だんのこまち@wiki
打ち上げだー!
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体育祭の夜
体育祭を終えて家へ戻った頃には、外はすっかり暗くなっていました。
玄関へ入るなり、ミントちゃんが大きく息を吐きます。
「楽しかったー……」
「朝からずっと応援していましたからね」
「お姉ちゃんの試合が始まってからは、応援というより祈ってたかも」
「そこまでだったんですか?」
「最後、先輩の攻撃が当たった時は、本当に止まったよ。時間」
「止まってはいません」
「私の中では止まったの」
ミントちゃんは靴を脱ぐと、そのまま私の賞状をもう一度見ました。
準優勝。
目標にしていた優勝には届きませんでした。
悔しさは、まだ残っています。
けれど、賞状を手にするたびに思い出すのは、最後の一撃だけではありません。
つきみさんとの準決勝。
リッキーさんとの再戦。
先輩と向かい合った決勝。
一年二組の旗。
午前中に聞いた応援。
長くて、にぎやかな一日でした。
「お姉ちゃん」
「はい?」
「今日の夜、打ち上げするんだよね?」
「シロさんは、そのつもりのようです」
校庭で撮った集合写真のあと。
シロさんは、今夜だんのこまちで集まろうと宣言しました。
その場でキャラメルさんとフェタさんが空いている場所を探し、商業区にある貸切ラウンジを押さえてくれています。
予定開始時刻は、午後八時半。
体育祭へ来ていた皆さんが、帰宅してからログインできる時間です。
「私も行っていい?」
「もちろんです。マキアートさんも来るのでしょう?」
「うん。もうログイン準備してるって」
夕食を済ませ。
体育祭で使った荷物を片づけ。
お風呂へ入りました。
普段着へ着替えたあと、ミントちゃんとそれぞれの接続スペースへ向かいます。
「お姉ちゃん」
「はい?」
「今日は、どっちが先にログインできるか競争ね」
「競争する意味はありますか?」
「打ち上げだから!」
「理由になっていません」
それでも、二人でほとんど同時に接続を開始しました。
視界が白く変わります。
次に目を開いた時。
そこには、だんのこまちの夜景が広がっていました。
玄関へ入るなり、ミントちゃんが大きく息を吐きます。
「楽しかったー……」
「朝からずっと応援していましたからね」
「お姉ちゃんの試合が始まってからは、応援というより祈ってたかも」
「そこまでだったんですか?」
「最後、先輩の攻撃が当たった時は、本当に止まったよ。時間」
「止まってはいません」
「私の中では止まったの」
ミントちゃんは靴を脱ぐと、そのまま私の賞状をもう一度見ました。
準優勝。
目標にしていた優勝には届きませんでした。
悔しさは、まだ残っています。
けれど、賞状を手にするたびに思い出すのは、最後の一撃だけではありません。
つきみさんとの準決勝。
リッキーさんとの再戦。
先輩と向かい合った決勝。
一年二組の旗。
午前中に聞いた応援。
長くて、にぎやかな一日でした。
「お姉ちゃん」
「はい?」
「今日の夜、打ち上げするんだよね?」
「シロさんは、そのつもりのようです」
校庭で撮った集合写真のあと。
シロさんは、今夜だんのこまちで集まろうと宣言しました。
その場でキャラメルさんとフェタさんが空いている場所を探し、商業区にある貸切ラウンジを押さえてくれています。
予定開始時刻は、午後八時半。
体育祭へ来ていた皆さんが、帰宅してからログインできる時間です。
「私も行っていい?」
「もちろんです。マキアートさんも来るのでしょう?」
「うん。もうログイン準備してるって」
夕食を済ませ。
体育祭で使った荷物を片づけ。
お風呂へ入りました。
普段着へ着替えたあと、ミントちゃんとそれぞれの接続スペースへ向かいます。
「お姉ちゃん」
「はい?」
「今日は、どっちが先にログインできるか競争ね」
「競争する意味はありますか?」
「打ち上げだから!」
「理由になっていません」
それでも、二人でほとんど同時に接続を開始しました。
視界が白く変わります。
次に目を開いた時。
そこには、だんのこまちの夜景が広がっていました。
見慣れた姿へ
貸切ラウンジは、商業区の高層施設にありました。
大きな窓の向こうには、夜のだんのこまちが見えています。
地上を走る光の列。
宙に浮かぶ案内表示。
遠くに見える学校区画。
部屋の中央には長いテーブルが並び、その周囲には自由に動かせる椅子やソファーが置かれていました。
壁面の表示には、体育祭で撮られた写真が順番に映っています。
一年二組の大縄。
レンちゃんの障害物競走。
フィーちゃんたちの台風の目。
プラリネさんとエスプレッソさんの借り人競走。
シロさんとマロンさんが並んだリレー。
そして、デュエル大会。
「お姉ちゃん、こっち!」
先に入ったミントちゃんが、部屋の奥から手を振っていました。
「一緒に接続したのに、もういるんですね」
「私の勝ち」
「何秒差でしたか?」
「気持ちの上では三秒くらい」
「測っていないんですね」
すでに、何人もの方が集まっています。
先輩。
つきみさん。
シロさん。
キャラメルさん。
コレットさん。
ミルクさん。
フェタさん。
レンちゃん。
フィーちゃん。
プラリネさん。
マキアートさん。
アッサムさんとマロンさん。
少し離れたソファーには、エスプレッソさんも座っていました。
学校で見ていた姿ではありません。
見慣れた、だんのこまちのアバターです。
「チョコ、お疲れさま」
先輩が近づいてきました。
「先輩も、お疲れさまでした」
「賞状、ちゃんと持って帰れた?」
「はい。ミントちゃんが、帰ってから何度も見ていました」
「だって格好よかったから」
ミントちゃんが横から答えます。
「優勝した先輩の賞状も見たかったけど」
「写真でよければ送るよ」
「ください!」
「私より返事が早いですね」
話していると、入口の扉が開きました。
「お待たせー!」
明るい声とともに入ってきたのは、エクレアさんです。
その後ろにはアイリスさん。
少し遅れてスフレさんも続きます。
体育祭の校庭で見た、現実の私服姿ではありません。
赤い服を身につけたエクレアさん。
銀色の髪を揺らすアイリスさん。
穏やかな雰囲気のスフレさん。
何度もFoFで会ってきた、いつもの姿でした。
「……戻りましたね」
私が言うと、エクレアさんが首を傾げます。
「どこから?」
「見慣れた姿にです」
「あー! 現実の姿、そんなに違った?」
「声は同じでしたが、最初はわかりませんでした」
「私はチョコちゃん、すぐわかったよ!」
「花を見て、でしょう?」
「それもある!」
アイリスさんは、つきみさんの前へ立ちました。
「ちゃんと休んだの?」
「帰ってから少し寝た」
「少しって、どのくらいよ」
「三十分」
「それは休憩でしょう。睡眠とは呼ばないわ」
「アイリス、大学の講義が朝からある日も同じことしてるよね」
スフレさんが、静かに言いました。
「今は私の話ではないわ」
「昨日も、課題を終わらせるために――」
「スフレ」
「はいはい」
大学生の三人が話している姿は、体育祭で会った時より少し大人びて見えます。
けれど、アイリスさんとエクレアさんが並ぶと。
やはり、いつもの二人でした。
最後に扉が開きます。
現れたのは、ガトーショコラさんでした。
「ずいぶん集まったね」
「お、きたきたショコ姉!」
シロさんが手を振ります。
「体育祭は見られなかったけど、写真と映像は見せてもらったよ」
ショコラさんは、先輩と私の方へ目を向けました。
「優勝と準優勝。おめでとう」
「ありがとうございます」
「つきみも、三位だったんだって?」
「うん」
「随分目立ったね」
「目立つつもりはなかったんだけど」
「結果がついてきたなら、仕方ない」
ショコラさんは落ち着いた笑みを浮かべました。
「今日は全員、飲み物を持った?」
「まだ!」
シロさんが答えます。
「なら、乾杯の前に配ろうか」
テーブルの上には、ラウンジに用意された飲み物が並んでいます。
果物を使った炭酸飲料。
紅茶。
ジュース。
色の違う液体が、透明なグラスの中で光を反射していました。
ショコラさんは、それぞれの希望を聞きながら手早く分けていきます。
同じ果物を使った飲み物でも。
甘さを少し変え。
炭酸を弱くし。
香りを加える。
現実でバーテンダーとして働いているだけあり、その手つきは慣れていました。
「お姉ちゃん、これきれい」
ミントちゃんが、薄い桃色のグラスを見せます。
「飲む前に写真撮ろう」
マキアートさんが言いました。
「もう撮ったよ」
「私が画面を開く前に?」
「気持ちの上では三秒早かった」
「また、その三秒ですか」
大きな窓の向こうには、夜のだんのこまちが見えています。
地上を走る光の列。
宙に浮かぶ案内表示。
遠くに見える学校区画。
部屋の中央には長いテーブルが並び、その周囲には自由に動かせる椅子やソファーが置かれていました。
壁面の表示には、体育祭で撮られた写真が順番に映っています。
一年二組の大縄。
レンちゃんの障害物競走。
フィーちゃんたちの台風の目。
プラリネさんとエスプレッソさんの借り人競走。
シロさんとマロンさんが並んだリレー。
そして、デュエル大会。
「お姉ちゃん、こっち!」
先に入ったミントちゃんが、部屋の奥から手を振っていました。
「一緒に接続したのに、もういるんですね」
「私の勝ち」
「何秒差でしたか?」
「気持ちの上では三秒くらい」
「測っていないんですね」
すでに、何人もの方が集まっています。
先輩。
つきみさん。
シロさん。
キャラメルさん。
コレットさん。
ミルクさん。
フェタさん。
レンちゃん。
フィーちゃん。
プラリネさん。
マキアートさん。
アッサムさんとマロンさん。
少し離れたソファーには、エスプレッソさんも座っていました。
学校で見ていた姿ではありません。
見慣れた、だんのこまちのアバターです。
「チョコ、お疲れさま」
先輩が近づいてきました。
「先輩も、お疲れさまでした」
「賞状、ちゃんと持って帰れた?」
「はい。ミントちゃんが、帰ってから何度も見ていました」
「だって格好よかったから」
ミントちゃんが横から答えます。
「優勝した先輩の賞状も見たかったけど」
「写真でよければ送るよ」
「ください!」
「私より返事が早いですね」
話していると、入口の扉が開きました。
「お待たせー!」
明るい声とともに入ってきたのは、エクレアさんです。
その後ろにはアイリスさん。
少し遅れてスフレさんも続きます。
体育祭の校庭で見た、現実の私服姿ではありません。
赤い服を身につけたエクレアさん。
銀色の髪を揺らすアイリスさん。
穏やかな雰囲気のスフレさん。
何度もFoFで会ってきた、いつもの姿でした。
「……戻りましたね」
私が言うと、エクレアさんが首を傾げます。
「どこから?」
「見慣れた姿にです」
「あー! 現実の姿、そんなに違った?」
「声は同じでしたが、最初はわかりませんでした」
「私はチョコちゃん、すぐわかったよ!」
「花を見て、でしょう?」
「それもある!」
アイリスさんは、つきみさんの前へ立ちました。
「ちゃんと休んだの?」
「帰ってから少し寝た」
「少しって、どのくらいよ」
「三十分」
「それは休憩でしょう。睡眠とは呼ばないわ」
「アイリス、大学の講義が朝からある日も同じことしてるよね」
スフレさんが、静かに言いました。
「今は私の話ではないわ」
「昨日も、課題を終わらせるために――」
「スフレ」
「はいはい」
大学生の三人が話している姿は、体育祭で会った時より少し大人びて見えます。
けれど、アイリスさんとエクレアさんが並ぶと。
やはり、いつもの二人でした。
最後に扉が開きます。
現れたのは、ガトーショコラさんでした。
「ずいぶん集まったね」
「お、きたきたショコ姉!」
シロさんが手を振ります。
「体育祭は見られなかったけど、写真と映像は見せてもらったよ」
ショコラさんは、先輩と私の方へ目を向けました。
「優勝と準優勝。おめでとう」
「ありがとうございます」
「つきみも、三位だったんだって?」
「うん」
「随分目立ったね」
「目立つつもりはなかったんだけど」
「結果がついてきたなら、仕方ない」
ショコラさんは落ち着いた笑みを浮かべました。
「今日は全員、飲み物を持った?」
「まだ!」
シロさんが答えます。
「なら、乾杯の前に配ろうか」
テーブルの上には、ラウンジに用意された飲み物が並んでいます。
果物を使った炭酸飲料。
紅茶。
ジュース。
色の違う液体が、透明なグラスの中で光を反射していました。
ショコラさんは、それぞれの希望を聞きながら手早く分けていきます。
同じ果物を使った飲み物でも。
甘さを少し変え。
炭酸を弱くし。
香りを加える。
現実でバーテンダーとして働いているだけあり、その手つきは慣れていました。
「お姉ちゃん、これきれい」
ミントちゃんが、薄い桃色のグラスを見せます。
「飲む前に写真撮ろう」
マキアートさんが言いました。
「もう撮ったよ」
「私が画面を開く前に?」
「気持ちの上では三秒早かった」
「また、その三秒ですか」
今日の全部に
全員へ飲み物が行き渡ると、シロさんが中央へ立ちました。
「よし!」
大きく息を吸います。
コレットさんが、すぐに声をかけました。
「部屋の音量制限」
「まだ叫んでないよ」
「今から叫ぶ顔だった」
「じゃあ、少し抑える」
シロさんは持っていたグラスを上げました。
「体育祭、お疲れさま!」
みんなのグラスも上がります。
「みた、優勝おめでとう!」
「ありがとう」
「チョコちゃん、準優勝おめでとう!」
「ありがとうございます」
「つきみ、三位おめでとう!」
「うん。ありがとう」
「リレーも綱引きも、大縄も、障害物も、台風の目も、借り人も、全部お疲れさま!」
「多いね~」
ミルクさんが笑います。
シロさんは、部屋の中を見回しました。
「とにかく、今日の全部に!」
少しだけ考え。
最後に続けます。
「乾杯!」
「乾杯!」
たくさんの声が重なりました。
グラス同士が触れる音。
笑い声。
壁面では、体育祭の写真が次々に切り替わっています。
最初に映ったのは、リレーのゴール写真でした。
シロさんとマロンさんが、ほとんど並んで線を越えています。
「これ、本当に少しの差だったよね!」
マロンさんが立ち上がりました。
「〇・〇四秒!」
「次は勝つ」
シロさんも即座に答えます。
「じゃあ、今度一緒に走ろう!」
「いいよ」
「体育祭終わったばかりなのに、もう次の勝負を決めるんだ」
アッサムさんが少し呆れたように言いました。
「楽しかったから!」
次の写真。
台風の目で、フィーちゃんたちが棒を持ってコーンを回っています。
「フィーちゃん、ここで一度足がずれていたんですね」
「少しだけね。でも、みんなが待ってくれたからすぐ戻れたよ」
「写真で見ると、全員同じ方向を見ています」
「一人で走る競技じゃないからね」
フィーちゃんは、写真を見ながら穏やかに笑いました。
大縄の写真へ切り替わると、プラリネさんが声を上げます。
「この時、私かなり危なかったんだよ」
「後ろの足が少し低いですね」
「チョコちゃん、そこまで見えるの?」
「拡大しました」
「見なくていいところまで見てるよ」
エスプレッソさんとの借り人競走も映りました。
プラリネさんは、少し離れたソファーにいるエスプレッソさんへ目を向けます。
「今日はありがとうございました」
「競技の時にも聞いた」
「でも、もう一度言いたかったので」
「なら、受け取る」
短い返事でした。
プラリネさんは、それだけで嬉しそうに笑います。
デュエル大会の写真へ移ると、室内の声が一段大きくなりました。
つきみさんが中心へ立ち。
フロランタンさんの逃げ道を少しずつ狭めていく場面です。
「つきみ、現実側ではすごく驚かれてたよ」
フェタさんが言いました。
「聞こえてた」
「どんな気分だった?」
「試合中は、あまり考えてなかった」
アイリスさんが腕を組みます。
「今さら驚く方がおかしいのよ」
「アイリスちゃんは、最初からつきみちゃんが勝つって言ってたもんね」
エクレアさんが言いました。
「勝つとは言っていないわ。実力はあると言っただけよ」
「ほとんど同じじゃない?」
「違うわ」
つきみさんは、二人のやり取りを見ながら少し笑っています。
最後に、先輩と私の決勝写真が表示されました。
互いに木刀を構え。
まだ試合が始まる前の一枚です。
「決勝、もう一回見よう!」
シロさんが、記録映像を開こうとします。
「今は写真だけでよいのでは?」
私が言うと、先輩も頷きました。
「僕も、今日はまだ見返さなくていいかな」
「二人とも、見たくない?」
レンちゃんが尋ねます。
「見たくないわけではありません」
私は決勝の写真を見上げました。
「もう少ししてから、落ち着いて見たいです」
「負けたところだから?」
ミントちゃんが聞きます。
「それも少しあります」
「正直だね」
「ですが、一番は」
隣にいる先輩へ目を向けました。
「映像を見なくても、まだすべて覚えているからです」
先輩が少しだけ驚き。
それから、柔らかく笑いました。
「僕も」
決勝の映像は閉じられました。
代わりに、表彰台で並んだ三人の写真が映ります。
今日の結果は。
もう、誰か一人の記録ではありません。
みんなで作った一日の最後に、そこへ残ったものでした。
「よし!」
大きく息を吸います。
コレットさんが、すぐに声をかけました。
「部屋の音量制限」
「まだ叫んでないよ」
「今から叫ぶ顔だった」
「じゃあ、少し抑える」
シロさんは持っていたグラスを上げました。
「体育祭、お疲れさま!」
みんなのグラスも上がります。
「みた、優勝おめでとう!」
「ありがとう」
「チョコちゃん、準優勝おめでとう!」
「ありがとうございます」
「つきみ、三位おめでとう!」
「うん。ありがとう」
「リレーも綱引きも、大縄も、障害物も、台風の目も、借り人も、全部お疲れさま!」
「多いね~」
ミルクさんが笑います。
シロさんは、部屋の中を見回しました。
「とにかく、今日の全部に!」
少しだけ考え。
最後に続けます。
「乾杯!」
「乾杯!」
たくさんの声が重なりました。
グラス同士が触れる音。
笑い声。
壁面では、体育祭の写真が次々に切り替わっています。
最初に映ったのは、リレーのゴール写真でした。
シロさんとマロンさんが、ほとんど並んで線を越えています。
「これ、本当に少しの差だったよね!」
マロンさんが立ち上がりました。
「〇・〇四秒!」
「次は勝つ」
シロさんも即座に答えます。
「じゃあ、今度一緒に走ろう!」
「いいよ」
「体育祭終わったばかりなのに、もう次の勝負を決めるんだ」
アッサムさんが少し呆れたように言いました。
「楽しかったから!」
次の写真。
台風の目で、フィーちゃんたちが棒を持ってコーンを回っています。
「フィーちゃん、ここで一度足がずれていたんですね」
「少しだけね。でも、みんなが待ってくれたからすぐ戻れたよ」
「写真で見ると、全員同じ方向を見ています」
「一人で走る競技じゃないからね」
フィーちゃんは、写真を見ながら穏やかに笑いました。
大縄の写真へ切り替わると、プラリネさんが声を上げます。
「この時、私かなり危なかったんだよ」
「後ろの足が少し低いですね」
「チョコちゃん、そこまで見えるの?」
「拡大しました」
「見なくていいところまで見てるよ」
エスプレッソさんとの借り人競走も映りました。
プラリネさんは、少し離れたソファーにいるエスプレッソさんへ目を向けます。
「今日はありがとうございました」
「競技の時にも聞いた」
「でも、もう一度言いたかったので」
「なら、受け取る」
短い返事でした。
プラリネさんは、それだけで嬉しそうに笑います。
デュエル大会の写真へ移ると、室内の声が一段大きくなりました。
つきみさんが中心へ立ち。
フロランタンさんの逃げ道を少しずつ狭めていく場面です。
「つきみ、現実側ではすごく驚かれてたよ」
フェタさんが言いました。
「聞こえてた」
「どんな気分だった?」
「試合中は、あまり考えてなかった」
アイリスさんが腕を組みます。
「今さら驚く方がおかしいのよ」
「アイリスちゃんは、最初からつきみちゃんが勝つって言ってたもんね」
エクレアさんが言いました。
「勝つとは言っていないわ。実力はあると言っただけよ」
「ほとんど同じじゃない?」
「違うわ」
つきみさんは、二人のやり取りを見ながら少し笑っています。
最後に、先輩と私の決勝写真が表示されました。
互いに木刀を構え。
まだ試合が始まる前の一枚です。
「決勝、もう一回見よう!」
シロさんが、記録映像を開こうとします。
「今は写真だけでよいのでは?」
私が言うと、先輩も頷きました。
「僕も、今日はまだ見返さなくていいかな」
「二人とも、見たくない?」
レンちゃんが尋ねます。
「見たくないわけではありません」
私は決勝の写真を見上げました。
「もう少ししてから、落ち着いて見たいです」
「負けたところだから?」
ミントちゃんが聞きます。
「それも少しあります」
「正直だね」
「ですが、一番は」
隣にいる先輩へ目を向けました。
「映像を見なくても、まだすべて覚えているからです」
先輩が少しだけ驚き。
それから、柔らかく笑いました。
「僕も」
決勝の映像は閉じられました。
代わりに、表彰台で並んだ三人の写真が映ります。
今日の結果は。
もう、誰か一人の記録ではありません。
みんなで作った一日の最後に、そこへ残ったものでした。
四人の予定が、大勢の予定へ
打ち上げが始まって一時間ほど経った頃。
フィーちゃんが、テーブルへ一枚の画像を表示しました。
木々に囲まれたキャンプ場。
広い芝生。
調理場。
夕暮れの湖。
以前、Kirscheで候補にしていた場所の一つです。
「そういえば」
フィーちゃんが言いました。
「キャンプ、体育祭が終わったら場所を決める予定だったよね」
「はい」
レンちゃんも画像を覗き込みます。
「最初は、Kirscheの四人で日帰りする話だったね」
フェタさんが答えます。
「途中から泊まりもいいかも、ってなってたけど」
「体育祭の準備で止まっていましたね」
私は言いました。
完全に忘れていたわけではありません。
ただ、毎日の放課後が体育祭の予定で埋まり、相談する時間が少なくなっていました。
フィーちゃんは、部屋にいる皆さんを見回します。
「今日の打ち上げ、ここで終わりにしなくてもいいんじゃない?」
「どういうこと?」
シロさんが、すぐに反応します。
「今度のキャンプを、体育祭の打ち上げパーティーにするの」
フィーちゃんは、もう一度キャンプ場の写真を表示しました。
「Kirscheだけじゃなくて。今日一緒にいた人や、参加できる友達みんなで」
「キャンプで打ち上げ!」
エクレアさんが勢いよく立ち上がりました。
「行きたい!」
「まだ場所も日程も決まっていないよ」
スフレさんが、落ち着いた声で言います。
「でも、面白そう」
「人数、多くない?」
コレットさんが部屋の中を見渡しました。
体育祭へ参加していた高校生。
見学へ来たミントちゃんとマキアートさん。
大学生のアイリスさんたち。
さらに、今夜から加わったショコラさん。
全員へ声をかければ、かなりの人数になります。
「普通の区画をいくつか借りるだけでは、難しいかもしれませんね」
私が言うと、ショコラさんが写真を拡大しました。
「このキャンプ場?」
「はい」
フィーちゃんが答えます。
「最初は、道具を借りられて、管理人さんがいるところを探していました」
「湖の近くで、団体向けの区画もある場所だね」
ショコラさんは、施設情報を確認していきます。
「以前、似た条件のところを使ったことがある。この辺りなら、小さなキャンプ場を団体で貸し切れるプランもあったはず」
「貸し切り?」
シロさんの目が輝きました。
「それなら、夜まで騒げる?」
「利用規約の時間まではね」
「そこは守るんだ」
コレットさんが言います。
「当たり前でしょう」
ショコラさんは、人数を数えるように室内を見ました。
「全員が本当に参加するなら、一般区画をばらばらに取るより、貸切の方が安全だと思う。中学生もいるし」
ミントちゃんとマキアートさんが顔を見合わせます。
「私たちも行っていいんですか?」
ミントちゃんが聞きました。
「保護者の許可と、きちんとした宿泊体制があるなら」
ショコラさんは答えます。
「大学生組もいる。私も参加できる日なら、成人側の代表として予約を取れるよ」
アイリスさんが少しだけ頷きました。
「私たちも、日程が合えば手伝うわ」
「アイリスちゃん、行くんだ」
エクレアさんが嬉しそうに言います。
「まだ日程も出ていないでしょう?」
「でも行きたいんでしょう?」
「……条件が合えばね」
「行きたいんだ」
つきみさんが言いました。
「つきみ」
「私も行きたい」
つきみさんは、キャンプ場の画像を見ています。
「体育祭では、ゆっくり話せなかった人も多かったから」
その言葉に。
部屋の中が、少し静かになりました。
今回の体育祭を通じて、初めて話した人。
今まで存在は知っていても、距離が遠かった人。
バーチャル世界では知っていても、現実の姿では初めて会った人。
たくさんの関係が、一日の中で少しだけ近づきました。
「では」
私はフィーちゃんを見ました。
「Kirscheのキャンプを、皆さんで行く打ち上げに変更しましょうか」
「うん」
フィーちゃんは迷わず頷きました。
「四人だけの予定が、かなり大きくなったね」
レンちゃんが笑います。
「大きくなりすぎたかもしれません」
フェタさんも笑いました。
「でも、Kirscheらしいかも」
「特に目的を決めていないグループでしたからね」
「目的が増えても大丈夫だよ」
フィーちゃんが言いました。
その場で、新しい連絡グループが作られました。
グループ名は、
<体育祭打ち上げキャンプ(仮)>
です。
「仮って必要?」
シロさんが聞きます。
「名前を考えている間に、予定が決まらなくなると困るから」
コレットさんが答えました。
「今回はそれでいい」
参加予定の名前が、一人ずつ追加されていきます。
今夜ここにいる皆さん。
体育祭で一緒に準備をした、アールグレイさん。
ワッフルさん。
フランボワーズさん。
もえぎさん。
マロンさんとアッサムさん。
エスプレッソさん。
ほかにも、各自が一緒に行きたい方へ声をかけます。
「本当に、知り合いみんなになりそうですね」
私が言うと、先輩が笑いました。
「最初は四人だったのにね」
「先輩は、まだ参加すると言っていませんよ」
「行くよ」
返事は、すぐでした。
「チョコも行くでしょう?」
「もちろんです」
「なら行く」
その言い方が、少し嬉しく感じました。
「私が行かなくても、参加してくださいね」
「行くけど。チョコがいる方が楽しいよ」
「では、私も必ず行きます」
「うん」
ショコラさんが、候補日を決めるための投票画面を作りました。
「まずは全員の予定。場所は、人数が決まってから確認する」
「ショコラさん、ありがとうございます」
「まだ予約は取っていないよ」
「それでも、調べてくださるので」
「体育祭に参加できなかった分、そのくらいはさせて」
最初の打ち上げは。
次の打ち上げの相談へ変わりました。
フィーちゃんが、テーブルへ一枚の画像を表示しました。
木々に囲まれたキャンプ場。
広い芝生。
調理場。
夕暮れの湖。
以前、Kirscheで候補にしていた場所の一つです。
「そういえば」
フィーちゃんが言いました。
「キャンプ、体育祭が終わったら場所を決める予定だったよね」
「はい」
レンちゃんも画像を覗き込みます。
「最初は、Kirscheの四人で日帰りする話だったね」
フェタさんが答えます。
「途中から泊まりもいいかも、ってなってたけど」
「体育祭の準備で止まっていましたね」
私は言いました。
完全に忘れていたわけではありません。
ただ、毎日の放課後が体育祭の予定で埋まり、相談する時間が少なくなっていました。
フィーちゃんは、部屋にいる皆さんを見回します。
「今日の打ち上げ、ここで終わりにしなくてもいいんじゃない?」
「どういうこと?」
シロさんが、すぐに反応します。
「今度のキャンプを、体育祭の打ち上げパーティーにするの」
フィーちゃんは、もう一度キャンプ場の写真を表示しました。
「Kirscheだけじゃなくて。今日一緒にいた人や、参加できる友達みんなで」
「キャンプで打ち上げ!」
エクレアさんが勢いよく立ち上がりました。
「行きたい!」
「まだ場所も日程も決まっていないよ」
スフレさんが、落ち着いた声で言います。
「でも、面白そう」
「人数、多くない?」
コレットさんが部屋の中を見渡しました。
体育祭へ参加していた高校生。
見学へ来たミントちゃんとマキアートさん。
大学生のアイリスさんたち。
さらに、今夜から加わったショコラさん。
全員へ声をかければ、かなりの人数になります。
「普通の区画をいくつか借りるだけでは、難しいかもしれませんね」
私が言うと、ショコラさんが写真を拡大しました。
「このキャンプ場?」
「はい」
フィーちゃんが答えます。
「最初は、道具を借りられて、管理人さんがいるところを探していました」
「湖の近くで、団体向けの区画もある場所だね」
ショコラさんは、施設情報を確認していきます。
「以前、似た条件のところを使ったことがある。この辺りなら、小さなキャンプ場を団体で貸し切れるプランもあったはず」
「貸し切り?」
シロさんの目が輝きました。
「それなら、夜まで騒げる?」
「利用規約の時間まではね」
「そこは守るんだ」
コレットさんが言います。
「当たり前でしょう」
ショコラさんは、人数を数えるように室内を見ました。
「全員が本当に参加するなら、一般区画をばらばらに取るより、貸切の方が安全だと思う。中学生もいるし」
ミントちゃんとマキアートさんが顔を見合わせます。
「私たちも行っていいんですか?」
ミントちゃんが聞きました。
「保護者の許可と、きちんとした宿泊体制があるなら」
ショコラさんは答えます。
「大学生組もいる。私も参加できる日なら、成人側の代表として予約を取れるよ」
アイリスさんが少しだけ頷きました。
「私たちも、日程が合えば手伝うわ」
「アイリスちゃん、行くんだ」
エクレアさんが嬉しそうに言います。
「まだ日程も出ていないでしょう?」
「でも行きたいんでしょう?」
「……条件が合えばね」
「行きたいんだ」
つきみさんが言いました。
「つきみ」
「私も行きたい」
つきみさんは、キャンプ場の画像を見ています。
「体育祭では、ゆっくり話せなかった人も多かったから」
その言葉に。
部屋の中が、少し静かになりました。
今回の体育祭を通じて、初めて話した人。
今まで存在は知っていても、距離が遠かった人。
バーチャル世界では知っていても、現実の姿では初めて会った人。
たくさんの関係が、一日の中で少しだけ近づきました。
「では」
私はフィーちゃんを見ました。
「Kirscheのキャンプを、皆さんで行く打ち上げに変更しましょうか」
「うん」
フィーちゃんは迷わず頷きました。
「四人だけの予定が、かなり大きくなったね」
レンちゃんが笑います。
「大きくなりすぎたかもしれません」
フェタさんも笑いました。
「でも、Kirscheらしいかも」
「特に目的を決めていないグループでしたからね」
「目的が増えても大丈夫だよ」
フィーちゃんが言いました。
その場で、新しい連絡グループが作られました。
グループ名は、
<体育祭打ち上げキャンプ(仮)>
です。
「仮って必要?」
シロさんが聞きます。
「名前を考えている間に、予定が決まらなくなると困るから」
コレットさんが答えました。
「今回はそれでいい」
参加予定の名前が、一人ずつ追加されていきます。
今夜ここにいる皆さん。
体育祭で一緒に準備をした、アールグレイさん。
ワッフルさん。
フランボワーズさん。
もえぎさん。
マロンさんとアッサムさん。
エスプレッソさん。
ほかにも、各自が一緒に行きたい方へ声をかけます。
「本当に、知り合いみんなになりそうですね」
私が言うと、先輩が笑いました。
「最初は四人だったのにね」
「先輩は、まだ参加すると言っていませんよ」
「行くよ」
返事は、すぐでした。
「チョコも行くでしょう?」
「もちろんです」
「なら行く」
その言い方が、少し嬉しく感じました。
「私が行かなくても、参加してくださいね」
「行くけど。チョコがいる方が楽しいよ」
「では、私も必ず行きます」
「うん」
ショコラさんが、候補日を決めるための投票画面を作りました。
「まずは全員の予定。場所は、人数が決まってから確認する」
「ショコラさん、ありがとうございます」
「まだ予約は取っていないよ」
「それでも、調べてくださるので」
「体育祭に参加できなかった分、そのくらいはさせて」
最初の打ち上げは。
次の打ち上げの相談へ変わりました。
貸切になりました
翌日から。
新しいグループは、ものすごい速さで動き始めました。
<この土曜日なら大丈夫!>
エクレアさん。
<翌日に講義がない日なら参加できます>
スフレさん。
<アルバイトのシフトを確認するわ>
アイリスさん。
<部活がない週なら行ける>
シロさん。
<シロちゃん、その週も助っ人を頼まれてるよ>
キャラメルさん。
<忘れてた>
<断るか、別の週にしな>
コレットさん。
<学校の予定がない日なら、私は大丈夫だよ~>
ミルクさん。
中学生のミントちゃんとマキアートさんは、保護者へ相談。
フィーちゃんは、候補日の天候傾向と現地の景色を確認します。
レンちゃんは、持っていけそうな焼き菓子を試作。
プラリネさんは、参加者の食べられないものや苦手な食材を尋ねる簡単な入力欄を作りました。
料理を一人で決めるためではありません。
全員でメニューを考える前に、避けるべきものを知るためです。
<料理の案を出す前に、ここだけ答えてね>
という短いメッセージとともに送られてきました。
ワッフルさんは、
<お茶は何種類まで持っていっていい?>
と尋ね。
アールグレイさんから、
<運べる量まで>
と返されています。
フランボワーズさんは、
<座ってできる仕事希望>
と、最初から書いていました。
<火の見張りは?>
アールグレイさん。
<座れるなら>
<ちゃんと起きていられる?>
<夜ならたぶん>
もえぎさんは、現地の地面や樹木を傷めないための注意事項を共有しました。
マロンさんとアッサムさんは、昼間にできる簡単な遊びや散策コースを探しています。
エスプレッソさんは、
<参加>
とだけ送ったあと、しばらく何も書きませんでした。
ですが数時間後。
<夜は冷える。上着が必要>
という短い連絡が届きます。
見てはいるようです。
つきみさんは、必要なテント数と参加人数を照らし合わせていました。
先輩は、レンタルできる道具と持参する道具を分けています。
私は、それぞれが出してくれた内容を一つの予定へまとめました。
ただし。
自分一人で決めることはしません。
料理。
テント。
時間。
誰かが出してくれた案を、全員が確認できる形に並べるだけです。
Kirscheで最初にキャンプを考えた時より。
ずっと多くの意見が集まりました。
そして、三日後。
ショコラさんから新しいメッセージが届きます。
<予約、取れたよ>
続けて、キャンプ場の詳細。
駅からの送迎。
貸し出し用のテント。
屋根のある共同調理場。
中央の広場。
湖の近くにある、朝日を見られる小さな展望地。
<人数が多いから、キャンプ場全体を貸し切りにしてもらった>
グループに、驚きの反応が一斉に流れました。
<貸切!>
シロさん。
<本当に大丈夫なの?>
フェタさん。
<団体利用のプランがあった。ほかの利用者へ気を遣うより、その方が施設側も管理しやすいそうだよ>
ショコラさん。
<さすがショコ姉!>
エクレアさん。
<利用時間や火の扱いは、普通に守ること>
ショコラさん。
<はい!>
エクレアさん。
<返事だけは完璧ね>
アイリスさん。
日程は、体育祭から二週間後の土曜日。
翌日の日曜日まで。
一泊二日のお泊まりキャンプです。
四人で始めた予定は。
ついに、知り合いみんなで使う貸切キャンプ場へ変わりました。
新しいグループは、ものすごい速さで動き始めました。
<この土曜日なら大丈夫!>
エクレアさん。
<翌日に講義がない日なら参加できます>
スフレさん。
<アルバイトのシフトを確認するわ>
アイリスさん。
<部活がない週なら行ける>
シロさん。
<シロちゃん、その週も助っ人を頼まれてるよ>
キャラメルさん。
<忘れてた>
<断るか、別の週にしな>
コレットさん。
<学校の予定がない日なら、私は大丈夫だよ~>
ミルクさん。
中学生のミントちゃんとマキアートさんは、保護者へ相談。
フィーちゃんは、候補日の天候傾向と現地の景色を確認します。
レンちゃんは、持っていけそうな焼き菓子を試作。
プラリネさんは、参加者の食べられないものや苦手な食材を尋ねる簡単な入力欄を作りました。
料理を一人で決めるためではありません。
全員でメニューを考える前に、避けるべきものを知るためです。
<料理の案を出す前に、ここだけ答えてね>
という短いメッセージとともに送られてきました。
ワッフルさんは、
<お茶は何種類まで持っていっていい?>
と尋ね。
アールグレイさんから、
<運べる量まで>
と返されています。
フランボワーズさんは、
<座ってできる仕事希望>
と、最初から書いていました。
<火の見張りは?>
アールグレイさん。
<座れるなら>
<ちゃんと起きていられる?>
<夜ならたぶん>
もえぎさんは、現地の地面や樹木を傷めないための注意事項を共有しました。
マロンさんとアッサムさんは、昼間にできる簡単な遊びや散策コースを探しています。
エスプレッソさんは、
<参加>
とだけ送ったあと、しばらく何も書きませんでした。
ですが数時間後。
<夜は冷える。上着が必要>
という短い連絡が届きます。
見てはいるようです。
つきみさんは、必要なテント数と参加人数を照らし合わせていました。
先輩は、レンタルできる道具と持参する道具を分けています。
私は、それぞれが出してくれた内容を一つの予定へまとめました。
ただし。
自分一人で決めることはしません。
料理。
テント。
時間。
誰かが出してくれた案を、全員が確認できる形に並べるだけです。
Kirscheで最初にキャンプを考えた時より。
ずっと多くの意見が集まりました。
そして、三日後。
ショコラさんから新しいメッセージが届きます。
<予約、取れたよ>
続けて、キャンプ場の詳細。
駅からの送迎。
貸し出し用のテント。
屋根のある共同調理場。
中央の広場。
湖の近くにある、朝日を見られる小さな展望地。
<人数が多いから、キャンプ場全体を貸し切りにしてもらった>
グループに、驚きの反応が一斉に流れました。
<貸切!>
シロさん。
<本当に大丈夫なの?>
フェタさん。
<団体利用のプランがあった。ほかの利用者へ気を遣うより、その方が施設側も管理しやすいそうだよ>
ショコラさん。
<さすがショコ姉!>
エクレアさん。
<利用時間や火の扱いは、普通に守ること>
ショコラさん。
<はい!>
エクレアさん。
<返事だけは完璧ね>
アイリスさん。
日程は、体育祭から二週間後の土曜日。
翌日の日曜日まで。
一泊二日のお泊まりキャンプです。
四人で始めた予定は。
ついに、知り合いみんなで使う貸切キャンプ場へ変わりました。
キャンプ当日
集合場所は、郊外へ向かう駅の北口でした。
朝。
改札を出ると、すでに大きな荷物を持った人たちが集まっています。
体育祭の日以来。
現実で会うのは二度目となるアイリスさん、エクレアさん、スフレさんもいました。
今回は最初から誰なのかわかります。
「おはようございます」
「おはよう、チョコ」
アイリスさんは、落ち着いた服装に小さな旅行鞄を持っています。
エクレアさんの荷物は、その倍ほどありました。
「エクレアさん、何を持ってきたんですか?」
「必要そうなもの!」
「具体的には?」
「服と、お菓子と、遊ぶものと、予備の服と――」
「大半は置いてきなさいと言ったのに」
アイリスさんが呆れています。
「全部必要だった!」
スフレさんは、二人の横で小さく笑っていました。
「昨日よりは減ったよ」
「減らして、この量なんですか?」
「最初は、もう一つ鞄があった」
大学生の三人は、年下の私たちと同じようにはしゃぎすぎることはありません。
それでも。
エクレアさんを中心にすると、あまり年齢差を感じませんでした。
少し離れた場所では、ショコラさんが参加者を確認しています。
「全員揃ったね」
「チロルさんたちは?」
私が尋ねると、チロルさんが手を上げました。
「いますよ」
コハクさんも、その隣にいます。
カフェは一日だけ臨時休業にしたそうです。
「猫は大丈夫なんですか?」
「信頼できるスタッフへ任せています」
コハクさんが答えました。
人数が多いため、キャンプ場の送迎車も二台です。
荷物を積み込み。
それぞれ分かれて乗車しました。
私はミントちゃんとマキアートさん。
レンちゃんとフィーちゃん。
プラリネさんと同じ車です。
先輩はもう一台。
つきみさんやシロさんたちと一緒でした。
車が駅を離れます。
建物が少なくなり。
窓の外に田畑や山が増えていきました。
「チョコちゃん」
フィーちゃんが外を見ながら言います。
「最初に考えてたキャンプと、全然違うものになったね」
「はい」
「嫌ではない?」
「まさか」
私は、前後の席から聞こえる皆さんの声を聞きました。
「四人のキャンプも楽しみでした。ですが」
隣の車にも。
後ろの荷物にも。
今日を待っていた方々がいます。
「こちらも、とても楽しみです」
フィーちゃんは安心したように笑いました。
「私も」
レンちゃんも頷きます。
「四人で始めなかったら、このキャンプもなかったもんね」
Kirscheという名前と同じです。
最初から、大きな意味があったわけではありません。
けれど。
小さく始まったものが、誰かと出会うたびに少しずつ広がっていました。
朝。
改札を出ると、すでに大きな荷物を持った人たちが集まっています。
体育祭の日以来。
現実で会うのは二度目となるアイリスさん、エクレアさん、スフレさんもいました。
今回は最初から誰なのかわかります。
「おはようございます」
「おはよう、チョコ」
アイリスさんは、落ち着いた服装に小さな旅行鞄を持っています。
エクレアさんの荷物は、その倍ほどありました。
「エクレアさん、何を持ってきたんですか?」
「必要そうなもの!」
「具体的には?」
「服と、お菓子と、遊ぶものと、予備の服と――」
「大半は置いてきなさいと言ったのに」
アイリスさんが呆れています。
「全部必要だった!」
スフレさんは、二人の横で小さく笑っていました。
「昨日よりは減ったよ」
「減らして、この量なんですか?」
「最初は、もう一つ鞄があった」
大学生の三人は、年下の私たちと同じようにはしゃぎすぎることはありません。
それでも。
エクレアさんを中心にすると、あまり年齢差を感じませんでした。
少し離れた場所では、ショコラさんが参加者を確認しています。
「全員揃ったね」
「チロルさんたちは?」
私が尋ねると、チロルさんが手を上げました。
「いますよ」
コハクさんも、その隣にいます。
カフェは一日だけ臨時休業にしたそうです。
「猫は大丈夫なんですか?」
「信頼できるスタッフへ任せています」
コハクさんが答えました。
人数が多いため、キャンプ場の送迎車も二台です。
荷物を積み込み。
それぞれ分かれて乗車しました。
私はミントちゃんとマキアートさん。
レンちゃんとフィーちゃん。
プラリネさんと同じ車です。
先輩はもう一台。
つきみさんやシロさんたちと一緒でした。
車が駅を離れます。
建物が少なくなり。
窓の外に田畑や山が増えていきました。
「チョコちゃん」
フィーちゃんが外を見ながら言います。
「最初に考えてたキャンプと、全然違うものになったね」
「はい」
「嫌ではない?」
「まさか」
私は、前後の席から聞こえる皆さんの声を聞きました。
「四人のキャンプも楽しみでした。ですが」
隣の車にも。
後ろの荷物にも。
今日を待っていた方々がいます。
「こちらも、とても楽しみです」
フィーちゃんは安心したように笑いました。
「私も」
レンちゃんも頷きます。
「四人で始めなかったら、このキャンプもなかったもんね」
Kirscheという名前と同じです。
最初から、大きな意味があったわけではありません。
けれど。
小さく始まったものが、誰かと出会うたびに少しずつ広がっていました。
私たちだけのキャンプ場
送迎車が到着すると、木々の向こうへ広い芝生が見えました。
キャンプ場の中央には共同調理場。
その先に、大きな焚き火広場。
周囲には、複数のテント区画があります。
少し歩けば湖。
湖の反対側には、緩やかな丘が伸びていました。
「ここ、全部?」
シロさんが車から下りるなり尋ねます。
「今日と明日は、私たちだけだよ」
ショコラさんが答えました。
「管理棟にはスタッフがいる。困ったことがあれば、勝手に解決しようとせず連絡すること」
「はい!」
エクレアさんが返事をします。
「特にエクレア」
「私?」
「シロも」
コレットさんが付け加えました。
「私まで?」
ショコラさんは、キャンプ場の地図を表示しました。
「湖へ行く時は必ず複数人。暗くなったあとは、照明のある範囲から一人で出ない。火を使う場所は中央広場と調理場だけ。消火確認は成人組が行う」
アイリスさん、エクレアさん、スフレさん。
働いているショコラさん。
チロルさんたちも頷きます。
中学生のミントちゃんとマキアートさんを含め、宿泊場所は事前に分けられていました。
「まずはテント設営」
ショコラさんが言います。
「終わらないと、昼食にも遊びにも進めないよ」
「よーし!」
シロさんが、テントの袋を持ち上げました。
「一番に立てる!」
「速さを競うものじゃないよ」
キャラメルさんが言います。
「きれいに立てる競争」
「競争にはするんだ」
コレットさんが呟きました。
設営は、宿泊する組とは別に作業班を作って行いました。
もえぎさんが、地面の傾きや木の根を確認します。
「ここは少し低いから、雨が降った時に水が集まりそう」
「今日は晴れ予報でも、避けた方がいいですね」
アッサムさんが答えます。
二人が場所を決めたあと、テントを広げました。
エクレアさんは長いポールを持ち上げます。
「これを入れればいいんだね!」
「そっちではないわ」
アイリスさんが説明書を指しました。
「色のついた穴へ、同じ色の先端を入れるの」
「入らないと思った!」
「力で入れようとしないで」
つきみさんが、反対側のポールを持ちました。
「エクレア、こっちを先に曲げると入りやすいよ」
「本当だ!」
「つきみに言われる前に、説明書を読みなさい」
「アイリスちゃんも、さっき逆に持ってたよ」
「エクレア」
スフレさんは、その横で静かにロープを整理しています。
三人とつきみさんのテントは、思っていたより早く形になりました。
別の場所では、フランボワーズさんがテント袋の上へ座っています。
「フランボワーズ」
アールグレイさんが呼びました。
「何?」
「そこに座ってると、部品が出せない」
「重しになってる」
「今は風が弱いから、重しはいらない」
「じゃあ、何をすればいい?」
「このロープを持ってて」
「座ったままでいい?」
「そこから動かなければ」
「得意」
フランボワーズさんがロープを固定している間に、アールグレイさんとワッフルさんがポールを組みました。
「フランボワーズ、少し引いて」
「このくらい?」
「もう少し」
「動かずにできる仕事、意外とあるね」
「だから最初から探して」
ワッフルさんが、楽しそうに笑っています。
エスプレッソさんは、誰にも声をかけられないまま一本目の杭を打ち。
気づけば、周囲の杭までほとんど終わらせていました。
「エスプレッソさん、早いですね」
プラリネさんが声をかけます。
「同じ動作だから」
「私の分も手伝っていただけますか?」
「いいよ」
「ありがとうございます。私も次を押さえます」
以前なら。
エスプレッソさんが一人で終わらせるところを、遠くから見ていたかもしれません。
今はプラリネさんが隣へ入り。
二人で次の杭を打っています。
私は、先輩と大きなタープを張る係になりました。
「チョコ、そっちを持って」
「はい」
互いに反対側の支柱を立てます。
先輩がロープを引き。
私が位置を確認しました。
「少し右です」
「このくらい?」
「もう少しだけ」
「チョコから見た右?」
「先輩からも右です」
「同じ向きだった」
「向かい合っているので、反対です」
「あ」
先輩が笑います。
「試合では、あんなにお互いの方向を見てたのにね」
「今は戦っていませんから」
「じゃあ、もう一回教えて」
「先輩の左へ少し動かしてください」
「はい」
今度は、きれいに張れました。
タープの下へ影ができると、ミントちゃんとマキアートさんが拍手します。
「お姉ちゃんたち、完成!」
「まだ椅子と机があります」
「でも屋根は完成」
「それはそうですね」
すべてのテントと共用スペースが整った頃。
キャンプ場の中央には、小さな町のような景色ができていました。
今日だけの。
私たちだけの場所です。
キャンプ場の中央には共同調理場。
その先に、大きな焚き火広場。
周囲には、複数のテント区画があります。
少し歩けば湖。
湖の反対側には、緩やかな丘が伸びていました。
「ここ、全部?」
シロさんが車から下りるなり尋ねます。
「今日と明日は、私たちだけだよ」
ショコラさんが答えました。
「管理棟にはスタッフがいる。困ったことがあれば、勝手に解決しようとせず連絡すること」
「はい!」
エクレアさんが返事をします。
「特にエクレア」
「私?」
「シロも」
コレットさんが付け加えました。
「私まで?」
ショコラさんは、キャンプ場の地図を表示しました。
「湖へ行く時は必ず複数人。暗くなったあとは、照明のある範囲から一人で出ない。火を使う場所は中央広場と調理場だけ。消火確認は成人組が行う」
アイリスさん、エクレアさん、スフレさん。
働いているショコラさん。
チロルさんたちも頷きます。
中学生のミントちゃんとマキアートさんを含め、宿泊場所は事前に分けられていました。
「まずはテント設営」
ショコラさんが言います。
「終わらないと、昼食にも遊びにも進めないよ」
「よーし!」
シロさんが、テントの袋を持ち上げました。
「一番に立てる!」
「速さを競うものじゃないよ」
キャラメルさんが言います。
「きれいに立てる競争」
「競争にはするんだ」
コレットさんが呟きました。
設営は、宿泊する組とは別に作業班を作って行いました。
もえぎさんが、地面の傾きや木の根を確認します。
「ここは少し低いから、雨が降った時に水が集まりそう」
「今日は晴れ予報でも、避けた方がいいですね」
アッサムさんが答えます。
二人が場所を決めたあと、テントを広げました。
エクレアさんは長いポールを持ち上げます。
「これを入れればいいんだね!」
「そっちではないわ」
アイリスさんが説明書を指しました。
「色のついた穴へ、同じ色の先端を入れるの」
「入らないと思った!」
「力で入れようとしないで」
つきみさんが、反対側のポールを持ちました。
「エクレア、こっちを先に曲げると入りやすいよ」
「本当だ!」
「つきみに言われる前に、説明書を読みなさい」
「アイリスちゃんも、さっき逆に持ってたよ」
「エクレア」
スフレさんは、その横で静かにロープを整理しています。
三人とつきみさんのテントは、思っていたより早く形になりました。
別の場所では、フランボワーズさんがテント袋の上へ座っています。
「フランボワーズ」
アールグレイさんが呼びました。
「何?」
「そこに座ってると、部品が出せない」
「重しになってる」
「今は風が弱いから、重しはいらない」
「じゃあ、何をすればいい?」
「このロープを持ってて」
「座ったままでいい?」
「そこから動かなければ」
「得意」
フランボワーズさんがロープを固定している間に、アールグレイさんとワッフルさんがポールを組みました。
「フランボワーズ、少し引いて」
「このくらい?」
「もう少し」
「動かずにできる仕事、意外とあるね」
「だから最初から探して」
ワッフルさんが、楽しそうに笑っています。
エスプレッソさんは、誰にも声をかけられないまま一本目の杭を打ち。
気づけば、周囲の杭までほとんど終わらせていました。
「エスプレッソさん、早いですね」
プラリネさんが声をかけます。
「同じ動作だから」
「私の分も手伝っていただけますか?」
「いいよ」
「ありがとうございます。私も次を押さえます」
以前なら。
エスプレッソさんが一人で終わらせるところを、遠くから見ていたかもしれません。
今はプラリネさんが隣へ入り。
二人で次の杭を打っています。
私は、先輩と大きなタープを張る係になりました。
「チョコ、そっちを持って」
「はい」
互いに反対側の支柱を立てます。
先輩がロープを引き。
私が位置を確認しました。
「少し右です」
「このくらい?」
「もう少しだけ」
「チョコから見た右?」
「先輩からも右です」
「同じ向きだった」
「向かい合っているので、反対です」
「あ」
先輩が笑います。
「試合では、あんなにお互いの方向を見てたのにね」
「今は戦っていませんから」
「じゃあ、もう一回教えて」
「先輩の左へ少し動かしてください」
「はい」
今度は、きれいに張れました。
タープの下へ影ができると、ミントちゃんとマキアートさんが拍手します。
「お姉ちゃんたち、完成!」
「まだ椅子と机があります」
「でも屋根は完成」
「それはそうですね」
すべてのテントと共用スペースが整った頃。
キャンプ場の中央には、小さな町のような景色ができていました。
今日だけの。
私たちだけの場所です。
それぞれの午後
昼食は簡単なサンドイッチとスープでした。
大がかりな料理は、夜のパーティーまで取っておきます。
食事を終えると、みなさんは思い思いの場所へ散らばりました。
マロンさんとアッサムさんは、広場で簡単なボール遊びを始めます。
「シロ、一緒にやろう!」
「いいよ!」
「午後から全力で走らないでね」
キャラメルさんの声が飛びました。
「軽くやるだけ!」
「その軽くが信用されてないよ」
コレットさんも続けます。
もえぎさんは、湖へ続く道を歩いていました。
私もレンちゃん、フィーちゃん、プラリネさんと一緒についていきます。
「この辺りは、触らない方がいい植物ですか?」
レンちゃんが尋ねました。
「毒があるわけではないけど、葉が細いから服に引っかかりやすいよ」
もえぎさんが答えます。
「道の中央を歩けば大丈夫」
「自然の中でも、見ているところが違いますね」
私が言うと、もえぎさんは少し笑いました。
「チョコちゃんたちがデュエルの動きを見るのと同じかも」
「私は、植物の動きまでは読めません」
「風が吹けば、少しわかるよ」
湖へ着くと、水面に空が映っていました。
ミントちゃんとマキアートさんは、少し離れた場所で写真を撮っています。
「お姉ちゃん、こっち!」
「水際へ近づきすぎないでくださいね」
「わかってる!」
「マキアートさん、お願いします」
「任されました」
「ミントちゃんだけでは不安という意味ですか?」
「二人なら安心という意味です」
フィーちゃんは景色を撮り。
レンちゃんは水面へ落ちた木の葉を眺めています。
プラリネさんは、近くにいたワッフルさんへ話しかけました。
「お茶、湖の近くで飲むのもよさそうですね」
「夕方に持ってこようと思ってた!」
「運ぶのを手伝いましょうか?」
「お願い!」
大勢で来たからといって。
全員が、ずっと同じ場所にいる必要はありません。
仲の良い相手と歩き。
今まで話したことの少ない人へ声をかけ。
少し疲れれば、テントへ戻る。
体育祭の日とは違う、ゆっくりとした時間が流れていました。
大がかりな料理は、夜のパーティーまで取っておきます。
食事を終えると、みなさんは思い思いの場所へ散らばりました。
マロンさんとアッサムさんは、広場で簡単なボール遊びを始めます。
「シロ、一緒にやろう!」
「いいよ!」
「午後から全力で走らないでね」
キャラメルさんの声が飛びました。
「軽くやるだけ!」
「その軽くが信用されてないよ」
コレットさんも続けます。
もえぎさんは、湖へ続く道を歩いていました。
私もレンちゃん、フィーちゃん、プラリネさんと一緒についていきます。
「この辺りは、触らない方がいい植物ですか?」
レンちゃんが尋ねました。
「毒があるわけではないけど、葉が細いから服に引っかかりやすいよ」
もえぎさんが答えます。
「道の中央を歩けば大丈夫」
「自然の中でも、見ているところが違いますね」
私が言うと、もえぎさんは少し笑いました。
「チョコちゃんたちがデュエルの動きを見るのと同じかも」
「私は、植物の動きまでは読めません」
「風が吹けば、少しわかるよ」
湖へ着くと、水面に空が映っていました。
ミントちゃんとマキアートさんは、少し離れた場所で写真を撮っています。
「お姉ちゃん、こっち!」
「水際へ近づきすぎないでくださいね」
「わかってる!」
「マキアートさん、お願いします」
「任されました」
「ミントちゃんだけでは不安という意味ですか?」
「二人なら安心という意味です」
フィーちゃんは景色を撮り。
レンちゃんは水面へ落ちた木の葉を眺めています。
プラリネさんは、近くにいたワッフルさんへ話しかけました。
「お茶、湖の近くで飲むのもよさそうですね」
「夕方に持ってこようと思ってた!」
「運ぶのを手伝いましょうか?」
「お願い!」
大勢で来たからといって。
全員が、ずっと同じ場所にいる必要はありません。
仲の良い相手と歩き。
今まで話したことの少ない人へ声をかけ。
少し疲れれば、テントへ戻る。
体育祭の日とは違う、ゆっくりとした時間が流れていました。
夕食を作ろう
夕方が近づくと、共同調理場へ全員が集まりました。
今夜の料理は、いくつかの班に分かれて作ります。
大きな鍋で煮込む料理。
焼き野菜。
肉や魚の包み焼き。
サラダ。
パン。
最後には、レンちゃんたちが用意した焼き菓子もあります。
「最初に、手を洗ってくださいね」
プラリネさんが言いました。
「調理器具は、使う班ごとに分かれています。わからないものを勝手に使わないで、近くの人へ聞いてください」
仕切るための大きな声ではありません。
みんなが同時に動き始め、どこに何があるかわからなくなりそうだったため、必要なことだけを伝えています。
「チョコちゃん、野菜をお願いしてもいい?」
「はい」
私とプラリネさん。
スフレさん。
マキアートさんで、野菜を切ることになりました。
ミントちゃんも来ようとしましたが。
「お姉ちゃん、私も」
「ミントちゃんは、先ほど材料を運ぶ係になったでしょう?」
「もう運び終わった」
「では、次のものをお願いします」
「まだあるの?」
「あります」
「お姉ちゃん、自然に仕事を増やしてない?」
「必要なものをお願いしています」
スフレさんが、小さく笑いました。
「二人とも仲がいいね」
「はい」
私とミントちゃんの声が重なります。
隣の調理台では、アイリスさんが火の近くに立ち。
エクレアさんが包み焼きの材料を並べていました。
「アイリスちゃん、これ全部入れていい?」
「多いわよ。包めなくなるでしょう」
「大きな包みを作ればいい」
「火が均等に通らないの」
つきみさんが横から一つ取りました。
「少しずつ分けよう」
「つきみちゃんまでアイリスちゃん側!」
「今回はアイリスが合ってるから」
「今回は、とは何よ」
シロさんは、焼き上がる前の料理へ何度も近づいています。
「味見」
キャラメルさんが、その手を止めました。
「まだ火が通ってないよ」
「匂いだけ」
「近すぎる」
コレットさんが、シロさんを一歩後ろへ動かします。
「待って」
「みんな、今日ずっと私を止めてない?」
「止まらないからだよ~」
ミルクさんが笑いました。
フランボワーズさんは、椅子に座りながら串へ野菜を通しています。
「この仕事、いい」
「向いてるでしょう?」
アールグレイさんが言いました。
「座れる。手だけ動かせばいい。完成もわかりやすい」
「最初から、こういう仕事だけにして」
「運ぶ人も必要だからね」
「そこは誰かに任せる」
「全部は任せないで」
ショコラさんとチロルさんは、火の状態を見ながら大鍋を担当していました。
コハクさんが時間を記録しています。
ショコラさんは料理の合間に、大きな飲料容器へ果物と炭酸水を合わせていました。
「夜の飲み物?」
先輩が尋ねます。
「全員が飲めるもの。少しずつ味を変えるよ」
「キャンプでも、ショコラさんらしいですね」
私が言うと、ショコラさんは笑いました。
「料理だけだと、私が予約した人で終わるからね」
夕日の色が濃くなる頃。
調理場には、いくつもの香りが広がっていました。
全員が同じ料理を作ったわけではありません。
得意なことも。
任されたことも違います。
それでも、完成したものは一つの長いテーブルへ集められました。
今夜の料理は、いくつかの班に分かれて作ります。
大きな鍋で煮込む料理。
焼き野菜。
肉や魚の包み焼き。
サラダ。
パン。
最後には、レンちゃんたちが用意した焼き菓子もあります。
「最初に、手を洗ってくださいね」
プラリネさんが言いました。
「調理器具は、使う班ごとに分かれています。わからないものを勝手に使わないで、近くの人へ聞いてください」
仕切るための大きな声ではありません。
みんなが同時に動き始め、どこに何があるかわからなくなりそうだったため、必要なことだけを伝えています。
「チョコちゃん、野菜をお願いしてもいい?」
「はい」
私とプラリネさん。
スフレさん。
マキアートさんで、野菜を切ることになりました。
ミントちゃんも来ようとしましたが。
「お姉ちゃん、私も」
「ミントちゃんは、先ほど材料を運ぶ係になったでしょう?」
「もう運び終わった」
「では、次のものをお願いします」
「まだあるの?」
「あります」
「お姉ちゃん、自然に仕事を増やしてない?」
「必要なものをお願いしています」
スフレさんが、小さく笑いました。
「二人とも仲がいいね」
「はい」
私とミントちゃんの声が重なります。
隣の調理台では、アイリスさんが火の近くに立ち。
エクレアさんが包み焼きの材料を並べていました。
「アイリスちゃん、これ全部入れていい?」
「多いわよ。包めなくなるでしょう」
「大きな包みを作ればいい」
「火が均等に通らないの」
つきみさんが横から一つ取りました。
「少しずつ分けよう」
「つきみちゃんまでアイリスちゃん側!」
「今回はアイリスが合ってるから」
「今回は、とは何よ」
シロさんは、焼き上がる前の料理へ何度も近づいています。
「味見」
キャラメルさんが、その手を止めました。
「まだ火が通ってないよ」
「匂いだけ」
「近すぎる」
コレットさんが、シロさんを一歩後ろへ動かします。
「待って」
「みんな、今日ずっと私を止めてない?」
「止まらないからだよ~」
ミルクさんが笑いました。
フランボワーズさんは、椅子に座りながら串へ野菜を通しています。
「この仕事、いい」
「向いてるでしょう?」
アールグレイさんが言いました。
「座れる。手だけ動かせばいい。完成もわかりやすい」
「最初から、こういう仕事だけにして」
「運ぶ人も必要だからね」
「そこは誰かに任せる」
「全部は任せないで」
ショコラさんとチロルさんは、火の状態を見ながら大鍋を担当していました。
コハクさんが時間を記録しています。
ショコラさんは料理の合間に、大きな飲料容器へ果物と炭酸水を合わせていました。
「夜の飲み物?」
先輩が尋ねます。
「全員が飲めるもの。少しずつ味を変えるよ」
「キャンプでも、ショコラさんらしいですね」
私が言うと、ショコラさんは笑いました。
「料理だけだと、私が予約した人で終わるからね」
夕日の色が濃くなる頃。
調理場には、いくつもの香りが広がっていました。
全員が同じ料理を作ったわけではありません。
得意なことも。
任されたことも違います。
それでも、完成したものは一つの長いテーブルへ集められました。
焚き火のパーティー
夜。
中央広場へ灯りがつきました。
焚き火の周囲には椅子と敷物。
その外側には、ランタンが一定の間隔で置かれています。
料理を並べ。
飲み物を配り。
全員が座れる場所を作りました。
「今度こそ、本当の打ち上げだな!」
シロさんが立ち上がります。
「体育祭の夜も打ち上げだったでしょう?」
コレットさんが言いました。
「あれは第一回。今日は本番」
「では、体育祭より打ち上げの方が二回ありますね」
私が言うと、先輩が笑いました。
「一日分を、二回楽しんでるってことでいいんじゃない?」
ショコラさんが全員のグラスを確認します。
今夜の飲み物は、果物の香りがする炭酸飲料です。
大学生の皆さんも、高校生や中学生と同じものを持っています。
「火の近くでは立ち上がって乾杯しないこと」
ショコラさんが言いました。
「座ったままで」
「はーい!」
エクレアさんとシロさんの返事が重なります。
「では」
先輩が、グラスを少し持ち上げました。
「体育祭の打ち上げと」
フィーちゃんが続けます。
「Kirscheのキャンプが、本当にできたことと」
エクレアさんが手を上げました。
「みんなで集まれたことに!」
「乾杯」
たくさんの声が、夜のキャンプ場へ広がりました。
夕食を食べながら。
昼間に撮った写真を見せ合い。
体育祭の話を、もう一度します。
リレーの〇・〇四秒。
大縄の四十八回。
つきみさんが表彰台へ立ったこと。
先輩と私の決勝。
同じ話でも。
二週間前より、少し笑って話せるようになっていました。
「チョコちゃん、決勝映像はもう見た?」
レンちゃんが聞きます。
「はい。数日前に先輩と一緒に見ました」
「一緒に?」
フィーちゃんが、すぐに反応します。
「指導の続きをしていただいたんです」
「どこが悪かった?」
「最後の攻撃だけではありません。途中にも何度か、先輩の動きを追いすぎていました」
「僕も、チョコの一撃を警戒しすぎて動きが狭くなってたよ」
先輩が答えます。
「次に戦ったら、どうなる?」
シロさんが尋ねました。
「私が勝ちます」
「僕も勝つつもりだけど」
「では、次も全力ですね」
「うん」
つきみさんが、焚き火の向こうから言いました。
「その前に、私が二人とも倒すよ」
「つきみさんも、まだ続いていたんですね」
「忘れてないよ」
アイリスさんが、満足そうに頷きます。
「それでいいのよ。三位で満足されては困るもの」
「アイリスは何位だったの?」
エクレアさんが聞きます。
「私は出ていないでしょう」
「次は出ればいいじゃん」
「大学生が高校の体育祭に出られるわけないでしょう!」
笑い声が広がりました。
中央広場へ灯りがつきました。
焚き火の周囲には椅子と敷物。
その外側には、ランタンが一定の間隔で置かれています。
料理を並べ。
飲み物を配り。
全員が座れる場所を作りました。
「今度こそ、本当の打ち上げだな!」
シロさんが立ち上がります。
「体育祭の夜も打ち上げだったでしょう?」
コレットさんが言いました。
「あれは第一回。今日は本番」
「では、体育祭より打ち上げの方が二回ありますね」
私が言うと、先輩が笑いました。
「一日分を、二回楽しんでるってことでいいんじゃない?」
ショコラさんが全員のグラスを確認します。
今夜の飲み物は、果物の香りがする炭酸飲料です。
大学生の皆さんも、高校生や中学生と同じものを持っています。
「火の近くでは立ち上がって乾杯しないこと」
ショコラさんが言いました。
「座ったままで」
「はーい!」
エクレアさんとシロさんの返事が重なります。
「では」
先輩が、グラスを少し持ち上げました。
「体育祭の打ち上げと」
フィーちゃんが続けます。
「Kirscheのキャンプが、本当にできたことと」
エクレアさんが手を上げました。
「みんなで集まれたことに!」
「乾杯」
たくさんの声が、夜のキャンプ場へ広がりました。
夕食を食べながら。
昼間に撮った写真を見せ合い。
体育祭の話を、もう一度します。
リレーの〇・〇四秒。
大縄の四十八回。
つきみさんが表彰台へ立ったこと。
先輩と私の決勝。
同じ話でも。
二週間前より、少し笑って話せるようになっていました。
「チョコちゃん、決勝映像はもう見た?」
レンちゃんが聞きます。
「はい。数日前に先輩と一緒に見ました」
「一緒に?」
フィーちゃんが、すぐに反応します。
「指導の続きをしていただいたんです」
「どこが悪かった?」
「最後の攻撃だけではありません。途中にも何度か、先輩の動きを追いすぎていました」
「僕も、チョコの一撃を警戒しすぎて動きが狭くなってたよ」
先輩が答えます。
「次に戦ったら、どうなる?」
シロさんが尋ねました。
「私が勝ちます」
「僕も勝つつもりだけど」
「では、次も全力ですね」
「うん」
つきみさんが、焚き火の向こうから言いました。
「その前に、私が二人とも倒すよ」
「つきみさんも、まだ続いていたんですね」
「忘れてないよ」
アイリスさんが、満足そうに頷きます。
「それでいいのよ。三位で満足されては困るもの」
「アイリスは何位だったの?」
エクレアさんが聞きます。
「私は出ていないでしょう」
「次は出ればいいじゃん」
「大学生が高校の体育祭に出られるわけないでしょう!」
笑い声が広がりました。
Flatwhiteの一曲
食事が落ち着いた頃。
シロさんたち四人が、焚き火の前へ移動しました。
今日の荷物が多かった理由の一つです。
コレットさんの小型パーカッション。
キャラメルさんの携帯型キーボード。
ミルクさんのギター。
シロさんの小さなアコースティックベース。
「本当に持ってきたんですね」
私が言うと、シロさんが笑いました。
「キャンプで演奏したかったから」
「練習、足りてる?」
コレットさんが聞きます。
「今さら確認する?」
「本番前には確認する」
「失敗しても、キャンプだから大丈夫だよ~」
ミルクさんが、白いピックを持ちました。
コレットさんが答えました。
「一曲だけ。短いもの」
演奏するのは、四人で最初に形にした曲。
<無題01>
です。
コレットさんが、四つ数えます。
一。
二。
三。
四。
小さなリズムが始まりました。
その上へ、ベース。
鍵盤。
ギター。
最初に聞いた時より、音がずっと長く続きます。
ミルクさんのギターは、もう一つの音だけではありません。
コードが変わり。
シロさんのベースと重なり。
キャラメルさんの鍵盤が、その間をつなぎます。
コレットさんは、ほかの三人を見ながらリズムを少しずつ変えていました。
完璧ではありません。
一度だけ、シロさんが早く入ります。
コレットさんがすぐに戻る場所を出し。
キャラメルさんが音を伸ばし。
ミルクさんも次のコードへ戻りました。
誰も止まりません。
最後の一音。
焚き火が小さく弾ける音と、演奏の余韻が重なりました。
数秒。
静けさ。
そのあと。
大きな拍手が起こります。
「すごい!」
エクレアさんが真っ先に立ち上がりかけ。
アイリスさんに腕を引かれました。
「火の近くでは座ったまま」
「あ、そうだった!」
「でも、よかったわ」
アイリスさんは四人を見ました。
「ちゃんと一曲になっていた」
「アイリスちゃんが褒めた!」
「別に、よいものをよいと言っただけよ」
Flatwhiteの四人は、顔を見合わせました。
最初に笑ったのはミルクさんです。
「キャンプで弾けてよかったね~」
「うん」
コレットさんも、わずかに笑いました。
「次は、もう少し長くできる」
「もう次の話してる」
シロさんが言います。
「シロも、さっき外したところ練習して」
「ばれてた?」
「最初から」
その言葉に。
キャラメルさんも笑いました。
シロさんたち四人が、焚き火の前へ移動しました。
今日の荷物が多かった理由の一つです。
コレットさんの小型パーカッション。
キャラメルさんの携帯型キーボード。
ミルクさんのギター。
シロさんの小さなアコースティックベース。
「本当に持ってきたんですね」
私が言うと、シロさんが笑いました。
「キャンプで演奏したかったから」
「練習、足りてる?」
コレットさんが聞きます。
「今さら確認する?」
「本番前には確認する」
「失敗しても、キャンプだから大丈夫だよ~」
ミルクさんが、白いピックを持ちました。
コレットさんが答えました。
「一曲だけ。短いもの」
演奏するのは、四人で最初に形にした曲。
<無題01>
です。
コレットさんが、四つ数えます。
一。
二。
三。
四。
小さなリズムが始まりました。
その上へ、ベース。
鍵盤。
ギター。
最初に聞いた時より、音がずっと長く続きます。
ミルクさんのギターは、もう一つの音だけではありません。
コードが変わり。
シロさんのベースと重なり。
キャラメルさんの鍵盤が、その間をつなぎます。
コレットさんは、ほかの三人を見ながらリズムを少しずつ変えていました。
完璧ではありません。
一度だけ、シロさんが早く入ります。
コレットさんがすぐに戻る場所を出し。
キャラメルさんが音を伸ばし。
ミルクさんも次のコードへ戻りました。
誰も止まりません。
最後の一音。
焚き火が小さく弾ける音と、演奏の余韻が重なりました。
数秒。
静けさ。
そのあと。
大きな拍手が起こります。
「すごい!」
エクレアさんが真っ先に立ち上がりかけ。
アイリスさんに腕を引かれました。
「火の近くでは座ったまま」
「あ、そうだった!」
「でも、よかったわ」
アイリスさんは四人を見ました。
「ちゃんと一曲になっていた」
「アイリスちゃんが褒めた!」
「別に、よいものをよいと言っただけよ」
Flatwhiteの四人は、顔を見合わせました。
最初に笑ったのはミルクさんです。
「キャンプで弾けてよかったね~」
「うん」
コレットさんも、わずかに笑いました。
「次は、もう少し長くできる」
「もう次の話してる」
シロさんが言います。
「シロも、さっき外したところ練習して」
「ばれてた?」
「最初から」
その言葉に。
キャラメルさんも笑いました。
夜空の下で
焚き火が小さくなり始めると。
何人かはテントへ戻り。
何人かは、ランタンの近くで話を続けていました。
私はミントちゃんとマキアートさんを連れ、湖の近くまで歩きます。
一人ではありません。
先輩。
つきみさん。
アイリスさんたちも一緒です。
照明のある遊歩道から外れない範囲で、水面を眺めました。
空には、学校の近くでは見えなかった星が浮かんでいます。
「多いね」
ミントちゃんが、空を見上げました。
「だんのこまちの星空とは違いますね」
「向こうは、きれいに見えるように作られてるもんね」
マキアートさんが言います。
「こちらは雲が来れば隠れますし、同じ時間でも毎日違います」
「どちらが好き?」
ミントちゃんが尋ねました。
私は、少し考えます。
「どちらも好きです」
「お姉ちゃんらしい答え」
「決める必要はありませんから」
少し離れた場所。
つきみさんは、アイリスさんと並んで湖を見ています。
「体育祭、来てるって先に言ってもよかったのに」
「何度も同じことを言わないで」
アイリスさんが答えます。
「驚かせたかったんでしょう?」
エクレアさんが横から言いました。
「違うわ」
「じゃあ、つきみちゃんが緊張しないように?」
スフレさんが尋ねます。
「……それも少しはあるわよ」
つきみさんが、静かに笑いました。
「ありがとう」
「もう言われたわ」
「キャンプに来てくれたことも」
「それは、私も来たかったから」
「うん」
今度のアイリスさんは、否定しませんでした。
先輩は、私の隣へ立っています。
「チョコ」
「はい?」
「キャンプ、楽しい?」
「とても」
「大勢になって、少し疲れた?」
「少しだけです」
正直に答えました。
誰かと話し。
次の場所へ移動し。
料理を作り。
演奏を聞き。
楽しいことでも、疲れることはあります。
「でも」
星と。
水面と。
少し離れた場所から聞こえる、皆さんの声。
「この人数で来られて、よかったです」
「僕も」
先輩は、湖の向こうを見ました。
「高校へ入った頃は、こんなことになると思ってた?」
「いいえ」
入学したばかりの頃。
同じ教室で、誰と話せばよいのかわからず。
学校へ知っている人がいることだけを頼りにしていました。
今は。
先輩の隣に立ち。
後ろにはレンちゃんやフィーちゃん。
ミントちゃん。
FoFの仲間。
高校で出会った方々。
たくさんの声があります。
「先輩は?」
「チョコが入学してきたら、にぎやかになるとは思ってたよ」
「私一人でですか?」
「チョコが誰かと仲良くなって。その人と僕たちも話すようになって。少しずつ増えるんじゃないかなって」
先輩は笑いました。
「ここまで増えるとは思ってなかったけど」
「私もです」
「でも、いいね」
「はい」
焚き火の広場から。
ガトーさんの声が届きました。
「そろそろ火を落とすよ!」
「戻りましょうか」
「うん」
二人で歩き始めます。
すぐ後ろには、ミントちゃんたち。
つきみさんと大学生の三人。
誰かが一人になることなく。
夜のキャンプ場へ戻りました。
何人かはテントへ戻り。
何人かは、ランタンの近くで話を続けていました。
私はミントちゃんとマキアートさんを連れ、湖の近くまで歩きます。
一人ではありません。
先輩。
つきみさん。
アイリスさんたちも一緒です。
照明のある遊歩道から外れない範囲で、水面を眺めました。
空には、学校の近くでは見えなかった星が浮かんでいます。
「多いね」
ミントちゃんが、空を見上げました。
「だんのこまちの星空とは違いますね」
「向こうは、きれいに見えるように作られてるもんね」
マキアートさんが言います。
「こちらは雲が来れば隠れますし、同じ時間でも毎日違います」
「どちらが好き?」
ミントちゃんが尋ねました。
私は、少し考えます。
「どちらも好きです」
「お姉ちゃんらしい答え」
「決める必要はありませんから」
少し離れた場所。
つきみさんは、アイリスさんと並んで湖を見ています。
「体育祭、来てるって先に言ってもよかったのに」
「何度も同じことを言わないで」
アイリスさんが答えます。
「驚かせたかったんでしょう?」
エクレアさんが横から言いました。
「違うわ」
「じゃあ、つきみちゃんが緊張しないように?」
スフレさんが尋ねます。
「……それも少しはあるわよ」
つきみさんが、静かに笑いました。
「ありがとう」
「もう言われたわ」
「キャンプに来てくれたことも」
「それは、私も来たかったから」
「うん」
今度のアイリスさんは、否定しませんでした。
先輩は、私の隣へ立っています。
「チョコ」
「はい?」
「キャンプ、楽しい?」
「とても」
「大勢になって、少し疲れた?」
「少しだけです」
正直に答えました。
誰かと話し。
次の場所へ移動し。
料理を作り。
演奏を聞き。
楽しいことでも、疲れることはあります。
「でも」
星と。
水面と。
少し離れた場所から聞こえる、皆さんの声。
「この人数で来られて、よかったです」
「僕も」
先輩は、湖の向こうを見ました。
「高校へ入った頃は、こんなことになると思ってた?」
「いいえ」
入学したばかりの頃。
同じ教室で、誰と話せばよいのかわからず。
学校へ知っている人がいることだけを頼りにしていました。
今は。
先輩の隣に立ち。
後ろにはレンちゃんやフィーちゃん。
ミントちゃん。
FoFの仲間。
高校で出会った方々。
たくさんの声があります。
「先輩は?」
「チョコが入学してきたら、にぎやかになるとは思ってたよ」
「私一人でですか?」
「チョコが誰かと仲良くなって。その人と僕たちも話すようになって。少しずつ増えるんじゃないかなって」
先輩は笑いました。
「ここまで増えるとは思ってなかったけど」
「私もです」
「でも、いいね」
「はい」
焚き火の広場から。
ガトーさんの声が届きました。
「そろそろ火を落とすよ!」
「戻りましょうか」
「うん」
二人で歩き始めます。
すぐ後ろには、ミントちゃんたち。
つきみさんと大学生の三人。
誰かが一人になることなく。
夜のキャンプ場へ戻りました。
朝を見る約束
就寝前。
ワッフルさんが全員へ確認しました。
「明日の朝日、見る人!」
ほとんどの手が上がります。
フランボワーズさんだけは、寝袋に入りながら目を逸らしました。
「フランボワーズ」
アールグレイさんが呼びます。
「寝てる」
「まだ起きてるでしょう?」
「明日の朝は寝てる予定」
「全員で見ようって話してたよね」
「夕方の太陽でよくない?」
「昇る方を見るの」
「眠い方」
「起こすから」
「起こされても起きない」
ワッフルさんが笑いました。
「私も起こしに行く!」
「二人になると、余計に起きたくない」
「では、私も行こうか」
もえぎさんも加わります。
「三人は多い」
「なら、一人で起きてください」
「……考える」
結局。
全員が、朝日の時間へ合わせて目覚ましを設定しました。
夜。
テントの中へ入ると。
すぐ近くから、誰かの笑い声。
少し離れた場所から、荷物を動かす音。
やがて。
一つずつ静かになっていきました。
ミントちゃんは、眠る直前まで今日の写真を見ています。
「お姉ちゃん」
「はい?」
「また、みんなで来たいね」
「次は、今回ほど簡単には貸し切れないかもしれませんよ」
「貸し切りじゃなくてもいいよ」
ミントちゃんは目を閉じました。
「一緒なら」
「そうですね」
私も目を閉じます。
「また来ましょう」
外では。
夜の風が、テントの布を小さく揺らしていました。
ワッフルさんが全員へ確認しました。
「明日の朝日、見る人!」
ほとんどの手が上がります。
フランボワーズさんだけは、寝袋に入りながら目を逸らしました。
「フランボワーズ」
アールグレイさんが呼びます。
「寝てる」
「まだ起きてるでしょう?」
「明日の朝は寝てる予定」
「全員で見ようって話してたよね」
「夕方の太陽でよくない?」
「昇る方を見るの」
「眠い方」
「起こすから」
「起こされても起きない」
ワッフルさんが笑いました。
「私も起こしに行く!」
「二人になると、余計に起きたくない」
「では、私も行こうか」
もえぎさんも加わります。
「三人は多い」
「なら、一人で起きてください」
「……考える」
結局。
全員が、朝日の時間へ合わせて目覚ましを設定しました。
夜。
テントの中へ入ると。
すぐ近くから、誰かの笑い声。
少し離れた場所から、荷物を動かす音。
やがて。
一つずつ静かになっていきました。
ミントちゃんは、眠る直前まで今日の写真を見ています。
「お姉ちゃん」
「はい?」
「また、みんなで来たいね」
「次は、今回ほど簡単には貸し切れないかもしれませんよ」
「貸し切りじゃなくてもいいよ」
ミントちゃんは目を閉じました。
「一緒なら」
「そうですね」
私も目を閉じます。
「また来ましょう」
外では。
夜の風が、テントの布を小さく揺らしていました。
昇る朝日
目覚ましが鳴ったのは、まだ空が暗い時間でした。
眠い目をこすりながらテントを出ます。
広場には、すでに何人か集まっていました。
ワッフルさんは、朝とは思えないほど元気です。
「おはよう!」
「声が大きい……」
フランボワーズさんが、アールグレイさんに半分引かれるように歩いてきます。
「起きたんですね」
私が言うと、フランボワーズさんは目を細めました。
「三人来たから」
「自分で起きれば一人で済んだでしょう?」
アールグレイさんが言います。
「次はそうする」
「次も見るんだ」
「起きられたら」
全員が揃うと。
湖の横から続く、短い坂道を上りました。
展望地まで、十分ほどです。
空はまだ青黒く。
山の向こうだけが、少しずつ明るくなっています。
誰も大きな声を出しませんでした。
眠いからだけではありません。
暗い空が、少しずつ変わっていく様子を見逃したくなかったのだと思います。
展望地へ着くと、湖とキャンプ場を一緒に見下ろせました。
テント。
焚き火の消えた広場。
昨日、全員で料理を作った調理場。
その向こう。
山の端が、淡い橙色に変わり始めます。
「来るよ」
もえぎさんが、小さく言いました。
最初は、細い光でした。
山の稜線から。
ほんの少しだけ。
明るい円が顔を出します。
水面へ、一本の光が伸びました。
少しずつ。
空の色が変わっていきます。
青。
紫。
橙。
そして。
朝日が、完全に山の向こうから昇りました。
「きれい……」
ミルクさんの声。
誰も、すぐには続けませんでした。
シロさんも。
エクレアさんも。
ワッフルさんも。
今だけは静かです。
私は、隣に立つ先輩を見ました。
先輩も、同じ朝日を見ています。
その反対側には、ミントちゃん。
少し後ろには、レンちゃんとフィーちゃん。
プラリネさん。
つきみさん。
FoFで知り合った仲間。
学校で出会った友達。
現実では、つい最近初めて会った方々。
同じ場所にいる全員が。
昇ったばかりの光に照らされていました。
「チョコ」
先輩が、小さく呼びます。
「はい」
「次は、何をしようか」
体育祭が終わり。
キャンプも、もうすぐ終わります。
それでも。
終わったあとには、また次の予定があります。
次の試合。
次の練習。
次に遊ぶ場所。
まだ知らない人との出会い。
「たくさんありますね」
私は朝日の方を向きました。
「まずは、みなさんと朝食を作りましょう」
「すごく現実的だ」
「お腹が空いていますから」
「僕も」
「そのあとは?」
先輩が尋ねます。
私は、周りにいる皆さんを見ました。
朝日に照らされ。
眠そうにしながらも笑っている顔。
「帰ってから、考えます」
今度は先輩が笑いました。
「うん。それでいいね」
高校へ入学した日の私は。
知っている人を見つけられるかを心配していました。
けれど今。
一人を探さなくても。
周りには、たくさんの声があります。
春から始まった日々は。
体育祭を越え。
一晩のキャンプを越え。
新しい朝へつながりました。
朝日は、誰か一人だけではなく。
そこにいる全員を、同じ光で照らしていました。
眠い目をこすりながらテントを出ます。
広場には、すでに何人か集まっていました。
ワッフルさんは、朝とは思えないほど元気です。
「おはよう!」
「声が大きい……」
フランボワーズさんが、アールグレイさんに半分引かれるように歩いてきます。
「起きたんですね」
私が言うと、フランボワーズさんは目を細めました。
「三人来たから」
「自分で起きれば一人で済んだでしょう?」
アールグレイさんが言います。
「次はそうする」
「次も見るんだ」
「起きられたら」
全員が揃うと。
湖の横から続く、短い坂道を上りました。
展望地まで、十分ほどです。
空はまだ青黒く。
山の向こうだけが、少しずつ明るくなっています。
誰も大きな声を出しませんでした。
眠いからだけではありません。
暗い空が、少しずつ変わっていく様子を見逃したくなかったのだと思います。
展望地へ着くと、湖とキャンプ場を一緒に見下ろせました。
テント。
焚き火の消えた広場。
昨日、全員で料理を作った調理場。
その向こう。
山の端が、淡い橙色に変わり始めます。
「来るよ」
もえぎさんが、小さく言いました。
最初は、細い光でした。
山の稜線から。
ほんの少しだけ。
明るい円が顔を出します。
水面へ、一本の光が伸びました。
少しずつ。
空の色が変わっていきます。
青。
紫。
橙。
そして。
朝日が、完全に山の向こうから昇りました。
「きれい……」
ミルクさんの声。
誰も、すぐには続けませんでした。
シロさんも。
エクレアさんも。
ワッフルさんも。
今だけは静かです。
私は、隣に立つ先輩を見ました。
先輩も、同じ朝日を見ています。
その反対側には、ミントちゃん。
少し後ろには、レンちゃんとフィーちゃん。
プラリネさん。
つきみさん。
FoFで知り合った仲間。
学校で出会った友達。
現実では、つい最近初めて会った方々。
同じ場所にいる全員が。
昇ったばかりの光に照らされていました。
「チョコ」
先輩が、小さく呼びます。
「はい」
「次は、何をしようか」
体育祭が終わり。
キャンプも、もうすぐ終わります。
それでも。
終わったあとには、また次の予定があります。
次の試合。
次の練習。
次に遊ぶ場所。
まだ知らない人との出会い。
「たくさんありますね」
私は朝日の方を向きました。
「まずは、みなさんと朝食を作りましょう」
「すごく現実的だ」
「お腹が空いていますから」
「僕も」
「そのあとは?」
先輩が尋ねます。
私は、周りにいる皆さんを見ました。
朝日に照らされ。
眠そうにしながらも笑っている顔。
「帰ってから、考えます」
今度は先輩が笑いました。
「うん。それでいいね」
高校へ入学した日の私は。
知っている人を見つけられるかを心配していました。
けれど今。
一人を探さなくても。
周りには、たくさんの声があります。
春から始まった日々は。
体育祭を越え。
一晩のキャンプを越え。
新しい朝へつながりました。
朝日は、誰か一人だけではなく。
そこにいる全員を、同じ光で照らしていました。