ASH TO ASH ◆7pf62HiyTE



The 0(4)th movement ◆◆◆◆◆◆×◆◆◆◆



「ねぇ、◆◆◆……」


 そう1人の少女がもう1人の少女に話しかける――


 対話、一言で言えばガールズトーク、度が過ぎれば百合とも呼ばれ極一部の人々が喜びかねない話が展開されるであろう――
 無論、この場ではそこまで盛り上がることは無いであろうが――そういった行為である事に違いはあるまいて――
 その行為自体は何ら変哲のない行為だろう――
 だが、状況的に言えばある一点で特異と言える――


「『君』はどうしてそんなに安らかな顔で死ねたの――」


 それは片方の少女が既に死人だったからだ――
 思わずもう片方の少女ももう1つの『素』の姿をさらけ出す程の――



 唐突だが――物語、つまりはストーリーというのは誰の為のであろうか?


 読み手が読んで歓喜に震える為? 無論、現実的にはその通りだ、だが今の話はそれを言いたいわけでは断じてない。
 展開されている物語が誰の為のものかと言っているのだ。
 何が言いたいのか? ――ひとまずその答えについては置いておこう。


 さて、実に唐突にして今更の話ではあるが――この地には66人の老若男女がたった1人だけの勝者を決める生死を懸けた戦いを強いられている。
 要するに理論上はたった1人の生還者を決める。逆を言えば64人の死者、あるいは退場者を決める戦いとも言えよう――
 確認出来る限り現段階までで――実に約30人前後が退場した事になる――
 約11時間前後で4割以上、あるいは半数弱が退場する状況――これが多いか少ないか、そんな議論をここでするつもりはない――
 重要なのは30人前後が退場、いやあえて言おう、死亡した事実に意味があるのだ――


 そしてこれから語られる物語はそんな死者となった参加者に遭遇した参加者の物語だ――
 間違えるな、もう一度言おう、この物語は死者と遭遇した者、その者の為の物語だ――
 まず、死者にこの言葉を捧げよう――


 earth to earth ――
 ashes to ashes ――
 dusu to dust ――


 土は土に、灰は灰に、塵は塵に――


 深く考える事は無い――死者が土、あるいは灰か塵に帰るだけ――それだけの事だ――
 そう、それは死者に対する礼儀程度の事でしか無いのだ――








The 1st movements 沖一也×蒼乃美希×明堂院いつき



「これは一体……?」


 これまでの話で既に語られる事ではあるが、今一度状況を簡単に整理しておこう、


 F-9にある警察署で合流を果たした9人の老若男女、その内蒼乃美希、及び明堂院いつきは早乙女乱馬から彼女達の仲間である山吹祈里がG-8にある中学校にいるという情報を聞き、沖一也と共に中学校に向かった――
 乱馬の話によれば何事も無ければ祈里、及び彼女と行動を共にしている園咲霧彦と合流出来る――筈であった。


 移動そのものは殆ど何事も無く、比較的ハイペースで行う事が出来た。
 無論その要因の1つに美希及びいつき自身が祈里との合流を急ぎたかった事情があったからだ。
 そんな彼女達ではあったが周辺の警戒に関しては余念は無かった。その辺りは本来ならば2人を守らなければならない立場にいる筈の仮面ライダースーパー1こと沖自身も感嘆していた。


「(流石はプリキュアか……)」


 そう思う沖ではあったが――実の所、その認識は誤りである。
 彼女達は今現在読者諸兄が確認出来る20人以上存在するプリキュアの中でもしっかり者の部類と言える。
 つまり、彼女達の行動に余念がないのはプリキュアだからではなく、彼女達の性格及び経験に起因するという事だ。


 かくして3人は無事に中学校に到着したわけだが――中には誰もいなかった。
 気になった点としては2つ―校内に荒らされた痕跡があった、特に家庭科室は何かの爆発があったのでは無いのかと誤認する程破壊の跡が見られた。それが1点、
 もう1点は保健室及びその近くに幾つかの道具が置き去りにされた点だ。


「誰かがここを襲ったのかしら?」


 真っ先に考えたのは何者かの襲撃に遭い、戦いが繰り広げられその後離脱した――


「でも美希、誰かがここで戦ったのは確かだとしても、それは離脱とは関係ないと思うよ」


 しかし美希の推測をいつきが否定する。


「どうして?」
「ほら、あれ……」


 そう言っていつきはある物を指す。


「……時計? あっ……」


 一般的な中学校には各教室に概ね掛け時計というものが存在している。そしてそれらは無事に機能しており何事も無ければ今現在の時刻を指す筈である――が、
 家庭科室を含めた幾つかの時計は3時前後で止まっていたのだ。つまりその時に何かが起こり破損、あるいは電池が外れた事により機能を停止した事を意味する。
 十中八九、それは戦いによるものだ。そしてそれは概ね3時頃に起こったという事になる。


 だが――


「確か乱馬さん達が中学校を発ったのは放送が終わった後……」


 美希達は落ち着いて情報交換を行う前に警察署を発った為、あの場にいた乱馬達から情報を殆ど得られなかった――と言いたい所だがそれは正確ではない。
 各々が勝手に話し始めた為、普通に考えればその情報を処理仕切れない。だが美希はその勝手に話し始めた話の中で、乱馬が放送後に中学校を出た事を口にしていた事を覚えていたのだ。
 その事から乱馬と祈里達が放送後、つまりは6時過ぎまでは中学校で行動を共にしていた事は間違いない。


「だったら祈里達はその戦いで中学校を出たわけじゃないね」


 そう言いながらいつきは保健室及びその近くから回収した幾つかの道具(ちなみにそれらの道具をいつきが所持しているのは彼女の手持ち道具が一番少ないから)の中からある物を取り出す。
 それは保健室に置かれていた春眠香の説明書である(なお春眠香自体は今更使えそうも無いので置いたままである)。
 その中には色々書かれてはいたが重要なのは春眠香の香りを嗅いだ者は眠ってしまい、夏が来る――つまりは蚊取り線香の匂いを嗅ぐまでは目を覚ます事はない事、
 そして今回は1時間で蚊取り線香の匂いを発する仕掛けが施されている――つまり、1時間だけ眠らせるものという事だ。
 保健室にそれが置かれていたという事は何者かがそれを使用し何者かを眠らせた事になる。


「乱馬さんの話では祈里の他に霧彦さんもいた筈……」


 中学校には祈里の他に霧彦もいた。故に片方がもう片方を眠らせた事になる。
 春眠香の特性上、眠っている1時間に限っては通常よりも安全を確保出来るわけではあるが――


「幾ら眠っている間は安全だからって、祈里が誰かを眠らせるのは流石に無いと……」
「それ以前に祈里の場合そこまで考え回らないわよ」


 となると、霧彦が祈里を眠らせ――一時的に守る為に使用したと考えて良い。乱馬の話では子供達を守る為に馬鹿な事をした大馬鹿野郎らしいからそれから考えてもまず間違いないだろう。


「でも……幾らなんでも祈里を眠らせたまま1人にするなんて……」
「……逆を言えば、そうせざるを得ない何かが起こったんじゃないかな」


 つまり、乱馬達が中学校を発った後、どうしても中学校を発たなければならない事態が起こった。
 だが、それはあまりにも危険で命の危険があった。しかし祈里にしても霧彦にしても絶対に引かないだろう。
 そこで霧彦は祈里を一時的にでも守る為、敢えて使ったのだろう。


「乱馬さん達がここを出た時間から考えて……」
「その後に何かが起こって祈里が眠り再び目を覚ますのが1時間後……」


 いつき達は祈里が眠らされた時刻を乱馬達が発ったらしい時刻から約1時間前後である7時から8時だと推測した。
 そして再び目を覚ますのは8時から9時――


「祈里が目を覚ましたら間違いなく霧彦さんを捜しに向かうわね」
「僕達がもう少し早く来ていたら間に合ったかも知れなかったのに……」


 勿論、美希にしろいつきにしろ遊んでいたわけではない。だが、もう少し迅速に動けていれば合流出来たのではと考えずにはいられない――



「………………」



 その最中、後ろで2人の話を静かに聞いていた沖が口を開く、



「君達、本当に女子中学生?」
「え、はい。男子の制服は着ていますけど」
「よくそう見えないって言われはするわ」
「いや、外見とかじゃなくて……」



 両者のやりとりが中学生の会話じゃ無い――沖はそう思ってしまった。



「ともかく、祈里達がここにいない以上は長々といても仕方ないわね」
「警察署に戻るか……近くを探……」
「………………!! 2人とも静かにしてくれ!!」


 と、2人の会話を遮る様に沖が声を荒げた。


「!? ……これは……!」
「かすかだけど聞こえるわ……」
「ああ……俺にはハッキリと聞こえる……」


 3人は周囲を見回し音の方向を確かめる。そして――


「沖さん、音の方向は……」
「距離まではわからない……だが方向はあのタワー……風都タワーの方角に間違いない」


 3人が耳にした音はある戦いにおいてある参加者が繰り出した技によって発生した轟音である。
 その技によって大きな気柱が発生した為、それを視認出来れば距離及びおおよその場所も割り出せたが不幸にも3人とも校舎の奥にいた為気柱を確認する事は出来なかった。
 それどころか改造人間である沖が知覚出来なければ後の2人は気付く事すら出来なかっただろう。


 何にせよ、状況は変わった。祈里達の安否は無論心配だがそればかりを優先するわけにはいかない。
 轟音が響いたという事はその場所には間違いなく参加者がいる。同時にその周辺にいる参加者――つまりは市街地の広範囲にいるであろう参加者が何かしらのリアクションを起こす。
 そうなれば次から次へと戦いが起こる事だってあるだろう。
 つまり今自分達がすべき事は音の方向に向かいその周辺にいるであろう参加者との合流あるいは保護である。無論、祈里達もそこにいる可能性は多分にある。


「変身!」
「チェィンジ! プリキュア! ビート・アーップッ!!」
「プリキュア! オープン・マイ・ハート!」


 故に三者共に――


「仮面ライダースーパー1!!」
「ブルーのハートは希望のしるし、つみたてフレッシュ! キュアベリー!!」
「陽の光浴びる一輪の花! キュアサンシャイン!!」


 各々の姿へと変身した――


「2人とも、俺について来……」
「沖さ……いや仮面ライダースーパー1、お願いがあります」
「ここは別れましょう」


 3人共に行動しようとしたスーパー1に対し、キュアサンシャインとキュアベリーは別々に手分けして探したいと提案した。
 単身だけで勝てない相手が数多くいる状況、それを踏まえれば別れて単独行動する事は些か危険と言える。
 だが目的地が特定されているならばともかく、数キロあるいは十数キロ四方に広がる市街地を探すのは単一グループだけでは厳しいと言わざるを得ない。
 今にも危機に脅かされている者達がいるのかもしれないのだ、多少の危険はあっても手分けして事にあたり迅速に対応すべきだろう。


「だが……」


 スーパー1も彼女達の言い分は理解できる。
 しかし幾ら力があるとはいえ未来のある若い子供達を単独行動させて危険にさらす事は決して容認出来ない。
 無論、スーパー1の心中を2人が理解出来ないわけもない。しかし、


「スーパー1の言いたい事はわかるわ!」
「それでもこの広い市街地で危機に晒されている人々を助ける為には分かれて探す方が得策だと思うから!」


 2人としても人々を守りたい事に違いは無いのだ。その彼女達の言葉を聞き、先輩である仮面ライダー2号こと一文字隼人と別行動をする際、それを渋る沖に対し彼が口にした言葉を思い出す。


『何故俺だけにこだわる? お前も仮面ライダーなら、優先するのは何だ?』
『俺を心配するのは勝手だが、何を優先させるべきかをしっかりと見極めろ』
『こうしている間にも罪のない命が次々に犠牲になったらどうする? だったら、一緒に行くよりも別々に行動する方が効率も良いだろ?』


 状況的にはあの時と似た状況だ。沖自身は納得出来なかったものの最終的には折れ一文字の提案を受け入れ別行動を取った。
 そして結果的に一文字の判断は正しかった。別行動を取らなければノーザ達の襲撃からいつきやアインハルト・ストラトスを助ける事は出来なかった。
 いや、むしろ素直に一文字の提案を受け入れてさえいればいつき達と共に戦っていた大先輩である仮面ライダー1号本郷猛を含めた多くの人々を助ける事も出来ただろう。
 それは沖自身の判断ミスと言える。勿論、沖自身の考えが間違っているわけではない。だがほんの僅か優先順位を間違えたが為に多くの犠牲者を出した事は決して忘れてはならない。
 仮面ライダーとして人々の夢や想いを守るのは当然のこと、そしてそれはプリキュア達にとっても変わりは無い。故に――


「わかった、ここは手分けして探そう――」


 スーパー1は2人の提案を受け入れた。


「但し、あくまでも人々の保護が優先だ。危険人物に遭遇したとしても無理に戦う必要は無い。勝てないと思ったならすぐに逃げるんだ。そのまま警察署に戻って孤門さん達に状況を伝えるんだ、いいね」


 が、決して単独では無理をするなという条件を出した。それが最大限の譲歩だ。
 スーパー1こと沖にとってはプリキュアであろうとなかろうと2人もまた守るべき対象なのだから――


「「はい!!」」


 2人もまたスーパー1の言葉を受け入れた。が、


「でもスーパー1、それは貴方も同じです」
「貴方も絶対に無茶はしないで下さい」


 一方の2人にとってもスーパー1には死んで欲しくは無いのだ。だからこそそう返すのだ。


「ああ」


 かくして、その言葉を最後に3人はそれぞれの方向へと急ぎ足を進めた――


 人々を保護し再び合流出来る事を信じて――





 さて――


 この後、3人は市街地を捜索するわけではあるが、その先で3人はおのおの1人の人物と遭遇する事となる――


 無論、彼等が遭遇した人物は何れも違う人物ではある――


 しかし、ある1点共通点があった――


 それは――


 彼等が遭遇したのは皆死人だったという事だ――








The 2nd movement 沖一也×山吹祈里



「これは……」


 2人と別れた後、市街地の捜索をしていたスーパー1だったが、その途中黒ずんだ物体を視認した。
 すぐさまその場所に向かい確認した所――


 それが人だったもの、つまりは焼かれた死体だという事がわかった――


 死体は炎によって焼かれたらしく所々炭化してい所もあった。殺されてから焼かれたのか、焼かれた事で殺されたのかそれはわからないがどちらでも大した違いはないだろう。
 死体の損傷は激しく、それが誰なのかすら判別が出来ない。専門家で無ければ性別すら判別出来ないだろう。
 そう、その死体が合流を目指していた筈の祈里のものであったとしてもそれを確かめる術は無い――恐らく美希が見てもそれが祈里だとはわからないだろう――
 せいぜいスーパー1が理解できたのは背丈からそれが中学生ぐらいの子供だろうという事ぐらいだ――


「………………すまない」


 そう口にするしかなかった。
 その人物が何時殺されたのかはわからない。殺し合いが始まってすぐかも知れないし、ほんの1時間程度前の事だったかも知れない。
 それ故に、スーパー1がそこまで謝る必要は無い。だが、自身がもう少し上手く立ち回れば――そう考えると悔やんでも悔やみきれない。
 だが、それでもこれ以上謝りはしない――


 責任を感じていないわけではない。だが何時までも自分を責め続けては駄目なのだ。
 そう、力があるにも関わらず守れなかったのは自分達仮面ライダーだけではないのだ。
 いつき達プリキュア達も同じなのだ。恐らく、この場に彼女達がいた場合彼女達も自分の無力さを嘆くだろう――
 責任を感じるのは良い、だがそれで過剰に苦しむ必要など無いのだ――


 とはいえそう考えられる様になったのは本郷達を犠牲にしてしまった自分の無力さを嘆いた自身に対しいつきが


『僕だって、あの場で戦っていたんです! 僕だって、もっと強ければ、みんなを救えたかもしれないんだ!
 一也さんが自分を責めるたび、僕も自分を責めてしまうんです! だって、僕も…………プリキュアの力があるのに、友達を救えなかった……それは、同じなんです』


 そう口にしたからだ。自分が自身を責めればそれだけ彼女達も傷つく、それに気付いたからこそそう考えられる様になったのだ。
 恐らく先輩達も嘆いている、自分を責める暇があるならもう二度と犠牲者を出す事無く人々を守れと厳しい言葉をぶつける事だろう。


 重要なのはこれからの事なのだ。何時までも悔やんでなどいられない。そんな余裕や暇があるならばすぐにでも人々を守る為に動くべきだろう。
 だからこそすぐにでも動く――


 その前に、


「いつき達と別行動をしたのは結果的に正解だったか……」


 スーパー1はおもむろに焼死体に手をかける――
 幸か不幸か炭化部分が多いお陰でそこまで血生臭い事にはならないで済む――
 それでもこんな現場など中学生の少女であるいつき達には見せられないが――


「取れた……」


 スーパー1の手には1つの首輪が握られていた。そう、スーパー1は焼死体から首輪を回収していたのだ。
 殺し合いからの脱出する為には首輪の解除が必須、しかしその為には首輪構造を把握しなければならない。
 その為に必要なのが首輪のサンプルなのだ。だがその為には死体から回収しなければならない。
 偶然にも死体が見つかった事でようやく首輪を回収できたという事だ。
 とはいえこれは第一歩に過ぎない。首輪を手に入れただけでしかなく、これから解析などを行わなければならないのだ。


「これを技術者……結城先輩に見せれば……」


 とはいえ、解析を行う技術者にはうってつけの心当たりがある。それが先輩の1人である4号ライダーライダーマンこと結城丈二の事だ。
 彼でなくても本郷と共に風見志郎を仮面ライダーV3へと改造手術を行った経験を持つ一文字でもある程度調べる事が出来るかもしれない。
 そもそもスーパー1こと沖自身も元々科学者なのだ、相応の設備あるいは施設があれば自身で解析する事も出来る。だが――



「いや、先輩達ならもう既に首輪を手に入れ解析を進めているだろうな……」


 既に彼等が自分の先を行っているだろうと思い直した。元々技術者である結城が首輪の解析を真っ先に考えないわけもなく、一文字にしても首輪の確保程度の事は考えている筈だからだ。


 そう考えて見れば自分は仮面ライダーとしてはまだまだ未熟者だ――
 本郷、一文字、結城、そしてこの地にいない風見、神敬介、アマゾン、城茂、筑波洋、彼等先輩ライダーと比べれば自分など足下にも及ばない。
 無論、負けないという想いはあるがそれは先輩達も同じ事、まだまだ先輩達から学ぶべき事は山という程あるだろう――


「村雨……良……」


 そして脳裏に思い浮かべるのは先の未来で10号ライダーZXとなっているらしい自身の後輩とも言える村雨良の存在――
 無論、沖の時間軸においてはまだBADANの尖兵の筈だが一文字の時間軸では自分達と同じ仮面ライダーとなったらしい。
 一文字の話ではその過程で色々な過程があったらしい、

 ある時はBADANを脱走し記憶を求めて彷徨い――
 ある時はBADANに復讐すべくその力を振るおうとし――
 ある時はBADANの大首領JUDOの器である事を知り苦しみ――

 その過程を経てようやく仮面ライダー10号ZXとなったのだ――

 だが、この地においてはどのタイミングで連れてこられているかは不明瞭――仮面ライダーとして戦っている時期から連れてこられている保証など何処にも無い。
 それどころかBADANの尖兵時代から連れてこられている可能性だってあるし復讐の鬼となっているタイミングからという事もありうる。

 正直な所を言えば――沖自身は奴を――村雨を信用する事が出来ないでいる。
 幾ら先輩ライダーの言葉があるとは言えど沖自身が彼自身に直に会っていない以上それは仕方の無い事だ。
 その力を人々の為に使うのであればともかく、BADANの為、あるいは復讐の為に使っているタイミングで来ているのであれば――尚のこと信頼できない。


 しかし――





 少し前、いつきとこんな会話をしていた――
 先の放送より少し前に交戦したダークプリキュア、その彼女に対するキュアサンシャインこといつきの言動が気に掛かりそれについての事情を聞いていた。
 どうやらダークプリキュアはキュアムーンライトこと月影ゆりに対抗する為に彼女の父である月影博士ことサバーク博士によって生み出された存在らしい、
 光に対する闇というネーミング、生み出した者が共通している事から2人が姉妹というのは的を射た表現だ。
 勿論、ダークプリキュア自身はその事実を知らなかったが彼女がサバーク博士の為に戦っていた事だけは間違いない。そう、父を想う娘として――


『なるほどそういう事情があったのか……』
『ええ、だから僕は彼女を救いたいんです……』


 いつきの心中は理解できる。しかし、


『その気持ちはわかる……だけど、それは正直難しくないだろうか……口で説明した所でその事実を簡単に受け入れてくれるとは到底思えない……それはあの時の戦いで君自身が痛い程理解している筈……』
『はい……』


 更に言えばダークプリキュアの戦闘力はキュアサンシャインよりも上、それもその筈元々キュアサンシャインよりも強いキュアムーンライトをベースにしているのだから――
 倒す事すら難しいのに倒さずに説得という事など出来るのであろうか――


『僕自身も……ここに来た時は彼女の事情を知っているとはいえ、救おうとは考える事は出来ませんでした……彼女は殺し合いに乗る可能性が高いだろうから注意しなければ……それしか考えられませんでした』
『? だったら何故……』
『彼女の事を説明した時にある女の子が言っていたんです……『闇のプリキュアなんていう哀しい呼び名で呼ばないでちゃんと名前で呼んで』って……まぁ、他の名前は知らないから流石にそれは無理だけど……』


 いつきがダークプリキュアを救いたいと考えたのは高町なのはの言葉があったからだ。



『彼女の友達もある人物を元にしたクローンだったらしいんです……でも、生まれ方は違っても……いや、生まれ方が違うだけで同じ命には違いはない……彼女はそう考えていたんだと思う……
 多分なのはは……ダークプリキュア……彼女を最初から僕達と同じ『人間』だと考えていたんだと思う……』
『『人間』か……』
『はい同じ『人間』だからこそ話し合う事が出来、信じる事が出来る……そう、疑って敵と警戒して戦ったり倒したりする事は出来る……だけど、信じなきゃ救う事は出来ないと……これもなのはの言葉があったからこそ気づけた事だけど……』


 いつきの話を聞き、


『わかった、ダークプリキュア……彼女の事は君に任せるよ。だが……』
『わかっています、決して無理はしません。それと……』
『?』
『沖さん達……改造人間である仮面ライダーの自分達は人間じゃ無いって思っていませんか?』
『何が言いたいのかな?』
『沖さんや本郷さん達だって僕からみれば『人間』です。身体が改造された以外は僕達と何も変わりませんよ』
『ふふっ……』
『どうしたんですか?』
『いや、自分の身体でも『人間』扱いされるとは思っていなかったからさ……それだけさ』





 そんなやり取りを思い出し――


「そう……仮面ライダーであろうとなかろうと村雨……奴が俺達と同じ改造された『人間』である事に違いは無い……
 疑う事は幾らでも出来る……だが信じなければ仮に仮面ライダーであったとしても仲間になんてなれない……」


 スーパー1はまだ見ぬ後輩を信じる事に決めたのだ――


「もし、奴が未だ仮面ライダーで無いというのであれば……俺がこの手で教えますよ……仮面ライダーの心を……魂を……そうですよね、一文字先輩!」


 遠い空で戦っているであろう先輩に向けてそう口にした。
 それこそが先輩として後輩にしてやれる事だと――そう信じて――


 だからこそ何時までも足を止めるわけにはいかない――今一度死体に小さく礼をし、スーパー1は再び走り出した――









The 3rd movement 蒼乃美希×早乙女乱馬



「そんな……どうして……」


 誰よりも祈里の身を案じていたキュアベリーの足は速くH-9の方まで来ていた。
 そして見つけたのが――


「乱馬さんが……?」


 乱馬の死体である――全身が火傷等で傷つき左腕を失っていたその死体が――


 約2~3時間程度前に話していた筈の人が物言わぬ骸となっていた――それはキュアベリーにとっても大きなショックだった。
 思えばこの地に来てから殺し合いの説明時に殺された者達以外の死体とは一切遭遇していない。
 放送で名前を呼ばれる、あるいは人伝いの情報で誰かが殺されているという事は把握もしていたし衝撃も受けていたが――どことなく実感が薄かったと言わざるを得ない。
 思わず腹から湧き上がっている何かを押さえ込む――

 目の前で誰かが死ぬ――
 厳密に言えばラビリンスとの決戦時に総統であるメビウスの策略によってデリートホールにサウラーとウエスターが吸い込まれ消える(実際はシフォンとクローバーボックスのお陰で助かった)のを見ている為皆無というわけではない。
 それでもそういう経験が少ない事に違いは無く、ここまで痛ましい死体と遭遇した事も無い為、精神的にくるものを感じる。

 とはいえ、幾ら実感が薄かったとはいえ全く予想していなかったわけではない、それ故にそれだけで折れる事は決して無い。
 むしろ脳裏にはある種の疑問が浮かぶ――


「どうして警察署にいる筈の乱馬さんがここで?」


 乱馬達が待機しているのはF-9にある警察署、だが乱馬の死体がある現在位置はH-9、少々距離が開き過ぎている。
 死体の様子から考えて、1時間以上前に死んだと推測できる。
 だとしたら奇妙な話なのだ。あの後1~2時間の間にここまで移動して何者かと戦って死んだという事になる――
 だが、警察署では残ったメンバーで情報交換を行う手筈になっていた。それからわざわざここまで移動するとは到底思えない。
 そもそも乱馬は中学校から警察署まで移動していた筈だ、自分達を迎えに行く為に中学校方面に向かうのならばまだわかる、だが方向的には些か明後日の方向ではないかと言わざるを得ない。
 何故この場所で死んでいたのか?


「警察署で何かが起こった……?」


 何者かによる襲撃に遭い警察署から離脱せざるを得ない事態が起こった。
 警察署では自分達並に戦力的に頼れるのはシンケンゴールドに変身出来る梅盛源太ぐらいなもの、十分過ぎるほど考えられる。
 とはいえこれだけでは推測の域を出ないのも事実だ。
 警察署にいるであろう仲間達が心配ではあるが市街地にいるであろう人々の保護も大事だ、そうでなければリスクを負ってまで3人バラバラに行動した意味が無い。
 だからこそ、何時までも立ち止まってはいられない――

 とはいえ、これ以上乱馬の死体を野ざらしにしておくのも気が引ける。埋葬出来ればそれが一番良いが、現状ではそんな余裕も時間も無い。
 ひとまず近くの建物の中に移しておこう。そう考え彼の死体を背負い移動を始める。




「……」



 移動しながら今更ながらに考える――
 そこまで親しいわけではない乱馬の死についてここまで自身がショックを受けていたのだ。
 目の前で親しい人物を死なせてしまったアインハルト・ストラトスはどんな心中だったのだろうか?
 しかも、いつき達から聞いた話ではノーザによってソレワターセに操られたスバル・ナカジマの手によってアインハルトを庇う形でなのはを死なせソレワターセに目の前で捕食されたという話なのだ。
 冷静に想像しただけでも嫌悪感を抱かざるを得ない。それを近くで目の当たりにしたアインハルトが受けるショックは想像を絶するものと考えて良い。
 それで自身を疫病神扱いしてなおかつ自殺を試みてしまうのは流石に飛躍しすぎているが、あそこまでの出来事を経験して心に受けた傷は相当なものであろう。
 無論、自殺などさせない為にも説得はしたがアレで本当に彼女を助けられたのかどうかは正直微妙だ。そもそも側にいたいつきや沖がまずフォローした筈なのにそれでも自殺を強行した事から考えても、説得が通じているとは思えない。
 考えてもみればラビリンスと戦っていた頃もサウラー達と大体毎回毎回同じ様な会話のやり取りをしていたわけだから、そこまであっさり言葉が通じるという事もないのは容易に推測が出来る事だ。
 一応、警察署には彼女の友達である高町ヴィヴィオもいるし、美希と行動を共にしていた孤門一輝等の仲間もいるから彼等のフォローさえあれば大丈夫――
 ――だと思いたいがここに警察署にいた筈の乱馬の死体があった事を考えると正直不安だ。

 何にせよアインハルトの心配ばかりしても仕方が無い。今は乱馬の死体を安置させるのが先決だ。
 それにしても乱馬は何故命を落としたのだろうか?
 死体の様子を見る限り一方的に嬲られた――というわけではなく、文字通り死闘を演じ――傷つき倒れたと考えて良い。
 だがキュアベリーから見れば余りにも無謀な行為としか思えなかった。
 乱馬の戦闘能力自体は一般人から見れば高いものなのは理解できる。だが、だからといって仮面ライダーやプリキュア、あるいはそれと敵対する怪人や幹部と戦えるわけではない。
 連中から見れば乱馬の戦闘能力など取るに足らないものだと言っても過言では無い。実際に戦えばこういう結果になる事自体わかる筈だ。
 だからこそ祈里達は乱馬達を警察署に向かわせ彼等の安全を確保したのだろう。

 そう、乱馬の行為はある意味ではアインハルトの自殺行為と殆ど変わらないという事だ。
 とはいえ、実際の戦いを見たわけでは無い為、単純にそう断じるわけにもいかないだろう。乱馬自身にも譲れない何かがあって戦った、そういう理由があったのかも知れないのだ。

 だが――例え実際にそうであったとしても、キュアベリーは乱馬の行動をどうしても認めるわけにはいかなかった。
 どんな理由があっても乱馬の行動は限りなく自殺行為に近く、実際に死んでしまっているのだから――



 近くの建物に乱馬を安置した。これでひとまず乱馬の死体が荒らされる事は無い。


 一刻を争う状況故にすぐにでも動かなければならない。だが、


「……ねぇ、乱馬さん……貴方がこんなになるまで戦ったのには譲れない理由があったのかも知れない……」


 やはり乱馬に対し一言言わないわけにはいかなかった――


「でも……それで貴方自身が死んだら何の意味も無いじゃない……貴方自身がやり遂げて満足出来たとしても……貴方が死んだ事で残された人達がどう思うか……貴方を大切に思ってくれる人がどれだけ悲しむか……考えた事はあるの……?」


 わかっている――今更こんな事を説いた所で何の意味も無い。アインハルトの時と違いもう乱馬は死んでいるのだ。
 それでも言わずにはいられなかった――


『ったく、元気じゃねえか。心配して損したぜ……』
『心配してくれてたの?』


 そう、乱馬が死ぬ事で悲しむ人がいるのだ――


 詳しい関係までは聞けなかったが――あの何処までも息の合ったやり取りを見た辺り――


 単純な友人関係以上の――いや、回りくどい言い方は止めよう――


 恋人だったのだろう――


 どんな事情があったにせよ――無茶をして勝手に死んで恋人である彼女を不幸にした事を――


 キュアベリーにはどうしても許せなかった――



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最終更新:2014年05月20日 21:54