必殺仕置人(時代劇)

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&font(#6495ED){登録日}:2010/08/05(木) 21:43:36 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 4 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){&font(b,i){のさばる悪をなんとする}} #center(){&font(b,i){天の裁きは待ってはおれぬ}} #center(){&font(b,i){この世の正義も}} #center(){&font(b,i){あてにはならぬ}} #center(){&font(b,i){闇に裁いて仕置する}} #center(){&font(b,i,#ff0000){南無阿弥陀仏}} #right(){語り:芥川隆行} &bold(){『必殺仕置人』}は朝日放送と松竹が制作。 1973年(昭和48年)4月1日から同年10月13日まで、全26話がABC/TBS系列で放映された日本の時代劇。 御存知[[中村主水]]が初登場した、主水シリーズの一作目でもある。 *【制作の経緯】 目標であった『木枯し紋次郎』を仕掛け((元々、同時間帯で圧倒的な視聴率を誇っていたフジの紋次郎に対抗するべくスタートしたのが『必殺仕掛人』であり、実際に視聴率、人気を逆転させたことを仕掛人の番組内容に掛けて新聞で表現された言葉。))、関係者の予想以上に好評を博していた前作『必殺仕掛人』が、題材を得た『仕掛人 藤枝梅安』の原作者である池波正太郎からの申し入れを受けた事で終了を余技なくされてしまった事により、金を貰って人を殺すというコンセプトを引き継ぎつつ、TVオリジナルの企画として制作された。 当初から登場を予定され、役者も決められていた念仏の鉄と棺桶の錠の二人に加え、企画を練る中で「仲間に同心を加えたい」と考えた山内久司プロデューサーの発案を受けて&bold(){“人殺しをする警官”}をコンセプトに、普段は冴えない同心だが、実は天才的な剣豪であるという中村主水が設定された。 この役を演じられるのは藤田まこと以外には居ないと考えていた山内だったが、朝日放送では『てなもんや三度傘』以来ヒット作に恵まれず、悪く言えば一発屋である藤田の起用には消極的だったという。 しかし、主水の設定を練るのにも協力した監督の深作欣二の賛同もあって、主水役は山内の希望通りに藤田に決まった。 尚、企画がかなり進行していた中での追加であった為か、藤田に打診されたのは番組スタート間近だったらしく、藤田は「スタッフは他の有名俳優にも主水役を打診したが、家庭で嫁姑にいびられる情けない役どころを引き受ける人間が誰もおらず、最終的に自分のところに回ってきた。依頼から撮影までが、たった一週間だったのが合点がいった」と語っていたが、山内プロデューサーの回想とは食い違いがあり、藤田に期待をかけるが故にプレッシャーをかけるつもりで言われた冗談を藤田が真に受けての話であったのかもしれない。 こうしてスタートした『必殺仕置人』は、三人の主人公を始め、敵、味方共にアクの強いキャラクター達の織り成す濃密なドラマと過激な仕置描写のインパクトもあり、前作以上の人気を獲得。 中でも、番組が進行していく中で強烈な魅力を放った中村主水は、シリーズの危機を救うためにタイトルを越えて再登板させられる中で【必殺シリーズ】その物の顔となっていった。 主水ばかりでなく、鉄と錠のキャラクターも後々までの別の殺し屋達の雛型となったと研究される等、本作はその後のシリーズの多くのフォーマットを作り上げた。 そうした意味でも、シリーズ中でも特に重要な作品の一つであると云える。 尚、人気作ながら当初の予定通り全26話で放送を終了しているのは後述の『[[必殺仕置人殺人事件]]』による謂れのないバッシングの影響である。 *【ストーリー】 外道仕事を率いていた裏社会の大物、闇の御前が処刑された。 ……しかし、やくざ者に追われていた貧しい田舎娘“お咲”を助けた棺桶の錠は、彼女の口から意外な事を聞く。 処刑され、晒し首になったのは行方不明となった自分の父親だ…と。 二人の会話に首を突っ込んだ念仏の鉄は、知己のある北町奉行所同心の中村主水に協力を依頼する。 巨大な陰謀の影を感じて弱腰になった主水だが、鉄や錠の言葉に煽られ燻っていた正義感を刺激されると、懇意にしている裏社会の大物、天神の小六に協力を依頼して闇の御前が生きていることと、その正体が自分も見知っていた人物であることを突き止めるのだった。 こうして、闇の御前の正体から、奉行をも巻き込む事件の真相を知った主水達は結託。 策と腕で巨悪を仕置した彼等は、市井の力無き人々の願いを受けて、悪以上の悪となって恨みを晴らす仕置人稼業をスタートさせるのだった。 *【主な登場人物】 -&b(){[[念仏の鉄]] } 演:山崎努 かんのん長屋に住む骨接ぎ師で、島帰りの破戒僧。 本作の事実上の主人公で、余り目立たない回もあるが全話に登場するのは鉄だけである。 元は上州は宗慶寺の歴とした坊主であったが、檀家の妻女との不義密通の廉によって佐渡に島送りにされた。 未だに頭を丸めた僧形のままで、経を読むことも出来ることからか“念仏”の二つ名で呼ばれるが、とっくの昔に信心は忘れた享楽主義者で無類の女好き。 主水同様にちょいワル親父であるためか世の中に対してはかなりドライであり、後で頼み人になるのを知らないとはいえ、不幸な人間を茶化したり嘲笑うような面もある。 一方で、自分の身の上について余り頓着せずに達観しているような様子も見られるが、地獄の佐渡にだけは二度と行きたくない様で、そんな話が出たときばかりは激しく狼狽していた。 魔物と称される指使いは殺しばかりか、女を悦ばせるのにも使われ、触っただけで花札の絵柄を読み取れる程に繊細である。 主水と違って正式な武道を習った訳ではないが、喧嘩師としての実力を発揮する場面も少なくない。 相手の腕を滅茶苦茶に捩ったり、背骨をずらして半身不随にしたりと描写も残酷だが、相手は外道ばかりなのでそれがいい。 >&b(){殺し技} 人体や戸板程度ならば簡単にぶち抜ける程に強力な指の力を利用して、相手の首の骨を破壊したり、指で挟んだ背骨をずらしてしまえる“骨外し”が武器。 接骨術は佐渡の穴蔵で自分と仲間を救うために見よう見まねで覚えた技であるが、表稼業の骨つぎについては骨休めの札がかけることも珍しくない等、腕の良さの反面、やる気のなさだけに留まらず、仕置人になる以前からの人には言えない裏の仕事への関与が窺える。 本作での主な殺し技は喉骨の破壊なのだが、殺し以外にも相手の動きを封じる目的でも骨外しが使われており、特に背骨をずらして意図的に半身不随にする技は治してやるのを条件に悪党に証文を書かせたりと、単純な殺し以上の“仕置き”を行うのに利用された。 ある外道ヤクザの仕置きの際には利き腕をめちゃくちゃに破壊しただけで放置し、元々の人望の無さから手下が裏切るように仕向けたりと、直接に手を下すより残酷な結果になるであろう手段をとったこともある。 普段の喧嘩で使うこともあり、殺すまではしないとはいえ相手がヤクザ者ならば不具にすることも平気でする等、鉄にやられると後が悲惨である。 -&b(){[[棺桶の錠]]} 演:沖雅也 かんのん長屋に住む朴訥な性格の若い棺桶職人で、日がな一日棺桶作りに精を出している。 琉球出身の唐手使いで故郷の歌をよく口ずさんでいるが、まともな教育を受けておらず字が書けない身の上だった。 長身で超人的な身体能力の持ち主であり、遥か高くに飛び上がっての蹴りが得意で潜入なんかもお手の物。 屋根や高い木の枝にも一つ飛びで、塀を飛び越えて侵入して仕置きを行ったこともある。 仕置人の結成の切っ掛けが錠の理不尽に対する義憤からだったりと、世の中に見切りを付けて斜に構えている鉄や主水とは違い、若者らしい正義感と反骨心の持ち主。 また、美形なので女性からは注目されるが基本的に相手にせず、関わりを持った相手といい感じになったことはあるが手をだすようなことはせず、そんな相手も過酷な運命から命を落としたり、江戸以外の何処かへと去っていったり、岡場所で身を売る運命となる(その中で第1話に登場した貧しい田舎娘のお咲は恨みである父の無念を錠達に晴らしたが、最後は岡場所で身を売って女郎へと変貌する運命になってしまう〈他のシリーズや必殺シリーズ以外のシリアスな時代劇においても一部の年頃の町娘や田舎娘はそう事になっている。場合によってはこのまま岡場所で自害し果てたり、悪人に手篭めにされて逆上または家族や恋人などの仇を打とうとするも返り討ちになる事がある〉。可哀そうであるが、本作品含む必殺シリーズに登場するゲスト被害者達は恨みを晴らしても、結末はほとんどバッドエンドである)。 当初は役人である主水を信用していなかったが、仕事を通じて信頼関係を築いていった。(初期のエピソードにて敢えて不味い所を追求されないように主水が二人を捕縛して捕らえられた際、拷問を受けたことに腹を立てて主水が仕置人であることをバラしてやると言っていたのを鉄と小六に窘められていたのが、後半のエピソードでは全く同じ状況だったのに、自ら主水自身に軽口交じりに「いつまでいればいい?」と聞いていること等。) 武器は金属製の筒(鏨)を変型させた手槍。 >&b(){殺し技} 懐に隠せる程の大きさのアタッチメント式の手槍を利用した刺殺。 手槍を組み換える時の“ギリ…ギリ…”という音が仕置き相手の恐怖と視聴者の興奮を煽った。 得意の跳躍を活かした上からの刺殺が多いが、組ついて背後から延髄を刺すパターンもある。 剣豪相手には左手に小型の盾を装備して刃をかわし、三角跳びからの刺突を決めた。 『必殺仕事人Ⅴ』から登場した政は、加治屋にギミックチェンジしてから木製という違いはあるものの同一機構の手槍を使っている。 -&b(){[[中村主水]]} 演:藤田まこと 北町奉行所同心だが、市井から少額の袖の下をもらうことに腐心し、検挙実績も挙げられない昼行灯の婿養子と、仕事場でも家庭でもバカにされる存在だが、その実は天才的な剣豪。 かつて、役人として思い描いていた理想を奉行所と市井の癒着による腐敗を目の当たりにして打ち砕かれた過去を持ち、たまにやる気を出しても裏金を貰っている上司に潰されたりと張り合いのない日々を過ごしていた。 江戸に来る前は佐渡で同心見習いをしており、そのときに罪人だった鉄と出会い、個人的な親交を深め互いの腕も知っていた。 そうした意味では、鉄は本当の顔を見せられる貴重な相手であった。 その鉄から錠の件で相談を受け、燻っていた正義感が刺激されたことで調査を開始。 こうして、上司である与力どころか北町奉行が関わっていた大掛かりな不正を暴いて仕置を成功させると、信用の於ける仲間達と共に仕置人を続けていくことを決めたことが長い長い裏稼業の始まりとなった。 基本的には仕置人チームの参謀として、依頼の窓口や作戦立案、役人の立場を利用しての鉄と錠の仕事のバックアップを行う。 そのため、元締め的な役割もある本作では優れた剣技を見せる機会は少ないが、殺しを行う回のインパクトは凄まじい。 尚、この頃はあまり酒が飲めないという設定であり、替わりに懐に大福を忍ばせていたり、団子を頬張っていたりといった描写が多い。 >&b(){殺し技} 二本差しを利用した斬擊や刺突で、上記の様に本作では殺しに参加する回は少ないものの、一瞬の早業で二人を切り捨てる等、剣の冴えは凄まじい。 一度だけ十手による集団の撲殺と刺殺を見せた回もある。 また、記憶力や洞察力に優れ、僅かに顔色が変わったのを見ただけでおおよその真相を看破したり、役人の立場を利用して口八丁手八丁で仕置をバックアップしたりと殺しはせずとも活躍は多い。 -&b(){おひろめの半次} 演:津坂匡章/現・秋野太作 口から生まれて来たを公言する瓦版屋。 バックアップ担当。 調子の良いコメディリリーフ的存在だが人情に弱く、半人前扱いされる事に反発する事もある。 美人に弱く、半次の優しさもあってかいい感じになった相手もいたが、何れも頼み人になるような不幸な身の上で悲恋に終わっている。 -&b(){鉄砲玉のおきん} 演:野川由美子 かんのん長屋に住む女スリで、気っ風のいい姐さんタイプ。 同じくバックアップ担当で美貌を活かした潜入も多い。 -&b(){天神の小六} 演:高松英郎 裏社会の大物中の大物だが、命を狙われたりと煩わしい娑婆に居るよりは良いと自ら牢に入り、顎で見張りを使う牢名主となっている。 昼行灯を装いながら、その実力を見抜いた主水とは器量を認めあった仲で、主水達が仕置人となってからは後見人的存在を努める。 -&b(){中村せん} 演:菅井きん 主水の姑。 この頃の主水いじめは辛辣である。 -&b(){中村りつ} 演:白木万理 主水の妻、婿養子の主水への風当たりはかなり強い。 ※二人合わせて&bold(){「戦慄」}になるのは有名な話。 *【余談】 好評を博し、延長も検討された本作だが、中村主水や念仏の鉄といった人気キャラクターを擁しながらも、結局は予定通りの全26話で放送を終える事になった。 所謂[[必殺仕置人殺人事件]]の影響によるもので、結局は全く関係が無かったのだが、各方面の批判もあり、打ち切りも検討されたのだと云う。 …スポンサーからの要望もあり、内容を多少ソフト化する事で予定通りの放送期間を終える事になったものの、番組中盤のパワーダウンは否めないとのファンの声もある。 尚、仕置人殺人事件については事件時TVを見てさえおらず。供述の中で必殺が好きだと答えた事を殊更に取り上げられただけとの話もあり、事実、後に犯人は自分はTVに影響される様な簡単な人間では無いと語っている。 供述の話が本当ならば事件名その物が言い掛かりの類の話である。 ※[[必殺仕置人殺人事件]]については項目もある様なのでそちらも参考にして下さい。 #center(){&font(b,i){仕置き 法によって処刑する事を江戸時代こう呼んだ}} #center(){&font(b,i){しかしここにいう仕置人とは 法の網をくぐってはびこる悪を裁く闇の処刑人のことである}} #center(){&font(b,i){ただしこの存在を証明する記録、古文書の類は一切残っていない}} 追記、修正しねぇ奴ぁぶっ殺してやる!! 必殺シリーズ 第2弾【必殺仕置人】 前作←【[[必殺仕掛人>必殺仕掛人(時代劇)]]】 次作→【助け人走る】 #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,4) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - 前作仕掛人や後続のシリーズに比べても好き放題やり放題感がかなり好き。「金を貰って悪人を殺す極悪人」って点では一番説得力がある。欲を言えば社会的抹殺or死ぬより辛い生き地獄な仕置ももっと見たかった。 -- 名無しさん (2016-03-08 19:49:49) - ↑初期路線貫けてたらモット評価が高かったでしょうな。中盤以降の主水が目立ってきてからの展開も好きだけど -- 名無しさん (2016-03-08 20:24:19) - この頃は景気が良いのか二十両とかポンと出るよな。その割には金が無いとか言うけども -- 名無しさん (2017-01-10 20:58:55) - 大元の「仕掛人」だと数十両とか動くからその影響がまだあったかな。(そっちの依頼人(起こり)は恨みを飲んだ庶民よりも腹黒いエラい人のことが多い) -- 名無しさん (2017-06-15 17:41:51) - シリアスな笑いってこういう事を言うんだよと分かってない奴に教えたい -- 名無しさん (2020-03-20 21:36:47) - 念仏の鉄が悪人を気絶させて偽の入れ墨を入れて罪人に仕立て上げて社会的に抹殺するというのは何回? -- 名無しさん (2020-04-10 10:40:51) - ↑第21話。生木をさかれ生地獄 -- 名無しさん (2020-06-21 18:02:05) #comment #areaedit(end) }
&font(#6495ED){登録日}:2010/08/05(木) 21:43:36 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 4 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){&font(b,i){のさばる悪をなんとする}} #center(){&font(b,i){天の裁きは待ってはおれぬ}} #center(){&font(b,i){この世の正義も}} #center(){&font(b,i){あてにはならぬ}} #center(){&font(b,i){闇に裁いて仕置する}} #center(){&font(b,i,#ff0000){南無阿弥陀仏}} #right(){語り:芥川隆行} &bold(){『必殺仕置人』}は朝日放送と松竹が制作。 1973年(昭和48年)4月1日から同年10月13日まで、全26話がABC/TBS系列で放映された日本の時代劇。 御存知[[中村主水]]が初登場した、主水シリーズの一作目でもある。 *【制作の経緯】 目標であった『木枯し紋次郎』を仕掛け((元々、同時間帯で圧倒的な視聴率を誇っていたフジの紋次郎に対抗するべくスタートしたのが『必殺仕掛人』であり、実際に視聴率、人気を逆転させたことを仕掛人の番組内容に掛けて新聞で表現された言葉。))、関係者の予想以上に好評を博していた前作『必殺仕掛人』が、題材を得た『仕掛人 藤枝梅安』の原作者である池波正太郎からの申し入れを受けた事で終了を余技なくされてしまった事により、金を貰って人を殺すというコンセプトを引き継ぎつつ、TVオリジナルの企画として制作された。 当初から登場を予定され、役者も決められていた念仏の鉄と棺桶の錠の二人に加え、企画を練る中で「仲間に同心を加えたい」と考えた山内久司プロデューサーの発案を受けて&bold(){“人殺しをする警官”}をコンセプトに、普段は冴えない同心だが、実は天才的な剣豪であるという中村主水が設定された。 この役を演じられるのは藤田まこと以外には居ないと考えていた山内だったが、朝日放送では『てなもんや三度傘』以来ヒット作に恵まれず、悪く言えば一発屋である藤田の起用には消極的だったという。 しかし、主水の設定を練るのにも協力した監督の深作欣二の賛同もあって、主水役は山内の希望通りに藤田に決まった。 尚、企画がかなり進行していた中での追加であった為か、藤田に打診されたのは番組スタート間近だったらしく、藤田は「スタッフは他の有名俳優にも主水役を打診したが、家庭で嫁姑にいびられる情けない役どころを引き受ける人間が誰もおらず、最終的に自分のところに回ってきた。依頼から撮影までが、たった一週間だったのが合点がいった」と語っていたが、山内プロデューサーの回想とは食い違いがあり、藤田に期待をかけるが故にプレッシャーをかけるつもりで言われた冗談を藤田が真に受けての話であったのかもしれない。 こうしてスタートした『必殺仕置人』は、三人の主人公を始め、敵、味方共にアクの強いキャラクター達の織り成す濃密なドラマと過激な仕置描写のインパクトもあり、前作以上の人気を獲得。 中でも、番組が進行していく中で強烈な魅力を放った中村主水は、シリーズの危機を救うためにタイトルを越えて再登板させられる中で【必殺シリーズ】その物の顔となっていった。 主水ばかりでなく、鉄と錠のキャラクターも後々までの別の殺し屋達の雛型となったと研究される等、本作はその後のシリーズの多くのフォーマットを作り上げた。 そうした意味でも、シリーズ中でも特に重要な作品の一つであると云える。 尚、人気作ながら当初の予定通り全26話で放送を終了しているのは後述の『[[必殺仕置人殺人事件]]』による謂れのないバッシングの影響である。 *【ストーリー】 外道仕事を率いていた裏社会の大物、闇の御前が処刑された。 ……しかし、やくざ者に追われていた貧しい田舎娘“お咲”を助けた棺桶の錠は、彼女の口から意外な事を聞く。 処刑され、晒し首になったのは行方不明となった自分の父親だ…と。 二人の会話に首を突っ込んだ念仏の鉄は、知己のある北町奉行所同心の中村主水に協力を依頼する。 巨大な陰謀の影を感じて弱腰になった主水だが、鉄や錠の言葉に煽られ燻っていた正義感を刺激されると、懇意にしている裏社会の大物、天神の小六に協力を依頼して闇の御前が生きていることと、その正体が自分も見知っていた人物であることを突き止めるのだった。 こうして、闇の御前の正体から、奉行をも巻き込む事件の真相を知った主水達は結託。 策と腕で巨悪を仕置した彼等は、市井の力無き人々の願いを受けて、悪以上の悪となって恨みを晴らす仕置人稼業をスタートさせるのだった。 *【主な登場人物】 -&b(){[[念仏の鉄]] } 演:山崎努 かんのん長屋に住む骨接ぎ師で、島帰りの破戒僧。 本作の事実上の主人公で、余り目立たない回もあるが全話に登場するのは鉄だけである。 元は上州は宗慶寺の歴とした坊主であったが、檀家の妻女との不義密通の廉によって佐渡に島送りにされた。 未だに頭を丸めた僧形のままで、経を読むことも出来ることからか“念仏”の二つ名で呼ばれるが、とっくの昔に信心は忘れた享楽主義者で無類の女好き。 主水同様にちょいワル親父であるためか世の中に対してはかなりドライであり、後で頼み人になるのを知らないとはいえ、不幸な人間を茶化したり嘲笑うような面もある。 一方で、自分の身の上について余り頓着せずに達観しているような様子も見られるが、地獄の佐渡にだけは二度と行きたくない様で、そんな話が出たときばかりは激しく狼狽していた。 魔物と称される指使いは殺しばかりか、女を悦ばせるのにも使われ、触っただけで花札の絵柄を読み取れる程に繊細である。 主水と違って正式な武道を習った訳ではないが、喧嘩師としての実力を発揮する場面も少なくない。 相手の腕を滅茶苦茶に捩ったり、背骨をずらして半身不随にしたりと描写も残酷だが、相手は外道ばかりなのでそれがいい。 >&b(){殺し技} 人体や戸板程度ならば簡単にぶち抜ける程に強力な指の力を利用して、相手の首の骨を破壊したり、指で挟んだ背骨をずらしてしまえる“骨外し”が武器。 接骨術は佐渡の穴蔵で自分と仲間を救うために見よう見まねで覚えた技であるが、表稼業の骨つぎについては骨休めの札がかけることも珍しくない等、腕の良さの反面、やる気のなさだけに留まらず、仕置人になる以前からの人には言えない裏の仕事への関与が窺える。 本作での主な殺し技は喉骨の破壊なのだが、殺し以外にも相手の動きを封じる目的でも骨外しが使われており、特に背骨をずらして意図的に半身不随にする技は治してやるのを条件に悪党に証文を書かせたりと、単純な殺し以上の“仕置き”を行うのに利用された。 ある外道ヤクザの仕置きの際には利き腕をめちゃくちゃに破壊しただけで放置し、元々の人望の無さから手下が裏切るように仕向けたりと、直接に手を下すより残酷な結果になるであろう手段をとったこともある。 普段の喧嘩で使うこともあり、殺すまではしないとはいえ相手がヤクザ者ならば不具にすることも平気でする等、鉄にやられると後が悲惨である。 -&b(){[[棺桶の錠]]} 演:沖雅也 かんのん長屋に住む朴訥な性格の若い棺桶職人で、日がな一日棺桶作りに精を出している。 琉球出身の唐手使いで故郷の歌をよく口ずさんでいるが、まともな教育を受けておらず字が書けない身の上だった。 長身で超人的な身体能力の持ち主であり、遥か高くに飛び上がっての蹴りが得意で潜入なんかもお手の物。 屋根や高い木の枝にも一つ飛びで、塀を飛び越えて侵入して仕置きを行ったこともある。 仕置人の結成の切っ掛けが錠の理不尽に対する義憤からだったりと、世の中に見切りを付けて斜に構えている鉄や主水とは違い、若者らしい正義感と反骨心の持ち主。 また、美形なので女性からは注目されるが基本的に相手にせず、関わりを持った相手といい感じになったことはあるが手をだすようなことはせず、そんな相手も過酷な運命から命を落としたり、江戸以外の何処かへと去っていったり、岡場所で身を売る運命となる(その中で第1話に登場した貧しい田舎娘のお咲は恨みである父の無念を錠達に晴らしたが、最後は岡場所で身を売って女郎へと変貌する運命になってしまう〈他のシリーズや必殺シリーズ以外のシリアスな時代劇においても一部の年頃の町娘や田舎娘はそう事になっている。場合によってはこのまま岡場所で自害し果てたり、悪人に手篭めにされて逆上または家族や恋人などの仇を打とうとするも返り討ちになる事がある〉。可哀そうであるが、本作品含む必殺シリーズに登場するゲスト被害者達は恨みを晴らしても、結末はほとんどバッドエンドである)。 当初は役人である主水を信用していなかったが、仕事を通じて信頼関係を築いていった。(初期のエピソードにて敢えて不味い所を追求されないように主水が二人を捕縛して捕らえられた際、拷問を受けたことに腹を立てて主水が仕置人であることをバラしてやると言っていたのを鉄と小六に窘められていたのが、後半のエピソードでは全く同じ状況だったのに、自ら主水自身に軽口交じりに「いつまでいればいい?」と聞いていること等。) 武器は金属製の筒(鏨)を変型させた手槍。 >&b(){殺し技} 懐に隠せる程の大きさのアタッチメント式の手槍を利用した刺殺。 手槍を組み換える時の“ギリ…ギリ…”という音が仕置き相手の恐怖と視聴者の興奮を煽った。 得意の跳躍を活かした上からの刺殺が多いが、組ついて背後から延髄を刺すパターンもある。 剣豪相手には左手に小型の盾を装備して刃をかわし、三角跳びからの刺突を決めた。 『必殺仕事人Ⅴ』から登場した政は、加治屋にギミックチェンジしてから木製という違いはあるものの同一機構の手槍を使っている。 -&b(){[[中村主水]]} 演:藤田まこと 北町奉行所同心だが、市井から少額の袖の下をもらうことに腐心し、検挙実績も挙げられない昼行灯の婿養子と、仕事場でも家庭でもバカにされる存在だが、その実は天才的な剣豪。 かつて、役人として思い描いていた理想を奉行所と市井の癒着による腐敗を目の当たりにして打ち砕かれた過去を持ち、たまにやる気を出しても裏金を貰っている上司に潰されたりと張り合いのない日々を過ごしていた。 江戸に来る前は佐渡で同心見習いをしており、そのときに罪人だった鉄と出会い、個人的な親交を深め互いの腕も知っていた。 そうした意味では、鉄は本当の顔を見せられる貴重な相手であった。 その鉄から錠の件で相談を受け、燻っていた正義感が刺激されたことで調査を開始。 こうして、上司である与力どころか北町奉行が関わっていた大掛かりな不正を暴いて仕置を成功させると、信用の於ける仲間達と共に仕置人を続けていくことを決めたことが長い長い裏稼業の始まりとなった。 基本的には仕置人チームの参謀として、依頼の窓口や作戦立案、役人の立場を利用しての鉄と錠の仕事のバックアップを行う。 そのため、元締め的な役割もある本作では優れた剣技を見せる機会は少ないが、殺しを行う回のインパクトは凄まじい。 尚、この頃はあまり酒が飲めないという設定であり、替わりに懐に大福を忍ばせていたり、団子を頬張っていたりといった描写が多い。 >&b(){殺し技} 二本差しを利用した斬擊や刺突で、上記の様に本作では殺しに参加する回は少ないものの、一瞬の早業で二人を切り捨てる等、剣の冴えは凄まじい。 一度だけ十手による集団の撲殺と刺殺を見せた回もある。 また、記憶力や洞察力に優れ、僅かに顔色が変わったのを見ただけでおおよその真相を看破したり、役人の立場を利用して口八丁手八丁で仕置をバックアップしたりと殺しはせずとも活躍は多い。 -&b(){おひろめの半次} 演:津坂匡章/現・秋野太作 口から生まれて来たを公言する瓦版屋。 バックアップ担当。 調子の良いコメディリリーフ的存在だが人情に弱く、半人前扱いされる事に反発する事もある。 美人に弱く、半次の優しさもあってかいい感じになった相手もいたが、何れも頼み人になるような不幸な身の上で悲恋に終わっている。 -&b(){鉄砲玉のおきん} 演:野川由美子 かんのん長屋に住む女スリで、気っ風のいい姐さんタイプ。 同じくバックアップ担当で美貌を活かした潜入も多い。 -&b(){天神の小六} 演:高松英郎 裏社会の大物中の大物だが、命を狙われたりと煩わしい娑婆に居るよりは良いと自ら牢に入り、顎で見張りを使う牢名主となっている。 昼行灯を装いながら、その実力を見抜いた主水とは器量を認めあった仲で、主水達が仕置人となってからは後見人的存在を務める。 -&b(){中村せん} 演:菅井きん 主水の姑。 この頃の主水いじめは辛辣である。 -&b(){中村りつ} 演:白木万理 主水の妻、婿養子の主水への風当たりはかなり強い。 ※二人合わせて&bold(){「戦慄」}になるのは有名な話。 *【余談】 好評を博し、延長も検討された本作だが、中村主水や念仏の鉄といった人気キャラクターを擁しながらも、結局は予定通りの全26話で放送を終える事になった。 所謂[[必殺仕置人殺人事件]]の影響によるもので、結局は全く関係が無かったのだが、各方面の批判もあり、打ち切りも検討されたのだと云う。 …スポンサーからの要望もあり、内容を多少ソフト化する事で予定通りの放送期間を終える事になったものの、番組中盤のパワーダウンは否めないとのファンの声もある。 尚、仕置人殺人事件については事件時TVを見てさえおらず。供述の中で必殺が好きだと答えた事を殊更に取り上げられただけとの話もあり、事実、後に犯人は自分はTVに影響される様な簡単な人間では無いと語っている。 供述の話が本当ならば事件名その物が言い掛かりの類の話である。 ※[[必殺仕置人殺人事件]]については項目もある様なのでそちらも参考にして下さい。 #center(){&font(b,i){仕置き 法によって処刑する事を江戸時代こう呼んだ}} #center(){&font(b,i){しかしここにいう仕置人とは 法の網をくぐってはびこる悪を裁く闇の処刑人のことである}} #center(){&font(b,i){ただしこの存在を証明する記録、古文書の類は一切残っていない}} 追記、修正しねぇ奴ぁぶっ殺してやる!! 必殺シリーズ 第2弾【必殺仕置人】 前作←【[[必殺仕掛人>必殺仕掛人(時代劇)]]】 次作→【助け人走る】 #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,4) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - 前作仕掛人や後続のシリーズに比べても好き放題やり放題感がかなり好き。「金を貰って悪人を殺す極悪人」って点では一番説得力がある。欲を言えば社会的抹殺or死ぬより辛い生き地獄な仕置ももっと見たかった。 -- 名無しさん (2016-03-08 19:49:49) - ↑初期路線貫けてたらモット評価が高かったでしょうな。中盤以降の主水が目立ってきてからの展開も好きだけど -- 名無しさん (2016-03-08 20:24:19) - この頃は景気が良いのか二十両とかポンと出るよな。その割には金が無いとか言うけども -- 名無しさん (2017-01-10 20:58:55) - 大元の「仕掛人」だと数十両とか動くからその影響がまだあったかな。(そっちの依頼人(起こり)は恨みを飲んだ庶民よりも腹黒いエラい人のことが多い) -- 名無しさん (2017-06-15 17:41:51) - シリアスな笑いってこういう事を言うんだよと分かってない奴に教えたい -- 名無しさん (2020-03-20 21:36:47) - 念仏の鉄が悪人を気絶させて偽の入れ墨を入れて罪人に仕立て上げて社会的に抹殺するというのは何回? -- 名無しさん (2020-04-10 10:40:51) - ↑第21話。生木をさかれ生地獄 -- 名無しさん (2020-06-21 18:02:05) #comment #areaedit(end) }

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