本当ですか!?ダークプリキュアの真実!! ◆gry038wOvE



 仮面ライダーエターナルは、キュアブロッサム、響良牙一条薫を見つめる。
 どんな因果か知れないが、三人はそれぞれエターナルこと大道克己の興味をそそる姿をしていた。
 まず、良牙は、一度交戦した相手である。人間にしては強い。あの妙な技は、超能力兵士──クオークスを彷彿とさせたが、能力の発動によってクオークスほど大きく体力を損ねた様子もなかった。おそらくは中国拳法の「気孔」のようなものだろう。
 それから、(大道はその名前を知らないが)キュアブロッサムだ。その衣装は、憎むべきキュアムーンライトやダークプリキュアに酷似している。身長は彼女らに比べて小さく、また明るい色彩であった。
 おそらくは、プリキュアであるが、その素養は半人前というところだろう。体躯にも大きな差がある。何より、ムーンライトやダークプリキュアほど、戦士らしい顔立ちにはなっていなかったのである。何かを背負うほど長く戦士をやってきた顔ではなかった。
 もう一人の男もまた、コートを脱ぎ、びっちりとした黒いタイツスーツに身を包んでいる。そして、エターナルの目の前でヘルメットを装着し、髑髏をイメージさせる戦士となった。
 はっきり言えば、彼が最も相手にならないだろう。……良牙のような特殊能力があるというのなら別だが、人間並みならば問題はない。
 しかし、死神であるエターナルと対峙するとは、因縁めいたものも感じさせた。

 一方、良牙はこんな事を考える。

(良、あんまりじゃねえか……こいつはアクマロなんかよりもよっぽど強えぞ)

 強敵から逃げた結果、それを超える強敵と遭遇する羽目になってしまったのである。
 同じバケモノでも、こいつは決定的に違う。規格違いなバケモノだ。
 あらゆる攻撃を吸収するそのローブが災いして良牙の攻撃も効かず、攻撃もまた、良牙らの必殺に匹敵するほどの威力を持つ。
 乱馬やムースやパンスト太郎…………それからシャンプーなどと協力して、やっと勝てるくらいの相手だろうか。
 死者の名前も含めなければならないほど、勝利に現実味のない相手であるように思えた。

「おい、バンダナ」

「バンダナじゃねえ。響良牙だ」

「どっちでもいい。なあ、あの時と同じ技だけは使うなよ? 面白くねえからな」

 あまりに簡潔なエターナルの要望が良牙に提示される。
 あの時の技というと、獅子咆哮弾か──と良牙は思い出した。少し、心拍数が上がっている。エターナルは落ち着きすぎていた。良牙は、落ち着いたように見せながらも、敵がいつ襲ってくるかわからない緊張感に怯えていた。
 獅子咆哮弾。確かにあの技は大した手ごたえを見せなかった。良牙も、その技を使う気はない。
 まだまだ自分の技は多彩のはずだ、と思いながらも、自信は確かではなかった。

 まずは試しに、良牙は自分のバンダナを外して、エターナルめがけて投げた。ただ投げたのではない。気を込めたバンダナは硬質化する。それ良牙が投げると、バンダナは高速で回転し、残像が生まれ、まるで円盤に変身したかのように、空中を飛ぶ。
 更にその周囲にはかまいたちが発生し、すんでで避けたと思わせても、並みの人間なら傷口を作ってしまう。
 次から次へと、良牙は額のバンダナをエターナルに飛ばした。

「お前、いくつバンダナまいてるんだ?」

 それをいともあっさり、エターナルエッジで切り落とし続けたエターナルの感想はそれだけだった。
 立っている位置は変わらない。エターナルエッジは刃こぼれをしない。エターナルには一撃も当らない。……この攻撃そのものは、何の意味もないものになってしまったのだろうか。
 しかし、これは良牙としても、小手調べのつもりだったのだ。エターナルには先ほどの戦いから疲労がない。
 ……それに

「ひとつ弾き損ねてるぜ?」

 ガキーン。
 と、まるで鉄と鉄がぶつかったような音が鳴ると、エターナルの左腕にバンダナが刺さる。
 このフリスビー状に変質させたバンダナを、エターナルに当たらないように後方へと投げていたのだ。フリスビーのように投げれば、たといバンダナであっても手元に戻ってくる。
 とはいえ、所詮はバンダナ。エターナルの左腕から、布きれがはらりと落ちた。先ほどの音を発した物体とは思えないほど柔らかい物体が、地面の小石を覆う。
 攻撃的な意味はなかった……らしい。エターナルの左腕に傷をつけることもなかった。
 一条やつぼみは目をぱちくりさせる。良牙の妙技には、さすがの二人も驚かざるを得ない。
 一方、エターナルはやはり落ち着いていた。

「……このくらいで調子に乗るんじゃねえよ、なあプリキュア?」

 今の攻撃は物ともせず、今度はキュアブロッサムに話しかけた。
 ブロッサムは彼の口調の妙な威圧感に呑まれかけ、恐怖を感じる。
 本当に対話ができる相手──なのか? 邪悪に染まりきった、人間味のない口調や佇まいに、ブロッサムは自信を失いかけた。
 『エターナル』。その名前は、かつてプリキュア5に聞いたことがあったが、その組織に所属したブンビーという人物との和解は成功したらしい。
 ……会話をしてみることには始まらない。少しでも彼が、闇から解放させる事があるのなら、それに賭けてみる。プリキュアの使命である。

「他のプリキュアを知ってるんですか?」

「キュアムーンライト、それからダークプリキュアなら見かけたぜ。丁度、もう一度プリキュアって奴に会いたいと思ってたところだ」

 エターナルが、そこで一度区切った。

「……キュアムーンライト・月影ゆりにはもう会えないしな」

「どういう事、ですか?」

「月影ゆりはもう、この世にいないって事だ」

 キュアブロッサムの背筋が凍る。
 もうこの世にいない、それは死んだという事と直結する。
 エターナルは恐ろしいほどに淡々としていて、とても死の事実にショックを感じているようには見えなかった。それとも、やはりそれは嘘だと言う事なのだろうか。ブロッサムはすぐに反論する。

「!? 嘘です!! ゆりさんは、簡単には死にません!!」

「いや、確かに死んだ。俺が地獄に送った」

 今度は、遠回しではなく、直に死んだと言い切った。……それも、「自分が殺した」と、どこか誇らしげに言っていた。
 ぐっと、ブロッサムは涙目になりそうなのをこらえる。それを、良牙と一条は唖然とした表情で見つめる。
 しかし、ブロッサムは「これは嘘だ、惑わされるな」と心の中で唱えている。
 だが、本当ならば────エターナルは本当の悪鬼だ。
 ブロッサムは、まだ実感が沸かずに、エターナルの次の言葉を待つ。

「……そうだな。お前にも教えてやるよ、人間がいかにちっぽけで単純な存在か。死神を前にすれば誰も何もできねえ。そう、プリキュアだろうが何だろうが、人間ってのは簡単に死ぬんだ」

 エターナルはセリフと同時に駆けだしていた。ブロッサムは、彼の言葉を待つだけではいけなかったのだ。攻撃か防御の準備をしなければならなかった。
 エターナルローブが、ぼわっと音を立てて揺れる。その音が聞こえた後に、ようやくブロッサムは構えたが、既に死神の仮面は数歩前にあった。
 それでも尚、死神の仮面が近づいてくる。ブロッサムは、顔の前で手を構え、反射的に目をつぶった。戦うには目を開けなければ……と思ったが、目は簡単に開いてはくれない。
 勇気を振り絞って目を開いたとき、エターナルエッジの刃はブロッサムの目の前で止まっていた。

「今、俺があと一歩前に出れば、お前は眼球を抉り取られていたぜ。或いは、コイツは心臓や首につきたてられていた。そして、隣にいる男二人はそれを防げなかった──ハナっから仲間を守る気なんて無えんだろうな、こいつら二人は一歩も動いてねえ」

「「……!!」」

 良牙と一条は、自分の足元を見る。足を動かした跡はない。知ってはいるが、心のどこかで、自分が気づかぬうちに彼女をかばおうとしたと思い込みたかったのだろうか。それで、自分が少しでもつぼみのために動いていた証拠を確認したかった。だが、位置は一切変わらない。
 しかし、すぐに悟る。
 自分は動けなかったのだ。つぼみを助けるというところまで頭が回らなかった。
 それは、心の中で本当に優先された行動が、「助ける」ではなかったという証であった。助けようと思えば助けられたはずだった。エターナルが殺そうとしていれば、つぼみは目玉を抉られていたか、殺されていたはずだ。
 そう思うと少し落ち込むが、二人は顔を引き締めてエターナルに向けてファイティングポーズをとる。
 しかし、エターナルは無視だった。ブロッサムの目の前にナイフを突き立てたまま、ブロッサムに質問を始める。

「なあ、ピンクのプリキュア。お前はこのゲームに乗らないのか?」

「……乗りません」

 エターナルは、そんなブロッサムを嘲るように鼻で笑ったが、すぐにもっと彼にとって面白みのある質問をすることにしたらしい。

「なら、キュアムーンライトがこのゲームに乗ってないと思うか?」

「絶対に、ありえません」

「残念。不正解だ」

 エターナルは、その手元からエターナルエッジをぽろっと、落とした。ブロッサムの眼球を抉り取るという猟奇的な動作を中断したという事だ。ブロッサムは安堵すると同時に混乱した。
 何故、こんな風にエッジを落としたのか。そして、不正解とはどういうことなのか。考える事が二つもあったために、体がしっかり構えるまでに少し時間がかかった。
 エターナルはマスク越しにニヤリと笑う。
 エターナルエッジが落ちた先にはエターナルの右足がある。彼は足首でエターナルエッジをキャッチしていたのである。

「ハァッ!!」

 そして、その右足でブロッサムのわき腹を強く蹴る。
 刃は別に、そちらに向けられていたわけではないから、ブロッサムのわき腹に刺傷ができるというわけではなかった。
 だが、足を勢いよく上げたことで、エターナルエッジは空中を舞っていた。それは自分の目の前まで飛ぶように調整されていたものである。
 エターナルが右腕を前に出すと、そこにエターナルエッジが落ちてくる。

「うわぁっ!!」

 ブロッサムが背中から木にぶつかる。
 人質扱いである彼女を放したと思った一条と良牙は、その隙にエターナルの両腕を掴むために飛び掛った。
 だが、エターナルは近づいてきた良牙と一条の前に、順にエターナルエッジの切っ先を見せた。エターナルの懐まで走ろうとした足が止まる。少しでも隙を見せてしまえば、あっさり刺されてしまうのだ。
 この距離でナイフというのは、少し難しいシチュエーションだった。

「おい、バンダナに髑髏。……お前らもだ。プリキュアは信用しない方がいい」

「……どういうことだ」

「キュアムーンライト、それにダークプリキュア……奴らは殺し合いに乗っていた。こいつもきっと同じだ。周りを騙して善人面してやがる。プリキュアは皆悪魔さ」

 そんなエターナルを見て、ブロッサムが立ち上がった。
 木に叩きつけられたブロッサムは、少し苦しそうだったが、声を出すことはできた。

「……嘘です。その人の言うことを、信じないでください!!」

「もちろん、信じるつもりはない! 私たちは大丈夫だ。下がっていなさい」

 一条は、ブロッサムをそう言ってなだめた。
 エターナルの方が信用できない存在なのは、これまでのやり取りで明らかだ。
 第一、こうして襲撃してくる相手を易々と信じるはずもない。つぼみの方が信頼に値する。

「そうだな。もちろん俺も信じないほうがいい。そうだな……プリキュアが悪魔なら、俺は死神だ。当然、貴様ら全員を今すぐ地獄に送ってやるつもりでいる」

「なら、何故御託をならべている……!」

「あっさり殺してどうする? 死ぬ前に教えてやることが山積みだ。信じたくない事実を知る苦しみ……ってのもあるだろう」

 エターナルの邪悪な考えは、キュアブロッサムを見た瞬間に浮かんだ。
 つくづくプリキュアと縁がある身だが、今回はせっかくだから、プリキュアであるブロッサムを利用して、少し絶望させてやろうと思っていたのである。
 自ら手を下すのも一向だが、殺し合いを見るのもまた一向。
 ゆえに、変に固まって協力して殺し合いを打破しようとする存在は煩わしかった。
 信頼感を築きつつあるチームは、自分が片っ端から潰してやろう。そんな考えを生むに至る、エターナルの略歴だ。そこまで算段を重ねているわけではなく、少し面白そうだからやってみる程度であった。
 エターナルはまた、ここにいる誰かを追い詰めるために口を開いた。


「……そうだ、キュアムーンライトは面白い奴だったな。ゲームに乗った理由は、父親と妹の為だそうだぜ」

「妹……?」

 ブロッサムは、頭に疑問符を浮かべる。不謹慎だが、表情は少し明るくなった。惚けた表情になっているだけだが、先ほどのように変な迷いがあるわけではない。ただ、少しエターナルの言うことの確定性が薄れたから、気が軽くなっただけだった。
 そう、月影ゆりの妹など、花咲つぼみは知らないのだ。
 確かに、ゆりは父親が行方不明になっていたが、妹のことなどひと言も言っていなかった。第一、つぼみに妹ができると知った時点で、少しはその事に触れても良いのではないだろうか。
 それが、ゆりの親友であるももかの妹────すなわち、このゲームで命を奪われたえりかのことを、聞き違いか何かでエターナルが誤解したならば辻褄も合うが、ゆりがえりかのために他を殺そうとするなどありえない。
 肉親ならまだ理解できるが、ゆりは周囲にそこまで強い依存を持つタイプではない。ももかやえりかなど、ほぼ無関係な人間のために殺し合いに乗るだろうか?
 答えはノーだろう。

「ゆりさんに妹はいません!」

 なので、言葉通りに受け入れる。
 ゆりの妹。そんなものはいない。
 つまり、エターナルの発言は全てが信用に足らない戯言なのだ。
 しかし──

「知らねえのか? ダークプリキュアは、あいつの妹らしいぜ」

 これまた意外なひと言が、エターナルの口からこぼれた。
 ダークプリキュアというと、何度となくプリキュアと戦ったあの黒い戦士のことだろう。
 彼女はゆりに執着していた。しかし、仮に妹だとしても、ゆりはその正体など知らなかったはずだ。いつか、ゆりはダークプリキュアがゆりに執着する理由をわざわざ訊いていたくらいだし、ダークプリキュアの正体については一切知らない。

「え────?ダークプリキュアが、ゆりさんの妹……? 何を言ってるんですか? ダークプリキュアは、砂漠の使徒……私たちプリキュアの敵なんですよ!?」

「ハッ。随分な言い様だな。だが、事実だ。テメーらが敵だとか砂漠の使徒だとか呼んで、人間扱いもされてねえダークプリキュアが、月影ゆりの妹であることも──」

 チクリと刺さる、嫌味のある言い方だったが、ブロッサムは真面目な顔で彼の言葉を聞いた。

「そして、そいつらが互いのためにゲームに乗ったことも」

「……急にそんなこと言われても、私は信用できません!」

「飲み込みの悪いガキだな。じゃあ、もう一つとっておきの事実を教えてやる」

 良牙がピクッと動いて、エターナルを襲おうとしたが、エターナルは即座に反応してそちらにエターナルエッジを向けた。良牙は動くのをやめた。
 いつまでも、彼にしゃべらせておくのはマズいと感じたのだろう。

「キュアムーンライトは、俺が会ったとき既に誰かを殺していた。そして、その誰かってのはほぼ間違いなく、仲間のプリキュアだ」

 そう、エターナルはある事実に気づいていた。ゆりのデイパックは一つ多かったのである。
 そのデイパックには、ゆり自身の変身道具のほかにも、もう一つ酷似した道具が入っていた。
 それらの事実から、大道克己は、「これは仲間から奪ったものではないか」と推察したのだ。
 まあ、実際間違っていたとしても、それは結局、ブロッサムの心を砕くには効果的な一言になる。エターナルにしてみれば、説得力が1パーセントでもあれば十分で、それが事実である必要はない。

「嘘です!!」

「あいつに会わなくてよかったなぁプリキュア。会ってたらお前、仲間に殺されてたぜ?」

「そんなの、出鱈目です!!」

 エターナルは、左右の男性二名を殴り、蹴ると、後方に歩いていく。視線すら彼らに合わせず、ただ右足左腕の届く距離にいたから、攻撃をしただけだった。まるで呼吸でもするかのような自然な動作に、その場にいた誰もが唖然とした。
 良牙と一条は、地面に倒れてエターナルを睨むが、エターナルはそんな憎悪の視線など物ともせずに、後方のデイパックを一つ掴んだ。
 そして、それをブロッサムの手の中に投げる。ブロッサムは、地面の二人に目を向けながらも、彼らが頷いたのを見て、手の中のデイパックのジッパーに手をかけた。


「見てみろ。言っておくが、そいつは俺が手に入れたものじゃねえ。俺が会ったときにゆりが持っていたものだ」

 ブロッサムが恐る恐るデイパックを開けて見ると、そこに入っていたのは、ココロパフュームである。
 ブロッサムは、すぐに自分のココロパフュームを確認するが、それは確かに腰にあった。ずっとそこにあったのは分かっている。
 シャイニーパフュームの形状でもない。ココロポットでもない。
 では、マリンの────

「これを、どこで!?」

「だから、キュアムーンライトが持っていた物だ。信じろよ? 俺は嘘は言ってない。それから、もうひとつ」

 エターナルの左手には、月影ゆりの所持品である破邪の剣という武器が握られていた。
 破邪の剣はかなり綺麗に輝いていたが、よく見てみると、柄には薄っすらと血の痕があった。
 エターナルは、その部分を見せつけるように刃の部分を隠して破邪の剣を握ったため、つぼみは、刃にまで血がついているものと誤解する。

「おそらく放送の前後あたりだ────お前の仲間のプリキュアは、お前の仲間によって殺された。放送で心当たりのある名前はなかったか?」

 来海えりか
 ブロッサムは、先ほどから気になっていたその名前を、サラマンダー男爵の声で脳内再生した。
 放送の前後──。時間ははっきりとはわからないが、えりかは確かに死亡したと言われていた。
 ……いや、エターナルが奪った可能性もある。しかしもしかすると……。
 そういえば、出会ったばかりのゆりは誰にでも厳しくて……いや、しかしそれは優しさや自分への反省から来るもののはずで……。

「こいつの言う事を聞いちゃいけない!」

 そう叫んだ一条の眼前の地面に、破邪の剣が突き刺さった。エターナルが投げたものだった。エターナルは、一条の方を見もせずに、それを投げていた。
 どこに当てようとしたのか想像して、彼は黙ってしまう。威嚇で最初から地面に当てるつもりだったかもしれないし、一条の体に刺そうとした可能性もある。

「……なあ、プリキュア。それでもムーンライトを……仲間を信じられるか? 
『キュアムーンライトもダークプリキュアも、殺し合いに乗った』。それだけは事実だ。まあ、殺されたプリキュアも殺し合いに乗ってたかもしれねえが、それは俺の知るところじゃない」

「嘘です、嘘です、嘘です!! そんなこと、絶対にありません!!」

「じゃあ、このゲームで人を殺した人間のことを一人ずつ思い出してみろよ。本当に、俺みたいな奴ばっかりだったか? 善人ヅラしておきながら誰かを殺したヤツに、お前は一度も会わなかったのか?」

 言われた通り、反射的に思い出してしまうのがブロッサムの悪い癖だった。相手の言葉を真面目に聞きすぎるのだろうか?
 一文字隼人
 美樹さやか
 つぼみが思い出したのは、そんな優しいはずの人たちだった────。
 溝呂木眞也のような者も確かにいたが、信用していた人が人を殺した……そんな悪しき思い出ばかりが頭を巡る。
 兄のためにゲームに乗ったティアナ・ランスターのような者もいる。

 そう、たとえ優しい人だって、このゲームのうえではどうなるかわからないのだ。

「普段は人が殺し合うことなんて滅多にない。だが、この場では違う。誰もが自分が生き残るため、或いは優勝者が得られる『賞品』ってやつのために殺し合ってんだろ? ……隣にいるヤツだって、すぐに裏切るに決まってるだろ。誰もが善者のフリをしながら、仲間を殺すタイミングを狙ってる。どうすりゃいいかは簡単だ」

「クッ……」

「殺される前に殺せ! そいつがこの場で一番利口な生き方だ! でないと、いつ寝首をかかれるかもわからないしな!」

 エターナルは、年頃の少女の不安定な心を弄ぶ。


「惑わされるな!! 私はたとえ、何度裏切られても誰かの笑顔のために戦う男を知ってるぞ!!」

 その時、一条は、立ち上がる。
 善人ヅラ──そんな言葉を聞いたときに、ふと五代雄介のことを思い出したのである。彼のように、絶対に殺し合いに乗らないと信じられる存在が、一条の近くにはいた。冴島鋼牙や響良牙もまた、彼の信頼に値する相手であった。
 ゆえに、目の前に突き刺された破邪の剣の事など忘れて、一条薫は立っていた。
 エターナルは、今回止めなかった。立ち上がらせることが都合良いとさえ感じたのだろう。

「……どうだ? プリキュア。こいつが本当に信用できるか? こいつはさっき、お前を助けようとしなかったんだ。……そうだ、三人で殺し合ってみろ! 生き残った一人だけは、俺も見逃してやる。それができないなら皆殺しだ!」

「そうはさせないっ!!」

 一条は、エターナルに向けて駆けていた。
 ライダースーツの力は、エターナルにはおそらく敵わない。だが、エターナルの作戦が信頼感を利用したものだったため、今は、この男に立ち向かうことで信頼を得たい気持ちだった。
 そして、エターナルを許せないという怒りも確かにそこにあった。

「私はお前と戦う。五代の魂を継ぎ、お前たちにような悪魔を消し去るために──」

「やめてください、一条さん!」

 と、一条を止めようとしたのは意外と言うべきか、キュアブロッサム──花咲つぼみだった。
 結果的に一条は止まらなかったが、その間もブロッサムが声をかけ続ける。

「五代さんの命を奪ったのは、さやかなんです……五代さんも、信じていた人によって、命を奪われた……」

「なら、私たちで殺し合えというのか!!」

「そうは言ってません!! でも、私はどうすればいいか……」

 五代の死には、間違いなくつぼみの責任も関わってくる。
 五代を刺したのはさやかだ。
 しかし、さやかが五代を刺すとき、つぼみはその行動を止めるだけの力を持っていた。そして、止められる場所にいた。
 それだけならいい。つぼみはさやかと一緒になって、「まどかを脅かす存在」を倒そうとしていたのだ。

 エターナルの言葉に反論できない。自分だって、人殺しに加担してしまったかもしれない。

 また、つぼみだってさやかに殺される可能性はあったと思う。彼女の剣は何度もつぼみの体を掠ったのだから。
 あの時の剣が刺されば、つぼみは血を流し、痛みに苦しみ、傷を残した。死んでいた可能性だってかなり高い。
 他人を信じた結果、五代のように死んでしまう。……やはりそれは、怖かった。

「……フンッ!」

 エターナルは、一条ライダーの顔面を殴った。
 ライダーマスクが砕け、中から一条薫の顔が現われる。

「クッ…………それでも、私は五代の行動が無駄だとは思わない。五代が信じた未来を、こんな奴らに奪わせたくはない!!」

 割れたマスクの破片が、彼の顔を少し切っていた。
 おそらく、直で喰らっていたら確実に意識はなかっただろう。マスクを付けていたことは無駄ではなかったようだ。
 その血の滴る顔で、一条はまっすぐにエターナルを睨んでいた。目の近くを切ってはいたが、目を瞑ることはしていない。

「刑事は疑うのが仕事だ……しかし、私は五代のような男を見かければ、私は職務を放棄しよう。疑い合った結果、笑顔がなくなるというのなら……私は誰かを信じ続ける」

「綺麗事だな! 」

 エターナルは嘲った。
 初めはそのまま一条に視線を送っていたが、やがて別の相手の方を見た。
 地面に伏す良牙だ。とにかく、あらゆる人間に疑心暗鬼を振りまくのが今の彼の目的なのだろうか。


「バンダナ。お前はどう思う?」

「俺か……?」

「そうだ、お前だ」

 良牙は、軽々と立ち上がった。
 エターナルが襲い掛かる様子がない以上、このまま伏せている理由はない。
 体の痛みも引いていたし、エターナルに立ち向かう覚悟も十分にできていた。

「俺は、お前の言っている事なんてほとんど聞いてない。人間がどうの、心がどうの……そんなのは俺には重過ぎる」

 良牙の生活は、人間の醜さや裏切りとは無縁だ。
 そんなテーマは、良牙には臭いやり取りでしかない。
 学校にもろくに行っていないのに、そんな論争をさせられるとは思わなかったのだろう。
 別に、人間の心などに大きな期待をしながら生きてるなどという事は無いので、エターナルの言葉に深く絶望するという事も無い。
 それでも、自分の回答をごく簡単に述べる。

「ただ、あんたの事は気に入らねえ」

 以前の戦いの事もある。先ほどから殴られたり、ナイフを投げられたりと、腹の立つ行動ばかりだ。
 平然と人を殺そうとする。つぼみの知り合いを殺したっていうのなら、それは、本当に許しがたい話だった。
 そのうえ、長々と演説までしてくる。面倒な事この上ない相手だ。

「……だいたい長々と議論してどうすんだ。俺は今、テメエをブッ潰す事以外には興味がねえんだ」

「そうか」

 エターナルは、良牙のこの反応をどうも思っていないかのように、呟いた。
 だが、内心では少しは、戦いこそ本当に面白いものと思っていたのだろう。仮面の下で笑っていた。
 殺されるか、殺すか──そういう自分の「生」を実感できる場面こそ、エターナルには向いているのだろう。
 エターナルエッジを体の前で構える。隙の無い、傭兵らしい構えだった。
 そのまま、エターナルは走りこむ。

 良牙はエターナルエッジが顔の前に来る直前に、伸びたエターナルの右腕を掴むと、彼の腕の上で側転する。
 地面とは違い、いつ力が抜けるかもわからない相手の腕の上で、良牙はくるりと一周回って、エターナルの背後に立った。
 しかし、エターナルの反応も早い。
 即座に振り向くと、再びそちらにエッジを向けた。
 顔のあたりを凪ぐと、良牙は屈む。腹のあたりを凪ぐと、良牙は跳ぶ。
 そして、突いてくる一撃は、カンフーのような構えをして、両手で抑え込んだ。
 動きが無くなった良牙に、エターナルは少しだけ話しかける。

「お前、NEVERになったら面白そうだな。……あいつらよりも強くなれるかもしれねえ」

「俺はバターになる気はない!」

「NEVERだ、NEVER」

 エターナルが余った左腕を使って、良牙の顔面を殴ろうとする。
 その拳を、良牙は両足で抑え込む。足が着かず、少しばかり辛い体制になったが、仕方が無い。避ける手段が足しかないのだ。
 両手を放てば、避ける間もなくエターナルエッジが顔の前に突き刺さる。

「ぐおおおおっ」

 良牙は空中で勢いをかけて、エターナルの腕ごと、くるりと回転させた。
 エターナルの両手が、彼自身の体の後ろへと回転する。

「今だ!」

 エターナルの体の前が無防備になったところで、一条がスタンガン付きのナックルで強く殴った。これまでチャンスのなかったところへ、強い一撃が加わる。
 両手が塞がってエターナルローブで防ぐこともできず、その衝撃は克己の体にも伝った。

「ぐっ……」

 と、良牙はその瞬間に己の両手両足を離した。
 エターナルが突きどころではなくなったのだから、離しても何の問題もない。
 そして、見事に着地すると、今度はブロッサムに言葉をかけた。


「つぼみ!」

 エターナルを注意しているために、声をかけるだけで目線も合わせない。
 しかし、それはブロッサムが良牙の方を振り向かせるには十分な一言。
 彼女は、良牙の方を見ながら口を開いている。

「なに悩んでんだよ、俺たちは戦うしかねえだろ!?」

「でも……」

「俺に言わせてみれば、仲間が裏切るとか裏切らないとかは、後で考えればいい。コイツは放っておいたらいけない相手だろ……!」

 エターナルが、良牙の方を向いた。
 再び一条はエターナルを殴ろうとしたが、エターナルはそんな一条を、振り向きもせずに一蹴する。一条は蹴られた腹を抑えながら後方に引きずられるように下がった。
 そして、エターナルは、良牙の方に向かってエターナルエッジを向けた。

「プリキュア、二つに一つだ。全員俺に殺されるか、もしくは、他の二人を殺してお前だけ生き残るか」

「ッ……! それは、あなたの決める事じゃありません!」

 ブロッサムは、震えながらもそう答えた。
 神にでもなったかのような、エターナルの物言いが気に喰わなかったのだろう。
 エターナルの言葉には心を折られかけているが、それでもエターナルの「殺しあえ」という言葉だけは受容できないし、死ぬ気もなかった。

「そう思うんなら、少しは俺に味方してくれ!」

 エターナルエッジは、依然良牙の方を向いており、それがいつ良牙に向かってくるかはわからないような状態である。良牙は基本的に回避をしていたが、少しでも意表を突かれれば即死だ。
 良牙は別に、これまで確実に実力だけでエターナルの攻撃を回避できたわけではない。ひとえに、運の力もかかわっている。
 つぼみに味方らしくしてほしい、というのは良牙の切実な願いであった。

「……はいっ!」

「……」

 しかし、それでもキュアブロッサムの返事がやや弱弱しいことが変わらないと気づいた良牙は、ため息を吐く時のような気持ちになる。
 やはり、戦力として味方に引き入れるには絶望的かもしれない。いや、むしろこのままでは足手まといだ。
 良牙は少し表情を険しくした。

「だー! やっぱりだめだっ!」

 ちゃんと返事をしたのに、良牙が突然怒り出したことに対して、つぼみは困惑した。
 何に怒っているのかもわからない。というか、そもそもこれは怒っているのだろうか。
 急な出来事で、彼女は戦おうと走りかけていた足を止める。

「……つぼみ。やっぱり手を貸してくれなくてもいい! もし、いま答えがわからねえっていうなら、ここは俺たちに任せて、答えを探しに行け!」

「え?」

「仲間のプリキュアを探しに行って来りゃあいい。殺し合いに乗ってるか乗ってないかなんて、だいたいは見りゃわかるだろ」

 いい加減な答えだ。見てわかるのなら苦労はしない。
 ただ、つぼみくらいの女の子がもし、人を一人殺したというのなら、少しは冷静さを欠くだろうし、ある意味様子を見ればわかるかもしれないとは思っていた(実際のゆりはつぼみより何歳か上だが)。
 足手まといを味方につけて戦いをするくらいならば、いっそ逃がしてそちらの用事を優先させてしまった方がいいと考えたのである。

「……そうだな。私たちの事はいい。仲間が信じられないのなら、信じられる仲間に会いに行ってみればいいんだ」

 一条もまた、同じ事を言った。
 彼女を一人にするのはためらわれるが、それでもエターナルなどと交戦するよかマシだと思ったのである。

「……だけど、私は戦うつもりです!」

「悪いがつぼみ……今のままじゃ足手まといにしかならない。今は戦うよりも、万全に戦うための準備をするんだ!」

 良牙の言葉は、今まで戦いだけに生きてきたゆえの言葉だった。
 悲しみや不幸を力に変えたり、己の万全を知ったうえで戦うのが兵法である。
 戦えない状態で戦う──そんな意地を使ってしまう時もあるが、客観的に見たつぼみは、まさにそれだった。
 自分の時は止められないが、他人の時はこうして止められる。

「……そうはさせねえぜ」

 エターナルは、エターナルエッジの刃先をブロッサムの方へと向け変えた。
 はっとして、ブロッサムは後方へ下がる。
 だが、エターナルがブロッサムを追っていく。
 後ろには、それに対応すべく、エターナルを追う良牙と一条の姿があった。
 二人は回りこむ形で、ブロッサムとエターナルの間に立とうと走る。一条が先頭であるが、すぐに良牙がそれを追い越した。

「……おらっ!!」

 ブロッサムが通り過ぎた機を見て、良牙は大木を殴り倒す。
 みしっ、という音とともに木が折れて、エターナルの行く道を塞いだ。完全に地面に落ちた瞬間の音は筆舌に尽くしがたい。

「おい、つぼみ!」

 良牙は、舞い散る砂塵の向こうにいるはずの少女の名前を呼んだ。

「一条刑事が言ったとおりだ、仲間が信じられなくて戦えないなら、信じられるようになってから戦えばいいだろ!」

「……」

「会って確認して来い、そいつが死んだって事も、殺し合いに乗ったって事もどうせ嘘なんだ。実際に見てみりゃ、自分はこんな馬鹿な事で悩んでたのか……って笑えてくるに決まってる!」

 良牙の声量を考えれば、その言葉はエターナルにも聞こえただろう。
 だが、とにかくつぼみに聞こえればそれでいい。
 今、つぼみがすべき事は、戦う事よりも、確かめる事なのだと良牙と一条は思っていたのである。

「お二人とも、すみません!」

 もくもくと視界を曇らせる土煙で何も見えないが、そこからつぼみの声がした。
 つぼみの選んだ判断が、その中から聞える。

「私、ゆりさんたちを探してみます。ゆりさんを信じるために!」

 ────つぼみが選んだのは、エターナルを倒すのでなく、ゆりを信じるという決断だった。
 花咲つぼみ・キュアブロッサムは森を駆けて行く。
 ブロッサムがどちらに向かったかわからないのは残念だが、一応街に向かう事は事前に約束しているので、はぐれる事には問題はない。

「……よし、行ったな」

「ああ」

 一条と良牙は、砂埃から来るであろう刺客を待った。
 そこから来るのタイミングがわからないので、少し息を呑む。

「……まあいい。“響良牙”、お前はアタリだ」

 エターナル──大道克己の声。

「殺し甲斐がある」

 砂塵が晴れたそこには、キュアブロッサムの姿などなかった。
 白き死神、仮面ライダーエターナルが悠然と立っていた。



★ ★ ★ ★ ★




「ダークプリキュア……」

 キュアブロッサムは、そうして走った先で、街に向かおうとしていたダークプリキュアと偶然会う事になった。黒い翼、黒に染まった容姿は間違えようもない。
 ダークプリキュアにしてみれば、花咲つぼみ、来海えりか、明堂院いつき、月影ゆり──元の世界の知り合い全員と会う結果になったというのだから、この会場も狭いものだ。
 それも、その全員が森エリアで出会っている。……まあ、大半が森と山に覆われているのだから、当然ともいえるだろう。

「……キュアブロッサムか」

 キュアブロッサムはぐっと構え、一撃を待った。
 しかし、まだダークプリキュアが何かしらの動きを見せる様子はなかった。
 ただ、彼女は少し残念そうに、そして気の毒そうに呟く。

「不意打ちで死ねば、恐れることも苦しむこともせず逝けたというのに」

 そんな言葉は、ブロッサムの耳には入らない。
 それでも、ダークプリキュアの様子の異変は、ブロッサムにもわかったらしい。
 先ほどの喧騒が嘘のように、静かで落ち着いた邂逅であった。

 ブロッサムが彼女の姿を見て思い出すのは、彼女がゆりの妹だというエターナルの言葉。
 それが嘘ならば、まずエターナルの言葉を信用する必要性はかなり薄くなる。
 そのまま、言葉の全てが嘘である可能性を追いたかった。

「ダークプリキュア、あなたが……」

 訊いてみようとするが、少し怖かった。
 ダークプリキュアの立ち振る舞いは、あまりにも静かで繊細さを感じさせる。簡単に折れそうなくらい華奢な体に見える。
 今まで荒々しい戦いを繰り広げてきた相手とは、少し違う。
 ダークプリキュアは、普通の少女のようでありながら、普通の少女ではなさそうだ。

「……あなたが、ゆりさんに執着する理由を教えてください!」

「……」

 ダークプリキュアは、押し黙る。
 キュアブロッサムもまた、その空気の悪さに何も言えなくなった。

「……それを伝える必要はない」

「……なら、こう質問します。あなたとゆりさんが、姉妹であるというのは本当ですか?」

「それも、答える必要はない」

 だが、それが肯定という意味なのは、ブロッサムにもわかった。
 そう、こんな事を言われたのに、ダークプリキュアはその質問を冷静に受け止めすぎている。本来なら、鼻で笑ったり、怒ったりするかもしれない。……本来、ブロッサムが聞きたい返答はそれだった。
 しかし、残念ながら、事実はブロッサムの信じたい事実ではなく、エターナルの方だったらしい。
 はっきりと肯定されたわけでもなく、根拠となるものを一切受け取っていないために彼女の心の靄が深くなるばかりで、吹っ切ることもし難かった。
 ぐっと、ブロッサムは拳を握る。どう反応すればいいのか、しばし悩んだ。
 今度はダークプリキュアの方が口を開く。

「……貴様の質問に答える気はないが、一つだけ用がある」

「何ですか?」

「貴様に渡しておくものがある」

 ダークプリキュアは、ブロッサムに向けて何かを投げつけた。
 ブロッサムがそれを胸と腕で受け止めて見てみると、それはココロポットであった。
 鋭利な武器が飛んでくるのではないかと構えたが、そんなものよりずっと深くブロッサムの心を抉った。


「ゆりのものだ」

「どうして、これを……?」

 ゆりの遺品であるから、プリキュアに受け取ってもらおうとしたのが一番の理由だろう。
 このまま、ダークプリキュアの手でさらに穢れ続けるよりも、ブロッサムに持ってもらっていた方が良いと考えたに違いない。
 しかし、ブロッサムにはそんな意図がつかめるはずもない。

「キュアブロッサム。今から私と勝負をしろ」

 そしてダークプリキュアは、ただ返答を拒否する。
 その哀愁漂う瞳だけが、ブロッサムに回答していた。



★ ★ ★ ★ ★



 一方、一条や良牙もその間中戦っていた。
 何度か責めては、すぐに退くような戦法だが、それはなかなかに難しい。
 傷を負わないのは、エターナルが敵の攻撃を楽しみ続けたからだとしか言いようがない。
 積極的に攻撃せずに、敵が怯えながら地道な攻撃をするのを楽しんでいるようだった。

「おりゃあっ!」

 その掛け声は、一条薫という男らしくはない。
 どこかで聞いたことがあると感じるのは、おそらくそれが五代雄介とまったく同じ掛け声だったからだろう。
 強力スタンガンを仕込んだ黒いブーツによるライダーキック。良牙の肩を借りてジャンプしてからの、甲高い声と一撃だった。

「はぁっ!」

 エターナルローブを使うまでもない。
 一条の装備がメモリにも劣る低い技術の産物であるのは明白だったから、エターナルの胸に当っても何の問題もないのである。ローブをしているのと同じだ。
 エターナルの胸で電撃が光る。
 エターナルはその左足を掴むと、左方に投げ飛ばした。

「ぐぁっ!」

 一条の体が激しい勢いで地面に激突して何度かバウンドする。
 土埃が黒いスーツを汚す。受け身もうまく取れず、一条の体にはすぐには立ち上がれないほどの衝撃が残った。

「爆砕点穴!」

 更に、その次に良牙の人差し指がエターナルの胸に突き出される。
 特殊な技であるがゆえ、もしこれがベルトを狙ったものならば、ロストドライバーとメモリの破壊につながったかもしれないが、良牙が狙ったのは一条と同じく胸。
 残念だが、エターナルの装甲は彼の技で簡単に破壊することはできないものだった。

「ふつう、生身でこの距離に来るか──」

 エターナルとほぼ零距離に来てしまった良牙の胸は、次の瞬間、エターナルエッジによって切り裂かれた。
 咄嗟に体を逸らしたため、そんなに深くは抉られてはいない。しかし、衣服がめくれて血も出た。
 強靭な筋肉を持っていたゆえか、その傷を痛いと感じることはなかった。
 例の爆砕点穴の修行によって、彼の体はとっくの昔に致命傷を笑えるほどに頑丈になっていたのだ。

「ここまでタフとは面白いな……」

「それだけが取り柄でね」

 更に、良牙は前に出る。
 エッジの攻撃の威力がわかったことで、前に出やすくなったのだろうか。
 彼の体には、大したダメージではなかったから、恐れる必要がなかったのだ。

「はぁっ!」

 良牙はエッジを持った右手を掴むと、足を高く上げてエターナルの顔や胸、腹から足を何度も何度も蹴りつけた。
 あれだけ筋肉が硬いというのに、長い足はエターナルの顔まで上がる。
 中国拳法の使い手である彼だからこそできる特殊技能であった。


「調子に乗るなよ」

 エターナルは、エッジを持った右手を自分の側に引き寄せる。
 それによって、良牙もまた引き寄せられた。その場を離れまいとした良牙を引き上げるのだから、ものすごい力である。
 良牙の腹に、今度は一撃だけエターナルの蹴りが叩き込まれる。

「がはっ……!」

 良牙は急に息苦しくなり、両手でのどを抑えた。急所──おそらく鳩尾にキックを受けたのだ。
 そう、たった一撃でありながら、ライダーと人間にはそれなりの差があった。
 少なくとも、良牙の注意を逸らし、良牙の手を離させる程度の差は。

 エターナルが、良牙に背を向けて歩き出した。
 なぜ優勢になったというのに、背中を見せて歩き出したのか、良牙にはわからなかった。
 しかし、その理由はごく単純────

「そんなお前に最高の死に様を用意してやる」

 エターナルはエターナルエッジにメモリを挿し込み、マキシマムドライブを起動する。
 月影ゆりを殺害した技・「エターナルレクイエム」である。

 ──Eternal maximum drive──

 本来、メモリを停止させる効果が何よりの意味を持つのだが、この場では無意味だ。
 ならば、この技の持つ意味はたったひとつ。
 純粋に相手を殺害する、まさしく必殺技としての鎮魂歌。
 エターナルが助走をつけると、良牙は身構えた。エターナルが離れたのは、高い威力を引き出すための助走のためだったのだ。

「さあ、地獄を楽しみな!」

 しかし、走りながらそう呟いたエターナルは、真横からの一撃に倒れることになる。
 エターナルも、どうやら何が起こったのかわからない。良牙さえも、その姿に唖然としただろう。
 油断したとはいえ仮面ライダーをたった一回のタックルで突き飛ばすだけの力がある者──つまり、一条ではないとエターナルは脳で判断した。
 それに、エターナルが倒れる瞬間に見たのは、謎の赤い影だった。
 黒色もあったが、一条ライダーの外形とは少し異なった、それは────


★ ★ ★ ★ ★


「ダークタクト!」

「ブロッサムタクト!」

 二つのタクトが、森を駆けながら争い合う二人の手で交錯する。
 タクトとタクトがぶつかり合う。
 何故、この二人の戦士が戦うことになってしまったのか。プリキュアとダークプリキュアが戦うのは必然であるはずなのだが、ここに至る経緯を考えればそう思わずにはいられなかった。
 当事者であるキュアブロッサムも、少なくとも、この瞬間だけはそう思っていた。
 ダークプリキュアの行動に幾つか疑問があることが、ブロッサムを悩ませる原因だった。

「ダークプリキュア、あなたはどうして……そこまでして私たちと戦うんですか!?」

 ダークプリキュアの方が優勢に見える戦いだった。
 ダークプリキュアは攻撃に、ブロッサムは防御に回っているようにさえ見える。
 少しでも気を抜けば、ブロッサムがタクトの一撃を受けるだろう。

「答えを知る必要はない!」

 ダークプリキュアが縦に振り下したダークタクトは、ブロッサムが真横に構えたブロッサムタクトに防がれる。
 その隙に、ダークプリキュアの腹にブロッサムの足が叩き込まれた。
 ダークプリキュアは、その一撃によって、初めて彼女や青いプリキュアと戦った時の事を思い出した。あの時より、随分と一撃の重みが違う。成長の証だろうか?
 しかし、それはダークプリキュアの動きを止めるにふさわしくはなかった。

「はぁっ!!」

 ダークプリキュアはタクトを握ったまま、真正面に拳を突き出す。
 顔を狙った攻撃だったが、それはブロッサムに避けられる。

「答えを知る必要なら、あります!!」

 今度は、その小さな体から、ダークプリキュアの鳩尾に肘が叩き込まれた。
 避けた勢いで、そのまま低い体勢からの肘打ちを決めたのである。
 仮にも急所である鳩尾をつかれると、さすがにダークプリキュアも息が止まるような感覚に陥った。


「ぐぁっ!」

「あなたが本当にゆりさんの妹なら、私の大切な人の家族なんです! 誰かの悩みを聞いて、その心を救う……そして、こころの大樹を……人々のこころの花を守ってあげることが私たちの使命だから!!」

 ゆりの妹。その言葉を、ブロッサムは額面通り捉えるしかなかった。
 ゆえに、ダークプリキュアは一人の人間として扱っている。心があるというのなら、その心を救うべき使命が、彼女にはあるのだ。
 そして、それが友人の肉親であるというのなら、特にその使命は重要なものになってくる。

「……それに、私はすべての答えを知ってから、本当の戦いに臨むんです。だから、あなたから返事を聞かないといけない」

「くっ……なる、ほど。私を前座扱いか。……面白い」

 鳩尾を抑えて、呼吸を整えながらダークプリキュアが言う。
 表情は苦しげだが、ブロッサムをにらみつけている。
 だが、どうやら何かたくらみがあるらしく、ダークプリキュアの方も口を開いた。

「キュアブロッサム、仮面ライダーエターナルと会ったな?」

「仮面ライダーエターナル!? 知っているんですか!?」

「やはりな……。私とムーンライトの関係を言って回るのは奴くらいしかいまい」

 エターナルと、何度か月影ゆりとの関係について話した覚えがある。
 キュアブロッサムがその話題に踏み込んでくるのは、エターナルを通じて知った可能性が高いと、ダークプリキュアはにらんでいた。
 一方、ブロッサムとしては、エターナルが仮面ライダーの二つ名を持っていることに唖然とする。もしかすれば、広間で聞いた仮面ライダー1号、2号────本郷猛と一文字隼人の二つ名を拝借しただけかもしれないが。
 もし、あれがプリキュアだったらキュアエターナルとでも名乗ったのだろうか? 滑稽な響きに聞こえるが、実際そんなことをされたらプリキュアであるブロサッムは決して許さないだろう。……などと考えてみたが、目の前にいるのは実際にそれをやってのけた相手だった。

「……やっぱり、あなたはゆりさんの妹なんですか?」

「やめろ。あの女を姉と思ったことは一度もない」

「え?」

「奴が光なら私は影。そういう風に生まれてきた」

 ダークプリキュアの、かつての本心を吐露する。
 しかしそれは、今の本心ではない。
 今になってみればまったくの嘘でしかない言葉でありながら、事情を知らないプリキュアには真実以上の説得力を持つであろう言葉だった。
 だから、ダークプリキュアはこうしてプリキュアを前に語る。

「ムーンライトはエターナルに殺されたな。私の手で殺すことができなくなったのは残念だが、邪魔者が消えたという意味ではむしろ我々にとって好都合だ……」

「……!!」

「お前の仲間──キュアマリンと言ったな」

 既に怒りつつあるブロッサムの表情。
 ダークプリキュアがキュアマリンの名前を出すと、彼女は大きく目を見開いた。
 怒りと驚きに、ブロッサムは女の子らしからぬ表情になる。

「あれは私が殺した」

 ブロッサムは、反射的にその拳をダークプリキュアの腹に叩き込もうとしたが、ダークプリキュアの右手がそれを押さえつけていた。
 そう何度も同じ場所に攻撃を受けたりはしない。

 ダークプリキュアの言動は、やはり実際の行動とは違う──まったくの嘘ばかりであった。
 実際にキュアマリンを殺害したのはキュアムーンライトだったし、キュアムーンライトの死を彼女は悲しんでいた。
 しかし、それでも彼女が嘘をついた理由はごく単純。
 キュアムーンライトがゲームに乗ったという事実について、キュアブロッサムが知らずに済むようにしたのである。
 少なくとも、ムーンライトは自分の罪が仲間に知られるようなことを望まないだろう。
 普通に考えればそれは発覚しないだろうが、エターナルという存在が厄介だった。やはりあの時、殺しておくべきだったと後悔する。
 こうしてブロッサムがエターナルの戯言を聞けば、彼女が殺し合いに乗った事実を知ってしまうし、奴はどこまでも他人を侮辱する。
 だが、エターナルに何らかの事実を聞かされてしまった今、ダークプリキュア自身がゆりの罪すべてを被ることによって、ブロッサムがエターナルの言った真実を信じ込むことは回避できるはずだ。


「ダークプリキュア、私……堪忍袋の緒が切れました!!」

 何も知らないブロッサムはいつもの言葉を投げかける。
 しかし、何も知らないブロッサムを責めることは誰にもできない。
 ダークプリキュア自身が、この言葉を受けることを望んだ──その結果なのだから。

(……こうなったプリキュアと敵対するのは厄介だが、まあいい。せめて、何も知らないまま死なせてやろう……)

 一方のダークプリキュアも、今さらこの程度の汚名を被ったくらいで傷つくことはないのだから。

「プリキュア・ピンクフォルテウェイブ!」

「プリキュア・ダークフォルテウェイブ!」

 二人の怒りの光弾は、空中でぶつかり合い、行き先を譲ろうとはしない。
 それはまさしく、お互いの魂の一撃であった。
 プリキュア同士が放つ一撃は、簡単には破れない。
 ……が、すぐに二つのエネルギーは爆発し合い、その周囲を飲み込んだ。
 その爆発的なエネルギーは、二人の視界をうばい、当事者二人まで巻き込んで破裂する。



★ ★ ★ ★ ★



(五代……)

 一条の脳裏に、一人の男の戦いが浮かぶ。
 それは、同僚でも、家族でもなかった。
 ただ偶然であった、冒険家を名乗る妙な男。
 普通に就職して、普通に家族を作るのではなく、世界を旅する楽しみに生きるというのは、一条とは全く別の生き方だった。
 そして、この男の一番妙なところは、やはり、未確認生命体との戦いのことだろうか。
 純粋な人間ではなくなり、未確認生命体と戦い続ける宿命に取りつかれたというのに、その男はどういうわけか笑顔だったのだ。
 誰かに笑顔を与え続けることに、なぜか純粋だった。
 本当は敵を殴る拳が血で汚れることも、敵の命を奪うことも、嫌っていたはずなのに。
 あるいは、自分の命が脅かされていることへの恐怖もあるはずなのに。

(────これが君の見ていたものなのか)

 一条薫は、いま目の前に見えている景色が、血で汚れているようには見えなかった。
 仮面ライダークウガの目で見る、自分の手。
 それは、「白」ではなく、「赤」だった。

 そう、仮面ライダーエターナルを真横から突き倒した赤い影──それは仮面ライダークウガ・マイティフォームだったのである。

 一条薫の腹にアークルが嵌った理由は単純だった。
 一条自身が、それを望んだからに他ならない。
 欲のためでも、悪のためでも、力のためでもなく、ただ純粋に「誰かを守るため」にそれを取り込もうとした結果だった。
 そして、五代と違い「警察」であり、戦う覚悟が十二分にできていた彼がグローイングフォームになることもない。

「誰だ、てめえ。仮面ライダーか?」

 エターナルの言葉に、クウガが答えなかった。
 ただ、いまの一瞬で良牙を救えた事実に放心していた。
 どうやら、クウガの力というのは予想以上らしい。しかし、彼としてはその強すぎる力に飲み込まれずに済んだ五代雄介という男への敬意もまた強まった。

「……おい」

 クウガは拳を握ったり開いたりしてみた。
 力がぐっとこもる。

(五代、君はこんな事を、本当なら望まないだろうな)

 五代と一条の間には、友情が確立されていたから、それだけお互いの身を心配する気持ちは強かった。
 ゆえに、一条は五代がクウガとなったことを後悔していたし、彼が戦うのを何度か止めた。
 そして、何度思ったことだろう。

 もし、自分がクウガだったなら────と。
 その願いは、今思わぬ形で叶っていた。

(だが、あのとき約束しただろう。こんな戦いを止め、人々の笑顔を守ると──そのために、少し君の力を借りるだけだ)

 一度クウガになれば、たとえ元の世界に帰ってもクウガのままになるかもしれない。
 もしかすれば一生このままで、後でこの事実を後悔してしまうかもしれない。
 しかし、ここでやらなければ確実に後悔するというのはわかったのだ。

「仮面ライダー、クウガ」

 少し遅れてそう呟いたのは、なぜだろうか。
 もしかしたら、アマダムの中で、五代雄介の意思が少し染みついていたのかもしれない。

「仮面ライダークウガか。ガイアメモリは使わねえみたいだが、 その姿……確かにライダーのそれに似ている」

 当然である。
 シンケンジャーの世界を訪れた「仮面ライダー」はまさしく、異世界のクウガであったし、彼は確かに仮面ライダーの称号を受ける者であった。
 むしろ、エターナルよりもよほど、その名に似合った魂の持ち主である。

「────いくぞ……!」

「おう!!」

 放送まで、あと数分というところだった。
 しかし、誰も時間など気にしていられる状況にはなかった。
 このままだと、この三人は放送を聞きながら戦うことになる。
 それでも時間と敵は待ってはくれない。

 クウガとエターナルの拳がぶつかった。



【1日目/昼】
【E―6/森】

【大道克己@仮面ライダーW】
[状態]:疲労(小)、腹と背中を中心とするダメージ(小)、仮面ライダーエターナルに変身中。
[装備]:ロストドライバー@仮面ライダーW+エターナルメモリ、エターナルエッジ、昇竜抜山刀@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:支給品一式×3、破邪の剣@牙浪―GARO―、ランダム支給品1~5(十臓0~2、えりか1~3)、細胞維持酵素×2@仮面ライダーW、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、歳の数茸×2(7cm、7cm)@らんま1/2
[思考]
基本:優勝し、自分の存在を世界に刻む。
0:目の前の二人を殺す。
1:とりあえずダークプリキュアは無視し、他の参加者を殺す。
2:T2ガイアメモリを集める。
3:京水と会ったら使ってやる。もしくはメモリを奪う。
4:プリキュアや仮面ライダーは特に優先的に殺害する。
[備考]
※参戦時期はマリア殺害後です。
※良牙を呪泉郷出身者だと思ってます。
※プリキュアは食事、水分の摂取を必要としない可能性を考えています。ダークプリキュアの一件から、プリキュアはただの人間だと考えていない可能性もあります。


【響良牙@らんま1/2】
[状態]:全身にダメージ(中)、負傷(顔と腹に強い打撲、喉に手の痣)、疲労(中)、腹部に軽い斬傷、五代の死に対する悲しみと後悔
[装備]:なし
[道具]:水とお湯の入ったポット1つずつ(お湯変身3回分消費)、秘伝ディスク@侍戦隊シンケンジャー、ガイアメモリ@仮面ライダーW、支給品一式、ムースの眼鏡@らんま1/2
[思考]
基本:天道あかねを守る
0:つぼみと一条を守る為にエターナルを倒し、それから冴島邸へ向かう。
1:天道あかねとの合流
2:1のために呪泉郷に向かう
3:ついでに乱馬を探す
[備考]
※参戦時期は原作36巻PART.2『カミング・スーン』(高原での雲竜あかりとのデート)以降です。
※良牙のランダム支給品は2つで、秘伝ディスクとガイアメモリでした。
 なお、秘伝ディスク、ガイアメモリの詳細は次以降の書き手にお任せします。
 支給品に関する説明書が入ってる可能性もありますが、良牙はそこまで詳しく荷物を調べてはいません。
※シャンプーが既に死亡したと知りました。
※シャンプーの要望は「シャンプーが死にかけた良牙を救った、乱馬を助けるよう良牙に頼んだと乱馬に言う」
 「乱馬が優勝したら『シャンプーを生き返らせて欲しい』という願いにしてもらうよう乱馬に頼む」です。
※道を間違えて市街地に向かっていますが、良牙はまだそれに気づいていません。

【一条薫@仮面ライダークウガ】
[状態]:疲労(小) 、アマダム吸収、仮面ライダークウガに変身中
[装備]:滝和也のライダースーツ
[道具]:支給品一式×2、ランダム支給品2~5(一条分1~2確認済み、五代分1~3未確認)、警察手帳、コートと背広
[思考]
基本:民間人の保護
0:警察として、人々を守る
1:エターナルを倒す。もしもつぼみが危険になったら、彼女を連れて逃げる。
2:良牙と共に呪泉郷へと向かう
3:魔戒騎士である鋼牙の力にはある程度頼る
4:他に保護するべき人間を捜す
5:未確認生命体に警戒
※参戦時期は少なくともゴ・ガドル・バの死亡後です
※殺し合いの参加者は異世界から集められていると考えています。
※この殺し合いは、何らかの目的がある『儀式』の様なものだと推測しています。




★ ★ ★ ★ ★



「……なるほど」

 ダークプリキュアと、変身途中のベールに身を包んだ花咲つぼみが、その地に立っていた。
 どういうわけか、互いにほとんど無傷なまま、互いを見つめ合っている。
 あれだけの爆発の中で、周囲の木々や花が一切朽ち果てていないのは、どういうわけだろうか。

(互いに手加減をしていたわけか)

 キュアブロッサムは、周囲の木々や花を傷つけないために手加減をしていたらしい。
 そして、それができたのはダークプリキュアが奇妙な加減をしたことに気が付いたからだ。
 ダークプリキュアの一撃は全力ではない。
 つぼみにはその理由はわからなかったが、それに合わせて力を緩めたのである。

 憎しみにとらわれず、「愛」で戦うのがプリキュアだった。

(……どうやら、仲間を殺されるのを躊躇っているらしいな。ゆり)

 何故、ダークプリキュアは手加減をしたのか。
 その理由はごく単純。ダークフォルテウェイブを放つ瞬間、どういうわけか月影ゆりと来海えりかがキュアブロッサムを庇うように立っている幻影が見えた。
 それが幻影なのはわかっているが、両手を広げて彼女を庇おうとしたのを、ダークプリキュアは確かに見た。


(しかし、ここにある全てが無事というのは不自然だ。……やはり────)

 プリキュアの奇跡、とでもいうべきだろうか。
 死して尚、マリンのココロパフュームとムーンライトのココロポットに込められたプリキュアの意思が、あの爆発を食い止める力を使った……と、そういうことなのだろうか。
 実際、ココロポットはダークプリキュアに一時的に力を貸してくれたし、ムーンライトは妖精がいないのに変身している。
 プリキュアがプリキュアであった証であるあの二つのアイテムは、どうやらプリキュアらしい奇跡を起こしてくれるらしい。

 ────ならば

(キュアブロッサム、キュアサンシャイン。お前たちはその奇跡とやらで幸せを取り戻してみろ。私は私のやり方でゲームを進める)

 本当のプリキュアが奇跡を起こす力を持つのなら、それに依ってみる。
 ゆりやえりかがそれで戻るのなら、ダークプリキュアはそれでいいのだ。
 だから、「ゲームで優勝する」以外の方法として、「プリキュアに奇跡を起こしてもらう」という可能性もあるのなら、並行してそれを視野に入れているといいだろう。

「……キュアブロッサム、また会える時を楽しみにしているぞ」

 ダークプリキュアは、その目的や意思を隠しながらつぼみの前を去って行った。
 プリキュアの変身が解除されたつぼみは、それを追いかける術がない。
 そして、同時につぼみの頭に一つの疑問が過る。

(本当に、ダークプリキュアがマリンを……?)

 なぜ、今ダークプリキュアはつぼみに手加減をしたり、見逃したりしたのか。今までと違い、他人を傷つけることに少しでもためらいがあるのだろうか。
 ダークプリキュアの情報と、エターナルの情報の食い違いがつぼみに混乱を齎す。
 どちらを信じればいいのか、彼女にはもうわからない。
 だが、ゆりがえりかを殺したとは信じられないし、ダークプリキュアが犯人だということも疑問に思う。
 それゆえか、怒りも少しおさまっていた。

(いえ、そんなことを考えている場合じゃありません……、みんなのところに戻らないと……)

 すぐに思考を切り替えた。
 ゆりは死んでしまった……その事実は重たいが、ゆりが人殺しでなかったと聞けたことで、少しは気が楽になったかもしれない。
 もちろん、それは対症療法にもなっていないのだけれど。



【1日目/昼】
【E―8/森】

【ダークプリキュア@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、右腕に刺し傷
[装備]:T2バードメモリ@仮面ライダーW
[道具]:ゆりの支給品一式、ランダムアイテム0~2個(ゆり)
[思考]
基本:キュアムーンライトの意思を継ぎ、ゲームに優勝して父や姉を蘇らせる。
0:市街地へ向かい、集まった参加者達を倒す。
1:もし他のプリキュアも蘇らせられるなら、ゆりのためにそれを願う。
2:つぼみ、いつきなども今後殺害するor死体を見つけた場合はゆりやえりかを葬った場所に埋める。
  ただし、プリキュアの奇跡にも頼ってみたいので、その都度生かすか考える。
3:エターナルは今は泳がせておく。しばらくしたら殺す。
[備考]
※参戦時期は46話終了時です
※ゆりと克己の会話で、ゆりが殺し合いに乗っていることやNEVERの特性についてある程度知りました
※時間軸の違いや、自分とゆりの関係、サバーク博士の死などを知りました。ゆりは姉、サバークは父と認めています。
※筋肉強化剤を服用しました。今後筋肉を出したり引っ込めたりできるかは不明です。
※キュアムーンライトに変身することができました。衣装や装備、技は全く同じです。
※エターナル・ブルーフレアに変身できましたが、今後またブルーフレアに変身できるとは限りません。


【花咲つぼみ@ハートキャッチプリキュア!】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)、加頭に怒りと恐怖、強い悲しみと決意、キュアブロッサム変身途中の下着みたいな姿
[装備]:プリキュアの種&ココロパフューム
[道具]:支給品一式×3、鯖(@超光戦士シャンゼリオン?)、スティンガー×6@魔法少女リリカルなのは、プリキュアの種&ココロパフューム(えりか)@ハートキャッチプリキュア!、プリキュアの種&ココロポット(ゆり)@ハートキャッチプリキュア!、さやかのランダム支給品0~2
[思考]
基本:殺し合いはさせない!
0:良牙たちのところに戻る。
1:仲間を捜す、当面はD-5辺りを中心に探してみる。
2:南東へ進む、18時までに一文字たちと市街地で合流する
3:ダークプリキュア…
[備考]
※参戦時期は本編後半(ゆりが仲間になった後)。少なくとも43話後。DX2および劇場版『花の都でファッションショー…ですか!? 』経験済み
 そのためフレプリ勢と面識があります
※溝呂木眞也の名前を聞きましたが、悪人であることは聞いていません。鋼牙達との情報交換で悪人だと知りました。
※良牙が発した気柱を目撃しています。
※プリキュアとしての正体を明かすことに迷いは無くなりました。
※サラマンダー男爵が主催側にいるのはオリヴィエが人質に取られているからだと考えています。
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました。
※この殺し合いにおいて『変身』あるいは『変わる事』が重要な意味を持っているのではないのかと考えています。
※放送が嘘である可能性も少なからず考えていますが、殺し合いそのものは着実に進んでいると理解しています。
※ゆりが死んだこと、ゆりとダークプリキュアが姉妹であることを知りました。
※大道克己により、「ゆりはゲームに乗った」、「えりかはゆりが殺した」などの情報を得ましたが、半信半疑です。
※ダークプリキュアにより、「えりかはダークプリキュアが殺した」という情報を得ましたが、上記の情報と矛盾するため混乱しています。


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最終更新:2015年12月27日 23:26