SCP-1836-JP

「SCP-1836-JP」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

SCP-1836-JP - (2017/10/14 (土) 23:05:01) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/10/14 (土曜日) 20:54:00
更新日:2024/01/25 Thu 04:30:57
所要時間:約 10 分で読めます






「どうか貴方のその美しい脚で世界を跡形もなく踏み潰して下さい。」



SCP-1836-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「The SCP Foundation」の日本支部によって生み出されたオブジェクトの一つである。
項目名は『エゴマゾヒストの貢物』。オブジェクトクラスは「Euclid」に指定されている。

SCP-1836-JPは、日本国内および英語圏で暮らしている女性の元へ、きちんと箱詰めされ、謎の人物からの手紙が添えられた異常な特性を持った靴が出現する怪現象と、現象によって出現した靴を総称した物だ。
ターゲットとなった女性の年齢幅はかなり広く、財団の調査によると上は45歳から下はなんと6歳の子供が対象とされていた。

また、出現する靴の内容に統一感はなく、これまでに財団によって押収された靴の中には【男物のスニーカー】や【泥まみれになった陸上用スパイク】など、如何考えてもプレゼントには相応しくない代物まで含まれている。

勿論、何処の馬の骨ともわからぬ相手から、なんの脈絡もなく送りつけられてきた靴など普通の人は履こうとは思わない。
殆どの場合、このSCiPは【どこかの変態が送りつけてきた気味の悪い品物】という扱いをされ、SCiPが持つ真なる異常性を発揮する事なく廃棄処分される事になってしまうのである。

ーーなら、なぜ財団がこのSCiPを認知しているか?

考えてもみて欲しい。この SCiPは【英語圏か日本国内に住んでいる6歳から45歳の女性】でさえあればどんな相手だろうと無差別に送りつけられてくるのである。
親や兄弟、恋人や配偶者など顔見知りの人間が匿名で送ってきたプレゼントと勘違いして、問題の靴を履いてしまう可能性はゼロではないのである。

ましてや、ターゲットにされてしまったのが幼い子供だったとしたら?

或いは、相手が大人でも靴代がケチれてラッキーとか、そんなせこい了見で靴を履いてしまう人がいないとも限らないだろう。

そして、不幸にも送りつけられてきた靴を履いてしまった女性は、漏れなくこの靴が持っている真なる異常性にさらされ、さらなる大惨事のトリガーとなってしまうのである。

もっとも、幸いなことにターゲットにされてしまった女性はそのほとんどがしっかりした方だったらしく、財団が現在までに回収した42点のSCP-1836-JPの内、実験目的での発生を除いたSCP-1836-JPの異常性の発生は僅か2件のみであった。

なお、送りつけられてきた全ての靴に添えられていた手紙には、【どうか貴方のその美しい脚で世界を跡形もなく踏み潰して下さい】といった内容の文章が綴られていたそうである。
…差出人はマゾだな、きっと。

あまりにも特徴的過ぎるこの手紙は、財団が各地の警察に寄せられた『見知らぬ相手から靴が送りつけられてきた』という通報や相談の中から、SCP-1836-JP関連の事案を選別する為の特別収容プロトコルに活用されている。


その時足に起こる事

送りつけられてしまった女性(財団ではSCP-1836-JP-Aと呼称)が足に履いてしまうその前までなら、このSCiPによって出現した靴は通常の靴と同様に破壊することが可能である。
しかし、一度SCP-1836-JP-Aの足に履かれてしまったが最後、靴は突如として破壊不能となってしまう。
そして、靴底と地面の間には、なにがしかの物品或いは人間を含んだ生物が恐らくは瞬間移動と思しき手段によって転送されてくるのだ。

嫌な予感がした人、多分正解だ。この段階でもし逃げることができれば、SCiPが巻き起こす真なる異常性の巻き添えにならなくて済む。
興奮した人は…このまま立っていてくれ。

自分の足元になんらかの物品が出現した事を視認すると、SCP-1836-JP-Aはおもむろに片足を上げ…その物品を踏み潰してしまう。
たとえ、現れたのがダイヤモンドの様な硬度の高い物品だったとしても、SCP-1836-JP-Aは踏みつけるだけでそれを容易に破壊してしまうのだ。
しかも、足元に現れた物品が生物だった場合の観察結果により、転送されてくる間になんらかの手段によって踏みつけられる対象が身動きが取れなくなるような細工まで施されてしまうことが判明している。

踏みつけられた対象が原型をとどめないまでに破壊されると、即座にその物体は消滅し、また新たな物体が足元に転送されてくる。
そして、粉々に破壊された挙句に消滅した物品は、その物品がもともとあった場所へと自動的に送り返されるのだ。

まさに嫌がらせ以外の何物でもない。まぁ大抵のSCiPはそうなのであるが。


その時彼女に起こる事

靴によってSCP-1836-JP-Aに選ばれてしまった女性であるが、最初は自らの足元に様々な物体が現れ、それを自らの足で踏み潰してゆくという異常な状況に混乱し、時には生き物ですら容赦無く踏み潰してしまう自らの行為に生理的或いは倫理的な嫌悪感をあらわにする。

しかし、踏み潰す行為を続けていくうちに、靴によって感覚を書き換えられてしまうらしく、だんだんと足で何機を踏み潰し、破壊した瞬間に強烈な肉体的或いは精神的な絶頂へと達する様になってしまうのである。

ただし、どれ程のオーガズムを感じる様になってしまったところで、生物を含んだありとあらゆるものを踏み潰すという行為に対する根源的な嫌悪感その物は変わらない上、自らの足が何かを踏み潰す行為をやればやるほどその嫌悪感が増大していく為、何かを踏み潰すという行為の虜になってしまう様なことにはならない。

これは、意識はそのままに、体の主導権だけ憑依してきた何者かに握られてしまった状況に近いだろうか?

なお、踏み潰す行為を続けているSCP-1836-JP−Aには自らの意思で行為を止める術が存在しておらず、尚且つ行為を続けている間は疲労や生理現象などが発生しないことなどから、行動が阻害されない限りこの行為は永続的に行われるものと推測されている。

さて、先程から、SCP-1836-JP-Aとなってしまった女性の足元に生物を含んだありとあらゆる物品が出現すると書いているが、実はこれらの物品には明確な共通点が存在している。

それを説明する前に、まずは、SCP-1836-JPがSCP-1836-JP-A以外の人間に与える影響を見てみよう。


その足元で起きる悪夢

SCP-1836-JP-Aが何かを踏み潰す行為を目の当たりにしてしまった人間(財団ではSCP-1836-JP-Bと呼称)は、即座にその場へと倒れこみSCP-1836-JP-Aから視線をそらすことができなくなってしまう。

たとえSCP-1836-JP-Aとの間に障害物があろうが、眼球が稼働する範囲を超えようが、SCP-1836-JP-Bの眼は常にSCP-1836-JP-Aを正確に追い続け、様々なものが踏み潰されてゆく様を見続ける事になるのである。
そして、異常性が継続している間、SCP-1836-JP-BはSCP-1836-JP-Aと同様に強い快感と拒絶感を同時に体験するようになってしまうのだ。

ただし、SCP-1836-JPの影響下に置かれている間も生理現象や疲労などは通常通りに発生する為、SCP-1836-JP−Aの行為が長時間に及ぶとSCP-1836-JP−Bが命の危機に陥ってしまうことに繋がりかねない。

そのうえ、最大の問題はーー

SCP-1836-JP−Aの足元に出現し、無残にも踏み潰されてしまうその物品は、その悉くがなんらかの形でSCP-1836-JP-Bとつながりのある物品なのである。
しかも、踏み潰す行為が長時間になるにつれ、SCP-1836-JPが出現させる物品はよりSCP-1836-JP-Bにとって重要で、尚且つ失われてしまうと取り返しのつかない事態に陥ってしまう様な物品ばかりが優先的に選ばれる様になってしまうのだ。

この時、SCP-1836-JP-BとSCP-1836-JP-Aの両者は出現した物品が【誰の、どのような物品であるか】を瞬時に理解することがなぜかできる様になっている。

そして、物品が踏み潰された刹那、SCP-1836-JP-BとSCP-1836-JP-Aの両者の感じている絶頂と不快感は劇的に増加するのだ。

さて、肝心の無力化方法であるが、童話の赤い靴の様に足から靴が脱げなくなってしまうわけではないので、なんらかの方法でSCP-1836-JP-Aを昏倒させ、即座に靴を脱がして仕舞えば完封が可能である。
最悪の場合、爆弾などを用いてSCP-1836-JP-Aを殺害してしまえば被害の拡大を阻止することが可能だ。

ただし、SCP-1836-JPの影響はSCP-1836-JP-Aの【他者を足で嬲る】や【他者の大切なものを破壊する】というサディスティックな性的嗜好、SCP-1836-JP-Bの【他者に足で嬲られる】や【自身の大切なものを破壊される】といったマゾヒスティックな性的嗜好に転化され、両者の中に残存し続けることが確認されている。
しかも、財団の誇る記憶処理技術を駆使したとしても、一度根付いてしまったそれらの性的嗜好を除去することは不可能なのである。

女性はサディスティックであるべきという歪んだ妄想に取り憑かれ、異常な能力を用いてまでその妄想を具現化させようとする正体不明の送り主。

いったい、この人物が真人間に立ち返る日はいつなのだろうか?
そもそも、送り主は本当に人なのだろうか?

追記・修正は、身近な女性の元へ不審な靴が届いていないか確認してからお願いします。






SCP-785-JP - エゴマゾヒストの貢物
by HURUMOTO65
http://ja.scp-wiki.net/scp-1836-jp
この項目の内容は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。














































 


 サイト81…玄関ホールにてSCP-1836-JPが原因と思われる異常事態が発生しました!!




財団日本支部、サイト81◾️◾️の玄関ホールにて、財団に勤務している稲村博士がSCP-1836-JP-Aとなってしまったことにより、稲村博士を含め他31名もの人間がSCP-1836-JPの影響下に置かれてしまい、最終的には16名もの犠牲者が出てしまう大事件が起こってしまった。

監視カメラの映像を確認して見たところ、玄関ホールにやってきた稲村博士が不意に上着のポケットから封筒を取り出し、差出人を確認した上で封を開け、中の手紙を読んでSCP-1836-JP-Aとなってしまうまでの一連の映像が記録されていた。

当時、稲村博士は靴を履き替えようとしていたのか素足の状態であったのだが、何故かSCP-1836-JPの影響を受けてしまい大惨事のベクターとなってしまっていた。
しかも、苦渋の決断で稲村博士を殺害した後も彼女の下肢全体が何故か自律行動を行い、踏み潰し行動をやめなかった事によりますます被害が拡大してしまったのである。

ーーそう、稲村博士の足そのものが何故かSCP-1836-JPの影響を受けて異常な存在となってしまった事により、財団は靴を脱がせるというこのSCiPに対する通常の無力化方法が使えなかったのだ。

しかも、事件が発生したのがサイトの中で最も人通りの多い玄関ホールであったことが災いし、今までにない人数の犠牲者が出てしまったのである。

現在、稲村博士の下半身…いや、SCP-1836-JP-43は二度と動くことがない様にガチガチに拘束され、第三者が視認できない状態で保管されている。
しかし、これはあくまでもさらなる犠牲者を出さないための姑息的な処置であり、SCP-1836-JP-43を無力化する根本的な手法は現在まで確立されていないのが現状である。

その為、稲村博士の事件で生き残った14名の財団職員たちはSCP-1836-JP-43の呪縛から脱することができず、最終的には財団の手によって安楽死させられるという悲劇的な末路をたどる事になってしまったのであった。

以下のリストに記載されているのは、安楽死を施す前のSCP-1836-JP-Bに対して行われたインタビューからまとめられた、稲村博士により破壊された物品の一覧である。


No. 出現した物 関係者 備考
1 トマトが二つ 不明 転移先は不明。
2 ケースに収められたCD-ROM 不明 転移先は不明。
3 黒縁眼鏡 エージェント鯖田 同エージェントの愛用品であった。
4 カルボナーラ一皿 不明 サイト内の食堂で調理されていたもの。
5 某メーカー製の大型車のエンジン 米倉研究補助員 事件発生の5日前に米倉研究補助員が購入していた自動車のエンジンであった。
6 お弁当の詰まった児童用のお弁当箱 塩川検査員 事件当日の朝、塩川検査員が幼稚園に通っている娘さんのために作っていたもの。
7 各20匹ずつのムカデ・ミミズ・ゴキブリ・ナメクジ・カマドウマ 梅木補助員 梅木補助員の嫌いな生物がまとめて出現。しかも、SCP-1836-JP-43はわざわざ梅木補助員の目の前まで歩み寄ってこれらの生物を踏み潰したり、踏み潰された残骸をわざわざ補助員の顔面に――
8 試作型[削除済み]複合的現実改変固定装置のパーツ 枇杷島博士 枇杷島博士の主導で研究されていた財団の特殊装備品である。重要なパーツの破損と、開発を主導していた枇杷島博士の死により開発プロジェクトは初期段階まで後退してしまった。
9 万年筆が一本 油浅研究員 油浅研究員が今は亡き大学時代の恩師から贈られたものであった。
10 3匹のイエネコ(白・茶・鯖) 橘事務員・韮崎隊員 白が橘事務員、茶色と鯖色が韮崎隊員の愛猫であった。
11 酒井◾️◾️氏 牛垣博士 牛垣博士が研究を担当していたSCP-◾️◾️◾️-JPに暴露し、奇跡的に生き残った民間人の男性。事件当日にインタビューが予定されていた。
12 ストーブの灯油タンク 鯉渕技術職員 鯉渕技術職員の自宅で使われていたストーブの灯油タンク。漏れ出した灯油ごと戻されてしまった事により、火災が発生して鯉渕技術職員の4人の家族が犠牲となった。奇妙な事に、鯉渕技術職員を含むすべてのSCP-1836-JP-Bと、SCP-1836-JP-Aに灯油タンクを目にした途端に今後起こるであろう悲劇が予見できたらしい。
13 二台の監視カメラ 糠塚研究員 別のサイトにてSCP-◾️◾️◾️-JPの監視用に設置されていたもの。監視カメラが消失した事により、実験中だったSCP-◾️◾️◾️-JPの暴走に対処するのが遅れ、職員1名の…糠塚研究員の姉上の尊い命が犠牲となってしまった。なお、鯉渕技術職員の時と同様の現象が起きていた模様。
14 人間の子宮と、そこに収められた妊娠五ヶ月程度の胎児 エージェント茶畑 同エージェントの身重の奥様が犠牲となった。
15 人工呼吸器 貝原事務員 入院中であった貝原事務員の父上に装着されていたもの。それが破壊されたということは――


考察

この事件にはニつの奇妙な点が存在している。

まず、SCP-1836-JPの担当であったか否かは定かでは無いものの、財団職員であるはずの稲村博士が突然現れたように見える怪しげな封筒をいとも簡単に開封して中身を読んでしまったこと。

そして、本来なら手紙と一緒に送りつけられてきた靴を履かなければ発動しないはずの異常性が、なぜか単品で送りつけられてきた手紙を読んだだけで発動してしまったということである。

これはあくまでも推測なのであるが、おそらく封筒には稲村博士の知人の名前が差出人として書かれていたのであろう。
だからこそ、博士はいきなり出現した封筒を顔見知りの仕込んだ悪戯であると勘違いし、疑いもせずに封を開けてしまったのだ。

そう、SCP-1836-JPの送り主は何らかの方法で財団の情報を入手し、それを基にしてトラップを仕掛けてきたのである。

そう考えると、素足にも作用するSCP-1836-JPなどという迷惑極まりない代物を用意した理由も簡単に説明がつくだろう。
優秀な科学者の集団である財団に嫌がらせをするためには、今まで培ってきたSCP-1836-JPに関するデータがそっくりそのままトラップとなる今回の作戦が最も効果的だったのだ。


最後に、すべての元凶となったド変態からの手紙の全文を公開しよう。

ああ、何とも美しい。
目にした人間を屈服させ、性別を問わずに被虐心を湧き起らせる。破滅へと導く恐ろしくも蠱惑的な脚。
何人たりとも貴方の足の魅力に抗える人は存在しないでしょう。そして全ての飾りは貴方の魅力の前では無意味なものです。
どうか貴方のその美しい脚で世界を跡形もなく踏み潰して下さい。

時には理不尽な逆恨みにあいながらも、財団の任務は続いてゆくのである。

追記・修正は、自分の性癖を他人に押し付けない方にお願いします。

SCP-785-JP - エゴマゾヒストの貢物
by HURUMOTO65
http://ja.scp-wiki.net/scp-1836-jp
この項目の内容は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。
この項目が面白かったなら……\ポチッと/