民事訴訟法


【基本書】

〔メジャー〕

  • 三木浩一・笠井正俊・垣内秀介・菱田雄郷『民事訴訟法(LEGAL QUEST)』有斐閣(☆2023年3月・第4版)……旧訴訟物理論の立場から執筆された共著。重要事項については、判例・通説から丁寧に解説しつつ、各論点について採用する自説を明示する。理論的な見地から、通常とは異なる用語(例えば「客観的併合」→「客体的併合」、「主観的併合」→「主体的併合」、「訴訟資料」→「主張資料」など)には、注意を要する。主に、三木執筆の箇所で異説採用が多いが、その場合でも、通説は丁寧に説明されている。掲載判例は、400以上と類書より多い。また、法科大学院で採用されることが多い三木・山本編『ロースクール民事訴訟法』と相性がよいとされる。以上の理由から、判例通説をベースに答案を書きたい人の定番書である。「受験新報」2019年12月号特集「令和元年合格者が使った基本書」民訴1位。
    【改訂】第4版では、令和4年民訴法改正および第3版(2018年7月)刊行以降の新判例が織り込まれた。なお、第4版はしがきによると、令和4年改正は、令和5年3月までに施行される部分は本文で、未施行部分は巻末の補遺で概説し、最後の施行が予想される約3年後に、第5版を刊行する予定とある。電子書籍版あり。全14章。A5判、748頁。

  • 和田吉弘『基礎からわかる民事訴訟法』商事法務(2022年4月・第2版)……辰已のLIVE本シリーズで、受験生に定評のある著者による民事訴訟法の教科書。一冊で民事訴訟法(旧訴訟物)の体系・論点をある程度カバーすることができる。図表を多用し、著者自身の言葉で噛み砕いた説明を行っているのが特徴。その理解のしやすさは、高橋宏も認めている、記述は、メリハリも利いており、条文及びその趣旨の解説に重点を置きつつ、重要論点については「司法試験に必要な程度」で学説(新堂、高橋、伊藤など)を取り上げている。しかし、民訴で重要な「定義」が、どこまで読んでも明確にならずに不満に思うことは、本書利用者共通の声である。曖昧になってしまっている定義は別の書籍で補う必要がある。「受験新報」2019年12月号特集「令和元年合格者が使った基本書」民訴3位。全17章。A5判、688頁(本文657頁)。「正誤表」あり。

  • 瀬木比呂志『民事訴訟法』日本評論社(☆2022年12月・第2版)……著者は『絶望の裁判所』(講談社2014年)で有名な元裁判官(1994年には調査官も経験)。依願退官後、民訴法学者として明治大法院教授に転身した。著者は当局批判の多い人物であるが、本書の内容はいたってオーソドックスであり、旧訴訟物理論など判例・通説を踏まえた穏当な立場で解説している。しかし、折に触れ、私見(なかには、訴訟過程での代理人弁護士批判)も述べている。分厚いが文章は読みやすく、民訴実務について、33年に及ぶ著者の裁判官経験も交え、プラグマティックに言及(例えば、①実務で権利自白がなされるのは、所有権についてがほとんどであること、②訴訟承継につき引受承継よりも、別訴を提起して弁論の併合をする場合が多いこと、など)する。また、リークエや新堂、伊藤などを摘示しながら、新しい議論にもある程度触れていることから、近時人気を集めている。学生が理解しづらかったり、誤解しがちな箇所についても、学生が想定できる具体例をあげ、平易な言葉を用いて説明(例えば、既判力が後訴に及ぶかの判断における判決内容の同一・矛盾・先決関係など)している。ただし、その分個々の論点の説明がリークエなどよりは、薄くなっている。民訴手続きのIT化を中心とする2022年の法改正についても、補論で対応。全24章+補論。A5判、862頁。


〔その他〕

  • 伊藤眞『民事訴訟法』有斐閣(☆2023年12月・第8版)……三ケ月門下。旧訴訟物理論。民事訴訟法の要である用語の定義がしっかりしており、文献では新堂に次いで引用されることが多く、また、実務家からの信頼も厚い(岡口元裁判官・現伊藤塾講師によると、概説書ではこの書籍のみ、最高裁から全国の各裁判官室に送付されているとのこと)。改訂も比較的頻繁になされており、学界・実務における最新の状況が反映されている。著者の見解がはっきりと打ち出されるタイプの体系書ではあるが、「はしがき」には"概説書"とあるとおり、判例・通説・多数説などについても簡潔な言及がある。論点の網羅性は高く、その理由付けは、簡潔・明瞭で分かりやすい。全体として、堅牢な体系と妥当性を重視した解釈が特徴。「定評ある民事訴訟法のスタンダードテキスト」の評は、だてではない。しかし、図の類はいっさい用いない書籍であり、とうてい初学者向きとは言えず、その厚さのため通読にも適さないため、(実務家でも)辞書としての利用がメインとなっている。第8版では令和4年民訴法改正に対応した。未施行部分は概要のみ記述(「未施行」と明記)し、施行後には、後日の改訂で反映する予定。電子書籍版あり。全10章。A5判、930頁。なお、手引として後掲の入門書・同著『民事訴訟法への招待』(これは、通読用にぜひお勧めの書籍)がある。

  • 山本弘・長谷部由起子・松下淳一・林昭一(補訂)『民事訴訟法(有斐閣アルマSpecialized)』有斐閣(☆2023年12月・第4版)……スタンダードなテキスト。著者の一人である山本が2018年に逝去したため、第4版の山本執筆部分の補訂は門下生の林が行った。「手続の時系列に則し、手続の主体である原告、被告および裁判所の手続の節目ごとの行動規範を明らかにする構成」(はしがき)を採用。多数当事者訴訟(複雑訴訟)の項目を設けず、手続内で随時説明を加える構成やクロスリファレンスが徹底により、学習者への配慮がなされている。近時の多数説をベースにしながら、より先端的な有力学説にも適宜触れており、薄いように見えて重要な論点は意外なほど網羅的に拾っている。下掲・高橋『民事訴訟法概論』も、情報の取捨選択をする上で、本書を大いに参考にしたという(はしがき)。しかし、判例の解説がコンパクトなため、判例集やその他演習書等による積極的な補充が必要である。電子書籍版あり。全8章。四六判、488頁。

  • 上原敏夫・池田辰夫・山本和彦『民事訴訟法(有斐閣Sシリーズ)』有斐閣(☆2025年3月・第8版)……新訴訟物理論に立脚する学者による共著。民事訴訟法を必要最小限まで圧縮して網羅的に解説しているため、一昔前は学部の講義用テキストとして広く読まれた書籍である。そのため、学説の対立にはあまり分け入らず、判例の説明も数行程度であり、単に問題提起をしただけで終わってしまっているような箇所も散見される。文書も、Sシリーズにしては硬く、初学者が本書を利用するのは難しい。コンパクトに要点は押さえられているので、上級者のまとめ用や通読用としてなら、便利である。全7章。四六判、368頁。

  • 長谷部由起子『民事訴訟法』岩波書店(☆2024年3月・第4版)……新堂門下。コンパクトでありながら、定義がしっかりと書いてあり、要点をおさえられる。判例の紹介が物足りない(羅列しかしていない)という声もあるが、同著『基本判例から民事訴訟法を学ぶ』で、適宜補充するとよい。薄いのでさっと要点を確認するのに向いているが、論点によっては深く掘り下げる部分もある。しかし、判例相互の整合性について、結論を出してないような箇所もある。基本書としての地位は、やはりいま一歩の感がある。第3版において、民法・商法など、旧版(2017年2月)刊行以降に相次いで行われた民事系の法令改正に対応。第4版では、民事裁判手続のIT化等に関する令和4年改正を織り込むとともに、判例羅列をアップデートした。全12章。A5判、530頁。

  • 小林秀之『民事訴訟法(新法学ライブラリ10)』新世社(☆2022年8月・第2版)……『ケースでわかる民事訴訟法』の著者による標準的な民事訴訟法のテキスト。訴訟の段階に従って、民訴法を解説をする形式をとる。訴訟物、既判力、複雑訴訟などの学説対立が激しく、論点の多い分野は独立した章を設けて解説しており、学習者への配慮がなされている。令和4年民事訴訟法改正に補論で対応。全13章+補論。2色刷。A5判、480頁(本文458頁)。

  • 小林秀之・山本浩美『新民事訴訟法』成文堂(☆2024年5月)……Q&A(問答)方式を採用。下掲『明解民事訴訟法』(2017年7月第3版)をベースとしているが、「本書では大幅に書き直してありますので,全く別の書物と受け取っていただいてもよいかと思っております」(はしがき)とのこと。上告、再審、国際民事訴訟、書式については、紙幅の関係でカットされている(はしがき)。A5判、688頁。

(令和4年民事訴訟法改正未対応)
  • 新堂幸司『新民事訴訟法』弘文堂(2019年11月・第6版)……兼子門下。各種文献で引用される回数が非常に多い、民訴法学における最高水準の体系書。争点効、反射効などの学説提起箇所は、一読の価値がある。1000頁を超える浩瀚な体系書ではあるが、論旨明快で読みやすい。文章も非常に柔らかいが、その一文一文にとても深い意味が込められた、示唆に富んだものとなっており、著者の問題意識や利益考量の手腕を味わいながら読み進めたい。具体例が豊富なので分かりやすいが、新堂説は新訴訟物理論にたち、結論の妥当性を柔軟に追求するもので、いわゆる概念法学を好まないため、初学者にとっては取り組みにくい内容となっている。第6版の改訂で、紙面を縦組みから横組みに刷新し、記述も全体的に見直された。全6編。A5判、1072頁(本文1033頁)。

  • 中野貞一郎・松浦馨・鈴木正裕編『新民事訴訟法講義(有斐閣大学双書)』有斐閣(2018年2月・第3版)……各分野を代表する豪華な執筆陣による共著。旧試時代では定番書であった実務でも役立つ一冊。編著者の一人である中野は2017年に逝去。基本的には新訴訟物理論の立場をとるが、旧訴訟物理論についても解説はなされている。共著ではあるが、記述は各分野の第一人者による安定感があるもので、大抵のことが詳しく書いてある。旧民訴時代から改訂を重ねており、信頼感もある本書は、現在でも基本書として通用する。論点は豊富に取り上げられており、学習者を意識した解説は秀逸。はしがきにある「最良の基準書」との称号は言い得て妙である。しかし、その厚さや文章の硬さから、初学者や通読用途には適さない。また、各分担執筆者によって文体と脚注の使い方が著しく異なるため、一冊の本としての統一感は薄い。第3版において、平成23年民事訴訟法改正、平成29年民法(債権関係)改正等および旧版(2008年5月・第2版補訂2版)刊行以降の新判例をフォロー。全7編、全27章。A5判、804頁。

  • 小林秀之『新ケースでわかる民事訴訟法』日本評論社(2021年5月)……三ケ月門下。『ケースでわかる民事訴訟法』日本評論社(2014年9月)の実質的改訂版。重要判例をベースにしたケース・スタディによって民事訴訟法を解説する教科書。文章は読みやすく、かつ、論理的であり、「鉄腕アトム」とも評される著者の能力の高さが窺われる。判例百選に掲載されている判例が、具体的な事例とともにほぼ網羅されている。電子書籍版あり。全27章。A5判、484頁。

  • 小林秀之編『法学講義 民事訴訟法』弘文堂(2018年4月)……『新法学講義 民事訴訟法』(悠々社、2012年5月)をベースに、民法改正を踏まえた最新版。 477判例が取り込まれている。全10章。A5判、480頁。

  • 川嶋四郎『民事訴訟法概説』弘文堂(2019年12月・第3版)……竹下門下。コンセプトは「木も見て森も見て山も見る」学修。2色刷で図表を多用するなど、わかりやすさを重視しており、学生向けに執筆されている。試験対策に必要な134個の〈論争点〉が取り上げられており、学修の便宜が図られている。全10章。A5判、616頁。

  • 三上威彦『〈概説〉民事訴訟法』信山社(2019年8月)……『〈概説〉倒産法』に続くテキスト。全7編。A5変型判、432頁。

(平成29年債権法改正未対応)
  • 高橋宏志『民事訴訟法概論』有斐閣(2016年3月)……新堂門下。学生向けに執筆された、民事訴訟法の教科書。法学教室連載「民事訴訟法案内」に加筆修正を行い単行本化したもの。一応新訴訟物理論に立脚しているが、著者自身が訴訟物論争はもはや「かつての議論」だとしている(『高橋宏志コラム』)。『重点講義』と異なり、一般的な基本書と同様に純制度的・手続的知識も含めた民事訴訟法の全分野を解説している。旧司の一行問題のような小見出し(例:「当事者の確定とはどういう作業か」)を立てて、これに対する解説を述べるという叙述スタイルのため、論点集の趣も持っている。柔らかい文章で書かれており、かつ、初学者もメリハリをつけて読むことができるよう工夫されている。著者から見て、学生の理解が不十分であることが多い箇所を随所で指摘している点が、類書にはない特徴である。しかしその叱咤激励は好みが分かれるかもしれない。自説を前面に出しているが、判例や通説が異なる立場を採っている場合には、その旨を明示しているので、初学者でも混乱することなく読める。ただし、その場合、判例・通説の説明は結論のみで、理由付けがないことが多い点には注意を要する。コンパクトだが、司法試験に出題されたほとんどの論点をカバーしているので、上級者のまとめ用としても使える。「受験新報」2019年12月号特集「令和元年合格者が使った基本書」民訴2位。全11章。A5判、420頁。

  • 裁判所職員総合研修所監修『民事訴訟法講義案』司法協会(2016年6月・3訂版)……実務説(旧訴訟物理論)。通称『講義案』。原著者は下掲『講義 民事訴訟』の藤田広美。掲載されている論点が豊富。ただし、書記官の研修用テキストであることから、司法試験には関係のない記述も多くある。全14章。B5判、434頁。

  • 藤田広美『講義 民事訴訟』東京大学出版会(2013年4月・第3版)……著者は元裁判官。民事訴訟法の教科書というよりは、民事訴訟実務の手続きを図表を多用してコンパクトにまとめた本であり、『民事訴訟実務の基礎』などに近い。たまに論点を取り上げて独自の考察をしているが、概ね学説の対立には分け入らない傾向にあり、実務上確立している理論はほとんど所与のものとして扱っている(たとえば、訴訟物論争については最小限の記述)。前半部分で要件事実についても多くの頁を割いて解説しているため、民事訴訟法部分の内容が薄いという評価もある。もっとも、新司法試験にはこの一冊で充分と言われることもあり、賛否両論である。本書は民事訴訟法の初学者に向けて書かれたものである。しかし、民法・民事訴訟法・要件事実について一通り知識がないと読みこなせないとの声もある。なお、本書を論点を中心に補完するものとして、後掲の『解析 民事訴訟』がある。全3PART、全15Chapter。A5判、656頁。

  • 稲葉一人『民事訴訟法講義 理論と演習』法学書院(2017年5月・第2版)……法科大学院での基本書及び演習書として使われることを意図したテキスト。著者の裁判官経験を生かした「実務の視点」からも解説。演習問題は三つのレベルを用意し、読者の学習段階に合わせた内容。第2版では、新たに予備試験の法律基本科目(民事訴訟法)と法律実務基礎科目(民事)の答案構成、参考答案が収録された。序章(民事訴訟法の基本)+全9章+補章(実力確認問題とまとめ)+附章(予備試験問題を糧にするために)。A5版、688頁。

  • 松本博之・上野泰男『民事訴訟法』弘文堂(2015年9月・第8版)……新訴訟物理論(二分肢説)。共著とはいえ、言葉の定義にぶれはなく、クロスリファレンスも充実。大きな特徴としては、松本執筆の単純訴訟の第1審手続の部分と、上野執筆の複雑訴訟および上訴の部分では、書きぶりがまったく異なるという点が挙げられる。まず、松本執筆部分については、基本的には自説の紹介が中心となっているが、その根拠を他の著作や研究論文に丸投げしている箇所がいくつかあるほか、文章が分かりにくく、かなり読み手の力量が問われる。初学者には推奨しにくいが、示唆的な記述が多く、合格レベルの実力者や実務家にとっては、有益である。上野執筆の複雑訴訟および上訴の部分は、思考の整理が行き届いており、文章が分かりやすく、判例や多数説を踏まえた内容となっており、非常に読みやすい。結論として少数説を採る箇所もあるが、そうした箇所でも深々と立ち入るのは避けている。難しい議論は文字のポイントを落とすなど、記述にメリハリがあり、制度趣旨の説明も丁寧で、学生向け教科書としても出色の完成度である。高橋宏志も本書を最重要文献の一つとして挙げているなど、学界からの評価も非常に高い。序章+全7編。A5判、996頁。

  • 上田徹一郎『民事訴訟法』法学書院(2011年6月・第7版)……著者は2013年に逝去。旧訴訟物理論。旧司法試験時代の定番書。基本事項を網羅的かつ丁寧に解説する体系書。教育的配慮から基本部分と応用部分を本文と脚注に二分して解説する独特のスタイルを採る。自説主張は控えめで、判例・学説の発展の経緯が丁寧に書かれている。他の基本書に比べて分量が少なく見えるが、割り注などを含めるとその情報量は予想以上に多い。新しい議論も比較的捕捉しているが、小さい字だったり注に押し込められていたりして見づらいのが難点である。かつては受験生トップシェアだったが、改訂がなされていないため内容がやや古く、また著者逝去により今後の改訂も見込めないことから、現在では本書を基本書とする学生はあまり見られない。しかし、教育効果の高い良書であることに変わりはないので、法改正と関係のない論点や基礎理論部分を拾い読みするというような使い方なら、民事訴訟法が苦手な者や初学者にとっては、いまだ有用であろう。第6版・第7版の改訂は著者高齢により困難であったため、上田の意向を受けた稲葉一人が行った。本文に変更はほとんどなく、稲葉が論点を補充したほか、新判例や新立法のみを巻末にまとめて追加しただけのやや物足りない改訂となっている。百選の引用が第3版(2003年12月)のままであることが見受けられるのも残念。ただ、判例追補は短答対策に有益だという意見もある。全10編。A5判、760頁。

  • 小島武司『民事訴訟法』有斐閣(2013年3月)……大家の手による本格派の体系書。横書き・本文のみで930頁となる大著であるばかりでなく、1頁あたりの文字数も非常に多い(小フォントや脚注の多用による)。したがって、受験用教科書として読みこなすのは難しいだろう。意外と内容にムラがあり、辞書としての使い勝手もそれほど良いとはいえない(例えば、二段の推定に関する記述が非常に少ない点など)。とはいえ、著者の見解は概ね穏当なものにまとまっており、高橋、伊藤、松本といった近時の有力説もしっかりフォローしつつ、最終的には判例・通説(多数説)を採ることが少なくない。良く言えば格調高い、悪く言えば勿体ぶった表現が目立ち、ようやく辿り着いた結論が無難きわまるものであるときには、ある種のガッカリ感は否めない。10年の執筆期間を経たこともあり、一部、法改正のフォローアップができていない(「破産宣告」なる用語が多数見受けられる、抗告訴訟における被告の変更にかかる行政事件訴訟法改正に対応していない、家事事件手続法非対応など)。全11章。A5判、1026頁。

  • 川嶋四郎『民事訴訟法』日本評論社(2013年4月)……『民事訴訟法概説』弘文堂(2019年12月・第3版)の著者による本格的体系書。はしがきや索引を含め1000頁を超える大著。序章+全12章。A5判、1056頁。

  • 三谷忠之『民事訴訟法講義』成文堂(2011年7月・第3版)……薄め。判例重視。全11章。A5判、468頁。

  • 河野正憲『民事訴訟法』有斐閣(2009年5月)……横書き900頁超。判決文を頻繁に、かつ長めに引用している点に特色がある。概念的な説明が多い民事訴訟法の基本書の中でも、特にその概念を具体的に説明することに気を払っている。その分、論点に対する解説は頁数の割に薄くなってしまっている。序章+全15章。A5判、970頁。

  • 梅本吉彦『民事訴訟法』信山社(2009年4月・第4版)……分厚い文字どおりの体系書。旧訴訟物理論を採ること、引用文献は論文を中心とし、判例評釈をもってこれを補完するものとし、それで対応できない場合に限って、体系書・注釈書によるものとすること(以上、はしがきより引用)などが特徴。育ての母への感謝の想いを綴ったはしがきは、涙なしでは読めない。A5判、1188頁。

  • 岡伸浩『民事訴訟法の基礎』法学書院(2008年9月・第2版)……著者は法科大学院の実務家教員である弁護士(元伊藤塾講師)。読みやすく、判例の紹介も詳細。全10講。A5版、576頁。

  • 石渡哲『民事訴訟法講義』成文堂(2016年9月)……全8編。A5判、532頁。

(古典)
  • 兼子一・竹下守夫『民事訴訟法(法律学講座双書)』弘文堂(1993年7月・新版)……伝統的通説。著者は1973年に死去。新版改訂は弟子の竹下守夫により行われた。A5判、336頁。

  • 三ケ月章『民事訴訟法(有斐閣法律学全集)』有斐閣(1959年1月)……兼子門下。第56代法務大臣(民間人閣僚)。日本において初めて新訴訟物理論を提唱。その主張は弟弟子の新堂幸司に受け継がれた。著者は2010年に逝去。眠素を打破した本として語り継がれている。

  • 三ケ月章『民事訴訟法(法律学講座双書)』弘文堂(1992年6月・第3版)……A5判、624頁。

  • 谷口安平『口述民事訴訟法』成文堂(1987年12月)……口述法律学シリーズの傑作。著者は「コップの中の嵐」で知られる大御所。臨場感溢れる軽妙な語り口で、分かりやすく、かつユーモラスに民訴を解きほぐす。普通の基本書ではあまり触れないようなことが丹念に述べられており、非常に示唆的である。旧法下の本だが、本書の大部分は、法改正にほとんど関係ない総論部分にあてられているため、既に一通り勉強した学生が参考書として通読ないし拾い読みをしていけば、立体的な民訴の理解に到達できるだろう。A5判、518頁。

  • 石川明・小島武司編『新民事訴訟法』青林書院(1997年12月・補訂版)……「青林教科書シリーズ」をリニューアルして単行本化したもの。A5判、468頁。

  • 吉村徳重・竹下守夫・谷口安平編著『講義民事訴訟法』青林書院(2001年4月)……竹下守夫・谷口安平らが関わった新法対応の教科書。井上、伊藤、河野、春日など大学双書とかなり執筆者が被っている。大学双書が理論面での解説に力を入れているのに対し、こちらは概ね通説・実務の立場に立ち、それがどのように運用されているかを解説する。大学双書よりはあっさりしているが、総研や藤田ほど蛋白ではなく、また予備校的論点解説ではない。学説の錯綜に混乱した時に本書を読んでみるのもありかもしれない。全7編。A5判、608頁。

  • 小山昇『民事訴訟法(現代法律学全集)』青林書院(2001年10月・新版)……兼子門下。著者は2015年に死去。A5判、468頁。他に、入門書として、『民事第一審訴訟手続法入門』青林書院(1998年5月、A5判、346頁)等がある。

  • 林屋礼二『新民事訴訟法概要』有斐閣(2004年9月・第2版)……最高の「概説書」。著者は2018年に逝去。約500頁という分量ながら、用語の定義や基本概念については他に類を見ないほど非常に充実しており、文章も分かりやすい。複雑訴訟が独立の項目になっていないなど、一般的な基本書とは大きく異なる構成をとっているため、初学者にはとっつきにくいが、そのような配慮を理解できる中上級者にとっては有用。現在絶版(オンデマンド版あり)。A5判、516頁。

  • 納谷廣美『講義民事訴訟法』創成社(2004年6月)……読み易くコンパクト。通説と判例の理解を中心に据え、実務も重視。A5判、374頁。他に、『民事訴訟法 (現代法律選書)』創成社(1997年5月、A5判、624頁)がある。また、演習書『演習民事訴訟法』創成社(2005年2月、A5判、288頁)は、さらに通説解説に徹底。


【その他参考書】

  • 近藤昌昭『判例からひも解く実務民事訴訟法』青林書院(2023年07月)……元裁判官、現慶応ロー教授。実務家の観点から、判例を基に主張立証構造など基本原理を解説。民事訴訟法全体の考え方や論点相互の関係にも言及しており、分かりやすい。A5判、320頁。

  • 勅使川原和彦『読解民事訴訟法』有斐閣(2015年2月)……著者の教育現場での経験を活かし、学生が間違えやすい箇所を中心にわかりやすく解説する論点集。全15Unit。A5判、350頁。

  • 高橋宏志『重点講義民事訴訟法 上・下』有斐閣(2013年10月・第2版補訂版、2014年9月・第2版補訂版)……教科書や概説書の類ではなく、民事訴訟法の数々の論点を取り上げて深く掘り下げていく、2分冊の重厚な論点解説集である。したがって、純制度的・手続的知識には触れられていない。学界で争いのある論点についての網羅性は極めて高く、分厚い体系書でさえ一言も触れていないような細かな論点であっても、脚注などで拾い上げて、それなりに論及していることが多い。まさに広さと深さとを両立した本であり、近年の司法試験のタネ本となっていたとも言われている。もっとも、非常にレベルが高い本であることから、司法試験の合格水準に到達するレベルでよければ、必読とまでは言えない。上巻は出版社品切れ。A5判、860頁・876頁。

  • 田中豊『論点精解 民事訴訟法——要件事実で学ぶ基本原理』民事法研究会(2018年9月・改訂増補版)……旧著『民事訴訟の基本原理と要件事実』(民事法研究会、2011年1月)が改題・改訂されたもの。「改訂増補版」において、新たに証拠法、訴訟承継、判決によらない訴訟の終了、既判力の主観的範囲が増補された。全12章。A5判、519頁。

  • 小林秀之・山本浩美『明解民事訴訟法』法学書院(2017年7月・第3版)……問答方式により理解をすすめることを目的としている。巻末資料として書式の引用が豊富。比較的薄く、さらに、基本書とのクロスレファレンスが徹底されており、初心者に向く。重厚な基本書に撃退されがちな者は試してみるとよいだろう。ただ、ウリのはずの問答形式の部分は制度の説明や前提などに充てられており、試験などで重要な部分については通常の文章で書かれている。第3版において、最新の判例や学説を踏まえて全体が見直されると共に、新たに「裁判所」の講が追加され、大幅に加筆された(約88頁増)。また、平成29年に成立した民法債権法の改正について、 新設条文が補充され、債権者代位訴訟の変更点が解説されている。全34回。A5判、640頁。
    版元の法学書院の廃業後、本書をベースとして大幅に書き直され、上掲『新民事訴訟法』(2024年)が成文堂から新たに発刊された。

  • 小林秀之『民事訴訟法がわかる——初学者からプロまで』日本評論社(2007年4月・第2版)……全25講。A5判、424頁。

  • 小林秀之『アドバンス民事訴訟法——民事訴訟法をマスターする』日本評論社(2007年7月)……全29講。A5判、384頁。

  • 小林秀之『事例分析ゼミ 民事訴訟法』法学書院(2007年12月)……受験新報連載を単行本化。優秀な大学生の男女、努力家の大学院生、若手渉外弁護士、4人のゼミ生による小林ゼミ(という設定)。レベルはかなり高い。全10講。A5判、256頁。

  • 小林秀之・原強『民事訴訟法(新・論点講義シリーズ9)』弘文堂(2011年7月)......国際裁判管轄規定に対応。全25章。2色刷。B5版、352頁。

  • 伊藤眞・山本和彦『民事訴訟法の争点(新・法律学の争点シリーズ4)』有斐閣(2009年3月)……シンプルな論点集。網羅性は高いが、紙幅の関係かやや舌足らずな解説も見られる。計106項目。B5判、276頁。

  • 伊藤眞・加藤新太郎・山本和彦『民事訴訟法の論争』有斐閣(2007年7月)……民事訴訟法の重要論点を対談形式で進めていく。学説の整理、学会の最新の議論などに秀でる。全8章。A5判、272頁。

  • 池田粂男・小野寺忍・齋藤哲・田尻泰之・小林学『ケイスメソッド民事訴訟法』不磨書房(2013年6月・第3版)……A5変型判、336頁。

  • 池田辰夫・長谷部由起子・安西明子・勅使川原和彦『民事訴訟法Visual Materials』有斐閣(2010年3月)……B5版、168頁。

  • 新堂幸司編著『特別講義民事訴訟法(法学教室全書)』有斐閣(1988年2月)……理論民事訴訟法学の最重要文献の一つ。法学教室の連載であったが、内容は超高度であるから、気分転換やある論点について知識を深化させたい時ぐらいしか読むべきではない。内田貴、加藤雅信の論稿は、それぞれの民法学を理解するためには必見。OD版により復刊(2009年10月)。A5判、500頁。

  • 木川統一郎・清水宏・吉田元子『民事訴訟法重要問題講義 上巻・下巻』成文堂(いずれも、2019年4月・第2版)……26年ぶりの改訂。木川は2020年に死去。初版(1992-1993年)は3分冊だったが、第2版から2分冊となり、また、執筆者として清水と吉田が新たに加わった。理論と実務の双方に通暁した著者が民事訴訟法の重要問題について解説。A5判、380頁・386頁。


【入門書・概説書】

  • 木山泰嗣『小説で読む民事訴訟法—基礎からわかる民事訴訟法の手引き』『同2—より深く民事訴訟法を知るために』法学書院(2008年4月、2012年12月)……小説形式で民事訴訟法・民事裁判を学ぼうという意欲作。寝転がって気楽に読めるような内容ながら、学習効果の高い良書。基本書ではイマイチわからなかった点が理解でき、入門書として好適。A5判、304頁・296頁。

  • 中野貞一郎『民事裁判入門』有斐閣(2012年4月・第3版補訂版)……著者は2017年に逝去。入門書の定番。咀嚼された文章に定評がある。いくつかの論点については比較的高度な検討を加えており、意外と内容は深い。第3版から、姉妹書『民事執行・保全入門』の刊行に伴い、執行・保全の章が削除され、代わりに管轄と家事事件の章「家庭紛争と裁判」が追加されている。全12章。四六判、412頁。

  • 安西明子・安達栄司・村上正子・畑宏樹『民事訴訟法(有斐閣ストゥディア)』有斐閣(☆2023年3月・第3版)……令和4年IT化等改正等に対応。序章+全6章。A5判、294頁。

  • 渡部美由紀・鶴田滋・岡庭幹司『民事訴訟法(日評ベーシックシリーズ)』日本評論社(2016年11月)……全7章。A5判、272頁。

  • 和田吉弘『コンパクト版 基礎からわかる民事訴訟法』商事法務(☆2023年3月・第2版)……上掲『基礎からわかる民事訴訟法』を初学者向けにコンパクトにしたもの。令和4年IT化等改正等に対応。全17章。A5判、224頁。

  • 山本和彦『よくわかる民事裁判——平凡吉訴訟日記(有斐閣選書)』有斐閣(☆2023年3月・第4版)……新堂門下。平凡吉(たいらぼんきち)という主人公の人生が物語調に書かれている。賃貸借契約にかかる事例を用いて、民事裁判の始まりから終わりまで、小説を読む感覚で学ぶことができる。第4版において2022年の民事訴訟法改正に対応。電子書籍版あり。四六判、288頁。

  • 司法研修所監修『民事訴訟第一審手続の解説-事件記録に基づいて』法曹会(2020年2月・第4版)……司法研修所の民事裁判テキスト(白表紙)。実際の事件記録を題材に第一審民事訴訟手続を解説。手続法において重要な手続の流れをつかむのに最適。予備試験の口述対策としても有用であるとの声がある。A5判、194頁。

  • 裁判所職員総合研修所監修『民事訴訟法概説』司法協会(2014年5月・9訂版)……全10章。B5判、174頁。

  • 林屋礼二・吉村徳重・中島弘雅・松尾卓憲『民事訴訟法入門(有斐閣双書)』有斐閣(2006年6月・第2版補訂版)……全7章。四六判、382頁。

  • 小島武司『プレップ新民事訴訟法(プレップ・シリーズ)』弘文堂(1999年3月)……かつて入門書(導入書)として定評があったが、長期間改訂されておらず、内容はかなり古くなってしまっている。新書判、376頁。

  • 小島武司・小林学『基本講義民事訴訟法』信山社(2009年5月・新装補訂版)……全20章。B5判、338頁。

  • 小島武司編者『よくわかる民事訴訟法(やわらかアカデミズム・〈わかる〉シリーズ)』ミネルヴァ書房(2013年5月)……全14章。B5判、208頁。

  • 河野正憲・勅使川原和彦・芳賀雅顯・鶴田滋『プリメール民事訴訟法(αブックス)』法律文化社(2010年11月)……序章+全5章。A5判、290頁。

  • 井上治典編、安西明子・仁木恒夫・西川佳代・吉田純平・吉田直起著『ブリッジブック民事訴訟法(ブリッジブックシリーズ)』信山社(2022年2月・第3版)……編者は2005年に死去。全8章。四六判、344頁。

  • 山本和彦『ブリッジブック民事訴訟法入門(ブリッジブックシリーズ)』信山社(2011年3月)……全15講。四六判、280頁。

  • 池田辰夫編『アクチュアル民事訴訟法(アクチュアルシリーズ)』法律文化社(2012年9月)……序章+全15章+補章。A5判、298頁。

  • 栂善夫『民事訴訟法講義』法学書院(2012年9月)……概説書。序章+全12章。B5判、296頁。

  • 小田司編『民事訴訟法(Next教科書シリーズ)』弘文堂(2016年1月・第2版)……全8章。A5判、308頁。

  • 野村秀敏『法学民事訴訟法(信山社双書法学編)』信山社(2013年11月)……全7章。B6判、232頁。

  • 原強『やさしい民事訴訟法』法学書院(2014年3月)……序章+全20章。A5判、288頁。

  • 福永有利・井上治典著、中島弘雅・安西明子補訂『アクチュアル民事の訴訟』有斐閣(2016年4月・補訂版)……「ものがたりふう」に進行する医療過誤事件の事例とともに、個々の手続や制度がいかなる手続段階で問題になるかを把握し、裁判に関わる関係者の活動が裁判所の内外でどのように展開され訴訟が動いていくかを理解できる。全9章。A5判、218頁。

  • 越山和広『ベーシックスタディ民事訴訟法』法律文化社(☆2023年2月・第2版)……平成29(2017)年民法改正対応。全30Lesson。A5判、328頁。

  • 野村秀敏ほか『民事訴訟法』北樹出版(2018年5月)……執筆者(野村秀敏・佐野裕志・伊東俊明・齋藤善人・柳沢雄二・大内義三)。全12章。A5判、332頁。

  • デイリー法学選書編修委員会編『ピンポイント民事訴訟法』三省堂(2018年6月)……法学部生・ビジネスマン・一般読者向けの最新法学教養シリーズの民事訴訟法編。四六判、192頁。

  • 川嶋四郎・笠井正俊編、上田竹志・濵﨑録・堀清史・浅野雄太『はじめての民事手続法』有斐閣(2020年4月)……6件の具体的な架空のケースをもとに解説。民事訴訟法を中心に、民事執行・保全法、家事事件手続法、破産法、民事再生法等の主要な民事手続法の全体をコンパクトにカバー。序(民事手続法の世界へ)+全3編、全20章。四六判、318頁。

  • ☆伊藤眞『民事訴訟法への招待』有斐閣(2022年11月)……同著『民事訴訟法』で民訴法を学ぶにあたっての「助走路」として書かれた入門書。民訴法の全体像を把握することを目的に、条文を中心として、民訴法の基本原理・基礎概念・骨格について満遍なく口語体で平易に解説している。特に「法曹志望の次世代の方々」を対象者として書かれている。「法定代理人」と「法令上の代理人」のような、初学者の段階では混同しやすい概念についても、その違いを明確に記述している。入門の段階から法律家に要求される読解力と表現力を鍛えてもらうために、あえて多色刷りにせず、図表等も用いていない。なお、令和4年改正には触れていない。電子書籍版あり。四六判、344頁。


【注釈書・コンメンタール】

  • 秋山幹男ほか『コンメンタール民事訴訟法〔全7巻〕』日本評論社(I 2021年5月・第3版、II 2022年2月・第3版、III 2018年1月・第2版、IV 2019年3月・第2版、V 2022年9月・第2版、 VI 2014年9月、VII 2016年4月)……旧民事訴訟法下の定番コンメンタールであった菊井維大・村松俊夫『全訂民事訴訟法(全3巻)』の改訂版であり、実務家必携の詳細な注釈書。旧版の執筆者は裁判官が中心であったこともあり、実務的に手堅い見解を採っている。法律上の直接的な根拠がはっきりしない慣行や取扱いについても詳しく載っており、この点において他の追随を許さない。ただ、そのトレード・オフとして論理性が薄まり、論文対策には不満が出る。少数執筆者による合議を経て執筆されているため、執筆部分につき匿名方式を採っている。Ⅰ:民事訴訟法概説 第1編〔総則〕第1章~第3章〔第1条~第60条〕、Ⅱ:第1編〔総則〕第4章~第7章〔第61条~第132条の10〕、Ⅲ:第2編〔第一審の訴訟手続〕第1章~第3章〔第133条~第178条〕、Ⅳ:第2編〔第一審の訴訟手続〕第4章〔第179条~第242条〕、Ⅴ:第2編〔第一審の訴訟手続〕第5章~第8章〔第243条~第280条〕、Ⅵ:第3編〔上訴〕第1章~第3章〔第281条~第337条〕、Ⅶ:第4編〔再審〕~第8編〔執行停止〕〔第338条~第405条〕を扱う。Iの第3版において国際裁判管轄に関する追補部分を本文に織り込むとともに、令和2年改正まで対応。IIの第3版において、所有権不明土地に関する民法等の解説については前注において触れ、民事訴訟のIT化についても概要を記している。IIIの第2版において、平成23年の国際裁判管轄の改正、平成29年の民法改正整備法に対応。IVの第2版において、平成29年改正民法に対応。Vの第2版において、令和4年民訴法改正に対応(現行各条の注釈において改正内容に言及・解説)。A5判、848頁、812頁、672頁、704頁、488頁、556頁、516頁。

  • 兼子一原著・松浦馨ほか著『条解民事訴訟法(条解シリーズ)』弘文堂(2011年4月・第2版)……上記コンメン民訴が実務メインであるのに対し、こちらは理論的な解説が充実している。なお、第2版の改訂には裁判官も執筆者に参加している。山本和彦教授が本書の書評において、本書の採用する見解を論点ごとに短評しており、参考になる(判タ1350号80頁)。ただし、数多くの間違いが指摘されている点に注意が必要である(出版社HPで訂正が公表されているが、それも全ての間違いがカバーされているわけではない)。A5判、2004頁。

  • 加藤新太郎・松下淳一編『新基本法コンメンタール 民事訴訟法1・2(別冊法学セミナー)』日本評論社(2018年10月、2017年9月)……1は「第2編第3章まで(~第178条)」を扱い、2は「第2編第4章 証拠」以下(第179条~)を扱う。「事項索引」はおろか、「判例索引」がないため、非常に不便である。B5判、524頁・464頁。

  • 賀集唱・松本博之・加藤新太郎編『基本法コンメンタール民事訴訟法1-3』日本評論社(1-3:2012年2月・第3版追補版)……実務的な細かい手続きの情報が充実しているのが特徴。本のサイズが大きく文字ポイントも小さいため、学生には十分な情報量がある。第3版追補版においては国際裁判管轄についての民訴法改正を逐条解説(平成24年4月1日施行の国際裁判管轄に関する法改正を巻末に【追補】として収録)。なお、日本評論社のHPにて追補部分をダウンロード可能。B5判、400頁・416頁・282頁。

  • 笠井正俊・越山和広『新・コンメンタール民事訴訟法』日本評論社(2013年3月・第2版[☆改訂予定あり])……TKCで提供されているインターネットコンメンタールを紙媒体に印刷したもの。第2版において、初版(2010年12月)以降の法改正、2013年1月施行の家事事件手続法、非訟事件手続法等の法改正に対応。A5判、1320頁。

  • 高田裕成・三木浩一・山本克己・山本和彦編『注釈民事訴訟法 第3巻-第5巻(有斐閣コンメンタール)〔全5巻(予定)〕』有斐閣(Ⅲ:2022年6月、Ⅳ:2017年7月、V: 2015年12月)……A5判、第1巻(総則(1)1条~60条):頁、第2巻(総則(2)61条~132条の10):頁、第3巻(第一審の訴訟手続(1)133条~178条):824頁、第4巻(第一審の訴訟手続(2) 179条~280条):1534頁、第5巻(上訴・再審・手形小切手訴訟・少額訴訟・督促手続・執行停止 281条~405条):914頁。

  • 最高裁判所事務総局民事局監修『条解民事訴訟規則』『同(増補版)付・専門委員規則』『同 (デジタル化関係等)~付 民事事件等に関する手続において用いる識別符号の付与等に関する規則』司法協会(1997年2月、2004年4月、☆2025年4月、A5判、524頁・150頁・642頁)、法曹会編『令和4年最高裁判所規則(民事関係)逐条説明』法曹会(2023年11月、A5判、214頁)……本邦唯一の民事訴訟規則の逐条解説。『令和4年~逐条説明』はR4(IT関係)改正の逐条解説を含む。

(古典)
  • 塩崎勤編集、三宅省三・塩崎勤・小林秀之編集代表『注解 民事訴訟法 I・II〔全6巻(未完成)〕』青林書院(2002年10月、2000年6月)……平成8年に新法となった民事訴訟法に対応した本格的コンメンタール(実務家のための注釈書)。全6巻が予定されていたが、第3巻以降は刊行中止となってしまった。Iは、第1条~第60条を、IIは、「訴訟費用」及び「訴訟手続」に関する第61条~第132条を扱う。A5判、624頁・700頁。


【判例集・ケースブック】

〔判例集〕

  • 高橋宏志・高田裕成・畑瑞穂編『民事訴訟法判例百選』有斐閣(2023年9月・第6版)……競合する出来の良い判例集が少ないこともあり、ほとんどの人が利用している定番書。評釈のレベルも悪くはない。計118件ほかアペンディクス42件を収載。B5判、276頁。

  • 中島弘雅・岡伸浩『民事訴訟法判例インデックス』商事法務(2015年1月)……見開き2頁で、判例のエッセンスをビジュアルな図表を用いてコンパクトに整理するシリーズの「民事訴訟法」編。重要かつ不可欠な裁判例271個を収録。A5判、540頁。

  • 小林秀之編『判例講義 民事訴訟法』弘文堂(2019年3月)……かつて悠々社から刊行されていた同名判例集の実質的な第4版。判例数は多く、テーマごとに同一著者が評釈している点が特徴。原則、1判例1頁、重要判例のみ2頁となっている。223判例収録。債権法改正に対応。B5判、352頁。

  • 上原敏夫・池田辰夫・山本和彦『基本判例民事訴訟法』有斐閣(2010年9月・第2版補訂)……Sシリーズ著者による判例集。判例解説はないが、その分事案の説明が詳細。四六判、548頁。

  • 小川英明・長秀之・宗宮英俊編著『民事訴訟法主要判例集』商事法務(2009年8月)……裁判官(及び元裁判官)が編集した判例集。条文順の並びで判例解説はなく、判例収録数は驚きの604件(そのほとんどが大審院および最高裁の判例)。A5判、521頁。

  • 小林秀之・山本浩美『最新 重要判例解説 民事訴訟法』日本評論社(2021年9月)……近年の24の重要判例を詳細に解説。A5判、368頁。

  • 山本和彦『最新重要判例250 民事訴訟法』弘文堂(2022年1月)……B5判、288頁(本文269頁)。論点・事案・判旨・解説を半頁で押さえられるよう工夫がされているが、解説のところどころに誤植がみられる。

〔ケースブック〕

  • 三木浩一・山本和彦編『ロースクール民事訴訟法』有斐閣(2019年4月・第5版)……独習には向かないが良問が揃っている。【資料】欄に掲載されている文献は高橋『重点講義』その他の書籍でも取り上げられているものが多く、基本かつ重要な文献が掲載されている。ただし、内容的には高度なものも含まれている。第5版において、平成29年民法改正を含む法改正、裁判例に対応。全30UNIT。B5変型判、660頁。

  • 長谷部由起子・山本弘・松下淳一・山本和彦・笠井正俊・菱田雄郷編著『ケースブック民事訴訟法』弘文堂(2013年3月・第4版)……編著者の一人である山本弘は2018年3月に逝去。判例を分析するタイプの問題が多い。評判はよくない。『ロースクール民事訴訟法』と被っているところも多々あり。全7章。A5判、552頁。

  • 伊藤眞・高田裕成・高橋宏志・松下淳一『上級民事訴訟法』有斐閣(2005年4月)……全9章。A5判、326頁。

〔その他〕

  • 田中豊『民事訴訟判例 読み方の基本』日本評論社(2017年9月)……50の主要判例と320の関連判例に即して判例の射程等を解説。第1章「民事紛争の解決と民事訴訟」から、第9章「判決によらない訴訟の終了」までの全9章。なお、出版社による難易度設定としては、上級者用となっている。A5判、596頁。

  • ☆長谷部由起子『基本判例から民事訴訟法を学ぶ』有斐閣(2022年9月)……A5判、330頁。(評価待ち。)


【演習書】

  • 長谷部由起子・山本弘・笠井正俊編著『基礎演習 民事訴訟法』弘文堂(2018年2月・第3版)……編著者の一人である山本は2018年に逝去。民事訴訟法の主要論点は一通りカバーされており、東大系の若手研究者を中心とする30名が、それぞれの得意分野の解説を担当している。著者によってやや解説の質にばらつきがあり、中にはかなりアカデミックな議論を展開してしまっているものもあるが、概ね学習者向けの良質な演習書・論点解説集となっている。「基礎演習」と銘打たれ、はしがきにも学部生や未修者向けの演習書と書かれているが、骨の折れる問題も散見され、易しい問題ばかりではないため、中級者以上であっても本書から得るものはあるだろう。第3版は、債権法の新旧両法に対応して、全面改訂された。A5判、384頁。

  • 山本和彦編著、安西明子・杉山悦子・畑宏樹・山田文著『Law Practice 民事訴訟法』商事法務(☆2021年9月・第4版)……判例を題材にした、初学者向きの演習書。第3版において、平成29年の民法改正など新たな立法に対応し、近時の重要判例もフォローされた。A5判、432頁。

  • 名津井吉裕・鶴田滋・八田卓也・青木哲『事例で考える民事訴訟法(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2021年9月)……A5判、502頁。

  • ☆小林学『実戦演習民事訴訟法——予備試験問題を素材にして』弘文堂(2023年6月)……H23~R2までの予備試験論文問題の解説と参考答案を掲載。A5判、408頁。

  • 藤田広美『解析 民事訴訟』東京大学出版会(2013年5月・第2版)……藤田『講義 民事訴訟』の姉妹本。通説以外の学説をスルーしすぎたきらいのある『講義』を補完。昭和24年度から平成22年度までの旧司論文問題を題材としている。全体としてかなり広い範囲をカバーしているが、掘り下げは受験レベルとしてはやや物足りない。旧司過去問のうち、事例問題の中には数頁を費やして解説されているものもあるが、一行問題の多くはほとんど、あるいは全く解説が付いていない(本書内のリファレンスや講義民事訴訟に譲っている)。また、その解説も答案作成を想定したものにはなっていない。演習書というよりは、過去問を起点として重要論点を解説する教科書に近い。 A5判、616頁。

  • 遠藤賢治『事例演習民事訴訟法(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2013年2月・第3版)……法学教室の「演習」連載の単行本化。著者は最高裁調査官も経験した元裁判官。初~中級向けの事例問題に丁寧な解説が付されている。『ロースクール民事訴訟法』有斐閣(2014年3月・第4版)と相性が良いとされ、同書で問われている事項の基礎を本書でさらっていくことができる。A5判、354頁。

  • 薮口康夫『ロースクール演習 民事訴訟法』法学書院(2018年5月・第2版)……「受験新報」連載を単行本化したもの。出題の意図・論点、解説、答案作成上のポイントで構成された演習書。長文事例問題32問。A5判、352頁。

  • 杉山悦子『民事訴訟法 重要問題とその解法(法セミ LAW CLASS シリーズ)』日本評論社(2014年3月)……民事訴訟法の学習上で躓きやすい問題を題材に、基礎的な知識から考え方の分岐点までを説いたもの。全5章、全24項目。A5判、280頁。

  • 和田吉弘『旧司法試験 論文本試験過去問 民事訴訟法』辰巳法律研究所(2004年4月)……学者による旧司法試験過去問解説講義を書籍化。『LIVE本』として受験生に広く知られた存在となっている。辰巳作成解答例・講師レジュメ・問題解説・解答例の検討からなる。旧司法試験受験生向けの講義のため、基本的に引用文献を伊藤・双書・新堂・上田等の代表的体系書と重点講義・百選(第3版)に抑えて解説している。分厚いが、講義録なので口語体で読みやすく、わかりやすい。理論水準も藤田・解析より安定しており、信頼できる。新版は平成16年度の問題まで収録しており、全40問。絶版だったが2008年に万能書店からオンデマンド版で復刊された。16年改正対応。

  • 和田吉弘『司法試験論文過去問LIVE解説講義本 和田吉弘民訴法(新Professorシリーズ)』辰已法律研究所(2014年8月)……司法試験民事訴訟法の論文過去問解説講義書。平成18年から25年までの過去問について解説。また、各年度の上位合格者の再現答案を取り上げ、内容を検討している。A5判、461頁。

  • 川﨑直人『司法試験論文過去問演習民事訴訟法 実務家の事案分析と答案作成法』法学書院(2018年12月)……サンプル問題から平成29年までの問題を収録。改正民法には対応していない。A5判、384頁。

  • 越山和広『ロジカル演習 民事訴訟法』弘文堂(2019年2月)……民事訴訟法の重要論点について、事例→参考判例→解説を読む前に→解説→答案例→参考文献、という流れで各問が構成されている演習書。事例は、長文読解型・短文型・会話型の3タイプ。全30個の事例を収録。A5判、248頁。

  • 渡部美由紀・鶴田滋・岡庭幹司『ゼミナール民事訴訟法』 日本評論社(2020年12月)……『民事訴訟法(日評ベーシックシリーズ)』と同一の著者陣による演習書。A5判、216頁。

  • 井上治典『実践民事訴訟法』有斐閣(2002年3月)……『ケース演習民事訴訟法』(1996年6月)を改訂し、改題したもの。理論的に高度な論点も平易な記述で論文試験に活かせられるように解説。『ロースクール民事訴訟法』が手軽になったものと考えてもよい。なお、著者が故人のため、改訂は見込めない。A5判、242頁。

  • 納谷廣美『演習民事訴訟法』創成社(2005年2月)……A5判、288頁。

  • 小島武司・小林学『基本演習 民事訴訟法』信山社(2007年6月)……B5判、256頁。

  • 法曹会編『設題解説 民事訴訟法(二)』法曹会(2008年12月)……本書は、「法曹」第405号から第678号に連載された「法律研修講座(民事訴訟法)」に、若干の加筆補正をし、取りまとめられたもの。この設題解説は、民事訴訟法を体系的に叙述するものではなく、初学者がまず理解しておくべき民事訴訟法上の一般的、基本的と思われる問題を取り上げ、具体的事案に即して、おおむね判例、通説の立場から平易に解説。全24項目。新書判、300頁。

  • 飯倉一郎・加藤哲夫編『演習ノート 民事訴訟法』法学書院(2010年3月・第5版)……答案作成のポイントと書き方が把握できる演習書。単なる模範解答や論点の提示に止まらず、「答案構成」まで提示。司法試験をはじめ、弁理士試験、裁判所事務官採用試験などの各種試験で出題された問題を中心に民事訴訟法の基本的かつ重要な問題を、訴訟の主体・訴訟の開始・訴訟の客体・訴訟の審理・訴訟の終了・上訴に分類して体系的に配列し、111講を収録。A5判、264頁。

  • 松村和徳・小田敬美・伊東俊明『民事訴訟法演習教材』成文堂(2012年6月)……A5判、292頁。


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