概要
戦闘に至るまでの背景
レイディックの横死により、
ロードレア国は、空席となった国主の座を巡っての戦いが始まった。
この戦いに名乗りを上げたのが軍師
ヴェリアを筆頭に、
ボルゴス、
デイズ、
ミルフィー、そして本人が名乗り出た訳ではないものの、自動的にその立場に置かれた
アルヴァドスであった。
また、この時点では
フィリスは明確な意思表示をしなかったものの、独自に兵を集めていた事は確かである。
ヴェリアはまずは軍勢をまとめて東へと向かった。その先に立ちはだかる
ボルゴスを討伐するためである。
この時代、兵士は民からの交代式の徴兵制で、普段から各地に駐屯し、大掛かりな遠征でない限り基本的に将軍のみが動き、到着した先の駐屯兵を使用する事が一般的であった。しかしこの内乱により誰が敵で誰が味方か判らない状況となり、各将軍は自らがその時点で率いていた兵士をそのまま移動させることとなっていた。
ロードレアの内乱~ボルゴス討伐戦
ボルゴスは、
レイディックの初陣の頃から既に戦歴を重ねていた剛将であり、流れ者の
ヴェリアや
アレスを快く思わず、
レイディック以外の主に仕えるつもりはないと今回の旗揚げを決意。元々人望がなかったわけでもなく、周辺の城を従えることに成功し、一大勢力を築いていた。
これに対して
ヴェリアは、
アレスに命じて
ボルゴスへの降伏勧告文を書かせた。勿論それを聞くことがない事を承知の上である。その上で
ボルゴスを挑発する文面を書かせ、諸将の前で怒りくるってその手紙を破る姿を見せれば、先の見える者がこちらに内応の意志を示すかもしれないという策である。
この策は、失敗しても手紙一枚を失うだけという、
ヴェリア側にとって被害のないものであったが、城内の将
ファクトが内応に応じるという最高の結果を出している。
5月12日早朝、霧で視界が全く見えないこの日を待って、
ヴェリア軍は
ボルゴスが立て篭もる城へ総攻撃を仕掛けた。
東門に集中する騎馬部隊の轟音に、城兵は弓隊を集結させて矢の雨を浴びせる。
この攻撃に騎馬部隊は一向に城に近づいてこないが、あまりにも動きがなさ過ぎることに不審に思った防衛部隊が霧の中目を凝らすと、そこにいたのは、蹄の音を立てているだけの兵士のいない馬のみの部隊が、一列に並んでいるだけであった。
攻撃軍の本隊は、西門に姿を現し、囮にまんまとはめられた守備部隊は、急ぎ西門へ移動する。
防衛部隊が漸く西門に到着した時、東門から「馬だけの部隊の背後から真の部隊が姿を現し、東門が攻撃されています」という防衛軍を翻弄させる伝令が届く。
完全に守備部隊は手玉に取られ、真の攻撃部隊が東門を総攻撃、城門を突破して城内へとなだれ込む。
ボルゴスは自ら槍を振るって奮戦するが、全身に矢を受けて絶命した。
アルヴァドス包囲網
5月26日、
ヴェリアからの使者に驚きを隠せない
アルヴァドスは、自らその使者
バドスと面会した。彼の口上は「盟友
アルヴァドス殿の危機を救うべく、
ヴェリア殿の奇策を持って来た」というものであった。盟友と呼ばれた
アルヴァドスは、
ヴェリアは
レイディックの死でいよいよ発狂したのかと笑い飛ばすが、
バドスの真剣な口上は続けられた。戦乱の時代、状況から敵と味方は日々変わっていくもの、
ヴェリアは
アルヴァドスと同盟を結びたいと言い、それでも
アルヴァドスが信じないと、今度は「
ヴェリアが本気になれば貴様如き一日で葬れる、それをしないのは、貴様が手を結ぶに値する盟友と思っているからではないか」と怒号を浴びせる。
バドスは時に下手に、時に高圧的に
アルヴァドスを説得した。しかしあと一押しが足りないと感じた彼は、ついに最後の手にでる。
彼は、自らの愛剣で自分を貫き、その血まみれの手で
ヴェリアからの書状を
アルヴァドスに手渡した。
死に行く者は嘘をつかない。生者が勝手に生み出したこの幻想を最大限に利用して、彼は自分の説得に最後の押しをつけて
アルヴァドスを信じ込ませた。そして、その書状を受け取った
アルヴァドスは、この策を用いれば
ミルフィー、
デイズに勝てると叫び、完全に
ヴェリアの策を信じ込んでいた。
ロードレアの内乱~エルグライの戦い
ロードレアの内乱~フィリスの乱
ミルフィー、
デイズは共倒れとなり、
アルヴァドスと対峙するのは
ヴェリアだけとなっていた。その彼と合流するべく
フィリス部隊が接近してくる。
フィリス部隊の駐屯していた土地は、元々彼が国主をしていた時代の
ゴアル国の領土であり、その気になれば
ヴェリアが
ボルゴスと戦うよりも前に合流することができた。にもかかわらず
フィリスは、
ヴェリア部隊と合流せず、平行しながら距離を保ち進軍を続け、この時期にきて合流を申し出た。
並の将ならば、単にこの後継者争いに誰が勝つか日和見を決め込み、大勢が決した為
ヴェリアに助力しにきた……で説明がつくのだが、
フィリスは
レイディックの幼少の頃からの知り合いで、
ロードレア国に降ってからは代々の将と同じか、それ以上の待遇を持って迎え入れられている。
レイディックとの信頼関係も深く、彼の仇討ちなら何をおいても馳せ参じる筈であった。
これらの行動に一抹の不安を感じた
ヴェリアは、
リディを偵察に向かわせ、その上で
バイアラスを先発させると、
アレス、
グローリヴァス、
ファルザス部隊に
フィリス部隊を包囲する形で移動する様に命じた。
さすがに疑いの度が過ぎるのではと諸将は語るが、同じ
ロードレア国の将でありながら、誰を信じればいいのかわからない上、兵士の補充ができないという特殊な状況もあって、
ヴェリアは慎重であった。
リディが偵察から戻り、
フィリスの
陣形がウロボロスの陣になっていると聞かされた
ヴェリア。合流が目的なら、部隊を散開させる必要などない筈。
フィリスの真意を読み取った
ヴェリアが
バイアラス部隊に突撃準備をとらせ、
ファルザス、
ナッシュに包囲網を固めさせたその瞬間、
フィリス部隊は全軍を
ヴェリア本陣に向けて突撃させた。
だが、既に準備万端であった
ヴェリア軍によって
フィリスは撃退され、この戦いで彼も戦死する。
この
フィリスの突然の反乱は、
蜉蝣時代の未だ解き明かされていない謎として現在でも歴史学者の間で数多くの説が唱えられている。
代表的なのは、純粋に国主の座を狙った「野望説」、元々
ゴアル国の国主であった彼なら、抱いても不思議ではない野望であり、彼もまた
レイディック以外の者を主と認めなかったのかもしれない。他にも
ヴェリアに
レイディックの後を継ぐ器があるかどうかを試した「試練説」、
レイディックの後を追った「殉死説」、さらには
ヴェリアが有力な
フィリスを陥れ、その兵力だけを吸収したかった「ヴェリア陰謀説」などがある。
しかし、野望説は
フィリスにしては計画が杜撰、試練説はそこまでする必要があったのか、殉死説は自分一人が自害すればよいものを兵士を巻き込むのは
フィリスらしくない、陰謀説はこの時点で
ヴェリアがそこまで
フィリスに警戒する必要性を感じない……と、どの説も最後の説得力に欠け、結局の所真相は歴史の闇へと葬られていく。
ロードレアの内乱~ルースの戦い
兵力でも、率いる将の人材でも戦う前から決着はついていた。
6月20日、両軍は真正面からぶつかるが、
アルヴァドスの祈りにも似た決意は天に届く事もなく、崩れるべくして守備陣は崩れ、倒されるべくして
アルヴァドス本陣の旗は倒された。
夕刻には勝負がつき、
アルヴァドスは僅かな兵と共に戦場から離脱。配下の将軍に、この先に馬が用意してあると言われ、そこへ向かうが、そこで待ち伏せていた部下に撫で斬りにされた。
自らの栄達と見返りを期待して反乱に加担しておきながら、こんな結末だったことにより、
アルヴァドスは部下からも見捨てられたのである。