概要
レイディックの東征とは、
蜉蝣時代の戦乱の中で、
アルファ692年9月から10月にかけて、
ロードレア国軍と
ロー・レアルス国軍の間に起きた戦いである。
複数の戦いを一度の遠征で行った一連の軍事行動の総称であるので、ここでは一つ一つの戦いを表記していく。
戦闘に至るまでの背景
▲692年8月における勢力図
戦闘に至るまでの背景
第5次ゼイレアンの戦いで対峙していた頃、戦いの更なる長期化を見据えて
カルディスはこの地に電撃的に進軍、占領していたが、急激な領土拡大に人材が追いつかず、この地には、
ロー・レアルス国建国時に
ルディック国から勝ち馬に乗る形で旗色を変えた人物達を配置していた。(ただし、
アメシアンといった優秀な将も配置して、彼らが暴走しない抑えはしてある)
各地の国境最前線には歴戦の勇士を配備していたが、そこを一度突破されると後方の領土には「虎の威を借りる」将軍の存在が数多く存在していたという深刻な人材不足が、このときの
ロー・レアルス国の特徴ともいえた。
ロードレア国の東征の目的は、
カルディスを失い、完全に浮き足立つそういった将が統治していた後方地帯の制圧であった。
692年 9月13日 ニィズ砦の戦い
8万もの
ロードレア国軍精鋭が迫っていながら、まだ「野戦か篭城か」などといった軍議をしていた時点で、
ニィズ砦の将
ケイア、
ザルドは実戦というものを知らない将であることがわかる。
結局、彼らは1万の軍勢をもって
ロードレア国軍の出鼻を挫こうと城外に布陣する。
ニィズ砦は、かつて
アゾル国の将だった頃の
ラディアにとって因縁が残る土地だった為、控えめな彼女にしては珍しく自ら先陣を申し出た。
9月14日に戦いの火蓋が切って落とされ、蛮勇をもって攻め込む
ザルドだったが、
ラディアに迎撃され、退路を
アリガルに断たれて降伏する。
捕虜となった
ザルドだが、夜襲を仕掛けてくれればその時に内乱を起こすから、自分をこのまま生還させてくれと哀願。
この内乱は脱出するための虚偽であったが、
ヴェリアは当然の如く承知の上で彼を逃がし、夜襲を仕掛けたふりをして、彼らを誘き出して手薄になった陣を奪う。
ザルドは
アリガルによって討たれ、陣も奪われた
ケイアは降伏。
最初から戦う意思のなかった
ブゥルもすぐさま降伏して、砦から投降する。
かつて
ラディアが守り、堅剛なる要塞と化した
ニィズ砦も、指揮する将が変わるだけでその機能を失うということを知らしめる戦いとなった。
なお、この時に
デイズは、
ヴェリアから様々な知識を学んだと語っているが、後にそのことで自分の首を絞めることとなる。
692年 9月25日 ディロゥ城の戦い
バイアラスの進軍を聞いた
ディロゥ城指揮官
ノードは、戦わずしての降伏を決意していた。
カルディスの戦死もあって、
ロー・レアルス国の各城主は完全に浮き足立っていたのである。
しかし、この降伏を諌め、
バイアラスを武力ではなく策略で討とうとする
エザイス、
リガイアの説得により、
ノードも考えを改める事となる。
エザイス、
リガイアは降伏したとみせかけ、自らの軍勢500をもって
バイアラスの陣へ逃げ込む。
しかし、彼らにとって不幸だったことは、
バイアラスは武勇を誇るだけの猪武者ではなく、冷静さも兼ね備えた将軍であったことだろう。
瞬時にしてこの降伏に違和感を覚えた
バイアラスは、降伏した二人をもてなす為に酒宴を開いた。
この席で彼らを酔いつぶれるまで酒を勧めると、眠りに尽いた二人を縛って兵士の前に連行し、「二将は酒に酔って全てを語った」と鎌をかける。
すると、共に降ってきた兵士達の顔色がかわり、その表情で策を持っての偽りの降伏だったことを確信した
バイアラスは、兵士達から夜襲に応じて陣を攪乱する予定だったことを聞きだす。
ザロは、
エザイス、
リガイアを捕虜とするべきと進言したが、
ボルゴスがその場で二人を斬り捨てる。
これは、新参の
バイアラスに主導権を握らせたくない
ボルゴスの対抗心であったが、内部での対立を避けて
バイアラスは事を荒立てることなく、二将が連れてきた兵士達を味方につけると、そのまま一気に城へ攻め込み
ノードを討つ。
ノードは、この
ディロゥ城に派遣されてから、略奪を繰り返し私利私欲の限りを尽くしていた為、領民からも怨嗟の目で見られ、彼が討たれたと知ると、民衆は
バイアラスを喝采と歓声で出迎えた。
692年 10月1日 グルス城の戦い
秋風が舞う
グルス城に、
ラディアの部隊が到着したのは10月1日であった。
距離の関係もあり、
バイアラス部隊の勝利を聞いた後に到着したこの地で、まずはかつて自分の部下だった
バイアラスの独り立ちしての勝利に喜びの使者を送り、同時に自らの軍勢の合戦準備に取り掛かっていた。
ラディアほどの優れた指揮官が、相手より多い兵士を指揮している以上、この戦いに敗れる要素は全く無かった。
周辺の城が既に
ロードレア国への恭順を決め、援軍の可能性を否定された
グルス城守備部隊は、篭城を捨てて全てを賭けた野戦にうってでたが、戦いが始まってすぐに
ラディアの副将
メシズが敵将
ゴアスを討ち取り、完全に浮き足立った城兵は城へと撤退していく。
その流れに一人逆らい、城門から颯爽と出陣する一人の男がいた。
アメシアンである。
武勇を
カルディスに買われ、本来なら
ゼノスと並んで最前線に立ってもおかしくないほどの実力を持ちながら、この地帯の小器な将たちが不穏な動きをしないための「睨み」として配置されていた彼は、
ラディアと壮絶な一騎討ちを繰り広げて敗残の兵士の士気を盛り上げた。
ムゥズは一転して篭城策をとるが、援軍が存在しない篭城に意味は無いと諸将は反対、
アメシアンは単身城から討ってでて、
ラディアに挑みかかる。
これを命令違反と受け止めた
ムゥズは、
アメシアンを討つ様に命令するが、もはやそんな命令に誰もついてくることはなく、彼は配下の
ロルズメナによって討ち取られた。
城兵もこれに従って門を開けるが、
アメシアンは
ラディアに「いかに乱世とはいえ、ひとたびはじまった戦いの最中に敵に寝返るとは、自分にはできない」と、
ロルズメナを糾弾し、その場で自決する。
こうして
グルス城も
ロードレア国の手に落ちた。
692年 10月3日 ガイア城の戦い
それぞれの任務を果たした
バイアラス、
ラディアに続いて
アリガルも目的地である
ガイア城へ到着する。
これまで数多くの戦いで先陣を務めた彼が、初めて全軍と統括する「指揮官」に抜擢され、
アレスを軍師とし、一人の勇猛な将から一人の優秀な指揮官に脱皮する戦いでもあった。
ガイア城の守備をまかされていた
エルドは、正面から
アリガルに戦いを挑む。
猪突を得意とする
アリガルにとって最も好ましい展開となり、両軍は正面からぶつかりあうが、あらゆる面で
アリガルが有利なこの戦いはあっという間に決着が付き、
エルドは城へ向かって後退する。
しかし、戻ってきた
ガイア城で待ち構えた
ノイアは、門を閉ざし、
エルドに向かって矢の雨を降らせて彼を討ち取り、
アリガルに降伏の意思を伝える。
ガイア城はこうしてあっけなく落ち、
アリガルにとっては多少欲求不満の結果となった。
しかし、その
ノイアが製作した法律(
ノイア法令)に目を通した
アレスが、そのあまりにも高い完成度に感嘆し、彼女の推薦もあって、その後
ガイア城城主、更にはこの地域一体を統括する権限が与えられた。
戦いの結末
レイディックの東征により、
ロー・レアルス国の北東部は完全に切り取られた。
しかし、
カルディス戦死により混乱が続いていた
ロー・レアルス国は、最初からこの北東部を切り捨てる事により新たな国境最前線を建て直し、
ロードレア国軍をそれ以上は侵入させず、
ケルスティン、
リィドが数年前からあらかじめ用意していた独自の兵站ルートによって兵糧問題も起こさず、ようやく落ち着きを取り戻した。
(ただし、
リィドはこの直後に
メファイザスの政変によって落命するので、それ以後
ケルスティンの背負う役割は更に重いものとなる)
ロードレア国も、
バルド国、
リューグ国に不穏な動きが出てきた為、あまり主力を遠征軍として派遣させたままにするわけにはいかず、また、連戦の疲労もあり、これ以上戦闘を長引かせることは兵士の士気にも関わる為、
カルディス討伐から始まった一連の戦いにひとまず幕を下ろし、本国へと帰還した。
最終更新:2024年08月18日 13:30