ほら穴のかみさんと悪魔

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&font(#6495ED){登録日}:2019/06/18 (火) 21:55:51 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 5 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- &b(){『ほら穴のかみさんと悪魔』}は、クロアチアに伝わる民話である。 むかしむかし、あるところに夫婦がいました。 だんなは毎朝、楽しそうに歌を口ずさみながら畑に働きに行くのですが、夕方になると、どういうわけか泣きながら帰ってくるのです。 この様子を見かねたとなりの人は、相談に乗ってやることにしました。 だんな曰く、 &b(){&color(blue){「ああ、うちにはひどい山の神がいるんだ。畑に行きゃ自由でうれしいよ。うれしくて歌の一つも出てくるさ。}} &b(){&color(blue){だけど、帰ったらかみさんに散々殴られたり、蹴られたり……ああ、本当に地獄だよ……帰りたくない(´;ω;`)」}} 要するに今で言うDVですね。 となりの人はなぜ別れないのかとたずねましたが、だんなは怖くてそんなマネはできないと言い張ります。 となりの人はだんなに、知恵を貸してやることにしました。 &b(){「カゴと縄を持って、かみさんと一緒にほら穴に行くんだ。かみさんをほら穴の中に降ろしてしまえばいいのさ。} &b(){うちに帰ったら『中に大金のあるほら穴を見つけたぞ!明日いっしょにそこに行こう』って言えばついてきてくれるだろう」} おかげでだんなは上機嫌でうちに帰り、かみさんもこの話を聞いて大いに乗り気だったので、その日の夫婦の家は珍しく、いたって平和だったのでした。 あくる日、二人は森の中のほら穴に向かいました。だんなはしっかりとカゴに縄を結わえ、言いました。 &b(){&color(blue){「おれが下に降りて、金を集める。合図したら引き上げてくれ」}} するとかみさんは、 &b(){&color(red){「ちょっとお待ちよ!甲斐性のないアンタなんかに任せられないよ。アタシにやらせとくれ!」}}と言い張りだしました。 かみさんの性格を知っているだんなからすれば、狙い通りの展開です。 結局、かみさんがほら穴に降りることになり、かみさんの乗ったカゴが下に降りると……だんなは縄を手放しました! &b(){&color(blue){「ヒャッハー!自由だー!!ヽ(*´∀`)ノ」}} こうしてようやく自由を手にしただんなは、楽しそうにうちに帰りました。 おかみさんがいなくなって、静かになった家。ようやくのんびりとくつろぐことができます。 ……しかし人間とは不思議なもので、かみさんがいない日々が続くと、だんだんと寂しくなってきました。 そもそも掃除に料理にベッドの整理……そういった家事全般は全部、かみさんの担当でした。 いなくなってから、初めてそのありがたみを実感するということはよくあるものです。 となりの人は元気のないだんなを見かねて、再び相談に乗ってやることにしました。 &b(){「おい、どうしたんだ?そんなにしょぼくれて。ようやく疫病神とおさらばできたのに」} &b(){&color(blue){「いやぁ、かみさんがいなくなったら、何だか張り合いがなくなっちまってね……(´・ω・`)」}} &b(){「ま、助けに行ってやったらどうだ?今ならまだ間に合うだろうし」} だんなは再び、カゴと縄を持って、森の中のほら穴に向かいました。 降ろしたカゴを引き上げると、かなりの手ごたえが感じられました。おかみさんでしょうか? で、カゴがほら穴のふちまで上がった時、それに乗った者の姿を見て、だんなはびっくり仰天。 #center(){&b(){カゴに乗っていたのは、恐ろしげな姿をした悪魔だったのです。}} だんなは思わずカゴを降ろそうとしましたが、悪魔は何だか悲しげな様子です。 &b(){&color(purple){「お願いだ、またほら穴に降ろすのはやめてくれ!助けてくれたら、一生幸せにしてやるから」}} だんなは悪魔を外まで引き上げてやると、悪魔は身の上話を始めました。 &b(){&color(purple){「まあ、聞いてくれ、ひどい話なんだ。俺たちは十二人で平和に暮らしていたんだ。}} &b(){&color(purple){すると、この前あの山の神……女がやってきた。俺は一番奥にいたから助かったけど、&big(){他の仲間は散々いたぶられて、皆殺しにされちまったんだ……(´;ω;`)}」}} ……悪魔相手に無双。もはやDVどころの話ではありません。 だんなはあきれて言葉も出ませんでした。 悪魔は続けます。 &b(){&color(purple){「助けてくれたお礼だ。俺の言うことをよーく聞け。}} &b(){&color(purple){まず、俺がお姫様に取り憑いて、病気にする。修道士や司教、枢機卿でさえ俺を追い出せないさ。}} &b(){&color(purple){すると王様は、姫を助けることができたら姫と、[[&color(purple){この国の半分を与えよう}>りゅうおう(DQ)]]というお触れを出すだろう。}} &b(){&color(purple){そこにお前が来るんだ。そしたら俺は逃げ出して、お姫様は助かる……って寸法さ」}} 要するに今で言う[[マッチポンプ]]ですね。 しばらくすると、悪魔の言ったとおり、お姫様は病に倒れ、王様はお触れを出しました。 だんなはお城へと向かいました。 王様は半信半疑でしたが、だんなをお姫様の部屋に通します。 するとその瞬間、お姫様の体から悪魔が飛び出してきました。 &b(){&color(purple){「俺はこれから他のお姫様のところに行く。だけど……&big(){来るなよ、絶対来るなよ!}そしたらお前の幸運もおしまいだ」}} 悪魔は警告を残して、いずこへと飛び去って行きました。 それからだんなは、お姫様と幸せに暮らし続けていましたが、ほどなくして不吉な知らせが届きました。 隣国のお姫様が病に倒れたのです。しかも修道士や司教、枢機卿でさえ歯が立たなかったといいます。 だんなはすぐにあの悪魔の仕業と気づきましたが、脅しを受けているせいで、隣国からの頼みを渋っていました。 しかし、下手に断ろうものなら関係が悪化するのは目に見えています。 おまけに、隣国は強い軍を持っているので、戦争になったらひとたまりもありません。 だんなはもはや、腹をくくるしかありませんでした。 隣国までの道中、だんなはひたすら考え続けていました。悪魔をどうにかする方法を。 &b(){&color(blue){「……ピコーン!」}} だんなが隣国のお姫様の部屋に入ると、悪魔はカンカンになって叫びました。 &b(){&color(purple){「お前……約束を破ったな(#゚Д゚)」}} するとだんなはこう返しました。 #center(){ &b(){&color(blue){「聞いてくれ、大変だ!&big(){うちのかみさんがほら穴から出てきたんだ!}あいつに見つかったら、おれとお前はおしまいだ」}} &b(){&color(purple){「おい……マジかよ……!こ、殺される……(ll゚д゚)」}} } 悪魔は一目散に逃げだし、二度と姿を見せることはありませんでした。 こうしてだんなは最大の危機を乗り越え、ずっと幸せに暮らしましたとさ。 めでたしめでたし。 ……っておい、&b(){&big(){結局かみさんは放置かよ。}} ・余談 イランに&b(){『アリ・ムハメッドのお母さん』}という話があるが、悪魔が蛇に代わっただけで、&b(){&big(){この話とプロットが全く同じである。}} バルカン半島はかつてオスマン帝国の支配下にあったことを考えると、おそらくトルコ経由でクロアチアに流入したのだろう。 追記・修正は、悪魔相手に無双してからお願いします。 参考文献 ぎょうせい『世界の民話 第4巻 東欧(1)』 福音館書店『いちばんたいせつなもの バルカンの昔話』 #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,4) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - かみさん本当に人間か? -- 名無しさん (2019-06-19 00:36:07) - どこの文化でも嫁は強いものなんだな -- 名無しさん (2019-06-19 09:12:12) - つまり悪魔の出した条件が過剰かもしれないとはいえ「かみさんの脅威≒国の半分」が成り立つわけか。なにそれこわい。 -- 名無しさん (2019-06-19 10:59:24) - 悪魔を殺せるかみさんのDVを日常的に受けている旦那頑丈だな -- 名無しさん (2019-06-19 11:29:02) - 悪魔や悪霊よりも本当に怖いのは人間だというのがよくわかるお話ですね(白目 --   (2019-06-19 11:41:28) - このかみさんって悪魔とか神とかの類なんじゃねえのか… -- 名無しさん (2019-06-19 15:47:59) - ↑神さんか... -- 名無しさん (2019-06-19 16:51:14) #comment #areaedit(end) }
&font(#6495ED){登録日}:2019/06/18 (火) 21:55:51 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 5 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- &b(){『ほら穴のかみさんと悪魔』}は、クロアチアに伝わる民話である。 むかしむかし、あるところに夫婦がいました。 だんなは毎朝、楽しそうに歌を口ずさみながら畑に働きに行くのですが、夕方になると、どういうわけか泣きながら帰ってくるのです。 この様子を見かねたとなりの人は、相談に乗ってやることにしました。 だんな曰く、 &b(){&color(blue){「ああ、うちにはひどい山の神がいるんだ。畑に行きゃ自由でうれしいよ。うれしくて歌の一つも出てくるさ。}} &b(){&color(blue){だけど、帰ったらかみさんに散々殴られたり、蹴られたり……ああ、本当に地獄だよ……帰りたくない(´;ω;`)」}} 要するに今で言うDVですね。 となりの人はなぜ別れないのかとたずねましたが、だんなは怖くてそんなマネはできないと言い張ります。 となりの人はだんなに、知恵を貸してやることにしました。 &b(){「カゴと縄を持って、かみさんと一緒にほら穴に行くんだ。かみさんをほら穴の中に降ろしてしまえばいいのさ。} &b(){うちに帰ったら『中に大金のあるほら穴を見つけたぞ!明日いっしょにそこに行こう』って言えばついてきてくれるだろう」} おかげでだんなは上機嫌でうちに帰り、かみさんもこの話を聞いて大いに乗り気だったので、その日の夫婦の家は珍しく、いたって平和だったのでした。 あくる日、二人は森の中のほら穴に向かいました。だんなはしっかりとカゴに縄を結わえ、言いました。 &b(){&color(blue){「おれが下に降りて、金を集める。合図したら引き上げてくれ」}} するとかみさんは、 &b(){&color(red){「ちょっとお待ちよ!甲斐性のないアンタなんかに任せられないよ。アタシにやらせとくれ!」}}と言い張りだしました。 かみさんの性格を知っているだんなからすれば、狙い通りの展開です。 結局、かみさんがほら穴に降りることになり、かみさんの乗ったカゴが下に降りると……だんなは縄を手放しました! &b(){&color(blue){「ヒャッハー!自由だー!!ヽ(*´∀`)ノ」}} こうしてようやく自由を手にしただんなは、楽しそうにうちに帰りました。 おかみさんがいなくなって、静かになった家。ようやくのんびりとくつろぐことができます。 ……しかし人間とは不思議なもので、かみさんがいない日々が続くと、だんだんと寂しくなってきました。 そもそも掃除に料理にベッドの整理……そういった家事全般は全部、かみさんの担当でした。 いなくなってから、初めてそのありがたみを実感するということはよくあるものです。 となりの人は元気のないだんなを見かねて、再び相談に乗ってやることにしました。 &b(){「おい、どうしたんだ?そんなにしょぼくれて。ようやく疫病神とおさらばできたのに」} &b(){&color(blue){「いやぁ、かみさんがいなくなったら、何だか張り合いがなくなっちまってね……(´・ω・`)」}} &b(){「ま、助けに行ってやったらどうだ?今ならまだ間に合うだろうし」} だんなは再び、カゴと縄を持って、森の中のほら穴に向かいました。 降ろしたカゴを引き上げると、かなりの手ごたえが感じられました。おかみさんでしょうか? で、カゴがほら穴のふちまで上がった時、それに乗った者の姿を見て、だんなはびっくり仰天。 #center(){&b(){カゴに乗っていたのは、恐ろしげな姿をした悪魔だったのです。}} だんなは思わずカゴを降ろそうとしましたが、悪魔は何だか悲しげな様子です。 &b(){&color(purple){「お願いだ、またほら穴に降ろすのはやめてくれ!助けてくれたら、一生幸せにしてやるから」}} だんなは悪魔を外まで引き上げてやると、悪魔は身の上話を始めました。 &b(){&color(purple){「まあ、聞いてくれ、ひどい話なんだ。俺たちは十二人で平和に暮らしていたんだ。}} &b(){&color(purple){すると、この前あの山の神……女がやってきた。俺は一番奥にいたから助かったけど、&big(){他の仲間は散々いたぶられて、皆殺しにされちまったんだ……(´;ω;`)}」}} ……悪魔相手に無双。もはやDVどころの話ではありません。 だんなはあきれて言葉も出ませんでした。 悪魔は続けます。 &b(){&color(purple){「助けてくれたお礼だ。俺の言うことをよーく聞け。}} &b(){&color(purple){まず、俺がお姫様に取り憑いて、病気にする。修道士や司教、枢機卿でさえ俺を追い出せないさ。}} &b(){&color(purple){すると王様は、姫を助けることができたら姫と、[[&color(purple){この国の半分を与えよう}>りゅうおう(DQ)]]というお触れを出すだろう。}} &b(){&color(purple){そこにお前が来るんだ。そしたら俺は逃げ出して、お姫様は助かる……って寸法さ」}} 要するに今で言う[[マッチポンプ]]ですね。 しばらくすると、悪魔の言ったとおり、お姫様は病に倒れ、王様はお触れを出しました。 だんなはお城へと向かいました。 王様は半信半疑でしたが、だんなをお姫様の部屋に通します。 するとその瞬間、お姫様の体から悪魔が飛び出してきました。 &b(){&color(purple){「俺はこれから他のお姫様のところに行く。だけど……&big(){来るなよ、絶対来るなよ!}そしたらお前の幸運もおしまいだ」}} 悪魔は警告を残して、いずこへと飛び去って行きました。 それからだんなは、お姫様と幸せに暮らし続けていましたが、ほどなくして不吉な知らせが届きました。 隣国のお姫様が病に倒れたのです。しかも修道士や司教、枢機卿でさえ歯が立たなかったといいます。 だんなはすぐにあの悪魔の仕業と気づきましたが、脅しを受けているせいで、隣国からの頼みを渋っていました。 しかし、下手に断ろうものなら関係が悪化するのは目に見えています。 おまけに、隣国は強い軍を持っているので、戦争になったらひとたまりもありません。 だんなはもはや、腹をくくるしかありませんでした。 隣国までの道中、だんなはひたすら考え続けていました。悪魔をどうにかする方法を。 &b(){&color(blue){「……ピコーン!」}} だんなが隣国のお姫様の部屋に入ると、悪魔はカンカンになって叫びました。 &b(){&color(purple){「お前……約束を破ったな(#゚Д゚)」}} するとだんなはこう返しました。 #center(){ &b(){&color(blue){「聞いてくれ、大変だ!&big(){うちのかみさんがほら穴から出てきたんだ!}あいつに見つかったら、おれとお前はおしまいだ」}} &b(){&color(purple){「おい……マジかよ……!こ、殺される……(ll゚д゚)」}} } 悪魔は一目散に逃げだし、二度と姿を見せることはありませんでした。 こうしてだんなは最大の危機を乗り越え、ずっと幸せに暮らしましたとさ。 めでたしめでたし。 ……っておい、&b(){&big(){結局かみさんは放置かよ。}} ・余談 イランに&b(){『アリ・ムハメッドのお母さん』}という話があるが、悪魔が蛇に代わっただけで、&b(){&big(){この話とプロットが全く同じである。}} バルカン半島はかつてオスマン帝国の支配下にあったことを考えると、おそらくトルコ経由でクロアチアに流入したのだろう。 ちなみにアリ・ムハメッドのお母さんが穴に落とされた理由は、&b(){「あまりにもおしゃべりすぎたから」}。 ……つまり恐ろしいことに、&b(){&big(){お母さんことかみさんは、クロアチアに渡ってパワーアップしているということになる……}} 追記・修正は、悪魔相手に無双してからお願いします。 参考文献 ぎょうせい『世界の民話 第4巻 東欧(1)』 福音館書店『いちばんたいせつなもの バルカンの昔話』 #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,4) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - かみさん本当に人間か? -- 名無しさん (2019-06-19 00:36:07) - どこの文化でも嫁は強いものなんだな -- 名無しさん (2019-06-19 09:12:12) - つまり悪魔の出した条件が過剰かもしれないとはいえ「かみさんの脅威≒国の半分」が成り立つわけか。なにそれこわい。 -- 名無しさん (2019-06-19 10:59:24) - 悪魔を殺せるかみさんのDVを日常的に受けている旦那頑丈だな -- 名無しさん (2019-06-19 11:29:02) - 悪魔や悪霊よりも本当に怖いのは人間だというのがよくわかるお話ですね(白目 --   (2019-06-19 11:41:28) - このかみさんって悪魔とか神とかの類なんじゃねえのか… -- 名無しさん (2019-06-19 15:47:59) - ↑神さんか... -- 名無しさん (2019-06-19 16:51:14) #comment #areaedit(end) }

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