片田舎のおっさん、剣聖になる~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~

登録日:2022/11/27 Sun 22:36:00
更新日:2025/04/23 Wed 17:14:41NEW!
所要時間:約 10 分で読めます







●目次

概要

佐賀崎しげる氏が「小説家になろう」に連載している小説。

ファンタジー世界の片田舎で剣術道場を開いていた主人公が大成した弟子たちの持ってきた縁で成り上がっていく物語で、「主人公が結構なおじさん」「ある意味スローライフだった時期が破れ、急に日常が騒がしくなる」という点はスローライフものにつきものの反転ターンをフォーカスしたという側面も持つ。

メディアミックス

なろうでの連載開始からすぐに好評を得て、スクウェア・エニックスの版元で書籍化された。既刊9巻(2025年3月現在)。

その後秋田書店がコミカライズの権利を獲得し、乍藤和樹氏を作画担当に抜擢して漫画になった(第1話は「どこでもヤングチャンピオン」2021年9月号に掲載)。
西洋剣術を下敷きにした躍動感とリアリティ、緊張感に満ちた「先読み」描写が兼ね備わった殺陣アクションに定評がある。
こちらは書籍版とは微妙に設定や描写が変更*1され、原作ではあっさり倒されたような場面でもバトル描写が追加されるなどかなり盛られており、
特に原作2巻のミュイ編からは敵側のメンツに一人ひとりキャラ付けと描写ががっつり追加、
ベリル以外のキャラクターにもそれぞれ見せ場が用意されているなどめちゃくちゃに盛られまくり、大筋こそ同じだがもはや別物と言っていい状態になっている。
基本的にベリルの一人称で進む書籍版と比べると、ベリルの超剣士具合を外部の人物が観察・評価するシーンが増えているのも、印象の違いを強めている。

2025年春にテレビ朝日系列でテレビアニメ化された。内容は小説版(書籍版)に準拠で、西洋剣術(特に甲冑剣術)をベースにした剣術描写がこちらも好評。

あらすじ

レベリス王国の片田舎ビデン村に代々続く剣術道場の師範ベリル・ガーデナント。教えることに才能があった彼の元には立地の割には多い門下生が入門し、また卒業していった。

現在の生活に満足し、このまま村で一生を終えるのだろうと思っていたある日、卒業した弟子の一人アリューシア・シトラスが訪ねてくる。
王家直轄のレベリオ騎士団団長となった彼女は、ベリルに団の特別指南役になってほしいと告げた。
余りに突拍子のない話に困惑するベリル。しかしアリューシアが国王御璽付きの任命書を用意していたために断ることもできず、共に首都バルトレーンに向かう。
バルトレーンの人々との新たな出会いやかつての弟子たちとの再会は地味だったベリルの人生を大きく変えていくのだった。

用語

  • レベリス王国
物語の舞台となる国。現国王はグラディオ。田舎のビデン村でも生活に不自由はないほどに平穏な国。通貨単位はダルク。
隣国は宗教国家のスフェンヤードバニアと国土の半分が砂漠のサリューア・ザルク帝国。

国直属の組織としてレベリオ騎士団とレべリス王国魔法師団が存在し、どちらの組織も非常にレベルが高い。

  • 魔法と魔術
魔法は魔力を媒介して発生しうる全ての事象を指す。
その中から人の手で再現できたものの総称が魔術であり、大きく分けて攻性魔法、防性魔法、回復魔法、強化魔法、生活魔法の5種類。
遠距離から行使することも一応可能だが、距離が長くなればなるほど制御が難しくなるため弓矢などの飛び道具を使った方が強い。
スフェンヤードバニアでは魔術の事を奇跡と呼んでいる。

  • 魔術師
魔術を扱う者の事。魔法を扱う才能を持つ人間は貴重であり、魔術師一人だけでも国力や戦力に直結する。
そのためレベリオ王国では魔法の才能がある者は出自に関係なく魔術師学園に入学させて教育を施している。
魔法の才能はいつどこで誰が開花するかわからず、血統や出生地や生活環境との因果関係は確認されていない。
魔法の才能が無くても魔装具というアイテムを使えば魔法を使用可能だが非常に高価。

  • 冒険者
国境を跨いで存在する冒険者ギルドに所属し、一般市民の御遣いから未踏の地の冒険まで幅広く活動する職業。
実力によってランク付けされ、自身のランク以上の依頼を受けることは基本的にできない。
ランクは下からホワイト、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナム、オーシャン、ブラック。

  • スフェン教
スフェンヤードバニア発祥で同国の国教にもなっている宗教。レベリス王国の首都バルトレーンにも教会が設置されている。

信仰の対象であるスフェン神は治療の奇跡を行使し、存在し得ないとされる蘇生の奇跡をも使ったという伝説がある。
スフェンヤードバニア国民ですらほとんど信じていない話だが、一部の狂信者は神の奇跡を再現しようと蘇生魔法の研究に躍起になっている。
スフェンは元は人間の剣士であったとされ、教会騎士団の剣はスフェンの剣を模しており剣を授かることは名誉なこととされている。


登場人物

レベリオ騎士団

  • ベリル・ガーデナント
CV:平田広明
主人公。ビデン村に代々続く剣術道場の師範。40代のおっさん。独身。得物はロングソード。

幼少期から続けてきた稽古の成果と生まれつき持つ優れた反応速度と動体視力、そして長年の経験で培われた老獪な戦術による高い実力を持つ。
しかし本人は比較対象が父モルデア以外には門下生しかいない環境に長年いたこと、実力では既にモルデアを超えているのだがモルデアが父の意地でそれに気づかせなかったこともあって自覚しておらず、 「普通より少し強い程度」だと思い込んでしまっていた
なお、上記の通りベリル自身は自分を過小評価しているが、対戦相手や敵対モンスターからは 強いを通り越してバケモノ と認識されており、この点は漫画版で特に分かりやすく描写・表現されている。
後に息子の歪みに気付いて覚悟を決めたモルデアと本気で戦って勝利したことで自分の実力を正しく評価できるようになったが、同時に目標だった父を超えてしまったことに一抹の寂しさも感じている。

戦いにおいては、相手が剣士であればよほどの凄腕でない限り動きを読んで封殺可能。
年齢による体力の衰えで長期戦は不利なため、規格外の実力を持つ剣士や魔術師、魔物などの強敵と戦う際には天性の見切りで相手の攻撃を捌きながら攻略の糸口を探りそこを突くというスタイルをとる。
また剣士でありながら剣のみで勝つことにはこだわっておらず、近距離での膠着状態から相手の服を掴んでバランスを崩す、遠距離から攻撃する相手に剣を投げつけて意表を突いた上で接近し足払いをかけるなどの戦法を使うこともある。

アリューシアの根回しによって騎士団の特別指南役にされてしまった上に、村から通うつもりだったところをモルデアに「嫁を見つけるまで帰ってくるな」と追い出されてしまう。
仕方なくバルトレーンに移住してからは数々の事件と多くの人々に遭遇することになった。
周囲の人々が事前に根回しをしてから話を持ち込んでくるせいで自分の耳に入るころには断れなくなっているのが悩みの種だが、なんだかんだで楽しんでいる。

目的の一つであるはずの嫁探しについては元々乗り気ではなかったうえに、ミュイを引き取ってからは「自分の妻になってくれる女性」ではなく「ミュイの母になってくれる女性」を探す方向に気持ちがシフトしたため全く進んでいない。
自分に好意を寄せているアリューシア達の気持ちに気付いていないわけではないのだが、自分がおっさんであるという事実も足枷になっている。

漫画版ではビデン村にいるときから本人の知らないところで『片田舎の剣聖』として噂になっていた設定が追加されている*2

  • アリューシア・シトラス
CV:東山奈央
レベリオ騎士団団長にして剣術指南役も務める女性。得物は免許皆伝の証としてベリルから貰った剣*3
無動作から一気に最高速度に達するスピードが卓越しており、その速さから『神速』の二つ名を持つ。

元は商人の娘だったが12歳から16歳までの4年間ベリルに師事し、卒業してバルトレーンに向かった後にレべリオ騎士団に入団。
免許皆伝を言い渡された日にベリルが自分の実力を過小評価していることを悟ってからは、彼に相応しい場所を用意することを目標に掲げて行動してきた。
そしてその準備ができたことでベリルを迎えに来たところから物語は始まる。

少女時代には『大きくなったら先生と結婚します』と宣言しており、成長した現在でも異性として慕い続けている。
そのため何かと一緒に行動しようとしたり、ベリルが実家を追い出されて家探し中と聞いて自分の家に招こうとしたりしている*4

  • ヘンブリッツ・ドラウト
CV:石川界人
レベリオ騎士団副団長。褐色肌の青年。
体格はそこまで大きくないものの人間離れした剛力を持ち、『轟剣』の異名で呼ばれる。
才能に恵まれているために格上から学ぶ経験が不足していたきらいがあるものの、副団長の名に恥じない騎士団でも抜きん出た実力者。
漫画版における切り札は体勢を崩した敵に向かって回転ジャンプし、全身の力と遠心力を乗せて受け太刀ごと両断する「回転斬り」。

冴えないおっさんにしか見えないベリルが、尊敬しているアリューシアの推薦で特別指南役になったことに納得いかず、手合わせを申し出たが、
真剣なら何度死んだか数え切れないほどの一本を取られた挙句、起死回生の一手で繰り出した回転斬りも初見で見切られ完全敗北を喫してしまう*5
それからはベリルを心から尊敬し、彼の師事の下で研鑽を積むようになる。
またベリルを侮っていた団員達もこの模擬戦を見たことでベリルを信頼して教えを受けるようになった。

  • クルニ・クルーシエル
CV:広瀬ゆうき
レベリオ騎士団団員。活発で人懐っこい性格で、ベリルはしばしば彼女に犬の耳や尻尾を幻視している。
小柄な体格の割に力があり*6、体力も馬車で行く距離をランニングして平然としているほど高い。

かつてベリルの道場に2年ほど通っていたが、免許皆伝には至らなかったため餞別の剣は渡されていない。
騎士団では自分の適性を考えずに軽くていいという理由だけでショートソードを使っていたため、実力が伸び悩んでいた。
後にベリルとバルデルのアドバイスでツヴァイヘンダーに得物を変え、当初は勝手が違いすぎて困惑していたものの自主トレーニングをひたすら積んで見事ものにする。


冒険者

  • スレナ・リサンデラ
CV:上田瞳
『竜双剣』の異名を持つブラックランクの女性冒険者。双剣使い。主要人物の中では最もベリルとの出会いが早い。
無尽蔵とも称されるスタミナを誇り、不死身の再生力を持つドラゴンを失血死するまで一晩中斬り刻み続けて勝利したほど。
得物の双剣はそのドラゴンの牙を用いたもので、自己再生機能を持つ魔剣。

元は貿易商の娘だったが、ある時ビデン村付近の道で魔物の襲撃を受けて商隊が全滅、ただ一人生き残ったところをベリルに助けられた過去を持つ。
それから3年間ベリルの実家で過ごした後にリサンデラ夫妻の養子となった。
本人はベリルの弟子を自負しているものの、ベリルからは年の離れた妹や娘のように思われていて弟子という感覚はほとんどない。

両親のように世界中を旅したい、ベリルから教わった剣を生かしたい、自分のような目にあった人々を救いたいという思いから冒険者になり、20年かけてブラックにまで上り詰めている。

自分の家族を失った経緯から治安維持を担当する騎士団に不信感を抱いており、アリューシアとも折り合いが悪い。
自分達が姉妹弟子だと判明した後はベリルを巡って争うようになるも、冒険者として多忙な彼女は中々会う時間が作れずにいる。

双剣使いだが利き腕は右腕で、左腕の方がほんの少しだけ握力が低く、手数も僅かに少ない。
通常は全く問題にならないほどの小さな隙ではあるが、ベリルとの手合わせの際は、その僅かな差を突かれて敗北。
その神がかりとも言える技量に、スレナやその他ギャラリーを戦慄させた。

  • ランドリド・パトルロック
プラチナムランクの冒険者。6年前までベリルの道場に通っていた。

妻子ができたことを機に冒険者を引退することを決意して道場に挨拶に来たところ、モルデアから話を持ち掛けられて結託。
ベリル不在の間の道場を預かることにして彼をバルトレーンに送り出した。
その後は本人の人の好さもあって貴重な若者として村に受け入れられる。


魔術師学園

  • ルーシー・ダイアモンド
CV:斎藤千和
レベリス王国魔法師団の団長にして魔術師学園の学園長。
実年齢は本人曰く相当な高齢*7だが、魔法で若さを保っているため10歳前後の幼女にしか見えない。

圧倒的な魔力量と広範な知識を持ち、存在自体が魔法兵器扱いされている正真正銘の超人であり、
両手で別々の文章を書きながら会話するとまで言われる3種同時魔術行使の神業をも平然と行える最強の魔術師。
そんな彼女でもかつて『剣聖』と呼ばれた剣士に敗れたことがあるという。

魔法の研鑽が大好きで、自分の魔法を強者相手に試したがるという悪癖の持ち主。
フィッセルからベリルの話を聞いて戦いに来るも、放った魔法の全てを捌かれて千日手になりかけたので攻撃をやめた。
この一件でベリルを気に入り、襲ったお詫びとして色々と取り計らう一方で様々な話を持ち込んでくるようになる。
出会いが出会いだっただけにベリルは敬う気になれず、友人のような関係に落ち着いた*8

  • フィッセル・ハーベラー
CV:矢野妃菜喜
魔法師団団員。かつてベリルの道場で5年間修業して免許皆伝となった女性。
道場を卒業した後に魔法の才能に目覚めて修練を積み、魔術師となった。
同時期に入門したクルニとは現在でも友人関係にあり、一緒に食事をしたり鍛錬に付き合ったりしている。

剣に魔法を込めて斬撃を飛ばしたり、炎や氷の属性を付与する『剣魔法』の使い手で、その中でもトップクラスの実力者*9
その腕を見込まれて魔術師学園に新設された剣魔法課の講師に任命されるも、本人が過酷なトレーニングをものともしない努力の人なこともあって教え方が壊滅的に下手であり、生徒がわずか5人しか残らなかった。
見かねたルーシーは特別講師としてベリルを雇用し補佐につけることになる。

  • ミュイ・フレイア
CV:仲田ありさ
俗に南東区と呼ばれる貧民街出身の少女。
姉と二人で暮らしていたが、ある日突然訪れた男に姉の死を告げられた上で彼の所属する組織に蘇生に必要な資金として500万ダルクを要求されてしまう。
やむなくスリなどで金を入手していたものの目標金額にはとても届かなかった。
当初は失敗したときの脱出に男から渡された魔装具を使っていたが、やがて本人が魔法の才能に目覚めて炎の魔法を使えるようになった。

ある日、ベリルの財布を狙ったところを見切られて捕まり、魔法で逃げることには成功したものの姉の形見のペンダントを落としてしまう。
後日ペンダントを拾ったベリルにアリューシアとルーシーを紹介され、ルーシーから蘇生魔法など存在しないことを告げられてショックを受ける。
ベリルとルーシーによって組織が殲滅された後はルーシーの計らいもあって彼女が提供した家にベリルと同居することになり*10、同時に魔術師学園にも通うようになった。

ベリルをはじめとする善良な人々との出会いに最初は戸惑っていたものの、徐々に心を開いていく。
魔術師学園ではベリルへの憧れから剣魔法課を選択、同級生達と友人になった。


バルトレーンの人々

  • バルデル・ガスプ
バルデル鍛冶屋の店主。ベリルより年上の偉丈夫。
握手するだけで相手の力量や状態などを測ることができるという特技を持ち、相手に合わせた剣の調整に役立てている。
漫画版ではさらに相手の強さのイメージ*11が浮かぶという描写が追加されている。

実はベリルの弟子の一人。
鍛冶師としての修業の一環として、剣を振る者の気持ちも知りたいと1年ほど師事していた。
その甲斐あって彼の打つ武器は冒険者からの人気が高く、レベリオ騎士団御用達の鍛冶屋には負けるがそれなりに繁盛している。

ベリルがグリフォンとの戦いで剣を折られてしまったため、買いに行ったことで再会。
スレナが提供したグリフォンの素材をベースにしてベリルのロングソードを作り上げた。
その後も剣の手入れなどでベリルは時々通っている。

スフェン教会

  • イブロイ・ハウルマン
スフェン教の司祭。ルーシーとは旧知の間柄。

ミュイを騙した組織の裏にスフェン教の司教が関わっていることが判明したため、立場上対処できない自身やルーシーの代わりの人材を探していたところでベリルを紹介され、司教の捕縛を依頼する。
事件解決後はちゃっかり司教に昇格した。

ベリルにとっては胡散臭いのであまり関わりたくない相手なのだが、スフェン教やスフェンヤードバニア絡みの情報を得るためには彼に会って話を聞くのが確実だという状態にある。

レビオス司教一派

  • レビオス・サルレオネ
スフェン教バルトレーン教会の司教。
伝説に語られる「死者蘇生」の奇跡を再現すべく、裏では各地から死体を集めて実験を繰り返している。
研究にもある程度成果を出し、部下も全員優秀で『騎士狩り』の正体や事情を調べ上げたうえで自ら赴いてスカウトするなど無能ではないのだが、
実際の荒事における機微においてはそこまで聡くなく、あくまで机仕事が専門らしい。事件解決後は本国に送られて失脚した。

  • 「宵闇」
盗賊団「宵闇の魔手」を率いるならず者。司教の命令でバルトレーン周辺で死体を集めていた。
またミュイの姉に売春を斡旋し、姉の死亡後はミュイに大金を払えば姉を生き返らせることができると騙してスリをさせていた。
ミュイの姉の行方を調査するためベリルとルーシーの師匠コンビに根城に押しかけられることになる。

原作では超あっさりルーシーに瞬殺されるほぼモブなのだが、漫画版では人物像ががっつり盛られバトルシーンも追加されている。

戦闘技能は高くないものの豪邸が建つレベルの価値を持つ多数の魔装具により腕力・耐久力・念動力を得ており、
さらに魔力を無効化する「魔喰らいの皮衣」により魔術師に対して大きなアドバンテージを持つ。
魔術を無効化してルーシーに迫るが、「魔力」しか無効化できないため物体操作や幻術などで軽々と手玉に取られる。
ミュイの姉の行方を交渉材料に見逃してもらうよう提案するが拒否され「肉体強化」をかけたルーシーの細腕で殴り飛ばされ昏倒、拘束された。
騎士団に尋問されるも秘密保持のためかけられていた口封じの術を解くには準備が必要なため拘束され続けていたが、
完全なる口封じのためにギャミを差し向けられて胸を刺し貫かれ、クルニに背負われ医務室に運ばれる途中で死亡する。

元は教会から「魔喰らいの皮衣」を盗み出した盗賊で、シュプールに捕らえられるが
司教により金と魔装具を報酬に死体を集める役目を与えられ部下となった。宵闇は司教から与えられたコードネーム。
金のためにミュイを利用していたとはいえ最低限の寝床と仕事を与え、ヘマをしたら助けて護身用の武器を与えるなど多少の人情*12は持っており、
最期の瞬間には拘束され騎士団に連れて行かれる際にミュイが悲しい瞳で自分を見つめる姿を思い浮かべていた。

  • シュプール・アイレンテール
CV:逢坂良太
司教つきの教会騎士隊長。奇跡による身体強化を併用した強烈な突きで相手を圧倒する手練の剣士。
正面からの打ち合いではベリルを苦戦させたが、身体強化の奇跡では変わらないエストックの脆さを突いた武器破壊を受け倒された。

原作での出番はこれだけで「武器が魔剣でなかったら危なかったかも」と言わしめた強敵ではあったもののチョイ役レベルなのだが
漫画版では全くの別人と化し、ベリルと互角に近い実力を持つ凄腕の剣士へとさらに格上げされている。

+ 漫画版経歴
元は天涯孤独で生きるために傭兵になった男だったが、ある日モンスターに襲われ死にかけていたところを
アイレンテール領主の娘ラフィに助けられ、ラフィに請われてアイレンテールの衛兵として働くようになる。

生きるために嫌々剣を振っていたころは大した実力はなかったが、強くなる理由ができたことで剣の楽しさに目覚め、
日々弛まぬ鍛錬により剣才が開花。数年後には隊長へと昇格し正式に騎士の叙勲を受け娘婿になることも許されると幸せの絶頂に居たが、
ラフィが強力な回復の「奇跡」に目覚めたことで状況は一変する。

ラフィが教会の招聘*13を拒んだことで教会の意に沿わない「奇跡」使いを始末しようとした教会の手によりアイレンテール卿は殺され、
ラフィも瀕死の身で重傷のシュプールに「奇跡」を行使し、彼の腕の中で命を落としてしまう。
教会の理不尽な横暴によってすべてを奪われた彼は復讐のために教会騎士を何十人と殺し続け、正体不明の殺人鬼『騎士狩り』と呼ばれるようになる。

ラフィの死から10年ほど経った現在は死者蘇生の奇跡によるラフィの蘇生を対価としてレビオス司教に雇われている。
的確な判断力を持ち隊長としても優秀で、部下たちからも仕事外では顔を見せるなと宣言しておいてなお信頼され慕われている。
死者を道具としか思わない司教は内心嫌悪しており、ベリルに教会を襲撃された際にはミュイが隠し持っていた司教の犯罪の証拠をあえて見て見ぬふりする。
それは「散々悪事を働いたお前だけがまんまと逃げおおせることは許さない」という彼からの断罪であった。


ボサボサ頭に無精髭というだらしない格好だが、「仕事」の際はフルフェイスの兜を身に着け目つきが変わる。
普段は冴えない男だが剣のことになると人が変わるという点ではベリルとよく似た人物。
悪事に手を貸してはいるが根は悪人ではなく、お互い素性を知らないまま酒場でベリルと語り合った際は剣好き同士で気が合っていた。
仕事外では大概飲酒しているが、上戸というわけではなく酔いつぶれていることも多い。
元々酒は苦手であり、同僚とも仕事外では顔を見せるなと厳命してることも鑑みれば
飲酒は誇れない生き方をしている現実から目を背けるための逃避行為であることが伺える。

体勢が崩れたままでもそのまま攻撃に移れるほどの常人離れした体幹の強さを持ち、
全身の脱力から放たれる必殺の突きは人体に拳大の穴を開け、べリルをして凌げるかは五分五分と言わしめる別格の達人。
また、ラフィの最期の「奇跡」が体に定着しており奇跡を行使可能だが使用を好んでおらず、
作中で使用したのはベリルの魔剣に対する得物の強度の不利を補ったのみで剣腕は純粋に彼の力量
剣術は我流ながら見切りの技術も卓越しており、ベリルとほぼ同次元での読み合いを繰り広げた。

3対1を崩されウロが倒されかけたところに割って入った初戦では数合の打ち合いだけでベリルから即座に弟子たちかそれ以上の実力者だと看破される。
ミュイを連れて逃走しようとする馬車を追おうとしたベリルに対して渾身の突きを繰り出すがギリギリのところで躱され、
お互い目的のためには相手を倒すほかないと悟りシュプールは再び突きの体勢に入るが、ベリルも突きの指を斬り落とす構えに入り膠着したところ
司教が放った死者蘇生の実験体であるゾンビが乱入したことで仕切り直しとなる。
馬車に追いついてきた際の再戦では互いに何度も死線をくぐる激しい剣の応酬を交わし、お互いに「楽しいな」と剣で心を通じ合い名乗り合う。
最後はベリルの左腕に突きでダメージを与えるが、同時に自身の左腿を斬られ*14とどめの突きを繰り出せなくなった隙を突かれて敗北。
奇跡で傷を回復して立ち上がろうとするも数多の血に染まった自分は今更ラフィに顔向けできないと奇跡を使う気力を失う。
結局自身の剣は何の役にも立たなかったと失意の中倒れるが、薄れゆく意識の中でべリルからの
「すごい剣だ。本当に……もっと見ていたかった」という掛け値なしの賞賛を聞き届けていた。
ベリルにとっても今までの生涯で最大の強敵であった彼との出会いは胸に深く刻まれることとなった。

  • ギャミ
漫画版にのみ登場する、顔に大きな痣のある初老の男性。騎士団服を着ている場面がなく、自決用魔装具の存在や
「こんな俺にも分け隔てなく接してくれる」という発言から汚れ仕事専門の非正規団員の可能性が高い。
片手で天井の梁にぶら下がったり、天井に張り付いて動けるほどの身軽さを持つうえに体術や剣術も堂に入ったものを身につけている。
加えて自己治療の「奇跡」の使い手で、特に回復速度に優れ裂傷ならほぼ一瞬、骨折した腕でさえほんのわずかな時間で治してしまうほど。
確かな実力を持ち、同僚たちからも表立って口には出さないものの頼りにされていた。

「宵闇」たちの口封じのために騎士団の地下牢に潜入、手下たちを始末した後に「宵闇」の胸を刺し貫くことに成功し逃亡を図るがそこをクルニに発見される。
地の利を活かしてクルニを圧倒し、追跡してきたヘンブリッツには敵わずとも隙を突いて手傷を負わせ彼の拘束を外すほどの実力者だったが
アリューシアの動きは全く見えず、逃走は不可能と悟ると証拠隠滅のため口内に仕込んだ魔装具で頭部を爆破して自決した。

  • ロバリー
漫画版にのみ登場する、飄々とした長髪の男性教会騎士。
剣の腕もなかなか立つが特に暗器や毒といったダーティな戦法に心得があり、相手が冷静さを欠いたところを突くことを得意とする。
自分を含めた「生きるために剣を取った」人種と「剣そのもののために生きている」人種との間には越えられない差があるというのが持論。

監視役として「宵闇」の部下のように振る舞っていたが、「宵闇」が捕縛されることを察すると口封じのために周囲の「宵闇」の部下たちを始末し、本来の雇い主である司教の下に戻った。
ベリルとの3対1では奇跡で身体強化を行ってなおウロと同時にまとめて剣を捌かれるなど実力差は明白で、2対1では勝ち目はないと即撤退を選んだ。
司教を追ってきたベリルたちとの再度の戦いにおいてはクルニとぶつかることとなる。
降参したフリをして投げナイフでの不意打ちを仕掛けたうえ、あえてクルニの目の前で剣に毒を塗ることで判断力を奪おうとするが
クルニが毒塗りの剣を受けることを前提にした戦術を組んだことでクルニの最も得意とする接近戦に誘い出されてしまう。
窮地の中でも冷静に離脱しようとしたところを狙う大振りを読み、それを躱して隙を狙おうとするが
クルニが空振った剣の勢いをそのままにヘンブリッツを彷彿とさせる回転斬りを繰り出したことで右腕を斬り飛ばされる。
クルニもまた「剣のために生きている」人種だったと悟ると、解毒剤の提供と引き換えに降伏し助命してもらう。
彼との戦いはクルニを大いに成長させることとなった。

  • ウロ
漫画版にのみ登場する、司教一派の紅一点である教会騎士。普段は布で隠しているが、口元に大きく裂けた傷跡がある。
生まれながらに病に冒され、忌み子として捨てられて牢に閉じ込められていたが、
牢の中でスフェンへの祈りを唱えたところ「奇跡」の力を発現して病を克服し、以後は教会へと身を置くことになる。
その出自からスフェンへの信仰は狂信の域にあり、スフェンを冒涜する者に対しては凶暴性を露わにする。
特に「奇跡」に対する執着は常軌を逸しており、両手で別々の文章を書き続けるとも例えられる2種同時行使を可能にしているほど。

ベリルとの3対1の戦いでは身体強化の奇跡で仲間を援護しながら戦うがベリルに剣を捌かれた隙にゴーレンを倒され敗走。
追ってきたべリルたちにより奇跡での連携をさせないために全員が分断され、彼女はフィッセルと対峙することになる。
純粋な戦闘技術ではフィッセルには及ばないもののフィッセルを大きく上回る圧倒的な魔力量を活かし
治癒で時間を稼ぎながらフィッセルの腕に密かに弱化魔術をかけて剣魔法を封じ、自分だけが剣と魔術を併用するアドバンテージを取るが
念動術で剣を操る戦法に切り替えたフィッセルに腹に剣を突き刺され、体内から剣魔法を食らったことで回復できず敗北した。

  • ゴーレン
漫画版にのみ登場する、大柄な男性の教会騎士。
口数は少ないが実直な人物で、シュプールからも「適当なことは言わない」と評されている。
ベリルとの3対1ではベリルがロバリーとウロの攻撃を捌いた隙を突いて背後から攻撃するが、
自身の突きを鞘で受け止められたところを返す刀で巻き簾の如く胴を一閃され、上半身が下半身の上に乗ったまま崩れ落ちて絶命した。


「ちょ……っと待ってくれ。もう一度、聞いてもいいかい」
「はい。先生を騎士団付きの追記・修正役に推薦し、その承認が下りましたので、こうしてお伝えに来ている次第です」
「……うぅん?」


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最終更新:2025年04月23日 17:14

*1 一例を挙げると、書籍版での「鍛冶屋で良質の剣の試し切りとして巻き藁を斬る」シーンが漫画版では「誤って店頭に出されていた仕上げ前のなまくらで巻き藁を斬る」シーンになっている。

*2 現在描写されている限りの最低ラインですら弟子に国の騎士団のトップかつ剣術指南役、ブラックランクとプラチナムランクの冒険者が1人ずついる上に弟子達は一切隠していないのだから当然とも言える

*3 皆伝者全員に餞別として渡した量産品の剣なのでそれほど質のいいものではない。

*4 書籍版ではさすがに自重したが、漫画版では普通に提案してベリルに却下された。

*5 彼の回転斬りは団長であるアリューシアですら対処できなかったが、ベリルには初見の一瞬だけで術理まで完璧に見切られた。

*6 腕相撲ランキングではヘンブリッツの真下で堂々の2位。バルデルより上である

*7 伝説に語られる『剣聖』と戦った経験も鑑みると数百歳単位でもおかしくない

*8 一応、偉い相手なのだから敬った方がいいのだろうかとは思っているが、ルーシー本人が気にしていないこともあって保留になっている。

*9 そもそも剣術の技量が高い魔術師が貴重。

*10 この話を聞いたアリューシアは全ての感情が抜け落ちたような貌になり、スレナは「先生に迷惑はかけるなよ」と威圧してミュイを怯えさせた。

*11 おおむね動物が出てくるが、ベリルは無数のタコ足を持つ巨大な怪物、シュプールは大蛇と別格の実力者の場合はモンスターが出現した

*12 ミュイの姉の死も悪質な買春客の暴力による不慮の事故であり、その罪悪感もあったものと思われる

*13 事実上の強制徴用で、奇跡を教会の道具にされることは明白だった

*14 奇しくも「左腕と左腿」の狙う位置の違いは酒場での剣術談義の内容をなぞる形になった