小さな王子(Lobotomy Corporation)

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小さな王子(Lobotomy Corporation) - (2023/08/16 (水) 08:14:51) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2020/06/25 Thu 11:49:15
更新日:2024/04/13 Sat 12:35:00
所要時間:約 10 分で読めます






私は他の人と違いあなたに声を届けることができる。
一歩ずつ、私に歩み寄ってください。
その歩みが続けば、到達するでしょう。






小さな王子とは、『Lobotomy Corporation』に登場するアブノーマリティである。

危険度クラスはWAW。一番上から二番目のクラスで、油断は禁物。







概要


職員たちからは、「巨大なキノコ」とも言われるアブノーマリティで、その評判に漏れず青黒いデカいキノコといった外見。
ただそれだけではなく、大きな青色の傘、紫色のリング、赤い指を持つ青い手が垂れ下がった二本の枝が付いているのが特徴。


なお、カメラを近づけると、なにやら「キン、キン、キン、キン……」といった金属音が響き渡るのも特徴。




特殊能力


小さな王子は、二つの特殊能力を保有する。



①クリフォトカウンターがゼロになると発動する。
クリフォトカウンターは以下の影響で減少する(初期値/最大値2)

・洞察以外の作業を三回以上行う(洞察作業を行えば作業カウントはリセット)
・作業結果が悪い

この特殊能力が発動すると、施設内にいるランダムな職員三名が魅了状態になり、収容室に引き寄せる。
いずれか一名が収容室に到達すると②の特殊能力が発動する。②が発動するか、魅了を全て解除するとカウンターは2に回復。
魅了状態になった職員は、顔に青い胞子が付着している。連続してクリックすることで速度を低下させ、最終的に魅了状態を解除できる。


この特殊能力を発動させないため、小さな王子のお世話をするなら洞察を定期的に行わせよう。自制が十分な値がある職員なら、毎回洞察でもOK。
もし発動させてしまった場合、魅了状態になってる職員を連続クリックすれば魅了を解除できる。ゲーム内速度が二倍速だとクリックしにくいため、一時的に一倍速に落としてから連続クリックしよう。
(事後処理でもなんとかできる分)それほど嫌な能力という訳でもない。迷惑ではあるが。





②以下のいずれかの条件を満たすとこの特殊能力が発生する。

・①の効果で魅了された職員が収容室に入る
・1日の間に任意のエージェントが小さな王子に対して作業を合計して5回行う

この特殊能力が発動すると、入室したエージェントが「小さな王子-1」というアブノーマリティ(もしくは、眷属)に変貌して死亡。
そして脱走する。


注意すべきなのは、「"合計"五回作業すると」問答無用で眷属に変えられてしまう、という点。
この連続作業カウントは、他のアブノーマリティの作業を行えば減少する(リセットするわけではないので注意)ので、小さな王子を世話するなら、ローテーションで職員に作業させよう。
ある程度連続して作業させてしまった場合、実はツール型アブノーマリティを使用してもカウントが減るという小技は覚えておいた方が良い。





小さな王子-1


小さな王子が、職員を胞子で感染させた結果、生まれる眷属のアブノーマリティ。
危険度クラスはHE。WAWの世話ができるエージェントなら問題なく鎮圧できるはず。

小さな王子-1は収容違反を犯してから、小さな王子の収容室前を徘徊する。この理由については後述。
職員を発見すると近づいて、尖った頭部で突き刺したり、腕部を叩きつけたりしてBLACKダメージを与える。
保有するHPは550程。

小さな王子-1を鎮圧すると、胞子が部屋の中に充満する。この時、同じ部屋にいる職員に微量のWHITEダメージを与え続ける。このダメージでMPが尽きた職員は特殊能力①のように魅了されるので注意。



ステータス


洞察にはレベル4以上で普通の反応を示し、それ以下だと低い。
本能愛着抑圧に対してはレベル3以上で普通寄りの反応を示し、それ以下だと最低の反応。

観測レベル3でギフト「胞子」を解禁。
装着効果は、MP +5、作業速度・成功率+2といったもの。
外見は胞子に塗れた……グローブ?みたいなもの。こんなもん嵌めて大丈夫か?

また、同時に防護服「胞子」を解禁。
WHITE耐性が強い代わりにBLACK属性に弱い防護服。

観測レベル4で、武器E.G.O「胞子」を解禁。
WHITE属性のそこそこの威力を持つ槍。特殊効果として、攻撃した際に敵のWHITE耐性を弱体化させる効果がある。




ストーリー


小さな王子は裸眼でも確認できるレベルの濃度の胞子を大気中に放出・充満させている。
一体全体、この胞子はなんなのか……収容当初では判断が及ばなかった他、小さな王子自身の見た目も好まれてるとはとても言えなかった。
結果として、大多数の職員がこのアブノーマリティを嫌悪している。

というわけなので、このアブノーマリティの観察を申し出る職員はごく少数だった、とのこと(少し前から、「魔法少女たちの事件」と呼ばれるものが起きてから、職員の意見が業務に反映されるようになった)。

で、色々ないざこざと長い期間を経てようやく得られたアブノーマリティの情報としては、この胞子は呼吸器系を介して他の生物に侵入する。一定数吸引してしまうと、まず身体中に腫瘍が発達し始めて、最終的には原型を留めぬ、青い腫瘍の塊の化け物と成り下がってしまう。
この段階になると、目に映るもの全てを攻撃するようになる。

……当然、脱走して敵対存在となったアブノーマリティは、鎮圧するのがロボトミー社の厳令である。それが例え、元職員であっても。

ただの、寂しがりやだったとしても。



カウンセリング・セッション記録-ジョン-


これは、「ある事件」の後にカウンセリングを受けた職員ジョンの会話記録である。
「ある事件」の被害及び鎮圧を担当した職員だったため、恐らくアフターフォローとしてカウンセリングを受けた。
それが記録までされるということは、このアブノーマリティの本質を如何に表しているかの重要な資料となりえたからだろう。

まず記録は、ジョンが重要な関連性を持つとされる「ある職員」のことについて語るところから始まる。


本当に無口な男だった。
アイツは、俺達が話しかけるのを期待しているように、横目で見ているような男だった。

そう、あいつは変なところがあった。
あいつがキノコの作業を志願してたが、あの不快なキノコのどこがいいのか全くわからなかった。
あいつがキノコの収容室で異常に長い時間を過ごすことも不穏の種だった。
収容室からどんな恐ろしい物を持ちだしてくるか、誰に分かるっていうんだ?


ジョンによると、件の職員は無口な男だが、その実、結構寂しがり屋だったのかもしれない。ジョン達が話しかけるのを期待していたところがあるようだ。

それだけならまだいいが、なんと件の職員は嫌われている筈の「小さな王子」……巨大なキノコの作業に志願したのだという。
しかも、その収容室の中で長い時間を過ごしていて……ああもうこれ、SCPで言うならもう完全にダメな奴だよ。
この時点で嫌な予感しかしないが、次に進めることにする。


キノコと友人になったなんて馬鹿げた話をした時に、あいつもついにおかしくなったと思ったもんだ。
けど、それはよくあることだ。いろんな事がここじゃ起きる。
どっかの職員が狂っているなんてのは大したことじゃあない。
精神鑑定を受けるようそれとなく言ったが、あいつは見下したような表情をするだけだった。
それはまるで俺達の知らない何かを知っているかのようにも感じた。


キノコと友人になってしまった件の職員君。でも、ロボトミーではよくあることだと思い、ジョンは精神鑑定を受けるよう言う。
しかし、それに対し彼は見下したような態度を取った。……ただ気が狂ったにしては様子が妙だが……?


数日後、皆が知っているように、あいつは逝っちまった。
アレはあいつだったと言ったっけか?
アレの額のあざ。
もしその傷跡を見つけられなかったら、アレがあいつだと思わなかっただろう。
俺を除いて、誰もあざがあることは知らなかった。
何しろ、あいつには友人がいなかったから。

……嫌な予感、的中。
彼は、キノコの影響で怪物に変貌してしまい、そして他の職員によって鎮圧されてしまった。
だが、ジョンだけは、その怪物が件の職員であることに気がついた。額にあざがあったのを知っていたのはジョンだけ……となると、友人とまではいかないまでも、全職員の中で彼と一番交流があったのはジョンなのだろう。


バケモノになった後のあいつは、巨大なキノコの収容室の周りをうろつくばかりだった。
あいつは目のに映るすべてを攻撃したので、俺達は人のいない場所にあいつを誘い込もうとした。
だが、あいつは死の瞬間まで、その場から10メートルも離れなかった。

だから俺達はアブノーマリティの呼び名を変えることにした。
キノコと友人になったことの同情、そしてあいつの悲劇的な死を追悼する入り混じった理由で。

「キノコと友人になった」……この言葉に、嘘偽りはなかったのだろう。少なくとも、彼の中では。
化け物にされた後も彼は、キノコのアブノーマリティを、自分の一番の友人だと思いこんで守ろうとした。
自分が殺される最期の瞬間まで。
そして、キノコのアブノーマリティは、この事件の真の犠牲者たる彼に対する追悼の意味合いを兼ねて、「小さな王子」と名前が変更された。
人にとって一番大切な、目に見えないものすらも、自らの道具としてしまう小さな王子として。


あいつはいつも友人は必要ないと言っていたが、俺はそれが嘘だとを知っていた。
あいつには友人が必要だった。
それがあいつが感染して幻覚でおかしくなり、バケモノになっていることを知らなかった理由だ。
キノコは繁殖の道具にするために哀れなあいつを手懐けた。
誰も名前が分からなかった、アレックスを……

アレックス。それが件の職員の名前。
……カウンセリングの場でこのようなことを吐露しているということは、ジョンも後悔しているのだろう。
何故、アレックスともっと早く友人になってあげられなかったのか、と……。




<職員アレックスのメモ書き>



これは、小さな王子の眷属となって死亡してしまったアレックスが遺していたメモ書きだ。これも、小さな王子を知る上で重要な情報なのだろう。以下から、中略を挟みながらも列挙していく。


人の心は余りにも儚い。ゆえに人はありのままを表わすことができないものです。
シャコには人間が見ることのできない何百もの色を見ることができることをご存知ですか?
これは、見えるものだけを信じて判断することが有害であるという私の主張を説明する簡単な例です。

確かに、私には友人が多くありません。
誤解しないでいただきたいのですが、私は友人を「作れない」のではなく「作らない」のです。
私達は、人間として、互いを理解していません。
人は自分自身を完全に孤立した存在とみなしすため、他者の完全な理解は不可能になっています。
しかし、皮肉なことに、進化の過程で群衆心理の本能は受け継がれてきました。
決して理解できないのに理解しようとする矛盾した行動をアピールする。
そんなお互いの領域を守ったままのきわどい綱渡り遊びを人間は繰り返しています。


自分と他者は、決して理解し合うことができない。
なのに、人々は相手のことを分かったふりをする。それは相手は同じで、相手も自分のことを分かったふりをする。
いつ均衡が崩れるか分からない、人と人との欺瞞で満ちた関係。


私はこの意味ない遊びに早くも飽きてしまいました。
それが私が巨大なキノコの観察を志願した理由です。
誰もそのアブノーマリティに近づきたがりませんでした。
それが、彼らの目にどれほど不快で異質な外見に映っているかは些細な問題でしかありません。
事実、私が仕事をすると言ったときに、皆が私に驚いたことに優越感を覚えました。


……しかし、いや、だからこそアレックスは、小さな王子に近づいた。彼は、人と関係を築くことに飽きてしまった。
だから、人でなければいいじゃないかと、小さな王子と交流を始めてしまったのだ
「友人」ではなく、「友達」を作ることを目的として。
寂しがりやで、哀れな彼は……人以外に救いを求めてしまった。


この後の記述は、彼がどう小さな王子を観察していったかについてなので、少し中略させて頂く。
で、その結果どうなったかというと、


私は彼に近づきたかった。彼の一部になりたかった。
私は常に彼のことを考えていて、彼の収容室に入ることを心待ちにしていた。
私は彼に帰属していたかった、彼の世界を理解したかった……
私の心は開花する前のつぼみのようで……
私はゆっくりと飼い慣らされて……


皮肉なことに、彼自身がそう感じたように……小さな王子に飼いならされてしまっていた。




<記録からの抜粋>



この記録は、監視カメラが「アレックスの事件」の直前に、収容室にて捉えたアレックスの音声だ。
因みに映像自体は、胞子によって覆われていたため映ってなかったという。……映されて見せられても困るが。
この時のアレックスの発言を推察するに、どうやら胞子には幻覚作用があるようだ。

……と、言うのも。音声分析を行った結果、アレックス以外の声は確認できなかったとのこと。
つまりアレックスは、幻覚の中で小さな王子を友人だと思い、幻覚の中の友情に生きて、散っていったのだ。

この記録を捉えてから数時間後、アレックスは狂気的な状況に陥り(恐らく眷属と化した)、他職員に射殺された。


いや、私には友人はいない。
前に言ったように、私はそのような矛盾した関係を好んではいない。
しかし少なくとも、あなたは私の同胞になりえると思う。
人間の言葉は単純すぎる。
私はこの関係を何と呼んでいいか説明することはできない。
不承だが「友人」と呼ばざるをえないとも思っている。


幻覚の効果で多幸感が出ているためか、かつては遠下げていた「友人」という表現まで再び使い始めるアレックス。
自分で「矛盾している」表現だと感じながらも、それでも幻覚の中の友人を大切に思っていることが分かる。


そう。私は、あなたにとってただ一人の友人となりえる人間だ。

私はあなたを受け入れよう。
あなたは私の人生を変えた。
私は鬱々とした生涯を送っていた。
そして、どうすべきか分からず誰とも話さなかった。
私はただ働いていただけだった。
しかし、あなたは私が捨て去った私自身を連れて来てくれた。
私自身が知っている以上に、あなたは私を理解してくれていると感じた。
私があなたの本質を見たように、あなたは私の本質を見てくれた。
そう、それは本当に……狂喜した体験でした。
私は、もっとあなたを知りたい。あなたを愛したい。あなたになりたい。
私は人間に生まれて、退屈な人生を送って……
あなたがいなかったたら死ぬまでそのままだったかもしれない。
私は、あなたに出会えて幸せです。


幻覚の友人に、本音を吐露するアレックス。
彼は誰かに理解して欲しかった。
彼は誰かに本質を見てほしかった。
偽りの関係など欲しくない。そう言っていたが、根っこの部分の本当の意見は、「本当の自分を見て欲しい」という、切実な願いだったのだ。


これが私の呪いであっても、私はこの呪いを祝福として愛するだろう。
私の心が砕けて崩壊する日まで、あなたのことを考えよう。
私は遠い宇宙から来た唯一の友人を思い、目を閉じよう……

(アブノーマリティはわずかな換気音を立てて、静かになる)

アレックスは、幸せだったのかもしれない。
唯一にして、最高の友人を持てた。真の理解者がいることが、どんなに素晴らしいことか。
彼は噛みしめることができたからだ。

だが、皮肉である。

彼が一番嫌っていた、「欺瞞の関係」に生きて、消えてしまったのだから。

そして何より、ジョンを始めとした多くの職員に悲しみを遺してしまったのだから……。




余談



  • 「小さな王子」の元ネタは、大人が読む児童書とも言われる「星の王子さま」の王子。ストーリーの他に、小さな王子のフレーバーテキストに「キツネは言いました。『一番重要なことは見ることができないんだよ。』」というものがあるのでほぼ確実だと思われる。
  • Lobotomy Corporationの開発元であるproject moonによると、小さな王子は宇宙から来たアブノーマリティであるらしい。
  • 特殊能力②が発動して小さな王子-1に変形している時、収容室をよく見ると小さな王子が変形している。どうやら、これが真の姿であるようだ。



追記修正は、友人のことを思いながらお願いします。

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