斎藤司『刑事訴訟法の思考プロセス(法セミ LAW CLASS シリーズ)』日本評論社(2019年10月)……法セミの同名連載〔735(2016年4月)-758(2018年3月)号〕の単行本化。本書の特徴は、①暗黙知の言語化を心掛けたこと、②各章の内容を「共通編(基本概念、通説・判例)」と「展開編」に分けていること、③通説・判例の思考プロセスを明示した点、④判例を説明する際、可能な限り当該判例の原文を引用したこと(以上、はしがき)、などが挙げられる(「展開編」は司法試験レベルを優に超えていることに注意)。難易度は公式には初級とされているが、東大系学説を中心とする最新学説をとても詳しく紹介しており、中・上級者にとっても参考になる(特に酒巻・川出ユーザーの副読本に適している)。斎藤説は判例実務に批判的な学説だが、本書ではそのような自説は控え目で、客観的な記述に努めている。同意録音、おとり捜査、訴因変更の可否、伝聞例外規定の一部など紙幅の都合で省略されている主要論点があるのは残念。脚注の参考文献は文献リストとして秀逸。全24章。A5判、440頁。改訂による補充が待たれるところ。
緑大輔『刑事訴訟法入門(法セミ LAW CLASS シリーズ)』日本評論社(2017年9月・第2版)……書名に「入門」とあるが、初学者のための入門書というよりは、一通り基礎知識を修得した学生向けの論点解説書といった趣。基礎から応用へのステップアップとして有用。全25講。A5判、372頁。
守屋克彦編『刑事訴訟法における学説と実務 初学者のために(法セミ LAW CLASS シリーズ)』日本評論社(2018年11月)……法セミ同名連載の単行本化。裁判官及び裁判官経験ある弁護士・研究者が学説と実務を解説する内容であるが、現在主流の東大系学説に対する分析がそこまで多くない(深くない)こと、連載時以降の法改正・新判例につき最低限の補訂にとどまっていることがやや残念。なお、編者は2018年に逝去。序章+全15章。A5判、216頁。