ポイ捨てはやめましょう ◆gry038wOvE
溝呂木眞也はあの戦いの後、E-4の山のふもとあたりで休んでいた。
疲労はないので、特に休む必要はないのだが、ただ歩いているだけなのは退屈だった。
この後は戦いに巻き込まれることもなく、参加者に出会うことさえ一切ない。
これは殺し合いゲームだ。
恐怖、怒り、悲しみ──人間の負の感情が全て詰まった殺し合いの遊戯。溝呂木の前に落とされた、楽しむべき時間だった。
彼の嗜好に合い、彼の心を満たす。
姫矢准がいる、西条凪がいる、
孤門一輝がいる。このゲームには、元々溝呂木が関っていたあらゆる人間がいたし、元の世界に帰ろうなどという考えは全く浮かばなかった。
そして、今、彼は「戦利品」ともいえる支給品たちを確認している。
何か使えるものがあるかもしれない。そのための支給品だ。もしかすれば、ガイアメモリのように便利な道具もあるかもしれないのである。
デイパックのチャックから漏れた支給品を、一つ一つ取り出し、ペットボトルや食料以外のものを確認する。
最初に出てきたのは、白い帽子だった。
鳴海壮吉という男が被っていた帽子であり、彼は弟子である
左翔太郎に「帽子の似合う男になれ」と言い続けた。
仮面ライダースカルへと変身してからもこの帽子を被って戦うのが、鳴海壮吉という男だった。スカルの姿は、帽子無しでは物足りないだろう。
本郷猛の支給品だが、彼はこれを被ることもなく、バッグに戻したらしい。渋い顔なのでたぶん似合うが、本郷はそれには興味がなかった。
溝呂木もまた、これを不要物と考えて放り投げる。
木にぶつかり、コツン、と音を立てて落ちた。
「チッ……」
デイパックの中から、珍妙なピンクのカツラが出てくる。
それを見た溝呂木は、あまりのくだらなさに思わず舌打ちをした。
軽快痛快ペット君二世────要するに、動物用のカツラ。
これも本郷猛の支給品である。無論だが、本郷はこれを被ることがなかった。
無数の支給品の中で、また異質な道具だった。ペットたちには気持ちの良い道具なようだが、そもそも、この場にはペットがいない。
本来なら、ソレワターセと化して大暴れ(?)した過去を持つのだが、ソレワターセ無しではただのカツラでしかないだろう。
溝呂木は軽快痛快ペット君二世を帽子の上に投げ捨てる。
「この支給品もダメだな……次」
次を取ろうとして、溝呂木が握ったのは……
黒い革の手袋だ。
(このままいけば、体中の着衣が揃うんじゃないか?)
などと思いつつも、溝呂木はその手袋を、気に入ったようにそれを腕に通した。黒という色が気に入ったのもあるが、これは電気を通さない特殊仕様なのである。
つまり、放電するものを触ることができる……という、いつ使うかわからない利点がある。とはいえ、まあ面白いのでつけてみた。
これは本来は、城茂という男が着けていた手袋だ。
電気人間である彼は、他人と接触するときにこれを通してしか握手ができないのだ。ちなみに、これは
鹿目まどかの支給品である。
とりあえず、溝呂木はそれは捨てずに着用することにした。
(ゲーム性を重視したせいで、支給品は多種多様というわけか)
面白い、と素直に喜べない。
これが支給された人間の表情を見るならともかく、溝呂木自身がそうなっては、なんだか不愉快だった。
まあいい。これだけの支給品があるのだから、何か武器になるものもあるだろう……そう思いながら、溝呂木は次の支給品を取り出す。
「……なるほど、着衣シリーズは終了のようだな」
溝呂木の手には、ウサギの人形が乗せられている。
溝呂木にはあまりにも不釣り合いなファンシーな姿だった。
ウサピョン。
そう名付けられたぬいぐるみは、八百万の神の例外に漏れず、意思を持っていたが、今回は特に自立行動できるわけでもなく、会話できるわけでもないので、溝呂木に伝えるべき言葉は何もなかった。
それに、この人形は今、人間で言うなら「眠っている」状態で、意思自体が存在しない。
無論、説明書に目を通す暇もなく破棄だ。これは
ティアナ・ランスターの支給品である。
黒い手袋を装着したままの溝呂木は、それも帽子の上に投げ捨てた。
それからも、溝呂木の支給品との格闘は続く。
池波流ノ介の支給品、特殊警棒。これは別名をトライアクセラーと言い、バイクの起動キーにも警棒にもなりうる武器だ。そのバイク、トライチェイサーがあるかはわからない。
一応、これは手持ちに入れる。
同じく池波流ノ介の支給品、タロットカード。
東せつなが使っていたタロットカードだ。占いの知識が無い者にはわからない。
……が、占い、という言葉には不思議な親近感を覚えた。
未来を視る……そんな事象を占いと言う。
溝呂木は、それをデイパックに入れる。死神のカードも好みだったのだろう。その不気味な感じが、溝呂木には気に入ったらしい。
井坂深紅郎の支給品は、ポリポットに入れられたユリの花だ。
城茂が岬ユリ子の墓に捧げた花であり、花言葉は威厳、純潔、無垢。──溝呂木には不要だった。
帽子、カツラの上にウサピョンが乗った奇妙な一角の前で、土と花をこぼしてボソッと落ちた。とても野に咲く花には見えまい。
更には、超音波発信装置というものもある。
人間には知覚できないレベルの超音波を発することができるらしい。未確認生命体第3号(B2号)に有効。
これは流石にいらない。重いうえに人間に有効でないとなると、意味がないだろう。
先述の通り、それなりに重いが、溝呂木はすぐにそれを同じ場所に投げ捨てた。
井坂のもう一つの支給品が、花咲薫子の宝物とされるオルゴール箱だ。
これもまた、はっきりとハズレとわかる支給品だったので、溝呂木は破棄した道具のあたりに乱雑に投げた。
今、そこには帽子、カツラ、ぬいぐるみ、ポリポットに入れられた花、超音波発信装置、木の箱と置いてあり、はっきり言って木々や草木が生い茂るこの森では、不自然な光景だった。
まあ、本当の山だって、観光者たちがこの闇の魔人のようにポイ捨てしたゴミで散らかっているのだが……。
高町なのはの支給品は、ルビスの魔剣というものだった。
ホラーの牙というもので作られた短剣らしいが、到底剣には見えない。はっきり言って、溝呂木にとってコレは奇妙な置物以上の何物でもなかった。
しかし、その奇妙さが溝呂木の趣向に合ったし、短剣ということでどうにか武器として使える可能性もある。溝呂木はそれを懐に隠した。
彼女のもう一つの支給品は、六体の人形。
キュアピーチ、キュアベリー、キュアパイン、ウエスター、サウラー、イースを模した人形であり、ウエスターが制作したものだ。出来はすごく雑で、プリキュア三人の顔つきが悪く、サウラーとイースの顔がかなり適当で、ウエスターの人形だけ(実際の彼と違って)凛々しい顔に作られている。
ゴミだ。
溝呂木はそれを同じ場所に投げる。
次に見つかったのは、鷹麟の矢という道具だ。
筋殻アクマロの支給品だった。
白夜の空に現れる結界を破る道具……らしいが、こんなところにそんな結界はない。
とはいえ、これは意外と使いようがあるかもしれない。純粋に矢や刃として使えるのではないだろうか。
一応、溝呂木はそれを持つことにした。
筋殻アクマロのもう一つの支給品は、ムチだ。
泉京水という参加者の愛用の武器だが、そんなことは知る由もない。
殺害には使えないが、まあ、武器としては申し分ないだろう。不要だが、これは一応残留組だ。
溝呂木が今回確認した中では、手袋、トライアクセラー、タロットカード、ルビスの魔剣、鷹麟の矢、ムチ……のみが残され、帽子、カツラ、ぬいぐるみ、花、装置、箱、人形は捨てられる。
デイパックはだいぶ軽くなり、森は廃棄物で汚された。
溝呂木は、自分の首輪から聞こえた音声に驚きつつ、上空を見上げた。
そこには、奇妙な風貌の男のホログラフィーが浮かんでいる。この男がニードルだ。
溝呂木個人を見ることはなく、ある種普遍的な、虚空を見つめるような視線でニードルという男は放送を始めた。
(放送か……)
溝呂木は、ちょうどデイパックを開けていたので、名簿や地図、筆記用具を取り出した。
ちょうど、近くに超音波発生装置が落ちているので、それを下敷き代わりにする。
★ ★ ★ ★ ★
『みなさん、ごきげんよう……』
ニードルの放送が終わり、溝呂木は一息つく。
死亡者、禁止エリア、ボーナスの全てが読み上げられると、溝呂木は一人の男性の死を気にかけた。
さやかや五代、スバルのように既にその死を知っている相手もいたが、溝呂木の注意を引いたのはそんな名前ではない。
(姫矢……)
姫矢准。───奴から光を奪い、更なる力を得て世界を支配する。それが溝呂木の目的だった。
その目的が、ここで絶たれたわけだ。溝呂木は今後、次のデュナミストを探して、そいつから光を奪わなければならないのだ。
(姫矢という男に対しては、格別興味もない。ただ、光を探す方法が面倒になったのは少し厄介だ。孤門、凪のように姫矢と関わりのある人間をまずは洗っていきたいところだが……)
溝呂木は少し考える。
考えた後で、やはり参加者をランダムで襲撃するのが最も楽に光を見つける手段なのではないかと考えた。
利用できる参加者ならば利用し、そうでないならば殺せばいい。
(まあいい……俺もじっくり探させてもらう)
と、溝呂木はサイクロン号を押して歩き出す。
捨て去った支給品の類は、全て無視だ。超音波発信機が机代わりになっただけで、他は溝呂木の役にも立ちそうにはない。
(さあ、デスゲームの再開だ)
ボーナスも移動手段には興味がない。サイクロン号があれば十分だ。
ヒントの類は、後でじっくり考えればいい。
二人殺せばいいというのはわかったし、溝呂木はそれを満たしていたが、移動先に何もなければ意味がない。
彼の体力は実質、無尽蔵に近い。面倒には違いないが、自分で移動して参加者を見つければいいのだ。
しかし、サイクロンにまたがろうとした、その瞬間────
「聞けぇっ!! リントの戦士たちよっ!!!」
山の頂上から聞こえた野太い声に惹かれ、溝呂木は動きを止めた。
【一日目・日中】
【E-4/森】
※鳴海壮吉の帽子@仮面ライダーW、軽快痛快ペット君二世@フレッシュプリキュア!、ウサピョン@フレッシュプリキュア!、ユリの花@仮面ライダーSPIRITS、超音波発生装置@仮面ライダークウガ、花咲薫子のオルゴール箱@ハートキャッチプリキュア!、プリキュアとラビリンス三幹部の人形@フレッシュプリキュア!は付近に放置されています。
【溝呂木眞也@ウルトラマンネクサス】
[状態]:健康
[装備]:ダークエボルバー@ウルトラマンネクサス、T2バイオレンスメモリ@仮面ライダーW、T2ガイアメモリ(サイクロン)@仮面ライダーW、城茂の手袋(着用済)@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:支給品一式×3(内一つ、食料残2/3)、ランダム支給品1~2個(確認済)、サイクロン号@仮面ライダーSPIRITS、スモークグレネード@現実×2、トライアクセラー@仮面ライダークウガ、東せつなのタロットカード@フレッシュプリキュア!、ルビスの魔剣@牙狼、鷹麟の矢@牙狼、京水のムチ@仮面ライダーW、首輪×7(
シャンプー、ゴオマ、まどか、なのは、流ノ介、本郷、
ノーザ)
[思考]
基本:より高きもの、より強きもの、より完璧なるものに至り、世界を思うままに操る。
0:ガドルの呼びかけに対して、どうするか決める。
1:ウルトラマンの力を奪う(姫矢が死んだので、まずは凪や孤門をあたる)。
2:その他にも利用できる力があれば何でも手に入れる。
3:弱い人間を操り人形にして正義の味方と戦わせる。
4:西条凪を仲間にする。
5:今は凪は放置。
6:冴島鋼牙、
村雨良、
響良牙達は今は泳がせておく。こちらから接触するつもりはない。
[備考]
※参戦時期は姫矢編後半、Episode.23以前。
※さやかをファウストにできたのはあくまで、彼女が「魔法少女」であったためです。本来、死者の蘇生に該当するため、ロワ内で死亡した参加者をファウスト化させることはできません。
※また、複数の参加者にファウスト化を施すことはできません。少なくともさやかが生存している間は、別の参加者に対して闇化能力を発動することは不可能です。
※ファウストとなった人間をファウスト化及び洗脳状態にできるのは推定1~2エリア以内に対象がいる場合のみです。
※ダークファウストが一度に一体しか生み出せないことを、何となく把握しました。
※
スバル・ナカジマから全ての情報を聞き出しました。
※
第二回放送のボーナスなぞなぞは、二番目の答えしか解いてません(興味が無いため)。
【支給品紹介】
【鳴海壮吉の帽子@仮面ライダーW】
本郷猛に支給。
鳴海壮吉が着用していた白い帽子で、仮面ライダースカルに変身してからも身に着けている。
死後、翔太郎が受け継いだ。今回支給された帽子に傷がついているかは不明。
【軽快痛快ペット君二世@フレッシュプリキュア!】
本郷猛に支給。
第12話に登場するペット用のカツラ。ラブのお父さんが改良に改良を重ねて作った。
タルトのお気に入りらしく、このエピソードの後もたまに着用している。
【城茂の手袋@仮面ライダーSPIRITS】
鹿目まどかに支給。
仮面ライダーストロンガー、城茂が両手のコイルを隠すために着用している黒い手袋。
電気を通さないが、ゼクロスの攻撃であっさり破壊されているので、そこまで頑丈ではない。
【ウサピョン@フレッシュプリキュア!】
ティアナ・ランスターに支給。
劇場版などに登場するウサギのぬいぐるみ。
桃園ラブが幼い頃、一緒に遊んだ。
劇場版では喋ったが、今回はずっと「眠ったまま」の状態になっているので、ただのぬいぐるみ以上の何物でもない。
【トライアクセラー@仮面ライダークウガ】
池波流ノ介に支給。
トライチェイサーの起動キーになる特殊警棒で、劇中ではタイタンフォームになったクウガがタイタンソードへと変化させることが多かった。
【東せつなのタロットカード@フレッシュプリキュア!】
池波流ノ介に支給。
東せつなが占いに使うタロットカード。
【ユリの花@仮面ライダーSPIRITS】
井坂深紅郎に支給。
城茂が岬ユリ子の墓に植えたユリの花。植える前と同じく、ポリポットに入れられている。
花言葉は威厳、純潔、無垢。
【超音波発生装置@仮面ライダークウガ】
井坂深紅郎に支給。
第39話に登場する道具で、アタッシュケースに入れてあった警察の兵器。
ズ・ゴオマ・グにしか聞き取れない超音波を発生させ、彼の動きを一時的に止めることに成功した。
ゴオマ亡き今、もはやただの鈍器。
【花咲薫子のオルゴール箱@ハートキャッチプリキュア!】
井坂深紅郎に支給。
第27話に登場する、キュアフラワーこと花咲薫子の思い出のオルゴール箱。
このオルゴール箱が夫の最初のプレゼントで、引っ越しの時のなくしたかと思われていたがつぼみの幼馴染が持っていた。
【ルビスの魔剣@牙狼】
高町なのはに支給。
劇場版に登場。ホラーの牙で作られた短剣で、カルマの住む魔鏡の世界の結界を開くことができる。
【プリキュアとラビリンス三幹部の人形@フレッシュプリキュア!】
高町なのはに支給。
第14話に一瞬だけ登場する、ウエスターが制作した人形。作中でウエスターが制作したというのは確実ではないが、ラビリンスでこんなことをするのは彼しかいない。
キュアピーチ、キュアベリーはものすごい目つきに作られ、キュアパイン、イース、サウラーの人形は適当な感じで作られ、ウエスターだけはやたら凛々しい表情に作られている。
【鷹麟の矢@牙狼】
筋殻アクマロに支給。
SPに登場する、白夜に現れる結界を破壊するための矢。天に放てば結界は消滅するが、地に突き刺すとレギュレイス一族を復活させてしまう(無論、今ロワでは地面に突き刺しても復活はしない)。
ガロはこれを自らの体に刺すことで、鷹麟ガロへと進化した。
【泉京水のムチ@仮面ライダーW】
筋殻アクマロに支給。
泉京水が使ってるムチ。本人は没収された模様。
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最終更新:2013年06月14日 21:30