199 :カラシ:2007/03/03(土) 00:49:12 ID:3OxHXOTd
第三次ネットワーククライシスから6年がたち、オーヴァンが発動させた『再誕』の影響もほぼ完全に消え去った。
今もなおオーヴァンのリアルの人物-犬童雅人は未だに意識は戻ってはいないそうだ。
今現在俺-三崎亮は23になり、仕事で忙しいがそれでもまだThe Worldを続けている。
そういえば今でもシラバスはほとんど毎日のようにログインしてたな、時間の割り振りの参考にしたいぜ。いや、マジで。
何もしないでいると特に意味も無く何か考え事をしてしまう。
ん、The Worldはしないのか? だと?
今はやらない。ていうか俺はできない状況下にいる。
実を言うとつい先日バイクで家に帰る途中に車と接触事故を起こしてしまった。
原因は飲酒運転によるものだった。もちろん俺が飲んだわけじゃないぞ! 運転手側に非があるはずだ。
とりあえず被害はバイク一台大破と右腕剥離骨折だ。それでもって2週間の入院することになった。
右腕が使えないと食事が大変ですげー困る。The Worldは片手でできるが・・・。
サルバドル愛原みたく病院内にこっそりM2Dを持ち込めば良かったのに緊急入院のためそれはできそうになかった。
そのせいでThe Worldには5日ほどログインできていない。
とりあえず携帯はあったのでリアルでも多少の交流がある千草や志乃に連絡をいれて俺の知り合いには通告してもらった。
「ふあ~……暇だ」
欠伸も出るは独り言も出るは、重症だな俺は。
一応ここは相部屋のはずだが2日前に前多という人が退院してから4人部屋の中に1人だけが入院している状況になっている。
だがそんな入院生活もこの日を境にがらりと変わった。
200 :カラシ:2007/03/03(土) 00:49:51 ID:3OxHXOTd
コンコンッとノックの音と共に「失礼します」と言って看護師が入ってきた。
とりあえず入り口側に目を向けるといつもと違う看護師が立っていた。
「こんにちわ、亮さん」
「どうも……」
一応返事はしたが特に会話をする気も無くただぼんやりしていたが、
「反応薄いな~……私が誰か分かりますか? 名前は萌ですよ」
と少し頬を膨らませながら言ってきた。
(やけに馴れ馴れしいな……ん? 萌…萌……タビー…あっ!!)
「えっ!? もしかしてタビーか!?」
「えへへ~、正~解!」
これは本当にビックリした。
まさかあのタビーが偶然同じ病院にいるなんて思いもしなかった。
タビーはタビーでドッキリが成功したみたいでにやけついてるし、少し悔しい。
「それにしても驚いたよ、だってハセ「リアルでその呼び方はやめろ」
「あはは、ごめんごめん」
なんだか本当に謝ってるようには聞こえないがまあ、いいだろう。
てか、今となってはハセヲというキャラクターはThe World内でかなりの人気が出てるみたいだ。
6年前のアリーナ3冠達成してからはチャンピオンの座も降りたが、ここ数年でレベルの上限も上がりさらに2つもアリーナのクラスが追加されたりしていた。
そんな中二つのうち片方は揺光の希望もあって碧聖宮に出たときと同じメンバーで出て見事にチャンピオンなった。
その上、一番上のクラスは一人で優勝してしまい周りからの知名度はさらに上がってしまった。
暇潰しに『ハセヲ』で検索すると100以上のファンサイトがあり、
その中の一つに『ハセヲファン倶楽部』というのがあって、何気なく見てみると
〔ファン倶楽部隊長:一ノ瀬薫〕
というのを見たような見なかったような……。
「ところでハセ・・・じゃなかった、亮は今何の仕事してるの?」
「俺はネット関係の仕事だけど」
「え!? その腕だったら仕事大変じゃん!」
「たしかにな、まあ、ペース落ちるだろうけど片手で何とかするさ」
2週間仕事休むは入院費、治療費、バイクの修理代諸々で今月大ピンチだなこりゃ。
289 :カラシ:2007/03/15(木) 16:44:32 ID:rcOWrSfM
その後の入院生活はわりと退屈ではなかった。
騒ぎを聞き付けた千草や志乃など知り合いの中で何人かがお見舞いに駆けつけてくれた。
これない人は携帯のムービーで送ってきたりもしてくれた。
そんな中萌は仕事の休憩時間や仕事終わりにも病室を訪れて話し相手をしてくれた。
そして今日はやっと退院の日だ。
思い返せば長かったような短かったような時間だった。
事故から1週間もたつとあの時の運転手は逃げた後自首したそうだ。
一応入院費などは向こうが支払ってくれることになり、とりあえず丸く収まった。
荷物をまとめていると萌がやって来た。
「亮もう腕大丈夫?」
「ん、萌か。まだ少し違和感があるな……」
「そっか~……食事は大丈夫?」
「食えないことは無いけど、大丈夫だろ」
なんだか心配そうな面持ちで聞いてくる萌に対しなるべく心配かけないように言ったが、
「でもやっぱり料理とか大変そうだし、私が作りに行こうか?」
この腕ではろくに料理はできないだろう。
それに何かのミスで火傷なりすのはごめんだしな。
「う~ん……じゃあ頼むとするか」
「了~解、じゃ今日は仕事早めに終わるから一緒に帰ろうよ。早速私の料理の腕前を披露しちゃうよ~♪」
何だかんだで結局は萌が俺の飯を作ってくることになった。
それに妙に萌はウキウキしてるし。
正直俺の心境は微妙だ。
わざわざ飯を作ってくれるのは有りがたい。
しかし、女の人がてか萌が俺の家に来るのがどうも気恥ずかしい……
そうこうしてる間に今借りてるアパートについた。
扉を開けたら案の定テーブルや床などに軽く埃が積もってやがる。こりゃあ飯よりまずは掃除だな。
「にゃはは~、亮の部屋汚~い」
「2週間も入院してたんだからあたりまえだろ」
そのさらに10日ほど前からも掃除してないのでほぼ1ヶ月ほったらかしだ。
情けなくて気が滅入る。
290 :カラシ:2007/03/15(木) 16:45:03 ID:rcOWrSfM
掃除自体も部屋がそこまで広くはないのですぐに終わり、萌が早速調理を始めたみたいだ。
十数分もするといい匂いがしてきた。
「(━━何か炒めものでも作ってるのかな?)」
何てことを思いながら溜まってた仕事の内容等を確認していた。
やべー、期限あと3日のもあるじゃねーか。徹夜しなきゃ終らないなこりゃ。
「ご飯できたからお皿出してー」
「ん、わかった――何作ったんだ?」
「青椒牛肉だよ。あっ、ピーマン苦手とか…「そんなわけねーだろ!」
向こうは十中八九からかうつもりで言っただろうけど見事に反応してしまった。
なんだか萌は志乃とはまた違った『子供扱い』をしてくるようになった。俺ってそんなにガキに見えるのか?
そして飯も食べ終わった頃にふと疑問に思ったことを口にした。
「そーいや萌はどこに住んでるんだ?」
「えっと、今は先輩のところに住まわせてもらってるんだよ」
「部屋は借りてないのか?」
「この間まで借りてたんだけど、なんだかそのアパートが耐震偽装してたらしくて建て替えることになったんだ」
「……それで追い出されたのか」
なんだかんたで未だに耐震偽装なんてやってるところあるんだな。
A歯建築士の事件からもう何十年たってるぞ。
いくら経費や期限が厳しいからって『安く早く』よりは『安全』を重視してほしい。
安くて早いのは牛丼で十分だ。
そんなことを思いながら納得していると萌からとんでもない話が飛びだした。
「ねえ、亮」
「ん?」
「もし良かったらなんだけど……しばらく泊めてくれない?」
誰が?――俺が
誰を?――萌を
何をしろって?――俺の家に泊まらせる
ちょっと待てぇい!
……とりあえず落ち着け俺。
「え~と、そのなんだ…先輩のところには泊めてもらえないのか?」
「えっと、それは……し、しばらく出張するみたいだから」
なんだか苦し紛れの言い訳に聞こえないでもないがとくに詮索もする気もないためあっさり許可ん出してしまったわけだが…。
萌は萌でもう荷物取りに向かったわけだし
「(とりあえず仕事でもするか)」
と気楽に考えていた。
最終更新:2007年11月25日 10:50