片田舎のおっさん、剣聖になる~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~

登録日:2022/11/27 Sun 22:36:00
更新日:2024/04/13 Sat 11:54:43
所要時間:約 10 分で読めます






レーベル:SQEXノベル
著  者:佐賀崎しげる
イラスト:鍋島テツヒロ


概要

「小説家になろう」に連載されている小説の書籍化作品。
ファンタジー世界の片田舎で剣術道場を開いていた主人公が大成した弟子たちの持ってきた縁で成り上がっていく物語。

乍藤和樹による漫画化もされており、こちらは書籍版とは微妙に設定や描写が変更*1されている。

あらすじ

レベリス王国の片田舎ビデン村に代々続く剣術道場の師範ベリル・ガーデナント。教えることに才能があった彼の元には立地の割には多い門下生が入門し、また卒業していった。

現在の生活に満足し、このまま村で一生を終えるのだろうと思っていたある日、卒業した弟子の一人アリューシア・シトラスが訪ねてくる。
王家直轄のレベリア騎士団団長となった彼女は、ベリルに団の特別指南役になってほしいと告げた。
余りに突拍子のない話に困惑するベリル。しかしアリューシアが国王御璽付きの任命書を用意していたために断ることもできず、共に首都バルトレーンに向かう。
バルトレーンの人々との新たな出会いやかつての弟子たちとの再会は地味だったベリルの人生を大きく変えていくのだった。

用語

レベリス王国

物語の舞台となる国。現国王はグラディオ。田舎のビデン村でも生活に不自由はないほどに平穏な国。通貨単位はダルク。
隣国は宗教国家のスフェンヤードバニアと国土の半分が砂漠のサリューア・ザルク帝国。

国直属の組織としてレベリオ騎士団とレべリス王国魔法師団が存在し、どちらの組織も非常にレベルが高い。

魔法と魔術

魔法は魔力を媒介して発生しうる全ての事象を指す。
その中から人の手で再現できたものの総称が魔術であり、大きく分けて攻性魔法、防性魔法、回復魔法、強化魔法、生活魔法の5種類。
遠距離から行使することも一応可能だが、距離が長くなればなるほど制御が難しくなるため弓矢などの飛び道具を使った方が強い。
スフェンヤードバニアでは魔術の事を奇跡と呼んでいる。

魔術師

魔術を扱う者の事。魔法を扱う才能を持つ人間は貴重であり、魔術師一人だけでも国力や戦力に直結する。
そのためレベリス王国では魔法の才能がある者は出自に関係なく魔術師学園に入学させて教育を施している。
魔法の才能はいつどこで誰が開花するかわからず、血統や出生地や生活環境との因果関係は確認されていない。
魔法の才能が無くても魔装具というアイテムを使えば魔法を使用可能だが非常に高価。

冒険者

国境を跨いで存在する冒険者ギルドに所属し、一般市民の御遣いから未踏の地の冒険まで幅広く活動する職業。
実力によってランク付けされ、自身のランク以上の依頼を受けることは基本的にできない。
ランクは下からホワイト、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナム、オーシャン、ブラック。

スフェン教

スフェンヤードバニア発祥で同国の国教にもなっている宗教。レベリス王国の首都バルトレーンにも教会が設置されている。

信仰の対象であるスフェン神は治療の奇跡を行使し、存在し得ないとされる蘇生の奇跡をも使ったという伝説がある。
スフェンヤードバニア国民ですらほとんど信じていない話だが、一部の狂信者は神の奇跡を再現しようと蘇生魔法の研究に躍起になっている。


登場人物

レベリオ騎士団

●ベリル・ガーデナント
主人公。ビデン村に代々続く剣術道場の師範。40代のおっさん。独身。得物はロングソード。

幼少期から続けてきた稽古の成果と生まれつき持つ優れた反応速度と動体視力、そして長年の経験で培われた老獪な戦術による高い実力を持つ。
しかし本人は比較対象が父モルデア以外には門下生しかいない環境に長年いたこと、実力では既にモルデアを超えているのだがモルデアが父の意地でそれに気づかせなかったこともあって自覚しておらず、「普通より少し強い程度」だと思い込んでしまっていた。
後に息子の歪みに気付いて覚悟を決めたモルデアと本気で戦って勝利したことで自分の実力を正しく評価できるようになったが、同時に目標だった父を超えてしまったことに一抹の寂しさも感じている。

戦いにおいては、相手が剣士であればよほどの凄腕でない限り動きを読んで封殺可能。
年齢による体力の衰えで長期戦は不利なため、規格外の実力を持つ剣士や魔術師、魔物などの強敵と戦う際には天性の見切りで相手の攻撃を捌きながら攻略の糸口を探りそこを突くというスタイルをとる。
また剣士でありながら剣のみで勝つことにはこだわっておらず、近距離での膠着状態から相手の服を掴んでバランスを崩す、遠距離から攻撃する相手に剣を投げつけて意表を突いた上で接近し足払いをかけるなどの戦法を使うこともある。

アリューシアの根回しによって騎士団の特別指南役にされてしまった上に、村から通うつもりだったところをモルデアに「嫁を見つけるまで帰ってくるな」と追い出されてしまう。
仕方なくバルトレーンに移住してからは数々の事件と多くの人々に遭遇することになった。
周囲の人々が事前に根回しをしてから話を持ち込んでくるせいで自分の耳に入るころには断れなくなっているのが悩みの種だが、なんだかんだで楽しんでいる。

目的の一つであるはずの嫁探しについては元々乗り気ではなかったうえに、ミュイを引き取ってからは「自分の妻になってくれる女性」ではなく「ミュイの母になってくれる女性」を探す方向に気持ちがシフトしたため全く進んでいない。
自分に好意を寄せているアリューシア達の気持ちに気付いていないわけではないのだが、自分がおっさんであるという事実も足枷になっている。

漫画版ではビデン村にいるときから本人の知らないところで『片田舎の剣聖』として噂になっていた設定が追加されている。

●アリューシア・シトラス
レベリオ騎士団団長にして剣術指南役も務める女性。得物は免許皆伝の証としてベリルから貰った剣*2

元は商人の娘だったが12歳から16歳までの4年間ベリルに師事し、卒業してバルトレーンに向かった後にレべリオ騎士団に入団。
免許皆伝を言い渡された日にベリルが自分の実力を過小評価していることを悟ってからは、彼に相応しい場所を用意することを目標に掲げて行動してきた。
そしてその準備ができたことでベリルを迎えに来たところから物語は始まる。

少女時代には『大きくなったら先生と結婚します』と宣言しており、成長した現在でも異性として慕い続けている。
そのため何かと一緒に行動しようとしたり、ベリルが実家を追い出されて家探し中と聞いて自分の家に招こうとしたりしている*3

●ヘンブリッツ・ドラウト
レベリオ騎士団副団長。褐色肌の青年。恐ろしいほどの剣速を誇る実力者。

冴えないおっさんにしか見えないベリルが特別指南役になったことに納得いかず、手合わせを申し出たところ動きを完全に見切られて完敗を喫してしまう。
それからはベリルを心から尊敬し、彼の師事の下で研鑽を積むようになる。
またベリルを侮っていた団員達もこの模擬戦を見たことでベリルを信頼して教えを受けるようになった。

●クルニ・クルーシエル
レベリオ騎士団団員。活発で人懐っこい性格で、ベリルはしばしば彼女に犬の耳や尻尾を幻視している。
小柄な体格の割に力があり、体力も馬車で行く距離をランニングして平然としているほど高い。

かつてベリルの道場に2年ほど通っていたが、免許皆伝には至らなかったため餞別の剣は渡されていない。
騎士団では自分の適性を考えずに軽くていいという理由だけでショートソードを使っていたため、実力が伸び悩んでいた。
後にベリルとバルデルのアドバイスでツヴァイヘンダーに得物を変え、当初は勝手が違いすぎて困惑していたものの自主トレーニングをひたすら積んで見事ものにする。


冒険者

●スレナ・リサンデラ
ブラックランクの女性冒険者。双剣使い。

元は貿易商の娘だったが、ある時ビデン村付近の道で魔物の襲撃を受けて商隊が全滅、ただ一人生き残ったところをベリルに助けられた過去を持つ。
それから3年間ベリルの実家で過ごした後にリサンデラ夫妻の養子となった。
本人はベリルの弟子を自負しているものの、ベリルからは年の離れた妹や娘のように思われていて弟子という感覚はほとんどない。

両親のように世界中を旅したい、ベリルから教わった剣を生かしたい、自分のような目にあった人々を救いたいという思いから冒険者になり、20年かけてブラックにまで上り詰めている。

自分の家族を失った経緯から治安維持を担当する騎士団に不信感を抱いており、アリューシアとも折り合いが悪い。
自分達が姉妹弟子だと判明した後はベリルを巡って争うようになるも、冒険者として多忙な彼女は中々会う時間が作れずにいる。

双剣使いだが利き腕は右腕で、左腕の方がわずかに手数が少ない。
ほとんど問題にならないほどの小さな隙ではあるが、ベリルとの手合わせを行った際にはそこを突かれて敗北している。

●ランドリド・パトルロック
プラチナムランクの冒険者。6年前までベリルの道場に通っていた。

妻子ができたことを機に冒険者を引退することを決意して道場に挨拶に来たところ、モルデアから話を持ち掛けられて結託。
ベリル不在の間の道場を預かることにして彼をバルトレーンに送り出した。
その後は本人の人の好さもあって貴重な若者として村に受け入れられる。


魔術師学園

●ルーシー・ダイアモンド
レベリス王国魔法師団の団長にして魔術師学園の学園長。
実年齢は本人曰く相当な高齢だが、魔法で若さを保っているため10歳前後の幼女にしか見えない。

魔法の研鑽が大好きで、自分の魔法を強者相手に試したがるという悪癖の持ち主。
フィッセルからベリルの話を聞いて戦いに来るも、放った魔法の全てを捌かれて千日手になりかけたので攻撃をやめた。
この一件でベリルを気に入り、襲ったお詫びとして色々と取り計らう一方で様々な話を持ち込んでくるようになる。
出会いが出会いだっただけにベリルは敬う気になれず、友人のような関係に落ち着いた*4

●フィッセル・ハーベラー
魔法師団団員。かつてベリルの道場で5年間修業して免許皆伝となった女性。
道場を卒業した後に魔法の才能に目覚めて修練を積み、魔術師となった。
同時期に入門したクルニとは現在でも友人関係にあり、一緒に食事をしたり鍛錬に付き合ったりしている。

剣に魔法を込めて斬撃を飛ばしたり、炎や氷の属性を付与する『剣魔法』の使い手で、その中でもトップクラスの実力者*5
その腕を見込まれて魔術師学園に新設された剣魔法課の講師に任命されるも、本人が過酷なトレーニングをものともしない努力の人なこともあって教え方が壊滅的に下手であり、生徒がわずか5人しか残らなかった。
見かねたルーシーは特別講師としてベリルを雇用し補佐につけることになる。

●ミュイ・フレイア
俗に南東区と呼ばれる貧民街出身の少女。
姉と二人で暮らしていたが、ある日突然訪れた男に姉の死を告げられた上で彼の所属する組織に蘇生に必要な資金として500万ダルクを要求されてしまう。
やむなくスリなどで金を入手していたものの目標金額にはとても届かなかった。
当初は失敗したときの脱出に男から渡された魔装具を使っていたが、やがて本人が魔法の才能に目覚めて炎の魔法を使えるようになった。

ある日、ベリルの財布を狙ったところを見切られて捕まり、魔法で逃げることには成功したものの姉の形見のペンダントを落としてしまう。
後日ペンダントを拾ったベリルにアリューシアとルーシーを紹介され、ルーシーから蘇生魔法など存在しないことを告げられてショックを受ける。
ベリルとルーシーによって組織が殲滅された後はルーシーの計らいもあって彼女が提供した家にベリルと同居することになり*6、同時に魔術師学園にも通うようになった。

ベリルをはじめとする善良な人々との出会いに最初は戸惑っていたものの、徐々に心を開いていく。
魔術師学園ではベリルへの憧れから剣魔法課を選択、同級生達と友人になった。


バルトレーンの人々

●バルデル・ガスプ
バルデル鍛冶屋の店主。ベリルより年上の偉丈夫。

実はベリルの弟子の一人。
鍛冶師としての修業の一環として、剣を振る者の気持ちも知りたいと1年ほど師事していた。
その甲斐あって彼の打つ武器は冒険者からの人気が高く、レベリオ騎士団御用達の鍛冶屋には負けるがそれなりに繁盛している。

ベリルがグリフォンとの戦いで剣を折られてしまったため、買いに行ったことで再会。
スレナが提供したグリフォンの素材をベースにしてベリルのロングソードを作り上げた。
その後も剣の手入れなどでベリルは時々通っている。

●イブロイ・ハウルマン
スフェン教の司祭。ルーシーとは旧知の間柄。

ミュイを騙した組織の裏にスフェン教の司教が関わっていることが判明したため、立場上対処できない自身やルーシーの代わりの人材を探していたところでベリルを紹介され、司教の捕縛を依頼する。
事件解決後はちゃっかり司教に昇格した。

ベリルにとっては胡散臭いのであまり関わりたくない相手なのだが、スフェン教やスフェンヤードバニア絡みの情報を得るためには彼に会って話を聞くのが確実だという状態にある。



「ちょ……っと待ってくれ。もう一度、聞いてもいいかい」
「はい。先生を騎士団付きの追記・修正役に推薦し、その承認が下りましたので、こうしてお伝えに来ている次第です」
「……うぅん?」
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最終更新:2024年04月13日 11:54

*1 一例を挙げると、書籍版での「鍛冶屋で良質の剣の試し切りとして巻き藁を斬る」シーンが漫画版では「誤って店頭に出されていた仕上げ前のなまくらで巻き藁を斬る」シーンになっている。

*2 皆伝者全員に餞別として渡した量産品の剣なのでそれほど質のいいものではない。

*3 書籍版ではさすがに自重したが、漫画版では普通に提案してベリルに却下された。

*4 一応、偉い相手なのだから敬った方がいいのだろうかとは思っているが、ルーシー本人が気にしていないこともあって保留になっている。

*5 そもそも剣術の技量が高い魔術師が貴重。

*6 この話を聞いたアリューシアは全ての感情が抜け落ちたような貌になり、スレナは「先生に迷惑はかけるなよ」と威圧してミュイを怯えさせた。