死刑囚042(おしに)

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死刑囚042(おしに) - (2014/03/26 (水) 02:00:09) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2011/03/20 (日) 19:06:03
更新日:2021/06/23 Wed 00:46:53
所要時間:約 5 分で読めます




週刊ヤングジャンプで2002年から2004年にかけて不定期連載されていた漫画。
作者は小手川ゆあ。
全5巻。


【概要】
サスペンス調の作品が多い作者が、ある死刑囚と周囲の人間との触れ合いを淡々と、けれどちょっとだけ優しく描いた作品。

後書きで語るように、作者は本作を執筆するにあたり特に取材等は行っていない。
そのため現行の制度にそぐわない描写(囚人の拘束状況など)が含まれているが、そこは気にせずフィクションとして読むのがいいだろう。

そこまで多くない冊数でありながら、一気に読むとかなり堪えるくらいに色々な面で濃い内容。
読後にはなんとも言えない後味を残すかもしれない。
ちなみに、表紙カバーにはタイトルを示す点字が刻まれている。



【あらすじ】
死刑の廃止が議論されるようになった日本(らしき国)が舞台。
そこでは死刑に替わる刑罰として、収容中の死刑囚を公機関で無償労働させる実験が行われようとしていた。

実験体に選ばれたのは大量殺人犯の死刑囚042号、本名田嶋良平。
暗い独房から出された彼は実験チームの椎名博士と面会。
外に出る為に実験へ参加を受け入れた彼は、都内の高校で用務員として働くことになる。


――頭に爆弾を埋め込まれて。



【実験】
椎名博士を中心とした実験チームを政府がバックアップする巨大プロジェクト。
この実験が行われることは国内に報道されているが、実際の試験場がどこにあるかといった詳細は運営上の懸念から隠蔽される。
死刑囚が公共の場で活動することへのリスク対策として、対象には他人に危害を加える程に感情が高ぶると爆発する装置が頭部に埋め込まれている
生徒の安全のため対象の動向は常に監視され、高校内には実験チームと警備員が控えている。
実験が成功すれば死刑制度を廃止するきっかけになるとも言われているが、どこまで行けば『成功』と言えるのかも不明。
そもそも実験チームも政府も、失敗を前提とした単なるデータ収集としてこの実験を見ている節があるのだが……。




【登場人物】
○田嶋良平
本作の主人公。30歳と少し。
暴力団の賭け試合に参加し、7人を殺害した罪により約9年間服役していた。
実験中の住処はとあるマンションの一室。そこでも常に監視され、しかも規則によりオナ禁。
言葉遣いは荒く性格は無愛想で無感動、むっつりしている。
「……ぬ」が口癖。
しかし素の性格は優しく、捨てられていた兎の子供を見て慌てたりする本作屈指の萌キャラ。
校内では用務員として働き、特に花壇の手入れに情熱を燃やすことになる。
周囲との触れ合いを通して人間らしさを取り戻し表情も柔らかくなっていくが、それによりこれまで意識していなかった死刑囚という自分を痛感し、
「……許されてぇよ」
と独り泣きながらもらす場面も。
彼が殺害した人数は実は8人。
公になっていないこの殺人が、彼の人生を狂わせる原因となっている。


○椎名
もう1人の主人公。
大型のバイクに乗り、私服はド派手。
なかなか破天荒ではあるが、研究者としては特に臨床の場で田嶋に接する姿から見ても優秀な人物。
おちゃらけた性格で田嶋に接しつつ、その裏であくまで彼を実験体として見るようにチームに言い聞かせる冷淡な面も。
死刑制度には賛成の立場だが、少しずつ田嶋に情が移っていき、彼自身も苦悩を抱えていく。
実験期間中の住処は田嶋の隣の部屋。
ときおり彼を呼びつけ、規則違反を無視してビールを振る舞い愚痴をこぼす仲に。
また、彼のおかげで長年つきあっていた女性と結婚することができたた。
最終的に田嶋にとって一番の味方となるが……。


○下曽山ゆめ
試験場となる高校に通う女子生徒。
盲目だが、それを感じさせない心優しさを持つ。そしてかなりの天然さん。
田嶋の実験開始初日、彼が死刑囚であることに気づかず話しかけて花の素晴らしさを語った。
その時には他の友人に慌てて遠ざけられるが、後に独り泣いているところを彼に励まされ、これをきっかけに田嶋の初めての理解者となる。
田嶋が点字を学ぶきっかけになった人物。
練習も兼ねて手紙のやり取りをしている様が周囲の学生に驚かれたが、それにより学内が少しずつ田嶋を受け入れるようになる。
心身が少しずつ成長していく中で、田嶋に対する想いを大事に育てていくが……。


○古家あやの
ゆめの為に教材を点字に変換するボランティア。夫は単身赴任中の人妻。ぇろぃ。
初めて田嶋に出会ったときは、田嶋のせいでゆめが周囲に避けられると忠告し、彼に冷たい態度を取った。
しかし兎の子供を世話する姿を見て、その不器用な優しさに惹かれていく。
田嶋からしてもまんざらではなく、ある夏の日、2人は少しだけの過ちを犯した(椎名は笑って見逃した)。


○真崎
研究チームの1人。
黒髪ロングの巨乳で、人一倍涙もろい女性。
もっぱら椎名のサポートに回ることが多い。


○片桐
研究チームの1人。
ふくよかな眼鏡の男性。実は既婚。
実験では監視用の機器を扱う場面が見られる。
穏やかで人当たりのいい性格。


○(名前不明)
研究チームの1人。
すらっとしたイケメン。
特に何かをした描写はないが、何故か一生懸命な印象が残る。
(この人物以外にも名前のないキャラは何人かいる)


○刑務官
実験における警備にあたるチームの一人。実験中、田島が何かしらのトラブルを引き起こした際に彼を取り押さえ、周囲の安全を確保するのを役目としている。
周囲の誰もが彼を刑務官と呼び、本名は不明。
比喩表現を多用し、その中の1つには田嶋に人間性を取り戻させようとする椎名への苦言があった。
曰く「廃棄が決定している船を無駄に修理しているだけだ」と。それは田嶋に対して残酷な仕打ちではないのかと。
任務上田嶋につらく当たるが、途中から彼の人間性を認め、一定の信用を置くようになる。
ある場面で見られる、彼と田嶋、椎名の女性関係暴露大会は見物。
後に真崎と結婚する。






死刑囚が外で生活することは現実の制度ではあり得ない。
作品中でも田嶋が初めてのテストケースになるが、そこには多くの事件が付きまとう。


田嶋が殺した被害者の祖父との出会いと和解。
週刊誌による報道からの誹謗中傷。
第二の実験体の登場など。


第1話において、椎名の回想的なモノローグでは田嶋が数年後に死ぬ事が語られているが、
そこに至るまでの、田嶋と数多くの人間と関わりは見ていて心に来るものがある。


気が向いたら手にとってみることをお勧めしたい。



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