どうせみんないなくなる

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どうせみんないなくなる - (2015/03/17 (火) 10:23:32) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2014/11/23 (日) 13:47:01
更新日:2024/03/13 Wed 09:58:33
所要時間:約 6 分で読めます









「なんであんなこと書いた!言え!何でだ!!」





「どうせみんないなくなる」とは、蒼穹のファフナーの前日譚、0話に当たる「蒼穹のファフナー Right of Left(以下RoL)」にて登場した台詞である。
その汎用性の高さから改変されたネタセリフも数多く存在するため、一応知っているという諸氏は多いと思われる。改変台詞ではその後に続く「なんであんなこと書いた!言え!」と返すまでがテンプレとなっている。
この項目では、その元ネタである「どうせみんないなくなる」について解説する。

このセリフが登場したのは、RoL作中において立案・発動されたL計画中だった。
それは本編から1年前まで遡っており、本編主人公である真壁一騎達が幼い頃、小楯衛が修理したラジオから聞こえたフェストゥムの声に対して答えてしまった事で島の存在が露見してしまい、竜宮島はフェストゥムから追われ続けていた。

更に竜宮島とAlvisが独自に持つノートゥングモデルを筆頭とした強力なファフナーの技術等を狙う人類軍からも追われ続ける状況の中、フェストゥム来襲時の対策が講じられておらず、RoLのヒロイン生駒祐未の父親・正幸が有事の危機回避プログラムとして立案したのが「L計画」である。

竜宮島海面下にあるAlvisの左翼ブロックL区画を切り離し、Lボートとして潜行。竜宮島から離れた場所で浮上し、自動航行しながらフェストゥムを引きつけて迎撃する60日間の長期的遊撃作戦であり、参加人数は選抜パイロット8名+各スタッフ32名の計40名。戦力はノートゥングモデルの前モデルにあたるティターンモデル4機。
フェストゥムの読心能力によって島の位置が露見するのを防ぐために航路・現在位置・竜宮島の位置は誰にもわからず、作戦終了まで帰還禁止。補給は封印されたブロックに保存されていた分以外は一切ない。

ファフナー本編では実戦データその他はそれなりにあったものの、RoL内ではファフナーの運用データも交戦データも決定的に不足しており、それが影響して機体もノートゥングモデルに比べて心許ない性能と武装、不完全なシステム、ノートゥングモデルに比べて圧倒的に早い同化現象の進行速度など、竜宮島側は圧倒的に劣勢だった。

しかも、前述した同化現象の進行速度はノートゥングモデルの比ではなく、8人で4機を時間制限付きのシフト制で回していたにも関わらず、作戦開始から僅か2週間、6度目の戦闘後に同化現象の末期症状一歩手前である昏睡状態に陥ったパイロットが出てしまった。
摩耗していく人員、タイミングの分からない補充、いつしか昏睡状態に陥ったパイロットが3人になり、やがて非戦闘員にまで死者が出始めた。
その極限状況下で、作戦終了までのタイムカウントが表示されている歓談スペースの柱に誰かが落書きを始めた。それは少しずつぽつりぽつりと増えていき、誰に宛てたのかも分からない伝言板になっていった。
最初は前向きな言葉が書き込まれていった。だが時間が経つにつれて徐々に生々しく後ろ向きなものになっていった。



帰りたいという叫び。
まだ終わらないのかという本音。
死にたくないという願い。
戦いに勝ったパイロット達への賞賛。

どれもこれも、書いた人物がそこに「いた」という証だった。



耳に残響、誰の声も忘れちゃいない

「恐怖」が「狂気」へ変わりゆく前に


しかし、無情にも状況は悪化していく。
フェストゥムの2日に一度の襲撃は激化の一途を辿り、同化現象の末期症状によって4人のパイロットが砕け散っていなくなり、ファフナーの1機が激戦の末使用不能に陥ってしまった。まだ戦えるパイロット達も初期症状である目の赤化現象を起こしてしまい、徐々に精神を擦り減らしていく。
現実から逃げることも目をそらす事も許されず、自分の武器であるファフナーにじわじわと殺されていく恐怖、不安、怒り、悲しみ…やり場の無い感情はとうとうある日に最悪の形で爆発した。
生存者達が残した希望の言葉の上から、パイロットの1人である村上が殴り書きをしてしまったのだ。





                                ど
                       い    み   う
                       な    ん   せ
                       く    な
                       な
                       る






それまで比較的平静を保っていた、主人公の将陵僚は激昂し「なんであんなこと書いた!言え!何でだ!!」と村上に詰め寄って胸ぐらを掴みあげた。温厚な性格で、性格面では非の打ち所のない彼が胸ぐらを掴み上げるというのは正に異常事態に等しく、祐未は泣きながら「やめて!もう…やめてよ…っ」と制止する。
殴り書きをしてしまった村上も、残存パイロットの1人の立木も泣いていた。
誰も、それ以上村上を責めることは出来なかった。怒りと怖さと悲しみは、とうに限界を超えていた。
僚もまた、押さえ込んでいた涙を流した。



そして、殴り書きと共に希望の言葉も消された時。
村上は搭乗していたファフナーのコックピットブロックを抉られ戦死。機体は大破し、ファフナーを1機失った。





これが「どうせみんないなくなる」という言葉が生まれたシーンの顛末である。
村上の行為と末路を自業自得と一蹴することは容易い。
だが考えてみて欲しい。
いなくなったパイロットは皆幼なじみで、死んだスタッフは皆竜宮島という小さな世界の中で共に過ごした人物だったのだ。
それはもしかしたら近所に住んでいた気のいい大人だったかもしれない。行きつけの店の店員だったかもしれない。
親しい人達が結晶に包まれ砕け散り、ワームスフィア現象でいなくなるのがほぼ日常茶飯事だった。志願兵とは言え、島の中の平和な日常から島の外の凄惨な日常へ放り込まれれば、村上のような行動に走ってしまうのも無理はないとも言える。
寧ろ、そんな状況下で僚や祐未のように長期間ギリギリのラインであっても平静を保っていられた方が奇跡であり、極限状況下の閉鎖空間で負の感情がやがて狂気として爆発するというシーンを描いた顛末でもあった。


追記修正は、コックピットブロックを抉られながらお願いします。



うせみんないなくなる
たかたを見上げながら、泡沫となっていく記憶を辿っていくとその言葉を思い出した。
竜宮島という小さなかいの外に出た俺たちを待っていたのは、フェストゥムに蹂躙された凄惨な世界で。
それでも上げた空や見下ろした海は青く蒼く澄んでいたのを思い出す。
その蒼さは、竜宮島でみなと過ごした空や海と同じあおさだった。
竜宮島での日々を思い出して、全てげ出して逃げたいと思ったことは不思議となかった。
たいけな後輩を始めとしたみんなを守るために、俺を育ててくれた島に恩返しをする為というけなしの力しかない俺に出来る数少ない目的があったから。
るしかった。目の前で誰かがいなくなった時も、誰かが死んだ時も、いつも感じていた痛みより心が苦しかった。
きだしたかった。それでも戦い続けたのは、みんなと島があったからこの瞬間まで存在を続けられた。ろうを続けるあの島が、あのままであってくれるのなら…―




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