幾多の致命傷を負いながら残り僅かな命を燃やし、世界樹の核にたどり着いたラグナとミサキは、最後に残った魂を対価に希望を成そうとするも、その決意さえ計算済みの神奏者によって磔刑に処されてしまう。
そして第二太陽を遮断する装置として存在全てを逆に利用されて、身体も、命も、意思も、魂も無惨に磨り潰され、二人は物言わぬ骸と成り果てたのだが―――。
二人へ集う真紅の星晶、命の煌めきが傷つき、朽ち果てようとしていた二人の魂を優しく癒していく。
それは 大切な絆達が信じて残してくれた星の 結晶。二人が眷属の心臓に埋め込んだ 紅星晶鋼は本来、眷属へ再生能力と不死破断の属性を与えるための受容体だった。しかし、彼らは星晶に星屑を溜め、二人へ還元するための容器として逆利用したのだ。
星屑に込められた思いが伝わるたび、涙が頬を濡らす。どこまでも、どこまでも自分たちを思う絆へ尽きぬ感謝があふれ出る。
「ラグナ、ミサキ……ありがとう、出会ってくれて。私を人間にしてくれて。あなた達との思い出すべてが、何より大切な宝物。ずっとずっと見守っているから、寂しくなんてないからね」
「会えなくなっても、身体を無くしただけだから。悲しむ必要さえないわ。心も、星も、常に二人と共に在るの……それがきっと、神さえ超える永遠よ」
「ふふ……素敵な告白を、傍で聞けなかったことは残念ですが。結婚式にはわたくしも、どうか呼んでくださいませ。お二人に負けない笑顔で、たくさん祝福してみせますわ」
「帝国万歳、戦友万歳……何も心配してねえよ。愛は無敵だ。ぶちかませ」
「そう、だから―――」
「僕の仇で、俺の親友───覚悟しろ。さあ運命は集ったぞ。月の女神を抱きしめながら、今こそ証明してみせろ」
「地獄を超えたその先にも、笑顔の花は咲くのだと」
そう、これは人間の物語。天地の狭間で生きていく人間は素晴らしい明日を成すために邁進し、自分以外の絆と出会い、結ばれて次代を生み、自分では形にできない遥かな祈りを他者へ託し、その行く末を信じながら己は舞台を降りるのだ。
いつの日か、託した誰かが晴れ渡る蒼穹の下、沢山の笑顔の花を咲かせる未来を夢見ながら。
故に、我らも夢見て託すのだ。お前も大切な人間だから、大切なお前や皆が生きる明日を守りたいから。
だからこそ―――全ては、葬想月華の告げる神託通りに。今こそ、絆と共に胸に宿した命の結晶を月へと還そう。
汝、希望の殉教者よ。我らが心臓に牙を立て、“神殺し”を完遂せよ。
ならば人界の蒼穹よ、全ては彼らの捧げる希望がままに。 蒼穹の誓いを胸に――いざ。
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