310 :がらす玉:2006/11/02(木) 20:54:28 ID:wcP62j/C
最近このパターンが定例化しつつある。
朔からメール⇒参加しないと何言われるかわからないから承諾⇒ストレスのたまる(?)冒険。
ハセヲは、アイテム入手をレベル上げも兼ねて行えるためかなりの頻度で参加している。
しかし問題点がない訳ではない。
そう、朔だ。
毎回毎回それはもう羨ましそうで憎らしげにハセヲを睨む。当然悪態の類も飛んでくる。
アイテム&経験値がゲットできることと朔の悪態や行動を我慢することがとてつもなくぎりぎりのバランスで両立されていた。
やはりハセヲも一プレイヤーなので楽しい冒険もしたいのである。
311 :がらす玉:2006/11/02(木) 21:05:29 ID:wcP62j/C
だが、今日の冒険は普段と趣を異としていた。
エンデュランスがいなかったのである。
朔と二人で草原フィールドを歩く。
「今日は何でエンデュランスがいないんだ?」
ハセヲの二歩先をさっさと歩く朔に向かって聞いた。
「風邪なんやて…はぁ、ツイてへんなぁ…」
普段なら『何でそないなことハセヲに教えなあかんねん』などと言って睨みをプレゼントするはずの朔が、妙に素直になっている。
ハセヲは、
(エンデュランスが来ないからか? それなら中止にすればいいだろうに)
と思ったが、敢えて口には出さなかった。
312 :がらす玉:2006/11/02(木) 21:19:31 ID:wcP62j/C
戦闘を繰り返すこと数十分。特に話をするでもなく(エンデュランスがいた場合、話というより悪態が先につく)苦戦しながらもモンスターを狩っていく。
宝箱を幾つか開けアイテムを回収すると今回のミッションであるボス討伐に取り掛かった。
通常のバトルとは違い、かなりてこずる。何故か朔ばかりに攻撃が行くためそれをフォローする。
何とか勝利をおさめた二人。
「無茶しすぎだ朔」
武器を仕舞いつつ言う。
ハセヲやエンデュランスは朔より若干レベルが高い。それに(主にエンデュランス)レベルを合わせる為、当然朔は苦労することになる。
350 :がらす玉:2006/11/03(金) 21:16:30 ID:YFnKRJGi
310-312の続き
しかも今回は二人だけだ。
エンデュランスとともに前衛が二人いたならば朔のダメージはもっと減っていただろう。
ふと見ると、やけに朔がふらついていることに気付いた。
「おい、大丈夫か朔?」
「何がや?」
「お前…調子悪いんじゃねぇのか?」
声をかけられハセヲを睨んでいた目が、一瞬泳ぐ。
(やっぱり、か…)
腕を組み、小さな溜息を漏らすハセヲ。
「カンケーないやん、ウチの調子がよかろうと悪かろうと…」
朔は悪態を吐くが、どうも覇気に欠ける。
366 :がらす玉:2006/11/04(土) 06:48:38 ID:jQb9OuPJ
「二人揃って風邪引きさんかよw」
などと鼻で笑いながら言ったが、
「チッ…さっさとゲームやめて寝ろよ」
一応病人の為、気にかけてしまう。アトリパワー恐るべし、である。
が、
「いやや。ハセヲの言うことなんかきかん…」
朔はそれをはねのける。
「ふざけてねぇでさっさと寝ろ! お前の大好きなエン様と会えなくなってもいいのかよ!」
多少語気を荒げる様に言うハセヲ。しかし朔はふるふると頭を左右に振るだけである。
「いやや、エン様に渡したいもんがあんねん…手に入れるまで帰らへん!」
振りながら言う。
367 :がらす玉:2006/11/04(土) 06:51:26 ID:jQb9OuPJ
(エン様好きもここまで来ると尊敬に値するな…)
自分のことよりまずエンデュランスのこと。
たかがゲームで。
そう、たかがゲームで、である。
(…俺も人のことは言えねぇか…)
脳裏に志乃の面影が過ぎったが、頭を振ってそれを払う。
「……で、何探してんだ?」
「…え?」
「ここには無かったんだろ?」
頷く朔。
ハセヲは朔の手を掴むと、プラットフォームまで急いだ。
「はやいとこ見つけて休め。俺も手伝ってやる」
本調子でない朔が、多少素直になった朔が可愛かったから一緒に居たい訳じゃない、と自分に言い聞かせるハセヲ。
372 :がらす玉:2006/11/04(土) 19:53:49 ID:jQb9OuPJ
約束通り投下
朔は手を振りほどくでもなくついて来ている。
その普段とのギャップが妙に可愛くて、アイテムを見つけるまでずっと、手を繋ぎ続けていた。
「やっと見つかった…」
タウンに戻ったハセヲは小さく溜息を吐きながら呟いた。
「…………」
マク・アヌの橋に寄り掛かるハセヲの隣にじっと自分の手を見つめる朔が座っている。
「…アイテムも見つかったんだ、さっさとログアウトして休め」
いつまでも動かない朔に、さらに調子が悪くなったのかと心配してログアウトをすすめた。
しかし動こうとしない。
373 :がらす玉:2006/11/04(土) 20:34:03 ID:jQb9OuPJ
どうしたものかとハセヲが思案していると、
「…初めてや…望以外の男に手ぇ握られたん…」
ぽつりと朔がもらした。
「悪かったな…どうせ初めてはエンデュランスが、とか思ってたんだろ?」
ハセヲはどこかばつが悪くなり、腰に手を当て明後日の方向に目線をそらす。
「ちゃうわ阿呆…」
ぐっと両膝を抱え込み、呟く朔。
「…そんなんとちゃう…せやけど…初めてでようわからん…」
ハセヲが視線を降ろして見ると、少し頬を朱に染めている朔と目があった。
途端、ばっと反対方向に顔を反らす二人。非常に気まずい状況である。
446 :がらす玉:2006/11/05(日) 17:55:47 ID:jfK/pJNw
「………」
「………」
しばし無言の二人。
「…あ~、くそッ! こんなの俺の柄じゃねぇ!」
この沈黙に痺れを切らしたハセヲが吠える。
「さっさとログアウトしろ!」
朔の手を無理矢理掴み、立たせると、
「ほら、早くしろ」
急かせるようにログアウトさせた。
うっすらと輝く蒼のリングが幾つも朔を包み、球体に収束し、消えた。
少しホッとしたように表情を緩めるハセヲ。
死の恐怖とまで呼ばれた男が見せる嘲りのない微笑。
「…ったく…手間かけさせんじゃねぇよ…」
マク・アヌの黄昏れを眺めながらハセヲはぽつりと呟いた
551 :がらす玉:2006/11/08(水) 11:01:56 ID:ZFO4Vsf4
数日後。
「疾風双刃!」
「…夜叉車…」
「オルバクドーン!!」
今日も相変わらずこの三人でモンスターを狩っていた。エンデュランスは無事全快したようでいつも以上に活躍している。
その様子を恍惚の表情で見つめる朔。
特に変わった様子は見られない。朔の方も問題無いようだ。
「はぁ~…エン様ホンマにカッコええわぁ…」
全体的にSPが心許なくなってきたので、一旦後衛に下がって気魂香を使おうとした。するとこの呟きである。
因みに、前回の反省をふまえ、今回は朔にレベルを合わせている。
553 :がらす玉:2006/11/08(水) 11:38:44 ID:ZFO4Vsf4
>>551続き
よってハセヲとエンデュランスにとっては楽に勝てる敵しか出てこない。
「サボってんじゃねぇよ、朔。これ終わったら次はボス戦だぜ」
「…そないなことわかっとるわ! 一々うっさい男やなぁ!」
声をかければ速攻で噛み付いてくる。
(大丈夫そうだな…)
いつもと変わらないその対応に安堵すると、
「ったく、可愛くねぇな! 調子悪かった時はあんなに可愛かったのによ」
悪態に冗談めいたニュアンスを混ぜて言い返す。
「なッ!? かわいい………?」
554 :がらす玉:2006/11/08(水) 11:45:31 ID:ZFO4Vsf4
>>553続き
普段なら『うわッ、キショいわ!』等悪態が返ってくるのだが、今日に限って妙に反応が違う。
頬なんかうっすらと赤く染めて俯いている。
(…チッ…最近朔といるとすげー調子狂う…)
印象が徐々に変わってきているのだ。
朔は、いつも文句や悪態を言い合える同性の友達に近い存在だったのだが、今は朔の行動の端々に異性が顔を出し始めていて、微妙なやりづらさをハセヲは感じていた。
(あ~…クソ)
心の中で一言吐き捨てると、
「エンデュランス、朔! ボス戦だ、気合い入れていけよ!」
気持ちを切り替えるように言った。
578 :がらす玉:2006/11/09(木) 19:27:57 ID:ozok8S7w
>>551.>>553-554の続き
「せや…ハセヲにも伝えといたる」
タウンに戻り、エンデュランスと別れた後朔が思い出したように呟いた。
「ウチ近いうちに引っ越しすんねん」
「引っ越し?」
「親の都合。ようある理由やろ」
「ああ」
「しばらく『TheWorld』にはログインせぇへんからな」
一応言うといたるわ、と最後に付け足した朔。
エンデュランスにはもう抜かりなく通達してあるのだろう。
「落ち着いたらメールよこせよ、朔」
「しゃあないなぁ」
二言三言言葉を交わすと朔とも別れる。
657 :がらす玉:2006/11/12(日) 15:00:09 ID:8GO/+HHF
>>578の続き
ハセヲも、もはや長居する理由も無くなったためメールのチェックをしようとログアウトしていった。
ふぅ、と一息吐くとM2Dを外す朔。
「おねえちゃん、おわった?」
様子を見に来た望がゲームをプレイし終わったらしい朔にそう聞いた。
「ん…終わった」
朔は望を見て短く答えを返す。
「おかあさんが『はやくおへやのおかたづけしちゃいなさい』って」
どうやら片付けの催促らしい。
明後日にはもう新住居に着いていなければならないのである。この催促はある意味妥当なのだが、
「もうとっくに終わっとるゆーに…」
658 :がらす玉:2006/11/12(日) 15:08:42 ID:8GO/+HHF
溜息混じりの文句を返した。
「…ふふふ」
望はそれを聞いて小さく笑う。
元々その辺りをしっかりしている朔はもう既に荷物を段ボールに詰め、あとはその身一つで赴くだけだ。
「次は望の番やろ? はようやっとき…また文句言われるで」
朔は冗談混じりに望に言うと自分の部屋に戻っていった。
「今日で一週間か…」
朔に引っ越しをすると告げられてからもう一週間も経つ。突っ掛かってくる存在がないと妙に落ち着かなくなっていた。
「そういやぁ、引越先聞いてなかったな」
ふと、そんなことを思ったが朔が言うとも思えない。
と、
732 :がらす玉:2006/11/15(水) 17:54:09 ID:RbA2+q6q
ピンポーン…。
小さく呼び鈴が鳴った。
ログアウトとしてM2Dを外した時、それが何回か鳴らされていることに気がついた。
慌てて玄関のドアを開け正面を見た。
「…………?」
だが、目の前には誰も居ない。左右を見回してみるが同じ結果に終わる。
不思議に思い眉をしかめた瞬間、ふと目線が下を向いた。
「あの~…」
どこかで見たことのあるシチュエーションである。
小学校高学年くらいだろう女の子(微妙に判断に困った)が亮を見つめていたのだ。
「…となりにひっこしてきました…よろしくおねがいします…」
733 :がらす玉:2006/11/15(水) 18:05:05 ID:RbA2+q6q
「…………」
一生懸命に亮を見上げる少女。
その時亮は健気な可愛さに一瞬心奪われ、無言のまま立ち尽くしてしまった。
「……あの……」
眉を八の字に曲げて見つめる亮を見た少女は、もしかして怒っているのだろうか、等と考えていた。
「……あ~もう!」
すると突然、少女の隣から少々の怒気をはらんだ声が亮の耳に届いた。
「望(ノゾミ)がやりたいゆーから任せたっちゅうに…もっとしゃきっとせんかい! しゃきっと!」
見ると目の前の少女と全く同じ顔をした別の少女が亮の視界に入ってきた。
対照的な二人。
妙な既視感を覚えた。
137 :がらす玉:ハセヲ×朔、望(♀):2006/11/30(木) 18:16:11 ID:JasL/+s+
前スレ>>733の続き
「すんまへん。今日から隣でお世話になります、よろしゅう」
大人しい少女を軽く叱責(?)した活発そうな少女はその手から白い箱をふんだくると亮に差し出した。
「…ああ…こちらこそ」
何とかそう言葉を搾り出した亮。
「ほな、お邪魔しました!」
活発そうな少女が隣の少女の頭を押さえながら頭を下げた。
ほらはようしぃ、と言われながら快活そうな少女がもう一人を急かしながら去っていく、そんな様子を白い箱を片手に呆然と見つめる亮であった。
翌日。
結局荷物整理で一晩潰してしまった。
138 :がらす玉:2006/11/30(木) 18:20:46 ID:JasL/+s+
「…あ~…そういえばハセヲにメールせな…」
ぐったりとベッドの上に突っ伏したまま頭だけを上げて呻いく朔。
もそもそベッドの上出ひとしきり蠢いた後、ベッドから出るとパソコンの電源を入れる。
昨日はよほど疲れていたのか、朔が目覚めたのは陽が天を越えた頃だった。
「……え~と…件名は…『引っ越し終わったで』…内容は…」
件名を書き終わり、内容を考えていると部屋の扉をノックされた。
「おねえちゃん、おきた…?」
ノックしたのはどうやら望のようだった。
「なんや?」
「おひるごはん…たべるでしょ?」
「…ん~」
139 :がらす玉:2006/11/30(木) 18:37:00 ID:JasL/+s+
なるほど昼食のことか、と納得しドアを開けた。
「…あ……」
そのまま遅めの朝食兼昼食を済ませ部屋に入った瞬間、自分がメールを送る途中で放置してきたことを思い出した。
一応ディスプレイの電源は落としていたのだが。
「……内容は…」
どないしよう、と心の中で呟く朔。
はっきり言って話題がなかった。
別に件名と同じ様に『引っ越しが終わったからまたログインできる』などと書けばいいのだが、引っ越し前の一件がどうも気にかかって、キーボードを打つ手が止まってしまうのだ。
(何意識してんのやろアホらし…)
140 :がらす玉:2006/11/30(木) 18:41:10 ID:JasL/+s+
決して自分が好意を持っているかも、等とは微塵も考えない朔だった。
うんうん唸りながらメールの内容を考えているが、何分小学生である。気の利いたことを書こうにもボキャブラリがなさ過ぎるのだ。結局、悩んだ結果が『終わったで、引っ越し』だった。
「今日は大量でしたね、ハセヲさん♪」
朔がメールの内容に頭をフル回転させていた頃、ハセヲはアトリとクーンを連れてダンジョンにもぐり、タウンに戻って来たところだった。
アトリの腕が治ってから暫く誘っていなかったので、クーンが持ち掛けて来たのだ。
156 :がらす玉:ハセヲ×朔、望(♀):2006/12/02(土) 07:26:16 ID:E28SB3EM
「ああ、結構アイテム拾えたな…」
所持アイテム覧を改めて見てみると、やけに魔典系が多い気がする。
「それなりに経験値も稼げたんだ。一石二鳥だっただろ?」
そんな会話を聞きながらクーンが得意そうに言う。
「はい♪ ありがとうございましたクーンさん♪」
ニッコリと笑いながらアトリは礼を言った。
(なんだかな…)
和気あいあいと会話に興じる二人を見ながら、ハセヲは微妙な物足りなさを感じていた。
確かに、頭の中が花畑の少女とナンパ野郎の二人と一緒にいれば退屈はしないのだが、充実感が感じられない。
(なんだかな…)
157 :がらす玉:2006/12/02(土) 07:29:34 ID:E28SB3EM
もう一度、小さく胸の中で呟いた刹那、
「ハセヲさん、そろそろお開きにしませんか?」
アトリが解散を切り出したこととメールが着たことが見事に重なった。
「そうするか…」
「じゃあな、ハセヲ」
「また誘ってくださいね♪」
それぞれが別れの言葉を口にし、青く輝くリングに消えていった。
(…ログアウトしてメールでもチェックするか…)
ハセヲもまたログアウトしていった。
「…朔からのメールか」
ハセヲに届いていたメールは一通。
朔からのものだ。
見ると件名と内容が激しく酷似していた。
「終わったのか…」
最終更新:2007年11月25日 10:52