アーカム計画(小説)

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&font(#6495ED){登録日}:2016/05/03 Tue 05:27:59 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 6 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){&sizex(7){「バカめ。ベックマンは死んだわ」}} *アーカム計画 『アーカム計画(原:STRANGE EONS)』は79年に発表されたロバート・ブロックのSF・ホラー小説。 [[クトゥルフ神話]]史に残る名編の一つとして知られている。 ブロックと云えば、10歳の時に「ウィアード・テイルズ」に出合い、特に[[ラヴクラフト>ハワード・フィリップス・ラヴクラフト]]作品に心酔。 33年からのラヴクラフトとの文通によるアドバイスを受け、十代にして怪奇作家としてデビュー。 19歳の時に執筆した『星から訪れたもの』では、師匠ラヴクラフトをモデルにした“プロヴィデンスの夢想家”を惨たらしい描写で殺害。 それを受けたラヴクラフトが、翌年に執筆した[[クトゥルフ神話]]体系に残る大傑作にして、ラヴクラフトの最晩年の作品『闇をさまようもの』で、ブロックをモデルにした“ロバート・ブレイク”を[[ナイアルラトホテップ>Nyarlathotep]]の生贄とした……と云う微笑ましくも切ないエピソードで有名。 ブロックは、初期には古典的な怪異譚やナイアルラトホテップを題材とした神話体系に連なる作品を執筆していたものの、後には神話体系に寄らないSF・スリラーの方面で才能を発揮。 ヒッチコックにより映画化された『サイコ』の原作者として名声を獲得した。 そして、この『アーカム計画』は晩年に入り、作家として熟成したブロックが描いた久々の神話体系の作品にして、亡き師への最大の敬意を隅々にまで込めた傑作長編となったのである。 ブロックにとってはラヴクラフト=神話体系であり、その想いは『星から訪れたもの』から、約半世紀を経て執筆された本作でも何も変わっていない。 日本では1988年に大瀧啓裕氏による和訳版が創元推理文庫より刊行されたが長らく絶版となっている。 全集と違って非常に読みやすいので、[[クトゥルフ神話]]の入門としてもおすすめである。 *【物語】 ※小説は夫夫に登場人物の違う三つの章から成っており、時系列毎に様相を変える。 先の展開が解っていても尚 、絶望的な結末を期待せずにはいられない王道的な神話体系の作品である。 **■一章 若き蒐集家アルバート・キースが小さな骨董店から入手した、見るものを戦慄せしめる悍ましき絵画。 キースが汚れを落とす内に更に邪悪な姿を表し始めた、その“生き物”の姿を見て、いつの間にか入ってきていた友人のサイモン・ウェイヴァリーは声を上げた。 「これは『ピックマンのモデル』なんだぞ」、と。 出所を探ると云うウェイヴァリーの言葉に乗せられつつも、半信半疑であったキースだが、次の日の夜に訪れた骨董店で店主が『潜み棲む恐怖』さながらの異様な殺され方をしているのを目の当たりにして考え方を改めていく。 ウェイヴァリーから手渡された“ラヴクラフト”の作品をなぞる様な不気味な影が調査を進める二人にも迫る。 そして、キースを浸食し始める、不可知の世界の悪夢……。 夢か現か、電話からウェイヴァリーの知己の古書籍商ベックマンを殺したと思われる犯人の『ランドルフ・カーターの陳述』を思わせるような声。 ウェイヴァリーの言うようにラヴクラフトは真実を記述していたと云うのか? ……独自の調査から戻り、連絡を取ってきたウェイヴァリーは『闇に囁くもの』と同様に何者かが化けており、残った亡骸は椅子に残された留金で引っ掻けられた顔と手だけだった。 大地震の混乱に乗じて追跡者から逃れたキースは、大地震を起こした原因であろう、南太平洋のある一点を目指しタヒチに飛ぶ。 ……南緯四五度、西経一二五度。((正確には南緯四七度九分、西経一二六度四三分だが文庫内の記述に倣う。)) ラヴクラフトが“ルルイエ”と記した、その地へと爆雷を投下するために……。 -アルバート・キース 蒐集家。 「ピックマンのモデル」を入手した事から異常な事件の当事者となる。 -サイモン・ウェイヴァリー キースの友人で好事家。 -ロナルド・アボット 英国の退役軍人。 タヒチに向かう途上でキースと知り合い、コネを利用して協力してくれる。 -佐藤 アボットに雇われた「オキシュリ丸」の船長。 キースとアボットをルルイエに導くが…。 **■二章 キースの元妻で、現在はモデルとして自立しているケイは南太平洋で事故死したアルバートの遺産相続の件で、久しぶりにアルバートの邸宅を訪れていた。 そこで、銀行員を名乗りケイに接触してきた謎の男ベン・パワーズ。 ……死んだはずの男の名を語った、次に会った時にはマイク・ミラーを名乗った彼は、ケイに仕事を依頼してきた《星の智慧派》を追う諜報員だった。 各地で頻発するテロ行為は、ラヴクラフトが作品中で警告する旧支配者の復活を目論む《星の智慧派》の仕業だと云うのだ。 正体を現し、ケイを何処かへと連れ去ろうとしていた《星の智慧派》の拠点である博物館は諜報部の突入と共に自爆により壊滅し、時を同じくして教会も謎の焼失をした。 アルバートの無念も背負い、政府に協力する事を決意したケイはミラーに促され、政府によるルルイエ破壊を目的とする「アーカム計画」の会議へと参加する。 事態が最終局面へと向かう中で、気持ちを確かめあうケイとミラー。 ……「アーカム計画」は成功しルルイエは破壊された。……が、主たる“[[存在>クトゥルフ]]”はイースター島へ。 狡猾なる《星の智慧派》に拉致され、イースター島の地下遺跡へと導かれたケイの目前に靄の中から姿を現したのは……。 -ケイ・キース モデル。 アルバートの別れた元妻。 “ラヴィニア・ウェイトリー”と同じ運命を辿る。 -マイク・ミラー ケイに接触してきた政府の諜報員。 -オリン・サンダースン ミラーの部下。 -佐藤 一部でも登場した「オキシュリ丸」の船長。 ケイを全裸にひん剥いた。 -[[ナイ>Nyarlathotep]] 神父。 漆黒の《星の智慧派》の指導者。 **■三章 ……近い未来。 新聞記者のマークは、各地で起きる様々な暗殺や暴動、テロリズムを影から操る《暗黒教団》を探っていた。 マークは育ての親のモイブリッジがラヴクラフトを否定するような書物を著した事を詰問するが、養父は動揺の中でマークを拒絶する。 突如、全世界で大地震が連鎖的に発生する。 恋人のローレルを連れて逃げようとしたマークだが、深い霧と、墓地から溢れ出した“食屍鬼”達の哄笑の中で狂乱して駆け出した彼女は命を落とす。 ……絶望の中で魚眼の男達に捉えられたマークは漆黒の男の下へと引きずり出される。 #center(){[[……そして。>バッドエンド]]} #center(){&sizex(7){そは永久に横たわる死者にあらねど}} #center(){&sizex(7){測り知れざる永劫の下に死を越ゆるものなり}} 追記修正は偉大なる“HPL”を想いつつお願い致します。 #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,15) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - 舞台設定以外でちゃんとクトゥルーが復活果たした作品って、これと「C市」、未邦訳のタイタス・クロウサーガ作品ぐらいなんだよな。 -- 名無しさん (2016-05-06 02:08:42) - ニャルラトテップかラヴクラフトが好きなら読んだ方がいい作品、フランクすぎるニャルが見れるぞ! -- 名無しさん (2016-05-30 11:05:05) - もしハリウッドで実写映画化されるなら佐藤船長役は嶋田久作さんか佐野史郎さんにやってもらいたい -- 名無しさん (2017-12-27 18:53:44) - 「全集と違って」で不覚にも笑った -- 名無しさん (2020-05-10 18:47:56) #comment #areaedit(end) }
&font(#6495ED){登録日}:2016/05/03 Tue 05:27:59 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 6 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){&sizex(7){「バカめ。ベックマンは死んだわ」}} *アーカム計画 『アーカム計画(原:STRANGE EONS)』は79年に発表されたロバート・ブロックのSF・ホラー小説。 [[クトゥルフ神話]]史に残る名編の一つとして知られている。 ブロックと云えば、10歳の時に「ウィアード・テイルズ」に出合い、特に[[ラヴクラフト>ハワード・フィリップス・ラヴクラフト]]作品に心酔。 33年からのラヴクラフトとの文通によるアドバイスを受け、十代にして怪奇作家としてデビュー。 19歳の時に執筆した『星から訪れたもの』では、師匠ラヴクラフトをモデルにした“プロヴィデンスの夢想家”を惨たらしい描写で殺害。 それを受けたラヴクラフトが、翌年に執筆した[[クトゥルフ神話]]体系に残る大傑作にして、ラヴクラフトの最晩年の作品『闇をさまようもの』で、ブロックをモデルにした“ロバート・ブレイク”を[[ナイアルラトホテップ>Nyarlathotep]]の生贄とした……と云う微笑ましくも切ないエピソードで有名。 ブロックは、初期には古典的な怪異譚やナイアルラトホテップを題材とした神話体系に連なる作品を執筆していたものの、後には神話体系に寄らないSF・スリラーの方面で才能を発揮。 ヒッチコックにより映画化された『サイコ』の原作者として名声を獲得した。 そして、この『アーカム計画』は晩年に入り、作家として熟成したブロックが描いた久々の神話体系の作品にして、亡き師への最大の敬意を隅々にまで込めた傑作長編となったのである。 ブロックにとってはラヴクラフト=神話体系であり、その想いは『星から訪れたもの』から、約半世紀を経て執筆された本作でも何も変わっていない。 日本では1988年に大瀧啓裕氏による和訳版が創元推理文庫より刊行されたが長らく絶版となっている。 全集と違って非常に読みやすいので、[[クトゥルフ神話]]の入門としてもおすすめである。 *【物語】 ※小説は夫夫に登場人物の違う三つの章から成っており、時系列毎に様相を変える。 先の展開が解っていても尚 、絶望的な結末を期待せずにはいられない王道的な神話体系の作品である。 **■一章 若き蒐集家アルバート・キースが小さな骨董店から入手した、見るものを戦慄せしめる悍ましき絵画。 キースが汚れを落とす内に更に邪悪な姿を表し始めた、その“生き物”の姿を見て、いつの間にか入ってきていた友人のサイモン・ウェイヴァリーは声を上げた。 「これは『ピックマンのモデル』なんだぞ」、と。 出所を探ると云うウェイヴァリーの言葉に乗せられつつも、半信半疑であったキースだが、次の日の夜に訪れた骨董店で店主が『潜み棲む恐怖』さながらの異様な殺され方をしているのを目の当たりにして考え方を改めていく。 ウェイヴァリーから手渡された“ラヴクラフト”の作品をなぞる様な不気味な影が調査を進める二人にも迫る。 そして、キースを浸食し始める、不可知の世界の悪夢……。 夢か現か、電話からウェイヴァリーの知己の古書籍商ベックマンを殺したと思われる犯人の『ランドルフ・カーターの陳述』を思わせるような声。 ウェイヴァリーの言うようにラヴクラフトは真実を記述していたと云うのか? ……独自の調査から戻り、連絡を取ってきたウェイヴァリーは『闇に囁くもの』と同様に何者かが化けており、残った亡骸は椅子に残された留金で引っ掻けられた顔と手だけだった。 大地震の混乱に乗じて追跡者から逃れたキースは、大地震を起こした原因であろう、南太平洋のある一点を目指しタヒチに飛ぶ。 ……南緯四五度、西経一二五度。((正確には南緯四七度九分、西経一二六度四三分だが文庫内の記述に倣う。)) ラヴクラフトが“ルルイエ”と記した、その地へと爆雷を投下するために……。 -アルバート・キース 蒐集家。 「ピックマンのモデル」を入手した事から異常な事件の当事者となる。 -サイモン・ウェイヴァリー キースの友人で好事家。 -ロナルド・アボット 英国の退役軍人。 タヒチに向かう途上でキースと知り合い、コネを利用して協力してくれる。 -佐藤 アボットに雇われた「オキシュリ丸」の船長。 キースとアボットをルルイエに導くが…。 **■二章 キースの元妻で、現在はモデルとして自立しているケイは南太平洋で事故死したアルバートの遺産相続の件で、久しぶりにアルバートの邸宅を訪れていた。 そこで、銀行員を名乗りケイに接触してきた謎の男ベン・パワーズ。 ……死んだはずの男の名を語った、次に会った時にはマイク・ミラーを名乗った彼は、ケイに仕事を依頼してきた《星の智慧派》を追う諜報員だった。 各地で頻発するテロ行為は、ラヴクラフトが作品中で警告する旧支配者の復活を目論む《星の智慧派》の仕業だと云うのだ。 正体を現し、ケイを何処かへと連れ去ろうとしていた《星の智慧派》の拠点である博物館は諜報部の突入と共に自爆により壊滅し、時を同じくして教会も謎の焼失をした。 アルバートの無念も背負い、政府に協力する事を決意したケイはミラーに促され、政府によるルルイエ破壊を目的とする「アーカム計画」の会議へと参加する。 事態が最終局面へと向かう中で、気持ちを確かめあうケイとミラー。 ……「アーカム計画」は成功しルルイエは破壊された。……が、主たる“[[存在>クトゥルフ]]”はイースター島へ。 狡猾なる《星の智慧派》に拉致され、イースター島の地下遺跡へと導かれたケイの目前に靄の中から姿を現したのは……。 -ケイ・キース モデル。 アルバートの別れた元妻。 “ラヴィニア・ウェイトリー”と同じ運命を辿る。 -マイク・ミラー ケイに接触してきた政府の諜報員。 -オリン・サンダースン ミラーの部下。 -佐藤 一部でも登場した「オキシュリ丸」の船長。 ケイを全裸にひん剥いた。 -[[ナイ>Nyarlathotep]] 神父。 漆黒の《星の智慧派》の指導者。 **■三章 ……近い未来。 新聞記者のマークは、各地で起きる様々な暗殺や暴動、テロリズムを影から操る《暗黒教団》を探っていた。 マークは育ての親のモイブリッジがラヴクラフトを否定するような書物を著した事を詰問するが、養父は動揺の中でマークを拒絶する。 突如、全世界で大地震が連鎖的に発生する。 恋人のローレルを連れて逃げようとしたマークだが、深い霧と、墓地から溢れ出した“食屍鬼”達の哄笑の中で狂乱して駆け出した彼女は命を落とす。 ……絶望の中で魚眼の男達に捉えられたマークは漆黒の男の下へと引きずり出される。 #center(){[[……そして。>バッドエンド]]} #center(){&sizex(7){そは永久に横たわる死者にあらねど}} #center(){&sizex(7){測り知れざる永劫の下に死を越ゆるものなり}} 追記修正は偉大なる“HPL”を想いつつお願い致します。 #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,16) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - 舞台設定以外でちゃんとクトゥルーが復活果たした作品って、これと「C市」、未邦訳のタイタス・クロウサーガ作品ぐらいなんだよな。 -- 名無しさん (2016-05-06 02:08:42) - ニャルラトテップかラヴクラフトが好きなら読んだ方がいい作品、フランクすぎるニャルが見れるぞ! -- 名無しさん (2016-05-30 11:05:05) - もしハリウッドで実写映画化されるなら佐藤船長役は嶋田久作さんか佐野史郎さんにやってもらいたい -- 名無しさん (2017-12-27 18:53:44) - 「全集と違って」で不覚にも笑った -- 名無しさん (2020-05-10 18:47:56) #comment #areaedit(end) }

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