酔っ払いにお持ち帰りされて、朝起きたら隣に…
本日いっぱいにかけて
薬の魔物のSSをぱらぱらと更新してゆきますね。
今回のテーマは
“酔っ払いにお持ち帰りされて、朝起きたら隣に…”となっております。
「……本当に申し訳なかった。どうやってお前に詫びればいいのか…」
「エーダリア様は酔っ払って魔術書を読むと、私を拉致して防壁代わりにします…」
「防壁…?」
「本から何かが現れる度に私が狩るのですが、眠り羊が現れ我々は敗れました」
「そ、それでだったのか!」
「笑顔…」
「…私とディノをお家に返して下さい」
「申し訳ありません、ネア様。昨晩は少々酔っておりまして。いやはや、お恥ずかしい話ですが、ランシーンの織物と、…小さな毛皮の生き物を身に付けておられたので、友人だと思ったようです」
「だから、もてなされたのですね…」
「キュ…」
「ごめんねネア、僕のこと嫌いになる?」
「ふふ、可愛いばかりでしたよ?」
「コルヘムチョコで酔っ払っちゃったの。ネアにクッキー貰おうとしたんだと思う」
「
グラストさんがご実家に行かれて寂しかったのかもですね?」
「…うん。そうかも」
「クッキー食べますか?」
「食べる!」
野良1
「誰かが隣に寝ています…」
「…ネアが、ずるい」
「むむ、こちらはこちらでへなへなではないですか」
「一晩中三つ編みを離さないなんて…」
「まぁ、握ったまま寝ましたね。そしてここに潜り込んだ酔っ払いは…」
「フキュ…?」
「の、野良ちびふわです!!」
「え、…野良がいるんだね」
(なお、野良ちびふわはリーエンベルクの仕掛けに引っかかってちびふわにされた騎士の一人だったようです。幸い、お菓子を貪り食べて酔っ払っていたので、新婚な白持ちの魔物と厄除けの神の部屋に潜り込んでしまった記憶は残らなかったのだとか)
ミカエル
「…生き物じゃない」
目を覚まして、隣に寝ているのがふかふかの美兎ではなく間違って拾ってきた誰かの落し物の毛糸玉だと知って悲しい気持ちになった。
悲しく息を吐いていると、小さなぬくもりが腕に触れる。
「ミャ!」
「朝食を強請りに来たな?」
小さな友人の訪問は大歓迎だ。
ほこり
「ピ?!」
「食べちゃだめ!ネアだよ」
「ピギギ…」
「酔っ払ってみんなで寝ちゃったんだ」
「ピ!」
「おや、起きたようだね。立てるかい?」
「わーお、シルもいるぞ」
「こっちは
アルテアだよ」
「ピギャ!」
「おい、やめろ」
「あとね、ルドルフが迎えに来てるよ」
「ピギギ…」
ギード
「…俺は、寝ていたのか」
「…っ、飲み過ぎたな」
「
ウィリアム…。…ネア?!」
「ああ、こっちにシルハーンもいる。…ギード?」
「彼女の隣で、…お幸せそうだ」
「はは、涙目だぞ」
「あんたもな。俺はもう帰ろう」
「…君の司るものは二人を傷つけないんだぞ?」
「ウィリアム…」
師匠
「あらやだ、酔っ払って寝ちゃったわ」
「…ようやく目が覚めたか」
「お父様?」
「彼を解放してやってくれ。解こうとしたが結び目が難しくてな」
「え、やだ!酔っ払ってムガルを縛るとか一生の不覚!でもお父様を縛らなくて良かったわ…」
「何か食べさせてくれ…」
「あんたは黙ってて!」
「…隣で寝たのか」
「寝たのはお前だ。早く出て行け」
「
ヴェンツェル?昔はよく一緒に寝ただろう」
「それは子供の頃の話だろう。おい、寝直すな!」
「俺が隣にいれば、ヴェンツェルもゆっくり眠れるからな。今日はのんびりするといい」
「ドリー!…まさか、本気で寝直したのか?」
ウィリアム
「……ぎゅ」
「ネア?もう少し眠るといい。俺の腕の中から出ないようにな」
「…寝ぼけたウィリアムさんに捕獲されております」
「…ん、どうした?眠れないのか?」
「上半身裸ですし、一見起きている風なのがとても厄介なのだ…」
「…」
「なぬ、寝ました」
「ウィリアムなんて…」
野良2
「誰か、助け…」
昨晩の飲み会でほろ酔いで眠ってしまい、客間にあったビーズクッションもどきを抱いて寝たネアは、目を覚まし、そのクッションは何かを大量に詰め込んだ布袋だと気付いてしまった。
開いた袋から薄緑の脱脂綿がばさりと転がり、虚ろなランランという歌声が聞こえてくる。
ベージ
「も、申し訳ありませんっ」
「森で酔い潰れていたベージさんを拾って来たのは私なのです。先程までぱたぱたちびふわで、元に戻ったばかりです」
「ここは、客間ですか。…っ?!」
「元に戻ると寝言で縄がなくなったと魘されていたので、こちらの縄を握らせておきましたからね」
「ご主…」
「おや、目が覚めましたか」
「ヒルドさん…?」
「私は、どうしてヒルドさんのお部屋で、羽に包まれて一緒に寝ているのでしょう」
「ネイの運試しの酒壺で、部屋の外はひよこの群ですからね。魔物方もファルトティーで意識がなかった為、保護させていただきました」
「何が起きたのだ…」
ノア
「ありゃ?」
「…私の寝台で、元の姿に戻るのはやめて下さいとあれ程…」
「わーお、ヒルドとそうなったみたいになってるぞ…」
「しかもなぜあなたは脱ぐんですか。すぐに部屋に戻り…」
「ヒルド!部屋の前を通ったら物凄い音が…っ?!す、すまなかった!!!」
「エーダリア様?!」
「………む」
「ああ、目が覚めたか。用心の為に隣で寝かせて貰った」
「お外の襲撃者さん達は…」
「もう外は安全だからな。安心してくれ」
「壊滅してます…」
「…もう落ち着いたようだな。では俺はシルハーンが起きる前に朝食を作ておく。ああ、好きなだけ寝かせて差し上げような」
ディノ
「…ネアじゃない」
「キシャー!」
「ディノ、起きましたか?ふふ、昨日はほろ酔いでしたものね?…む、何を隠したのだ」
「変な生き物がいたから森に放してくるよ」
「…まさか、ご婦人を」
「ネアが虐待する」
「ではその包みを見せて下さい」
「獰猛だから少しだけね」
「レインカ…」
野良3
「驚かせてしまいましたねお嬢さん。お連れ様とベンチで居眠りされていましたので、心配になって隣に座らせていただきました」
「まぁ、ご親切に有難うございます!」
「いえいえ、げぼ…同じ領民として、当然のことをしたまでです。おっと、会の追っ手が来たようだ…」
「何者だったのだ…」
「ほぇ、何これ」
「あら、目が覚めたようですよ」
「ヨシュア、あなたは酔っ払ってその獣を抱き締めて寝たんですよ。ネア様にまたご迷惑をおかけして…」
「…ふぇぇ、怒ってる!」
「白けものさんもやっと解放されましたね。尻尾がけばけばです」
「ほぇ、これってアル…、僕帰る!」
アルテア
「…は?」
「…ぐぅ」
「おい、この屋敷にどうやって入った?!…ったく、そのまま寝る奴があるか。これに着替えろ」
「むぐ、パジャマを強要する魔物め!」
「同じ寝台で眠るならそれなりの覚悟はあるんだろうな?」
「キュ?」
「…シルハーンがいて、どうしてここで寝たんだよ…」
みんなほろ酔いで
「ふふ、みんなで素敵な草原のお部屋で一緒に寝るのもいいですね」
「ネアが可愛い…」
「このような部屋で昼寝をするのも良いものですね」
「ああ。リーエンベルクにはまだまだ知らない部屋があるのだな。あの魔術はどうなって…」
「ありゃ、そっち?」
「エーダリア様…」
最後は少しテーマを逸れましたが、リーエンベルクの家族のお話とさせていただきました。
SSの更新はここまでとなります。
最後までお読みいただき、有難うございました!
最終更新:2022年05月07日 11:50