自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

72 外伝02

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匿名ユーザー

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森・・・・・森・・・・・森・・・・・・
行けども行けども、見えるのは木と緑の葉。
時たま、リスのような小動物や、鳥の鳴き声が聞こえるが、周りの光景はここ数時間、
日が落ちて暗くなった以外、大して変わっていない。
(単調なもんだな)
デイビット・マッキャンベル中佐はそう思った。
マッキャンベルは、今10人のバーマント兵達と共に、森の奥深くを進んでいる。
時計を見てみる。
午後8時40分・・・・・・
彼らに見つけられたのが午後3時40分ぐらいであったから、かれこれ5時間ほど歩いている事になる。
足が痛くなってきているが、彼らは休もうともせずに、ただひたすら歩き続けている。
森の中には太い木の幹や、落ち葉などが地面に落ちており、彼は何度か、木の枝に足を取られて転倒しそうになっている。
しかし、バーマント兵達には、そんな事は一度も起こっていない。

「大尉、もうそろそろいい頃です。」

後ろから声が上がった。最後尾のイメインである。

「よし、皆も疲れているだろう。小休止する。」

振り返ったオイルエン大尉がそう告げ、彼らは適当な場所に腰を下ろした。
オイルエンは、木の根に座ったマッキャンベルのもとに歩いてきた。

「マッキャンベル中佐。体の調子はどうですか?」
そう言って、彼は左隣に腰を下ろす。

「足がガタガタさ。疲れてはいるが、今のところそれだけだ。」
「そうですか。」
「それにしても、5時間ぶっ通しで歩くとはね。敵さんはよっぽど近くに来ていたのかい?」
「いえ、それほど近くには来てませんでしたよ。それに、近くにいた場合声は出さずに、身振り手振りで合図しています。」
「なるほどね。」

マッキャンベル中佐はため息をつきながらそう言った。

「さっきは聞きそびれたんだが、大尉達はどこに向かっているのだね?」
「カウェルサントです。」

オイルエン大尉は、懐から地図を取り出し、それを広げた。

「おい、マルファ。ちょっと来てくれ。」

大尉は誰かを呼び出した。数秒ほど立って、1人の女性兵がやってきた。

「何ですか親分!」

元気のいい声が彼女の口から飛び出した。マッキャンベルはその魔法使いの顔を見る。
暗くて分かりづらいが、身長は164センチほどはある。

「親分はやめろよ。今は隊長と呼べ。」
「じゃあ、隊長で!」

女性魔道師、マルファの言葉に、オイルエンが苦笑を浮かべる。

「全く・・・・・・それはいいとして。お前は魔法でちょっと明かりをつけてくれ。」
「火は使わないんですか?」
「火をおこす時間がない。それよりかは、君の魔法が役に立つ。」
(火か・・・・・ん?ちょっと待てよ)

いきなり、マッキャンベルは懐を探り始めた。汗で濡れた飛行服が肌にまとわり付いて気持ち悪い。

「何を探してるんですか?」

マルファはかがんでマッキャンベルを見る。
それに反応せず、彼は懐を探り続ける。目的のものはあった。

「これを探していたのさ。」

マッキャンベルは微笑みながら、ジッポライターを取り出した。
蓋を開けて、親指でフリントホイールを回す。シュッ、という音が鳴って、ライターに火が灯った。

「ああっ!すごい!」
「こ、これは・・・・・・」

初めて目にするジッポライターに、オイルエンとマルファは驚いた。

「シッポライターさ。これで地図が読める。嬢ちゃん、わざわざすまねえな。」
「・・・・・・いやはや、こんなものがあるとは。」
「大尉、ライターに目を奪われるのは後にして、その地図の説明をやってもらいたい。」

オイルエン大尉は彼にそう言われ、気を取り直して説明を始めた。


「カウェルサントは、ギルアルグより東120キロの所にあります。おおよそですが、
私達はそこから50キロ東の所を歩いていました。そこへあなたの飛空挺が不時着して、
この森に逃げ込んできたのです。で、現在我々がいるのは、ここです。」

オイルエン大尉は、ライターの薄明かりに移る地図を指で撫でる。

「俺たちは南南東に向かってるな。どうして真っ直ぐ東に向かわなかったのだ?」
「敵の目を欺くためです。カウェルサントには、自分達革命軍の秘密の根拠地があります。
そこで、革命軍本隊がグランスボルグに侵攻するまで、私達はここを拠点にゲリラ活動を行っているのです。」
「革命軍は何人ほどが残存している?」
「14000です。そのうち、カウェルサントには合計で2800人の革命軍部隊があり、ゲリラ活動の本拠地となっています。」

当初、グランスボルグ地方の革命勢力は3万と、かなりの兵力を有していたが、
革命直前に、計画を察知した継戦軍に先手を打たれて、革命勢力は次々に包囲殲滅されていった。
包囲を逃れ、バラバラになった革命勢力は、ひとまず息を潜めて、革命軍本体が侵攻するのを待つ事にした。
その間、少数の部隊が、臨時に作られたそれぞれの拠点を出発し、継戦軍の基地や兵達にゲリラ攻撃をしかけている。
オイルエン大尉の部隊も、2日前に継戦軍の輸送部隊を襲っている。
このゲリラ攻撃に対して、継戦派は2個師団を投入して鎮圧に向かう予定であったが、今日未明に現れた米機動部隊が
後方に輸送船団らしきものを後続させているとの情報が入ると、継戦側は海岸線の防衛兵力を増やす事にした。
このため、追跡部隊は1個師団と、その半分しかいない。
にもかかわらず、追跡部隊の追及は厳しく、これまでに20チームのゲリラが消息を絶っている。

「追っ手の追及はなんとか逃れたようですし、今後は方向を東北東に変えて、本拠地に戻る予定です。」
「大体何日ぐらいかかる?」
「50~60キロ以上歩きますから・・・・・・休止も含めれば1日半か2日かかります。」

それを聞いて、彼は少し顔をしかめたものの、追ってらしきものから逃れたと聞いて、張り詰めていた気持ちが少し解れた。

「なるほど・・・・・スプルーアンス長官のような散歩好きではないが、まあ仕方ないな。」
「スプルーアンス?誰ですか?」
「俺たちの艦隊の指揮官だよ。灯りはもういいか?」
「ええ、消していいですよ。」
オイルエンの了解を得て、彼はジッポライターの蓋を閉じる。
パチンという音が鳴ると、薄明かりが消えて、再び辺りが暗くなった。

「それにしても、そのライターというものはすごいですね。」
「コレか?」
「はい。このようなものは初めて目にします。」
「マッキャンベルさん!ちょ、ちょっとだけ、借りていいですか?」

後ろで話を聞いていたマルファがマッキャンベルに頼み込んできた。
いきなりのお願いにさしものマッキャンベルも少し戸惑った。
「おいマルファ!さんづけで呼ぶな!この方は中佐殿だぞ。それに応じた呼び方で言え。
それに、お前はまだ悪いクセが治ってないようだな。初対面の方にあれこれねだるとは、無礼千万だ!」
「大尉、いいんだよ。」
しかめっ面で説教するオイルエン大尉を宥めつつ、マッキャンベル中佐はマルファに姿勢を向ける。

「嬢ちゃん、貸してやるよ。ただし、1、2分だけだぞ?」

彼はマルファにジッポライターを差し出した。
説教されて、落ち込み気味になっていたマルファは、途端に明るい表情になってライターを受け取った。

「あ、ありがとうございます!」
「なに、いいって事さ。」

そう言うと、彼女は蓋を開けて、マッキャンベルがやったようにフリントホイールを回す。
シュッ、という音が鳴って、ライターの小さな火が灯る。
「わあ・・・・・」
思わず、感動の声が漏れる。

「大尉。あの子は元気があるな。」
「元気だけが取り柄の奴なんですが、人懐っこすぎる面もあるので、あまり甘やかさぬようにしています。」

マッキャンベルは視線をちらっとマルファに移す。
さっきは暗くて分からなかったが、よく見ると、確かに元気のよさそうな顔をしている。
髪は肩までしかなく、体のスタイルは少しいいぐらいであろう。
顔立ちはそこそこ整っている。一見どこにでもいそうな普通の女だが、目を凝らせばそうではない。

「なんか、若いな。何歳だ?」
「マルファは19歳です。」
「19・・・・・・若いな。」
「元気が常に有り余っているような奴ですけど、それでも魔法使いとしての経験はなかなかなものです。」
マルファの周囲に、他のメンバー達が集まって何やら話をしている。

「マルファ、そいつあ何だ?」

小太りの髭面男が話しかけてきた。

「ライターよ。マッキャンベル中佐が貸してくれたの」
「ライター?変わった名前だな。」
「コンパクトな灯りだな。これさえあれば、火起こしがかなり楽になるかも知れん。」

風変わりな眼鏡の男が真剣な表情で言ってきた。

「ヌーメラー先生、早速分析ですか?」
「何か問題でも?」
「それにしても、これはどんな構造と仕組みで火を発しているんですかね?」

「オイルエン大尉、時間はあるか?」
「あと7分ほどはありますが。」
「そうか。俺は君の仲間たちに、ジッポライターについて講義してくるよ。」

ジッポライターは1932年にジョージ・ブレイズデルが開発した。
当時、シンプルな構造と高い耐久性などを秘めたジッポは、最初こそ売れ行きはなかったものの、近年では相当数が世に出回っている。
構造はいたってシンプルで、外板の内に納められているインサイドユニットと呼ばれる中に、
綿球が敷き詰められ、そこにナフサというオイルを注入、吸収させる。
注入されたオイルは毛細管現象の原理で、発火口に吸い上げられ、揮発。
その揮発した燃料を、発火石とフリントホイールを摩擦させ、その火花で火を起こすというものである。
このライターは燃料注入式であり、いつかは必ず燃料が切れて火が灯らなくなる。
だが、その時は中のインサイドユニットを抜き、綿に燃料を染み込ませればいいだけで、手間はあまりかからない。
その扱いやすさから、軍はジッポを大量に購入して、将兵達に(全員というわけではない)与えている。
お陰で、ジッポライターの人気はうなぎ上りであり、最近ではGIの友ジッポという言葉もちらほらと聞かれるようになっている。

「と、まあこんなものだな」

マッキャンベル中佐は、ジッポライターに関して一通り説明した後、皆の反応を見渡す。
けれども、暗いので表情は分からない。

「すげえな・・・・・」
「似たような言葉しか思い浮かばないぜ。」
誰もが感嘆したような口調で言う。

「これ下さい!」
「駄目だね。」
唐突に、マルファが切り出すが、マッキャンベルもすぐに打ち消した。

「さっき言ってなかったか?こいつはGIの友と。それは同時に、俺のようなパイロットの友でもある。
だから、そう簡単にこいつは渡せないね。」
「あう・・・・・・すいません。」

マルファは謝ると、素直にライターを渡した。

「休憩終了!出発だ!」

その時、オイルエン大尉の鋭い声が響いた。

9月31日 午前11時
マッキャンベルを引き連れたオイルエン大尉の部隊は、30日の午後12時に再び足を止めて、4時間30分ほど眠った。
睡眠時には、2人1組で見張りにあたり、1時間おきに交代した。
午前5時には再びカウェルサントを目指して歩き始めた。

森の中は空気がひんやりとしており、とても気持ちよかった。
昨日は撃墜されたショックもあってか、そのような事は感じられなかった。
今では少しばかり気持ちが落ち着いているので、その分周りを見渡す余裕も出てきた。

「敵の追っ手は今のところいません。」

「そうか。なら大丈夫だな。イメイン、君も休憩しろ。」
「分かりました。」

オイルエン大尉と、イメインが離れて行く。
大尉はマッキャンベル中佐のほうに振り向いた。
「中佐、あと1分ほどで出発します。」
「分かった。ところで、今はどの辺なんだ?」
「今は・・・・・・・ここですね。」
大尉は広げた地図を指差した。東に向かって矢印が伸びている。しかし、それは少ししか伸びていない。

「まだまだ散歩が楽しめそうだな。」
「ご冗談を。」

大尉は苦笑しながら言う。
1分はあっという間に過ぎ去った。オイルエン大尉は全員を立たせて、再び東に向けて前進した。

4時間後

「オイルエン大尉。」
いきなりイメインが切羽詰ったような口調で言う。
「どうした?」
「ワイバーンロードです。東からやって来ます!」
その言葉にオイルエン大尉は表情をがらりと変えた。
「木の影に隠れろ!」
皆が素早い動作で、程よい場所に隠れる。マッキャンベル中佐は真上を見る。
緑の葉はそこの部分を中心に10メートルほど無くなっている。

時折、森の中ではこのような上が開けた場所がある。

「中佐、こっちに来てください!」
ただならぬ雰囲気を感じたマッキャンベル中佐は、すぐにオイルエン大尉が隠れている太い木の幹に移動した。
「ここで伏せて起きましょう。」
「なあ、ワイバーンロッドって、ドラゴンか?」
「そうです。あっ、来ました。」
オイルエンは自分の口を押さえる動作をする。喋るなということだ。
彼は頷いて、右斜めの空を見渡す。ふと、味方部隊の事が頭に浮かんだ。
今頃は、機動部隊の艦載機が多数発艦し、魔法都市マリアナに押し掛けている頃だろう。
魔法都市マリアナは敵機や、ワイバーンロードこそいないものの、大量の対空火器が配備された対空要塞を形成していると聞いている。
本来ならば、自分もエセックス・エアグループの艦載機隊を率いて、その激戦の渦の中に飛び込む予定だった。
だが、いまではどうか?
撃墜され、革命勢力と合流できたまではいいが、敵の追跡やドラゴンに怯えている。
そんな自分が、とても頼りないように見えて仕方がない。
マッキャンベルはそう思った。
その時、遠くから何かが羽ばたく音が聞こえた。それはすぐに大きくなってきた。
右上の開かれた空に、ワイバーンロードの姿が見え、すぐに消えて行った。
姿が見えたのは一瞬だけではあるが、戦闘機乗りであるマッキャンベルはその全体像がはっきり視認できた。
獰猛そうでありながら、頼りがいがありそうなドラゴンの横顔。そして鍛えられた胴体と大きな羽。その胴体に乗る槍を持った人。
胴体の下部には4つの突起があった。紛れもない手足だ。
(あんなのに狙われたら、そら恐ろしいものがあるな)
彼は始めてみるワイバーンロードに対して、畏怖の念を覚えた。
ワイバーンロードの通過はそれだけであった。
「いいぞ。起きろ!」
オイルエン大尉が皆に言う。メンバーが立ち上がって、オイルエン大尉のもとに歩み寄って来た。

「大尉、おかしいと思いませんか?」
小太りの髭面男である、ドワーフのキレスク曹長が言って来た。
「君も思うか?」
「ええ。ワイバーンロードは東から飛んできました。ですが、東にはまだ継戦派の部隊は進出しとりません。
それなのに、ワイバーンロードが飛び去った、ということは・・・・何か胸騒ぎがするような・・・・・・」
「東にはヌーメアの町があったな。」
ヌーメアと聞いて、一瞬マッキャンベルはニューカレドニアのヌーメアを思い出した。
(どうしてか、この世界には聞いたことのある名前がちらほら出てくるな。)
彼は不思議そうに思うが、そんな事は知らずに会話は続けられる。
「ヌーメアは一般人が住んでないはずですが。でも、町長が継戦派にはやや否定的でしたな。」
「そのかわり、革命側には賛同している。俺たちも2度ほど、あの町には世話になったからな。一応、何事もなければいいが。」

午後2時 ヌーメア
「街道だ。」
マッキャンベルは、森の中に開かれた街道に視線を向けた。
幅が4メートルほどはあり、馬車が充分に通れる広さである。
街道が見えたと同時に、異常な光景も見ることが出来た。
いや、見せられたといったほうが正しいであろう。
「!・・・・・馬車が!」
街道には、脇に転倒した馬車があり、くすぶっていた。
その馬車の右脇を通っている道は、50メートルに渡って焦げ付いていた。
馬も御者も乗客も、全員が焼死体となっている。
「ひ、ひでえ・・・・・・・」

マッキャンベルは思わず目をそむけた。
恐らく、必死に逃げ延びようとしたものの、追いつかれて焼き殺されたようだ。
街道の遠くは、森が切れている。どうやら森を抜ければ、そこがヌーメアの町に繋がっているようだ。
一行は敵がいない事を確認した上で、町に進んだ。
町の様子は・・・・・・まさに悲惨であった。
町といっても、人口は500~700人しかいない村のようなものだが、住人達はとても気前がよく、平和な町であった。
しかし、町の主だった建物は焼け落ち、くすぶっていた。まだ炎上している建物も少なくない。
周囲には焼死体が主に散らばっている。
マッキャンベルは、周囲に漂う肉の焼ける匂いに思わず吐き気を催した。
耐え切れず、彼は左にあった木の影に吐いた。

「これじゃあ、人っ子1人いないですね。」

誰かの淡々とした口調が聞こえる。

「いくら自分達の意に反するからといえ、これは酷すぎるな。」

これはオイルエン大尉の言葉だ。
マッキャンベルは幾分落ち着くと、周りの光景を見渡した。中世風の家々が、ほとんど燃え、焼け落ちている。
視線を左側に移すと、焼死体とは異なる死体が、串にくっつけられ、いや、刺さっている状態で放置されている。
奥のほうは血だまりで地面が真っ赤に染まっているが、とても確認しようとは思わなかった。

「さっき。ワイバーンロードが飛んでいったが・・・・・これは・・・・」
「奴らですね。明らかに。」

オイルエン大尉は断言する。
そう、先ほど、上空を悠々と飛んでいったワイバーンロードは、この町を焼いた張本人なのである。
ワイバーンロードは、あの後も別のものが3、もしくは12といった編隊で幾度か上空を通過している。

どんな理由で焼いたのかは分からないが、マッキャンベルの内心には蛮行をしでかした
ワイバーンロードに対する怒りが沸々と湧き上がっていた。

(俺にヘルキャットがあれば、あんな奴らを好き勝手させずに済んだのに・・・・・・・畜生、戦闘機が欲しい)

「今は・・・小休止できない。ここを離れましょう。継戦軍の地上部隊はまだ付近にはいないはずです。」

オイルエン大尉の怜悧な言葉が、マッキャンベルの耳に入ってきた。
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