民法(総則)


【基本書】

〔メジャー〕

  • 佐久間毅『民法の基礎1 総則』有斐閣(2020年4月・第5版)……民法総則の基本書の決定版。司法試験受験生におけるシェアは、圧倒的。ケース・メソッドを用いて、複雑な総則の理論を初学者が正確に理解できるよう、懇切丁寧な説明がされている。それだけにとどまらず、高度な議論も「補論」として取り扱っており、メリハリが利いている。しかし、「基礎」という名がついているものの、初学者が通読するには、情報量が多い。第5版は、2020年4月の民法(債権法)改正の施行にともない、施行後の解説を基本とした全面改訂版。「受験新報」2019年12月号特集「合格者が使った基本書」総則1位。著者の博士論文のテーマは「代理」について。全6章。A5判、488頁。

〔その他〕

  • 四宮和夫・能見善久『民法総則(法律学講座双書)』弘文堂(2018年4月・第9版)……原著者の四宮は我妻門下。オーソドックスな作りの基本書。かなり詳細な議論にわたる箇所もある。外国法との比較など「必須の知識というわけではないが,それを知ることで民法の学習に対する興味が増すような情報」が積極的に盛り込まれている。四宮の逝去後は、弟子の能見によって改訂が重ねられているが、元の記述にも大きく手を加えたため、四宮単独執筆だった頃(学問の香り高き格調ある簡潔な記述、94条2項類推適用の多用、代理における効果帰属・不帰属の用語、独自の時効学説などの特徴的な点)とは、ほとんど別物となっており、分かりやすくなったとも、格調が下がったとも言われ、賛否が分かれている。近年では、原著に一切手を加えない改訂・補訂が主流になっている。第9版において、平成29年の民法改正に対応した。新旧対照表などを用い、現行法と改正民法の関係が把握できるように工夫されている。なお、第9版の第1刷に係る訂正表あり。全2編、全7章。A5判、522頁。

  • 内田貴『民法Ⅰ-1』東京大学出版会(2025年5月予定・第5版)……かつての定番書。改訂内容が期待される。A5版、512頁。

  • ☆潮見佳男・滝沢昌彦・沖野眞已『民法1 総則(有斐閣アルマSpecialized)』有斐閣(2024年3月)……沖野執筆の法律行為は秀逸だが、人によってはやや情報を盛り込みすぎのきらいがあるとも。全4Part、全13章。四六判、440頁。

  • 山田卓生・河内宏・安永正昭・松久三四彦『民法I 総則(有斐閣Sシリーズ)』有斐閣(2018年1月・第4版)……山田は2013年に逝去。第4版において、平成29年の民法改正に対応。本書の叙述は改正法の内容に全面的に依拠して改訂されている(はしがき)。なお、第4版の第1刷に係る補遺あり。序章+全7章。四六判、340頁。

  • 近江幸治『民法講義I 民法総則』成文堂(2018年4月・第7版)……内田以前の定番書。訂正・正誤表。A5版、428頁。

  • 佐久間毅・石田剛・山下純司・原田昌和『民法I 総則(LEGAL QUEST)』有斐閣(2020年3月・第2版補訂版)……第2版補訂版において、成年年齢改正など最新の動きに対応。全12章。A5判、366頁。

  • 小野秀誠・良永和隆・山田創一・中川敏宏・中村肇『新ハイブリッド民法1 民法総則』法律文化社(☆2023年10月・第2版)……『ハイブリッド民法』の2017年民法(債権法)改正対応版。ロー未修コースの教科書として指定されることも多い一冊。序(民法を学ぶにあたって ■民法の体系の概観)+全10章。A5判、362頁。

  • 奥田昌道・安永正昭編『法学講義民法 総則』勁草書房(2018年5月・第3版)……悠々社から出版されていたものの改訂新版。平成29年改正民法(債権法)に対応。全10章。A5判、368頁。

  • 平野裕之『民法総則』日本評論社(2017年9月)……同著者の『民法総則(民法講義シリーズ1)』日本評論社(2011年12月・第3版)を圧縮して改訂したもの。平成29年改正に対応。電子書籍版あり。全9章。A5判、512頁。

  • 平野裕之『コア・テキスト民法I 民法総則』新世社(2017年9月)……A5判、384頁。

  • 山野目章夫『民法概論1 民法総則』有斐閣(2022年3月・第2版)……民法財産編全体を概説するシリーズの第一巻。債権法改正に対応(平成29年民法改正後の条文に基づいた講述となっている)。本文で基本的事項(文献引用なし)、囲みのコラムで発展的事項(文献引用あり)を扱う。ウィットに富んだ山野目節ともいうべき独特の文体は好き嫌いが分かれるかもしれない。第2版において、初版刊行後の法改正(成年年齢、相続関係、特別養子縁組、共有や相隣関係)に対応。条文索引あり。全4巻(物権法、債権総論、債権各論)完結。電子書籍版あり。全12章。A5判、396頁。

  • 中舎寛樹『民法総則(法セミLAW CLASSシリーズ)』日本評論社(2018年6月・第2版)……条文からスタート。丁寧な解釈。民法総則を(1)条文、(2)解釈、(3)発展問題に整理して解説。第2版は、同著者の『債権法』に続き、改正民法に対応。電子書籍版あり。全21章。A5判、536頁。

  • 藤村和夫『新民法基本講義 民法総則』信山社(2018年3月)……全7章。A5変型判、392頁。

  • 石口修『民法総則(民法要論I)』成文堂(2019年4月)……序章+全10章。A5判、502頁。

(平成29年債権法改正未対応)
  • 山本敬三『民法講義I 総則』有斐閣(2011年6月・第3版)……総則の基本書にしてはかなりの厚さだが、図を多用しているため、実際の本文の量は他の本よりやや多い程度。司法試験受験生向けに特化した基本書であり、学説の対立点(論点)の説明が非常に詳しい上、要件事実にも配慮されている。レジュメ調で2色刷のため、読み手にも優しい。錯誤論の整理は特に評価が高いが、法改正には反映されなかった。著者の博論のテーマは公序良俗論電子書籍版あり。全25章。A5判、684頁。

  • 河上正二『民法総則講義(法セミ LAW CLASSシリーズ)』日本評論社(2007年11月)……法セミ連載の単行本化。ローマ法の歴史を踏まえて民法総則を解説する。判例よりも性質論に厚く、示唆に富む。専門分野である消費者契約、約款論の記述に特徴がある。山本に次ぐ厚さだが、山本がレジュメ調に整理しているのに対して、こちらは比較法的な法制史、立法段階での見解など歴史的な学説展開を重視し、説明が重厚。司法試験対策というよりは、ちょっと脇道に外れて民法を楽しみたい人向けの書籍。全11章。A5判、664頁。

  • 石田穣『民法総則(民法大系(1))』信山社(2014年11月)……旧著『民法総則』(悠々社刊)をベースにその後の立法、学説、判例を反映させたのにとどまらず、民法総則上のほぼ全ての問題につき、比較法的考察(フランス法、ドイツ法、スイス法)を行っている(はしがき)。帯に付せられた「歴史に残る重み」というキャッチフレーズはだてではない。文献を網羅しており、調査用に至便。全11章。A5変型判、1216頁。

  • 潮見佳男『民法総則講義』有斐閣(2005年4月)……実際の事案を簡略化したCase、制度・概念を理解するのに適した設例としてのCaseを多用した講義用テキスト。平成16年現代用語化法案に対応。全9編。B5判、508頁。

  • 野村豊弘『民法I 序論・民法総則』有斐閣(2013年3月・第3版)……東大系。シンプル。物足りない感はあるかも。キーワードのまとめがあり、確認に便利。全12章。A5判、292頁。

  • 須永醇『新訂 民法総則要論』勁草書房(2005年12月・第2版)……第2版において、民法の現代語化に対応。序章+全6章。A5判、352頁。

  • 副田隆重・中舎寛樹・山﨑敏彦『新・民法学1 総則』成文堂(2010年3月・第3版補訂)……全7章。A5判、293頁。

  • 藤岡康宏『民法講義I 民法総論』信山社(2015年1月)……全2部、全12章。A5変型判、416頁。

  • 新井誠・岸本雄次郎『民法総則』日本評論社(2015年3月)……全10章。A5判、592頁。

(古典)
  • 四宮和夫『民法総則(法律学講座双書)』弘文堂(1986年9月・第4版〔2014年12月・OD版〕)……通称『四宮旧版』。能見が改訂する直近の版。名著の誉れが高く、現在でも多くの教科書・体系書で引用されている。債権法で平井が我妻説にアンチテーゼを提起したのに対し、四宮はこの本で我妻説を批判し総則での有力説を築いた。淡白な記述で薄いが内容は圧倒的な濃さ。なお、能見が法人法の改正について補訂した第4版補正版については弘文堂でオンデマンド版として現在も入手可能である。オンデマンド版(第4版補正版3刷:1996年4月30日)。A5判、372頁。

  • 於保(おぼ)不二雄『民法総則講義』有信堂(1951年7月、復刻版:1996年11月・新青出版)……A5判、316頁。

  • 川島武宜『民法総則(有斐閣法律学全集)』有斐閣(1965年10月〔2006年4月・OD版〕)……A5判、582頁。同著者による『民法I 総則・物権』有斐閣(1960年6月、OD版:2003年6月、A5判、266頁。)もある。

  • 幾代通『民法総則(現代法律学全集)』青林書院(1984年1月、第2版)……いわゆる「東北大民法三羽烏」の一人。A5判、640頁。

  • 米倉明『民法講義総則(1) 私権・自然人・物』有斐閣(1984年5月、オンデマンド版:2012年12月)……法教連載の単行本化。未完。B5判、396頁。

  • 石田喜久夫『口述 民法総則(口述法律学シリーズ)』成文堂(1998年・第2版)……著者の神戸大学における民法総則の講義を活字によって再現したもの。A5判、424頁。

  • 辻正美『民法総則(法学叢書3)』成文堂(1999年4月)……遺作。著者は執筆半ばにおいて逝去したので、その遺志に基づいて京大学派が補訂して完成させたもの。本質論重視、判例や既存の学説を踏まえつつも鋭い問題指摘。A5判、450頁。


【入門書・概説書】

  • 池田真朗『スタートライン民法総論』日本評論社(☆2024年1月・第4版)……読みやすい記述。基本的には総則の入門書だが、最初に物権や債権等についても概観している。最良の入門書の一つ。第3版は、2020年4月1日施行の新民法に完全対応。電子書籍版あり。全14課。A5判、298頁。

  • 角紀代恵『コンパクト民法I 民法総則・物権法総論(コンパクト 法学ライブラリ 3)』新世社(2018年9月・第2版)……総則・物権法総論のみ。初学者向けを謳ったコンパクトな民法の教科書は多数あるが、その中には(司法試験受験生や実務家向けの)分厚い体系書の内容を単純に要約して字数を減らしただけで、「上級者にとっては当たり前のことであり蛇足だが,初学者にとっては必要な説明」をしっかり書くという配慮が不足しているものも少なくない。しかし本書は、初学者にとっての優先順位を熟慮して内容を大胆に取捨選択し,初学者がまず知るべき事柄に絞ったうえで平易かつ丁寧に説明する、という方針を貫いた良書である。全11章。2色刷。四六判、288頁。

  • 山本敬三監修、香川崇・竹中悟人・山城一真『民法1 総則(有斐閣ストゥディア)』有斐閣(2021年3月)……A5判、320頁。

  • 原田昌和・寺川永・吉永一行『民法総則(日評ベーシック・シリーズ)』日本評論社(2022年2月・第2版)……民法(債権法)改正に対応。第2版において、相続分野や所有者不明土地に関わる民法改正に対応。全9章。A5判、240頁。

  • ☆大島眞一『民法総則の基礎がため』新日本法規(2022年6月)……A5判、162頁。

  • 山野目章夫『民法 総則・物権(有斐閣アルマBasic)』有斐閣(2022年2月・第8版)……第7版において、成人年齢、相続法改正など、近時の法改正に対応するとともに、全体をブラッシュアップ。電子書籍版あり。全2PART、全7章。四六判、282頁。

  • 小賀野晶一『基本講義 民法総則・民法概論』成文堂(2021年1月・第2版)……民法総則における人、物、権利の規律を基礎にし、民法概論(財産法)として、人と人との関係(民法総則、債権法)、人と物との関係(民法総則、物権法)について概観する著作。A5判、336頁。

  • 永田眞三郎・松本恒雄・松岡久和・横山美夏『民法入門・総則——エッセンシャル民法1(有斐閣ブックス)』有斐閣(☆2023年3月・第5版補訂版)……第5版補訂版は、成人年齢引下げ等に対応。全12章。A5判、254頁。

  • 滝沢昌彦『民法がわかる民法総則』弘文堂(☆2023年3月・第5版)……第4版は、2017(平成29)年に成立した民法改正に完全対応。序+全9章。A5判、248頁。

  • 安藤清美『入門民法総則』法学書院(2018年12月・第2版)……全10章。A5判、120頁。

  • 遠藤研一郎『基本テキスト民法総則』中央経済社(2020年6月・第2版)……第2版において、令和2(2020)年4月施行の改正民法に完全準拠。全11章。A5判、324頁。

  • 尾島茂樹『民法総則(ベーシック+)』中央経済社(2018年4月)……全15章。A5判、268頁。

  • 中田邦博・後藤元伸・鹿野菜穂子『新プリメール民法1 民法入門・総則(αブックス)』法律文化社(2020年3月・第2版)……はじめて民法を学ぶ人のために、読みやすさ・わかりやすさを追求したシリーズ第1巻。初版(2018年5月)において、2017年の民法改正対応。第2版は、成年年齢の引下げ、消費者契約法の改正(2018年)を踏まえて改訂。第1章に「民法入門」がおかれている。全10章。A5判、354頁。

  • 田井義信監修、大中有信編『ユーリカ民法1 民法入門・総則』法律文化社(2019年7月)……「ユーリカ」(わかったぞ!)という企画趣旨のもと、複雑な民法体系がどのような仕組みでどのような役割を果たしているのかを具体的に解説したシリーズ第1巻。全27章。A5判、334頁。

  • 後藤巻則・滝沢昌彦・片山直也編『【プロセス講義】 民法I 総則(プロセス講義シリーズ)』信山社(2020年3月)……プロセス講義民法シリーズでは、基本コンセプトとして、①趣旨説明、②基本説明、③展開説明という叙述の3段階化が図られている。意思無能力制度、時効制度をはじめとする平成29年民法(債権法)改正に対応。全16章。A5変型判、340頁。


(平成29年債権法改正未対応)
  • 我妻榮著、幾代通・川井健補訂『民法案内2 民法総則』勁草書房(2009年3月・第2版)……四六判、416頁。

  • 川井健『設例民法学1 民法総則』勁草書房(2012年11月)……A5判、168頁。

  • 河上正二『民法学入門 民法総則講義・序論』日本評論社(2014年4月・第2版補訂版)……全10章+補講。A5判、392頁。

  • 半田正夫『やさしい民法総則』法学書院(2010年9月・第5版)……全11章。A5判、260頁。

  • 椿寿夫『民法総則(有斐閣双書)プリマ・シリーズ』有斐閣(2007年4月・第2版)……全11章。四六判、370頁。

  • 遠藤浩・良永和隆『入門 民法総則』日本評論社(2005年3月・第2版)……2005年4月施行の現代語化等に関わる民法改正に対応。それ以降の法改正には対応していないので、注意が必要である。序章(民法とは)+全10章。四六判、320頁。

  • 橋本恭宏ほか『導入対話による民法講義(総則)(導入対話シリーズ)』不磨書房(2007年3月・第4版)……全24章。A5変型判、352頁。

  • 後藤巻則・山野目章夫『民法総則(新・論点講義シリーズ 4)』弘文堂(2008年4月)……全31講。B5判、232頁。

  • 鳥谷部茂・田村耕一編著『2STEP民法1 総則(ツーステップ民法シリーズ)』信山社(2015年7月)……A5変型判、208頁。


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最終更新:2025年04月21日 14:15
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