警察署の空に(後編) ◆gry038wOvE
「……そんなことがあったんですか……」
あかねは、孤門の話をかなり暗い気持ちで聞いていた。
目の前で何人もの参加者が殺されたという彼女の気持ちを察する。
彼女の中では、ここではっきり自分と出会って死んだ人といえば十臓くらいのものだった。
そんなにたくさんの人を目の前で失ったのだから、正常な神経ではいられないだろう。
「……許せねえ!」
源太は机を殴る。
主催者や、すすんで殺し合いに乗った連中に、激しく憤っているようだった。
それは己の拳を割るような一撃だったが、そこまで考えてはいなかったし、アドレナリンのせいか痛みは薄い。
「……だから、今の彼女は何をするかわからないんだ。自分のせいでみんな死んだと思ってる……。できるなら、ヴィヴィオちゃんや乱馬くんが彼女を見つけ出して助けてほしい」
他人事のような言い方だが、孤門も心から心配していた。今は願うしかないのだ。
孤門は、あの年頃の少女の死を他人事とは思えないのである。
今までレスキュー隊やTLTの仕事をやってきて……年端もいかぬ少女だって悲しい出来事に巻き込まれることが何度もあった。
記憶に新しいのは、廃工場でビーストに襲われた少女──杉山里奈。
TLTは彼女を見捨てろという判断を下したが、孤門にはそれができなかった。
結局、彼女は何とか助けることができたものの、少女の命を救いにいかない判断を下した自分のことを考えると、あの時のことを思い出す。
それから、遊園地で会った山邑理子という少女だ。
これはごく最近、再び会うことになったが、彼女の運命は惨酷であった。
両親を目の前で失い、挙句の果てに両親はビーストヒューマンにされてしまう。そのうえ、ビーストに人質にされ、記憶を中途半端に消され、しばしの交流をした溝呂木さえも失った。
アインハルトの心情を考えると、ビーストに襲撃されたまま「記憶を失うことができなかった」人間たちのようなものだろうか。
TLTにとって、被害者の記憶を削除するのは「救済」の措置だった。
アインハルトは、ビーストに襲われた人間のようにトラウマに苛まれ続けるのだろうか……。
★ ★ ★ ★ ★
アインハルトの視界で、あらゆるものが高速で過ぎ去っていく。
警察署の窓や外壁。それを視覚が認識するよりも早く通り過ぎてしまう。
しかし、いつもに比べればスローモーションに見えた。
死の危険が迫ると、人間の脳は通常よりも大量の視覚情報を送るためである。
それが、アインハルトに恐怖と後悔を与えていた。
(嫌だ……やっぱり死にたくない……!! このまま、私は……!)
視界がやや暗くなっていく。地面に近付いていって、警察署の影が自分の体を包んでいったのだ。
このまま完全に落ちてしまえば、自分は永久に暗い中に閉じ込められる。
彼女の中に流れて来る記憶は、イングヴァルトのものでなく、アインハルトのものであった。
ヴィヴィオたちと遊んだ思い出や、戦いの記憶────
(嫌だ……っ!!)
だが、そんな時、アインハルトの耳に、近くから大音量の声が聞こえた。
誰かがアインハルトの近くにいる?
どうして、ここは地面から遠く離れた何もない空中。
その高さから落ちれば死ぬのに。
「アインハルトぉっ!!」
その叫びの主は、アインハルトの真っ隣で、一緒に空を泳いでいた。
早乙女乱馬。
彼は、何の躊躇いもなく、アインハルトを追って飛び降りたのである。
この高さから落ちれば常人なら死ぬ気がするが、うまい具合に技を使えば、乱馬はそれを回避することもできる。
第一、それに耐えうるだけ乱馬の体は頑丈だった。
「……死ぬなっつっただろうが!!」
その片腕がアインハルトを抱えたと思うと、乱馬はそう怒鳴った。
同じ速度で、真っ隣で怒鳴る彼の声は、よく通った。
とにかく、そんなことよりもアインハルトはまだ怖かった。
ここには乱馬がいるが、彼が一緒にいようと、自分は死んでしまう。
近付いていく死への恐怖が、アインハルトの中で加速していく。
(ん……? なんだ、この感触は……)
乱馬の足に、何かが引っ付いている。
そういえば、先ほどから少しだけ右足が重いような気がした。
一体、なにが錘になっているのだろうか?
乱馬が右足を見てみると、そこには────
「にゃー!」
乱馬が駆け出したときに、どさくさに紛れて一緒に引っ付いたアスティオンの姿があった。
「ね゛ごぉっっっ!!!!!?」
「ティオ!?」
そうだ、アインハルトは猫型の相棒がいるのだった。
乱馬はそれを忘れて飛び込んでいたから、とんでもないことになった。
アスティオンもアスティオンなりに、アインハルトの力になりたいと思っていたのだろう。
険しい目つきで、アインハルトの体の方へ飛ぼうとした。
「にゃー!?」
だが、二人は落下しているゆえ、それは失敗。
アスティオンは乱馬の顔に激突してしまう。顔に猫が張り付いた乱馬は、アインハルトの体を放さないようにしながらも、空中で必死でもがいていた。
「ぎゃああああああああああああああああああああああっ!!
ぎゃぁ!! ぎゃぁっ!! ぎゃあああああああああああああああああっっ!!!」
乱馬はジタバタジタバタと、手足を空中で泳がせるようにした。
このままでは真下も見られないし、何より受身がとれない。
ピンチ中のピンチだ。
顔に張り付いた猫への恐怖が先行してしまい、その他のことへと頭が回らない!!
このままだと大量の猫に引っ掛かれる!! 喰われる!! 噛み付かれる!!
いや、それ以前にこのままでは、この猫と一緒に落ちて死んでしま────
────ぷっつん
そう思ったとき、乱馬の中で何かが切れた。
意識が遠のき、乱馬の中にあるもう一つの意思が浮かび上がってくる──。
「………………にゃぁぁぁぁぁご」
地面に近付いていくアインハルトとアスティオンは、そんな鈍い泣き声を聞いた。
アインハルトがアスティオンの方を見ると、アスティオンはふるふると首を振っている。
自分じゃないぞ、と言いたいのだろう。
だとすると、既に妙に冷静な素振りを見せた乱馬だろうか?
「にゃーごっ!!」
やはりそうだ。乱馬は身軽にも、警察署の外壁を走っていく。
重力に引かれながらも、彼はただひたすら走っているように見えるが、そこには深く爪が突きたてられている。
いや、これは彼の爪か? 自分自身を猫と思いこむ彼が爪と勘違いした、ただの”気”にも見える。
とにかく、それがスピードを緩めていた。
「にゃおーん♪」
スタンッ。
また鳴くと、乱馬は身軽に地面に降りた。
まるで猫が塀から下りるように、見事に降りていく。
アインハルトもアスティオンも完全無事の無傷である。
その右脇から、アインハルトの体は放たれる。
「あ、……ありがとうございます……乱馬さん……」
死ぬのが怖かったから、アインハルトは思わず感謝の言葉を述べた。
……が、当の乱馬は話も聞かずに暴走して、素早くどこかへ行ってしまう。
明らかに様子がおかしかった。外見からして、猫背で四足で、先ほどの乱馬のものとまるで違う。
「あ……」
気づけば、アインハルトの目の前から凄まじい速さで走り去っている。
とにかく、思わずアインハルトは追うような言葉を口にしてしまった。
「待って……!」
色んな人の前にまた姿を現さなければならないが、それは乱馬を追ってからだ。
今、彼女の気持ちは少し先ほどとは違っていた。
戸惑いながらも、死の恐怖から逃れた彼女の気持ちは……。
「ティオ、追いましょう」
「にゃー!」
「──武装形態」
助けてくれた乱馬は今、明らかに正常じゃないから、彼がどこかに行ってしまわぬよう、彼を捕まえよう。
ヴィヴィオたちには心配をかけるだろうが、今はまず彼を追いかけていかなければ。
そして、自分たち二人とも無事だったのだということを伝えねばならない。
今は何をするよりもそうしようと思ったのだ。
何せ、これだけ怖い目に遭って、後悔させられるものだというなら、本当に死にたくないのだ。
これからしばらく死への恐怖が付きまとってしまう。
だから、少なくとも今だけはそんな恐怖に陥った自分を助けた乱馬に、お礼を言って戻らないといけないのだ。
【1日目/昼前】
【G-9/警察署付近】
【早乙女乱馬@らんま1/2】
[状態]:健康 、悩み、ヴィヴィオと霧彦への後ろめたい感情
現在猫拳発動中につき普段の乱馬の思考は停止
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0~2、水とお湯の入ったポット1つずつ、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[思考]
基本:殺し合いからの脱出。
0:猫ーっ!!
1:暫くあかねたちと警察署に待機して、美希たちを待ち情報交換をしたい。
2:何とかヴィヴィオを知り合いと合流させたい。
3:
パンスト太郎、丈瑠、シャンゼリオン(暁)とあったら少女(ほむら)の死について聞いてみる。
4:サラマンダーの顔をいつかぶん殴る。
[備考]
※参戦時期は原作36巻で一度天道家を出て再びのどかと共に天道家の居候に戻った時以降です。
※風都タワーの展望室からほむらとシャンゼリオン(暁)の外見を確認しています。
※放送で呼ばれた参加者達の死を疑っている一方で、ヴィヴィオと霧彦には後ろめたさを感じています。
※ほむらの死に丈瑠、パンスト太郎、暁が関わっているのではと考えています。
※ガドルの呼びかけを聞いていません。
【
アインハルト・ストラトス@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:魔力消費(大)、ダメージ(大)、疲労(極大)、背中に怪我、極度のショック状態、激しい自責、大人モード変身中
[装備]:アスティオン@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[道具]:なし
[思考]
基本:???????????
0:乱馬を追い、お礼を言って連れ戻す。
1:私は……どうすれば?
[備考]
※スバルが何者かに操られている可能性に気づいています。
※
高町なのはと
鹿目まどかの死を見たことで、精神が不安定となっています。
※午後12時までに中学校で
孤門一輝達と合流する予定です。
※
フェイト・テスタロッサと
ユーノ・スクライアの死の原因は、自分自身にあると思い込んでいます。
★ ★ ★ ★ ★
「ぎゃああああああああああああああああああああああっ!!
ぎゃぁ!! ぎゃぁっ!! ぎゃあああああああああああああああああ!!!」
────会議室の窓を、二つの人影と絶叫が過ぎ去っていく。
それを見て聞いたとき、三人とも一体何が起こったのかわからなかった。
窓の横を、落ちていく二つの影はそれぞれ見覚えのあるものであった。
乱馬と、アインハルトだ。
「お、おいっ……!」
「乱馬……っ!?」
流石のあかねもその様子に驚いてしまう。
どうやら、落ち急いでいたようで、あかねたちの方に気づかぬまま落ちていってしまった。
だが、彼は特に焦る様子もなかったし、アインハルトをうまく捕まえたようで、平然と落ちて行った。
通常なら死ぬから、恐れおののく距離だろう。
彼は普通じゃないから、この程度の落下は許容範囲内だ。
とはいえ、少し心配である。
あかねは窓を開けて下を見ようとした。
「駄目だっ!」
「孤門さん!?」
「僕が下を見てくるよ。……残念だけど、二人は」
ここも二階だし、結構な高さだ。
それより上の階──おそらく屋上から落ちたとなると、二人は助からないだろうと孤門は見込んだ。
だから、二人よりも死体慣れしている孤門がそちらに向かおうとしたのだが──
「大丈夫。乱馬はそんなに柔じゃないから。たぶん、あの子を助けるために飛び込んだのよ!」
「え!? だって、……そういう風にはとても……」
「ほら、見てみなさい!」
あかねが開け放した窓から孤門が真下を見てみると、ちょうど乱馬がアインハルトを抱えて着地したようだった。
声をかければ届きそうだが、あまりに驚異的な出来事に放心してしまう。
「ほ、本当だ……!」
孤門が窓から首を突き出したままぼーっとしていると、真後ろで乱馬の様子を見られないあかねが言い出した。
窓の前で待つよりも、とにかく乱馬たちのところへ行こうと思ったのだ。
最悪、足を挫いていることだってありえる。乱馬にあるとするなら、その程度だろう。
「私が下の様子を見てくるから、孤門さんたちはここで待ってて!」
言うなり、あかねは飛び出して行ってしまった。
どうやら、一片も悲しむ気はないらしい。
ただ、生きてはいるだろうが、心配というところだろう。
「あ、俺も行くぜ!」
「……あ!」
更にそこへ、源太が続いていってしまう。
結局、自分の制止を聞いてくれるのは一度が限界か……と孤門はしょんぼりしていた。
やはり指揮する立場というのは自分だけでは間に合わないらしい。ましてや、これだけ個性的な面子である。
……凪ならもっとうまく纏めただろうか?
とにかく、孤門は結局会議室で一人ぼっちになってしまった。
(そ……そうだ、ヴィヴィオちゃんだ。まだ彼女が残ってる……きっと屋上にいるんだろう)
一人ぼっちで思い出したが、アインハルトを追っていったヴィヴィオがいない。
アインハルトが飛び降りた場所が屋上だとするなら、彼女も屋上にいるはずである。
とにかく、孤門は屋上に向けて無我夢中で駆け出した。
★ ★ ★ ★ ★
あかねは乱馬とアインハルトが落ちたはずの場所に居た。
その後ろから源太もやって来る。
だが、なんだかんだで安心していた。ここには死体も血痕さえもない。本来なら、この辺りに落ちて死んでいてもおかしくないのに。
「でも、二人ともどこに行ったのかしら……」
死んではいないが、姿は消してしまった。
乱馬なら帰ってくると思ったが、なぜ彼はそうしないのだろう。
もしや、アインハルトをどこかへ連れて行ったのだろうか?
乱馬の事だから、あのアインハルトにまで惚れられて振り回されたとか……。
と、思うとあかねの中でも何かが切れる。
「乱馬ーっ!!」
あかねが呼ぶが、返事はなかった。
仕方が無い。
あかねは、何も言わずに警察署を出て、すぐに近くの捜索を始めた。
そんな折、源太が
「……おい、姉ちゃん。あの乱馬っていう兄ちゃん、随分騒いでたみたいだけど……」
「うるさいわねっ! 私は乱馬を探しに行くからっ!!」
あかねは少しピリピリしていた。
アインハルトの年齢を考えれば、乱馬がどうこうすることはないだろう。
……が、仮にも女形態で良牙に手を出したりすることもあった乱馬である。
あかねは、乱馬の性癖の話において、彼を微塵も信用しようとはしていなかったのだ。
とにかく、乱馬と男女二人きりという状況がマズい。
こうなると、あかねは止まらなくなってしまう。
乱馬が他の女性と行動していると知ると、とにかく盲目で嫉妬深い。
最悪、都合の悪い記憶を封印したり、都合の悪い話は聞かなかったことにしたりして、乱馬を苦しめる(ただし、乱馬もあかねに対して同じことをする)。
それゆえ、源太の話など全く聞かずに、彼女は乱馬を探し始めた。
【1日目/昼前】
【F-9/警察署付近】
【
天道あかね@らんま1/2】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)、とても強い後悔、乱馬に怒り
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、女嫌香アップリケ@らんま1/2、斎田リコの絵(グシャグシャに丸められてます)@ウルトラマンネクサス
[思考]
基本:乱馬たちと合流して殺し合いから脱出する
0:とにかく、乱馬たちを探して連れ戻し、また警察署に戻る
1:警察署に戻ったら、また情報交換会議に参加する
2:源太と行動し、首輪を解除する
3:今は市街地に行きたい。
4:自分が役に立ちそうに無いので落ち込み中
5:仮面ライダーエターナルの事を多くの人に伝える
6:不気味な絵を捨てる
[備考]
※参戦時期は37巻で呪泉郷へ訪れるよりは前で、少なくともパンスト太郎とは出会っています
【
梅盛源太@侍戦隊シンケンジャー】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、後悔に勝る決意
[装備]:スシチェンジャー、寿司ディスク、サカナマル@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:支給品一式、スタングレネード×2@現実、パワーストーン@超光戦士シャンゼリオン 、 ショドウフォン@侍戦隊シンケンジャー、丈瑠のメモ
[思考]
基本:殺し合いの打破
0:今はあかねについていき彼女を守るしかない
1: 警察署に戻ったら、また情報交換会議に参加する
2:より多くの人を守る
3:丈瑠と合流し、事情を聞く
4:自分に首輪が解除できるのか…?
5:
ダークプリキュア、仮面ライダーエターナルへの強い警戒
[備考]
※参戦時期は少なくとも十臓と出会う前です(客としても会ってない)
※乱馬から、丈瑠の様子について聞き、メモを受け取りました
★ ★ ★ ★ ★
(私の方が……)
ヴィヴィオはアインハルトと乱馬の飛び越えたフェンスを黙って見つめた。
二人は死んでしまったのだろうか?
この高さから落ちて、二人は────
(私の方が、ずっと疫病神なの?)
本当になのはやフェイトやユーノが死んで、アインハルトや乱馬まで死んでしまったら、それこそヴィヴィオの方が疫病神だ。
家族や友達の確かな死を知ったいま、彼女の涙は止まらない。
今は悲しみで精神が安定しなかった。だから、飛び降りようという気さえ起きない。
ただ、ひたすらに悲しい気持ちでいっぱいだ。目の前に置き去りにされたアインハルトのデイパックが哀愁を漂わせる。
それを背負っていた人はもういないのだと思うと────
「ヴィヴィオちゃん!」
後ろで誰か阿賀慌てて駆けつけて、泣き崩れるヴィヴィオを呼んだ。
顔を強引にあげさせられると、そこにあった顔は孤門のものであった。
涙でいっぱいのヴィヴィオの顔を、孤門が覗いている。
「……安心して。アインハルトちゃんと、乱馬くんは生きている。……乱馬くんがアインハルトちゃんを助けたみたいなんだ」
「……え?」
ヴィヴィオは、喜ぶよりも先に、その言葉への驚きが出てしまう。
あの高さから落ちても生きている……? にわかには信じ難い話だ。
ただ、自分たちのように魔力の持主ならば空の上に立つことも可能だし、実際アインハルトを助けることだってできた。
その初動があまりに遅かったのが助けられなかった一つの原因でもある。
「正直、信じられないよ。乱馬くんは本当にここから落ちたんだよね? ……彼は、アインハルトちゃんを抱えたまま、平然と両足で着地したんだ。本当に凄かった」
「……」
ヴィヴィオはほっとする。まだ少し呼吸が乱れて涙が出るが、根本的な部分は泣き止んでいたのだ。
精神面で、アインハルトと同じになりかけたのは孤門の冷静な判断によって免れたといえる。
孤門本人は気づいていないが、あと少し遅ければヴィヴィオもアインハルトと同じように此処から飛び降りていたかもしれない。
そのうえ、背後から助けてくれる乱馬もいないから、彼女はその幼い体を固いアスファルトにたたきつける惨たらしい有様になってしまうわけだ。
「……行こうか、ヴィヴィオちゃん。アインハルトちゃんたちは、あかねちゃんたちが連れて来てくれるはずだよ」
「わかりました……」
そう言って、ヴィヴィオは手を引かれるままに会議室に向かう。
思えば、ここに来てからの9時間、色んなことがあったが、その間彼女は誰かに支えられ続けていた。
そう、彼女はただひたすら守られるだけの存在だったのである。
まだ誰かを守れていない。
(やっぱり凄いなぁ……乱馬さんは。……私も誰かを守るためには、乱馬さんに鍛えてもらわなきゃ……)
今頃にゃーにゃー鳴きながらどっかをウロチョロして、二人の少女に追いかけられている男を知れば多少幻滅するかもしれないが、とにかく今、ヴィヴィオの中で乱馬の存在は輝いていた。
他にも霧彦や祈里、孤門など色んな人への思いが憧れに変わっていく。
(でも、アインハルトさんが言ってたとおり、なのはママやフェイトママは……それに、スバルさんも……)
そう、アインハルトはヴィヴィオの知る放送での死者のほかに、「スバルさん」という名前を出した。……それはきっと、スバルももうこの世にいないということなのだろう。
だが、一方でヴィヴィオの中では新たな期待も生まれていた。
(……いや、もしかしたら今の私みたいに、アインハルトさんの勘違いなのかも……)
そう、いままさに自分がアインハルトや乱馬の死を勘違いしたのと同じように、彼女の勘違いという可能性だってある。
結局のところどうだかわからないが、とにかくその可能性も考えてみようとヴィヴィオは思った。
(まだわからない……それなら、信じる余地はあるかもしれない……)
今はまだ、はっきり知らない出来事を飲み込むときじゃないと、彼女は思ったのだ。
【1日目/昼前】
【F-9/警察署屋上】
【
高町ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:上半身火傷、左腕骨折(手当て済) 、決意と若干の不安
[装備]:セイクリッド・ハート@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[道具]:支給品一式×2(ヴィヴィオ、アインハルト)、ヴィヴィオのランダム支給品0~1、山千拳の秘伝書@らんま1/2、アインハルトのランダム支給品1~3個(アインハルトは確認済み、ヴィヴィオは未確認)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
0:まずは警察署の会議室に戻り、しばらく待機。
1:強くなりたい。その為にらんまに特訓して欲しい。
2:みんなを探す。
3:ママ達、無事だよね……?
4:スバルさん……?
[備考]
※参戦時期はvivid、アインハルトと仲良くなって以降のどこか(少なくてもMemory;21以降)です
※乱馬の嘘に薄々気付いているものの、その事を責めるつもりは全くありません。
※ガドルの呼びかけを聞いていません。
【孤門一輝@ウルトラマンネクサス】
[状態]:健康、ナイトレイダーの制服を着ている
[装備]:ディバイトランチャー@ウルトラマンネクサス
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
0:まずは警察署の会議室に戻り、そこでしばらく待機
1:みんなを何としてでも保護し、この島から脱出する。
2:姫矢さん、副隊長、石堀さん、美希ちゃんの友達と一刻も早く合流したい。
3:
溝呂木眞也やゆりちゃんが殺し合いに乗っていたのなら、何としてでも止める。
4:
相羽タカヤ、
相羽シンヤと出会えたらマイクロレコーダーを渡す。
5:沖さん達が少しだけ心配。
[備考]
※溝呂木が死亡した後からの参戦です(石堀の正体がダークザギであることは知りません)。
※パラレルワールドの存在を聞いたことで、溝呂木がまだダークメフィストであった頃の世界から来ていると推測しています。
★ ★ ★ ★ ★
彼らの目の前には既に川があった。
この川にかかる橋を渡れば、中学校はすぐだ。
ただ、ここまで参加者と会わなかったところを見ると、街に集まった参加者は基本的にこの橋の向こう側にいるのだろうか、と沖は思う。だとするなら、危険人物もいるだろうから警戒が必要だ。
(俺を含む参加者の多くはこの街に来た……だとすると、大概の参加者は街に目が行きやすい。安全性を考えるなら、もしかすると森エリアに滞在するのも一つの手かもしれない……)
沖はそう考えるが、森で生活というのもきついだろう。
今後を考えると、やはり街エリアのほうが安定感は強い。
何せ、祈里や霧彦、孤門やアインハルトのほか、主催にあだなす仲間が何人もここにいるのだ。
だが、だからこそ好戦的な相手には目をつけられやすいかもしれないが……。
(とにかく、この橋を渡って向こうに行こう。美希ちゃんやいつきちゃんも急いでるようだし……)
果たして、
山吹祈里はまだあの中学校にいるのだろうか?
そんな不安を抱えながらも、沖は二人を連れて橋に足をつけた。
【1日目/昼前】
【G-8/橋の前(警察署側の街)】
【
沖一也@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)、強い決意
[装備]:不明
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:殺し合いを防ぎ、加頭を倒す
0:中学校に向かい、祈里と霧彦を警察署に連れて来る。
1:
本郷猛の遺志を継いで、仮面ライダーとして人類を護る。
2:後で孤門やアインハルトと警察署で落ち合い、情報交換会議をする。
3:この命に代えてもいつきとアインハルトを守り、スバルを絶対に助けてみせる。
4:先輩ライダーを捜す
5:鎧の男(
バラゴ)は許さない。だが生存しているのか…?
6:仮面ライダーZXか…
6:アクマロは何としてでも倒す。
8:ダークプリキュアをどうするべきか…
[備考]
※参戦時期は第1部最終話終了直後です
※一文字からBADANや村雨についての説明を簡単に聞きました
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました
※18時までに市街地エリアに向かう予定です。
※村エリアから東の道を進む予定です。(途中、どのルートを進むかは後続の書き手さんにお任せします)
※
ノーザが死んだ理由は本郷猛と相打ちになったかアクマロが裏切ったか、そのどちらかの可能性を推測しています。
【
明堂院いつき@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、罪悪感と決意
[装備]:プリキュアの種&シャイニーパフューム@ハートキャッチプリキュア!
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1
[思考]
基本:殺し合いを止め、皆で助かる方法を探す
0:中学校に向かい、祈里と霧彦を警察署に連れて来る。
1:沖一也、アインハルトと共に行動して、今度こそみんなを守り抜く。
2:後で孤門やアインハルトと警察署で落ち合い、情報交換会議をする。
3:仲間を捜す
4:ゆりが殺し合いに乗っている場合、何とかして彼女を止める。
5:スバルさんをアクマロの手から何としてでも助けたい。
6:ダークプリキュアを説得し、救ってあげたい
[備考]
※参戦時期は砂漠の使徒との決戦終了後、エピローグ前。但しDX3の出来事は経験しています。
※主催陣にブラックホールあるいはそれに匹敵・凌駕する存在がいると考えています。
※OP会場でゆりの姿を確認しその様子から彼女が殺し合いに乗っている可能性に気付いています。
※参加者の時間軸の際に気付いています。
※えりかの死地で何かを感じました。
【
蒼乃美希@フレッシュプリキュア!】
[状態]:健康
[装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式、シンヤのマイクロレコーダー@宇宙の騎士テッカマンブレード、ランダム支給品1~2
[思考]
基本:こんな馬鹿げた戦いに乗るつもりはない。
0:中学校に向かい、祈里と霧彦を警察署に連れて来る。
1:今は孤門と市街地に向かい、みんなを捜す。
2:後で孤門やアインハルトと警察署で落ち合い、情報交換会議をする。
3:プリキュアのみんな(特にラブが) やアインハルトが心配。
4:相羽タカヤ、相羽シンヤ、
相羽ミユキと出会えたらマイクロレコーダーを渡す。
[備考]
※プリキュアオールスターズDX3冒頭で、ファッションショーを見ているシーンからの参戦です。
※その為、ブラックホールに関する出来事は知りませんが、いつきから聞きました。
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最終更新:2013年03月15日 00:25