SCP-4065

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SCP-4065 - (2021/09/06 (月) 22:49:33) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2019/04/08 Mon 00:03:06
更新日:2024/04/17 Wed 18:20:48
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三人虎を成し、十夫椎をたわめ、衆口の移すところ翼毋くして飛ぶ。



SCP-4065 はシェア・ワールド SCP Foundation に登場するオブジェクトオブジェクトクラスは Keter。項目名は『Ancho(red) Reality』、日本語訳は『現実病』。財団製の認識災害系オブジェクトである。

財団製にもかかわらず Keter という時点で、何やら不穏な空気が漂っているが……。

はじめに―「現実性」について

このオブジェクトの内容を把握するには、財団世界ではお馴染みの「現実性」の理解が不可欠となっている。詳細は現実改変(SCP Foundation) を参照されたいが、ここでざっくりと説明する。

現実性とは、要するに「全知全能の度合い」である。現実性は「ヒューム値 (単位: Hm)」という数値で表され、現実性がどれだけ高いかは、「自分のヒューム値÷相手のヒューム値」で決まる。例えば自分が 3.0 Hm, 相手が 0.5 Hm ならヒューム値の比は 6.0 となり、相手の「現実」をそれだけ好きなように改変することができる。ちなみにヒューム値は「カント計数機」という装置で測定できる。

財団が収容しているオブジェクトには異常なヒューム値を持つものが多いため、財団は「スクラントン現実錨」というヒュームフィールドを安定化させる兵器を開発した。どうやらこれを使うとヒューム値を任意の値に設定できるようで、財団の機動部隊はたまにスクラントン現実錨を敵対的実体に打ち込んでその存在を消滅させたりしている。……そんなんアリなんですかね?

要点を並べると、

①現実性は「ヒューム値」という数値で表される。
②ヒューム値は「カント計数機」という装置で測定できる。
③財団は「スクラントン現実錨」という、ヒューム値を任意の値に固定するツールを所持している。

ということになる。

スクラントン現実錨、オブジェクトの項目名は『現実病』……駄洒落かな?


概要

前置きが長くなったが、オブジェクトの概要に移る。SCP-4065 は「SCP 財団のロゴを目視した実体に発動する認識災害」である。財団職員だろうと知的オブジェクトだろうと、要注意団体のメンバーだろうと、目視した時点で問答無用で感染する。そして SCP-4065 の対抗ミームは存在しない。つまり感染したら一発アウトである。ちなみに SCP-4065 の作成者は財団職員のスーザン・スクラントン博士。スクラントン……?

SCP-4065 に感染してしまった際にあらわれる症状は、「ヒュームフィールドなるものをスクラントン現実錨 (SCP-4065-1 に指定) で安定化できる」と思い込み、さらに「ヒューム値をカント計数機 (SCP-4065-2 に指定) で測定できる」と思い込むというもの。つまり、現実性などという概念は「みんなの思い込み」による産物だったのだ。SCP-4065-1 や -2 は実験設備や台所用品、デスクトップコンピューターなどから構築されており、場合によっては人間の遺体などが使われることもあるらしい。えー、スクラントン現実錨ってそんなんだったの……?
どうやら当初は知性の有る現実改変者を収容する手段として考案されたものだったらしく、現在でもSCP-4065に感染している異常存在が部分的な自己収容状態にあるとのことなので収容に対する効果は抜群だった様子。
しかし、ミームに感染するパラメータ(条件)を明確に定義していなかったせいで財団職員にも手当たり次第に感染、現在の状態に至る…とのことのようだ。やっぱりガバガバじゃねぇか!

スーザン・スクラントン博士が感染トリガーとして作成したのが SCP-4065-3、つまり財団ロゴである。財団が所有するスクラントン現実錨やカント計数機には、もちろん財団ロゴが刻まれている。つまり、財団の機動部隊やエージェントたちは、対象に財団ロゴを見せつけることでそれらの効果を発揮させていたということになる。ええ……。

SCP-4065 の影響を受けていない人物は、開発者のスーザン・スクラントン博士しか存在しない。博士は財団のドキュメントというドキュメントからロゴを一生懸命に消しているのだが、SCP-4065 の影響を受けた職員たちによってすぐに修正されてしまうとのこと。ああ、これは完全に Keter ですね。

ちなみに財団ロゴとは、SCP Wiki の上部左に大きく表示されている三本の矢印と円からなる図形である。読者の皆さんも一度は見たことがあるのではないだろうか。あっ……。

著者による解説

以上のように、SCP-4065 は財団の世界観を根底から覆すようなトンデモオブジェクトだが、本家 SCP Wiki にて、著者は次のように解説している。

「お前らスクラントン現実錨やらヒューム値やらを整合性なく乱用しすぎなんだよバーカバーカ!」(意訳)。

皆さんも、現実性やヒューム値の解説を読んで、なんとなく分かったけど釈然としない気持になったことはないだろうか。特にスクラントン現実錨は、もはや「誰でも何でも消滅させられる兵器」と化してしまっており、「そんなのアリなの?」と感じていた人も少なくなかったのではないかと思う。

著者はこの疑問に大胆にも「SCP 記事」という形で巧妙に切り込んでみせた。そのこだわりは強く、SCP-4065 のページだけ左上の財団ロゴが消されているという徹底ぶりである。そして「SCP 読者を含めみんな認識災害に感染していた」というコロンブスの卵的な解釈を提示して見せたのだ。

ちなみに、スクラントン現実錨の成り立ちについて書かれた記事は SCP-3001SCP-3326 などの名作が他にもあるが、著者は 「SCP-4065 はこれらとは別の宇宙に属するオブジェクトである」しており、それらには敬意を表明している。しかし、スクラントン現実錨やヒューム値が登場する他の記事は「Just Bullshit ("ただのゴミ"的な意味。原文ママ) である」と断言している。なんとも手厳しいが、独創性あふれる見事な発想がウケたのか、SCP-4065 は本家 SCP でも日本語翻訳版でも高評価を得ているようだ。

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