ディオレール王国

概要

特徴

魔の森や迷宮の魔物から獲れる魔石を輸出することで経済が成り立っている。
かつて建国のために王家のもとに集い、力を貸し、共に民を守ろうと誓い合った仲間達の末裔が貴族となって国を支えている。そのため貴族が爵位を受ける際には「王は貴族を従え、貴族は民を守る」という盟約が結ばれる。
獣人国及び獣人の人権を認める数少ない国。王国内にも奴隷制度と呼べるものは有るが基本的に金額に応じた期間の奉公であって双方の同意なしには成立しない。ときに犯罪奴隷もいてこちらは強制的なものだが、罪状に応じた期間だけ労働力となり賠償する仕組みになっている。いずれも勝手に捕らえて永久に働かせたり殺したりといった扱いは許されず、きちんと罰せられる。

歴史

本編以前

 王国の貴族とは、迷宮と戦い辺境へ魔を追い詰めし英雄の血族。しかし初代の強さも美しさも持てず、代を重ねるごとに血は薄まり、今では生まれつきスキルを持つ者の方が稀になっている。
 魔石を独占して優位を得たい教国と商国によって常に傀儡化が狙われていたが、歴代の賢王の手腕によって生き残ってきた。そもそも商取引を貴族に任せていることが失策であり、貴族は教国や商国を相手に互いが商品を値引きして販売し、互いに値を吊り上げ合って購入し国家単位の取引を暴落させる。挙句、目先の欲に踊らされて国家の財産と利権を安売りし富を流出させて軍事力すら維持できないまでに王国は落ちぶれてしまった。
 突如として王が病に倒れたことで王国内部の腐敗が加速し、教国と商国の間者が暗躍し始める。二か国はそれぞれ第一王子と第二王子に接触して計画を進めていく。また、腐敗しているためかあるいは王国の国力を削ぎたい二か国の策略かオムイ領の魔石を買い叩き、資金援助を渋り、兵を出すこともなくひたすら苦しめ実質滅亡寸前まで追い込んでいた。辺境が大人しく従っていたからこそ国としての体裁だけ存続していたと言える。そして王家に届く情報はすべて貴族が改竄して提出していたためそれに基づいて対策をしたところで改善するわけがない状態だった。例えば地方の役人が着服してから領主に報告し、領主が着服した後に王国に納税し、それを王国の官僚が着服して国庫に納められる形で税収は半分以下になっていたが、国民は本来の倍近く税金を取られていたので国庫に納められる分には変わっていない状態だった。

本編

 オムイ領が巨大な城塞都市として自立したことで魔石が流通せず王国の経済が立ち行かなくなる。最終勧告として送り出した近衛師団もオムイ領に寝返り、これをオムイ領の反逆と見做して第一王子は辺境平定軍を結成し進軍する。一方で第二王子は王の代わりを務める王弟に暗殺を仕掛けて追い出すことで王都の乗っ取りに成功し、商国との交易で経済を立て直す。
しかし第一王子は辺境軍の前に沈み、王都に馳せ参じた辺境軍と近衛師団がディアルセズ王を回復させたことで第二王子は玉座を返還。中央で腐敗していた貴族は一掃され、地方貴族も第一,第二王子に与した家名は実質取り潰しとなった。加えて祝勝会にて王家に忠誠を誓えない者は炙り出された。その後、「虚真の水鏡」の前で誓いを立て直して虚偽だった者は爵位剥奪かつ過去の行いも査問して明確な罪状をもって今度こそ腐敗は一掃された。粛清された者の大半は処刑され、追放で済んだ者も一切の財産を没収されたのでそのうち野垂れ死ぬ。こうして王国の貴族のうち7割以上がいなくなり、四大侯爵家のうち残るは一つとなり、芋づる式に腐敗した役人なども処罰されたため社会システムは崩壊した。
 一方で、王都で流行している御芝居で情報操作が行われて王家の責任はすべて黒髪の軍師に押し付け、逆に軍師の功績をすべて王家がもらったことで民衆の支持を集められたので王国としての体裁は保てた。貴族であっても何ら罪のない幼児や子女は王家預かりとしてチャンスが与えられるので王国を支えてもらいたい。なお、残った貴族と王家も腐敗を許し民を苦しめた罪として財産の半分を没収して孤児院や学校や病院の建設や再建に充てることになったのでみんな貧乏になっている。
 真祖から王家に託され現在まで継承されたのは王国と王剣、かつての貴族たちが皆で贈ってくれたと伝えられる玉座のみで、そのすべてが崩れ落ち朽ち果てかかっていた事態を遥に救ってもらったことになる。生まれ変わった王剣ディオレールを拝領した時、遥の為に王剣ディオレールを振るおうと、嘗て真祖が戦女神さまの為に立てし誓いすなわち絶対なる忠誠を、王家ではなく一族として誓った。

領地

王都

 周辺には街や村も多く、辺境の貧しさからは想像できない豊かさが見て取れる。まさに異世界生活の理想郷。王都の人口は少なくとも数万人。街並みとして辺境とは石造りという点では共通しているが、建物に様式美が有り統一感すらある。貴族が私利私欲のために規制や税を掛けて流通を殺し、経済を循環させていなかったので金はあっても商品がない状態だった。王都に死蔵されている装備が辺境に回ってきていれば助かった命がどれだけあったことか。このような貴族やその周辺の商人は救いようがないが、一般の都民は辺境の住民と大差ない。
 一般人の他に、貴族の主流派からも貴族街からも追い出された貴族が生活していた。彼らは第二王子にも商国が提示する利権にも靡かず、王国の危機に合わせてわずかな宝飾品や絵画を売り払い、その金で飾り気のない装備を購入した真なる「王の剣」と言える。一件落着してからは貴族街に復帰したと思われる。
王宮
 かつて初代国王が王国を護ると宣言した最前線の砦であり、王族の居城。他国から最も落としやすい立地であると馬鹿にされるが、それでも守りたい王族の矜持のシンボル。
 最上層には王の個室や貴賓室などがある。王宮内部には王族にも忘れ去られた隠し通路が張り巡らされていて、本来厳重に立ち入りが禁止されている最上層も易々と侵入できる。
 宝物庫には国宝級の武器や装備、魔道具が納められていて解錠用の玉璽がないと開かないようにつくりになっている。

王国軍
 総勢10万の兵力と謳っているが、そのうち正規軍は王族軍3万,貴族軍2万の合わせて5万程度であり、残りの内訳は文官や門番や衛兵が2万,徴兵された村人や傭兵が3万となっている。正規軍のなかでは総勢2500人の辺境軍,総勢1000人以上の近衛騎士団,それに次いで第1師団が強い。また第1師団は国境警備,第2師団は王都防衛,第3師団は重装歩兵*1,第4師団は工兵や補給の役割を担っている。
 第3師団は第1王子につき盗賊まがいの悪さをしていたので粛清され、再編成された。普段は第1師団と第2師団とともに王都と国境の警備についている。
 辺境軍はその志ゆえに多くが上級貴族であり、近衛師団は王宮警護の任があるため貴族筋のものが多く爵位持ちもいる。第一師団もそれに次いで多く貴族筋の者が在籍している。

貴族街

 王族と貴族は互いの居住区に不可侵の約定を結んでいることと現状に異を唱える者は追い出されることで腐敗が進み、商国に支配されている区画。貧民街の住民が働く商業区がある。

貧民街

 貴族街の一部。王都の街並みとはうって変わって木造の建物が並び、奥に行くほどみすぼらしくなっていく。貧民街の住民は貴族街の外に出ることもできないので商業区で奴隷のようにこき使われるしかない。都民が貧民街に向けて贈る物資は横領されていて実質的に誰も手出しができなかった。特に孤児院は王族が出す寄付をもとに運営されているはずだったが、貴族が寄付金を着服し孤児達は見捨てられていた。そのため建物には隙間風が吹き込み、みんなで朝から晩まで働きに出ても大してもらえない給料をかき集めて食費を捻出していた。病気が蔓延し、まともに食事もとれず体力がない孤児達は痩せ細って死にかけていた。
 ……ところが一転、黒マントの少年によって街並みは神社仏閣もかくやという木造建築に建て替えられ、食に困ることもなくなった。また住民には「貧民の指輪」が配られ、それを持たない招かれざる客は幻覚に陥いり罠に嵌められる。特に孤児院は平等院鳳凰堂をイメージした外装となり『御土産屋 孤児院支店 みたいな? 感じ?』のネオン看板も掲げて孤児達の新たな職場かつ都民と交流できる場になった。貴族街を侵食するように増築が進められ、王都中から移住希望者が殺到しているので元々の王都街に代わる一級住宅地となっている。
 再現された和風の景観として鹿苑寺,清水寺,銀閣寺,上下賀茂神社,二条城,竹林の小径,五重塔,渡月橋,伏見稲荷大社,鳥居通り,京都御所,平安神宮,南禅寺,水路閣,哲学の道,八坂神社,西芳寺,仁和寺,晴明神社,狸谷山不動院,大雲院,蓮華王院の三十三間堂,東大寺,興福寺,出雲大社,厳島神社,高桐院,仁王像,羅漢像,弁財天像など。

孤児院
 手前側は平等院鳳凰堂の外見をしていて、その奥は普通に木造2階建ての広々とした施設となっている。明確には不明だが、孤児っ子40名以上と遥達30名以上が生活していても不自由ない広さは確保されていると思われる。

カスギール領

 カスギール大侯爵家が治める、西の領地。
 外国と国境を持たない地でありながら王国有数の商業都市として栄えてきた。しかし近年のカスギール家には娘がなく、南のロンダヌール家が商国と手を結び血筋の第二王子を擁立したときそのまま商国に国内の商業を乗っ取られて勢いを落としていた。教国の侵略に際して王弟ムスジクスから届いた出兵依頼を断りつつあくまで傍観していたためひとまず取り潰しは免れた。
 このまま王家が実権を取り戻せばただ傍観していた貴族は力を削がれると懸念して祝勝会にて王女シャリセレスや辺境姫メリエール, 黒髪の美姫を魅了しようとし、それがバレて取り潰しとなった。この作戦は後継ぎである双子が悪事と色事だけは一人前であることに全幅の信頼を置いたもので、使用人などを抱え込んであの手この手を用意した手腕は確かと言えるが黒髪の軍師には敵わなかった。
 互いに鎧を纏うことが禁じられる決闘に特化して、独特な低い構えから半身で剣を突き出す特殊な剣技が伝えられている。


シュコバサス領

 シュコバサス大侯爵家が治める、北の領地。
 武骨にして武門一辺倒の一族。
 腐敗した貴族達の策略で雁字搦めにされ、辺境からも王都からも巧妙に引き離されて動きを封じられていたため四大侯爵家では最下位だった。
 当主が病に臥せていて代わりに一人娘が第1師団々長として活躍している。教国の侵略に際して王弟ムスジクスから届いた出兵依頼を断ったものの、上記の通り事情もあれば大侯爵家のなかで唯一国のために貢献したと言えるのでカスギール家を抑えて王国最高位の貴族となった。そのカスギール家を含め四大侯爵家の他三つは取り潰しとなり、祝勝会において当主が全快したので王家に次いで力を持ちすぎている状態ではある。

ギエスダット領

 ギエスダット大侯爵家が治める、東の領地。
 血筋である第一王子を擁立し、教国と繋がって王国を手中に収めようとしたが計画は失敗し、取り潰しとなった。

+ 東の領地=シュコバサス領と思わしき記述
大侯爵領としては腐敗も少なく、最も辺境に近いので街道ができたことで隆盛を極めている。
第一師団には出身者が多く、影響力が大きい。

ロンダヌール領

 ロングヌール大侯爵家が治める、南の領地。
 血筋である第二王子を擁立し、商国と繋がって王国を手中に収めようとしたが計画は失敗し、取り潰しとなった。

ナローギ領

 元々は魔物と戦い続ける辺境軍の物資補充のためにつくられた。しかし、いつからか王国から辺境軍に送られる物資を着服するようになり、かつ辺境から齎される魔石の上前を撥ねて発展した。領主の住まいが城であることや領主がぶよぶよの体をしていることからもその裕福さが窺える。
 辺境が鎖国したあと、黒マントの少年の指示によって街や近隣の町村の物資が買い占められ、遠方との流通も妨害されたことで経済が破綻した。住民は辺境に保護されて仕事が与えられ、役人や兵隊は逃げ出した。その後の情報はないが領主一族は取り潰しになったと思われる。

オムイ領

 王国の端にある立地から辺境と呼ばれることも多い。
 詳細はオムイ領のページを参照。
最終更新:2025年04月24日 11:01

*1 専用の装備は「突撃」の威力を上げる効果がある。