だからこそ――君らの星で壊れてしまう、こんな新西暦では駄目なのだよ!
アメノクラトを裏で操っていた黒幕。
底の見えない奈落や極限まで堆積した地層の如き雰囲気を持ち、あらゆる光と闇を何度も重ねた果ての重厚さを感じさせる。
光の亡者とはまるで違う、深淵の果てで燃え続ける不滅の篝火とも評される執念、無限の砂漠で黙々と一粒の砂金を探し当てるような怪物的精神性を持つ。覚醒できずとも不死者のように蘇り、諦めずに無限に前進を繰り返す。
奇跡も不条理も、極晃奏者の雄姿も敗北必至の展開も見飽きており「ああまたか」としか思わない。その上で「じゃあこうするか」と行動する。
あの日交わした約束をいつか形とするために決して彼は諦めない。何度でも何度でも涙を拭って歩き出す。大切な誓いを胸に永劫の前進を謳い上げる。すべては千年間積み重ねた膨大な経験値の賜物。
しかし、アッシュはそんな在り方を極限まで突き詰めた……いや突き詰めざるを得なかった者の成れの果てに対し、複雑な感情を抱いていた。
『秩序とは確かに我慢だ。しかし、頂点の自制なくして存続できない宇宙など不甲斐無いにも程がある』
『人類の可能性は、もはやこの三次元空間を圧倒的に超越した。
それを見守る第二太陽など、時代遅れの枷でしかない』
目的は
第二太陽を制御下におき、
今後どのような極晃が誕生しても壊れない新宇宙を創造すること。
光も闇も境界線も、在るがままに在れるように。
第二太陽の下、人類の可能性が封じ込められた不出来な新西暦を新たな地平に昇華した
神天地創造を願っている。
『それでも大和に弓引けないなら、良かろう。我らが責を果たす』
『破滅の引き金を引いてしまった者として、
必ず森羅を新たな地平へ昇華させてみせるとも……!』
星辰光は『
戴冠王器・■■■■■■■■』。
黒幕本来の星辰光をアメノクラトの星光によって再現した偽りの超新星。極晃以外にありえない、特異点への接続を成し遂げた。
またそれまでの
距離を取り、多様な事象改竄によって相手を一方的に蹂躙する方法から一転、
恐らくは
操主本人が体得した高度な武術と炎や風など限定した星光を組み合わせ、敵を破壊する近接戦の構えに変化。
ケラウノスの攻撃の間合いへの対応度合いや、憑依直後の発言等から、黒幕自身は
剣を武装としていると推測された。
変化前よりも性能は下がっているはずなのだが、アッシュとケラウノスはむしろこの状態のアメノクラトこそ真に警戒すべきと判断を下している程。
本命の計画の片手間に、
界奏を手中に収め第二太陽を制御するためにアメノクラトを代行者とし、
プラーガの次元間相転移式核融合炉七番機を
クリエイターID「九条榛士」によって起動、アッシュを誘き寄せる。
途中までは上手く事を運んでいたものの
ケラウノスの介入で直接戦闘を行うこととなり、その最中にアメノクラトに己自身の意識を浮上させ界奏と閃奏相手に肉薄するが敗北。極晃の特性を野望に利用できると理解し収穫は十分だと満足しながらアメノクラトとの接続を断った。
そして――彼らが会うことは二度とない、彼らは彼らが紡ぐ別の運命が存在するから。
成果を得た以上、界奏にもはや興味はなく、再戦に拘泥することもない。
“勝利”をこの手に掴むまで? そんな懐かしい青臭さは、とうの昔に蒸散している。
刻んだ足跡を一つ残らず力に変えて、永劫不滅の流れ星を愚直に進撃させ続ける。
すべては大和の御心を越えるために。神天地創造を懸けた戦いが、程なく火蓋を落とすだろう。