384 :名無しさん@ピンキー:2007/03/27(火) 15:31:06 ID:iluNbIYw
俺たち碑文使いがクビアを倒してから数ヶ月。The worldはあるべき姿、平和な日常を取
り戻すことができたようだ。PKは少しも減らないが、まあそれもあるべき姿の一つなのだ
ろう。Auraが言っていたようにこれからも俺たちの手でこのThe worldは作られていく。
未来はきっと明るい。俺はそう信じている。
それから今の俺はこれまでにないほどThe worldを楽しんでいる。カナードのギルドマ
スターとしてシラバス、ガスパーとショップを開いたり、クーンやパイとクエストをこな
したり、大火のおっさんや松と修行したりもするし、朔望とアイナと遊んだこともあった。
他にもアトリと揺光と冒険に行って二人の喧嘩に巻き込まれたり、なつめに襲われたり、
欅に改造されそうになって逃げ出したり・・・・まあ大変なこともある。
昔とは違う。今の俺には仲間がいる。そしてそばに志乃がいる。
今俺はThe worldでのハセヲ、リアルでの亮という両方の形で志乃と一緒にいることが
できる。志乃が目覚めて改めて志乃の大切さを感じさせられた。志乃を助けるために俺は
変わることができた。そしてこれからも志乃のために変わっていくことができる。志乃が
誰よりも大切だ。そんな俺にとって志乃との距離をもっと縮めたいと思うのは当然のこと
だった。
グリーティングカードはかなり便利だ。聞きにくいこと、簡単には口にできないことも
相手に伝えることができる。そんなところがまだ青臭いガキなんだろう。
『よかったら今度、一緒にご飯食べに行こう。』グルメのグリーティングカードのおかげ
で志乃と一緒に食事に行くことができた。
『あまり一途にならないで。』フラワーギフトのカードではなんかくやしかった。『ハセ
ヲ・・・ ・・・私はハセヲのこと好きだよ・・・ ・・・。』でも・・・うれしかった。
俺の好意は志乃に届いていると思う。そして志乃は俺に好意を返してくれている。幸せな
日々だと思う。それでも未だに消えない壁もある。まだ志乃は俺に対して壁を作っている。
そしてそれは俺も同じだ。
オーヴァンが消えた世界。オーヴァンはいつか戻ってくると俺も志乃も信じている。そ
れでも埋まらないものはある。思いが揺らぐこともある。
俺は志乃が好きだ。俺はそれを埋めていくことができるだろうか。
390 :名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 11:09:31 ID:NRyeANLf
Side―志乃
半年にわたる昏睡状態から目覚めて数ヶ月。私はようやく二つの世界に帰ってくること
ができた。リアルとThe world、彼―オーヴァンのいない世界に。
今でも悔しい。どうして彼の支えになってあげられなかったのだろうか。私はオーヴァ
ンに自分の身を捧げた。でもそれは彼のためじゃない、自分のためだ。私は彼の特別になりたか
った。彼の、妹のためにすべてを投げ出した彼のように強くなかった。覚悟の足りない私
が彼の特別になれるはずなどなかった。
ハセヲ―亮はそんな私を特別にしてくれた。目覚めてからの私は以前よりずいぶんぎこ
ちなく彼と接してしまっていると思う。彼は頻繁にメールやレアなグリーティングカード
を送ってくる。私は彼のことが好きで、そのことを自分でも意外なくらい素直に伝えてい
る。亮のことが好きな気持ちに嘘はない。でもオーヴァンのことは忘れられない。そのこ
とが結果的に亮を傷つけてしまっている。それでも彼のことを突き放すこともできない。
やっぱり私は弱い。
いつまでも亮に甘えていてはいけないと思う。私が前に進まなければきっと彼にも迷惑
がかかる。そして彼に置いてかれる。そんな想いから私はいつのまにか亮をデートに誘っ
ていた。それが自分勝手な思いつきと行動だと知りながら、とにかく動きたかった。
393 :名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 22:31:07 ID:NRyeANLf
Side-亮
休日の街は明るく活気に満ちている。晴天ならなおさらだ。待ち行く人もみんなこころ
なしか浮かれているように感じる。俺はそんなことを考えながら自分が一番ぶっちぎりで
浮かれていることに気づいていなかった。
今日はリアルでの志乃とのデート。やはりデートはリアルじゃないと(The Worldで二
人きりもそれなりにいいけど)。それも珍しく志乃の方から誘ってくれたのだ。自分が思い
を寄せている女性から誘われたら男なら少なからず浮かれるだろう。まして亮は高校生。
その浮かれようは挙動不審の域だ。今まで志乃と何度かデートはしたがいつも落ち着いて
る志乃と違い俺はテンパっていることが多かったし、恋人になるどころか仲のいい友達程
度が関の山。とりあえず志乃が来るまで少し落ち着いておこうと俺は深く深呼吸した。
志乃が待ち合わせ場所に現れたのは待ち合わせ時刻の5分前。早すぎず遅すぎずの絶妙
なタイミング。この時点で三十分以上前から待っていた俺より一歩上手だ。
今日も志乃は落ち着いた感じの服装、薄いピンクのシャツに黒の上着、ひざまでのスカ
ートに茶色いブーツ。女の子の服装には詳しくないけど趣味はいいと思う。でも褒めやす
いところがない服装だったのでどこもほめられずにスルーしてしまった。自分の経験値の
低さが恨めしい。とりあえず歩きながら話題を振ってみる。
「志乃、最近大学のほうはどう?」
「う~ん。やっぱりまだ厳しいかな。一般教養の授業がまだいっぱいあるし。」
志乃は心理学方面の知識を学ぼうと考えているらしい。前にそのことについていろい
ろ話してくれたとき話についていけなくて悔しい思いをした。普段あまり感じない志乃と
の年の差を感じさせられたのを覚えている。今はいろいろと忙しい時期みたいだ。
「サークルに入ったりはしないの?勉強だけじゃ疲れるしストレスも溜まるだろ。」
「今は勉強のほうに力をいれたいし、The Worldにも今までどおり時間を割きたいし。で
も友達とお茶したり、遊びに行くことはたまにあるよ。楽しいよね。」
志乃の友達ってどんな人なんだろう。前にちゃらちゃらしただけの人は嫌いって言って
たけどやっぱり中身のある人なんだろうか。その人たちとどんな話をするんだろう。少し
考え込んでしまっていたのだろうか。
「どうしたの?」
志乃がしたからのぞきこむようにして楽しそうな顔をしている。
「安心して、女の子の友達だから。彼氏もまだ作ってないし。」
不穏なセリフがまざった。聞き流せず思わず声がとがってしまう。
「まだってなんだよ。」
「あ、亮は妬いてくれるんだ。うれしいな。」
確信犯だ。絶対遊ばれてる。それでも俺の顔は真っ赤になってしまったと思う。今回のデー
トもやっぱり志乃のペースみたいだ。
最終更新:2007年11月25日 10:52