登録日:20??/??/?? (曜日) ??:??:??
更新日:2024/03/25 Mon 11:01:40
所要時間:約 ? 分で読めます
かつて、意に反して男の下に嫁がされた若い女がいた。彼女は男を嫌っていたが、自分の教会のために子を産んでほしいという父親の願いに従った。ある悪霊がこれを見て、森を歩いていた彼女の下を訪れた。サキュバスは彼女の手を取って言った、「私なら、貴方が真に生きたいと願う人生を手に入れる手助けができます。ちょっとした物を引き換えに捨てていただけるのならば」
「私の魂をもらおうと言うの?」 女は言った。
「ええ、」 女悪魔は言った。
「私は裕福になれるかしら?」 女は尋ねた。
「金銭では得ることの叶わない力を持つことになるでしょう」 霊は答えた。
「真実の愛を手に入れることができるかしら?」 女は尋ねた。
霊は黙った。 「私には分かりません」
女は申し出を熟考し、もう一度だけ尋ねた。 「貴方は私の魂で何をしようというの?」
この質問は悪魔を驚かせたが、それは平静を保った。悪魔は彼女にこう答えた。 「魂は消費されます。それ以上でも、それ以下でもありませんよ」
概要
SCP-3998は、ひとりの人間の死体である。足がなく、編み細工・釘・ワイヤーによって案山子のようになっている。
第四度熱傷(=重度のやけど)を負っている上に、鈍的外傷(打撲でできる痣)もいくつか発見されている。
どっちが死因なのか、――あるいはどちらもなのか、というのはいまだ判明はしていない。
極めて燃えやすい体をしているうえに、骨からはエタノールと人間の脂肪からなる液体を滲み出させているうえ、
毎晩11時から翌朝の4時まで自然発火するにも関わらず、どういうわけかSCP-3998は発見当初のまま崩壊しない。
ちなみにこのオブジェクトは防火処置を施したロッカーで真空状態で保管されている(収容していれば当然燃えようがない)のだが、
仮にロッカーから出した状態で発火させた場合、近くにいる条件を満たした人も発火する。
その条件は、「恋愛関係のあった相手を殺害したり、虐待した」人間であり、このうち自己防衛は含まれない。
ロッカーに保管されている(=燃えない)ときは発火はしないが、近くにいる条件を満たした人は足に軽い痛みを覚える。
仮に燃えるままに放置されていると、標的になった人間はただ発火するに留まらず、
胃袋の中にいきなりエタノールが出現し、押し出されるかのように嘔吐、更に熱傷は当然もっと酷くなり、
アルコールなので内臓もズタボロにされる。最後には体の脂肪(特にお腹)があちこち融け始め、スピードがあまりに早いせいで
仮に消火されてももはや体のあちこちはボロボロ。もはや死んだほうがマシなレベルになってしまう。
一方で炎上をほっておくと、どうやらお腹を境目に体が分離してしまうようだ。
なお標的を消火したくても、SCP-3998そのものが燃えている場合は消火できないらしい。SCP特有のひどい条件である。
一応燃えない状態で保っとけばなんとかなる…と思いたかったんだけど(後述)。
なお財団ではこいつの収容サイトには第一級殺人および家庭内暴力で有罪判決を受けている
Dクラスを配備して、不測の事態が起きた場合でもすぐに対処できるようにしている。
『セイラムの魔女』
女は受け入れ、霊と10年間毎日顔を合わせ、そして親しくなっていった。彼女は霊の下へ果実や小さな装身具を持っていき、霊は彼女に助言をしたり、仲間と引き合わせたりした。霊は彼女の質問に答え、彼女に魔術を教えた。女はやがて魔女となり、その力を使って、夫が彼女を苦しめるのと同じやり方で夫を苦しめた。
ある日、彼女の夫は後を追い、彼女が悪魔の尾を揺り動かしているのを見つけた。彼は密かに町へ戻り、群衆を集めた。彼らは女を杭に縛り付け、脚を折り、案山子のように吊り下げて火炙りにした。
マサチューセッツ州セイラム村(現在のダンバース)ではかつて、「セイラム魔女裁判」と呼ばれる魔女裁判があった。
これは降霊会に参加していた女性が突然気が狂いだしたのを、村の医師が悪魔憑きと判断し、
黒人の使用人を疑い、その後降霊会参加メンバーに拷問を掛けて「証言」させて最終的に100人近い魔女を裁こうとしたものである。
流石に多すぎたために証言そのものの正当性が疑われ、なんとか恩赦に繋がったものの、
19名は処刑、1人は拷問で圧死、5人が獄中死している。
この魔女裁判が起きたセイラムは後にクトゥルフ神話に登場する都市・アーカムのモデルになった。
SCP-3998が発見されたのはまさにそのいわくつきのセイラムである。
ストーリーだけ見ると中世ヨーロッパ感があるが、セイラム魔女裁判の年は1692年。
もはや近世に入ってる話なのだ。そしてSCP-3998もまた、17世紀に関連文献が書かれていることが財団の調査で判明。
嫌な予感しかしない。
メアリーという女性が残した日誌を読んでみよう。
かつてセイラムには、キャンディス・ヘイズ(旧姓は未詳)という女性がいた。
そのキャンディス・ヘイズは、夫であるエイデン・ヘイズを結婚前からどうも嫌っていたようだ。
しかしエイデンは村では『尊敬される男性』…つまりは名士であったと判断される。
近世はまだ女性の立場は弱い頃であり、キャンディスが結婚を断る理由はなかったのだろう。
やがてキャンディスは体のあちこちに字を作るようになり、やたら森に行っていた。
キャンディスは村人からもあまり好まれていなかったらしく、
村の住人のひとりマルガレーテはキャンディスが妻としての責務を果たしていないと糾弾していたようだ。
ここでメアリーも、痣ができたのはそうなのかと納得していた。
ここで重要なのは、キャンディスはこの日誌内では基本的に糾弾されているサイドであるということ、
すなわち『キャンディスは糞女』みたいな扱いがデフォルトなのだ。
どうやらキャンディスはエイデンと寝る(=子作りする)ことにも興味を持たないようだ。
セイラムの裁判官・警察官とキャンディスのインタビューを次に覗いてみよう。
インタビューと書いているがぶっちゃけほぼ裁判である。
キャンディスはこの時点で、「悪魔と密会している」という容疑が持たれているが、
それに対して当のキャンディスは「いかにも会ってますが」と開き直ったのである。
悪魔・クローヴィスは悪いやつじゃない、私はもはやクローヴィスが好きで、
夫は憎らしく良き妻になんかなれないと発言、火あぶりの刑に処せられたのであった。
この描写と、ある都市伝説ウェブサイトの記述の存在から、このSCP-3998こそ、キャンディス・ヘイズであろうと財団は推定した。
火あぶりの刑ののち
{
彼らは女の死体を山に打ち棄てたが、悪魔は彼女を見つけ出した — 魂を返すために。
悪魔は彼女の骨を葦で包み、彼女を生かし続けるために魂の炎を使った。だがその火は彼女を呑みこみ、彼女はかつての夫が自分と共に燃えゆくことを求めた。
真夜中、彼女は自分の身を夫のジンに浸し、再び己の身に火を点けた。彼女は夫をベッドから引きずり出すと、その上に倒れ込んだ。彼女は彼の顔を燃やし、親指で彼の目を頭蓋から抉りだした。
彼女は、夫の肉が床に溶け出し、臭気がセイラムの何処にいても嗅ぎ付けられるようになるまで共に燃え続けた。彼女は夫の脚を掴むと、千切れるまで引っ張り続け、その脚を使ってもう一度自分が歩けるようにした。
キャンディスに対する火あぶりの刑は実行された。
どうやら火をつける役目は『魔女の犠牲者』エイデンが果たしたようである。
しかしその記録の発見された不動産近くで、財団は別の手紙を発見した。
手紙の主はクローヴィス――そう、インタビューで登場した女悪魔である。
クローヴィスは語る。
あなたとの約束通り、私はあなたの魂を得た。
しかし、いまとなっては私は魂などいらない、あなたが欲しいのだと。
キャンディスは火あぶりにされ、肉体はほぼボロボロ、脚部はもはや喪失してしまっていた。
クローヴィスはキャンディスの骨を集め、キャンディスに編み細工で作った体を与えた。
だが足はどうしようもないからなんとか足は見つけてくださいと。
そして、あなたの夫は棚にジンを補充していた、と報告し、
やつに自身が地獄にいけますようにと祈らせてやれ、あなたはもう傷つく必要はないといい、
愛しています、さようならという言葉で手紙をしめた。
その後がどうなったのかはわからない。
ただ、このあと重要な発見がなされたのだ。
遺体はキャンディス・ヘイズではない?
SCP-3998の医学的報告から、SCP-3998はキャンディス・ヘイズではない可能性が高まったのだ。
ここまでいわくつきの話が出てきていたのに?と思うかもしれない。
たしかに遺体には、度々言及されてきた痣もあった。足はない。
だがキャンディス・ヘイズは死因に別にアルコールは関係ない…と思われる。
少なくとも火をつけるために使ったかもしれないが、キャンディスにとってそれはどうでもいいことである。
クローヴィスの手紙で、夫・エイデンがジンを補充していた、という描写があった。
そして、遺体はどうやら32歳の男性であったことが確認されたのだ。
マサチューセッツ州で起きる不可解な放火殺人事件
そして、SCP-3998収容ののち、マサチューセッツ州では奇妙な放火殺人事件が増加した。
これらの殺人事件は、マサチューセッツ州では「ウィッカー・ウィッチ」の仕業だとうわさされていた。
ウィッカー・ウィッチ――『編み細工の魔女』。
度々赤字で引用してきたのは都市伝説ウェブサイトにおけるウィッカー・ウィッチの記述である。
このウィッカー・ウィッチの記述には、SCP-3998の正体を示唆する部分がある。
燃えてゆく家から歩き去ったのは二人のうち一人だけであり、それこそ彼女だった。夫の死体は決して見つからなかった ― ある者は夫が失った脚を求めて瓦礫の中から無益に這い出してきたと言い、またある者は魔女が夫の死体を拷問し続けるために何処かに持ち去ったのだと言う。しかし多くの者たちは、夫は魔女が自ら作り上げた地獄の中で何度も何度も燃え上がり、彼と同じような者たちを道連れにしては永遠に罰しているのだと言っている。
魔女に関しては、確かに言えることはたった一つ。
SCP-3998 - The Wicker Witch Lives
SCP-3998 - The Wicker Witch Lives
by Fantem
scp-wiki.net/scp-3998
ja.scp-wiki.net/scp-3998
赤字引用部は同ページ内『Doc-3998-5』より引用
この項目の内容は『
クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス
』に従います。