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亮×千草2

795 :名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 03:36:32 ID:xHa9ioDc

2010年/横浜・みなとみらい21。
あの日、俺達は光を求めた―――――――――――。







「こっちも開かない……」

閉じ込められてから、どれくらいの時間が経ったのだろう。
あれだけ大勢いた大人達とも、はぐれてしまった。
今居る場所もいつ火の手が回るか分からない……焦げ臭い匂いが、少しずつ近づいてくるのが分かる。
どうしようもない恐怖感と焦りが、自分自身を追い詰めていく感覚に、思わず震えた。

「ぐすっ……えぇぅ……!」
「泣くなよ。俺だって泣きたい」

10歳の子供に何が出来るって言うのか。
しかも、家族とはぐれたっぽい余計なオマケまでいる。
いつの間にか、この場所に取り残されたのは俺と泣きじゃくる女の子だけになっていた。
他の場所に移動しようにも、施設の中は真っ暗で非常用電源すら消えてる始末。闇雲に動くのは返ってマズイ。
携帯で連絡しようにも電話もメールも使用不能になってて、まさに万事休すって感じだった。

「俺が言うのもなんだけど……お前、ドン臭いな。大人達に付いて行きゃ助かったかもしれないのに」
「だって……急に暗くなったから……ひっく……それに、音が聞こえたから……」
「音? 非常ベルなら聞き飽きたよ」
「違う、もっと、別の音……ピアノの鍵盤、押したみたいな……」
「そりゃ幻聴だ。お前、パニくってたんだろ」

映画を見ていたら、突然スクリーンに妙なものが映ったのは覚えてる。
何だったのかまでは一瞬で判別できなかったけど、いきなり停電したのにはビビった。
非常ベルが鳴り響く中、何かヤバイと思って逃げてたら、いつの間にかコイツと2人きり。
最悪の1日だ……パパもママも、俺がこんなことになってるなんて夢にも思わないだろうな。

「映画、お前も見てたのか」
「親戚の家族と、一緒に……でも、はぐれちゃった……」
「こういう時、子供ってのは無力って相場が決まってんだ。
 こう暗くっちゃ何処をどう歩きゃいいのかも分かんねぇし」
「私達、死んじゃう、の?」
「死んでたまるか」

俺には将来やりたいことなんてない。でも今、こんな理不尽なカタチで死ぬなんてゴメンだ。
こういう時こそ、人間って足掻くもんなんじゃないだろうか。
この子だって、ここで死にたくなんかないはずだろうし。

「お前の名前、教えろよ」
「えっ……?」
「だって、いつまでも“お前”じゃイヤだろ?」
「私、あのね、私の名前―――――――――――――――――」



悪夢はいつもここで終わる。
あの子の名前、結局なんだったんだろうな。
聞いた気はするけど……思い出せねぇ……。



796 :名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 03:38:37 ID:xHa9ioDc

「(……久々に見た)」

よぉ、俺だ。
夢見が悪いってのは、まさに今みたいなのを言うんだろうな。
何年かぶりに嫌な夢……見ちまった。
俺がまだ小学生の頃、横浜で起きた第二次ネットワーククライシスに巻き込まれた時の夢だ。
あの時、俺、どうやって助かったんだっけか……それに一緒に居たあの子も……。
7年前のことだってのに、記憶に靄が掛かったみたいに不鮮明でよく思い出せない。
よっぽど恐かったんだろうか? 子供の頃の記憶なんてそんなもんなのかもしれねぇし……。

「さみっ。今日は冷えるな」

誰が言ったか知らないが、1人暮らしをすると独り言が多くなるらしい。
無論、俺は違う。ちゃんと不定期ながら両親はこの家に帰ってくるから、厳密に言うと1人暮らしじゃねーわな。
1人で居る時間が多いってのは否定しねぇけど……。
12月も下旬、もうすぐ新年のせいか部屋の中の気温は10℃程しかない。だがニュース曰く、今年は暖冬傾向らしい。
さーて、いつまでも寝てるワケにも行かねぇな。
そんなことを呟きながら身体に噛み付いてくる寒さを払いつつ洗面所へと向かう。





「千草……メールきてたのか」

顔洗いを済ませて、適当に焼いたトーストを齧りながら携帯をいじる。
いつもなら、ご飯と味噌汁なんだが生憎と昨日どっちも切らしてしまった。
千草の奴も朝は和食派なんだよな……あいつが泊まりに来てくれりゃ、飯には不自由しねぇんだけど。
んで、俺が寝てる間に千草からメールが着てた。時間は朝7時くらいか、折角の冬休みくらい寝てりゃいいのに。
内容は他愛なもんだ、朝の挨拶から始まって、年末の予定とか諸々。
あと千葉から俺の住んでる東京まで、あいつはよく飯作りに来る。だから次は何食べたいか、とかそんな内容だ。
けど何故か今日は、メールだけで済ませようって気分じゃなかった。

「よぉ。千草」
『りょ、亮クン? あの、どうしたんです? 《The World》じゃなくて携帯の方に連絡くださるなんて……』
「何つーか、千草の声……聞きたくなったから」
『えぇっ? あ、あのぅ……』
「今日、会えないか」
『きょ、今日!? 今からですか?』

一応、クリスマスと年末は一緒に過ごそうって約束はしてる。
でも今日は何か、無性にアイツに会いたかった。
《The World》のアトリじゃなくて、リアルの日下千草に会いたい。
でなきゃ、ゲームにログインしてショートメールで呼び出してるさ。
けどそれじゃ、なんか物足りねぇ。今日はそういう気分なんだ。



797 :名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 03:40:43 ID:xHa9ioDc

千葉から東京までそう遠くはない。
だから千草も小遣いの許す範囲で週何回か東京まで来れる。
あいつの親も俺んちの親同様、子供に対してはやや放任主義らしいし、金には不自由してなさそうだ。
ただし、千草の服装とかに関する躾は厳しいらしいけど。

「お、お待たせしました!」
「ん」

第三次ネットワーククライシスを回避して以降、俺達はリアルでちょくちょく会ってる。
つか、ぶっちゃけ付き合ってる。知らない間に、いつの間にかお互い好きになってたって言うんだろうか。
ゲームで知り合ってリアルでオフ会、とかよく聞くしゲームで結婚式挙げちまう奴だって珍しくない。
けど、俺達みたいにゲームで結婚式まで挙げてリアルでも付き合ってる奴らはそう居ないんじゃないだろうか。

「寒くなかったか」
「厚着してますから大丈夫ですよ」
「まぁ、千草は風邪ひきそうにねぇからな」
「うぅ。遠まわしに馬鹿にされた気がします……」

最近は千草の拗ねた顔を見るのが好きになった。
少し膨れっ面になって、顔を赤くする姿が堪らない。
が、同時に「俺ってこういうキャラだっけか?」と自己嫌悪になるので、諸刃の剣とも言えなくもねぇけど。
消房かっての。

「えっと……亮クン。それで、今日は……?」
「いや、特になんも考えてねぇ。最初は千草の声聞きたかっただけだし、ついでに会いたくなっただけ」
「ちょっ、出前じゃないんですから!」
「怒んなよ。わざわざ千葉から呼んだんだ、損はさせねぇ」

たまには《The World》とか抜きで千草とゆっくりしたいんだ。
俺はアトリのことならある程度知ったつもりでいる。でも千草のことは、まだ全然知らないって言っていい。
俺達、付き合ってんなら……お互いのこと、もっとよく知る必要もあるんじゃないかって、そう思ったから。

「千草に会いたかったから」
「そ、そうですか……」

呼び出された理由を聞いて、やや呆れ気味だった千草がやっと押し黙る。
俺がお前に会いたいって思った様に、お前だって毎日俺にメールよこしてたくらいだから
多少は会いたかったんだろ、俺に。ならいいじゃん。
クリスマスや年末にゃちょっと早ぇけど、それでも会いたかったんだしさ。

「……私、千葉じゃなくて東京に住んでれば良かったですね。 そうすれば、もっと亮クンの側に居られるのに」
「大学入ったら、こっちに越せよ。どうせなら一緒の大学、行ってみるか?」
「あはは……私の偏差値じゃ一緒はちょっと厳しいかも、です」
「(同じ大学は無理か……)」

まだあと2年あるんだし頑張ればそこそこイイ線いくと思うんだけどな。
千草は確かに電波なとこあるけど頭が悪いってワケじゃねぇし、むしろ頭の回転は速い方だ。
……って、俺、さっきから肯定的な意見ばっかだな。恋は盲目ってこういうコトかもしれん。
気をつけねーと。

「とりあえず歩くか」
「あ、はい」

俺が差し出した手を千草が取って、繋いだまま2人して歩き出す。
どちらの体温も寒さのせいで屋内にいる時よりも下がってるってのに、
手ェ繋いだだけでそんなの気にならなくなるのは何でだろうな。
少し前の俺なら人前で手繋ぐなんて絶対やろうとしなかった……人間、何が切っ掛けで変わるか分かんねぇもんだ。



798 :名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 03:42:48 ID:xHa9ioDc

「平和ですよね」
「何だよ、いきなり」
「だって私達がもしクビアに負けていたら今頃……」
「原発のメルトダウンで人類絶滅ってか」

ゴジラVSデストロイアみたいなことになってたかもしれねぇ、ってことか。
確かに千草の言う通り、こんな悠長に街中歩いてる場合じゃなくなってただろうな。
再誕の影響でまだネット関連で不便なケースも残ってるし。
でも、だからこそ俺達が守ったんだって実感も沸くんじゃねぇか?

「千草は誰かに褒めてほしかったのか?」
「えっ?」
「私達が世界を救いました、って言っても誰も信じねぇのがオチだぞ」
「うーん……そういうんじゃないんですけど」
「?」

何だ、違うのか?
人間誰だって差異はあるだろうけどヒーロー願望はあるもんだ。
《The World》やってる奴の中には特にそういう奴、多そうだし。

「あのですね。私じゃなくて、亮クンのことです」
「俺?」
「亮クンはあれだけのことをやってのけたのに、その、いつもと同じだなぁ、って」
「仕方ねぇだろ、俺の目的は最初から志乃を助けることだったんだ。世界を救ったのはなりゆきってか、そんな感じだな」
「はぁー。やっぱり私が神経質すぎるのかなぁ……」

碑文使いとは言え、俺達も結局は一介のプレイヤーに過ぎない。
さすがに7年前のドットハッカーズみたいに祭り上げられるのはゴメンだった。
今はただ他の連中と楽しく馬鹿やってられれば、それだけで満足なんだし。
志乃も揺光も他の未帰還者達もリアル戻ってこれた……1人、戻って来れてねぇ奴もいるけど。
それでも、俺はこの結果に満足してる。俺達が歩んできた1年が決して無駄じゃねぇって、思いたいから。

「それに」
「はい?」
「……世界救えなかったら、千草と一緒に歩けなかっただろ」
「……」
「オイ。何で黙んだよ」
「亮クンって……ハセヲさんの時と違って……あ、やっぱりいいです。すいません」

何だ、何だ、何が言いたいんだ?
そりゃ確かに俺はネット弁慶かもしれねぇけど、《The World》はロールが基本だろ?
ハセヲがロールだったら、お前だってアトリの時の電波はロールってことになるぞ。
俺だって年中怒鳴り散らしたりしてるワケじゃねーんだからさ。

「でも亮クンの言う通りだと思います。
 私も、亮クン達と出会わなければきっと、このまま世界が滅んでもいいかな、とか思ってたかもしれませんし」
「お、お前、終末思想でもあるのか?」
「いえ、ですから。実際、自分達の手で救うことで実感するってことです。生きてて良かったって」

まぁ、な。
未帰還者を救えても世界そのものが滅んじゃ話になんねーし。
そう思うとやった価値はやっぱあるんだなって俺も思うよ、千草。
お前の場合は生きてて辛いこともあるかもしれねぇけど、それでも俺は千草が生きてて良かったと思う。
……アレだ、お前の作る飯は美味いからな。



799 :名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 03:45:34 ID:xHa9ioDc

「救いは一歩踏み出すことだ。もう一歩、そしてこの同じ一歩を繰り返すことだ」
「あ、それって……」
「千草はサン・テグジュペリの言葉、好きだったろ」
「覚えててくれたんですか?」

とりあえず著書は何冊か読んだ。
今のは「城壁」の一節、他に読んだのは「夜間飛行」、「戦う操縦士」、「星の王子さま」。
古典文学ってのも読んでみると面白いもんだ、現代っ子ってのは活字離れしてるって言うけどそうでもねぇ。
なつめみたいに絵本作家目指してるような奴も身近にいたのも影響してるけどな。

「死の恐怖だった頃の俺は誰の手も借りずに突っ走ってた。
 俺1人でも志乃を助けるんだって勝手に思い込んで……けど、データドレインされて
 シラバスやガスパー達に……アトリに出会って、ちょっとずつだけど……変われた気がする」
「私、最初の頃は亮クンを怒らせてばかりでしたけど……」
「あの時は……な。立ち止まれ、なんて言われて頭に血ィ上ってた。
 立ち止まってる暇なんてない、走り続けねぇと、って。けどそうじゃない。
 俺はいつまでも同じ場所をグルグル回ってただけで……立ち止まるのが恐かったのかもな。
 立ち止まって、深呼吸して、違う方向を見つめてたら……もっと早く追いつけてたのかもしれないのに」

オーヴァン、俺はアンタに追いつきたかった。
けど世の中にはどうにもならねぇことがあるんだよな、やっぱ。
アンタはいつも俺や志乃を置いてけぼりにして先に行っちまう。
いつも置いていかれる側の気持ち、考えたことあるか?
俺は考えたぞ。考えたから、走るのを止めたんだ。
歩くような速さでも辿り着ける場所なんて、いくらでもあるって気づけたからな。
なぁ、オーヴァン。アンタは、それに気づいてたのに1人で突っ走ってたんじゃないのか。
なぁ……。

「……亮クン?」
「何でもねぇ。年末が近いとな、色々思い出しちまうだけだ」
「クリスマスに大晦日、すぐにお正月ですからね」
「デパートとかは今が一番の稼ぎ時だろうからな。
 今年はネットワーククライシスの影響で打撃受けたとことかも多そうだし」

企業が集中してる東京は特に再誕の影響を強く受けてる。
俺が7年前に遭遇した第二次ネットワーククライシスの時よりも深刻なレベルで、な。
まさか皆、ゲームの影響であんなことが起きたなんて思っちゃいねぇだろう。
俺だって事件に関係してなきゃ、まず信じてねぇし。

「ついでだ。百貨店で何か買ってくか?」
「今日って……やっぱり、最終的には亮クンのおうちに……ですか?」
「いや、お前が来たくなけりゃ飯食った後に解散でもいいけど……」
「……いえ、今日は泊まります」
「そっか」

聞けば千草の両親も俺のとこと同様に年末は忙しいらしく、家にいないとのこと。
暇つぶしに《The World》やるか、文鳥3羽の世話するか……お前もお前で寂しい生活送ってんのな。
俺が言えた義理じゃねぇけど。

「亮クンの食生活くらいは、私でも何とかできるって証明したいですから」
「頼もしいもんだな。アトリの時みたいに空回りしねぇことを祈るぜ」
「そ、そういう亮クンだって……この前、私が包丁で手を切った後……」
「ここでそーいうコト思い出すなよ」

あれは俺が思い出しても恥ずい。千草を宥めようとして、何か臭い台詞連発したのは覚えてんだけど……。



800 :名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 03:48:15 ID:xHa9ioDc

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「お前の作る飯が美味いのは認めるけど、また牛丼は勘弁だからな」
「でも私、野菜苦手で……」
「牛肉と玉ねぎなら牛丼以外にも色々作れるだろ。肉じゃがとかシチューとか(てかコレ、前にも言ったぞ)」
「あ、そうですよね。盲点でした」
「……」

や、可愛いんだけどな。

「やっぱり朝の食事も大切だと思うけど、夜の食事も大切だと思うんです。
 剣のサーヴァントも『晩御飯はまだですか?』って、よく質問してますしね」
「どこのセイバーだそれ」

中の人なんていない。

「……あの、亮クン」
「どしたよ」
「志乃さんとは、会ってるんですか?」
「退院した後、何度か会った。最近は会ってねぇ。
 志乃も志乃で大学の留年決まって、単位取るのに忙しいだろうしな。今はちょうど後期試験の真っ最中らしいし」
「はぁ。大学生って大変なんですね……」
「何だ。妬いてんのか?」
「ちっ、違っ……まぁ、当たらずとも遠からずと言いますか……」

お前は会った頃から志乃に対して対抗意識燃やしてたもんなぁ。
つか、千草。お前は俺が二股できるような器用な奴に見えるのかと小一時間。
志乃にはとっくにフラれたよ。今はただのお友達。
俺自身がそれで満足してんだ……俺は志乃じゃなく千草を選んだから、これが結果。

「前に好きな女が居た男は、信じられないってか」
「そんなことは絶対ないです」
「けど、お前いつも……」
「だって、人を好きになるのって……とっても素敵なことじゃないですか」

俺がお前を、好きになったみたいにか?

「亮クンが本当に何に関しても無関心な人なら、誰も好きになんかならないですよね?
 でも亮クンは志乃さんが好きだったから……志乃さんを助けたいって思ったから、あんなに頑張れた。
 それってすごいことだって、私は思います。だから亮クンが志乃さんを好きだったこと、私は否定しません」
「……」
「人が人を好きになるのは、とても自然なことだから。
 ですから、いちいちそんなコトに怒ってたらキリがないんです」
「お前……オトナだな」
「私もこの1年で……亮クンと一緒に居て、色々と考えさせられましたから。
 自分のことばかりじゃなくて、相手のこと、しっかりと見なきゃって。
 一方通行じゃダメって、気づけました……だから亮クンが私のこと見てくれてるように、私も見てます。ね?」

変わったな、千草。もうアトリの時に纏ってた陰は微塵も感じねぇ。
けど、ハセヲは変われたけど三崎亮は変われたんだろうか……って、千草と一緒に歩いてる時点で……分かりきってるのにな。

884 :名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 00:31:35 ID:SNXjEdGx

「お前は野菜嫌い、直した方がいいな」
「えっ?」
「今時BLTサンド注文する時にレタス抜き頼む奴ってそういねーぞ」
「うぅ……努力します」

申し訳なさそうにBLTサンド(レタス抜きだからBTサンドか?)に
パクつく千草を半ばあきれつつ、俺もBLTサンドに食らいつく。
カリカリのベーコンとパン、そしてレタスのシャッキリした歯応えが丁度いい按配で結構美味い。
人の好みってのは分からないもので、世の中にはレタスみたいに匂いも味もないような野菜まで嫌いな奴もいるそうだ。
チャーハンに入れると美味いのにな。まぁ、千草の場合は野菜のほぼ全般に当てはまりそうな気もするけど。

「亮クンってこういうお店とかにも、よく来るんですか?」
「たまにな。ここの喫茶店は気に入ってんだ」
「ふぅん」
「俺だって静かに考え事した時くらいあんだよ」

どっちかっつーとファーストフード店とかよりは個人経営の喫茶店とかの方が好きだな。
DQNとかとの遭遇率も低いし、静かにこういうの食えたりコーヒー飲めるし。
ネット喫茶全盛期の今じゃ、こういう店の存在は貴重だったりすんだ。
わざわざ千草を千葉から呼んだんだ、たまには俺のお気に入りの店に連れてってやるのも悪くねぇ。
……彼女だし。

「千草は月の樹の連中とは会ったりしてないのか」
「七枝会の幹部クラスの方々はオフ会とかやってるかもしれませんね。
 でも私は、どなたともリアルで会ったことないんです」
「へぇ……でも俺とは会ってるじゃん」
「ハ、ハセ……亮クンとは、その、お付き合いしてますから。あ、会うのは当然だと思います!」
「(何故そこで声高になる……)」

何つーか、あるよな。
ネットで仲良くなった男女がリアルでいざ会ってみるとゲームの時とのギャップに絶望した!
なんて話。《The World》については1200万人もプレイしてんだ、ネタにゃ事欠かねぇだろうよ。
幸いにもアトリの場合、と言うよりも千草は俺の許容範囲だったワケだが。

「月の樹って言えばよ」
「はい?」
「ずっと前、お前らのギルドと同じようなコトしてる連中いたんだよな……。
 不正チートPCとか、鉄アレイみたいなモンスター操る呪紋使い追っかけたりしてた、自治厨みたいな連中……」
「えと……それって、もしかして紅衣の騎士団ですか?」
「あーそんな感じの名前だったかも」
「私も詳しくは知らないんですけど、R:1時代に
 そういう名前のボランティア団体が存在していた、っていう話は聞いてます。
 でも、亮クンって《The World》始めたの、R:2からですよね……? どうして紅衣の騎士団のことを?」
「あ、あぁ……多分、BBSか何かで見て覚えてたんだろ」

何か、最近の俺は変だ。
俺の記憶であって、そうでないよう記憶を極たまに思い出すことがある。
それも《The World》を始めてからここ1年ばかりで急に、だ。
……ゲームのやり過ぎで疲れてるとか、ストレスとかが原因かもな。

「あの、ですね」
「? 何だよ」
「私、同世代の男の人とこういう喫茶店とかに入るの、初めてなんです」
「俺も女と入るのは初めてなワケだが」
「ですから……こういう時くらいは、ゲームのお話から離れて……
 も、もっと普通のお話をするべきと言いますか、何と言いますか……」



885 :名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 00:33:45 ID:SNXjEdGx

けど俺らの場合、出会いの場がネトゲだからな……。
話もネトゲ関連に帰結しちまわね?
千草がもっと普通の話したいなら俺も合わせるけどよ、俺だってこういう時に
どんな話すればいいのか分かってるってワケでもねぇんだぞ。

「た、例えばですね。亮クンは私以外の女の子のこと、どう思ってるのかな……とか」 
「結局はゲームの話じゃねーか」
「ですけど、やっぱり、か、彼女としては気になります!」
「お前は俺がお前以外の女と、二股三股できる器用な奴に見えるんだな」
「見えます」
「(俺ってもしかして全然信用されてない……?)」

千草はいじめとかに遭ってた経験上、そういう人間関係とかにも過敏なんだろーな。
俺としても身の潔白を証明したいもんだ、誤解されたままじゃ気分悪ぃし。
今後の千草との関係にも支障をきたさない保障はどこにもねぇからなぁ。
にしても可愛い顔して結構エグいこと聞いてくるな、コイツ。今夜あたり、おしおきしてやらねーと。

「わーったよ。最初は誰だ?」
「じゃ、じゃあ……揺光さんから」
「揺光なぁ……」

千草も千草でやや後ろめたいのか、いちいち口を開く度に上手く言葉が声に出せていない。
やっぱいざ付き合うとなると、男の心情とか知っておきたいんだろうか。
まー彼氏の携帯の記録アドとか着信メールチェックしてるような女は世の中にわんさといるしな。
千草はそういうことせずに直接聞いてくるだけマシってもんだ。

「友達以上、ってのは認めるぜ。
 まぁ……アイツも俺に少なからず好意持ってくれてたみたいだし……」
「うぅ」
「馬鹿、泣くな。お前を選んだ時点でそれ以上の進展はねぇよ、友達だって友達」
「し、信じますからね……!?」

表面上はアトリと揺光、仲良くやってるみたいだけど、水面下は火花散らせてんのか……?
一緒にクエストやってた頃は揺光の奴、アトリを俺の彼女と勘違いしてたしな。
男の俺にゃ分かねぇようなこと、女同士で競い合ったりしてるんだろうか。
そういやBTFのパート2でもドクが宇宙の永遠の謎は女だ、って言ってたっけか。
今になって俺にも意味が分かってきたぜ、ドク。

「ほい次」
「次は……カールさん、です」
「カール……カール、カール……ぶっちゃけ好みだった、かな」
「ちょっ!?」
「だから、だったって言ってるだろうが。過去形に気づけ、過去形に」

いつもポーカーフェイスで何考えてんのかサッパリ読めねぇし、
「おばあちゃんが言っていた」だの「私は○○においても頂点に立つ女だ」とか
意味不明なこと言ってるし、俺だってあんなのの何処が好みだったのか全然分かんねぇってのが本音だ。
けど、たまに見せてた真剣な表情とか寂しげな横顔見てると
「コイツの傍に居てやりたい」って思わせる何かを感じたのも事実だったりする。
つか、揺光の紹介で出会う以前に、カールとはどっかで会ってた気もすんだよな……まさかな?

「た、確かにカールさんは私より頭も良いし、背も高いし、髪も長いし、揺光さん程じゃないけど
 胸も結構大きくて、すらっとしてて、強くて、元宮皇ですけどっ! 今は私が亮クンの彼女ですからね!?」
「無駄な心配しなくていいから、もうちょい声抑えろ」
「(あぅっ、す、すいません)」
「(俺達以外にも客が居んだからよ……)」



886 :名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 00:36:06 ID:SNXjEdGx

ヒートアップすると周りが見えなくなるのはネットでもリアルでも同じか。
千草の素がこれなんだろうな、いじめのせいでちょい性格暗くなって電波になったってだけで。
俺が他の女にちょっかい出してないか気にしてるあたり、可愛いもんだ。

「俺だって一緒に居て面白い奴が彼女なら、退屈しねぇしな」
「わ、私、つまんない子ですか?」
「だから、無駄な心配すんなっての。飽くまで好みだった、ってだけじゃねぇか」
「う~~~。でも、カールさんって平気でタウンの中とかでハセヲさんに抱きついてるじゃないですか」
「ありゃアイツなりのスキンシップみたいなもんだ、じゃれてるだけだって」
「カールさん、ハセヲさん以外の男性PCにはキツいですよね? 特にクーンさん……」
「や、そこまでは俺も知らねぇけど……とにかくカールとはそれくらいだから、お前は堂々と胸張ってりゃいいんだよ」
「胸……私よりもカールさんの方がおっきい……」

しまった、千草に胸の話題は禁句だったか。
早急に次の話題に変えねぇと……残ってる女はパイと楓とボルドーとタビー……ダメだ、どいつも胸がでけぇ。
いや、朔がいるじゃねぇか。って、小学生と比較されちゃ千草のプライドもズタズタか。
なおかつ志乃の話題なんか出してみろ、「まだ志乃さんに未練があるんですね……?」とか言いながら
何してくるか分かんねぇからな、コイツの場合。どうしたもんか。

「お前さ、前にメールした時に俺にふさわしい女になるって言ったよな?」
「えっ……は、はい。言いました、けど……」
「つまんねーことにばっか気ぃ取られすぎ。
 お前、他の女と自分比較して量りにかけてね? 無理にんなコトする必要なんかねぇっつの。
 俺は……だな。千草には千草らしくいてほしいつぅか、何つーか……いつものお前が好きなんだよ」

げぇっ。我ながら最高に恥ずくて臭い台詞だ。
今時の厨房向けのラノベの主人公だってこんな台詞、滅多に吐かねぇぞ。
やべぇ、言わなきゃよかった。言った瞬間に自分で言った台詞で鳥肌立ったぜ。

「亮クン……そ、そうですよね! 亮クンの言う通り……これじゃ私、前のマイナス思考な私に逆戻りですよね!
 な、何でだろ、やっぱり亮クンの言ってたみたいに、年末だから色んなコト思い出しちゃったのかな……アハハ」
「(い、今ので納得できるプラス思考にも問題があるような気もするけどな……)」

そんなこんなで俺と千草のランチタイムは終了。
今日は俺のおごりってことで先に千草を外に出してマスターに勘定を頼むと
『俺の店をお気に入りだなんて、うれしいこと言ってくれるじゃないの』
っぽい視線を送られた気もするが、多分気のせいだ。ここのマスター、いつも無表情でカップ磨いてるし……。

「待たせたな」
「いえ。でもお肉とか冷蔵庫に入れた方がいいと思いますから、早めに亮クンのお家に……」
「ん」

そっか、そういや今日は千草、泊まるんだったな。
やけに駅に着いた時から荷物が多いと思ったら着替えか……。

「……えっと」
「?」
「(今日は……亮クン、したいですか……?)」
「(……)」

このクソ寒い日に、顔を少し赤くしながらコイツは耳元でこんなコトを言う。
小声とは言え、人通りの多い街中で「うん、ヤリたい」なんて言えるワケがない。
だから返事をする代わりに繋いだ手をギュッと握って返答する。
すると千草は少し照れくさそうに、手を握り返してきて笑うんだ。……その笑顔は反則だろうよ。



887 :名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 00:38:09 ID:SNXjEdGx

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『イヤだぁ~っ!』
『ママァ~~ッ!!!』
『牛丼にしてやりてぇっ!』
『まずその太った青ダヌキから……!』
『ボ、ボクはタヌキじゃない! ロボットだから硬くて噛めない、美味しくないんだ!』

さすがにいつも牛丼じゃ飽きるんで今夜はシチューってことになった。
俺も手伝おうかって一応は言ってみたんだが、千草は全部一人でやりたいらしい。
いつも同様に自前のエプロン着込んで、気分は新婚の若奥様みたいになってやがる。
で、台所から締め出されて暇を持て余してる俺は29年も前の映画見てるってワケだ。
つーか剛田、こんな時に牛丼とか言うな。

『おやめなさい! 牛魔王!』
『観世音菩薩さま……』
『助けに来たわよ、お兄ちゃん!』
『ドラミ! 派手なタイムマシ――――――――――――――――――プツン』

台所からシチューの匂いが居間にまで届いてきたところで、俺はテレビの電源を切る。
市販のルーでも結構いい味出せるしな。千草がシチュー作るの初めてだし、興味もないワケじゃない。

「千草、シチュー出来たか」
「もうちょっとですよー」
「何だ、結構時間かかるな」
「タマネギを炒めて、あとジャガイモが煮崩れるまで煮込まないと」
「(そこまでする必要もねぇと思うけど……)」

割と千草は凝り性と言うか、本格志向らしい。
煮込んでる間くらい居間に来て俺と喋ってりゃいいのに、鍋から目を離さずに番してるってか。
変なところでマジメな奴め。

「あと少しですから……って、りょ、亮クンっ?」
「少し味見」

とは言っても、シチューじゃない。千草の味見だ。
大体リアルで会うのも久しぶりだってのにエプロン姿なんか見せられてみろ。
手ェ出したくなるに決まってる。最近は千草のほっそい手足や腰もこれはこれでアリな気がしてきてるし。

「相変わらず、ほっそいな」
「りょ、亮クン……私、お鍋、見てないと……」
「ほっときゃ煮込み終わるだろ」
「でも、っ……」

エプロンの隙間から千草の胸に手を滑り込ませてみると服の生地越しに柔らかい感触が伝わってくる。
俺の方に引き寄せてから後ろ向きのまま胸を揉めば、くすぐったいのか千草は身体を
くねらせて無駄な抵抗を試みてきた。そういや台所でこんなことヤるの、初めてだったな。
普段ゲームでデカい胸に見慣れてるせいか、逆に千草くらいの胸が丁度いいって思えてきた俺は末期かもしれない。

「千草の胸、やーらかい」

先端が硬くなるようにしつこく指で刺激してやった。ボリュームが無い反面、感じやすい体質っぽいし。
案の定、触り始めてまだ1分かそこらしか経ってないのに指で掴めるくらいに硬くなってる。千草、やっぱ受け体質だな……。



888 :名無しさん@ピンキー:2007/02/08(木) 00:40:43 ID:SNXjEdGx

髪からも身体からも良い匂いがする。
シチューの匂いとはまた違う意味で(むしろ性的な意味で)の良い匂い、ってことな。
手の平サイズに収まる慎ましい胸も手によく馴染んで、心地良い。
傍目から見たら俺、変態確定だな。

「もうっ、ダメって……言ってるのに……」
「だってお前、さっき俺にヤりたいかどうか聞いてきたし?」
「だ、だからって……!」

反抗を封じるために左腕を押さえつけてみる。
知っての通り、千草の左腕にはリスカ痕があるワケだがいつもは包帯で隠してんだが……
俺と親密になっても、そのぎこちなさは変わらない。だから手首ごと掴むのは簡単。
そして細くて白い指は、まだ食べたことがない。

「ん……」
「ひゃ、ひゃわわ……ちょっ、亮クン!? な、何するんですかぁっ!」
「ふひのあふぃみ(指の味見)」

この味、シチューのルーをさっきまで触ってやがったのか?
……タマネギ触った後じゃないだけマシか。でなきゃ俺がマヌケすぎる。
にしてもホント、指までほっそいのか。舐めるついでに食い千切りたくなるな。

「もうっ! エッチなのはいけないって、前から言ってるじゃないですかっ!」
「おっと」

千草の指の味見に集中してたせいで腰を抑えてた方の手の力が緩んだらしい。
俺の拘束から解放されたコイツはさっきよりも真っ赤な顔して抗議してきやがる。
何だよ、そう怒んなよ。いいじゃん、胸掴んで指しゃぶるくらい。

「し、親しき仲にも礼儀ありという言葉、亮クンはご存知ですかぁ……?」
「んだよ、マジになんなって。可愛い冗談ってやつだ」
「可愛くないですっ!」

ほ、ほら。シチューがいい感じでグツグツ言ってんじゃねぇか。
腹減ったし、そろそろ食おうぜ、な? 怒るなよ、隙見せたお前にも責任あんだしさ。

「ホントに……調理中にこういうコト、禁止なんですからね」
「前は風呂場でもヤらせてくれたじゃん」
「それはそれ、これはこれっ! 神聖な台所でエッチなことはいけません!」
「女子高生の鑑だな」

お前みたいなのが世の中にいっぱいいりゃ、少しはマトモに料理作れる女も増えるだろうに。
調理場は戦場って言うしな、邪魔したのは素直に悪かったって認めてやる。
俺だって女性は産む機械だなんて思っちゃいねぇよ。千草は実際、いい嫁になると思うし(性格に難ありだけど)。

「いつも思うんですけど……言っていいですか?」
「言ってみろよ」
「……亮クンってハセヲさんの時より……エッチなんですね」
「お前も結構ノってたクセによく言うな、オイ」
「だ、だから……! はぁ……も、いいです。シチュー、お皿に盛りますから運んでください」

いつものパターンだな。俺が千草にちょっかい出す→千草が抵抗する→俺が言い負かすのコンボ。
俺もそれなりに自分のやってることがすげーガキだってのは理解できてんだぜ?
けどよ、アレだ。せっかくこうしてお前が俺んちまで来てくれたんだしさ、俺だって内心嬉しいんだぞ。
夜中まで待てずにがっついたのはちょっと早計過ぎたかもだけど……しゃあねぇな。しばらくは自粛してやるか……。


76 :名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 04:52:48 ID:MwgLFZjP

「……」
「……なぁ」
「何ですか」
「まだ拗ねてんのか」
「拗ねてません、呆れてるんです」

よぉ、俺だ。
晩飯のシチュー食うのに約10日もかかったような、かからなかったような、そんな錯覚に陥ってる。
確かにシチュー自体は美味い。タマネギはあめ色になるまで炒めてるだけあって甘みが引き立ってるし、
肉もジャガイモも柔らかくて簡単にスプーンで砕けるくらい。ルゥも良く煮込まれてるし上出来だ。
が。作った本人が不機嫌なんじゃ話にならねぇワケで。

「ごっ、ご飯作ってる最中にあんなコト……」
「だから謝ってるじゃねぇか」
「あ、あのですね、亮クン? セクハラは犯罪ですよ?
 かかか、彼氏彼女の関係でも犯罪として成立しちゃうんですよ? 分かってるんですかっ!?」
「いや、だってお前、昼間……」
「そりゃ確かに……い、言いましたけど……時と場合を考えてほしいと言いますか……!」

台所で胸掴まれて、指しゃぶられるのはそんなに嫌か。
千草は基本受け体質だし、あーいう不意打ち系には弱いのかもな。
だって見てると“いぢめ”たくなんだよ。いじめじゃねぇ、いぢめな。
コイツの困った顔とか慌てる顔とか恥ずかしがる顔とか……あと声。
そーいうの見たいし聞きたい、みたいな? 消防レベルの嫌がらせっぽい気もするけど、笑いたきゃ笑え。
どーせ俺の頭ん中は消防の頃のまんまだよ。

「と、とにかく……今後、ああいうことは謹んでください。分かりましたかっ!?」
「はーい先生」
「(全然反省してるように見えない……)」

何だかんだ言って、千草も俺より1コ年下だしな、ちょろいもんだ。
特に千草みたいな生真面目な(かつドジ属性持ち)委員長タイプの相手は
とにかく相手に表面上だけでも従ってりゃ事態は次第に収まるって相場が決まってるしな。
よーするに、相手を満足させてやりゃ文句は出ねぇってコト。

「ホントにもう……ハセヲさんの時と全然違うんだから……」
「そうか? ゲームの時、特にロールとか意識してねぇけど」
「そういう意味じゃなくて……ハセヲさんの時は、もっと節度があるって言うか……」
「お前だってアリーナで初めて勝った時とか、俺に抱きついて来てたじゃねーか。
 あれエキシビジョンマッチだぞ? 世界中の1200万人が見てた可能性あんだぞ? 分かってんのか?」
「うぐっ、それを言われると……で、でも亮クンだって揺光さんが復帰した時、思いっきり抱きしめてたじゃないですかっ!」
「あ、あれは……ハグだよ! ドラえもんの歌にも『犬にも猫にもハグしちゃお♪』ってあるだろ!」
「だからって何も私が後ろで見てる時にやるコトないじゃないですかぁ!」
「友情の表れだ、過ぎたコトいちいち気にしてんじゃねーよ!」

マズイ、話が元の木阿弥になっちまいそうだ。
普段の俺なら軽くスルーしてただろうに、さっき台所で千草にがっつき損ねたせいか
やや話を終わらせるタイミングを間違えたっぽい。火が点くとコイツ、止まらねぇし……。

「……亮クンって、女の人に抱きついたり抱きつかれるの、好きなんですか」
「オイ、ちょっと待て。何でそーなんだよ」
「だって、いっつも誰かに抱きつかれてるじゃないですか!」
「いっつもって……」
「トボけないでください!」



77 :名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 04:55:20 ID:MwgLFZjP

【揺光の場合】

「ハ~セ~ヲっw」
「おわっ! んだよ、揺光か」
「何だとは何さー。せっかくアタシがゲームに復帰できたんだぞ、クエストやろうよクエスト!」
「やってもいいいけど、いきなり抱きつくのはやめろ。お前が元気なのは分かったからさ」
「うん! 揺光さんは元気、元気!」



【カールの場合】

「カールはホントに大聖堂が好きなんだな」
「建物自体も好きだけど、ここから眺める湖畔とか夕日も好きだったりするけどね」
「……で、何でわざわざ俺と腕組んで眺める必要があるのかと」
「おばあちゃんが言っていた……太陽が素晴らしいのは塵すらも輝かせるからだ、って」
「(ワケ分かんねぇ。でも、コイツとここに居ると……何か、落ち着く……何でだろ……)」



【エンデュランスの場合】

「見て、ハセヲ……。僕らが守った世界は、こんなにも美しい……」
「そ、そうだな」
「僕らが……守った世界……あぁ、ハセヲ……。僕の中で……君への想いは……無限大に膨らんでゆく……」
「エ、エンデュランス? な、何で、腰に手ェ回してくんだ? なぁ、おいっ!?」
「好きなものは好きだから、しょうがない……」
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」





***********************





「どうですか? これでも言い逃れできますかっ!?」
「……最初の2つはともかく、最後のは断固否定すんぞ」
「ホモが嫌いな女子なんていません!」
「!?」

い、今、げんしけんの大野さんの声が聞こえたような……げ、幻聴か……!?

「? もうっ、何なんですか?」
「いや、何か今、お前、ホモがどうとか……」
「誤魔化さないでください!」

よかった、やっぱさっきのは幻聴だったみたいだな。
そりゃそうだ、千草にそんな趣味あるワケねーよ。疲れてんだよ俺……。



78 :名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 04:57:24 ID:MwgLFZjP

「悪ぃ、千草」
「え……えっ?」
「何か俺、疲れてるみたいでさ……美味かったよ、ごちそーさん」
「ちょっ、亮クン?」
「2階で寝てるから……」

やっぱ今朝の夢の夢見が悪かったせいかもしれない。
久々に見たしな……起きた時、寝汗かいてたことなんて滅多にねぇってのに。
精神が不安定だと対人関係とかにも影響するって言うしな
(俺の場合、さっきの千草へのセクハラ紛いの行為がもしかしたら該当してる?)。
千草にゃ悪いが、後片付けは任せて……ちょい、休もう。






「亮クン……どうしちゃったんだろ……」

千草とて亮(ハセヲ)と1年近く交友がある。
最初はウザがられてはいたけれど紆余曲折を経て、こうして交際も始めた。
何もかも順調で、幸せ真っ盛りのはずなのに……どうしてだろう。
まだ心のどこかで彼を疑っている自分がいる気がする。
あの時の級友達のように、あの時の教師達のように、あの時の両親の時のように、あの時の友人達のように、
あの時の――――――――――榊のように。

「(亮クンはそんな人じゃないって、分かってるけど……)」

鍋に入っていたシチューを皿に移しラップをかけて冷蔵庫へと入れる間、千草はそんなことを考える。
残った食器を洗っている間も、2階で寝ているであろう亮のことばかりが思い浮かぶ。
当たり前だ、彼の家に居るのだから。
今、日下千草は世界で一番、三崎亮に近い場所にいる。
そう思うだけで小躍りしたくなる、少なくとも以前の千草ならそう考えていたかもしれない。
でも何となく、不安になる時がある。
彼と肌を重ねて夜を共にしたのだって1度や2度ではないし、彼の優しさも理解しているつもり。
何と言っても、両親が不在なのを口実に彼氏の家にお泊まりに来ている自分を思い返せ。
両親が知ったら、どう思うだろう。何を言われるだろう。
自分の服装が少し華美なくらいで文句をつける親だ、ネットで知り合った男の子と付き合い、
彼の家に食事を作りに来て、あまつさえ外泊……知れたらタダじゃ済まない。
亮とも強制的に縁を切らされるだろうし、《The World》も解約されてしまうかもしれない。
あまりに千草の世界はちっぽけで、狭くて、脆いことか。
以前、亮が千草が飼っていた3羽の文鳥を「籠の中の鳥」と揶揄したように、千草もまた同じである。
これは、千草なりの親への反抗だ。
遅めの反抗期、やっと迎えた反抗期、自分にとって都合の良い時にだけ訪れる反抗期。

「(私が不安だったように、亮クンも……不安だった……?)」

だから先刻、台所で自分を求めてきたのだろうか?
異性に触れたいと思うのは思春期の少年少女ならごく当たり前の心理動作のはず。
いくらゲームの世界で出会えるとは言え、亮と千草の間に隔てられた壁は意外な程に大きい。
会っているのに会えていない、そんな感じ。ハセヲとアトリの邂逅では、もう両者共に満足できない程に。
ポリゴンで作成された無機質な肉ではなく、血の通った温かみのある有機質な肉で触れること。
簡単なようで何と難しいことか。以前の千草ならば自身に傷を付けることに何のためらいも持たなかったはず。
けれど、やっぱり他人に触れるのは怖い。裏切られるのが怖い、利用されて捨てられるのが怖い。
しかし、だ。そんなの、大なり小なり、みんな抱えている不安なのだ。自分だけに限ったことじゃない。



79 :名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 04:59:49 ID:MwgLFZjP

「(仕方ないなぁ。今回だけは、許してあげます)」

今の千草の良いところは、寛容さを学んだことだった。
彼が何をしても多少のことには目を瞑り、次に活かすこと。
千草とて亮に触れられるのが嫌だったワケじゃない、彼なりの愛情表現だと言うことも理解していた。
彼は不器用だし、他人に誤解されやすいし……そうだとも。
何ら変わっていない、ハセヲの時も、亮の時も。全てひっくるめて“彼”なのだと。
だって、彼はアトリとしての自分も千草としての自分も受け入れてくれたではないか。
優しくて、自分を大事にしてくれる人。でも優しさだけが総てではないとも教えてくれた人。
時に苦しい思いをしてでも、嫌なことから目を背けずに歩むことを教えてくれた人。
だから大好き。恋愛とは、相手を尊敬できるかどうかも重要なことだと思うから。






******************






「亮クン、具合どうですか?」
「まぁ……横になったら結構よくなったっぽいっけど」
「ただでさえ風邪とかひきやすい時期なんですから……体調管理、整えなきゃダメですよ?」
「わーってるよ」

そう言いながら、千草は蔕のちぎられたイチゴを俺の口元に運ぶ。
昼間、シチューの材料のついでにデザート用に買っておいたやつだ。
確かに親が滅多に帰ってこないとは言え、1人が長いとこーいう食物繊維とか不足しがちだよな(イチゴならビタミンCか?)。

「あの……」
「んだよ」
「さっきは……私も、悪かったです。ごめんなさい」
「さっきって?」
「だから……その、台所での、亮クンの狼藉と言うか、セクハラ行為と言うか……」

何だ、まだ気にしてたのか?

「やっぱり、私まだ……ああいうのに慣れてないって言いますか……そのぉ……」
「いーよ。俺もちょいふざけてたとこあっから」
「で、でも、亮クンの気持ちは、ちゃんと伝わってますから……嫌だったら、本気で抵抗してましたし……」
「千草が嫌なら、もうしねぇよ」
「……ほ、程々なら、今後も……さ、させてあげても……いいんですよ?」

へぇ、千草の公認ってことでいいのか?

「た、ただし、いつも言ってますけれどもっ!」
「エッチなのはいけない、ってんだろ……。でも、これでおさわり解禁ってことでいいんだよな?」
「は、はい……」

殊勝だな。どーいう心境の変化だ?
まぁ、でも……また少し、コイツとの距離を縮められた気がするから……いっか。



176 :名無しさん@ピンキー:2007/02/26(月) 08:08:36 ID:kTs1dJB2

「亮クン、練乳……手についてますよ」
「ん」

イチゴ本体に塗り損ねた練乳の一滴が俺の指から滴り落ちる。
少しガキっぽいが、ベッドシーツや床に落とすよりはマシだと思って舐めて落下回避。
千草はそんな俺の様子を見ると何が可笑しいのか、小さく哂った。

「亮クンでもそういうコト、するんですね」
「……回避行動だ」
「でもイチゴを最初に買おうって言ったのも亮クンですし」
「男がイチゴ食っちゃいけねぇってのか?」
「そんなことないですよ。私もショートケーキとか好きですし」

千草の言いたいことも分かる。
今の世の中、女が好きそうな小洒落たデザートやスイーツにゃ大抵イチゴ使われてるしな。
俺だって甘いもんくらい食いたくなるっての。
……かと言って、1人でそういう店行くのは恥ずいけど。

「今度、2人でケーキ屋さんとか行きませんか?
 今日は亮クンが喫茶店に連れていってくれましたし、今度は私が連れていってあげますね」
「そ、そうだな……いつかな」
「はい!」

コイツ……俺の心を読んでるんじゃねぇだろうな……。
ま、まぁ、お前がそんなにケーキ食いたいんなら一緒に行ってやらなくもねぇけど。
千草、結構料理作るの上手ぇし、今度クッキーとかホットケーキも作らせてみるか。
たまには飯以外のもん、食ってみてぇから。

「あーん」
「……」
「あーんです、亮クン」
「……は? 何?」
「だ、だから……あーん!」
「……」

最後に残った一粒のイチゴ。
千草がそれを摘んで俺の顔の前に恐る恐る突き出して、妙なことを言う。
あーん、だと。何、お前、俺に何させる気?

「ほ、ほら。早くしないと練乳が落ちちゃいますっ」
「あ、あーん……」

しまった、反射的に……コイツが急かせる様なこと言うから……食っちまった。

「美味しいですか?」
「あのな、さっきから食ってるんだから味は同じに決まってんだろ」
「それはそうですけど……気分的な問題と言いますか……」
「……今の、絶対誰にも言うんじゃねぇぞ」
「い、言いません!」

ぜってー俺のキャラじゃねぇ。
あーんとか、街とかでイチャついてるDQNなカップルだって今時やってねーぞ、オイ。
しかも千草の奴、何か満足そうな顔してやがるし。



177 :名無しさん@ピンキー:2007/02/26(月) 08:10:39 ID:kTs1dJB2

「えへへ……えっへっへ……」
「何ニヤけてやがる……」
「だって、亮クンとこういうコトできるの……私だけですから。
 そう思うと……し、自然と顔がニヤけちゃうんです……エヘヘ……」
「……」

……本音を言うとな、俺もお前と居るのが好きなんだぞ。
AIDAにお前が感染した時、お前の中の汚い部分だって俺は視てる。
逆にお前は、俺がお前に入り込んだ時に俺の心を視たんだろう?
俺だって聖人君子を気取るつもりなんざねぇよ。自分で嫌な野郎だってコトくらい自覚してら。
でもな千草、お前の前でなら……俺はいつもの俺でいられる。
お前が傍にいてくれることが……俺は嬉しい。

「ど、どうかしました?」
「いや……俺も千草と同じだって思ったから」
「おんなじ……? きゃっ!?」

油断した千草の手首を掴んで、そのままベッドに押し倒す。
ティッシュで練乳を拭き終わった皿が床に落ちて、ゴトンと音を鳴らしても
千草の視線は俺から離れなかった。
ベッドに押し付けた手首にはさほど力は入れてない、その気になれば千草でも十分に振り払える
(それ以前にこの体勢で男の急所を蹴り上げられたら、どっちかっつーと俺が圧倒的にヤバイ)。

「千草の今みたいな声聞けるのも……俺だけだし?」
「……変態さんですね、亮クンは」
「どーとでも言え。つかお前、さっきお触り解禁しただろうがよ」
「あ、あれは……私に許可を取ることを前提にですね……」

あー説教はもういいって。
コイツ、俺より年下のクセにやたら説教好きだからな。
せっかくイチゴ食って少しは気分いいし……久しぶりにこのまま、ヤるか?
どっちみち千草だって昼間、俺に今晩したいかどうか聞いてきたしな。
流れ的にはもう準備万端、フラグ立ちまくりだろコレは。

「千草……したい」
「い、今すぐですか? あの、私……できれば、お風呂に入ってから……」
「このまましたい」

お前からは良い匂いしかしねぇよ。

「りょ、亮クン……ちょっ……ダメ……っ!」
「ダメじゃない」
「っ……あ……ぁ……っ!」

俺の必殺技パート2”……もとい、さっきの台所のリベンジとばかりに千草の首筋を舐めてやる。
コイツの言う通り、風呂に入ってないから少し舌先がビリビリしたけど構いやしない。
千草の汗とか体液の味だって知っておきたいって思うから……って、今のは我ながらちょい変態だな。
いかん、いかん。

「お前の肌、しっろいよなぁ」
「こ、こんな時に褒められても……っ、嬉しくないですよぉ……!」
「んー」
「ひゃっ! な、何吸ってるんですかぁっ!?」

まず普段なら俺の部屋に響かないであろう、女の肌を吸う音。
千草とヤるのは今日で4回目か……俺の部屋でヤるのは……えっと……2回目? 一回目リビング、2回目は風呂……かな。



178 :名無しさん@ピンキー:2007/02/26(月) 08:12:40 ID:kTs1dJB2

最初は首周り、次に肩。
これ以上は服脱がせないとダメだな……やべぇ、もっと舐めたい。
どーにも千草見てるといぢめたくなんだよな……俺、やっぱSなんだろうか。

「なぁ、千草。暖房ちょい強いと思わね?」
「だ、暖房ですか……?」
「暑いだろ?」
「あ、暑くありません!」

いや、暑いね。それにお前の身体も熱いぞ。
暖房でのぼせちゃシャレになんねぇし、服脱いだ方がいいな。
つーか、むしろ脱げ。

「ノリ悪ぃな。俺が脱がそうか?」
「……もうっ、知りませんから!」
「じゃ脱がす」

膨れっ面になった千草も可愛いな、とか思ったり思わなかったりしながら
片手で身体を押さえて、もう片方の手で服のボタンを一個一個手探りで外していく。
頬っぺたや耳朶に軽くキスしてるせいでコイツの顔以外、見ぇねぇから。

「相変わらず腰ほっそいな、千草」
「うぅ~、あんまりジロジロ見ないでください……」
「今更何言ってやがる。一緒に風呂だって入ったじゃねぇか」
「けど、恥ずかしいものはやっぱり恥ずかしいんですよ!」
「ふぅん」

一番上のボタンだけ残して、後は全部外し終わった。
前と違って今日は色付きのブラか……コイツなりに意識してんだろうか、俺とこういうコトうやるの。
まぁ……それならそれで嬉しいけどな。

「ちょっとは胸、大きくなったか?」
「期待はしないで、ください……」

言うが早いか、ブラをたくし上げて胸を顕わにしてやる。
触ってる時から分かっちゃいたが、もう乳首勃たせてやがる。
何だかんだで千草、台所で俺が触った時もすぐ勃たせてたしな。
俺がこうやってる最中に下半身に血液集めてるみたいに……お前も感じてるんだろ?
いいじゃん、正直に言えよ。言えば俺だって……もうちょい優しくしてやるのに。

「吸っていいか?」
「……どこをですか」
「胸」
「……胸の前に、先に吸わなきゃいけないトコ、あるんじゃないですか」
「? あ、あーぁー。忘れてた」

そーいやそうだったな。
お前を抱くことばっか考えてたからつい忘れてた。
何だよ、さっきから不機嫌だったのはそのせいか?

「千草はキスが好きだな」
「亮クンとのキスが……好きなだけ……です……んっ……ん、ん……」
「(甘ったれ……)」



179 :名無しさん@ピンキー:2007/02/26(月) 08:14:42 ID:kTs1dJB2

俺も千草もさっきまでイチゴ食ってた、それも練乳付きで。
当然、歯とか歯茎、舌にまだその味が残ってる。
互いの歯がぶつかるカチカチって音と、互いの唇を吸い合うチュッチュッって音。
冬は唇がカサつきやすいんだが、俺も千草もそういうのには無縁だった。
いつも千草の唇は軟らかくて、吸ってて心地いい。
ずっとこうしてたいけど……息しねぇと人間は死ぬワケで(かと言って鼻で息するのはキスん時はNGだろ)。

「……満足したか?」
「……すぅ……はぁ……は、はい……」

ご丁寧に深呼吸か。
その前に口の周りの涎とか拭けよ。

「じゃあ次は……」
「む、胸……ですか?」
「の予定だったんだけどな。気が変わった」
「えっ……?」

胸は後でいいや。今は……もっと違うとこ、吸いたい。

「下、脱がすから」
「下……? あの、下って……もう、挿れちゃうんですか……?」
「いーや。言ったろ、吸うって」
「! え、えっと……そ、それって……まさか……私の……!」

そのまさか。

「千草のここ、舐めて、吸いたい」
「で、でもっ……こ、こういうのって、やっぱりお風呂に入った後の方が……!」
「いーじゃん、いーじゃん(すげーじゃん)」

だから構いやしねぇって言ってるのに。
それともやっぱ俺が無神経過ぎなんだろうか?
女ってこういう自分の身なりとか体裁とかそーいうの、男よりも気にしそうだしな。
千草からすりゃ俺はよほど気の利かない男に見えるんだろうけど……ここは譲れねぇよなぁ。

「汚くてもいいから、やりたい」
「……特別ですからね? 次にやる時は、お風呂に入った後以外、認めませんからね?」
「わーってるよ」

さて、と。千草本人からも許可下りたし、とっととやるか。
スカートは……外さなくていいか。下着だけ脱がしゃいいんだし。
腰も細いけど脚も細いよなぁ……でも、初めて抱いた時に比べるとちょい肉が付いたか?
元から痩せ過ぎな感じだったし、もうちょい食ってもいいと思うんだけどな、お前は。

「へぇ。また生えたのか」
「聞こえません聞こえません!」

前に風呂でヤった時、剃り落としたのに……。
って、あれから随分経つし当たり前か。また生え揃った時は俺が手入れしてやるよ。
あんまり茂られると舐める時に口の中に入ったり鼻に当たったりして、こそばゆいし。



180 :名無しさん@ピンキー:2007/02/26(月) 08:17:02 ID:kTs1dJB2

「きつかったり苦しかったら言えよ」
「はい……」

千草の脚と脚の間に身体を割り込ませて割れ目に顔を近づけてみる。
ムッとする匂い……やってることは完全に変態レベルだな。
でももしかすると俺達がそう思ってるだけで、他の若い彼氏彼女だってこーいうコトやってるかもしれねぇじゃん。
自分や世界さえも変えてしまう瞬間って案外すぐ傍にあるもんなんだぜ。

「最初は指2本でいいか?」
「あっ、あっぁ……あぁっ……!」

もう俺が身体を舐めたりキスをしてた頃から濡れてたであろう割れ目。
案の定、指を入れたらもう淫液が絡み付いてきた。
奥に指を進めると収まりきれなくなった淫液が入り口から毀れて千草の股を汚す。
当の千草本人は逆さ吊りみたいな体勢で俺の攻めに耐えてて、そんなの気にしてる場合じゃなさそうだが。
今のコイツを支えてるのは頭に副えられた枕と腕の力だけ。
実際は俺がこんなコトやりながら腹に腕回して支えてやってるって感じ。

「感度……良すぎだろ」
「だって、いきなり2本だった、から……」

一旦引き抜いて淫液塗れになった指を舐めてみる。
……少ししょっぱいか? 匂いもキツイけど、まぁ、我慢すりゃ何とかなるか。
自分からやりたいって言い出した以上、途中で放棄するワケにもいかねーしな。

「脚、軟いな」
「ふぁ……っあ……!」

割れ目のついでに、脚の付け根から腿のあたりまでを舌でなぞってやった。
ついでに一度やってみたかった、腿へのかぶりつきも。
正確には噛んじゃいないが、千草のやーらかい脚なら食い千切ってみたくなるから困る。
細いっちゃ細いけど、最近は肉付きが良くなってきた方だし。
腿の次は脛。コイツの脚で膝枕とかしたら寝心地いいだろうな。今度させるか?

「千草の脚……やーらかくて……美味そう」
「た、食べちゃダメですからね……?」
「味見ならいいだろ」
「ひゃんっ!?」

わざとらしく音をチュパチュパ立てながら脚を吸ってやる。チュパってもチュパカブラとかチュパ研じゃねぇぞ。
当然、吸った所は充血して紅く染まる。こりゃ千葉に帰る時はコートでも着ないと……街中歩けないな、お前。
遠まわしな羞恥プレイになるのかな、コレ。困る千草を想像しただけでゾクゾクしてくる。
右脚にも、左脚にも、いっぱい付けてやった。後で千草は困った顔をして、困った声で俺を責めるだろうか?
まぁ、それでもいいや。一晩でも二晩でも泊めてやりゃいいだけだし。

「脚、もう真っ赤だな」
「亮クンのせいじゃないですかぁ!」
「この程度で恥ずがってどうすんだ? 本番、これからだってのに」
「うぅ……ケダモノさんです……」

お前もこんな体勢で感じまくってるクセによく俺にそんな口叩けるもんだ。
暴れずに素直に従ってる時点でお前、もう俺に身ぃ委ねてるってコトなんだぞ。分かってんのか?
前に「俺はお前のもんだ」って言ったけど、それ即ち、お前のものは俺のものってコトでもあるし。
……けど特権だよな。お前のこんなヤラしい姿見れるの、俺だけなんだから。

219 :名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 05:14:24 ID:1vpvPypX

「今日はどーすっかな……」
「ど、どうって?」

いつも通りにただ挿れて、行ったり来たりするだけじゃつまんねーし。
いつもってか、まだ4回目だから……今まで試してない体位をこの際やってみるのもアリか。
そーいや千草の奴、昼間、自分と他の女どもを比較なんてしてやがったっけ……お仕置きがまだだったな。

「千草、ケツこっちに向けて腹這え」
「え……あ、あの……でも、それって……」

まぁ……女にとっちゃ屈辱的な格好かも。
でも千草とはもう風呂場とかでもヤってるし、今更なんだよなぁ。
俺が調教したってワケでもねーけど、千草の奴も結構エロくなったし。
その、何だ……俺もそろそろ色々と試したい……みたいな?

「い、痛く、しませんか?」
「千草次第」
「……じゃあ」

完全に納得できてねぇ様子のまま千草が尻をこっちに向けてベッドに腹這う。
胸がありゃ潰れるんだろうけどな、さすがに千草の慎ましやかな胸じゃ無理か……。
個人的な意見だと、こいつは胸のデカさとかよりも肌の白さや
身体の細さで勝負するタイプだし……最近は電波も収束してきた感じもするしな。

「あの……何で亮クン、私のお尻、触って……?」
「楽しいから」
「……ケダモノさん」
「ほっとけ」

胸や腿に劣らず、軟らかくて手に食い込む尻の肉。
当の千草本人も俺の一挙一動が気になるらしく、ちらちらと振り向いては何事か言ってくる。
確か前は壁に手ぇ付かせてバックでヤったんだっけか?
あの時も何かちょっと抵抗してたよな、コイツ。基本的に向き合ってる体位じゃないと嫌なんだろうか。
顔が見えないと怖いとか、んな理屈だけは勘弁な。

「……ひゃっ!? りょ、りょ、亮クンっ!?」
「何だよ」
「い、今、お尻、なな、舐め……!」
「舐めた。つーか吸った」

正直、俺もまだ割れ目に舌突っ込むのには抵抗ある。
けど尻は平気なんだよな、割と。
案の定、千草は身体を捩って「変態」だの「ケダモノ」だの俺を非難する言葉を浴びせてくるが一切無視。
だって別に痛くしてねぇから。嘘はついてねーだろ?
『千の偽り、万の嘘』って誰かが言ってた気もするけど、俺を責めるならまず約束破ってからにして欲しいもんだ。

「千草からこういうコトしようって誘った結果だろ、昼間にさ」
「そ、そうですけど……でも私、こういうのは……!」
「恥ずかしいってか」
「……お風呂に入ってからって言ったのに」
「これ終わった後に入りゃいいだろ」

千草を黙らすには会話の主導権を握るのが一番てっとり早い。
それでもまだゴネる時は尻を軽く引っぱたけば大人しくなるだろ。
何だかんだでやっぱコイツ、Mだしなぁ……。



220 :名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 05:15:48 ID:1vpvPypX

「っは……あぁ……やぁ……!」
「(ケツ舐められるの、そんなに感じるのか……?)」

漸く観念した千草の尻を押さえつけながら、俺は舌を動かし続ける。
舐めるだけじゃ勿論つまんねぇから時々吸ったり、噛んだり……千草が飽きないように。
身体震わせて喘ぎながらシーツ掴んで耐えてる千草見てると、益々下半身に血液が集まるから困ったもんだ。
……頃合だし、そろそろか? ホントは舐めてから挿れる予定だったけど……繰上げだな。

「千草、いいか?」
「えっ……あ、は、はい……!」

さっき指2本挿れた時に十分濡れてたし、もう本番でも大丈夫だろう。
さすがにスカートが邪魔になってきたんでこの辺で外させて……上半身も全部脱がすか。
暖房入れてるし風邪引きやしねぇだろ多分。……俺も脱ぐか。

「……何でそんなにおっきくしちゃってるんですか」
「お前の裸見たり、喘ぎ声聞いてたら勃ったんだろうが」
「わ、私のせいにするんですか? 亮クンが元からエッチなだけじゃないですか!」
「でも最初に俺を誘ったのは千草」
「うっ」

更に正確に言えば、俺が今日お前をこっちまで呼び出したせいだけどな。
まぁ、言う必要はねーか。

「つーワケで」
「亮クン、まだ話が……きゃっ!」
「今日の千草はちょい反抗的だから……お仕置き、だな」
「お、お仕置きって……あっ!? あ、ぁ……っ!」

有無を言わさず、バック体勢のまま膣の中に挿入開始。
千草からして見れば文字通り不意を突かれた、って感じだろうか。
俺のも十分に硬くなってたし、後ろ向きでも千草に挿れる感覚は覚えてるし……案外、すんなり入るもんだな。
コイツの中、相変わらずキツくてよく締まる……さっきあんな濡らして潤滑に備えたはずなのに……。
あったかくて、肉の壁に包まれてるみたいで……気ぃ抜くと今にも射精しそう。
けど千草との約束で膣内(なか)出しはNGってことになってる。
今までだって全部、膣外に出してた……でも、今日はそんな気分じゃない。
最後までヤりたい、って気持ち、抑えられそうにない。

「千草の……今日も、気持ちいいな……」
「やだ……亮クンの……また……かき回され……!」

緩急をつけながら一定の動作を繰り返す。
特に先端で子宮口を突くと、千草は一際大きな喘ぎを漏らして力いっぱいにシーツを掴んで訴える。
上の口も下の口もだらしなく涎を垂れ流して、俺のベッドに染みを描く過程。
接合部分から時折聞こえてくる、俺と千草の陰毛同士の擦れるザラついた音。
いつも俺しかいない部屋に千草が居るってだけで、ここはこんなにも異質な空間に変わるのだと思い知った。
いや、例え俺の部屋だろうが台所だろうがリビングだろうが風呂場だろうが……関係ない。
俺の中で千草の存在があまりにでかいから……場所とか関係なく求める気持ち、あるんだって思うから。

「好きだから、こんなことすんだぞ」
「え……?」
「好きじゃなかったら、呼ばねぇ。好きじゃなかったら、抱かねぇ……分かるか?」
「……は……い……」

うつ伏せになったまま、千草は小さく答える。あぁ、クソ。これじゃ顔、見れねぇじゃねぇか……。



221 :名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 05:16:59 ID:1vpvPypX

「身体、回せるか?」
「だい、じょぶです……動かせますから……」

繋がったまま、腹這いになっていた千草が身体をこっちに向かい合わせてくる。
動かした反動で接合部分から何滴か淫液が落ちて、広がる紙魚。
俺は俺で千草と向かい合っただけで胸が高鳴ってしょうがない。
バックもいいけど、こっちの方が千草の顔も見れて落ち着くってことなんだろうか……?

「……明日、洗濯だな」
「はい……」

紙魚くらいでいちいち怒る俺じゃない。
もうシーツは千草の涎やら汗やら淫液やら、俺の汗やカウパー塗れになってる。
それでも、お互いの身体から出たものだから気持ち悪いとは思わなかった。
ったく……お仕置きどころじゃないな、こりゃ。

「あの、ですね」
「? どした」
「私、こっちの方が……いいです。亮クンの顔も見れるし……」
「……」
「さっきのもですね、悪くはないんですけど……何だか、ゴッ、ゴーカンされてみるみたいで……」
「解読不能か」

強姦ってまた酷ぇ表現だな、オイ。
まぁ、千草はバックがあんま好きじゃないって分かっただけでも良しとするか。
俺も女が嫌がることを無理強いさせる程、鬼畜じゃねぇし。

「えと……続けて、いいですよ?」
「ん」
「ちょっ……こ、今度はこんな姿勢でですかっ……!?」
「色々と試してみたいんだよ」

再起動。ただし、今度もちょっと体勢を変えて。
片一方の脚を大きく広げさせて、もう片一方の脚に跨って突いてみた。
こうすると繋がってるのがよく見えるし、突きながら千草の脚にイロイロできる。
さっき俺が吸って紅く変色した脚……やっぱ何度でも齧り付きたくなる。
白い腹も余計な贅肉が全くなくて(むしろ痩せ過ぎ)、これまでに何度も俺の精液を受け止めてきた。
白に白のコントラストって意外と映えるもんなんだぜ……俺の溜めた期間が長いとちょい色が濃くなるけどな。

「何か……さっきより締まってきたぞ……!」
「だって……亮クンが、いっぱい動くから……!」

腿をと腕を掴んで千草の身体を固定、
今まで会えなかった分を取り戻す意味も込めて狂ったように突きまくる。
千草の方も自分から誘った負い目なのか腰を動かして俺に応えてくれていた。
アトリの一生懸命な姿も可愛いと思ったけど、アトリのリアル……千草のこういう姿も……可愛いな。
そう思うと、自然に……俺の考えを全く無視したカタチでアレがデカくなるワケで……。

「! だ、だからぁっ! 何で、何でいつもっ、中でおっきく、しちゃうんですかぁ……!」
「千草が……可愛いから……」
「……!」

思わず本音が出ちまう。
いや、でもさ。実際付き合ってみねーと分かんねーって、こういうのは。
そりゃまぁ、好きだからって理由で少しは補正かかってるかもしんねーけどさ。



222 :名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 05:18:30 ID:1vpvPypX

「今日は……」
「え……?」
「俺、今日は……千草の中に……出したい……」
「! け、けど……責任が持てるまで外に、って……!」

何つーか……もう色々と手遅れな気がする。
そもそもカウパーでだって妊娠する可能性があるんだ。今更、外で出そうが中で出そうが同じようなもんだと思うけどな
(腰抜けのチキン野郎と笑われても構わねぇけど、俺は千草にアナルセックス強要する程の度胸はねぇ)。
俺、お前とヤるの4回目だけど……一度もゴム付けたことねーしさ……。

「あ、あのですね? 赤ちゃん、出来ちゃうかもしれないんですよ?
 そうなったら私、絶対に中絶せずに生むって……最初に言いましたよね?」
「言ったな」
「学校辞めて、働くって言いましたよね? 私におっきいお腹抱えたまま、働けってことですか……?」
「そーなりゃ、俺も学校辞めて働くよ」
「なに簡単に言っちゃってるんですかっ! 亮クン、来年は3年生じゃないですか!
学校辞めちゃったりしたらそれこそ一大事なんですよ、分かってるんですかっ!?」

珍しく千草にしては言ってることが至極マトモじゃねーか……。
正論過ぎて耳が痛いぜ。実際、千草が妊娠したら色々とヤバい。
俺の両親と千草の両親で裁判沙汰とかになったらシャレにならん。
かと言って、千草は絶対に子供を下さないだろうしな……どうしたもんか。

「じゃあ、どーすりゃいい?」
「……く、口じゃ、ダメ、ですか?」
「口……口か……」

そういや、まだ千草にはフェラしてもらったことなかったっけ。
膣出しがNGって言い張られる以上、口で妥協するしかねぇか……少し、悔しい。
さすがにマジで子供出来ちまったら俺もまだ責任取れねぇし……しゃーねぇなぁ。

「千草がそこまで言うなら……口で、我慢してやってもいいけどよ……」
「そ、それじゃ……間違って中で出しちゃわないうちに……抜いてください……」
「ん……」

どうせなら絶頂に達する瞬間に引き抜いて口に出したいけど、
俺はそんなAV男優みたいなスキルを持ち合わせてねぇ。
今もこうやって締め付けてくる肉……当然、引き抜く時も擦れの快感が射精を誘う。
でも千草が口でしてくれると言った以上は俺もそれに応えなきゃいけねぇし……
俺にしては珍しく、慎重な引き抜きだったと思う。
抜いた途端、栓代わりになってたもんがなくなったから……収まってたはずの千草の淫液がまたシーツを汚す。
指で触れるとやや粘り気があって糸を引く……当然、俺のにもたっぷり付着、天井の明かりに反射してヌラヌラ光ってる。

「うわぁ……」
「目ぇ背けずにちゃんと見ろよ、千草」
「わ、分かってます……」

何っつってもお前のでこんなに汚れてるんだから。
自己責任で綺麗にしてもらわねーと。
俺もうっかり射精しねぇように気をつけないと……早漏呼ばわりされちゃ敵ねぇ。

「は、む……っ……んっ……」
「(千草……)」



223 :名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 05:20:11 ID:1vpvPypX

いっぺんに全部口の中に入れようとせず、竿からまず舐め始めたらしい。
これって、自分で自分の膣から出た淫液を舐めてるってことでもあんだよな、千草?
度胸あるぜ、お前。俺は自分で自分の精液飲めとか言われても絶対無理だし。
そんなことを考えてると何となくコイツの頭を撫でたくなる。
よくできました、って感じでな。寧ろご褒美か。

「偉いぞ」
「えへへ……」

つーか、本来褒められるべきは俺なんじゃないかと。
膣内(なか)で出したいのを我慢して口で妥協したんだしさ。
別に褒めてほしいワケじゃねーけどさ、こう、イマイチしっくり来ねぇというか……いいけどな。

「フェラするの初めてだろ?」
「んふぁ……は、はい」
「感想聞かせろよ」
「……慣れると何か、可愛く見えてきますね、コレ」
「(可愛いか……?)」

そう言って千草は俺のを愛しそうに爪の先で撫でながら舌で唾液を塗りたくっていく。
さっきまでお前の子宮の辺りを突いてたソレを可愛いなんて言えるあたり、
男と女の感性の違いってのを改めて思い知らされるぜ。
つーかお前、血管浮き出まくりのソレ舐めながらよくんなセリフ言えるよな、真似できん。
膣の中もいいけど、千草の舌も唾液が絡み付いてくるみたいで……すげぇヤラしい。

「そろそろ……出してぇんだけど……」
「あ、は、はい! このまま続ければいいんですか……?」
「出す時になったら、言うから……」
「分かりました……続けますね」

散々反抗的だった千草が素直に、それも率先的に口内射精を促してくる。
亀頭全体を頬張って尿道や鈴口を舌でねぶって先刻のお返しとばかりに……うわ、ヤバイだろ、これ。
何処でこんな舌使い覚えたんだか……俺のせいか?
アトリと結婚イベントしてからリアルでも妙に積極的になったもんなぁ。

「千草……千草……ッ!」
「(亮クン……苦しそうだけど……可愛い……)」

今まで我慢してた反動が、一度に全部やって来たような痺れにも似た感覚。
動悸が激しいって、こーいうのを言うんだろうな。
射精後に心臓がバクンバクン言ってたことはよくあるけど、射精前にこんなに高鳴ったのは初めてだ。
俺のを頬張り続ける千草を引き寄せて、いよいよ射精の準備に入る。
先走りのカウパーは千草が舐めてた時点で出てたから……今日は結構、我慢した方だな……っ。

「千草……出す、からな……!」
「んむっ!? んっ、んっ……」

ついに我慢が限界に達して、千草の口の中で弾ける。
本来なら膣内で出す予定だったのを口内で……千草が許可してくれたとは言え、外出しに比べるとやや抵抗感がある。
コクッ、コクッって感じで首を小さく上下させる千草を見てると
「あぁ、飲んでるんだな……」って自分で妙な程に納得しちまってて、何か不思議だった。
今日で4回目だってのに、初めての口内射精のせいか……心ここにあらず、かもしれない。

「ぷはっ! ……ケホッ、ケホッ……喉が、何だか……!」
「千草、お前……全部、飲んで……」
「精子って……空気に触れると死んじゃいますから……今日は……死なせたくなかったんです……えへへ……」



224 :名無しさん@ピンキー:2007/03/05(月) 05:22:15 ID:1vpvPypX

**************************








「映画とかドラマで、裸のままシーツに包まってる男女ってよくある構図ですよね」
「まーな」
「……実際にやると寒くありません?」
「なら最初からやるなよ……」

風呂上り、時間はとっくに夜中になっていた。
最初から千草は俺んちに泊まるってことになってたし特に問題はねーけど、
よりにもよってコイツ、「裸シーツがやりたいです」とか抜かしやがった。
風呂から上がった後だし、どんどん体温が下がるだろうから止めろって言っても聞きやしねぇ。
ダニに噛まれても知らねぇぞ、ったく……。
結局今日は《The World》にもログインしねーままだったか。
まぁ……たまにはこんな日があってもいいよなぁ。千草と買い物もできたし……。

「暖房つけてやろうか?」
「大丈夫です。亮クンが暖かいですから」
「……」

仕方ねぇから、俺も裸のままで千草に付き合ってやってるワケで。
ただし暖房もなしにシーツ1枚じゃ確実に風邪引くし、毛布やらタオルケットの布団類で重装備をして、だが。
何で女って生き物はこんな意味のねーようなコト、したがんのか……分かんね。

「あの……今日の亮クン……すごかったです」
「何がだよ」
「……亮クンの、今も喉の奥に引っ掛かってるみたいで……いっぱい出したんだなぁ、って」
「馬鹿、また勃たせる気か」
「あうぅ……も、もう今日は無理ですからね!」

まーお望みとありゃ二回戦くらい大丈夫だとは思うけどな。
俺も今日は何か疲れたし……晩飯食った後の疲れ、まだ残って……ふあぁぁ……。
電気、消したよな? ガスも、水道も、戸締りも……って、全部千草が確認済みだったっけ。
ホントなら今日、お前の中に出してやりたかったんだけどな……まだ御預けか。

「なぁ千草。今日は無理言って悪かったな、今度は俺、ちゃんと外に……」
「むにゃ……シロウ、晩御飯はまだですか?……くぅ、すぅ……」
「寝オチかよ(いやこの場合、オチてはねーけどさ)」

どんな夢見てんだか……気にしたら負けだな。

「……風邪引くんじゃねーぞ」

千草が寝ちまった以上、俺も寝るっきゃねぇか。
こいつが風邪を引かないように、せめて強く抱いて……暖めてやるしかできねーけどさ。
体温って実際こうして裸で抱き合うと暖かいもんなんだな……ちょっと……得した気分だ……。
俺は千草を抱きながら……夢を見るんだろうか? どうせなら楽しい夢がいい。
お前だってそうだろ、なぁ、千草。って、もう寝ちまってるんだっけか……。
おやすみ、千草……。

250 :名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 05:39:33 ID:Lpgev7FS

2010年/横浜・みなとみらい21。


「はっ、はっ、はぁっ、はぁっ……!」

呼吸ができない。
充満したガスや煙のせいだと思う。
俺と一緒に避難してた女の子、日下千草も苦しそうに胸を押さえてへたり込んでいる。
ここは……中央フロアか。でかい液晶テレビ画面に見覚えがあるぞ……。
クソッ、クソッ、クソッ、クソッ!!! あともうちょっとで出られるってのに……!

「……? おいっ、日下っ! 日下千草、おいっ!!!」
「……」

やばい、意識失くして死に掛かってやがる!
俺も詳しいことは知らねぇけど、有毒ガスとかのせいで窒息……冗談じゃねぇ。
例え生きてここから出られたとしても下手すりゃ脳死とかだって……おいおいおいおいおいおい。

「(マズイ……俺も……)」

朦朧とする意識。ここまでか? 俺、ここで死ぬのか?
まだ生まれて10年しか経ってないのに? 今更になって生きたいって気持ちがこみ上げて来る。
どうせやりたいことなんてありはしないのに。でも死にたくない。
俺だけじゃなく、この千草って子だって同じはず。
そう思うと怖くて怖くて、身体がブルブル震えて涙が出てくる。
これが死の恐怖……死ぬ直前の気持ちなんだ……。

「だ……れ……か……ぁ……!」

俺は神様とか天国なんて信じちゃいない。
けどこの瞬間だけは、本気で神様に助けてくれって縋った。
いや、別に神様じゃなくてもいい。この際、悪魔でも死神でもいい。
死にたくない、だから助けて。口元を押さえて、何を掴むでもなく俺は手を伸ばす。
ビクビクと身体を震わせながら、文字通り最後の力を振り絞って無駄な抵抗を試みて……。


『ばみゅんっ! 見っつけたぁ~』


遠くで何かが聞こえる。
瞼が綴じるか綴じないかの刹那、眼前の液晶テレビに何かが映るのが見えた気がした。
杖持った三つ目の死神と……でっかい壁……みたいな……。


『生まれるためには、一度死ななければなっらなーい♪』


これがお迎えってやつか。
驚いた、マジで死ぬ時ってのはお迎えが来るもんなんだな。
死ぬ間際、そんなことを考えてられる自分自身にも呆れちまうけど……。


『生かしてやるからさー、いつか俺と一緒に遊んでねん!』


ワケ分かんねぇ。いつかっていつだよ。これから死ぬって時に……フザけ……んじゃ……ねぇ―――――――――。



251 :名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 05:40:41 ID:Lpgev7FS

**********************








「はぁっ、はぁっ……!」

何が何だか分からないうちに、ベッドから飛び起きていた。
俺の部屋、俺のベッド。
ただいつもとちょっと違うことと言えば、隣で千草が寝てることと俺達2人が何も着ないまま
つまりは裸で寝てたってことくらいか。

「(夢か……ビビらすなよ……)」

内容は覚えちゃないが、飛び起きる程だったからよほどの内容だったんだろう。
寝汗はそんなにかかない方だが手の平は肩はしっかりと汗をかいて濡れている。
さすがに続けてこうだと、病院行って精神安定剤とか睡眠薬を処方してもらった方がいいかもな……。
いや、俺の心的ストレスが今頃になって一気に押し寄せてきたって可能性もあるけど。

「亮クン……どうかしました……?」
「いや……何でもねぇ……」
「何でもない人は夜中に飛び起きたりしませんよ?」
「……」

そりゃそうだ。
夜中ってももう朝の5時過ぎだけどな。
ホントならもう一眠りしたいところだぜ。

「怖い夢、見ちゃいました?」
「怖いかどうかは分かんねーけど……良い夢じゃなかったな……」
「私も前はそういう夢、結構見てましたから……恥ずかしいことじゃないですよ」

まぁ、お前に比べりゃな。
千草の場合はクラスメイトにいじめらてる夢とかハブられてる夢とか……そんなの多そうだよなぁ。
今は見てないなら、それに越したことはねーけどさ。

「大丈夫です。私、ちゃんとここに居ますから」
「最初から居るだろうが」
「そういう意味じゃなくてですね……ほら」

そう言って千草は俺の手に自分の手を絡めてくる。
さっきまで汗で濡れていた俺の手と違って、千草の手は少し冷たい。
裸で寝てりゃそりゃ体温も下がるわな、当然だが。

「これなら……怖い夢なんて、きっと見ませんよ?」
「気休めだな」
「じゃあ、こうしてあげますっ」
「お、おいおい……」

不意に手を離したかと思うと、今度は身体全体で俺を抱きしめてくる。
俺の方から抱きついたり触ったりすることはあるけど、千草がこんなことしてくるのは珍しいことだった。



252 :名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 05:42:00 ID:Lpgev7FS

「もーちょっとお前に胸があれば、最高だったんだけどな」
「亮クンのいぢわる……贅沢は敵です!」
「(戦前かよ。まぁ、これはこれで気に入ってるけど)」

千草の慎ましい胸に顔を埋めながら、そんなやりとりを繰り返す俺達。
だけど確かに千草の言う通り、不思議と落ち着いてくる。
原因はこれだ、千草の左胸から聞こえる心臓の音。命の音。
何でか分かんねぇけど……さっきまでの言いようの無い不安とか怖いもんが、全部消えちまった。

「千草……」
「ひゃっ! ……もう、甘えんぼさんなんだから……」
「うふへぇ(うるせー)」

結局、ヤってた時には満足に吸えなかったからな。
今は小さいけど、千草も妊娠して母乳出るようになったら少しは膨らむんだろうか。
でも久々に吸う千草の胸はやっぱ良い。
ホントなら舌で転がしたり歯で噛んでやったりしてもいいけど……今日は、吸うだけでいいや……。

「っふ……なぁ、千草」
「はい?」
「死ぬのって怖くないか?」
「……怖いですよ」

お前は体験済みだもんな、リスカで。
最も、自分で死ぬ勇気なかったから俺とこうしてられるワケだけど。

「亮クンは……どうですか」
「怖ぇーよ、そりゃ」

顔を上げずに胸に埋めたまま答える。
廻した手に力を込めて、千草を抱いた。

「俺だってたまに考えんだぜ。
もし死んだら、今の俺の意識とかどーなっちまうのかな、とか。
死ぬのってどんな感じなのか、ってな……いつも、怖くなって途中で考えるの止めちまうけど」
「前の私は……いつもそんなコトばかり……考えてたなぁ……」

特に最近は考える時間が多くなったと思う。
ネレビやネットを見れば、俺とそう変わんねぇ歳した奴が殺人事件起こしたなんて記事を毎日見かける。
動機はつまんねぇ理由ばかり……今日を生きられねぇ奴だって世の中にはゴマンと居るってのに。
奪う権利なんかありゃしねぇ、そいつの人生はそいつのもんだ。土足で踏みにじるようなマネは許されねぇんだ。
人間が生き物の生き死にを自由にしようなんて、おこがましいとは思わねぇのか? 誰にもありゃしねーよ。

「千草……もう、絶対……」
「えっ」
「絶対、死のうなんて考えんじゃねぇぞ……俺も一緒に居るってこと、忘れんな」
「……はいっ!」

独りで居るのが当たり前だと思ってたんだ。
でも人間ってのはさ、基本、寂しがり屋で……暖かい場所を知っちまったら……そこを失うのが怖くなる。
臆病でいいんだ。誰かが傍に居てくれるって、そう思うだけで……自分が独りじゃないって気づけさえすれば……。
どんなにクソみたいな世界でも……少しはマシに思えてくることだってある。
俺は……千草にそれを気づかせてやれたことと……俺自身にも気づかせてやれたこと……結構満足してんだぜ……?
お前は死なせねぇよ、千草。婆さんになって、寿命が尽きるまで……俺が死なせねぇ。



253 :名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 05:43:31 ID:Lpgev7FS

後日談【 My Fair Lady 】




「でな、俺はそいつにビシッと言ってやったんだ。『フッていいのは、フラれる覚悟のある奴だけだ!』ってな」
「間違った方法で手に入れた恋愛関係に価値なんてねーよ」
「うぐっ……お、お兄さん悲しいぞ、ハセヲ……」

よぉ、俺だ。
2017年も残すところあと残り僅かって感じになっちまったな。
今日は久々にカナードのメンツを集めて今年最後の会合……の予定。
さすがにクリスマスから年末にかけちゃ、他の連中も色々と忙しいだろうし。

「でもあっと言う間の1年だったねー^^」
「ハセヲがオイラ達と出会ったのが、昨日のことみたいだぞぉ」
「オーバーだなw」

そーいや、こいつらに初心者と間違われてダンジョンに行ったのが始まりだったんだよな
(実際はクーンに頼まれてて、最初から俺が死の恐怖ってコト知ってたらしいけど……役者だぜ)。
無理矢理ギルドに入れられて、ギルドマスターになって、いつの間にかギルドランク9……。

「シラバスは冬休み、チュパ研の連中とネッシー探しに行くんだろ?」
「チュパ研じゃなくてUMA研究会なんだけどな……あとネッシーじゃなくてノヅチ(ツチノコ)探しなんだけど……^^;」
「どっちも大して変わんねーって」

まー単位は落とすなよ。
そう言う俺も来年で18……大学受験の準備とかやんなきゃダメか、やっぱ。
いつの時代も学歴社会だからな……社会に出りゃ嫌でも思い知るだろうし。

「揺光とカールはどーすんだ?」
「あたしはこの子を図書委員長にして引退。その前に図書館の整理とかあるけど」
「別にアタシが委員長じゃなくてもいいじゃないか……湯浅がいてくれればなー」
「そういやカールは高校卒業だっけか」
「ああ。東京の医大受けるつもり」

頭良いからな、カールは。
それに揺光も来年で高2か……意識不明になってた分、取り戻せよ。
冬コミに参加してる場合じゃねーぞ。

「あとは……大晦日に札幌のヨドバシに並んで、プレステ5を買うことくらいかな」
「(アタシも並ばせて2台買うつもりなんだよ、カールの奴……即効でオクに出すんだって……)」
「(転売ってレベルじゃねーな)」

中国語や朝鮮語喋る連中はもっと買うだろうけど。
どーせ一ヶ月もすりゃ在庫が余りまくるのは目に見えてるし俺はスルーだ。
つかお前ら、カナードのギルドメンバーじゃないのにいつも居るよなぁ。いいけどさ。

「エンデュランスは冬休み、何か予定あんのか」
「特にないかな……僕はいつでもお休みみたいなものだし……前に比べて、外に出るようにはなったけどね……」
「へぇ」
「最近は釣りをするのが好きになったんだ……。魚は生臭いから嫌いだけど、野良猫にあげると喜ぶし……」
「猫が好きだもんな、エンデュランスは」
「でも、僕が一番釣ってみたいのは……ハセヲ、僕に釣られてみる……?」
「え、遠慮しとく」



254 :名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 05:46:15 ID:Lpgev7FS

「遅くなりましたー!」

千草……いや、アトリが少し遅れてやって来た。
これでカナードのメンバーは全員集まったワケだ。
最初は俺、シラバス、ガスパー、アトリだけの会合の予定だったしなぁ。
それが知らねーうちにこんなに集まりやがって……

「遅いぞ、アトリー」
「正妻が遅れちゃ、旦那のハセヲが申し訳立たないだろ?」

今の茶々入れたのは揺光とカール。
俺とアトリは一応、この《The World》で挙式を挙げた中っつーことで……つまりはゲーム内限定の夫婦だ。
でもこのメンツの中にそんなことを気にする奴は1人もいねぇワケで。

「あとさー。アトリが遅いからハセヲの隣り、あたしが貰っといたから」
「お、おい、カール……」
「ハセヲがよければあたしは愛人でもいーよ?」
「いや、だからな……」

笑いながらムギュッと俺の腕に胸を押し付けてくるカール……絶対わざとだな。
つーか他の連中の視線が痛い。
シラバスはいつもみたく「^^;」、揺光は「アタシも交じろっかなー?」みたいな顔してるし
クーンは「ハセヲ、お前はいいよな……どうせ俺なんか……」って矢車みたくいじけてるし
エンデュランスに至っちゃ今にも憑神呼び出しそうな血走った目つきしてやがる……。

「カールさんがハセヲさんの隣りがよければ、私はそれで構いませんよ?」
「……えっ?」

その場にいた全員が、ほぼ同時に声を漏らす。
いつものアトリなら絶対に
「何言ってるんですか、ハセヲさんの隣りは私なんですー!」と声には出さないものの
静かに押し殺した感じで何気なくアピール、視線と視線で女同士の戦い始めても可笑しくない。
そのアトリが「私はそれで構いませんよ?」とか……何、この状況。

「ア、アトリ? 悔しくないのか? ハセヲ、カールに取られちゃうかもしれないんだぞ?」
「ハセヲさんはそんな人じゃないって、信じてますから」
「……」

あぁ、そっか。
そう言えば他の連中、俺とアトリがリアルでも付き合ってるって知らないんだっけか……。

「……負けた。アトリ、あたしの負けだ」
「カール?」
「あたしはハセヲが欲しかった……でもこれで諦めたワケじゃない。いつかまた、あんたに挑戦する!」
「はい、望むところです。負けませんよー!」

……お前らどこのメフィラス星人かと小一時間。
つーかアトリの奴、

『人が人を好きになるのは、とても自然なことだから。ですから、いちいちそんなコトに怒ってたらキリがないんです』

って言ってたの、マジだったんだな。
さっきもカールに「正妻」って呼ばれた時、軽くスルーしてたし……忍耐強くなったじゃねーか。
それともアレか。これが……正妻の余裕、ってやつか?
さすがにそりゃ考えすぎか……自惚れてんのは俺の方じゃん……アホくさ。



255 :名無しさん@ピンキー:2007/03/12(月) 05:48:38 ID:Lpgev7FS

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「明日はお昼までにはそっちに行きますから」
「ん」
「クリスマスパーティなんて久しぶりだから、頑張っちゃいますw」

皆で騒いだ後、解散。ホントなら他の連中とも話したかったけど、忙しい奴らもいるだろうし無理はさせたくねぇ。
今はアトリと2人、冬季限定解放のルートタウンでボーッと突っ立ってチャット中。
俺はついこの間まで志乃を助けることで頭がいっぱいで気にもしてなかったんだが、
《The World》にゃ季節ごとに限定解放されるサーバーやエリア、イベントが山のようにある。
これからは、そーいうのにも参加してみるのもいいかもな。やっとこの世界で安心して遊べるようになったんだからよ。

「プレゼントも持っていきますから、楽しみにしててくださいね!」
「そーだな」

実はそれが一番の問題だったりする。
ゲームの中ならレベルの高い装備とか効果の強い回復アイテムとかプレゼントすりゃ済むけど
リアルでの付き合いとなると話は別。自慢じゃないがコイツと付き合うまで彼女居ない暦=年齢だったワケで……
どんなもんをプレゼントすりゃいいのか最初はすげー迷った。
迷った挙句、他の女PCに何を貰ったら嬉しいか?と意見を聞くと
「きみ」「カップラーメン1年分!」「新車」「エン様!」「トライエッジ!」
とロクな答えが返って来なかったから、結局自分で考えることになっちまって……。
最終的に千草へのプレゼントに選んだのはオルゴール。
学校帰りにアンティークショップで見つけて、ちょっと良いなって思ってたやつ。
親から貰った金で買うのは少し気が引けたけどな。
いつかバイト始めて、その金で違うもん買ってやれたらな、って思ってはいるんだぞ、一応は。

「つか、お前……よくカール相手に怒らなかったな」
「ハセヲさんが人に好かれるのって、私としても嬉しいですし」
「例え相手が女でもか?」
「カールさんはああいう性格の人だって分かってるつもりですから」

ふーん、女同士で通じるもんでもあんのかね。……って。

「何で俺の足踏んづけてんだ……?」
「あれ? カールさんには怒ってませんけど、ハセヲさんに怒ってないとは一言も言ってませんよ?」
「……」
「自覚持ってくれないと困りますっ、いっつも簡単に抱きつかれちゃうんだから!
 その……一応は、ゲームの中とは言え……私達は……えっと……何と言いますか……」
「その先言うな、恥ずいから」

こんな感じだけど、お前にゃ感謝してんだぜ色々と。
アトリが最後まで傍に居てくれたから頑張れたって思ってるし……。
ここで失くしたものも多いけど、ここでお前から貰ったものだっていっぱいあるんだからよ。

「とにかく……私以外の女の人を好きになっちゃ、ダメですからね!」
「ハイハイ、わーってるって」
「ハイは1回ですっ!」
「(そーそー、千草はこーじゃなきゃなw)」


今はまだ、旅の途中。                                  【 アトリルート:Normal End 】
最終更新:2007年11月25日 10:09