スプリット(映画)

登録日:2024/10/24 Thu 20:35:40
更新日:2024/10/28 Mon 21:02:14
所要時間:約 14 分で読めます





結末はゼッタイに内緒だよ。


【SPLIT】

『スプリット(原題:SPLIT)』は、2016年制作・2017年1月に公開された米国のサイコスリラー・サスペンス映画。
M・ナイト・シャマラン監督作品。
日本での公開は2017年5月12日。
配給はユニバーサル・ピクチャーズ。

主演はジェームズ・マカヴォイ。

【概要】

多重人格の男に誘拐された、3人の女子高生の奮闘と事件の顛末を描く。
シャマラン作品の中では珍しく“捻りすぎておらず人を選ばない”タイプの映画であり真相も分かりやすくオチもスッキリ……と、批評家・観客ともに好評を得た。

また、後述の通りで本作には予想だにしていなかった前作が既に存在(●●●●●●●)していた。
このことはファンにとっても驚くべき…そして歓喜すべき展開であった。

【物語】

イケてる女子高生クレアの誕生日パーティー。
今やSNSの評判で一般人でも不特定多数の人間から炎上させられてしまう時代……そのパーティーにはクラスで孤立しているケイシーも呼ばれていたのだが、案の定で壁の花状態に。
見かねたクレアは父親と親友のマルシアに相談し、ケイシーの為にも途中で帰すことを提案。
自分でも言い出すタイミングをうかがっていたケイシー……だったが、事情により家からの迎えは来られないからバスで帰ると言うと、予想外にもクレアの父親が送ってくれるだけならともかく、気分転換だったのかクレアとマルシアまで付いてくることに。

こうして車に乗り込んだ3人だったが……ケイシーは壁を作り、クレアとマルシアは動画に夢中になり━━と、外に注意していない間に乗り込んできたのは父親とは全く別の男。
車を間違えているというクレアとマルシアに対し、何かしらの薬品を吹きかけて眠らせる男。
そして、隙を付いて逃げようとしたケイシーも眠らされ……気づいた時には3人は窓のない3つのベッドだけが置かれた部屋に運ばれていたのだった。

部屋へ入ってくる度に違う顔を見せる犯人の“男”━━。

普通の建物ではなかった広大な敷地面積を持つ謎の監禁施設━━。

果たして、ケイシー達3人の運命と“男”が呼び寄せようとしているモノとは?

【主な登場人物】

※以下はネタバレ含む。

■ケイシー・クック
演:アニャ・テイラー=ジョイ/吹替:志田有彩
JK3人組の1人。
後に解ることだが、最初から“捧げ物”にされる予定だったクレアとマルシアとは違いついでで誘拐された。
幼少期に大好きだった父親と死別して、大嫌いな叔父の世話になっている。
敢えて周囲に逆らうような行動を取ってクラスで浮いた存在になっているのはまだしも、問題行動を起こして毎日のように居残りを命じられているような問題児。
捕まってからも、何とか協力して外に出ようと主張するクレアとマルシアの意見に水を差したことから「こんな時にまでやめて」と言われてしまうも、実際には敢えて孤立するように仕向けている普段の学校での態度とは違い、
亡き父の狩猟の鉄則を思い出しつつ冷静に“男”の力と現在の置かれた状況の正確な把握と解決策を見つけることに集中していた。
実際、普段は仲良しでもないクレアとマルシアの身を案じて真っ先にアドバイスを送っており、本来は他者に対して思いやりのある性格なのが解る。

自分達を拐った“男”が、クレアの言うような自分達を怖がらせるための演技ではなく本物の多重人格者だという可能性を認めた後は、人格達の中で唯一“付け入る隙”がありそうな子供のヘドウィグを利用して情報を聞き出したり、脱出のための道を探ろうとするなど機転が早く冷静な判断力を持つ。

実は、幼少期の頃より叔父に性的虐待の対象とされており、子供の時点で歯向かおうとしたが失敗した苦い経験がある。
それでも父親が現在なら叔父の無法を訴えることも出来た可能性があったのだが、それから間もなくして父親が他界してしまい、よりにもよって唯一の肉親である叔父の世話になったことで現在までも虐待が続くことになってしまった。
……学校で敢えて孤立すると共に問題行動を起こして早く家に帰らないようにしているのはこのため。

辛いことがあると在りし日の父親の姿と言葉を胸に打開策を探すのが常で、クック家の伝統として幼少期から狩りに出ていたこともあってか銃器の扱いに慣れている。



■クレア・ブノワ
演:ヘイリー・ルー・リチャードソン/あんどうさくら
JK3人組の1人。
裕福な家庭の娘で、わざわざ店を借り切って誕生パーティーを開いていた。
半年前から空手を習っているとのことで、当初は“男”に歯向かってやると息巻いていたもののケイシーに諫められる。
とはいえ、勇気と行動力はありケイシーがヘドウィグとのやり取りの中で自分達の閉じ込められた部屋から脱出に使える“何か”が隠されたという情報を聞き出した後は天井のダクトを見つけて脱出を目指すも、失敗して別の小部屋に監禁されることになってしまう。
以上のように、クレア自身は善人で他者を本気で思いやり行動も出来る位には優しい人間なのだが、前向きで蛮勇を備えるのは“恵まれた環境で苦労も無しに育ってきたため”ともいえ、それ故に“男”に“捧げ物”として選ばれた。


■マルシア
演:ジェシカ・スーラ/吹替:大地葉
JK3人組の1人。
クレアの親友で、同じく恵まれた環境で育てられているらしく、クレアと同様に初めから“捧げ物”にされる予定だった。
クレアが引き離された後は暫くは大人しくしていたものの、ケイシーが止めるのも聞かずに“男”が女性人格のパトリシアの時に殴って脱出しようとするが、ケイシーの見立て通りに“男”が頑健な肉体を持っていたことから無傷で済んでしまい、自分達が何処に居るのかも分かっていない状況だったので結局は逃げ場を失い、クレアに続いて小部屋に監禁されることになる。
後に、クレアと共にお互いに隣接した部屋に監禁されていることに気づき、何とかスライド式の鍵を開けて脱出しようとするが、その時には既にビーストが目覚めた後のことだった。


■カレン・フレッチャー
演:ベティ・バックリー/吹替:久保田民絵/此島愛子(機内上映版)
先進的な考え方を持つが、余りに先進的過ぎるが故に同業者からも警戒されている優秀な精神科医。
本作のキーパーソンで、終盤までは本編には絡まないものの彼女の言動が物語の核心部分のカギとなっている。
ケビンの主治医で、ケビンの中の23の人格を認め、彼等(●●)の個性を認めつつ、人格の交代により実際のケビンが人生で得られる以上の知識や経験を身につけたり、場合によっては持病や体内の諸々の器官や身体的特徴にまで変化が生じる*1ことを“奇跡”や“人間の可能性”と呼んで肯定しつつ、その可能性こそが「超能力なのではないか?」との持論を持つ。
その深い洞察力と理解により人格達からも信頼されているが“群れ”の奴等として発言力と決定権のある人格から表に出ることを許されていなかった人格とは未だ対面したことがなかったのだが、今回の件にて実行役となったデニスのことは最初の対面の時点で違和感を覚え、二度目の対面にて看破したことを伝えたことで更に信頼を強めた。
しかし、そのデニス達“群れ”が語る24番目の人格である“ビースト”のことは、自身の持論をも越えた人間の範疇を越えた存在であることから流石に認めておらず、デニスとの面会を重ねる中で自身の治療により人格達を肯定して導いたことが“ビースト”を生んだのかもしれないと気づきケビンの職場へ……。
そこで、巷で失踪が事件になっているJK3人組が捕らわれているのを発見。
「これは犯罪だ」と考え直すように訴えるも、最終的にはケイシーに脱出の一手となる本来の人格であるケビンを呼び覚ます方法を伝えた後に、本当に目覚めた“ビースト”に殺害されてしまう。
ジャイ(演:いつもの監督)という助手がおり、彼は次作(どころか前作)にも出演している。


■男/“群れ(ザ・ホード)
演:ジェームズ・マカヴォイ/吹替:内田夕夜/猪野学(機内上映版)
オンスロート事件も起きてないのに闇落ちしたプロフェッサーX……キャラ的には寧ろ息子(リージョン)の方だが。本作の主犯にして主役。
多重人格者であり、幼少期の母親からの虐待が原因で自らの中に23もの別の人格を持つ。*2

■男(ケビン)の人格達
  • ケビン・ウェンデル・グラム
本来の主人格。
……が、母親から受けた辛い虐待の経験から自分を守るために生み出した人格達により過剰に守られており、そのせいか約2年前より全く表には出ていなかった。
実際、Dr.フレッチャーの診療記録でもNo.4となっており、ケビンとの対面は後になったことが解る。
Dr.フレッチャーが残したメモ*3を見たケイシーにより目覚めさせられ、当初は混乱していたものの自分(達)のしたことを悟り殺すように言うも、その直後に人格達に眠らされる。

  • バリー
23の人格のリーダー格で、理知的で社交的な性格。
オシャレでファッションにこだわりがある他、自身でもオリジナルの服のデザイン画をしたためているデザイナー志望。
基本的にはバリーが対外活動を行い、Dr.フレッチャーとの面談も行っていた……のだが。
スポットライト(照明)を誰に渡すのかという決定権を持つはずなのだが、近頃になってそれを盗まれている可能性に気づいて悩んでいる。
診療記録はNo.1。

  • デニス
潔癖症の男。
母親の虐待に対抗するために最も早くに生み出された可能性もある人格なのだが、女性が裸で踊るのを見たいという度し難い性癖を抱えていることから主導権を失い、力を持つ人格達から“群れ”の一人として隅に追いやられてきた。
仲間達にすら虐げられる状況の中で、ケビンの中に生じた可能性の獣である“ビースト”の存在に救いを求めるようになり、パトリシアと共にスポットライトを盗むことが出来るようになったヘドウィグを引き込み、バリー達の目を盗んで“ビースト”を召喚する為の儀式として今回のJK3人組の誘拐の実行犯役となる。
当初は、3人組に裸で踊ってもらおうなどと不埒なことも考えていたのだが、失敗(レイプされると思ったマルシアがケイシーの助言通りにお漏らしをしたことにキレた)したことと、パトリシアに諭されたことから意向は“ビースト”召喚に尽力する。
バリー達からはバカにされていたが実際には(性癖さえなければ)有能で、Dr.フレッチャーに人格の誰かが予定外の面会を打診するメールを送っていると気づいた時にはバリーのフリをして面会に来ていた。
Dr.フレッチャーに正体を看破された後は、デニスとして新たな対外交渉役となる。
診療記録はNo.8。

  • パトリシア
料理好きの女。
基本的には面倒見がよく慈愛に満ちた性格だが、完璧主義者的な一面がある。
“群れ”の一人で、神経質な所を見せた以外には特に問題が無さそうなのに隅に追いやられていたのは男であるケビンの体で対外交渉役とするのはリスクが大きいと判断されたのか。
デニスと共に“ビースト”の存在を信じており、ヘドウィグを仲間に引き込み今回の儀式の実行犯というか指示を出す側=主犯となる。
診療記録はNo.11。

  • ヘドウィグ
9歳の男の子の人格。
“群れ”の一人で、味噌っかす扱いだったと思われるのだが、だからこそなのかスポットライトを気づかれずに盗むことが出来るようになり、それをパトリシア達に利用されて表に出してもらう代わりに協力するように。 “ビースト”をヒーローのように思って存在を信じている。
一見すると行動に落ち着きがないが、実際には高い知能をうかがわせる部分も多い。
診療記録はNo.9。
最初こそケイシーに騙されてしまったものの、二度目からは簡単に騙されなくなったしケイシーの意図を見抜いたような反応も。(ケイシーにキスを迫り成功させたマセガキ。)

  • オーウェル
歴史オタク。
ケビンが学んだこともないレベルの高い学問を身につけている。
診療記録はNo.3で、力を持っていた側の人格だった模様。

  • ジェイド
糖尿病患者。
自分に交代した途端にインスリン注射が必要になることを愚痴っていた。
診療記録はNo.2で、力を持っていた側の人格。

  • 未登場の人格
本編にて言及、或いは診療記録となる動画ファイルにて名前が確認できる人格達。
ヘンリック(No.5)、ノーマ(No.6)、ゴダード(No.7)、バニーズ(No.10)、ポリー(No.12)、ルーク(No.13)、ラケル(No.14)、フェリダ(No.15)、アンセル(No.16)、ジェイン(No.17)、カット(No.18)、B.T(No.19)、サミュエル(No.20)、メアリー・レイノルズ(No.21)、イアン(No.22)、Mr.プリチャード(No.23)









■ビースト
秘められた24番目の人格にして、人格達の中ですらデニス、パトリシア、ヘドウィグのみが存在を信じていた、精神世界ですら会ったことがあるのはデニスのみだったという、ケビンの生命体としての究極到達点たる人間の範疇を越えた能力を持つ超人
“ビースト”に人格が変移すると筋肉が膨張し、全身に血管が浮き出た姿となり身体能力と凶暴性が増す。
デニス曰く、本来の姿は人格達の中で最も大柄な自分を遥かに越える体格で恐ろしい爪や牙を持つ、正に“ビースト”とのこと。
デニスやパトリシアがクレアやマルシアを“捧げ物”として表の世界にまで召喚しようとした存在であり、虐げられてきた自分達に世界を平伏せさせる力を持つ存在。
終盤、デニス達の願い通りに顕現し、その恐るべき力によりDr.フレッチャーを簡単に殺害、マルシアとクレアを喰らって儀式を完成させた。
その後、ケイシーにも襲いかかり、殆ど凹凸の無い垂直の壁を登る、人間には有り得ないスピードで走る、鉄格子を曲げる、ショットガンを至近距離から受けても散弾を通さない等の異常な能力を見せて追い詰めるが、顕になっていたケイシーの素肌に残る無数の虐待の傷跡を見て、彼女が自分達の仲間だと認めたことで見逃し、外の世界へと消えていった。
その存在と力はバリー達にとっても信じざるを得ないものとなり、以降の彼等は“群れ(ザ・ホード)”として生きていくことになる。

何故“ビースト”が生まれたのかについて、Dr.フレッチャーはケビン(達)を動物園の住み込みの管理人にしたことが原因だったのではないかと激しく後悔していた。









■デヴィッド・ダン
演:ブルース・ウィリス/吹替:磯部勉
アンブレイカブル』の主人公。
ダイナーにて、ケビンの犯行に対してマスコミが“ザ・ホード”とあだ名を付けたことに対して、15年前のイライジャの犯行を思い出した客に対して、彼のあだ名が“ミスター・ガラス”だと教えた。


【余談】

  • まさかの16年越しの『アンブレイカブル』の続編となった本作だが、実は既に本作に繋がるアイディアとなる場面は『アンブレイカブル』に登場している(スタジアムにてデヴィッドが見て見ぬふりをした虐待する母親と怯える子供。)
    因みに、続編の制作に至ったのには長年に渡る(コミックマニアである)サミュエル・L・ジャクソンからのラブコールがあったことも明かされている。

  • 一説には『スプリット』というタイトルは、アメコミ史において忘れてはならない偉人であるウィル・アイズナーと、彼の代表作『ザ・スピリット』に掛けたものであったとする意見も。*4




追記修正は限界までに能力を高めて内なる“ビースト”を目覚めさせてからお願い致します。











…NEXTGLASS

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最終更新:2024年10月28日 21:02

*1 実際の多重人格(解離性同一性障害)患者にも見られる実例である。

*2 恐らくは、というかモデルは最も有名な多重人格の犯罪者ビリー・ミリガンだろう。

*3 “ぼくの名前はケビン・ウェンデル・クラム”……と本来のフルネームが書かれているだけだが、母親が虐待の度にフルネームで呼んでいた=辛い記憶のフラッシュバックと共に本来のケビンの人格が表層化する効果がある。

*4 因みに、その実写映画版(監督はアメコミ界のカリスマであるフランク・ミラー自身。)には次回作で共に重要キャラを演じているサミュエル・L・ジャクソンとサラ・ポールソンが出演している。