんじゃと思うておったがな」
こやつの名は『のじゃ狐』。
ござる鼬と同じく、元はワシから分離した肉片で
ありながらワシの力を付け狙う厄介な女狐。
まさかコイツに助けられるとは、一生の不覚……
と言うより、助けられない方が良かったくらいじゃ。
「くっふっふ……不死の妖ともあろう者が、
無様じゃのぉ。妾が助けてやらなければ、
あの化け物の一部になってしまうところじゃったぞ?」
「フン、オヌシがワシを何の見返りもなく
助けたりはすまい。というか、オヌシこそ隙あらば
ワシを取り込もうとしておるんじゃと思うておったがな」
こやつの名は『のじゃ狐』。
ござる鼬と同じく、元はワシから分離した肉片で
ありながらワシの力を付け狙う厄介な女狐。
まさかコイツに助けられるとは、一生の不覚……
と言うより、助けられない方が良かったくらいじゃ。
「くふふ……勿論そうしてやろうと思ったのじゃがな、
あの赤い髪のおなごが
止めてくれと必死に懇願するのでな。
今回はあの娘に免じて見逃してやろう。
感謝するがよいぞ」
「赤い髪の……神楽坂か。しかし、オヌシが初対面の
妖に止められた程度で絶好の機会を逃すとは思えんが。
何か他に裏があるのではないか?」
「は、疑り深い奴よのぉ……。
まぁ、それはその通りなのじゃがな。今回ばかりは
私欲を優先している場合ではないという事じゃ。
……あの大仁田と言う男。あれはかなり厄介な存在じゃ。
放っておけば、この都どころか日ノ本すらも危うくなる。
助けてやった見返りに、あやつを討伐する
手伝いをしてもらうぞ。のじゃの猫」
あの赤い髪のおなごが
止めてくれと必死に懇願するのでな。
今回はあの娘に免じて見逃してやろう。
感謝するがよいぞ」
「赤い髪の……神楽坂か。しかし、オヌシが初対面の
妖に止められた程度で絶好の機会を逃すとは思えんが。
何か他に裏があるのではないか?」
「は、疑り深い奴よのぉ……。
まぁ、それはその通りなのじゃがな。今回ばかりは
私欲を優先している場合ではないという事じゃ。
……あの大仁田と言う男。あれはかなり厄介な存在じゃ。
放っておけば、この都どころか日ノ本すらも危うくなる。
助けてやった見返りに、あやつを討伐する
手伝いをしてもらうぞ。のじゃの猫」