時そば(古典落語)

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時そば(古典落語)」を以下のとおり復元します。
&font(#6495ED){登録日}:2012/09/15(土) 13:10:51
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時そば(刻そば、時蕎麦とも)とは古典落語の1つ。もともとは時うどんという上方落語を元にした江戸落語である。

割とポピュラーな落語であり、知っている人も多いと思われる。


大抵は最初に当時の[[蕎麦]]の知識等を教える事が多いので基礎知識が無くても――と言う人がいるが、
一番大切であるオチの理解には基礎知識が必要である。


【内容】
男Aが深夜に屋台で煮込み蕎麦を注文した。Aは蕎麦の味だけでなく器や箸なども巧みに褒め称えて食べ終わり会計となる。

値段は16文というが生憎小銭しか無い上に夜である。銭が落ちないように1つずつ手渡しで勘定を始めた。

A「1、2、3、4、5、6、7、8…今何時だい?」
親父「9つだね」
A「10、11、12――16、じゃあご馳走さん」

※9つとは暁9つのこと、当時の夜中0時


これを見たBという男は、Aが1文をごまかした事に気付き感心。真似しようとする。
当時の法律を考えると、たった1文の為にスリリングな話である。


だがBはいささか世渡り下手らしく、時間が来るより早く蕎麦屋へ凸ってしまった。
Aを真似て煮込み蕎麦を頼み、食べながら誉めようとするが如何せん上手く行かない。しかも蕎麦は不味い。
だが最後の会計さえ成功させればBは勝ちなのだ、意を決してAと同じように手渡しで1文ずつ勘定を始めた。


B「1、2、3、4、5、6、7、8…今何時だい?」
親父「4つだね」
B「5、6、7、8……」



【解説】
Bは勘定まで多く取られて踏んだり蹴ったりである。では何故こうなったか?

当時の時法では深夜に「夜4つ(午後10時頃)」の次が「暁9つ(午前0時頃)」だったのでこの話が成り立つ。
あと2時間待てば、Bも成功したかもしれないが、そもそも立派な詐欺行為であるので成功しない方が幸せなのかもしれない。


#openclose(show=江戸時代の時間について){
江戸時代の時間
暁九つ……子の正刻(子三つ時・子四つ時)…00:00ー01:00
暁九つ半…丑の初刻(丑一つ時・丑二つ時)…01:00ー02:00
暁八つ……丑の正刻(丑三つ時・丑四つ時)…02:00ー03:00
暁八つ半…寅の初刻(寅一つ時・寅二つ時)…03:00ー04:00
暁七つ……寅の正刻(寅三つ時・寅四つ時)…04:00ー05:00
暁七つ半…卯の初刻(卯一つ時・卯二つ時)…05:00ー06:00
明六つ……卯の正刻(卯三つ時・卯四つ時)…06:00ー07:00
明六つ半…辰の初刻(辰一つ時・辰二つ時)…07:00ー08:00
朝五つ……辰の正刻(辰三つ時・辰四つ時)…08:00ー09:00
朝五つ半…巳の初刻(巳一つ時・巳二つ時)…09:00ー10:00
朝四つ……巳の正刻(巳三つ時・巳四つ時)…10:00ー11:00
朝四つ半…午の初刻(午一つ時・午二つ時)…11:00ー12:00
昼九つ……午の正刻(午三つ時・午四つ時)…12:00ー13:00
昼九つ半…未の初刻(未一つ時・未二つ時)…13:00ー14:00
昼八つ……未の正刻(未三つ時・未四つ時)…14:00ー15:00
昼八つ半…申の初刻(申一つ時・申二つ時)…15:00ー16:00
昼七つ……申の正刻(申三つ時・申四つ時)…16:00ー17:00
昼七つ半…酉の初刻(酉一つ時・酉二つ時)…17:00ー18:00
暮六つ……酉の正刻(酉三つ時・酉四つ時)…18:00ー19:00
暮六つ半…戌の初刻(戌一つ時・戌二つ時)…19:00ー20:00
夜五つ……戌の正刻(戌三つ時・戌四つ時)…20:00ー21:00
夜五つ半…亥の初刻(亥一つ時・亥二つ時)…21:00ー22:00
夜四つ……亥の正刻(亥三つ時・亥四つ時)…22:00ー23:00
夜四つ半…子の初刻(子一つ時・子二つ時)…23:00ー00:00

江戸時代に使われた時間は十二時辰(じゅうにじしん)と呼ばれる。
時刻を2時間ごと(一辰刻=いっしんこく)に分けて十二支で表した。
この2時間は刻(とき)とも呼ばれる(丑の刻なら深夜1時頃)
更に半分に分け、各1時間を初刻・正刻(しょこく・しょうこく)と呼ぶ(丑の初刻)
更に半分に分け、30分を時(とき)と呼ぶ(丑三つ時=深夜2時-2時半)
つまり当時の時間は30分、1時間、2時間の三種類。

現在同様に深夜から数えるので真夜中は子の刻、真昼は午の刻となる。
一日を午前と午後に分けるのはこれが由来で、午の刻の前後からこう呼ばれた。
更に真昼を表す正午も「午の正刻」が由来。
当然真夜中を表す言葉もあり、「子の正刻」から正子(しょうし)と呼ばれる。
後は間食を表す「おやつ」も時間が由来だったり。
江戸中期までの食事は二食であり、八つ時(14:00ー15:00)にした間食からそう呼ばれる。

一日が暁九つから四まで減り、再び九から始まるヘンテコさだがこれには理由がある。
時間を知らせる鐘は各正刻(0時から2時間ごと)に鳴らされる。
回数は正子の9回から始まりって1回ずつ減って行きり、正午にはまた9回に戻り再び1回減っていく。
この「9」は陰陽で縁起がいい数だからとされ、鳴らす回数は
「9を◯つの時間で掛けた下一桁」となっている。
暁九つなら9×1で9回、暁八つなら9×2=18の下一桁8で8回って具合。
この計算をしないと夕方の暮六つで54回も鐘を叩くハメになるので鳴らす回数を減らすのが目的だったのだろう。
}

舞台は蕎麦が屋台で食えるというので、おそらく江戸時代後期。
麺状の蕎麦(蕎麦切り)が登場したのは中期、小麦粉を蕎麦粉に混ぜる技術が伝わってからである。
それまでの蕎麦は串焼きにした蕎麦団子や蕎麦がきなどを指す。
蕎麦がきは蕎麦粉ををお湯で混ぜたもので、醤油やそばつゆに入れたり
茹でてすいとん状にして食べる。おやつとして作られてたらしい。

江戸中期以前の話にズルズルと[[うどん>饂飩(うどん)]]を食べる話が多いのは、我々の知る蕎麦が無かったからなのだ。

作中には花巻、しっぽくと聞き慣れない蕎麦が出てきたりする。
花巻はかけそばに刻み海苔を載せたもの。
現在の海苔の生産量一位は佐賀だが、当時は浅草の「浅草海苔」が主流。
紙のような海苔はこれが発端とされる。
しっぽく(卓袱)は、かまぼこ、卵焼き、しいたけなどが載った蕎麦のこと。
卓袱は中国語でテーブル掛けを意味し、中国料理のように円卓で大皿を囲う長崎の
「卓袱料理」から沢山の具材を載せた関西の「しっぽくうどん」を経たとされる。
上記のように麺の蕎麦はうどんより後なので伝わるなら西の影響を受けるということ。
作中で食べたのはしっぽくの方。
なお卓袱に台を付けると「卓袱台」となり、昭和でおなじみの「ちゃぶ台」となる。
中国語の卓袱(チャフ)や「飯を食べる」が意味の吃飯が変化したとされる。


さて、もともとが非常にナンセンスな話だが、
仮にあなたが江戸時代に住んでいたとしても&font(#ff0000){時そばは決して成功しない}といっても過言ではない。


何故なら当時は、&font(#ff0000,b){料金前払い制}だからである。

街道の茶屋で団子を食べ、「勘定置いとくよ」なんてのを暴れん坊将軍などで見たかもしれないが、それはおかしいのだ。
もちろんツケなんて有り得ない。


つまり時代的に時そばは成立しない。

まあ、もともとうどんの話だし、何より「大衆娯楽でなに糞真面目な事言ってんの?」と言われるので、飲みの席での蘊蓄程度に止めておこう。

現在においては落語芸術協会副会長、三遊亭小遊三師匠の十八番。


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- 先払いってマジかよ  -- 名無しさん  (2017-01-28 14:11:10)
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