SR-71(偵察機)

「SR-71(偵察機)」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

SR-71(偵察機) - (2020/01/13 (月) 20:40:21) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2010/03/04(木) 23:45:43
更新日:2024/03/01 Fri 15:52:09
所要時間:約 7 分で読めます




SR-71 BlackBird(ブラックバード)


乗員:2名
全長:32.73m
全幅:16.94m
全高:5.63m

最高速度:3,529.26km/h
巡航高度:25000m+

空虚重量:29,484kg
最大離陸重量:52,250kg



その昔、アメリカは偵察任務においてU-2偵察機を使用していた。

しかし時代と共に地対空ミサイル技術も進歩し、高高度を飛行するU-2と言えど撃墜されるのは時間の問題だとされていた。
そんな矢先、ロシアによってU-2が撃墜される。



――そしてアメリカは、U-2に変わる「撃墜されない」新たな偵察機開発に着手した。――

SR-71はA-12偵察機を改良した機体である。スカンクワークスが開発を行った。
開発コンセプトとしては「高高度をマッハ3級で巡航し地対空ミサイルを回避する」というもの。

謳い文句通り、ミッション中に幾度となく地対空ミサイルに狙われたが、持ち前の速度と高度で撃墜されたことはない。

SR-71のパイロットによると、飛行中に地上から発射されたミサイルが電柱に見えたらしい。
タオパイパイですか?



SR-71は偵察機として優秀である一方、運用にはロケット打ち上げ並みの、多額の費用と高い技術を要した。
しかも偵察衛星と役割がモロ被りかつ機能的に差がない(航空機の特長が活かせない:後述)ため、技術が発達するにつれSR-71の退役の声が強まり、1989年に退役が決定した。



しかし一部の機体はNASAに引き渡され、速度の研究などに使われた。

湾岸戦争時、偵察衛星だけでは情報の収集が足りなかったことや北朝鮮の核査察問題拒否などが起こったため、SR-71が再び配備される計画が挙がり、3機のSR-71は即応体制完了したがクリントン大統領が拒否権を発動したことにより、運用されることなく1998年に再び退役している。
同じ年にNASAのSR-71も退役している。
しかし一部の機体はモスボール状態で保管されているため、再配備も一応不可能ではない。

SR-71は黒い塗装を見に纏い、のっぺりとした形状をしている。
今でこそ珍しくない機体形状であるが、当時は衝撃的な形状であったであろう。
当時の人々のリアクションを見てみたいものである。



SR-71は高度25000m近くをマッハ3で巡航する。
ちなみにSR-71は実用機による世界速度記録を樹立している。この記録は今だ破られていない。

2万5000mという高高度をマッハ3という高速で飛行すると一つの問題にぶち当たる。

それは空気との摩擦による高熱だ。

この高度と速度域になると、空気との摩擦などにより機体表面の温度は摂氏260℃になり、部分によっては570℃にもなる。
そのためSR-71を開発するにあたっての課題は摩擦熱対策だった。

このような温度になると通常のアルミニウム合金の装甲では強度が低下する。

そのためSR-71は当時では初のチタニウム合金を装甲に用いた。機体のチタニウム合金の割合は85%である。
(しかし当時のチタン加工技術はそれほど進んでおらず、手探りで開発することに…)
因みにこの当時発見されていたチタン鉱山は殆ど東側諸国であり、加工技術も進んでいた為、CIAが複数の隠蔽会社を創立し、SR-71の開発と製造に必要なチタンをソ連から購入している。

さらに摩擦熱によって金属は熱膨張をするため、機体温度が低いときは隙間が出来、機体が高温になると密閉される設計である。
そのため温度が低いと燃料が漏れるのである。


そう、ブラックバードはおもらしっ娘なのである。


燃料も高温に耐えられるようJP-7という特殊な燃料を使う。
この燃料の引火点が高く、エンジン始動とアフターバーナー点火時にはトリエチルボランという液体を使って発火させる。

このエンジン始動時、エンジンから爆発によるフラッシュが発生する。
SR-71のアフターバーナーの炎をタイガーテールと呼ぶ。

耐熱加工はタイヤにも施され、タイヤはアルミニウム加工をされている。

エンジンは高高度、マッハを飛行することで真価を発揮するように作られている。低高度ではターボエンジンになり、速度は戦闘機にも及ばない。
マッハ1.6になると自動でラムジェットになる。

左右のエンジン間隔が広く、空気取り入れ口にはスパイクがある、これは前後66cm移動させることができる。速度が上がるにつれスパイクを後退させていくのだ。

マッハで飛行するとスパイクによって衝撃波が発生する。
そしてスパイクを動かして衝撃波を空気取り入れ口に入れるのだ。

こうすることにより空気の薄い高高度でも充分な空気を取り入れることが可能にした。
逆を言えばスパイクによる圧縮空気を取り入れられなければエンジン推力は著しく低下する。

実際、航行中に衝撃波が発生しなくなる、インレットアンスタートという現象に陥るときがある。
この現象で片方のエンジンの推力が無くなると、左右のエンジン間隔が広いSR-71は横滑りをする。

この現象から抜け出すにはスパイクを前に戻し、再びスパイクを後ろに下げることで抜け出すことができる。

初期の段階では、この操作は手動で行わなければならなかった。
しかし後に自動化され、パイロットの生命を左右することは失くなった。

マッハ3で飛行するSR-71だが、ちゃんと脱出装置がついている。

SR-71の機体重量のほとんどは燃料である。
4万6000リットルの燃料を入れることが出来、機体の大半は燃料タンクである。

しかし離陸時は燃料を満タンまで入れず
離陸後、SR-71専用の給油機から燃料を補給しミッションに向かう。

給油の際には片方だけアフターバーナーを点火し、横滑りを利用した旋回をしながら給油をする。

レーダーは機首、胴体下部、チャイン内部に収納されている。
センサーは3種類ありレーダー、カメラ、電子収集装置である。

SR-71は現在位置を確認するのに天体追跡装置を使っている。

これは52個の天体を記憶しており、その52個の内3個の天体の位置を観測して、管制装置と比較して現在位置を割り出す、といった装置である。

高度2万6000mでは昼間でも天体を観測できる。

SR-71は大量の燃料を搭載できるため、マッハ3状態でニューヨーク~ロンドン間を飛行できる。

またニューヨーク~ロンドンまで約1時55分で行ける。
散歩気分でロンドンまで行けるのだ。
更にロンドン~ロサンゼルス間を約3時間35分で航行。

旋回半径もまた驚異的であり、旋回半径はなんと320km
もはや旋回と言えるのか甚だしいぐらいだ。
そのため偵察は一度限り。

途中給油の際は座標と時間は厳守である。
マッハ3と言う速度では、たった数秒で何kmも通り過ぎるからである。

SR-71は操縦に高度な技術が必要とされた為、パイロットはよりすぐりの精鋭が選ばれた。
SR-71を操縦するのはキャリア最高峰だったらしい。

SR-71に搭乗するにもひと手間かかる。
まずパイロットは搭乗する直前に健康診断をする。少しでも不調であると他のパイロットを交代するのだ。

そしてパイロットは宇宙服に似た与圧服を着る。
これを着なければ忽ち血液が沸騰して死んでしまうからだ。

一人で与圧服を着ることは出来ず、人の介助が必要。
そして与圧服を着ることが出来ると、次は与圧服に酸素を送りパイロットは酸素を吸って血中の窒素を抜くのだ。
こうしないと血中に気泡が発生し、死に至るからだ。

SR-71は当初「RS-71」だったが、
「当時の大統領であるリンドン・B・ジョンソンが公表のスピーチの際に誤って『SR-71』と言ってしまった為、SR-71に変更された」という有名なヨタ話がある。
この変更には、資料などを修正するのに17万ドルも要したと噂される。
実際のところ名称が突然変更されたことは確かだが、発言を記録した速記官の誤記から生まれたネタのようだ。



SR-71は沖縄の米軍基地に配備されたことがある。
そのとき地元住民は、その独特な形状と黒い姿、夜間に出撃することから「ハブ」と呼んでいた。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/