カプセルモンスターチェス(遊戯王)

登録日:2025/06/11 Wed 19:44:45
更新日:2025/06/17 Tue 08:17:40
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『カプセルモンスターチェス』とは高橋和希原作の漫画遊☆戯☆王』に登場するゲームの一種である。


【概要】

コミックス3巻と5巻で行われたゲーム。
遊戯のライバル・海馬瀬人の弟「海馬モクバ」が得意とする。
250種類のモンスター「カプモン」が収められた「カプセル(コマ)」を互いに動かして争う、文字通りチェスのようなゲームである。
どうやら子供達に人気のようで、駄菓子屋にあるガチャポンの筐体に多数の小学生が並ぶ姿が見られた。
(『遊☆戯☆王』が連載されていた頃、ガチャポンは設置費が安く費用対効果も高いため、個人の経営する駄菓子屋や本屋などに置かれていることが多かった。この項目も参照のこと)
基本的には1回100円のガチャポンでコマを手に入れ、対戦ではその中から5つを選んで持ちゴマとする。

作中、遊戯とモクバは初邂逅時とDEATH-T編にて2回対戦した。
その後モクバが実質的に遊戯達の味方となった事、作品自体がTCG主体となった事で以降このゲームは登場せず、海馬ランドの片隅に「カプモン・モクバ館」として残る事となった。

モクバは兄とチェスをするのが幼少期の楽しみであり、また2人の兄弟の運命を変えたのも皮肉にもチェスであった。
そういう意味ではこのゲームはモクバの象徴とも言える。

【ルール】

勝利条件は「相手のコマを全部倒せば勝ち」
架空の世界観「惑星ガーナスター」を舞台とした8×8のフィールド盤にてコマを動かす。
コマには1~5までのレベルが振られ、基本的に低レベルは高レベルに勝てない
同じレベル同士は基本的には相打ちとなるが、相性の差もあるらしくたまにどちらかが残る。
ただし、各コマはそれぞれ移動できる範囲や攻撃方法が違ったりして、頑張れば低レベルでも高レベルを倒す事が可能ではある。
また、最初に互いにコマを配置するのだが、ゲームが始まるまで相手のコマはレベルしか判別出来ない。すなわち初期配置の時点で勝負は始まっているのだ。

フィールドは50種類あるが、モクバが特に好んでいたのは「クライシスの丘」という、平地が多くモンスターを縦横無尽に動かしやすいフィールドであった、
他にも「HP回復」「進化」といった特殊効果マスが含まれたフィールドもあるが、戦闘は基本的に一撃必殺なので回復マスは最後まで使われなかった。
他、作中では使われなかったがバフ・デバフの概念や毒などのステータス異常攻撃もあったようだ。

前述の通り手持ちのカプモンを持ち寄るのが基本的な遊び方だが、変則ルールとしてガチャポンを5回回し、出てきたコマのみで戦うというものも存在する。*1
作中でのカプモン勝負は2回ともそのルールで行われたが、とても公平といえる状態ではなかった。
というのも、遊戯のモンスターが低レベル・モクバのモンスターは高レベルとなるようなイカサマを仕掛けられていたからだ*2
最初の戦いでは駄菓子屋の主人を含めた取り巻きに一芝居打たせて公平性を匂わせていたためか、さすがの闇遊戯も話の中ではイカサマには気づいていなかった*3童実野町の治安の悪さをネタにする際に登場する「スタンガンを持ち歩いている小学生」はここでの登場)。
2戦目ではまたも似たようなイカサマをしたため、流石にイカサマを疑われているものの、こちらに関してモクバを咎めたりはしていなかった*4
また、モクバがこのルールを提示した表向きの理由は「自分のコレクションで勝っても面白くない」というものだが、そう考えると彼なりに遊戯のモンスター(ガチャ運・戦略)を警戒していたのだろう。

だが高レベルモンスターでの蹂躙が大好きなモクバは知らなかった。
このゲームでは、低レベルモンスターでも戦い方次第で大物食いが出来る事を。
そして「遊戯王」たる闇遊戯はそれを実現可能な腕前の持ち主であった事を……。

【登場したカプセルモンスター】

遊戯の使用したカプモン

1戦目

  • アイ・マウス
レベル1のモンスター。口の中に単眼がある不気味なデザインだが、特にこれといった能力はない。
レベル5のガンポに一刀両断されてしまった。

  • フラワーマン
花の顔を持つ人間型のモンスター。股間の葉っぱがイカす。
個性的な見た目だがレベル1なので特に活躍もなく、ダイナソー・ウイングに瞬殺された。

  • デビル・キャッスル
城のような体を持つモンスター。
一見硬そうだがレベル1なのでそれほど強くなく、ヘッド・ザッカーに噛み砕かれた。

  • グレート・パー
遊戯が使用した中で(2戦目も含め)唯一の高レベルカプモン。
味わい深い顔と「パー」の字が書かれた盾が特徴的なコミカルなモンスターだが、レベル4ということもありなかなか強力で、相手のコブラーダと相打ちした。
この際に「くっ!相打ちか!」*5と言ってることから、同じレベルでも勝敗が分かれる可能性があることがわかる。
ブリードバトルでは「紙一重」という敵の攻撃を防ぐ技を持っているのでそれの発動を期待していたのかもしれない。

遊戯はこれらのモンスターをほぼ使い捨ての形で失ったが、それは最後の一手を使うためだった……。

  • トリガン
1戦目における遊戯の切り札で、名前の通り鳥の姿をしたモンスター。
レベルは2と低く、小回りが効かず接近戦にも弱いという使い所に困るコマだが、対戦中に一度だけ使える必殺技がある。
それが斜め一列にいる相手モンスターをレベルを問わずに破壊する疾風鋭嘴斬(しっぷうえいしざん)」。
これによりモクバのモンスターを一気に吹き飛ばし逆転勝利を収めるのだった。

2戦目

ここからは2戦目に登場したカプモン。遊戯の引いたモンスターはまたもや低レベルの集まりだった。

  • 脳みそスライム
人間の脳がそのままモンスターになったような不気味な出で立ちだが、レベル1の弱小モンスターで、アルマザウルスのブレスで塵芥と化した。
特技は「考える」「毒攻撃」。

  • トッポー
レベル1で「飛びつき」「ハナフーセン」という技を持つが、レベル5のアルマザウルスに太刀打ちできるわけもなく瞬殺された。

  • モグリン
モグラ型のレベル1モンスター。鬼畜モグラではない
こいつも瞬殺される…かと思いきや、「もぐる」で地中に潜って相手の攻撃をかわす事が可能。
これで相手の同士討ちを誘うだけでなく、敵に攻撃されなくなったおかげで最後までフィールドに残る事になった。
また言葉を喋れるらしく、もう一つのスキルは「はげます」。最終盤のピンチに「もうダメだーっ!」と叫んでいたのは地味にインパクトがある。

  • イカニンジャ
額に「忍」の字が書かれたイカ。
レベル2の弱小モンスターだが、コイツの特技「自爆」はレベル5のモンスターすらも破壊する。
だがそれは犠牲を伴う捨て身の技。故に遊戯も「すまない…」と謝罪しながら実行させた。
もう一つの技「すいとん」はブリードバトルにて回避技として採用されている。

  • ビートン
芋虫型のモンスター。
レベルは2だが強そうには見えず、スキルも「丸くなる」「たえる」と攻撃向きではない。
だがその名前の通り正体はカブトムシの幼虫であり、進化することで最強の力を発揮する。

  • ハイパー・ビートル
そんなビートンが進化マスに到達しレベル5となった姿。
飛行能力と必殺の「つのアタック」を持ち相手を翻弄する。
しかしモクバ曰く「遠距離攻撃は得意だが近距離戦ではパワーが足りない」との事*6で、実際に近接戦闘が得意なビッグ・フット相手には負けてしまうが……?

モクバの使用したカプモン

1戦目

  • ガンポ
斧を持ったオーガ型のモンスター。レベル5。
攻めが得意なモクバの先陣を切り、アイ・マウスを一刀両断した。

  • コブラーダ
レベル4の蛇型モンスター。
グレート・パーと相打ちになった。

  • ダイナソー・ウイング
名前通りに恐竜に翼が生えたモンスター。当然レベル5。
フラワーマンをブレスで焼き尽くした。

  • ドクラー
ローブをまとったスケルトンのようなレベル4モンスター。《ワイト》をかなりイカつくした感じ。
搦手が得意そうだがコイツだけ特に何も出来ずに撃破された。首がもげて破壊される姿は何処か印象に残る。
ちなみにブリードバトルではこいつの下位種として《ワイト》が登場。最近首が取れやすくなったとか。

  • ヘッド・ザッカー
巨大な頭がイカす骨型のモンスター。やはりレベルは5と高い。
デビルキャッスルの背後から近寄り美味しくいただくが、このせいでモクバのモンスターは全員が斜め一列に並んでしまい……。

2戦目

  • アルマザウルス
アルマジロと恐竜を組み合わせたレベル5モンスターであり、口から吐く火炎は勿論、体を丸めて体当たりする「アルマ・アタック」は「レベル3以下のモンスターはひとたまりもない」と作中で説明されている。
モクバはこのカプモンを中心に動かし遊戯のモンスターを2体撃破。そのまま陣形を崩しにかかったが、モグリンにアルマ・アタックを「もぐる」で回避され……。
後述のデモンストレーションでも使われており、かなりのお気に入りモンスターのようだ。

  • メガトン
鎧をつけた豚のような珍妙なレベル5モンスター。頭のプロペラがイカす。
だが、アルマザウルスの直線上にいたせいで「アルマ・アタック」に当たってしまい、2体仲良く轟沈することとなった。

  • ゾイドーM
口だけしかついていない顔に二本足という、これまた不気味なレベル5モンスター。
ガスで攻撃できるらしいが、イカニンジャの「自爆」をくらい、何もせずに消え去った。

  • ナマハーゲン
なまはげ型のレベル4モンスター。
他のモクバのモンスターよりレベルは低いが、遊戯の弱小カプモンを蹂躙するには十分。
……のはずだったが、レベル5のハイパー・ビートル相手には敵わず瞬殺された。

  • ビッグフット
モクバの手持ちで最後に残ったレベル5モンスター。
名前は雪男だが背格好はボクサースタイルのゴリラと言った感じで、格闘技が得意技。
また作中に出てきたカプモンで唯一3つ技を持つ。
近接戦でのパワーは高く、生半可なレベル5モンスターでは通常であれば負けてしまう。
実際、ハイパー・ビートルを撃破しても一見戦闘可能に見えたが、しかし運悪く攻撃がクリティカルヒットしており、真っ二つとなった。

番外

  • ヒューモコ
レベル1のモンスター。後に出てくる《おジャマ・イエロー》の顔に天使のわっかが生えたような珍妙なモンスター。
バーチャルリアリティシステムの説明のためにモクバが用意し、こいつのことを「遊戯のような弱小モンスター」と呼びアルマザウルスに焼き払わせた。まぁやることがみみっちいが、新システムの臨場感を説明するには十分だったと言えよう。

  • モクバ
1戦目の敗北の際に罰ゲームを食らい、自分がカプモンとなって閉じ込められた。しかもレベル1のカプセル
なお兄にも同じようにレベル1のカードに閉じ込める罰ゲームを執行している。
このような罰ゲームを実行した理由は兄弟でお揃いというだけでなく、カプセルの中にずっと閉じ込めて使われないモンスターの気持ちを味わわせることで、彼の部屋にコレクションにすらされずに眠っている低レベルカプモンの事も解き放って理解してやれというアドバイスの為だったかもしれない。
実際この回の遊戯は相手が子供故か普段の苛烈さは若干鳴りを潜め、何処か励ましのような煽り文句が多く「ゲームの心得ってもんがわかったらまた相手になってやる」とまで言い放っている。
だがプライドと傲慢さに支配されたモクバにそういった意図は伝わらなかったが…。
上記のヒューモコを遊戯と例えたのはこの時に「レベル1」扱いされた意趣返しもあったのかもしれない。


【東映版アニメ】

原作通り、アニメ版でもモクバはこのゲームのプロという設定であるが、原作での最初の戦いは「童部(CV:飛田展男)」というカプモンヲタク*7の大学生との勝負となっている。

この童部、当初は遊戯の友人だったのだが野坂ミホに一目惚れ。
遊戯を通じてアクセサリーを贈ったり、半ばストーカーじみたアプローチを掛けていたのだが、実際に対面したミホが拒絶したのをきっかけに*8、本格的にストーカーとなり城之内や杏子、本田にまで危害を加える*9ようになったため、ミホが怒って直接対決となる。
上記の経緯から当初はミホが相手をしていたのだが、遊戯の手によって童部が原作のモクバと同じイカサマをしていた事が露呈し、紆余曲折あって人格の変わった遊戯が代打ちとしてゲーム続行。
序盤のミホの稚拙なプレイをあえて利用し、原作通りの陣形を組み上げ、一発逆転を果たした。

この童部、はっきり言って学園編のモクバ並、いやそれ以上に幼稚な人物であり*10、カプモン自体もゲームよりコレクションに重きを置いていた。
当然ゲームの心得などもあるわけもなく、初心者であるミホを蹂躙するためだけにイカサマを仕掛ける卑怯者である。
しかも自分の思い通りにならないとデパートで欲しい玩具を買ってもらえなかった子供の如く癇癪を起こして駄々をこねるという「体だけ成長した子供」を身を以て体現している非常に情けない男である。
そのため遊戯王*11からの戒めの言葉も「自分勝手なコレクションじゃなくて向き合わないと真に愛しているとは言えない」とミホを含めた他人との接し方を含めたものに言い換えられている。

なお、東映版のモクバも原作と同じルールと同じイカサマとゲームの展開をしているが、上記の童部との戦いなど知るわけもないので、遊戯王も「細工をしたな」くらいの認識しかしていない。
ただのカプモンヲタクと同レベルのイカサマをするチャンピオンというのはどうなのだろうか
こっちのモクバは作中での海馬の言及通り因縁がない分余計に勝たなければいけないプレッシャーもあって、イカサマに手を出したという形なのかもしれない。

【現実での商業展開】

OCGが普及するまで、カプモンは本作のメイン商材として使われていた。
当時は「カプセルモンスター」の名前が商標の関係*12で使えなかったため、ゲーム化の際は「モンスターカプセル」という名前になっている。
後に解消されたのか、PS2で『カプセルモンスターコロシアム』というゲームも発売された。

PS用ソフト『モンスターカプセル ブリード&バトル』ではデビル・キャッスル、コブラーダ、ヒューモコ以外が登場する。
トリガンの小回りが利かないところは種族特性として、疾風鋭嘴斬も一発限りの高ダメージ技として再現されている……が、やはり全方向×レベル回数分同じことができる上にステータスの高いアルマザウルスの方が強い。
しかもアルマザウルスは闇遊戯が使う。

ゲームボーイ用ソフト『モンスターカプセルGB』もカプモンを使ったゲームだが、ルールは全くの別物。
バクラとの対決に使われたTRPG「モンスターワールド」と折半したようなシステムとなっている。
というより、戦略ゲームとしての区分はSRPGに近く、「チェス」という呼ばれ方はされていない。なんならデュエルという呼び方してる奴もいる。これM&Wじゃないから!
ゲームバランスの問題か、カプモンが倒されるとゲームで二度と使用できなくなる『ファイアーエムブレム』のような仕様のためか、イカニンジャの自爆や疾風鋭嘴斬のような即死技はなくなっている。
こっちのゲームのモクバは最初のステージボス*13であり、カプモンチェスではないためか海馬家執事から「モクバ様には荷が重かったですな」とDisられる始末。

【余談】

  • 多種多様のモンスターが登場しておりどいつもこいつも味わい深いデザインをしているが、現在のところカードゲームの方には輸入されていない。モクバもデュエルをする際は兄様から借りたデッキや【サンダー・ドラゴン】を使用している。
  • レベル3のモンスターは一度も登場していない。
    • 一応、JC3巻での説明にはモンスターの代表格として騎士型のレベル3モンスターと魔法使いらしきレベル3モンスターが登場している。


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最終更新:2025年06月17日 08:17

*1 要はTCGで言う「シールド戦」に近いルール。規定数のパックを購入し、出たカードのみでデッキを組んで戦う即興勝負である。

*2 具体的なやり方は不明であるが、高レベルと低レベルが交互に出るように筐体の中身を弄ったと思われる。遊戯が百円玉を入れても動かないようにする仕掛けも施されていた可能性も高い

*3 後述するように再戦時には「また何か細工をしたな」と言っているため、何かしらの細工があると察していたが言及自体はしなかったのかもしれない。

*4 当時の闇遊戯にしてはかなり甘い判断と言えるが、あくまで「疑惑」程度であり、イカサマの現場を押さえたわけでは無かったという理由もありそう。

*5 吹き出ししか出ておらずどちらが発言しているか不明だが、恐らく遊戯のセリフ

*6 この台詞からモクバはモクバなりに「高レベルモンスター」の事は調べている事がわかる

*7 当時はこのような呼び方は一般的ではないし、作中でも呼ばれていないが、現代視点で内容を見ればそうとしか言いようがない。

*8 これに関してはさんざん贈り物を貰ったりしたり、童部を勘違いさせる行為をしたミホにも悪いところがある。

*9 童実野高校の学生食堂に業者に扮して忍び込み、ランチタイムの三人に下剤を仕込んだ飲水を渡して保健室送りにした。

*10 ミホのことも愛らしい人形程度にしか思っておらず、友人であった遊戯ともども自分を否定したら容赦なく攻撃することを厭わない。

*11 当時は闇遊戯という表記ではない

*12 ウルトラマンシリーズに登場するカプセル怪獣との被りを防ぐため。

*13 シナリオボスはなぜかグレムリンとなっている。