SCP-411-JP

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SCP-411-JP」を以下のとおり復元します。
&font(#6495ED){登録日}:2017/03/23 (木) 20:19:12
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&font(#6495ED){所要時間}:約 10 分で読めます

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#center(){&bold(){ケーキの上のイチゴは後で食べるタイプなんだ。}}


SCP-411-JPとは、シェアード・ワールド『[[The SCP Foundation]]』に登場する[[オブジェクト>オブジェクト(The SCP Foundation)]]のひとつである。
タイトルは「尊い犠牲」。JPのコードが示す通り、日本支部生まれである。
[[オブジェクトクラス>オブジェクトクラス(The SCP Foundation)]]は「&bold(){Daath}」。

……そんなクラスあったっけ? とお思いの諸兄は、この先を読んでいただきたい。



*概要
コイツが何かと言うと、40代の男性のように見える、身長1.91m、体重79.6kgの人型生物である。「人型実体」ではなく生物である。
暗褐色の肌を持ち、その表面は白色と赤褐色の紋様に覆われている。が、これはペイントや刺青ではなく、生まれつき持っているものらしいことがわかっている。

さて、オブジェクトである以上コイツには異常な特性がある。
大きく分けると二つあり、一つは会話する相手の使用する言語を、訛りや俗語表現も含めて完璧に、流暢に発話出来る、ということである。つまり意思の疎通に問題はない。

問題なのはもう一つの方で、これはヒトとの皮膚接触、つまり抱擁などに限らず握手とかぶつかったとか、それくらいでも発現する。
簡単に言うと、コイツの皮下組織はわずかでも圧力がかかると、ごくごく小さな針状の組織を形成して体表に露出させる。
この針状組織は接触した対象の皮膚を突き破り、未発見のリゼルグ酸誘導体を分泌する。どんなものかよく分からないのであれば、とりあえずそういう酵素みたいなものを出すと思ってくれればよい。

そしてこの酵素を受け取ると、対象は感覚で受け取ることの出来る最大限の疼痛を覚えるのである。
この人型生物はこの事実を対象に説明することで、接触とそれに伴う苦痛への誘導・誘惑を行うのだ。当然、財団としてはそんなものを野放しにはしておけないので、番号を振って収容と相成った。

ちなみにこの人型生物、収容後はサイト内で比較的自由に行動している。
また、自身も「楽行」と称して、数十日間にわたる滝行など、多大な負荷や苦痛を伴う宗教的行動を頻繁に行っている。が、コイツ自身がこれによって傷ついたことはない。
人型SCPは大体、能力や特性は異常だがダメージは受ける、というタイプが多いが、その中では珍しい高耐久型と言える。




ところでコイツ、実は以前にも財団が一度発見している。
詳細は不明だが、収容違反の後に2004年になって与那国島で「再発見」されたSCP-411-JPは、「Daath」のクラスを割り当てられてサイト-8181ヘ移送された。
ちなみに、この年の1/30付けの、以前のコイツに関する報告書が財団のアーカイブにある。当時コイツが収容されていたサイトに関する言及が見られるが、データがあちこち破損しているため全文を読み取ることは出来ない。
このため、当時の状況を把握するのはかなり困難となっている。

しかしこの報告書や、当時のあらゆる記録を見ると、生物が「死」や「苦痛」と言った、本来は尊ばれるべき概念を忌避し、それを齎す超常的な物品や現象、要はSCPオブジェクトを脅威と見なしていた節が見受けられる。
この異常な認識はどうも有史以来、少なくとも先史時代から共有されてきたらしい。その背景には、特大の[[CK-クラス再構築シナリオ>K-クラスシナリオ(The SCP Foundation)]]を引き起こす実体の関与が疑われている。

そして、この年の1/30から、正常な価値観はI5サイト群を中心に徐々に再度獲得されていったことがわかる。
このサイト群の地理的座標と当時の記録から鑑みるに、正常な価値観の再獲得にはSCP-411-JPが大いに寄与している、と結論された。価値観の正常化そのものはは2004/9/27、つまりコイツの再発見・再収容の2週間後に完了したが、O5評議会(現在のD5神官団の前身)により、サイト群外部の価値観は再度異常な状態に置かれることになった。
嘆かわしい限りである。



ちなみに特別収容プロトコルだが、サイト-8181の低セキュリティ区画での自由行動を認め、定期的に行うための物品を提供することになっている。
先述した特性の関係から、物理的接触を行う場合はレベル4以上のスタッフ3人の許可が必要となる。
実に緩いプロトコルだが、最大の苦痛という恩恵を与えてくれるものをそう蔑にも出来ない、ということなのだろう。


















*そんなわけがあるか。
以上の記録は財団の正式なものであるが、諸兄ならばお分かりの通り、報告書を作った財団自体が完全に狂ってしまっている。
このオブジェクトは一体何で、財団に一体何事が起きたというのか?
箇条書きにするなり要点をかいつまむなりで解説するのが筋だろうが、ここはアニヲタWikiである。
よって少々セオリーを外れ、建て主の代わりに「正常な」財団職員の方に語っていただくことにする。
では、どうぞ。

>ヤツに割り振られたアイテム番号はSCP-411-JP、これは正しい。
>オブジェクトクラスは「Euclid」だった。知性がある人型実体、何をするかわからないからな。
>特別収容プロトコルだが、ヤツは栄養補給を必要としない。だから、昏睡状態にとどめてI5-サイト81……の気密収容ユニットに収容することになっていた。このユニットの保全に携わる職員は、常にレベルAのHAZMAT除染を受ける必要があったんだ。どうしてか? 今から説明するさ。

>異常な特性は……今あんたらが読んできた報告書に書いてある通りだ。ヤツはどうやら、死や苦痛を美徳、尊ぶべきものと捉える特殊な価値観を持っているらしい。そして、接触した対象に最大の苦痛を与える。ヤツにとって痛みは歓迎すべきものだから、周りにその「歓び」を分け与えようとするんだ。もちろん、よっぽど特殊な趣味でもなきゃ、好き好んで痛みを感じたい、ましてや死にたいなんて思う奴はいない。
>それだけなら、行動させなきゃいいからSafeでもいい。が、コイツはEuclidだ。
>コイツの発するリゼルグ酸誘導体は揮発性が極めて高い、つまり蒸発しやすい。さらに、1気圧の環境で一定の濃度に達すると、ヒトの大脳旧皮質に深刻な影響を及ぼす。わかるか? 揮発したコイツの酵素が変異した光学異性体に影響されると、コイツと同じような思考になる。痛みや苦しみを受け取ろうとする衝動を引き起こすんだ。低強度の[[ミーム>ミーム(The SCP Foundation)]]汚染に近いな。
>問題なのは、この影響は取り除く手段がなかった。光学異性体を完全に隔離する方法なんてあるわけがない。だが、このまま放っておくと世界規模で価値観が変わっちまう。世界の全てが死と苦痛を望むようになるんだ。だから財団は、この作用を打ち消す研究を続けていたんだが、科学的アプローチには効果がなかった。そこで、ミーム的な側面からのアプローチに切り替えたんだ。

>コイツの影響を受けた者……被害者としておくが、この連中はさっき言った通り、死と苦痛への衝動を持つ。財団はこれを修正するのではなく、強化誘導するミーム媒介を作った。つまり、単に死と苦痛へ向かうのではなく、確固たる信仰の対象とするミームを、だ。
>とはいえ、使わないに越したことはない。このミームは予備手段として改良が進められていたが、その矢先……2004年1月30日に、収容違反が起きてしまった。この時点で、信仰のミームは全体の6割にしか達していなかった。残り4割の職員による、刹那的な行動へ対処するため、直ちにサイトを隔離して海水を注入した。これによって狂った職員を終了したんだ。
>爆破しなかったのは、世界的な混乱の後でこの実体に関する情報が全くなくなるという事態を避けるためだ。だから、例のサイトの跡地から破損したデータがサルベージされたわけだな。
>この時、SCP-411-JPは既に職員の手引きでこのサイトを脱走し、太平洋に消えていた。だが、価値観崩壊後にまた発見され、サイト-8181ヘ移送されたんだ。

>財団は信仰ミームを予備策に据え、メインとして影響を打ち消す対抗ミームを作っていた。だが、この対抗ミームは完成直前に何かのアクシデントで抹消されちまった。
>だが、財団は諦めたわけじゃなかった。予備策の信仰ミームを世界中にバラ撒いたんだ。死と痛みを信仰の対象に位置付けることで、安易に苦しむ、簡単に死ぬことを逆説的に拒否させた。そして、それは成功した。

>……狂っちまった財団職員たちは、自らの信仰する苦痛と死を、自分たちが独占しようとした。いや、独占したんだ。SCP-411-JPを収容したのはそのためだ。神の真意という意味の「Daath」とかいうクラスまで作ってな。死と苦痛を齎すあの実体は、連中にとっては神の遣いだ。「死と苦痛は尊い者にのみ与えられるべきであり、配り歩くべきではない」。そんな理由でな。そして同じ理由で、今もオブジェクトの収容は続いてる。それらから外界を守るためじゃない。それらが齎す死を確保し、地獄を収容し、悪夢を保護するためにだ。財団が、それら全てを独占するためにだ。
>連中はあれから、T-710とかいうミーム媒介を開発してバラまいた。何でかって言うと、理由は同じ。死と苦痛を独占するためだ。このミームがどんな効果を持ってるのかはわからんが、少なくともこれによって外界の価値観はかつてと同じになった。死に対する恐怖を取り戻したんだ。

>報告書を読むだけだと、このサイトだけが異常に思えるだろ? けどな、[[陛下の高貴なる王冠>SCP-1561]]や、韓国支部の[[SCP-050-KO]]のケースを思い出せ。サイト一つがあんな感じで異常な事態になったら、財団は対処する。にも拘らずこの報告書は、注釈もないまま放置されてる。……つまり、是正すべき財団そのものの価値観がイカレちまってるんだ。

>これだけは覚えとけ。SCP財団は狂っちまった。正常な世界のためじゃない、自分たちのために確保・収容・保護するようになった。だが、表向きには何も変わっちゃいない。財団はオブジェクトを収容する、外界はその影響から外される。ほら、な? 今までと同じだ。
>たとえ今の財団が、死と苦痛を最上の歓びとしてとらえ、外の人々はそれを受け取る価値のない下民だと蔑んでいたとしても、だ。




SCP-411-JP。
それ自体は、死と苦痛を歓びと捉える人型実体であり、接触した他者に最大の苦痛を与えるオブジェクトである。
だが、その苦痛をもたらす酸誘導体が問題だった。

極端に高い揮発性を持つこれは、蒸発した結果生じる光学異性体によって、不可逆のミーム汚染を引き起こす。これを受けると、SCP-411-JPと似たような思考を持つようになるのだ。
こんなものが広まったら、それこそCK-クラス・再構築シナリオの始まりである。財団はこれに対処する手段を模索したが、科学的な側面では歯が立たなかった。だが放置していれば価値観が崩壊する。
そこで財団は、発想を逆転させた。

財団の理念は確保・収容・保護。SCPオブジェクトの異常な影響から今の世界を守るために、SCP財団は存在している。
そのために必要な犠牲は、躊躇なく払う。残酷ではなくとも、冷淡に。
民間人を処理することもあるし、Dクラス職員を使い潰すことも多い。



&bold(){例え、その理念のために払うべき犠牲が財団そのものであったとしても、同じなのだ。}



財団は賭けに出た。変異した価値観を持つ「被害者」達の認識を変える、つまり単純に死と苦痛を求めるのではなく、信仰の対象として崇め奉るという信仰ミームを、財団内部にバラ撒いたのだ。
並行して影響自体を打ち消す対抗ミームも開発されていたが、これは完成を前にしてアクシデントにより抹消されてしまった。

そして、収容違反により、世界中にこのミーム汚染が広がってしまった。これにより、予備策である信仰ミームの広域拡散が行われた。
その結果が現在である。

かつての「正常な」財団の目論見通り、信仰ミームに感染した財団職員たちは、死と苦痛をあがめるようになった。
そして彼らは、それらを独占し始めた。外界において同じ認識を持つ者達から、死と苦痛を取り上げようとして、実際に取り上げてしまったのだ。

それでも飽き足らず、狂った財団は別のミームを開発した。つまり、死と苦痛を恐れるようになるミームである。
こうすることによって、死と苦痛という最大の恩恵と歓びに浴する、その栄誉は財団のみに独占され、自分たちは楽園に住まうことが出来る。
そう考えて、実行したのである。


そして、世界は元に戻った。狂わされたものがさらに狂わされた結果、一周回って元に戻ったのである。
SCP財団の活動理念が、根本から破壊されたことを除いては。
だが、表面的には何も変わっていない。今日も、明日も、その先も、SCPオブジェクトは確保され、収容され、保護され続ける。


例えそれが、財団による死と苦痛という「恩恵」の独占のためであったとしても。



&bold(){財団の明日はなかった。世界の明日と引き換えになった。}




#center(){&sizex(7){&bold(){SCP-411-JP}}}

#center(){&sizex(7){&bold(){尊い犠牲}}}




#center(){財団は[[犠牲になったのだ]]……正常な世界を守るという理念……その犠牲にな}


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#right(){
SCP-411-JP - 尊い犠牲
by suramusi
ja.scp-wiki.net/scp-411-jp
この項目の内容は『[[クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス>https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.ja]]』に従います。
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- ほろびこそわがよろこび しにゆくものこそうつくしい という思考になる汚染を引き起こすオブジェクトか  -- 名無しさん  (2017-03-23 20:32:33)
- もう元の価値観が何かもよく分からなくなるようなSCPだな……ちなみに、このSCP自体には自我も存在してるから、その辺り追記すればいいかも。 結構同情しそうなインタビューがあるのでw  -- 名無しさん  (2017-03-23 20:40:57)
- 財団が教団になったということか  -- 名無しさん  (2017-03-23 20:56:38)
- 価値観壊れる  -- 名無しさん  (2017-03-23 21:13:31)
- 財団本部に記録されている「色」のケースみたいに、財団自身がSCiPをばら撒く羽目に陥るという最大クラスの屈辱的事態が起きているんだけど…財団が幸せならそれでいのかな? しかし、狂った後の世界を先読みしてこいつの封印方法を考案した人は天才だな  -- 名無しさん  (2017-03-23 22:47:42)
- D5神官団のDって・・・  -- 名無しさん  (2017-03-24 04:48:24)
- 全てが逆転した結果元の鞘に戻ったってことか・・・  -- 名無しさん  (2017-03-24 14:34:50)
- 一説によるとSCP-411-JP-Dをとても皮肉ったSCPだとか  -- 名無しさん  (2017-03-24 17:29:43)
- ↑なるほどそういう…。確かに、KAMIKAZEを装ってたり「記事自体が自殺行為に走っている」コンセプトらしい(フォーラム参照)し…  -- 名無しさん  (2017-03-24 19:01:21)
- ↑2なんかそのDナンバーダメダメね。記事の構造も使ってる言葉も設定も画像もなにもかもがアレ     -- 名無しさん  (2017-03-24 19:17:12)
- サイト一つだけおかしくしたのかと思ったら世界丸ごとかい  -- 名無しさん  (2017-03-24 20:12:37)
- JPに-Dは無いって聞いてたんだがねぇ  -- 名無しさん  (2017-03-24 21:28:06)
- ファウンデーションェ・・・  -- 名無しさん  (2017-03-24 22:26:54)
- ↑2 その通り、実際に日本支部にはDecommissionedナンバーは無い。SCP-411-JP-Dと呼ばれているものは、voteにより普通に削除されていて、現在はInternet Archiveとかでのみ見られる。あまりにも酷い内容だったことから、その削除された報告書にSCP-411-JP-Dという俗称が付いてる、みたいな感じかな  -- 名無しさん  (2017-03-25 20:56:54)
- こいつの収容は一回世界丸ごとおかしくして誤魔化して、その後こいつが収容されているサイトを除いて元の価値観に戻してるから現在はこいつが収容されてるサイトだけが価値観がおかしくなってる。D5神官団ってのは死を忌避する価値観の中で尚他人に死や苦痛を与えた人を特別な神官として、っていう形で取り立ててるんだけど、これは死刑囚=Dクラス職員の事だろうし結果的にDクラス職員にこいつを封じ込めさせてる事に成功してるからこいつに財団は一回は負けているけど現在はほぼ完璧に収容されている  -- 名無しさん  (2017-03-26 00:44:05)
- 元に戻ってねーよ 当の財団は狂いっぱなしじゃねぇか 悲しすぎるだろ  -- 名無しさん  (2017-03-27 10:59:56)
- 転倒した価値観を世に広めるSCPだからコイツが引き起こすのはAK-クラス感ある 本文中のCK-クラスに関しては価値観転倒後の財団視点、「異常な価値観が共有されてきたという事実が記録として残っていること」に対してだと思うから  -- 名無しさん  (2017-05-27 10:45:10)
- DAATHはこのscpの作者さんの造語ってことでいいのかな ?deathのタイポ的な  -- 名無しさん  (2017-05-30 01:58:31)
- ↑Daathはセフィロトの樹の隠れたセフィラだよ  -- 名無しさん  (2017-05-30 02:59:22)
- ↑2「ダアト」やね。  -- 名無しさん  (2017-05-30 08:33:09)
- ↑5でも収容は出来ただろ? 世界のためにやったのではなく、団員が死滅してscpの収容が出来なくなるから賭けに出ただけだよ、寧ろ自分達を犠牲に収容ができ、さらに快感を得ている、彼らは間違いなく幸福のなかにいると言える。もともと狂っている財団がちょっとおかしくなっただけだよ。  -- 名無しさん  (2017-06-12 04:08:20)
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