商法(全般)


【基本書】

  • 弥永真生『リーガルマインド商法総則・商行為法』『同・会社法』『同・手形法・小切手法』有斐閣(2019年3月・第3版、☆2021年4月・第15版、2018年11月・第3版)……竹内門下。単一著者が商法全般を解説する数少ない基本書。全体的にコンパクトな記述と丁寧な理由付けが特徴である。内容も独自色は強くなく、通説に近い見解なので安心できる。冒頭に分析視座を提示しており、特に旧司時代には論文式試験向きだと言われていた。大きな長所の一つとして、概念の定義がきちんと書かれていることが挙げられる。例えば、株主総会決議における特別利害関係のある株主とはどのような者か、あるいは、利益相反取引における間接取引とはどのようなものか、他の基本書の多くは、いくつかの具体例を挙げるのみで、これらの定義がきちんと書かれているものは少ない。そのような中、本書のように概念定義が丁寧な本は、長文の事例から事実を拾い、一定の概念に当てはめなければならない新司法試験においても、大きな威力を発揮する。A5判、200頁・538頁・318頁。

  • 落合誠一ほか『商法I・II・III(有斐閣Sシリーズ)』有斐閣(I 総則・商行為:2019年3月・第6版、II 会社:2010年4月・第8版、III 手形・小切手:2018年12月・第5版)……東大系教授陣の共著によるコンパクトな教科書。IとIIIは司法試験対策としては充分な情報量がある。IIはさすがに薄すぎるためまとめ本としての利用が主である。3冊は著者が異なるものの、相互にリンクされており、共著による違和感などなく読むことができる。「Ⅰ 総則・商行為(第6版)」において、平成29年民法改正(債権法)、それに伴う商法改正と、平成30年の商法改正(運送法関連)が織り込まれた。四六判、368頁・378頁・432頁。

  • 川村正幸ほか『コア・テキスト 商法総則・商行為法(ライブラリ 商法コア・テキスト1)』『同・会社法(同2)』『同・手形・小切手法(同 3)』新世社(2019年7月、2018年11月、2020年6月)……学修につき「コア」となる重要部分を重点的に解説する「コア・テキスト・シリーズ」の商法編。基本書と入門書の中間程度の情報量。A5判、232頁・192頁・304頁。

  • 松嶋隆弘・大久保拓也編『商事法講義1-3』中央経済社(1 会社法:2020年9月、2 商法総則・商行為:2020年9月、3 支払決済法:2020年9月)……学部生向けに判例・通説を解説。将来に司法試験を受験する学生も視野に入れて執筆されている。A5判、376頁・188頁・200頁。

  • 北村雅史・徳本穰・山下典孝・高橋英治編ほか『スタンダード商法I-V』法律文化社(Ⅰ 商法総則・商行為法:☆2022年4月・第2版、Ⅱ 会社法:☆2022年4月・第2版、Ⅲ 保険法:2019年2月、Ⅳ 金融商品取引法:2021年2月、Ⅴ 商法入門:2018年12月)……保険法も含めた商法全分野に渡る共著。読者として法学部生のみならず、経営学部等の他学部生も視野入れているため、記述は基本事項に重点を置いている。図表等を用いて、初学者にもわかりやすく解説している。平成30年商法改正に対応。A5判、256頁・348頁・286頁・226頁・208頁。

  • 森本滋『会社法・商行為法手形法講義』成文堂(2014年4月・第4版)……1冊本。商法(会社法)の大家である著者が、ロースクール未修コースの講義で使用するため、商法全分野をコンパクトまとめたもの。山口青本や宇賀レインボーと相通ずるコンセプト。書名には商法総則と小切手法がないが、内容には含まれている。他の文献への参照がないなどの多少の癖があるものの、本文を追うだけでも一通りの内容が把握できるよう配慮されている。分量は全体で430ページ程度、会社法に限ると330ページ程度と非常にコンパクトにまとまっている。ただし、その性質上記述が薄く、初学者が本書単独で理解することは困難であるという声もある。もっとも、重要な論点は網羅しているため、まとめ本としては好適である。なお、同著者による会社法の基本書として『会社法講義』有信堂高文社(2001年3月)があったが、既に改訂されていないため、基本書で森本と言えば一般に本書を指す。A5判、468頁。

  • 平出慶道・山本忠弘・田澤元章編『商法概論I』、『同II - 会社法 -』青林書院(2007年4月、2010年4月)……「商法概論 I」は、商法総則・商行為法、手形・小切手法を1冊に集約したもの。A5判、428頁・584頁。

  • ☆受川環大『商法総論・会社法総則・商行為法』中央経済社(2024年9月)……学者が書いた受験対策本。司法試験短答問題と論文問題が記載されている。手形は実務で廃止され予備短答試験ではせいぜい1問しか出ないが、商法総則・商行為分野は短答で重要である(しかし時間はかけられない)。手形は捨てて商法総則・商行為は短答過去問程度しか回せないだろう。内容は評価待ち。


<基本書:商法・会社法>

  • 福原紀彦『企業法総論・総則(企業法要綱1)』『企業取引法(同2)』『企業組織法(同3)』文眞堂(2020年7月・第2版、2015年5月、2017年5月)……主として、1は商法総則・会社法総則、2は商行為法、3は会社法を取り扱う。「企業法総論・総則(第2版)」において、平成29(2017)年民法(債権関係)改正と同整備法制定、平成30(2018)年商法(運送・海商関係)改正、令和元(2019)年会社法改正と同整備法制定の内容が取入れられた。B5判、187頁・250頁・415頁。

  • 畠田公明『商法総論・会社法総則』中央経済社(2018年1月)……法学部で学ぶ学生を対象とする商法・会社法総則のテキスト。A5判、232頁。


【入門書・概説書】

  • 近藤光男編『現代商法入門(有斐閣アルマBasic)』有斐閣(☆2021年3月・第11版)……商法総則、会社、商行為、保険、海商、手形・小切手の基本的な仕組みを解説。商法全体にわたって基本的理解を得るのに最適。第11版で令和元年会社法改正に対応。序章+全6章。四六判、400頁。

  • ☆小柿徳武・原弘明・伊藤吉洋『基礎から学ぶ商法』有斐閣(2022年5月下旬予定)……四六判、350頁。

  • 山下眞弘『はじめて学ぶ企業法』法学書院(2006年4月)……通説・判例をベースに商法全体(商法総則・商行為法・会社法・手形小切手法)の基礎知識と理論が学習できるよう解説したテキスト。A5判、344頁。

<入門書・概説書:商法・会社法>

  • 楠元純一郎『サマリー商法総則・商行為法』『サマリー会社法』中央経済社(☆2021年3月・第2版、2016年2月)……枝葉は省いて基礎的所を厳選して解説。A5判、204頁・260頁。

  • 永井和之編『ブリッジブック商法(ブリッジブックシリーズ)』信山社(2002年12月)……改訂が望まれる。四六判、320頁。


【その他参考書】

  • 淺木愼一『商法学通論I-VIII〔全8巻〕、【補巻Ⅰ】― 商法の視座からの改正民法(案)』信山社(2010年4月-2015年10月、2016年6月)……体系書。『補巻Ⅰ』は、現在改正が論じられている民法について、商法、手形法、小切手法、会社法との関係を解説。A5変型判、408頁・336頁・392頁・432頁・368頁・349頁・320頁・396頁・280頁。

  • 田村諄之輔・戸塚登・落合誠一編著『目で見る商法教材(「目で見る」シリーズ )』有斐閣(2003年4月・第4版補訂版)……B5判、120頁。

<その他参考書:商法・会社法>

  • 金井高志『民法でみる商法・会社法』日本評論社(2016年9月)……序(民法から商法・会社法へ─民法の特別法として学習する意味)+全11章。A5判、268頁。


【判例集・ケースブック】

  • 岩原紳作ほか編『会社法判例百選』『商法判例百選』『手形小切手判例百選』有斐閣(2016年9月・第3版、2019年6月、2014年11月・第7版)……会社法の収録判例数は104件。第3版からAppendixを新設(40件)。商法は全109項目(新規収録38件)の重要判例を収録。『商法判例百選』は、『商法(総則・商行為)判例百選』有斐閣(2008年12月・第5版)に新たに海商法の判例を加え、改称・改訂したもの。また、民法(債権法)改正に伴う平成29年商法改正、運送・海商法制を120年ぶりに見直した平成30年改正に対応。手形小切手は100件を収録。B5判、240頁・226頁・208頁。

  • 山下友信・神田秀樹編『商法判例集』有斐閣(2020年10月・第8版)……商法全分野(会社法、商法総則、商行為、手形・小切手など)の判例集。解説は短めだが、判旨の引用は百選よりやや長い。第8版において、旧版(2017年10月・第7版)の収録判例を見直すとともに新判例が追加された。全5章。A5判、606頁。

  • 弥永真生『最新重要判例200 商法』弘文堂(2010年3月・第3版)……コンパクトに会社法、商法総則・商行為、手形小切手法の判例を解説している。タイトルは200だが、第3版では222判例を収録している。B5判、252頁。同『会社法新判例50(ジュリストブックス)』有斐閣(2011年7月)は、ジュリスト連載の判例評釈を単行本化したもので新会社法下で出た重要判例を一応網羅している。1つの裁判例を4頁にまとめ、事実・判旨・解説という構成でコンパクトに解説。A5判、232頁。

<判例集・ケースブック:商法・会社法>

  • 小塚荘一郎編著『ケース会社法-会社法判例・資料集』『ケース商行為法-企業取引法判例集』商事法務(2008年10月、2007年4月)……ケースブック。A5判、584頁・337頁。


【演習書】

  • 黒沼悦郎編著『Law Practice 商法』商事法務(2020年3月・第4版)……重要判例をベースにした基礎的な問題集。分かりやすく丁寧な解説が付せられており、取り組みやすい。第4版は、令和元年改正会社法を踏まえた改訂版。「株主総会の権限」、「利益相反の特則としての補償契約」、「取締役の解任」の3項目が新たに追加され、判例と文献がアップデートされた。執筆者(中東正文・福島洋尚・松井秀征・行澤一人)。A5判、388頁。

  • 加美和照編『商法1・2(司法試験シリーズ)』日本評論社(1 会社法:1993年9月・第3版、2 総則・商行為法・有価証券法:1993年10月・第3版)……1の会社法については、旧法のものであるため、注意されたい。B5判、頁・頁。

<演習書:商法・会社法>

  • 石山卓磨『石山教授の新会社法 論文演習』辰已法律研究所 (2007年3月) ……短文の事例問題・一行問題集。初学者向け。会社法の問題33問、商法総則・商行為の問題4問。そこそこの長さがある事例問題は19問。論点の網羅性は比較的高い。参考答案は一通のみ。

  • 酒巻俊雄・尾崎安央編著『新版基本問題セミナー1 会社法』、酒巻俊雄・栗山徳子編著『同2 商法総則・商行為法』成文堂 (いずれも、2005年4月) ……2は、商法総則、商行為法の重要項目を取り上げ、各項目ごとに基本問題、派生問題、および関連問題の三段階に分けて検討を加え、理解を深めることを目的とするセミナー形式の演習書。92年一粒社刊「総則・商行為法」の改題改訂。A5判、516頁・370頁。


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最終更新:2024年12月16日 01:56
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