RAMPO(映画)

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RAMPO(映画) - (2017/10/20 (金) 12:40:40) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/10/17 Tue 23:08:04
更新日:2024/03/19 Tue 08:05:37
所要時間:約 9 分で読めます




夢こそ、まこと



RAMPO(ランポ)(英:The Mystery of Rampo)』は、94年に公開された日本のファンタジー、ミステリー映画。
松竹映画、制作、配給。


【概要】

名探偵明智小五郎の生みの親であり、本格派から子供向けまで、数々の推理、冒険小説や幻想的な物語を著した他、海外の探偵小説の翻訳や新人作家の発掘にも尽力した日本ミステリー界勃興の立役者たる、探偵小説家江戸川乱歩の生誕100周年&松竹創業100周年を記念して制作された。

乱歩の著作の内から複数のタイトルが原作として挙げられてはいるが、それらの作品の映像化というよりは、乱歩の生きた当時と、乱歩の描いた猟奇耽異の世界を再現することに注力されている。

乱歩作品の映像化というと明智小五郎が主人公となる場合が多く、実際に本作にも本木雅弘が演じる明智小五郎が登場して来るが、主人公はあくまでも竹中直人が演じる江戸川乱歩自身であり、物語の大筋も乱歩が自分の作品から抜け出て来たような人物や事件との邂逅の末に現実と夢の境目が崩れ、乱歩が自らの創作の世界に誘われる……と云うものになっている。

当初はNHKのドラマ制作で実績のある黛りんたろう監督に依頼されて映画が完成されたが、その出来を30代半ばの若さながらも当時の松竹の名物プロデューサーとしてマスコミに発言を多く取り上げられ、業界内で高い発言力を持っていた奥山和由が気に入らず撮り直しを要求したが聞き入れられなかったことから、自らメガホンを取って70%もの追加撮影を敢行した末に別の映画として完成させている

こうして生まれた二つの『RAMPO』は、何と片方が封印されることもなく、別々の映画館で同時に封切られて、各々『黛バージョン』『奥山バージョン』としてソフト化もされた。
特に『奥山バージョン』では数々の実験的な試みが為されており、映像や舞台装置に意図的に当時に話題となっていたサブリミナル効果や1/fゆらぎ効果を盛り込んでいると喧伝され、映画館での上映時にも館内に香を炊く等、無意識の感覚下に訴え掛けるような演出も用いられている。

……これらの、サブリミナル等の効果については、現在では疑問視されている要素も多いものの、当時の世間を賑わせたオウム真理教の事件の影響等もあってか、WOWOWで放映された際には大幅にカットされる案件となっている。

尚、内容の面白さは勿論のこと、そうした話題性もあってかヒット作となった本作だが、後に奥山が松竹映画から放逐されたこと等の影響からか、他の奥山プロデュース作品と同じく公開以降のソフト化の機会に恵まれておらず、有名タイトルにも関わらず国内ではDVD化されていない等、現在では知る人ぞ知る隠れた名作となってしまっている。

両バージョンの評価としては解りやすいが些かドラマ的で安っぽいのが『黛バージョン』
解りにくいが重厚で魅力的なのが『奥山バージョン』とされている。
『奥山バージョン』では更に翌年に未公開シーンを加えて再編集し、千住明の音楽を加えた『インターナショナルバージョン』も発売された。

『黛バージョン』と『奥山バージョン』は内容的にはかなり違うので両バージョン(『インターナショナルバージョン』も加えれば三つ)を納めた円盤化がいつの日にか実現して欲しいものである。



【物語】

日本では初とも呼べる本格推理小説を執筆して認められ、その後も数々の猟奇的な事件を描いた作品により人気作家となったものの、戦時下の世相により著作が次々と発禁処分を受け、新作『お勢登場』も検閲により発禁処分となった江戸川乱歩(演:竹中直人)は失意の内にあった。

そんな中、乱歩を励まし、何とか新作を書かせようとする後輩で担当編集者の横溝正史(演:香川照之)が乱歩に奇妙な話を持ってくる。

発禁処分を受けたばかりの『お勢登場』……その、物語をなぞるように夫殺しを疑われ、世間に後ろ指を指される境遇にある美貌の寡婦……静子(演:羽田美智子)の噂話を。
横溝に乗せられるままに静子の姿を垣間見て虜となった乱歩は、静子本人との邂逅の中で彼女の境遇に同情。
そこで、今度は犯人として描いていたお勢=静子を救う目的で小説の執筆を開始。
静子を明智小五郎に救わせようとした乱歩だったが、イマジネーションの中の明智小五郎(演:本木雅弘)は乱歩に対して「指図は要らない」と言い放つ。

そして、乱歩の前から忽然と姿を消す静子……。
現実と空想の世界の境界が曖昧になる中で静子が自らの生み出した幻想の世界に囚われたことを知った乱歩は、彼女を救い出すべく自らも自らの幻想の中に旅立つのだった。

……そして、明智小五郎は静子が後妻として迎え入れられた大河原侯爵家に降り立つ。
果たして、明智は静子による侯爵殺害の謎を暴けるのか、そして、乱歩は静子を幻想の世界より救い出すことが出来るのか。

【主な登場人物】


明智小五郎(本木雅弘)
架空の名探偵。
乱歩が創造した存在であり、幻想の世界での分身の筈であったが、物語の中盤で乱歩を拒絶する。
果たして、その意図は……?
映画では宿敵怪人二十面相と共に、既に銀幕のヒーローとしても定着している存在のようである。

江戸川乱歩(竹中直人)
流行作家。
斯界の大御所として持て囃されてはいるが、当人は少年時代から変わらぬ夢見勝ちで繊細な精神の持ち主。
自らの夢の産物たる作品が次々と発禁処分を受けることに心を痛めており、そんな中で邂逅した美しい静子に惹かれていく。

横溝正史(香川照之)
雑誌編集者。
乱歩にとっては小説家としての後輩にあたるが、現在は乱歩の担当編集者として口喧しく煽り、いじけやすい乱歩の尻を叩いて原稿を催促する日々を送っている。
乱歩の気分転換になればと、様々な話を持ってくる。

■静子(羽田美智子)
美貌の寡婦で、発禁になったばかりの『お勢登場』のヒロインお勢のイメージに完全に合致して乱歩を動揺させる。
小説同様に夫殺しの疑いを掛けられて息詰まるような生活を送っており、そんな中で邂逅した乱歩の存在に安らぎを覚える。
物語の途中で現実世界から消失する。

■大河原侯爵(平幹二郎)
幻想の世界の住人。
静子を後妻として迎えていた。
傷付いた明智に興味を持ち、屋敷に逗留させる。

■オープニング・ナレーション(ブルース・ジョエル・ルービン)

【その他の登場人物】


■検閲課官吏(佐野史郎)
■帝室美術館門番 / カフェの主人(岸部一徳)
■骨董屋主人(江戸家猫八)
■執事藤森(高城淳一)
■運転手(チャーリィ湯谷)
■女中頭 / 根津界隈の主婦(樹木希林)
■円タクの運転手(マルセ太郎)


【ゲスト】

『奥山バージョン』では、一部キャストとスタッフの変更の他、要所やパーティーの出席者として当時の著名人が特別出演している(役名が当人を意識したものが多いのがミソ)。
普段の戦闘服のままでパーティーに混じっているルーク参謀や、乱歩好きで知られる大槻ケンヂが台詞付きで出演しているのはこっちのバージョンである。

■円タクの運転手(大槻ケンヂ)
■プロデューサー田川(三浦友和)
■ホテルのボーイ(加藤雅也)
■スチルカメラマン(別所哲也)
■歌手(阿部寛)

詩人(秋元康)
大興行主(荒戸源次郎)
女流画家(池田理代子)
文士(大下英治)
マダムR(奥谷禮子)
映画女優(菊池麻衣子)
二枚目俳優(木村一八)
出版社・総帥(見城徹)
河田町の御令嬢(河野景子)
工學博士(坂村健)
文豪(佐木隆三)
伯爵夫人(山東昭子)
侯爵夫人(残間里江子)
仏蘭西國・御令嬢(ジュリー・ドレフュス)
芸能評論家(須藤甚一郎)
新聞社社主(筑紫哲也)
大店・御曹司(堤康二)
山の手夫人(寺田理恵子)
女流作家(林真理子)
大店・御曹司のフィアンセ(早見優)
大スター(原田芳雄)
大日本帝國・陸軍将校(原吉実)
巨匠(深作欣二)
芸能評論家(福岡翼)
芦屋の御令嬢(水野晶子)
河田町の御令嬢(八木亜希子)
映画の明智小五郎(山口裕)
映画の怪人二十面相(吉川英一)
謎の大魔王(Sgt.ルーク篁III世参謀)
豪傑(若松孝二)


【ゲーム】

セガサターン初期に『RAMPO』として、アドベンチャーゲーム化。
『夢見館』風の推理アドベンチャーとして紹介されている。
本筋自体は映画とは関係無いが、竹中直人、香川照之、羽田美智子がゲームの方にも出演している他、映画の一場面がムービーとして流れる。
また、ゲームの方では渡辺典子がヒロイン兼、案内役としてプレイヤーを導く。

ポリゴン黎明期で、それも、ポリゴンが苦手と言われるサターンながらグラフィックの評価や短いながらもストーリーの評価は高く、知る人ぞ知る「隠れた名作」となっている。
扱う題材がややインモラルで、謎解きもそこそこ難しい為か18歳以上推奨。


【アニメパート】


『奥山バージョン』ではオープニングナレーションの追加や、前述の実験的な演出、豪華ゲストの特別出演の他、オープニング部分にスタジオ4℃制作の『お勢登場』のアニメーションが追加されている。


追記修正に夢中になりすぎて、ミイラになるなよ、明智君。

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