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亮×智香

101 :名無しさん@ピンキー:2006/10/22(日) 05:08:14 ID:rkJHk7LV

「あの、すみません。仁村先輩はいらっしゃいますか?」

3年の教室に来るのは相変わらず緊張する。
同じ校舎のはずなのに、階が違うだけで何となく空気まで違って思えるからだ。
2年に進級して少しはこの空気に慣れたと思っていたはずなのに、やはりいつも緊張を禁じえない。

「仁村っちー、後輩ちゃんがご指名ー!」
「仁村っち言うな」

クラスメイトを軽く小突きながら長身の少女が近づいてくる。
3年の仁村潤香だ。2年の倉本智香と同じ図書委員、つまりは先輩に当たる存在。
背のあまり高くない智香からすれば、まさに潤香は大女だった。
あの坂本竜馬の姉の乙女姉さんが五尺八寸、174cmだっと言われているが彼女は更にでかい。

「どした、智香」
「えと……折り入って、相談したいコトあるんだけど……ダメ?」
「いいよ。放課後、図書館に……ってあんた今日、当番だったか」
「うん」
「なら準備室で待ってな。あ、あたしのカールには触るんじゃないよ」
「分かってるって」

カールと言うのは文字通り、あのカール。
某明治製菓が1968年に製造開始した、あのカールである。
今年2018年にめでたく50周年を突破、潤香の大好物であり非常食でもある。
偏食家の潤香は弁当の類を嫌い、いつも図書準備室に篭ってカールばかり食べているのだ。
無論、図書委員の仕事はほったらかしで……。





****************************





「私のオススメはコレだな、新潟限定のかに味カール。
 名古屋限定の手羽先味カールもイケる。おっと、やらないからな」
「お菓子の自慢はいいからさぁ、アタシの話も聞いてよ……」
「聞いてるさ」

放課後――――――。
約束通り潤香は知香の相談に乗るべく図書準備室の戸を叩いた。
いや、ただしは買い置きしていたお菓子を摂取するためだが、今はそんなことはどうでもいい。

「死の恐怖のハセヲなら、あたしも聞いたことある」
「ホント?」
「あたしのクラスにも《The World》やってる奴は何人もいるし。有名っぽいね、そのPKK」
「元PKK。今はイイ奴だよ、すごく」
「それも知ってる。あんた、ハセヲとパーティ組んでるんだろ?」
「うん、まぁ……ね」



102 :名無しさん@ピンキー:2006/10/22(日) 05:09:35 ID:rkJHk7LV

「あんたゲームやっててブッ倒れて、そのまま意識不明のまま入院しちゃったもんな。
 昔のあたしと同じで、あの時はさすがに驚いた」
「ん……その辺のことはちょい曖昧なんだけど」
「ゲームに取り込まれてたんだろ? あたしも未帰還者だったし、大体のことは分かってる」

揺光のリアル、倉本智香が未帰還者になったように。
この仁村潤香もまた未帰還者の1人だった。ただし、それはもう8年も前のこと。
まだ《The World》がR:1と呼ばれていた頃の話だが。

「んで? 今日の相談内容ってソレ? CC社相手に告訴でもしようって?」
「違う違う! そーじゃなくてさ、何て言うか……」
「……男だろ?」
「うっ」
「相手はそのハセヲって子?」
「よ、よく分かったね……」
「てか、最初っからバレバレ」

智香と潤香は学年は違うものの既に1年以上の交友関係にある。
高校の入学式の日、図書館を見学に来た新入生の智香を案内したのが
その日委員会の仕事を担当していた潤香だった。が、それ以前に交友はあった。
《The World》で知香は初心者PCの揺光、潤香は碧星宮の宮皇兼PKKのカールとして。

「智香が恋愛ねぇ……こりゃ今年は猛吹雪が吹くね。いや、札幌にレギオンが降ってくるかも」
「そ、そんなに変かな? 似合わないかな?」
「そゆんじゃないよ。あんたが気に入ったんならいい奴なんでしょ、その子」
「うん……」

親友以上の潤香だから、包み隠さずに話すことができる。
もう揺光とカールとしての友情はないかもしれないけど、今は智香と潤香としての友情がある。
そう思えるから、智香は潤香に何でもいいから助言をしてもらいたかった。

「その子にはもう、好きって言った?」
「あ……それは、まだ。メールでフラワーギフト貰って……告白されたんだけど……」
「ほーう。……で、あんた。まさか返事しなかったとか?」
「『アンタの気持ちは受け取ったよ。胸にしまっておくね』って返事はした。
 あと、『アタシ、裏切ると怖いから!』って……最後に書いちゃった、みたいな……?」
「……最後でやっちゃったねぇ。そりゃ引くわ」

いくら好きの裏返しでも、これはキツイとさすがの潤香も思った。
智香は外見はそれなりに遊んでいる様な感じはするが根は真面目な子だ。
普段から委員会の仕事をロクにしない潤香から見れば、よほどの優等生だったのだ
(それでも潤香自身、やる気の無ささえなければ優等生の部類に属してはいるが)。
それはゲームの中でも同じで、少なくとも潤香がカールとしてプレイしていた頃の智香、つまりは揺光も悪い子ではない。
打ち解ければ人懐っこい子犬のようにじゃれて来る姿は今も鮮明に覚えているし。

「おばあちゃんが言っていた……。頭は鍛えなくていい、ただし男を見る目だけは鍛えておけ。って……」
「勉強苦手なアタシに対する嫌味にしか聞こえないんだけど……」

潤香の言う「おばあちゃん」とは彼女の母方の祖母の仁村タキ江のことだ。
智香が潤香の家に遊びに行った時に何度か会ったことがある。
つい数年前まで美大入試のための塾で講師をしていたこともあるらしい。
遊びに行った時「潤ちゃんがこんな可愛いお友達を連れて来るなんて!」と感激されたものだ。
更に言及すると、潤香の母は離婚経験がある。孫の潤香にそんなことを教えるのも、無理もない気はするが……。



103 :名無しさん@ピンキー:2006/10/22(日) 05:11:22 ID:rkJHk7LV

「智香としてはどうしたい? ハセヲって子と付き合いたいの?」
「まぁ……そりゃ……」
「なら付き合えばいいじゃん」
「付き合いたいけど……」
「おんやぁ、まだ他に問題あり?」
「ハセヲの周り……アタシの他にも色んなPCがいてさ……ハードル高い、って言うか……」

聞けばそのハセヲと言うPCの周囲には
電波系呪療士娘、ツンデレ系年増拳術士、ロリショタ系小学生魔導士、ネカマ撃剣士、電波系美青年斬刀士
などが存在していると言う。後半の2人についてはよく分からなかったが、とにかくそーいうコトらしい。

「くっくっく……何ソレ。面白いね、そのハセヲって子」
「笑い事じゃないって! ホント毎日大変なんだぞ!」
「智香、口調が揺光になってる」
「うわっ、ゴメン……ともかく、アタシとしてはもうちょっと……ハセヲと親密になりたいなぁ……って」
「んー。事情は分かった」

智香の話を聞いてる間もカールを口に運び続けていた潤香の動作が止まる。
と思いきや、指についたお菓子のカスを舌で数回舐め取り、ティッシュで拭いて丸めてゴミ箱へポイ。
食べている間に何か名案が浮かんだらしく、珍しく気だるそうな顔が明るく見えたのは智香の錯覚ではない。

「最近面白いことなくて暇だったし。協力したげる」
「え、潤香が……? で、でも、アンタ、もう《The World》引退したんじゃ?」
「再手続きすりゃいいさ。
 あんた達が頑張ったおかげで、もうAIDAだか山田だかってのはいなくなったんでしょ?」
「う、うん」
「決まり。まだカールのPCデータ廃棄してないし、再ログインするよ」

カールのPCデータ――――――あの“喪服の魔女”の異名を持つ鎌闘士(フリッカー)のことだ。
銀色の髪と群青色のドレスが映える、PKに襲われていた初心者時代の揺光の窮地を救った戦乙女。
天狼以前の碧星宮の宮皇でもあり、揺光が宮皇を目指すきっかけとなった女性PC。それがカール。

「潤香、いいの? もうゲームやらないって言ってたのに」
「気が変わった。それに約束したろ? “いつか、また一緒に遊ぼう”って」
「あ……」



“あんたは強くなる。自分に馬鹿正直な奴ほど強くなるって天狗のオッサンも言ってたし”
“だ、誰が馬鹿だっ!?”
“揺光”

“いつか、また一緒に遊ぼう”
“……絶対だからな!”



「……覚えてて、くれたんだ?」
「忘れないよ」
「そっか……えへへ、ちょっと感動―――」
「それにそのハセヲって子にも興味あるし」
「そ、それだけは絶対ダメ―――――――――――――ッ!!!」
「そうだな。図書館内は静かにしなきゃダメだな」
「あぅ……」



104 :名無しさん@ピンキー:2006/10/22(日) 05:13:11 ID:rkJHk7LV

《智香が潤香に相談を持ちかけてから約3週間後――――――――》


「でな、俺はその子に言ったんだよ。
 何かあればすぐに呼んでください、貴女のクーンが何処にでも駆けつけます、ってな。 
 いやー我ながら決まったね、アレは!」
「クーンも飽きねぇな……」

ハセヲだ。
今日はついてねぇ日だぜ……見りゃ分かると思うがクーンに絡まれてる。
噴水広場で待ち合わせしてた矢先にコレだ……テンション下がるな、まったく。

「お前さぁ……今更だけどこのゲームに何求めてんの?」
「強いて言うなら出会い、だな。
 現実に疲れた女性達が新たな出会いを求めて《Thw World》にやって来る。
 俺はそんな彼女達のココロのスキマを埋めるためにログインしているのかもしれない……一個のクーンとして!」
「やってることは喪黒福造よりタチ悪ぃーぞ」

結局はナンパ目的だしな、コイツの場合。
AIDA事件以降もクーンのナンパ癖は治りきってないらしく、未だに色んなPC連れてるのよく見るし。
何つーか……コイツだけは見習っちゃいけない気がする、男として。

「ハセヲの方はどうなんだ」
「何が」
「今年で高3だろ? そろそろ彼女の1人や2人出来たんじゃないか?」
「1人はともかく、2人もいらねーっつの。フタコイじゃあるまいし」

……だからコイツには絡まれたくないんだ。
話題がどーにも一方的過ぎて敵わねぇ。早く終わらねーかな……。

「ハセヲ」
「あ」
「お待たせ」

やれやれ……やっと来た。

「おぉ……おぉぉぉ!!! ハセヲ、お前いつの間にこんな美人とお近づきになったんだ、おい!?
 水臭いなぁ~、俺にも紹介してくれれば良かったのに!」
「あのな……俺は出会い系サイトの回しモンか?」

クーンが鼻息を荒くするのは無理もない。
俺が待ち合わせていた相手――――――――――カールは、確かに美人だった。
知り合ってまだ日は浅いけど、俺は最近よくカールとパーティを組んでんだ……揺光も一緒にな。

「初めまして、美しいお嬢さん。俺は――――」
「“鋼の貴公子ジーク”も今はただのナンパ野郎とは……年月って残酷」
「え……なッ……?」
「今のあんたの姿見たらアルフが泣くよ」
「ジ、ジークって……キミは……!?」
「ハセヲ、行こ。揺光が待ってる」
「ん、そだな」

懲りずにナンパしてきたクーンを一蹴、カールがゲートの方へ背を向けた。さすがだ。
俺もカールを追う形でゲートに向かう。てか……クーンの奴は固まって何してんだ? ジーク?
まぁいいか、さっさと行こう。揺光を待たせるのも悪いしな。



105 :名無しさん@ピンキー:2006/10/22(日) 05:15:10 ID:rkJHk7LV

「時間通りだな」
「おっす、揺光」
「う、うん。おっす」

何かここんところ、いつもこのメンバーのような気がする。
俺とカールと揺光の、この3人な。揺光達とパーティ組むのも嫌いじゃねぇし、これはこれで気に入ってるけど。

「で、今日は何すんだ?」
「ハセヲとイチャイチャできる場所ならどこでもいい」
「カッ、カールッ!」
「冗談だって。早とちりはイックナ~イ」
「冗談でもそういうのは禁止!」
「お前ら、仲いいのなw」

確か……今週で3週間だな、カールと知り合って。
揺光の紹介で一緒にパーティ組むようになったけど、どーにも掴み所が無いって言うか……強ぇけど。
それに調べて分かったことがある。カールと言や、俺がPKKになる前に名を馳せていたPKKの名だった。
PKK兼ハンター。どーりでカールと一緒に居るといつもの倍近くPKに襲われるはずだぜ……全部返り討ちだけどな。

「カールと揺光って姉妹みたいだよな。こうして見ると」
「あたしはこんなちっさい妹、持った覚えはないけど」
「ア、アタシもこんなでっかいお姉ちゃんはパス!」
「ほら、やっぱな」

息が合ってんじゃん、絶対。あーでも身長差は確かにあるな。カールがでかすぎるってのもあるけど。
それとも揺光がちっさいのか? ゲームで身長低めに設定してるってコトは、揺光のリアル、何センチなんだろ……。

「リアルの揺光はあたしよりちっさいよ。17歳女子の平均身長以下だね」
「うわーうわーっ! 何言ってんだよ!」
「? お前らリアルでも知り合いなワケ?」
「そだよ、学校同じだもん。な、揺光」
「う、うん」

そーいうコトか。この2人、何かやけに親しげだとは思ってけどな。
でもいいのか? そんな簡単にリアルのことバラしちまって。ネトゲ初心者じゃあるまいし。
まぁこの際、もうちょっと探り入れてみるか……。

「カールも北海道なんだな。一緒のクラスなのか?」
「いや、あたしが3年で揺光が2年。でも委員会は同じ、図書委員」
「へぇ。でも学年違うけど、お前らリアルでも仲良さそうじゃん」
「良いよ。今年のエトワール選に一緒に出るくらいだし?」
「いつからアタシ達、アストラエアの乙女になったんだよ……」

やべ、やっぱコイツら面白ぇ。
あの揺光がここまで気ぃ許すってことは、実際リアルでも相当仲良いんだろ。
揺光が振り回されっぱなしってのも、意外な一面を垣間見た感じだ。

「ハセヲはあたし達のリアルに興味ある?」
「いや、そーいうワケじゃねーけど……」
「揺光はね、あるって。きみのリアルに興味しんし~ん、もっと仲良くなりたいんだってさ」
「……そうなのか?」
「……うん」

俺のリアルねぇ……メールでほとんど教えたはずだけど。
メール……メールと言や……俺、揺光に告ったんだったな……すっかり忘れてた……。

144 :名無しさん@ピンキー:2006/10/24(火) 02:18:44 ID:bywxfki6

「旋風!」
「滅双刃!」

俺と揺光の双剣技がほぼ同時にモンスターに炸裂する。
斬るタイミングもフッ飛ばすタイミングもほぼ同時、ありえねぇくらいに。
ちなみに今倒した奴が最後だったからこれで戦闘終了。無様なモンだぜ……。

「息ぴったりじゃん、きみ達」
「は?」
「おんなじ技で同時にトドメって滅多に決まんないよ」
「偶然だろ」

そりゃ飽くまで確率論じゃね?
たまたま俺が双剣をメインウエポンに設定してて、揺光と同じ技出して、同じ敵倒した、ってだけだろ?
なぁ、そうだろ揺光……って聞こうとしたら、揺光は揺光で何かダンマリ決め込んでるし。

「ところでさ」
「あん?」
「前から聞こうと思ってたんだけどハセヲの装備してるその双剣、見かけないタイプだね」
「旋式・鈷風鉈のことか?」

まぁ、一応レア度5だしな。
珍しいっちゃ珍しいかもしれねぇけど。

「そのタイプの武器って確かアリーナタイトルマッチの優勝商品だっけか。
 でもハセヲが紅魔宮で優勝したのって2017年だろ? 旋式・鈷風鉈って2016年の優勝商品じゃなかったっけ」
「つか、これ元々俺のじゃないし」
「どゆこと?」
「揺光と交換したんだよ。な、揺光」
「う、うん……」

結構前になるんだが……揺光が
「アタシの旋式・鈷風鉈とハセヲの回式・卦針を交換して欲しい」って言ってきたことがある。
断る理由もなかったし、もう卦針よりも攻撃力のある武器も持ってたから
「別にトレードじゃなくてもただでプレゼントしてやるよ」って言ったら
「トレードじゃなきゃヤダ!」と言って譲らなかった。
まぁ、最後は揺光の言う通りトレードで互いに交換、ってコトになっちまったワケだが。

「ってコトがあった。随分前だけど」
「へぇ。揺光も隅に置けないな」
「な、何がさ」
「ハセヲが使ってた武器が欲しかったんじゃないの?」
「そっ、そんなんじゃないって! きょ、今日のカール、何か変だぞ!」
「あたしはいつでも変だよ」

……そうだったのか?
てか何で俺の使ってた武器を揺光が欲しがるんだ? 分かんねぇ。

「それで? ハセヲと交換した回式・卦針の使い心地はどうなのかな? かな?」
「べ、別にそんなのどーだっていいだろ……」
「……ふーん。ね、ハセヲ。あたしもハセヲが装備してたアイテム、何か欲しいな。プレゼントしてよ」



145 :名無しさん@ピンキー:2006/10/24(火) 02:20:15 ID:bywxfki6

「カール! 何言ってんのさ!?」
「だって揺光ばっかハセヲにプレゼントしてもらってズルイじゃん」
「アタシ達のはプレゼントじゃなくてトレードだよ!」
「どっちでもいいよ。あたしもハセヲの使ってたモノ、欲しいし」
「ハ、ハセヲ、本気にしちゃダメだぞ!」
「(何ケンカ始めてんだろ、コイツら……)」

……別にプレゼントくらいよくね?
俺が装備してたアイテムってのが何か引っ掛かるけど。
カールにプレゼントすんなら、やっぱ鎌系の武器かアクセサリ類だろうか。
てか今はそーいう雰囲気じゃねぇな、どう見ても。さすがに俺でも空気くらい読めるぜ……。

「プレゼントがダメならデートでもいい。今度一緒にマク・アヌでゴンドラ遊覧イベント出よっか?」
「そ、そんなのダメなんだからな! 絶対許さないんだからな!?」
「何でそこでお前がキレてんだ、揺光」
「そだよ。決定権はハセヲにあるんだし」
「とにかくっ! ダメなものはダメっ!」

妙な雰囲気になってきたな……。
つーかカールは揺光をわざとからかってる様にしか見えねぇんだが。
揺光は揺光はまんまと乗せられてるし……何なんだ、一体。

「デートくらいいいじゃん」
「よくないよ! ア、アタシだって……まだハセヲと……したコトないのに……」
「ハセヲ、そなの?」
「や、俺に言われても」

いきなり俺に方向転換かよ。

「きみ達付き合ってるんじゃないの? 有名だよ、ハセヲと揺光の宮皇カップル」
「ハセヲ……な、何とか言い返してよぉ……」
「何とかって言われてもな……」

何つー目で人の顔見てんだ揺光の奴……。
普段は勝気なんだが、智香モードになったら急にしおらしくなるから困る。
結構中身は女の子してるからな……下手に傷つけるワケにゃいかねーし。

「ならしちゃえば、デート」
「は?」
「どうせならゲームじゃなくてリアルですればいい。
 もうすぐ夏休みだし、揺光がハセヲの居る東京まで遊びに行けばいいんだ」 
「東京にねぇ……まぁ、揺光が来たいってんなら俺は別に構わねぇけど」
「え……ホントに……?」
「ただ遊びに行くだけじゃ芸がないな。ハセヲ、2~3日泊めてあげなよ」
「と、泊めるって……」

泊める泊めないは別にして、だ。智香とは一度リアルで会ってみたかったし。
今までそーいう話なかったから機会なかったけど。

「この子、夜のレインボーブリッジ見に行きたいんだって」
「あー。そーいやそんなコト言ってたっけ」
「ハセヲもその気になってくれてよかったな、揺光。あんたが裏切ると怖いってトコ、見せなくて済みそうだ」
「カッ、カッ、カールッ!」
「……そんなコトも言われた気がする」

“一途でしつこいぞ”とか“裏切ると怖いから!”って……何か、怖い気がするの俺だけか?。



146 :名無しさん@ピンキー:2006/10/24(火) 02:21:50 ID:bywxfki6

数日後。

「約束が違うよ、潤香!」
「だって。あんたとハセヲ、全然進展しないんだもん」
「うぅ~~。絶対ダメだって……ヤバイって……」
「あんただってハセヲに会いたいでしょ? ならいいじゃん。
 東京に2~3日行くくらいさ。一夏の冒険みたいでカッコイ~」

いつもの放課後。
図書準備室でのお茶会。

「それに……ハ、ハセヲの家に泊まるんだし……何か間違いがあっちゃ……ダメだと思うし……」
「間違い? 間違いって何?」
「ふ、不順異性交遊……とか……」
「おんやぁ? 智香ちゃんはそーいうのに興味あるんだ?」
「な、ないよっ!」

こういう時の潤香は本当に意地が悪いと智香は思った。
潤香自身もかつては自虐的な時期があったのだが、最近は智香という恰好の玩具が見つかったせいもあって
現在は自虐性はなりを潜め、後輩いぢめが専らの趣味のようになっている。
これも一種の親愛の念なのだろうが、智香にとっては堪ったものではない。

「不順か、そーでないかはともかくだ。
 お年玉くらい貯めてるだろ? 新千歳から羽田まで往復でも3万かからないよ、今時」
「出せるけど……あ、会うのはやっぱり恥ずかしいよ……」
「ゲームで散々会ってるくせに」
「それとこれとは話が違~~~うっ!!!」

智香にとって拷問とほぼ差し支えの無い事態だった。
とんとん拍子で話が進み、本当に夏休みにハセヲの……三崎亮の家に
ホームステイ(?)しに行くことになってしまったせいで、ここ数日夜も眠れない日々が続く。

「だって……アタシ、ハセヲと初対面の時にさ、すごい嫌な奴だったもん……」
「それ聞いた。彼の首絞め上げて
『ライバルゥ~? コイツがぁ~? ……弱そうだよ?』って言ったんだろ?」
「お、思い出させないでよ……あれはアタシの黒歴史……」
「マウンテンサイクルに封印しなきゃな」

正直言ってどの面下げて会えばいいのか分からない。
ハセヲが何のために戦っていたのか理解できなかった当時の智香。
出会う度に衝突を繰り返して、彼のことを全く理解しようとしなかったあの頃。
彼は何も言わずに受け入れてくれたけれど、智香はまだ内心、脅えていた。
本当に自分は許されたのか、と。

「あんたも色々悩み多いな。いいね、青春って感じ」
「全部潤香のせいだよ……」
「あの子の気持ちに応えたいんだろ? 根性見せな」
「う、うん」
「2人で回る場所はあたしがチョイスしとくよ。あたしは東京観光においても頂点に立つ女だ」
「……え、遠慮しとく」



147 :名無しさん@ピンキー:2006/10/24(火) 02:23:37 ID:bywxfki6

*********************



「(か……買っちゃった……)」

とうとう智香は新千歳発成田行きの往復チケットをネット予約してしまった。
バイト経験のない智香にとって航空チケット購入は痛い出費だが
2018年の正月は特に多めにお年玉を貰っておいたのが幸いしたようだ
(2017年に意識不明になったため、親戚一同の見舞金に近い意味での寄付、とも言えるが)。

「(買っちゃった……買っちゃった……買っちゃったぁ!)」

カール……潤香にそそのかされた感も拭えないものの、智香は後悔はしていない。
自分でも妙な感覚だとは感じる。
彼に、ハセヲに会えると考えただけで胸の奥がドキンと高鳴るのだ。
それに伴って、どんどん頭の中がハセヲの姿や声で埋め尽くされてゆく。
場所は選ばない。
授業中でも掃除中でも委員会の仕事中でも下校中でも家の中でも風呂の中でもベッドの中でも。
心地が良い、考えるだけで心地がよかったから。

「(はは……アタシのキャラじゃないって……)」

自分はもっと違う人を好きになると考えていたのに。
けど、そういう理屈は考えるだけ無駄と最近分かるようになった。
恋愛は本能でするものだと。
自然界の動物の雌は、より強い子孫を産むために強い雄を伴侶に選ぶ。
そして同時に、恋愛は肉でするものだとも悟る。

「(こうしちゃいられない、東京行くまでにダイエットしとかなきゃ!)」

何しろ最近はカップ麺の食べ比べブームが再発して体重が増加傾向にある。
意識不明になった時、全国ネットのニュースで智香の顔写真が公開されてしまったワケだが
2016年の高校入学時に撮影した写真だったのが唯一の救いだった。
どう見ても1年前に比べて体重増えています。本当にありがとうございました。

「(そのためにカップ麺は……断つ!)」

脱ダム宣言ならぬ、脱カップ麺宣言がここになされたのだった。

「(どんな服持ってけば良いかな……やっぱ新しく買った方がいいのかな?)」

東京なら北海道と違って日中の暑さも変わってくるだろう。
その辺も考慮しておいた方がいいかもしれない。

「(ハセヲは……亮は、どんなのが気に入ってくれるかな……)」

今度の初対面は失敗をしないように。
一期一会の心を忘れずに。

「(早く……会いたい)」

心地よい胸の高鳴りを感じながら、智香の鏡との睨めっこは続く―――――――――。

160 :名無しさん@ピンキー:2006/10/25(水) 02:41:18 ID:4J99gvx1

「ちゃお。ハセヲ」
「話って何だ?」

ハセヲだ。
揺光達と一緒にエリアで遊んでから何日かたったある日。
今日は珍しくカールから呼び出された。
呼び出された場所は《Δ 隠されし 禁断の 聖域》。
普段は揺光も一緒に行動することが多いだけに、何となく新鮮味があるっちゃあるが……何の用だ?
ここには……あんまいい思い出ねぇんだけどな……。

「んー。揺光のコトについて」
「カールも心配性だな。ちゃんと2~3日くらい世話できるっての」
「そゆんじゃないよ。そゆんじゃなくてだね、ハセヲ」
「?」

少し芝居がかった動きを見せながらカールが笑う。
ステンドグラス越しに降り注ぐ光の中で俺を見つめるカールの姿は、何だかいつもと違って見えた。。
と言うより、このカールと言うPCとは初めて会った気がしない。
姿形さえ違うけれど、銀色の髪と黒衣、俺の……ハセヲのPCとよく似ている。
揺光の友達っつーコトでパーティを組んだりして遊んじゃいるが、
不思議な既視感を感じることも多々ある。

「きみは揺光をどう思ってる?」
「どうって……好きか嫌いか、ってコトか」
「びみょーに違う。あたしがきみに聞いてるのは“Like”or“Love”のどっち、ってコト」

Likeは好き、Loveは愛してる……って、オイ。
何つーコト聞いてくるんだ、コイツは。

「いや、いきなり言われても……」
「それじゃきみは、揺光を好きでもないのにメールで告白しちゃったワケ?」
「そーじゃねぇよ……好きだけど……愛してる、ってのはまだ分かんねぇ……」
「ふーん。それとも昔の女のコト、まだ忘れられないとか?」
「……!」

何となく分かってきたぜ……。
どうしてカールがわざわざこのグリーマ・レーヴ大聖堂に俺を呼び出したのかがな……。
この場所は、俺が始めて三爪痕(トライエッジ)と戦った場所。
そして、志乃がオーヴァンにPKされて意識不明にされた場所。
コイツは確かめたいんだ、俺のココロを。

「怒ってんじゃないよ。むしろ、それ結構フツー」
「……」
「あたしもねぇ。好きな子くらいいたよ」
「……カールにか?」
「ひど。あたしだって人を好きになることくらいあるって。
 あれはあたしが……小学5年の頃か。その子とはここで会ったの」
「この大聖堂でか……?」
「そそ。R:1時代だけどねー」

この大聖堂はロストグラウンドだ。発見されたのは2016年初期。
R:1時代から色々と曰くのあった場所らしいけど、詳しいことは俺も知らない。
ただ、三爪痕絡みの噂は結構初期から耳にしていたとは思う。
同時に、白いドレスの少女の噂も。



161 :名無しさん@ピンキー:2006/10/25(水) 02:42:36 ID:4J99gvx1

「ばみょん!」
「……は?」
「いいから、ハセヲも言ってみてよ」
「ヤダ」
「言えって」
「……ば、ばみょん」

何だ、何だ、何をやらせたいんだ、この女。
人を寄せ付けない様な態度とったり、たまに子供みたいにはしゃいだり……変な奴だと思った。
揺光の話だと、1年くらい前のカールは“喪服の魔女”なんて呼ばれてたPKK兼ハンターだったはずなんだが。
何つーか……俺の前だと妙に子供っぽい、つーか……。

「くっくっく……やば、おかしいw」
「あのなぁ……お前が言えっつったんだろうが」
「や、すまんね。ハセヲが何となーく昔好きだった子に雰囲気似てたから、もしかしてー?って」
「あん?」
「ソラって子だったの。字は楚良。
 最初に会った時は松尾芭蕉の弟子の曽良が由来って言ってたのに、実際は違う字だった。
 あの時は『やられた~』って思ったね」
「……」
「んで、ハセヲ。芭蕉って俳号は芭蕉(はせを)とも読めるっしょ?
 だからね、きみの噂を聞いた時にもしかしたらアイツが戻ってきたのかな?って思ったの」

……偶然だろ。
別にハセヲの名前に、そこまでの意味はねーよ……ありゃしねぇんだ、んなもん。

「でもやっぱ人違い。アイツはもっと軽い奴だったし、ハセヲとは性格全然違うし?」
「……おい。んなコト言うために呼んだのか? 揺光の話じゃなかったのか?」
「慌てなさんなって」

それまでの態度が嘘のように、次の瞬間にはもうカールの顔から笑みは消えていた。

「あたしはね、ハセヲ。
 揺光の保護者気取るつもりはこれっぽっちもない。
 でも、あの子がきみとリアルで会う前に確かめなきゃいけないコトがある」

カールの手中に顕現する大鎌。
ブゥンと風を凪ぐ音が大聖堂の中に木魂した。
……そーいうコトかよ!

「きみがあの子を守れるだけの強さがあるかどうか……見極めさせてもらうよ」
「いーのか? 揺光はPKとかPKK、嫌ってんだぞ」
「勘違いはイクナーイ。これはPKじゃなくて……んー決闘? 揺光争奪戦みたいな?」
「争奪戦って……何、お前、そーいう趣味?w」
「さぁ。どうでしょう」

どうやら避けられねぇみたいだな。真顔で殺気放ってやがる。
……面白ぇ。元碧星宮の宮皇だったか、この女。太白以来だぜ、宮皇相手は。
揺光争奪ぅ? いいぜ、お前を倒して証明してやる。

「Xthフォームとやらにならなくていーの?」
「抜かせ。ありゃとっておきだ」
「見たいなぁ。揺光はXthフォームのハセヲもお気に入りらしいし」
「前置きはいい……行くぜ!」
「ふふん」



162 :名無しさん@ピンキー:2006/10/25(水) 02:44:26 ID:4J99gvx1

………。
……。
…。

「どした? もう息切れ?」
「うっせ。まだ準備運動だっての」

この女……メチャクチャ強ぇ!
鎌闘士(フリッカー)だと思ってナメてたぜ、
接近戦に持ちこめば何とかなるって発想は甘かったっぽいな……!

「あたしがどーして“死神”じゃなくて“魔女”って呼ばれてるか知ってる?」
「さぁな。水銀燈みてぇな格好だからじゃねぇの?」
「ぶー、ハズレ。読んで字の如し……ってね!」
「がっ!?」

にゃろう……こんな距離から攻撃呪紋ブチ込みやがった!

「呪紋もイケるクチなんだよ、あたしは」
「……だからPKどもに魔女って呼ばれてんのか」

寸でのところで大剣にメインウエポンをチェンジ、
カールの放った火球つぶてを何とか全て叩き落すことが出来た。
鎌闘士の魔力値じゃここまでの威力は出せねぇ……パラメーター上げるアイテムで
ドーピングしたってところか。手が込んでやがる。

「今のを避けたか……逃げてばかりじゃあたしには勝てないぞ、ハセヲ」
「隙窺ってんだ。気にすんな」
「そうそう、がんばれ、がんばれ。揺光のためにもね」
「へっ……」
「んじゃ、そろそろ本気でやらせてもらおうかな」
「(本気だぁ……!?)」

今まで手ェ抜いてたってコトかよ!?

「魔女には使い魔が付き物だろ? 見せてあげる、あたしの使い魔」
「使い魔? ゼロの使い魔ってか?」
「残念、あたしが呼び出すのはゼロじゃない……第一相だ」
「……ッ!?」

何だ……何を始める気だ、カールの奴!?

「おいで……おいで……あたしを……追いかけてこいっ!!!」
「んだと……この感じは……まさか……!?」

憑神(アバター)!?

『■■■■■■――――――――――――――――!!!!!』

ソイツは、大聖堂の張り詰めた空気をまさしく叩き割って現れやがった。
ひび割れた空間からヌゥッと覗くのは、血か泥に塗れたような渋柿色の布切れを纏う巨人。
全身を覆うそれは防具と言うよりは寧ろ拘束具。右手にでけぇ大鎌を掲げながら、3つの目がギランと輝く。
オイオイ……冗談じゃねぇぞ! コイツは、この憑神はッ!!!

「マジかよ……!」
「スケィスとの付き合いは……実はあたしの方が長いんだな、コレが」

192 :名無しさん@ピンキー:2006/10/27(金) 02:47:29 ID:1PJE8x3I

「カール……お前……碑文使い……ッ!?」
「モルガナ因子を持つ者を須らく、そう呼ぶのであれば……うん、あたしも碑文使いだな」

紅い巨人を脇に携えながらカールが威圧する。
外見の違いはあるっちゃあるが、見間違えるはずがない……あれは、スケィスだ!

「ただし、このコはこの世界の住人じゃない。前のバージョンだ」
「前……!?」
「強いて言うなら、そう……スケィスR:1(リヴィジョン:ワン)ってとこかね」

R:1……だと? R:2じゃなくてか? 
あの妙な紅い布といい、確かに俺の知っているスケィスとはどこか異質な感じがする。
でも本当にカールの言っていることが本当だとして、カールはいつ碑文使いに目覚めた?
どうして俺と同じようにスケィスを憑神として喚べる? 分からねぇ、分からねぇぞ……!

「あたしは本気を見せたぞ。次はきみの本気を見せてよ」
「くっ……!」
「もったいぶってると」
『■■■―――――――――――――――――――!!!』
「やばいかもよ?」

カールの攻撃意思を感じ取ったらしく紅いスケィスが突進して来る。
大聖堂に轟音が響き、大振りに振られた鎌が木椅子を紙屑のようになぎ払う様は圧巻。
怪獣映画を見てるみてぇな気分だった……ここまで冷静な俺自身にもびっくりだが。

『■■――――――――!!』
「うおっ!?」

大剣で受け止めようとしても、とんでもない馬鹿力で軽くフッ飛ばされちまう!
機動性なら俺の方が上っぽいが、攻撃力だけならカールのスケィスの方が……やべぇかもな。
こりゃあいつの言う通り、本気になるしかなさそうだ!

「悪い魔女からお姫様を救うのは、王子様の宿命だぞっ!」
『■■■■―――――――――――――――――――!!!!』

電子音みてぇな雄叫びを上げながらスケィスの豪腕が迫る。
並みのPCなら一撃死だろう。今の俺だって例外じゃない。てか何が王子様だ。テニスか?
とにかく……3rdフォームじゃ、ここまでが限界だ。三爪痕との最初の闘いがそうだったみてぇに。
異形には異形を、規格外には規格外を……ってな。
カールは俺の強さを見極めるためにこの戦いを仕掛けてきた。
その意図が揺光のためかどうかはこの際関係ねぇ……俺も応えてやるよ、お前のココロに!

「ハセヲ! スケィスを通して、あたしの想いが伝わってるかな!?」
『■■■■■―――――――――――――――――――!!!!!』
「伝わってるよねぇっ!?」

へっ……一撃一撃に想いを込めろ、ってか?
伝わってるさ、リアルで痛ぇくらいに伝わりまっくてる!

『■■、■■■……■―――――――――!?』
「……どうしたっ、スケィス!」

急にスケィスが動き止めたんで焦ってんのか?
でもまだ慌てる時間じゃねぇぞ。お前、見たがってたよな……俺の本気を。
大サービスだ、見せてやるぜ……限界のその先ってやつを!



193 :名無しさん@ピンキー:2006/10/27(金) 02:48:56 ID:1PJE8x3I

ソレはどす黒い混沌から生じた。
黒の中にありながら無二の白を纏う者。
死を背負いながら同時に生をも背負う不確定な存在。
ただ分かっているのは、ソレに常識と言った概念が一切通用しない、その事実のみ。

「待たせたな」

スケィスの拳がゆっくりと押し戻される。
その声を聞いた時、カールは全身の産毛が逆立つ感覚を覚えた。
似ている。
かつてこの大聖堂で彼と出合った時の様に、ゾクゾクと全身を巡る快感にも似た感覚。

『■■……■■■―――――――――!!!!!』
「吼えるな」

次の瞬間にはもうスケィスの姿はその場から消え失せ、影も形も無い。
アッと言う間に吹き飛ばされて大聖堂の壁にめり込み、ぴくりとも動かないのだ。
白煙の先に、彼が居る。カールは胸の高鳴りが押さえられない。
かつて大好きな彼と邂逅した時でさえこんなに高鳴らなかったのに。
心音を刻むことを忘れていたカールの心臓が、今になってやっと脈打ちはじめる。

「それが……きみの……!」
「Xthフォームだ」

気高き白。その両の腕に握られた双銃(トゥーガン)。
本来ならば3rdフォームまでしか成長しないはずの錬装士の、更に限界を超えた姿。
ゲームの仕様にない、異端者がそこに立っていた。

「ふ……ふふっ……すごっw」

間髪入れず、カールの手中から幾本もの光の矢が飛び出してハセヲを襲う。
だがハセヲは微動だにしない。全て視えている。
修練を積んだプロボクサーが素人のパンチの軌道を読む際にスローモーションの様に見えるように。
ゆっくりと双銃でロックをしながら。
ごく自然に、目の前を舞う塵をはたく様な動作で。全ての攻撃を、迎撃する!

「馬鹿な……相殺っ!?」
「ふん」

カールから余裕が消えた。ハセヲも双銃を消し、身構える。
カールは再び大鎌を構えて単身、宙を舞いハセヲに踊りかかる。
が、鎌が振り下ろされた時、既にハセヲはカールの手首を掴み動きを封じていた後。
身体の自由が全く効かない。恐怖や畏怖と言うよりは、寧ろ絶対的な実力差を感じて感動すら覚える程に。

「言った筈だぜ……とっておきだってな」
「はは……驚いたな……まるで次元が違うじゃん……」

壁に追い詰められカール。
ハセヲの手はカールの両腕を締め上げ、自由を奪っている。
蹴りを入れてもいいが十中八九避けられるだろう
スケィスを呼ぼうにもあの様子では再起不能。戦闘続行は無理だ。

「ったく……手間かけさせやがって」
「ちぇー。これまでか」

ハセヲがXthフォームとなった瞬間から、カールの敗北は既に決まっていたのだ。



194 :名無しさん@ピンキー:2006/10/27(金) 02:50:44 ID:1PJE8x3I

「スケィスのこととか聞いても無駄なんだろ?」
「謎は女を女にするからね」
「何だそりゃ」

戦いが終わった後いつの間にか紅いスケィスは消えていた。
カールが戦う意志を無くした以上、俺がXthフォームになっている必要もない。
終わった。1時間くらい戦っているような気がしたが、実際には10分と満たなかったのは意外だったけどな。

「でも本当強いよ、ハセヲ。びっくりした」
「久々に本気で戦ったぜ。お前も十分強いじゃねぇか」
「揺光が好きになっちゃうのも分かるな、何となく」
「へいへい」

AIDA事件以来……本当に久々にXthフォームになった。
もう俺の中のモルガナ因子は枯渇したと思ってたんだが……まだ残ってたんだな……。
スケィスも呼べなくなってた、ってのに。

「あーでも、ちょい残念」
「何が」
「早くハセヲに会えてたら……きみの隣りに居たのはあたしだったかもね」
「……」

まぁ……悪い気はしねぇけど。

「あたしとハセヲ、何となくPCの雰囲気が似てるし」
「そーだな」
「ま。それはスルーして、だ」
「スルーかい」

前言撤回。やっぱこの女、変。

「揺光のコト……智香のコト、よろしく」
「……あぁ」
「あの子、結構夢見がちってか空想好きなとこあるのね。
 図書委員の仕事してる時も何か考えながらボーッとしてる時あるし」
「へぇ」
「揺光のキャラはロールだと思った方がいい。本当のあの子はすごい繊細なんだ、うん」

会えば分かるさ。
約束した以上、責任は果たすつもりだ。
でなきゃ、わざわざカールが俺と戦った意味がねぇもんな。

「俺はもうタウンに戻るぞ。カールはどうすんだ」
「もうちょいここにいるよ」
「そっか。じゃな」
「ばいばい」

喪服の魔女は伊達じゃなかった。
Xthフォームにならなきゃ、まず勝てなかったはずだ。
揺光がカールに憧れて宮皇になろうとした、ってのも頷ける。
何があいつをあそこまで強くさせたのかは分からねぇけど……俺と同じ様な何かは感じる。
揺ぎ無い決意、あいつも何かを成す為にこの世界にログインしてるんだろうか。

「いいなぁ、揺光」

大聖堂の扉を開けて出て行く時、そんなカールの声がかすかに聞こえた気がした。



195 :名無しさん@ピンキー:2006/10/27(金) 02:52:23 ID:1PJE8x3I

「ふー。派手に散らかした」

そう言ってカールは紅いスケィスが暴れた痕跡を見てため息をつく。
思い出の多い場所だけに、あまりこの大聖堂を破壊したくはなかった。
だが、スケィスを召喚するにはどうしてもR:1に縁のあるエリアでないといけないという鉄則がある。
他のロストグラウンドでも良かったが……どうせなら《隠されし 禁断の 聖域》で戦ってみたかったのだ、カールは。

「あそこまで強ければ……ま、大丈夫」

揺光からハセヲの強さは聞いていた。
だがそれは飽くまで常識の範囲内でのこと。
実際のハセヲの強さは、もはや常識外れのものであり、カールの敵うものではない。
何故なら想いの強さが違う。
スケィスを通してカールはハセヲに自分の想いをぶつけたが、それすらも一蹴する程の力。
かつてのカールも、あんな強大な力を欲していた。悪意をばら撒けるだけの力を。

「でも……本当にいなくなってたんだな」

もうこの大聖堂にアウラの像はない。
かつては……R:1時代の大聖堂には、確かに鎖で雁字搦めにされた少女の像があったのに。
今ではもう、存在しない。
本当に、この世界に愛想を尽かしてしまったのだろうか?

「キー・オブ・ザ・トワイライト……きみの探し物だ、ハセヲ」

一時期、アウラはカールと共に行動していた。
つまりカールはキー・オブ・ザ・トワイライトの所有者の1人だったことになる。
ただしドットハッカーズと呼ばれる勇者のパーティに名を連ねることはなく、隠された歴史の編纂者として。
三爪痕とカールがこの場所で戦ってから既に2年……随分と経つ。
あの時、カールは自分の持てる全ての悪意を彼にぶつけた。
つまらない現実に入るより、いっそのこと、ずっと楚良と追いかけっこを続けていた方が楽しかったのだ。
それを終わらせてしまった、勇者カイトが憎くて憎くて。

「さて。戻るか。ゲームは一日一時間と」

どうせ壊れた椅子などはCC社のデバッカー達がすぐにも修正するだろう。
カール自身が修正してやることも出来たが、ここ最近チート行為とはご無沙汰なので自信がない。
思えば、随分とカールは変わった。もう自虐的な8年前の彼女ではない。


『おかえりなさい。母さん』


「……?」

ふと、カールの立ち去る間際にそんな声が聞こえた。
だが振り向いても誰もいるはずもなく、相変わらず大聖堂はしんと静まり返るのみ。
幻聴? いや、少なくともカールはそうは思わなかった。そこにあると思えば、必ずあると。

「……ただいま。アウラ」

今度は振り向くことはなく。けれど、いつかまた会えると信じて―――――――――――――――。



248 :名無しさん@ピンキー:2006/10/30(月) 01:59:32 ID:hPpSeA1N

「で、どうだったんだ。100位以内には入れた?」
「何とかね……」
「くっくっく。どした、もっと喜びなよ」
「この2週間ばっかし徹夜で勉強してたから、喜ぶ気力も残ってませーん……」
「ほほう」

2018年・1学期末の定期試験。
智香は何とか両親との約束通り100位以内に入ることができた。
100位以内に入れば夏休みに東京に行ってもよいと約束し、死に物狂いで勉強した結果である。
特に苦手な英語を重点的に復習、分からないとことろは恥を忍んで1学年上の潤香に見てもらった。
《The World》もログインをしばらくしていない。夜食のカップ麺も食べていない。
それだけ自身を追い詰め、ついに勝ち取ったのだ。自由を。

「親も驚いてたなぁ……」
「当然。あたしが勉強見てやったんだ」
「その点については感謝してるよ……んで、潤香はどうだったのさ」
「いつも通り。学年10位以内にゃ入ってた」
「その余裕ぶりがムカツク……ぬぬぬ……アタシの遥か上じゃん……」

涼しい顔でそう言ってのける潤香の余裕は、やはりさすが。
世の中は不公平だ。
智香ではどう頑張っても100位以内に入るのがやっとなのに潤香は普通に20位以内。
この差は何なのか。できることなら少しそのIQを分けてほしい。ついでに背も。

「元気がない時はアレだ。カラオケにでも行くか?」
「珍しー。潤香から誘うなんて」
「行くの? 行かないの?」
「……行く」




**********************




「もう言わないで 呪文めいたその言葉 愛なんて鎖のように重い
 囁いて パパより優しいテノールで どんな覚悟もできるならばー!」

歌っているのは智香。誘ったはずの潤香はすでに2時間以上マイクも持たず静観。
スイッチの入ってしまった智香は放っておくのが一番だと潤香はよく分かっている。
しばらく歌わせてやれば、そのうちいつものテンションに戻るはずだろうし。

「さあ誓ってよ その震える唇で 蜜を摘む狩人のトキメキ
 触っていい この深い胸の奥底を 射抜く勇気があるのならばー!
 貴方捕まえたら 決して逃がさないようにしてー! …………ふぅ~」
「おつ。あんたもローゼン……ってかアリプロ好きだな」
「まだまだ、こんなもんじゃないからね……次は亡國覚醒カタルシスいくよ!」

熱唱を続ける智香を傍らで見つつ室内電話を手に取り、
延長を願い出る潤香の顔は―――――何故か1曲も歌っていないにも関わらず満足気だった。



249 :名無しさん@ピンキー:2006/10/30(月) 02:00:48 ID:hPpSeA1N

「うぉ~す……」
「よ、揺光? どした、何か声が変だぞ」
「カラオケで歌い過ぎちゃって……はは」

ハセヲだ。
定期試験も終わって久々にログインしてみると、揺光の声が随分としゃがれててビビった。
俺らの他にもアトリやガスパーももう定期試験が終わった頃だろう。
シラバスの奴は8月上旬まで大学の試験が長引くってよ。ご苦労なことで。

「何か……久しぶりだよね。こうやって会うの」
「2週間ぶりってとこか」
「試験勉強してたからさ、全然ログインする暇なかったもん」
「お前んとこも試験終わったのか」

コイツの口から試験勉強なんて単語が出るとはな。
揺光も今年で高2だし受験のこととかも考えてんだろうけど。
でも塾とか行ってる気配はないな、独学か?

「あ、それでね。東京行き、親の許可もらえたよ」
「そか」
「そか、で済ますなよなぁ~。大変だったんだぞ、学年100位以内に入るのが条件でさ……」
「てコトはお前、今まで100位以内に入ったことなかったんだw」
「うっ」

こりゃマジでなかったっぽいな。
メールでも勉強の話すると機嫌悪くなるし。
……別に頭悪くても俺は構わねぇけど。

「な、何だよー! ハセヲのために頑張ったんだぞー!」
「あん? 俺のため?」
「あ、ち、違う! もう飛行機のチケット予約してあるし! 
 その……行けなかったら勿体無いし……キャンセル代とられるのもシャクだし……!」
「へいへい。そーいうコトにしといてやる」

揺光なりの照れ隠しなんだろうけど……バレバレ。
まぁでも、これで正式に東京行きが決まったワケだ。
補習のこととかも考えると7月下旬か8月初旬ってとこか?

「とにかく! ……ちゃんと迎えに来てくれよ。
 アタシ、東京行くの初めてで右も左も分かんないし……」
「成田に着いたら携帯でゲートの場所教えろ。俺もお前がこっちに着く頃に迎えに行ってやっから」
「荷物、一旦ハセヲの家に置いていい?」
「あぁ」
「じゃ、そのあと遊びに連れてってくれる?」
「いーぜ」
「あは。やったw」


揺光の……智香の顔も知ってるし、大丈夫だろ。
その日の服装とか聞いてりゃすぐ見つかるだろうし。……空港が混んでなけりゃの話だが。
でもこれって……オフだよな? いや、宿泊オフ?
家に女の子泊めるってもの初めてだしな……やっぱ掃除くらいはしといた方がいーんだろうか。
晩飯は……やっぱラーメンか?



250 :名無しさん@ピンキー:2006/10/30(月) 02:02:21 ID:hPpSeA1N

「どーする? 久々にクスエトでもやるか」
「ん……そだね……どうしよっか」

こういう時って会話に困る。
リアルで会った時もこういう感じの流れになっちゃマズイな。
何か会話しねぇと間が持たねぇっつーかさ。

「あーやっぱ……ハセヲと一緒なら……どこでもいいや」
「……」
「……アタシ、何か変なこと言った?」
「いや……」

こいつはたまにドキリとさせるセリフを平気で言う。
今のは聞いてた俺の方が恥ずいんだが……。
最初に会った頃に比べるとだいぶ親しみやすくなった気はするっちゃするが、何かこう……
上手く言葉にできねぇ……。

「ね。ハセヲ」
「ん」
「アタシと一緒に遊んでてさ、楽しい?」
「……」
「アタシはさ、アンタと一緒に遊んでる時が一番楽しいよ」
「……」
「ハセヲは……どう?」

どうって……答えは一つだろ、そりゃ。

「……楽しい」
「ホント?」
「ホントだ」
「ホントにホントにホント?」
「嘘ついてどーする」

子供みてぇな奴。
いつもと態度違うと何か調子狂うな。
……俺の前でだけオープンなだけか?

「そっか、楽しいか……エへへ、良かった」
「何だ、それが聞きたかったのか?」
「会う前に聞いておきたかっただけ」
「あんまリアルに期待すんな。何処にでもいそうな奴だし、俺」
「そだっけ?」
「前に写メで写真送ったろ」
「あ、ゴメン。見てない」

コイツは……。
自分から写メ交換しようって言ってきたクセに……しょうがねぇなぁ。
俺は智香を知ってるけど、智香は三崎亮を知らないってか。



251 :名無しさん@ピンキー:2006/10/30(月) 02:03:28 ID:hPpSeA1N

「どうせならさ、初対面の方が感動するじゃん」
「感動求めてどーすんだ」
「分かってないなぁ……男と女の感性の違いかな?」
「感性……なぁ」

そんなもんか?
たまにオフ会とかのレポ見たりするけど、結構普通だって聞くけどな。
や、俺と揺光の場合はまたケースが違うんだが……感動するか?


「やっと進展したと思ったのに……相変わらずだな」


「カール!」
「よぉ」
「ちゃお。ハセヲ、揺光」

カール……そう言や、この女も揺光と同じ学校だったっけな。
てかセリフから察するに、隠れて一部始終見てやがったなコイツ……。

「喉の具合はどうだ?」
「おかげさまで。のど飴なめてる」
「4時間もぶっ続けで歌うからだよ、お馬鹿」
「カールも一緒にカラオケ行ってたのか?」
「そゆこと。この子が始終歌ってるだけだったケド」

揺光……マイク持ったら離さないタイプと見た。
でもカールはカラオケってイメージじゃないな。
この黒服見てると……カラオケってよりは鎮魂歌の方が合ってる、絶対。

「揺光。手ぶらで東京行こうなんて考えんじゃないよ」
「わ、分かってるさ」
「かと言って手ぶらで帰って来るのも許さない。東京限定のお菓子各種をみやげとして買ってきな」
「えぇ~~~」
「カラオケの延長料金とジュース代は誰が出してやったんだ? あと期末の助っ人」
「……カールお姉様です」

やっぱコイツら面白っ。揺光も姉御肌って感じだけどカールはその上行ってんな。
もう姉御ってか女王様気質って感じになっちまってるが。大したロールだぜ。

「ハセヲ。こんな子だけど世話よろしく」
「ん。分かってる(この前の決闘でも言われたけどな)」
「あとね。この子ゲームじゃこんなに乳デカイけど、リアルでもキャストオフすると結構――――――」
「わーわーわー!!!」

……脱ぐとスゴイってことか? ……ま、それは置いといて、だ。

「……カールは夏休み、どうすんだ?」
「大学受験あるし適当に勉強して過ごすよ。ハセヲも受験生だろ」
「あぁ」
「なるべくなら偏差値低い大学受けてくんない? あんまエリート校だと揺光が入れないよ」
「は?」
「2年後、この子をハセヲと同じ大学に入れて同棲させる……それがあたしの計画だから」

……やっぱこの女、変。



252 :名無しさん@ピンキー:2006/10/30(月) 02:05:38 ID:hPpSeA1N

************************




「こんなもんかなぁ」

夏休みに入り、7月も終わりに差し掛かったある日。
キャリーバッグに荷物を詰め終え、智香は他に入れ忘れたものがないか再チェックしていた。
こんな大掛かりの準備をするのは中学の修学旅行以来のことで、何だかワクワクする。
ワクワクはするのだが……。。

「他には……」

念のため風邪薬や酔い止め、腹痛止めの医薬品なども。
旅先では何が起こるか分からない、万全の準備をしておくに越したことはない。

「これは……どうしよっかな……」

潤香も扱いに困る餞別をくれたものだ、と智香が憤る。
彼女が智香にくれたのはピル……いわゆる経口避妊薬だった。
親切なカールお姉様は可愛い智香がハセヲと不順異性交遊をしてしまった際の
アフターケアを考えてくれているらしいが、こんなものを服用したことのない智香はどうにも躊躇してしまう。
と言うか、副作用とか大丈夫なのだろうか?

「性交渉後……72時間以内に1回目の2錠を服用……12時間後に残りの2錠を……服用してください……」

読んでるだけで顔が熱くなってくる。
空想好きな読書少女の智香にはやや刺激が強いのかもしれない。
あるいは潤香は智香がこういう反応をするだろうと予想して、あえてこんな物をプレゼントしてくれたのか……。
ちなみに何でピルなんてくれたのか、と潤香に聞いてみると

『生でヤった方が気持ちいいんじゃない? あたしヤったことないから知らないけど』

と何とも無責任な答えが返ってきた。
要するにあの後輩いぢめが趣味の先輩は面白ければ何でもいいのである。
どこぞのハルヒなんて比じゃないくらいに仁村潤香は自己中なのだと思い知る。

「(と、とりあえず……持っててみよっかな……)」

イコール、ハセヲとの……つまりは三崎亮とのロマンスを
期待している自分が何となく情けなく思えてくる。何をしに東京まで行くのか分かりゃしない。
確かに智香も17歳、別に異性に興味を持つのはちっともおかしくないことだが……
北海道というやや閉鎖的な土地感覚も手伝って、意外と奥手なのかもしれない。
カールの言う通り、ゲームでの揺光はロールで、やはりリアルの智香こそが地なのだ。
ハセヲとのメールのやりとりでも最近はほぼ地が出てしまっているし、年頃の女の子であることが否応なしに窺える。

「(き、期待なんかしてない……うん、してない……)」

自分とハセヲは飽くまで清い交際をするのだ、と自分に言い聞かせる。
会って間もなく異性と性交するなんてそんなの映画やドラマじゃあるまいし。
……でも好きな人と一緒に居たら、我慢とかできなくなっちゃうんじゃないの?
いつも以上に思考をクロックアップさせながら、智香は出発の準備を進めてゆく――――――――――――。

318 :名無しさん@ピンキー:2006/11/03(金) 02:23:39 ID:RtJFsedq

「あれだけ成田成田言ってたのに羽田かよ」
「はは……ごめんごめん」

ハセヲだ。
揺光の奴、成田って言ってたのに実際は羽田に着くってギリギリで教えてきやがった。
まぁ……考えてみりゃ、どっちかつぅと羽田の方が東京に近いから楽だけど。

「本州はやっぱ暑いねー」
「そうか?」
「ハセヲも北海道に来たら分かるって」

あっちも夏のはずなんだが……そんなに気温差あんのか、同じ日本なのに。
そういやさっきまで厚着だったのに今は薄着になってるしな、コイツ。
地球温暖化とかも関係してんだろうか。

「でさ。どれくらいでハセヲの家に着くの?」
「なぁ……そのハセヲってのやめね?」
「何で? いいじゃん」
「……」

いや、よくねぇだろ。
プライバシーってか個人情報保護とか……。

「じゃあ聞くけど……お前、俺に街中で“揺光”って呼ばれても平気か?」
「え? えーっと……それはちょっと困る、かなぁ」
「だろ」

ハセヲと揺光なんて互いに呼び合ってる2人組が街なんて歩いてみろ。
コアな《The World》のプレイヤーならすぐ感づくぞ……。
俺にPKKされたことのある奴とかにバッタリ会っちまったりしたら厄介だろ?
もしくはアリーナバトルでお前に負けた奴とか……。

「じゃあ亮でいいよね。あ、アタシより1コ年上か」
「好きなように呼べって」
「それじゃ亮で決定!」
「ん」

さすがにリアルでハセヲハセヲって連呼されるってのはな。
揺光からすりゃ俺=ハセヲなんだろうが、俺にとっちゃ俺=三崎亮だし……。
俺だってリアルとゲームの区別は付けたいワケで。

「だからさ」
「何だ?」
「アタシのコトも揺光じゃなくて……智香って呼んで」
「……」

くそ、可愛い。
すっかり忘れてた……そういや俺、こいつにメールで告ったんだった……。
んでコイツ、一応OKくれたんだけど……その後に意識不明になったから有耶無耶になってたんだよな……。

「……」
「ほら、早く」
「……智香」
「うん!」



319 :名無しさん@ピンキー:2006/11/03(金) 02:24:35 ID:RtJFsedq

「でもさ、亮すごいね。一発でアタシ見つけちゃうし」
「まーな」
「さては……アタシが送った写メを食い入るように見て覚えたとか?」
「アホか。お前が意識不明になった時、ネットニュースで顔晒したろ。
 あれ覚えてただけだっての」

今思うとあれも問題ありだな。
ただでさえ未成年なんだから……せめて顔にモザイクくらいかけろっての。
ネット配信のニュースってのはどーにもそういう配慮に欠けてる気がするぜ。

「じ、実物見てどう?」
「どうって」
「だからさ、写真より実物を見た感想」
「……リス顔ってかタヌキ顔って感じだな」
「うわ、何それー!」

いや、だって……お前が感想言えって言ったんじゃねぇか。

「もっとさぁ、気の利いたこと言おうよ。可愛いねとか、写真よりも綺麗だよ、とかさ」
「……ぜってぇ無理」
「何でさー」
「どう考えても俺のキャラじゃねぇだろ……無理なもんは無理だっつの」

可愛いとは思うけどな……何か浮いてるだろ、んなコト言う奴って。
恥ずいし。女にそんなセリフ言ったコトもねぇし。
一応、リアルじゃ初対面だし……んな歯の浮くセリフ言えるのはクーンぐれぇだろうし。





*********************





「お邪魔しまーす」
「荷物は居間に置いとけ」
「ん、そうする」

この家に同年代の女連れ込むのって初めてだよな。
……連れ込むってか泊めるんだけど。
寝る場所は……客間に寝かせりゃいいか。客用の布団あるしな。

「冷蔵庫に飲みもん入ってるから適当に飲んでいいぞ」
「はーい」

まずは一段落だな。にしてもコイツの荷物、何だ?
3日だけだってのにこんなに荷物が必要なのか? 
どこぞのメーテルみたくコンパクトに纏めりゃいいのに……。

「亮の家ってでかいなー。アタシんちがウサギ小屋みたい」
「おい。俺の部屋、2階」
「あ、待ってよ!」


320 :名無しさん@ピンキー:2006/11/03(金) 02:25:42 ID:RtJFsedq

***********************



「まだ昼前だな。智香はどっか行きたいとことかないのか?」
「あのね、レインボーブリッジ見たい! ライトアップされたやつ」 
「レインボーブリッジ……そーいや前にメールで見たいって言ってたっけな」
「うん!」

ロマンスギフトを興味本位で送ったら、確かに智香からそういう返事を貰った気がする。
レインボーブリッジか……どーせ親も帰って来ねぇし、遅くなっても平気っちゃ平気なんだが。
終電に間に合えばいいワケだし。

「でもその前に行きたいとこあるんだよね」
「あん? 何処だよ」
「お台場! デートしたい!」
「……げぇっ」

よりにもよってあそこかよ! そりゃレインボーブリッジとは目と鼻の先だけどよ……。
週末はカップルばっかで居心地悪そうなんだよな……何が日本一のデートスポットだ。
じゃあ日本二は何処なんだよ。ネズミーランドか?

「嫌なの?」
「嫌じゃねぇけど……わざわざ混んでるとこに行く必要あるか?」
「亮と一緒なら混んでてもへーき」
「……」

笑顔でそう言うこと言われるとすげぇ困るんだが。

「亮、いいでしょ?」
「……仕方ねぇなぁ」
「あは。やった」

往復分の電車賃とか各施設の入場料とか考えると……頭痛ぇ。
親からは一応毎月金貰っちゃいるけど、ほとんど貯金に回してるからな……引き出しておいて良かったぜ。
この3日ですっかからかんにならねぇことを祈るか……。

「それじゃ目的地も決まったし、ちょっと休憩~」
「お、おい、それ……俺のベッド……」
「えへへ。亮の匂いがする」
「あのなぁ……ったく」

俺のベッドに智香が寝てる。見慣れた部屋に女が居るってだけで別世界みたいだ。
この部屋に女入れたのも初めてだが、ベッドに女寝かせたのも初めてだし……。
シーツと枕カバー、事前に洗濯しといて良かったぜ。

「あ、でも変なコト考えちゃダメだからな。
 いくらアタシのコト好きでも……えと……寝てる間に襲い掛かるとかってのはダメなんだぞ!」
「ケダモノか俺は」
「だってさ、実際のアタシは《The World》のアタシみたく、強くないしさ……オトコノコの亮には敵わないよ」
「襲わねーっての。朝早く起きてるから眠いんだろ? ちょい寝ろ」
「ん……おみやげの白い恋人、冷蔵庫に入れてあるから……すぅ」
「律儀だな、オイ」

こんなのが今日と明日、俺の家に泊まるのかよ……本当に大丈夫か?
何が大丈夫ってそりゃアレだ。理性とかイロイロ。



321 :名無しさん@ピンキー:2006/11/03(金) 02:27:05 ID:RtJFsedq

『襲えば? あの子の『襲わないで』は十中八九『襲って!』って意味だし』
「お前は俺の決意を砕く天才だな」
『くっくっく、今のは冗談。寝込みを襲うのはフェアじゃないしね』

カール……やっぱコイツの性格、分かんねぇ。
真面目な時はとことんクールだけどふざけてる時はとことんふざけてるし。
携帯の番号交換しようって言われた時は少し驚いたけどな。

『とりあえず、あの子が居る間は一緒に居てやってよ。きみに会いたがってたんだし』
「お台場でデートしたいんだと」
『マイナーな。あの子らしいと言えばらしいけど』
「妙な入れ知恵してねぇだろうな、カール」
『にょう? あたしには何のことだかさっぱり分かんなぁーい』
「(図星か……)」

最近のカールは策士だ。それもかなり狡猾な。
揺光の話じゃ昔のカールはもっと悪キャラをロールしてたらしいが
今のコイツを見る限りじゃそんな印象は薄く、寧ろ進んで道化を演じてるようにも思える。
どーやら、カールはカールなりに俺達の関係を楽しんでるっぽいし……。

『それじゃ。みやげ忘れないように言っといて』
「って、おい!」
『ツーツーツー……』
「切りやがった……」

面白い奴ではあるけど同時に変な奴だとも思う。
智香は初心者の頃にカールと知り合ったって言ってたな……今度、詳しく聞いてみるか。
個人的に俺もアイツに興味あるしな。……あの紅いスケィスのこととか。

「んぅ……ハセヲ……じゃないや、りょ~」
「智香、起きたのか」
「今……何時ぃ?」
「2時過ぎ。3時に家出ても十分間に合うぞ」
「そだね……ふぁ~~~ぁ」

周りがカップルばっかなのだけは覚悟しとけ。海にゴミが浮かんでてても幻滅すんなよ。
あといくらお前がラーメン好きだからってラーメン国技館には行かねぇぞ。
あそこのラーメンどれも値段高ぇし……もっと安くて美味いところ、いっぱいあら。

「ん~~~っ! 亮のベッド、寝心地いいね」
「気のせいだっつの」
「……ホントに襲わなかったんだ」
「襲ってほしかったのか?」
「そ、そんなワケないじゃん! 寝込みを襲うのは卑怯者のすること!
 あの張飛だって、寝込みを襲われなきゃ張達と范彊なんかには負けなかったね、うん」
「ジャーン ジャーン ジャーン」
「げぇっ、関羽!」

……起きたばっかの割にはノリいいな、コイツ。

「もぅ、つい反応しちゃったじゃん!」
「とっさに反応できるお前が素直にすげぇ」

三国志好きもここまで来るとアレだ……。



322 :名無しさん@ピンキー:2006/11/03(金) 02:28:41 ID:RtJFsedq

「広いねー!」
「北海道はもっと広いだろ」
「分かってないなぁ、そういう意味じゃなくてさ」

新宿から直通で東京テレレポート駅まで。
そうすりゃお台場にはすぐ着く。……着く前から嫌な予感はしてた。
電車の中はカップルばっか……お台場についてもカップルばっか……頭痛ぇ。

「亮はお台場にはよく来るの?」
「彼女もいねーのに来てどうすんだ」
「いるじゃん、アタシが」
「……まぁ、そりゃそうかもしれねぇけど」

レインボーブリッジ見せるだけだってのに、ここまで気疲れするとは思わなかったぜ。
智香は楽しそうにしてるっちゃしてるが、俺はこれ以上テンション上げるの無理。
とりあえずライトアップまで待つか……とりあえず海浜公園とかブラついて……
って、あそこ昼夜関係なくカップルばっかで尚更気まずいじゃねぇか。

「はい」
「? 何だ、手がどうかしたのか」
「繋ぐの」
「……誰と誰が?」
「アタシと亮が」

おいおいおいおいおい。

「……どうしてもか?」
「どーしても! 不自然じゃん、みんな繋いでるのに」

みんな繋いでるからって、俺達まで繋ぐ必要はないんだぞ。

「アタシ、ちゃんと亮にOKしたつもりなのにさ。
 亮、何か素っ気無いんだもん。アタシの特別になりたいんじゃなかったの?
 かんちがいしちゃえ、って言われたから……アタシ、東京まで来たんだよ……?」
「(……なんちゅう内容のメール送ってんだ、俺は)」

コイツは一途でしつこいらしい。更に、裏切ると怖いとも言っていた。
なら俺がここで取るべき行動は? 決まってる。責任くらいは取ってやるさ。刺されちゃ堪らん。
さもなきゃ事情を知ったカールに半殺しにされかねない。あの女もあの女で怖ぇーし。

「……お前も俺のどこがいーんだが」
「あ……」
「ほら。ちゃんと歩かねぇと転ぶぞ」
「……うん!」

女の手なんてもう何年も触ってねぇ。
智香の手は俺の手より一回りくらい小さくて少し体温は低め。
それでも俺が指と指の間に手を絡めてやると、何かこう……恥ずかしそうに笑うんだ。
熱かった。暑い、じゃなくて熱い。夏の日差しのせいじゃねーな……。



323 :名無しさん@ピンキー:2006/11/03(金) 02:30:05 ID:RtJFsedq

「亮の手っておっきい」
「そうか?」
「てか、アタシの手がちっちゃいのかな」
「さーな。誰かと手ェ繋ぐなんて……久しぶりだから分かんね」

これで俺も周りのカップルの仲間入りか……絶対ガラじゃねぇ。
しかも悔しいことに俺と智香が手ェ繋いでも全然違和感ない。
何か他の連中も俺らのこと見てるし……いや、気のせいだ。
こー言うのを自意識過剰ってんだ。

「どしたの?」
「いや……何でもねーよ」
「夕方の景色もいいよね。あーでももっと早めに来てれば他にも遊べたかも」
「寝てたもんな、お前」
「……だって、ドキドキして眠れなかったんだもん」

修学旅行前夜の学生かよ。
飛行機の中で寝るって手もあったんじゃないか?
人によっちゃキーンって耳鳴りのせいで眠れねぇって奴もいるらしいけど。

「そーいや」
「ん。何?」
「その服、何つーか……可愛いな。や、お前も……可愛いけど」
「な……」

すげぇ。今自分でも知らないうちに口走ってたぞ。
可愛い? 誰が? そりゃ智香だろ。俺の周りにゃ明らかにいないタイプ。
服も服で故意か他意かは知らねぇけど、アレだ、何かやけに胸元開いてる服だな、オイ。
揺光の時のコスよりやや控えめな感じもするけど胸もカールの言った通り……おっと、それどころじゃねぇよ。

「すまん、今のは忘れろ。いや、忘れてください」
「……亮ってさ」
「な、何?」
「アタシのコト、ドキドキさせるの……上手いよね」

お前の笑顔は俺の心臓に悪い。
ゲームとリアルじゃやっぱ全然違うんだよな……いつもの調子が出ねぇ。
智香は揺光の時と違って、何かこう……女の子っぽい、みたいな?
いや、何か俺の言ってること変だな。初めからコイツは女の子だろ。
でも……実際に揺光が――――――智香が隣りに居るってだけで、心のどっかで嬉しがってんだ……俺。

「そ、それよりさ、レインボーブリッジってこんなに長いんだ!
 アレだね、コレ見てるとさ、事件は会議室じゃなくて現場で起きてるって感じするよね!」
「今にもレインボーブリッジ封鎖しそうな勢いだな」

智香……レインボーブリッジを封鎖するのは1じゃねぇ、2だ。
コイツも相当混乱してるな……でも2より1の方が断然面白いと思うの俺だけか?

「あー早く夜にならないかなー」
「その間に飯でも食っとくか?」
「それは大丈夫。ちゃんと亮の家にもう用意してあるから」
「……カップ麺か?」
「すごい。何で分かったの?」

いや……すごいって……お前……。



324 :名無しさん@ピンキー:2006/11/03(金) 02:31:52 ID:RtJFsedq

****************************




レインボーブリッジには444個のイルミネーションがあるんだと。
季節や曜日でライトアップの色も変化するんだそうだ……来る前にちょっと検索しただけだから
詳しくは知らねぇけど。

「ほら、亮も見なって! すっごいキレー!」
「(ま……本人は満足してるっぽいからいいか)」

つーワケで、夕日が沈みかけたあたりでライトアップが始まった。
夏だから日が沈むのは大体夕方6時以降……このペースならあともうちょいで全部沈むか。
でもあんま海浜公園に長居はしたくねぇんだよな……蚊に刺されたくねぇし、
何より他のカップルどもがイチャつき始めると目も当てられねぇ。
俺はそーいうのに免疫が全然ねーんだ、見てられっか。

「ね、写メ撮ろうよ」
「暗くなってからの方がよくね?」
「そっか。その方がキレイだもんね」

女と写メ撮ったことなんかねぇー。てかどんな顔すりゃいいかも分からん。
クーンにでもアドバイスもらっときゃ……いや、やっぱパス。アイツのは参考にもならねぇ。

《薔薇の首輪つなげて 銀の鎖くわえて 今宵もひとり果てる あなたが憎らしいー》

な、何だ?

「あ、アタシの携帯」
「(ローゼン一期……アリプロ……着うた……)」
「ちょっとごめんね。……はい。もしもーし……って、潤香か」

潤香……カールか。
にゃろう、タイミング見計らったみたいに電話かけてきたな、オイ。
ホントはどっかで俺らのコト見てるんじゃないか? あの女ならやりかねねぇぞ。

「うん……うん……わ、分かってるよ……」
「(ナニ話してんだか)」
「し、しないよっ、そんなコト! も、もう切るからな!」

途中までは普通に(と言うよりゃ恐る恐るって感じだが)話してた智香が慌てた様子で携帯を切る。
「ほんとにもー」とか「アタシがそんなコトするワケないじゃん」とか愚痴こぼしながら。

「カール、何か用だったのか」
「しょーもない用事。亮が気にするコトじゃないって」

じゃあ何で電話かけながらお前の顔が見るからに赤くなって行ったのか小一時間。

「ほら、もう真っ暗だよ。レインボーブリッジ見ながら歩こ!」
「ん」

やれやれだ、もうちょいで帰れそうだな。……無事に帰れりゃいいんだが。


387 :名無しさん@ピンキー:2006/11/04(土) 23:26:24 ID:9NC/YuRV

「AIDA反応?」
「ええ」

祖母のタキ江と共に夕飯を済ませた潤香……いや、カールを待っていた女。
G.U.とか言うCC社側の人間だ、何度かカールに接触して来たことがあるから覚えている。
人を見透かした様な態度が目に付く眼鏡の拳術士。確かパイと言うPC。

「もうそいつらって……あんた達とハセヲが全部やっつけたんじゃないの?」
「貴女も知らないワケではないでしょう? 碑文は――――――」
「AIDAを呼ぶ……あたしのスケィスに惹かれたお馬鹿びんってとこか」
「理解が早くて助かるわ。ハセヲに連絡したけどインしてないみたいなの。だから」
「代理であたしがAIDA退治ねぇ……」  

ハセヲ達にはモルガナ因子が残っていない。
故にもう憑神を喚ぶことはできない、それは知っている。
カールの様に以前の《The World》、即ちR:1で未帰還者になった経験のある者しか
もうモルガナ因子をPCに内包してはいないのだから。
AIDAとやらと対等に戦えるのはXthフォームのハセヲくらいのものだろう。

「ハセヲと親しいんでしょう、貴女」
「何、オネーサンってば妬いてるの?」
「冗談キツイわね」

しかし返って好都合だとカールは心の中で哂う。
今ハセヲは……亮は智香とお台場でデート中、そんな時に無粋な邪魔が入るのは許さない。
せっかくお膳立てした計画を狂わされるのは潤香の美学に反する。
それだけは許さない。智香のためにも

「正直なところ、憑神を使役できる貴女を野放しにはしておきたくない。
 でも不本意だけど、今は貴女以外に頼れる人間がいないの」
「ホントに残念そうw やっぱオネーサン的にはハセヲと一緒に駆除したいんだ?」
「……本気で怒るわよ」

薮蛇だったらしい。
CC社の人間に協力するのは面白くないが、恩を売っておいて損はない。
彼女の機嫌を取るためにもここは大人しく協力してやるのが無難な選択か。
カールとて同じ女であるし、パイのハセヲへの恋慕は分からなくもない。

「おっけ、引き受けよう。そんかわし」
「何かしら」
「ここ2~3日だけハセヲのこと、放っておいて欲しいんだ」
「……どうして」
「ギブアンドテ~ク。あたしが譲歩できるのはここまで」

無駄なことは嫌いな主義のカールだが今回ばかりは仕方ないと割り切った様子。
とりあえずハセヲ不在の間は裏方に回った方が良さそうだ。元々、こういう仕事には慣れている。
あとは智香が上手くハセヲと懇ろになれば言うことはない。そっちの方が本命なのだから。

「けど勘違いするな。あんたのためじゃない、ハセヲのために代理を引き受けるんだ」
「ハセヲのため? ……妬いてるのって私じゃなくて、貴女なんじゃないの?」
「ふふん。どーかな」

けれどカールは飽くまでその姿勢を崩すことはない。
パイからさっさとAIDA反応のあったエリアコードを聞き出すと、ばみょん!と軽快に駆け出して行ってしまう。
ハセヲはあんな女の何処が良いのかしら? パイの心情は複雑の極み……。



388 :名無しさん@ピンキー:2006/11/04(土) 23:27:54 ID:9NC/YuRV

*************************





「星を見るのもいいけどさ。こういうのもいいよね」
「そーだな」

智香曰く、イルミネーションは見てて飽きないらしい。俺にゃ無理だが。
女は男よりも好奇心が強いって言うし、それこそ感性の違いかもな。
それとも何か他に理由でもあるのか……。

「ハセヲは星とか見たりするの好き?」
「たまに夜空を見上げたりする程度」
「んー。そういう心の余裕は人生には必要だよな」
「心の余裕なぁ……」
「見上げてーごらんー♪ってね」

坂本九の歌か。あの歌……2番のサビ部分の歌詞とか
【手を繋ごう僕と 追いかけよう夢を 二人なら苦しくなんかないさ】
だもんな。大した詩人だぜ。

「でもね。アタシとしては」
「あん?」
「リアルでさ。ハセヲと……亮と一緒に、こうやって歩いてみたかったし」
「……」

……何で立ち止まってんだ俺は。
歩けよ。

「へ、変なこと言った?」
「いや、何つーか……」
「う、うん?」
「……意外と女の子してんのな」
「アッ、アタシは最初から女の子っ!」

大人じゃない、乙女です。恋するのが仕事です、ってか。
女の子が魔法で作られたんなら、男の子は何で作られたんだろうな。
錬金術とか武道の達人達の細胞からか?

「だってよ、普段とのギャップがあるだろ。いつも冒険だのプレシャスだの言ってるのに」
「冒険だけがアタシの全てじゃないって。亮だってそうだろ?」
「まぁ……そりゃな」

そりゃそうだ。
ハセヲと三崎亮はイコールであってイコールじゃない。
現実にまでゲームの設定とか持ちこむ必要とか全然ねぇし。
むしろカールの言ってた
『揺光のキャラはロールだと思った方がいい。本当のあの子はすごい繊細なんだ』
って言葉が実証されたってワケだ。意外だったけど。

「んで、歩くだけでいいのか?」
「えっ」
「一緒に歩くだけで、お前はそれで満足なのか?」



389 :名無しさん@ピンキー:2006/11/04(土) 23:29:05 ID:9NC/YuRV

わざわざ一緒に歩くためだけに北海道から来たんじゃねーんだろ?
いくら俺でもそれくらいは感づく。
一応……アレだ、か、彼氏……だしな……。

「他にもやってみたいコト、あるんじゃないのか」
「……あるけど……いいの?」
「借金の保証人になってくれ、とか以外ならな」

俺はハッキリ言ってこういう雰囲気が苦手だ。
ゲームの時ならアトリやパイ、カールとかと2人きりで
エリア行ったりクエストやったりAIDAの駆除やったりしたこともあるにはあるが、今はゲームじゃない。
どうにも……調子が出なくて引き気味になると言うか……。

「じゃあさ」
「おぅ」
「キスしよ」
「……」

……誰と誰が? 
って、手ェ繋ぐ時にもあったぞ、このやり取り。

「な、何でそこで黙っちゃうのかなぁ……?」
「……ここでか?」
「うん……ここがいい」

……えっと、他にもいっぱい人居るんだけどな。
気がつくと俺らと歳もそう変わんねぇカップルどもがよ、周りでチュッチュチュッチュやってんの。
なに、俺達もその仲間入りしろってのか? おいおいおいおいおい、そりゃねーだろ。

「ここでしたい」
「(うわ……)」

不意打ちで智香に抱きつかれた。
コイツ、あんま背が高くねぇから頭は俺の胸あたりにあってさ。
ハセヲの時だったら抱きついてくる奴なんか有無を言わさずに、ひっぺ剥がしてるのに。
でも今は全然そんな気力が沸かねぇの。真夏に抱きつく奴があるか、とかツッコむ気力も。
智香の身体、すげぇ軟らかくて(胸とか)、いい匂いして、ガラにもなく俺の心臓ドキドキ言ってんだ。

「……会ってから、まだ24時間も経ってねぇだろ」
「ア、アタシだって……我慢したかったけど……げ、限界突破……みたいな?」

宇宙一の戦闘民族みたいな言い訳しやがって……。
ならアレじゃん、お前が寝てる時に煩悩と戦ってた俺の努力無駄じゃん。
カールの言ってた通りにやっときゃよかったのか? 選択肢間違えて別ルートにでも入ったのか?

「……あとで『乙女の純情をもてあそぶな! 地獄に落ちろ!』とか、言わないか」
「な、何ソレ。言わないよ、言うわけないだろ!」

「失礼しちゃうなー」とか顔膨らませて怒ってやがんの。
その仕草がすごい可愛いのな。前の俺なら志乃とどうしても比較してたんだろうけど……
さすがに今はそんなコト、もうしねぇよ。する意味がない。この可愛さはベクトル違う。

「亮、メールで言ってたじゃん、かんちがいしちゃえ……って。
 していいよ……かんちがい。アタシもね、かんちがい……してるから」



390 :名無しさん@ピンキー:2006/11/04(土) 23:30:30 ID:9NC/YuRV

俺はキスをしたことがない。
そりゃ日本じゃなくて英語圏とかに住んでりゃ、日常的に家族や女友達とするんだろうよ。
でもここは日本なワケで。しかも日本人ってのは昔から礼儀とかを重んじる奥ゆかしい人種なワケで。
人付き合いの苦手な俺なら尚更なワケで。つか、もうワケ分からん……。ワケワケうるせぇぞ、俺。

「かんちがい……していいのか」
「……アタシがいいって言ってるの。いいに決まってる」

ちょっとだけ揺光入ったな、今の。
まぁ……じゃあ、本人の許可下りてるし……かんちがい、してみる……か?
ここで逃げたら、また昔のヘタレだった頃のハセヲみたいになっちまう。
それに智香を否定することにもなる。俺はそんなに酷い奴だっけか? 違うだろうよ。

「……目、瞑れ。俺も一応、恥ずいから」
「うん……」

俺の腰に回してた智香の腕が、一瞬だけビクッと強張った。
やっぱ俺だけじゃなく、コイツも緊張してんだな……慣れてないだろうか。
てか智香は誰かとこういう経験あんのか? 
そりゃ結構可愛いし、昔付き合ってた男がいた、とか言われても全然違和感ねぇけどさ……。

「おでことか、無しだから……」
「わ、わーってる」

ここまで来て、唇じゃなくて額にする奴はさすがにいねぇだろ……多分。
暗くなかったらもっと智香の顔を堪能できたんだろうが、待たせるのも悪い。
もうちょっとだけ明るいとこでヤれば良かったかな、なんて考えてる余裕もない。
俺も、かんちがいしちまったみたいだったから。

「智香……」
「ん……」

何だろ、何なんだ。
人間の(てか女の子の)唇ってこんなにやーらかかったのか。
とりあえず息が続くまでこのままで居ればいいかな、とかそんなことだけ考えて。
でも、何か様子が変っぽい。息苦しいとかそういうのじゃなくてだ。
俺の腰の辺りにあった智香の手が、いつの間にか首に回されてる(でも目は明けない)。
さっきよりも強く智香の身体が密着してきて、腹の辺りに普通にコイツの胸が当たってる(でもまだ目は明けない)。
俺の歯に何かが触れた。智香の歯じゃない、もっと柔らかいものが(それでも目は明けない)。
んで、それが強引に俺の口の中に入ってくるのな。舌に絡んできて口の中が大変……って、おいおい。

「っは……はっ……ち、智香!」
「どっ、どしたの?」
「どしたのって……お前……今、舌……」
「い、嫌だった?」
「そういうんじゃねぇけど……い、いきなりだったから、ちょっと驚いたっつーか……」
「潤香が……舌入れた方が喜ぶ、って……」

カールの奴……やっぱ妙なこと吹き込んでやがったのか……。

「ダ、ダメかな?」

ダメダヨ。ってぱにぽにだっしゅ!な展開は期待しない方がいい。
智香とキスしたせいか、何かもう俺も色々フッ切れちまってるから。

「……いいんじゃねぇの、智香の……したいようにすりゃさ」



391 :名無しさん@ピンキー:2006/11/04(土) 23:31:46 ID:9NC/YuRV

それから仕切り直しっつーことで、俺達は何度もキスを繰り返した。
唇を重ねては離し、重ねては離し……単純作業なのに、何故だか楽しい。
俺もだいぶ骨(コツ)が掴めてきたらしく、互いの歯がぶつかり合うみたいなこともなく
スムーズに行くように……って、んなコトの骨掴んでどうするよ。変態か。

「ん……亮、上手……」
「上手いも下手もあって堪るかっての……」
「謙遜するなって、事実だし」
「(褒められてもこればっかりは嬉しくねぇぞ……)」

智香のこの余裕っぷりは何なんだ?
俺を抱きしめる時の仕草といい、最初のキスの時といい、初めてって感じじゃねーな。
これは……もしかするともしかするんじゃないか?

「……なぁ」
「ん。なぁに」
「俺から言わせると……むしろ智香の方が上手いってか、手馴れてるって感じなんだが」
「え……そ、そうかな?」
「お前が昔誰と付き合ってようが、そんなのは気にゃしねぇけど……まぁ、一応」
「あー……うん。それは……」

やっぱ脈ありか。
可愛いもんな、そりゃ男の方が放っとかないだろうよ。

「じゅ、潤香と予行練習を……ちょっと」
「は?」
「その、な……何て言うか……ノリでやっちゃった……みたいな?」
「……」

あの女……揺光争奪とか本気を見せろとか言っておきながら、
ちゃっかり自分も良い思いしてんじゃねーか! 後輩の唇を奪う変態お姉様って何処のエトワール様だ!
にゃろう、まんまとしてやられた……!

「す、寸止めって決めてたんだ! でもさ、潤香に真顔で『いい?』って聞かれて……」
「……OKしちまったワケだ」
「何て言うか……潤香ってさ、黙ってれば本当に綺麗で……あぁ、いいかな、ってカンジになっちゃって……」

……魔性の女と書いて魔女と読む、か。やっぱあの女、ただもんじゃねぇ。
つまりアレか、俺も智香も最初からカールの掌の上で踊らされてたってか。
どっか芝居がかったロールする奴だとは思ってたけど、そういうコトかよ……とんでもねぇ女だ。

「でも、オトコノコとは亮が初めてだから」
「そ、そうか……ってフォローになってねぇだろ、ソレ」
「べ、別に、そういう趣味は全然ないんだからな! あ、飽くまで、潤香とは友達同士だって!」
「わーった、わーったから。夜の公園で騒ぐの禁止」

とりあえず智香が男と付き合ったことがないのは嬉しい誤算だった。
嬉しくない誤算は、カールの野郎(女郎か?)が智香からレッスン料を摂ってたこと。
だから昼間に電話かかって来た時、随分と余裕だったのか。味見済みとは……侮ねぇ。
そりゃ「襲えば?」とか軽く言えるよな、お前はもう第一段階終了してるんだから。

「カール……やっぱ、アイツの性格だけは分かんねぇ」
「それには……アタシも同意、かなぁ」

496 :名無しさん@ピンキー:2006/11/07(火) 02:03:24 ID:b9r7J3NW

「お馬鹿びん駆除、一丁上がりっと」

G.U.の正式メンバーではないとは言えカールもスケィスを従える碑文使い。
生半可な戦闘力のAIDAでは話にもならなかった。今倒した奴で最後だったのか、AIDA反応は完全に消失した。

「これがデータシードか……ウイルスコアに似てるな」

AIDAから抽出したデータシードの結晶を見て、ふとカールがそんなことを漏らす。
以前のバージョンであるR:1時代にもこんな不可思議なアイテムが確かに存在していた記憶がある。
チートに慣れ親しんでいた当時のカールも、ウイルスコアだけはどうしても解析することができなかった。
まぁ、今となっては興味もないが。

「やー、お見事」
「……何だ。あんたか」
「酷っ。せっかく応援に駆けつけてやったのにさ」
「高見の見物してて何が応援なんだか」

物思いに耽っていたカールの背後に木魂する拍手。振り返ると、撃剣士の少女が笑顔でそこに立っている。
薄い緑色の髪と人懐っこい可愛らしい笑顔、どこか遠い異国の給仕か女中を思わせるコスチューム。
カールもよく見知っている相手だった。

「ハセヲなら今日は来ないよ」
「うん、知ってる。さっきの会話聞いてたから」
「ならどうしてあたしの前に現れる? いつも遠くから見てるだけだったろ」
「あはは。一度サシで話がしたかったんだよ、アンタと」

前述でカールもよく見知っている相手と記述したが、正確なところ両者に面識はない。
いつもこの撃剣士の少女が、街やエリアで遠くからハセヲを見ていることがあるのを
カールも気づいて遠目に監視していたから、というのが的確な説明だろうか。

「昔のハセヲを知ってる私としてはさ、今のハセヲの変わり様に驚いてんだよね。
 久しぶりに地元に戻ってみたら、ご近所でも評判の不良が更正して公園の掃除してました、みたいな?」
「何ソレ」
「的は得てると思うんだけどな。2年前のハセヲはとにかくケンカ買うの上手くてさ、特にハセヲ祭のPK100人斬りとか」
「昔はどうだろうとあたしは今のハセヲが気に入ってるよ」
「ありゃま、たいした信頼」

以前のカールもPKやチート行為をしていたので人のことはとやかく言える立場ではない。
今のハセヲに問題がなければ、それでいい。揺光もそこが気に入っているんだろうし。

「ハセヲと揺光がくっ付くとして、アンタはどうするつもり?」
「あたしはあたし自身が面白ければそれでいい」
「よし、なら私と付き合ってみよっか」
「ありえないから」

カールも揺光から聞いている。この撃剣士はネカマだと。

「ネカマと付き合う程、あたしは落ちぶれちゃいないよ」
「何さー。ネカマにだって恋愛する権利はあるんだぞー! 命短し恋せよ乙女、って言うでしょ」
「あんたは乙女ですらない」

どことなくカールと似た性格をしているが、ネカマとは到底付き合う気になれない。
だがこのテの馬鹿は嫌いじゃないのも確かだ。だから十分に引き離して、別れ際に一言だけ

「メンバーアドレスならいつか教えてやるよ、三郎」

と。



497 :名無しさん@ピンキー:2006/11/07(火) 02:04:31 ID:b9r7J3NW

**************************






「夕飯がカップ麺だけってのも……」
「真心がこもってるから問題ないって」
「や、あるだろ」

お台場からやっと帰って来れた。
案の定、夕飯は智香が北海道みやげとして持って来たカップ麺。
まずくはねぇけど……真心だけじゃ腹いっぱいにならない時もあるんだぞ……。

「なぁ、冷蔵庫の白い恋人も食っていいか」
「夜にお菓子食べると太るぞ、亮」
「カップ麺食うのも太るんじゃねぇのか……」

もう夜の10時過ぎてるし。
でもやたら智香が美味そうにカップ麺を啜ってたんで強く言うのも酷な気がした。
ここ最近はカップ麺を食うのを控えてたんだそーだ。……ダイエットか?
別にそんなのする必要はねぇように思うけどな。

「まーとにかく疲れたろ。今日はもうシャワー浴びてさっさと寝た方がいい」
「どこで寝ればいい?」
「客間に布団敷いてやっから、そこで寝ろ」
「アタシとしては……ハセヲの部屋で寝てみたいんだけどな」
「ん。じゃあ俺が客間で寝るか」
「そ、そうじゃなくてさぁ……はぁ」

そんなに俺のベッドの寝心地が気に入ったのか。
確か外国製だったよな、あれ。

「ゆっくりでいいぞ。俺は戸締りとかした後で入るから」
「……覗いちゃダメだからね?」
「つまんねー心配すんなっての」
「シャンプーとかボディソープ、使っていい?」
「好きに使えって」

やっぱその辺は女の子だよな、智香も。
一応、俺が使ってるやつ以外にも風呂場に置いといたけど……。
家族以外の人間が風呂場に入るのって、何か変な気分だな。
おっと、変な気分と言っても覗きたいとかそんな意味じゃねーぞ。
気分的な違和感って意味だからな。

「そ、それじゃ……入ってくるから……」
「ああ」
「洗面所に着替えとか置いとくけど、さ、触ったりしちゃダメだぞ!」
「触らねーよ」

カールの言ってたことが本当なら「覗け」とか「触れ」ってことか?
や、いくら何でもそれは絶対ありえねぇって。



498 :名無しさん@ピンキー:2006/11/07(火) 02:05:23 ID:b9r7J3NW

『だらしない猿どもめ……』
『粘土細工が喋った!?』
『粘土細工では無い! 我こそはギガゾンビ様の下僕、ツチダマだ!』

智香がシャワーを浴びてる間、俺は居間でテレビを見ていた。
夜とは言えまだまだ暑いし、微風だがクーラーも点けてる。
こんなことなら俺の部屋のクーラーも点けておけばよかったかもな。
シャワーから出た後、智香も涼しいだろうに。さすがに寝る時には消した方がいいとは思うが。

「俺も疲れたな……さすがに」

朝早くに起きて智香を羽田まで迎えに行って、一旦家に帰って、今度はお台場……。
体力的に疲れたんじゃない、精神的に疲れた。
特に海浜公園で智香と何度もキスしたのが相当応えたっぽい。
しばらくはガムとか噛みたくねぇ、そんな気分だ。

「今日は……ログインしなくてもいいよな……」

アトリやパイが何か文句を言ってくるかもしれない。
が、俺だってたまにはゲームから離れて現実の休日を満喫したい時だってある。
こういう疲れた日なら尚更だ。

『来い、粘土の化け物!』
『いい度胸だ、タヌキの化け物』
『タヌキじゃないこの! ひらりマ――――――――――プツン』

テレビの電源を切って俺はソファーに寝転ぶ。
やたら瞼が重くて、気ィ抜いたらすぐにも眠ってしまいそうなくらいだった。
10時間ぶっ通しでゲームしても疲れないはずなんだがな……こーいうのを気疲れってんだろう。
智香がシャワーを浴び終わったら、さっさと交代して俺も浴びてぇ。
今日は自分の部屋じゃなく、客間で寝るんだったな……布団、出さねーと。

「亮……で、出たよ……」
「ん。随分長かったな」
「そ、そうかな?」
「んじゃ、入ってくっか……俺の部屋、好きに使っていいからな」
「わ、分かった」

目覚ましは朝8時くらいにセットしときゃいいか……夏休みだし。
朝飯はご飯と味噌汁でいいよな……やべ、眠ぃ。

「おやすみ」
「う、うん……おやすみ」

シャワー浴びる前に布団敷くか。
いつもベッドで寝てたから布団とか何かピンと来ねぇなぁ……くぁ~ぁ……。

「亮」
「ん」
「……おやすみ」
「? あぁ」

何で2回言うんだ? ……まぁいいか。
シャワー浴びてすっきりして眠りてぇ……今日はホントそんな気分だ。
やっぱお台場なんか滅多に行くもんじゃねぇ、ただでさえ俺は人ごみが苦手だってのに。
まぁ……智香が喜んでたから……嫌な気分じゃなかったけどな。



499 :名無しさん@ピンキー:2006/11/07(火) 02:06:17 ID:b9r7J3NW

*************************




シャワーもそこそこに浴びて俺は布団に寝転ぶ。
寝苦しくならない様、羽織るのはタオルケット1枚だけ。夏だから風邪は引かねぇだろ。
いつも寝る前に、その日あったことを思い出したりして眠る奴っているよな。
俺も例に倣って今日一日の出来事思い出してみようとしたんだが、どうにも疲れてその気になれねぇ。
智香に会って、手ェ繋いで、キスまでしたってのに……。
やっぱ、人間って……寝る時が……一番安心……するの……かもな……。

…………。
………。
……。
…ゴトッ。

眠ってから随分経ったか。時間は夜中の2時か3時くらい。
居間の方から何か聞こえた気がする。泥棒? んなワケねぇ、戸締りはしてある。
じゃあ智香か? 冷蔵庫の飲み物でも飲みに降りに来たかな。……まぁ、いいや。
気にせずに寝よう。と思ったんだが……。

「(……何だ?)」

足音が聞こえる。それもすぐ近くで。
どうやら俺の寝てる客間のドアの前で止まったらしく、気配をすぐそこに感じた。
何だ、どうした? こんな時間に何か用でもあんのか?
俺は眠いのも手伝って意識がハッキリしてない……起きてるのか眠ってるのか、ちょい微妙。
でも確かにドアの前に気配は感じる。

「(……)」

ガチャって音と一緒に客間のドアが開く。
部屋の中は天井の電灯が薄暗いサブライトで照らしてるのみ、目を凝らさないとよく見えやしない。
客間だけは畳を敷いてあるせいか、さっきまでの様に足音はもう聞こえない。
目を閉じたままだったから分からねぇけど、布団のすぐ横に智香の気配があるのは分かる。
俺の寝顔でも見に来たのか? ずっと寝たフリってのもアレだし、眠いのを我慢して俺はやっと口を開くことにした。

「……どした?」
「!」
「眠れねぇのか?」
「……」
「智香……?」

ぼやけた視界を元に戻すために眠い目を擦る。
智香は寝間着代わりの夜着の格好で膝をついて俺を覗き込んでいた。
心なしか、少し息が荒い気がする。

「あ、あの……ね」
「?」
「よ、夜這いに……来ちゃった……み、みたいな……?」

……普通、逆じゃね?



500 :名無しさん@ピンキー:2006/11/07(火) 02:08:04 ID:ibjBvTkS

「……今何てった?」
「だから……夜這いに……」

夜這い? そりゃ、やばい。……シャレじゃなくてだな。
混濁してた意識が途端に澄み切った青空みたくクリアになったぞ、オイ。
てか智香にそんな度胸があったのが驚きなんだが。何このエロゲみたいなシチュ。

「だって亮、昼間アタシが寝てても襲ってくれなかったし……」
「いや、アレは……」
「潤香に『なら夜中に襲えばいい』って言われて……」
「(アイツは……)」

意識に次いで目も薄暗さに慣れてきた。
シャワー浴びる前にも智香の寝間着姿は見てるはずなんだが
胸元のボタンが何個か外されて胸の谷間が露になってて、目のやり場に困る。
普段から図書館に閉じこもってると豪語してるだけあって、お台場の時もそうだったけど
智香の肌はどちらかと言うと白い。それとも北陸に住んでる人間だからだろうか。

「は、はしたない……かなぁ?」
「ど、どうだろ……分かんねぇけど」
「それとも夜這いじゃなくて、夜伽の方が合ってる?」
「俺に聞かれても困るんだが」

そりゃメイドの仕事だろ、多分。
とにかく……だ。状況を打破しなきゃいけないと思うんだが。
あまりに非現実的すぎて俺の思考もちょっと回転率が悪ぃ……何か良い案はねぇもんかな……。。

「誰にでもこんなことするワケじゃ、ないからな……」
「俺だから……とか?」
「……うん」

揺光の時は強気なクセに、智香の時は恥らったりしてて可愛いなコイツ。
やけにシャワー浴びるのが長かったのもこのためかよ。
まだシャンプーとかボディソープの匂いも消えちゃいない、すぐ近くだから否応なしに香ってくる。
それでいて緊張してるのか、少しだけ震えてる感もある。そーいや年下だった……忘れてた。

「亮は……アタシと、したい?」
「……したい」

即答しちまったワケだが。これは……断るの無理。
つか夜這いに来てくれるくらいコイツ、俺のコト好きだったのか。
何かもうやばいくらいに下半身に血液集まってて、どうにかなりそうなんだが。

「ホント……?」
「ホント」
「……下手だったら、ごめんね」

智香の顔がゆっくり近づいてくる。シャツ越しに感じる智香の体温は俺よりも高い。
最初は手の感触を感じて、次に胸の感触。
昼間に比べて服の生地が薄いのか、より生々しくその軟らかさが伝わってくる。
付け加えるなら、コイツ下着つけてねぇっぽい。
少し焦らすように唇を俺の唇の前まで持ってくると、目を閉じるのと同時にキス開始。
お台場で散々したせいもあって、俺も智香も互いの舌を絡ませるのに何の躊躇も無かった。



501 :名無しさん@ピンキー:2006/11/07(火) 02:08:56 ID:ibjBvTkS

「んっ、んぅ……ぁ……ん……!」

時折、智香の喉が鳴る。
俺の舌から流れた唾液を飲んでる音だ。
智香が俺の背中に手を回して抱きしめている様に、俺も智香の腰に手ェ回して抱きしめてやる。
腰の辺りに触ると、くすぐったそうに身体をよじるのが面白い。
腰周りの肉をちょっと掴むと

「ちょっ!? ど、どこ触ってるのさ~!」

って驚いてキスを中断するくらいに。
何か言いたげにジッと睨まれるものの、すぐにまたキス再開。
繰り返すうち、徐々に唇からどんどん下の方へと智香のキスは移動していく。
頬とか顎に何回かされた後、首にそれは集中し始めた。
何度か首筋にキスをされて、今度は智香の指が喉仏の辺りをゆっくりと撫でてくる。
すげぇゾクゾクして、しばらく言葉を発するのを俺は忘れていた。

「……イコロで初めて会った時、さ」
「ん?」
「首絞めちゃって……ごめんね」
「あー……そんなこともあったっけな」

大火のオッサンに連れられて初めてイコロの@ホームに行った日。
俺と揺光が初めて出会った日でもあるんだが、ハッキリ言ってお互いの第一印象は最悪だった。

『ライバルゥ~? コイツがぁ~? ……弱そうだよ?』

なんて暴言も吐かれた挙句、ギリギリと首まで絞められたワケだが。
あの時の俺はジョブエクステンドもしてなかったし、レベルも20ちょっと……そりゃ揺光から見りゃ弱いわな。

「もう気にしてねーって」
「でもさ……」
「済まないって思ってんなら……アレだ……もっと、して欲しい、つぅか……」
「……うん。したげる」

首絞めのことを思い出してややトーンダウンしていた智香の声に活気が戻る。
さっき以上に身体を密着させて、俺の首周りを執拗に舐めたりキスしたりを繰り返して……結構、順々だな。
最初は舌で触れる程度だったのに、どんどんそれが強くなってくる。
次第に舌どころが唇で俺の首を吸うようになってきて、智香の口からチュッチュッって音が毀れた。
吸われる度にますますゾクソクしてきて、智香を押し倒しそうになるのを必死で我慢。
顔は見えねぇけど、どんな顔しながら吸ってるのか……すげぇ興味あるんだが。

「智香……顔、見たい」
「えっ……」

吸い付く智香を一旦離して、薄暗い電灯に照らして顔を見る。
思った通り、口の周りは涎に塗れていた。……ついでに俺の首の周りも。
それだけ一生懸命に吸ってたってことだろーけど……何だ、エロいな、コイツも。

「痕になっちゃう、かも」
「?」
「首の周りの……吸っちゃったところ」

朝、鏡を見るのが怖ぇ……しばらくは首の周り隠せる服着るしかねーな。

「ね。次はさ……亮から……アタシにして?」

……何ですと?

636 :名無しさん@ピンキー:2006/11/12(日) 00:00:13 ID:ZB/OBSJ6

「して、って言われてもな」
「だから、亮のやりたいように……やればいいから。あ、あんまり乱暴なのはダメだけどさ……」

乱暴って……レイプ魔か俺は。
どうする? とりあえず俺も上半身剥かれてるし、智香も剥くか?
でもあんま最初からやりすぎると印象悪くするかもだしな……。
じっくり行くか。

「んじゃ……胸から」
「……亮、お台場でも見てたよね?」
「オトコノコ、胸大好き。これ世界のジョーシキ。覚えとけ」

何か文句が言いたそうな智香をスルーして、俺は智香の寝間着のボタンに手をかける。
最初から上2つが外れてたから胸の谷間は見えてたんだが、全部外すとコレがすげぇエロいの。
そりゃ巨乳を売りにしてるグラビアアイドルとかにゃ負けるだろうけど……とにかくエロい。
てか、こいつ下着は? 
風呂上り、胸のポッチリが鮮明に見えてたのは気のせいじゃなかったってことか。

「……」
「……」
「……」
「な、何か喋ってよ」

いや、喋れと言われても。

「カールの言った通り、おっきいな……結構。着痩せするタイプか?」
「体育の着替えの時に……友達からも言われる」
「アレか? カールの奴も触ったりしてんのか?」
「た、たまに『何だコレは、けしからん。あたしに少しよこせ』って……」

……セクハラ親父みたいなことやってんだな、カールの奴は。

「触っても……いいんだよな」
「う、うん」

どう触ればいいものか。
いきなり鷲掴みにするのって、何かがっつくみたいでアレだ。
やべ、俺も触るの初めてだからどーすりゃいいか分かんねぇ。
あんま力入れすぎると智香が痛がるかもしれねぇし……そっと触りゃいいのか?

「あ……ぅ……!」
「(軟いんだな)」

布団の上に座るのは正直、あんま薦められねぇ。
俺と智香、2人ぶんの体重がかかるからだ。ぺしゃんこにならねぇことを祈ろう。
つか、もうそれどころじゃない。智香の胸触るので頭いっぱい手いっぱいなワケだが。

「やっぱ何か感じるのか?」
「くすぐったくて……すごい、ゾクゾクする……」
「じゃあ、吸ったらどーなるんだろうな」
「吸ったらって……亮、す、吸いたいの?」
「……すげー吸いたい」

触るだけじゃ芸がねぇし……。
やっぱ吸いたくなるのが本能だろう。
子供が出来た時の予行演習みたいなもんだろ、割り切ってほしいもんだ。



637 :名無しさん@ピンキー:2006/11/12(日) 00:00:57 ID:RWs4VMxb

「こんなに硬くなってんじゃん」
「だって、それは亮がいっぱい触るから……」
「触られるだけじゃ、智香だってつまんないだろ?」
「し、知らない!」

部屋が明かるけりゃ、顔真っ赤にした智香が見れたかもしれない。
もうどっちの胸も俺が触りまくったせいで、先端がツンと立ってるのが分かるくらいに硬くなってる。
本人が肯定とも否定とも取れる対応してるんで、とりあえず肯定ととって作業開始。
先端を口の中に入れて歯で少し甘噛みしてやると、智香の身体がブルッと震えるのが分かった。

「やっ……りょ……ぅ……!」

味は……何だろ。
妊娠してりゃ母乳が出るんだろうが、智香は当然妊娠なんかしてないから出ない。
それでも何となく、俺の舌が何かの味を感じ取ってる。分かんねぇけど……。
吸いながら舌で突付くと、それだけで智香の身体が強張るのが面白い。
俺は智香の胸に顔を埋めてて、智香は俺の背中に手ェ回してる。
だから俺がちょっと舌で遊ぶと、俺の肩に置かれた智香の手が震えて俺にも伝わってくんのな

「もうぅ……すっごい、恥ずかしぃ……」

俺がわざとらしく音を立てて吸うのが智香は気になるらしい。
少し上を向いてみると、智香の目尻に涙が溜まってるのが見えた。
恥ずかしいから泣きたいのか? 何か、心の中で色んな葛藤してそうだな。

「智香」
「な、なに……んっ……!?」

油断したのか、智香はすぐに引っ掛かる。
胸から一旦口を離して、反応した智香の唇に不意打ちでキス。
両手で身体押さえて、そのまま口の中に唾液全部を流し込んでやった。
嫌がられるか? とも思ったんだが、意外と智香は抵抗せずに受け入れてくれたっぽい。

「自分の胸の味、したか?」
「……うん」
「嫌じゃなかった?」
「……アタシね、変」
「変? 何が変なんだ?」
「もっと、亮に……エッチなコト、して欲しいって……思ってる……」

もっと……ねぇ。

「こ、こっちに来るまではね、キスで十分だったんだ……。
 でも実際会っちゃうと、やっぱ押さえらんないって……どうにかなりそう!」
「……」
「アタシってエッチな子、なのかな……」
「性欲が無い奴なんていないだろ? お前の周りの友達とかどーよ」
「そりゃ……彼氏とヤってる子、いっぱいいるけど……」
「だろ? カマトトぶっても、そんなもんだ」

こういう時はビシッと現実を分からせた方がいい。
何も智香だけってワケじゃなし。今時の高校生とか皆そんなもんじゃねーのか?

「智香の場合、揺光の時のロールが尾を引いてるのかもしれねーし」
「そ、そうかな……?」
「現実で揺光でいる必要はないだろ? 俺の前では……智香でいて欲しい、つぅか……」



638 :名無しさん@ピンキー:2006/11/12(日) 00:01:40 ID:ZB/OBSJ6

「……エッチなアタシでもいい?」
「むしろ大歓迎なんだが」

これ何てエロゲ?って自分で突っ込みたい気分だ。
まさか俺も泊めることはあっても、会って初日から
いきなりこんなことになるとか思ってなかったし……嬉しい誤算ってやつか?
こんなことってあんだな、マジで……。

「じゃあさ……もっとエッチなこと、しようよ」
「えーっと、それはつまり、だ……」

さっきから智香がちらちらと俺の下半身を凝視してるんで、言わなくても分かる。
俺が智香の胸を吸ってる時だって、智香の腹の辺りに俺のが当たってただろう。
だってよ、生理現象だし。こんなシチュで立たない方がおかしいだろ。
ダチにAV見せられた時だってこんなにならなかったぞ、俺だってビックリだっての。

「お、お腹にね、当たってた時から……すごい熱かったから……」
「……」
「亮もアタシみたく、なってるんだって思うとね……嬉しいんだ」
「……好意的に考えてくれたことには感謝しておく」

悪ぃ、俺なんか勘違いしてたわ。
北海道って閉鎖的なとこっぽいから、娯楽はギャンブルかセックスくらいしかねーんじゃないの?
みたいなコト考えてたワケだ、智香が来るまで。でも考えを改めなきゃダメだな。
つーか智香みたいなのは今時珍しいんじゃないだろうか。

「亮も、アタシにエッチなこと……したい?」
「……したい」
「アタシも……されたい、って考えてた」
「……相思相愛?」
「うん。そーしそーあい、だね」

やっと智香が笑った。
ずっと恥ずかしがってたり、胸吸われてたりして全然笑わなかっただけに今の笑顔は貴重だ。
普段は済ましてる女が本心から笑うと可愛い、ってよく言うだろ。あれマジだな、信じてなかったのに。
てかこれって智香がエロいんじゃなくて、俺がエロいんじゃなかろうか。
自分じゃ気づかないことを誰かに指摘されることって結構あるしな……。

「コンドームとか……持ってる?」
「……持ってねぇ」
「し、仕方ないなぁ。今日は、特別に……生でいいよ」
「いいのか?」
「じゅ、潤香に……ピル、貰ってるから」

避妊薬? あの女……何処まで手が込んでんだ?
てかソレって、俺と智香がヤるってコトを見越してたからだろ?
何か、カールに良い様にされてる気がしなくもねぇぞ……。

「えと、ね。挿れる前にしてみたいコト、あるんだけど……」
「?」
「亮のコレ……舐めてもいい?」
「……どれを?」
「挿れる前に1回抜いておけば、ハセヲもきっと気持ち良い、って潤香が……」
「(……つくづく恐ろしい女だな)」



639 :名無しさん@ピンキー:2006/11/12(日) 00:02:15 ID:RWs4VMxb

********************



「オトコノコのって……こんなになるんだ……」
「部屋が暗くて良かったな……明るきゃ、グロくて目ェ背けたくなってるぞ」
「さ、先から何か出てる……これが我慢汁、ってやつ……?」
「……せめてカウパーって言ってくれ」

布団に寝転んだ智香が、珍しそうにしながら俺のを触ってる。
俺としちゃそれよりも布団に押しつぶされた智香の胸に目が行ってたんだが、
智香はそんなことお構いなしに俺のを色んな角度で観察してみたいらしい。
時々、血管の部分に触れてみたり、亀頭から出てるカウパーを指で摺り合せたり……そんなに面白いか?

「何でこんなにおっきくなるの?」
「知らねぇけど……海綿体が充血して膨らむとか、何とか」
「ふぅん」

やばい、また硬くなりそうな気がする。
智香の奴、すげぇ興味深そうに見てるし……。

「ん……じゃ、は、始めるね?」
「わ、分かった……」

舐めるってのはアレだ、つまりフェラだ。
勿論、俺はされたことなんかない。智香もこれが初めてだって言ってる。
大丈夫か? 口内炎とかになったりしねぇのかな……やったことないからどうにも分かんねぇぞ……。

「はむ……んっ……」
「(くっ……!)」

俺が見てられなくなった。
智香が俺の咥えて、舌で舐めてるとかエロすぎ。
たまに舌使いが上手いだの下手だの言う奴いるけど、そーいうのって関係なくね?
ある意味で俺にとっちゃ一番重要で敏感な場所だけに、舐められただけで頭おかしくなりそうだって。

「んっ……ん……ね……舐めてる間……撫でて」
「あ、頭か?」
「うん…………んっ……」

言われるままに智香の頭を撫でてやる。
風呂上りからまだ時間が経ってないせいか、髪は柔らかかった。
智香は俺が頭を撫でてやってる間も、盛んに俺のを舐め続けてる……が。
そのうち、俺がどうすれば悦ぶのか骨が掴めてきたらしく、舌の動きとか手の動きが変わってきたっぽい。
早く射精させたいのか段々動きが緩やかな感じから、急な動きに変わって……うわ。

「こうやって、上下に擦れば……射精、するんだよね……?」
「そうだけど……」
「亮、すっごい気持ち良さそうな顔してる……やっぱ射精の時って、気持ちいいんだ?」
「そ、だな……」

……あんま余裕なくなってきた。
智香が舐めまくったせいで、唾液だか俺のカウパーだか区別が付きやしねぇ。
出すなら何処だ? 布団を汚すと後が面倒だ、かと言ってティッシュに出すのも興が削げる。
……智香にぶっかけるか? マテマテ、そりゃダメだろ。エロゲとかならアリだろうけど、これ現実だし。
じゃあどうする? 飲んでもらうか? 初フェラで飲ますのって、何か気がすげぇ罪悪感あるんだけど……。



640 :名無しさん@ピンキー:2006/11/12(日) 00:02:48 ID:ZB/OBSJ6

「智香、あ、あのな……」
「んむ……なぁに?」
「そろそろ……だな……」
「出したいの?」

こうやって問答してる間も智香は俺のを擦るのを止めない。
おかげでギンギンに漲って、今にも暴発しそうなくらいだっての。
自分の手で触るのと、他人の手に触られるのってこんなに違うんだな、なんて今更ながら思い知った。
何より、智香の動作が何から何までエロいのが問題だ。

「アタシに、かけたい……?」
「っ……かけたい」
「……どーせなら、さ。飲んであげよっか?」

マジで? いいの?

「潤香がね、『精液は滋養強壮に良い』って……亮のなら、飲んでもいいかな、って……」
「(なに嘘っぱち教えてんだ、あの女は……!)」

でも今夜だけは感謝したい気分だぜ……。

「亮、いっぱい我慢したもんね……気持ちよくなりたい?」
「あ、あぁ……!」

智香は嬉しそうに笑いながら、また俺のを口の中に入れる。
その前に見せた笑顔がゾッとするくらいに可愛くて、思わず背筋に寒気が来た。
つーか、さっきまで喘いでたのは智香なのに、今は俺が喘がされてるってどうよ。
……この際、どーでもいいか。

「く……あ……ぁ……ッ!」
「んっ……!? ん……あむ……んぅ……!」

普段なら射精する時に声なんて出さねぇ。けど、今のは思わず声が出るくらいに気持ちよかった。
俺のが脈打つ度に智香がゴクゴク喉鳴らしてる姿が、滅茶苦茶にエロい。
普通なら苦くて吐き出すか、喉に勢いよく当たったせいで咽るってのに……よく飲めるな、智香。
初めてのフェラにしちゃ上出来だって、絶対。

「はぁ……はっ……ち、智香?」
「ん……ん……ふはぁ……ケホッ、ケホッ……亮、出しすぎ……」

やっと智香が顔を上げる。やっぱり飲み込むのに躊躇したのか、全部飲むのに時間がかかったぽい。
飲み切れなかった精液が唇の端から漏れて、それを手の甲で拭って、もう一度舐めるその仕草。
それ見ると、精液ってどんな味なんだ?とか聞く気にもなれねぇ。
しかもその仕草がエロくて、今出したばっかなのにまた硬くなりそうな気がした。

「ケホッ……まだちょっと、まだ喉の辺り……ネバネバしてる……」
「……飲みたくなかったら、他のとこに出しても良かったんだぞ」
「アタシの身体に……ぶっかけてみたかった、とか?」
「それも一応は考えた」
「……亮の節操なし」

節操なしと来たか。身体にぶっかけたら、拭くの面倒だもんな。
そのままシャワー浴びるって手もあるだろうけど。

「でも、亮がイク時の顔見れたから……許したげる」
「……そりゃどーも」



717 :名無しさん@ピンキー:2006/11/15(水) 03:07:51 ID:qw9q1r6b

「なぁ。窓、開けた方が良くね?」
「え、開けるの……?」

だって開けなきゃ暑いし。
夜でも30度近い暑さなんだぞ、しかも今居る客間にゃエアコンがねぇんだから。
今まで夢中になって気が付かなかったけど、俺も智香もそれなりに汗を垂れ流してる。
こりゃまた風呂入らなきゃな……。

「何か都合悪いのか」
「ないけど……は、恥ずかしいよ」
「?」
「こ、声……外に、聞こえちゃったらさ……」

……そういうもんか?

「だったら声出さなきゃいいだろ」
「か、簡単に言っちゃって!」
「……簡単だろ?」
「絶対無理。声、出ちゃうよ。さ、さっきだって結構我慢してたのに……!」

おいおい。
AV女優じゃあるまいし無理して声出さなくてもいいんだぞ。
どうしても声出るなら心の中で呟くとかあるだろうが。

「亮だって……出す時、声おっきかったじゃん……」
「ありゃ不可抗力だって」
「ふ、不可抗力って……」
「……智香が、可愛いのが悪ぃんだよ」
「なっ……!」

いや、ホントだって。
言い訳に聞こえるかもしれねーけど、さっきイったのは
俺が早漏とかそーいうのじゃなくて……何つーか、智香が可愛くて、
見てたら自然と膨張してたつぅか……とにかくそーいうコトなんだよ。

「アタシ、可愛いかな……」
「……おぅ」

俺はひねくれてっけど、嘘は言わねーよ。
お前は可愛い、それも滅茶苦茶。意外と積極的なとことかも含めて全部。
……会ってまだ初日だってのに、こんなコト言う俺も随分とキテるとは思うが。

「……」
「どした?」
「ん……今までね、色んなオトコノコからそう言われたことあるからさ。
 先輩とか後輩の子とか……でもね、亮から言って貰った今のが……一番、効いたかな……」

……やばい。
俺も今の智香の言葉が効いたっぽい……なんか、また膨張してきた……。
普段なら1回抜いときゃ静かになるはずなのに……本番効果ってやつか?

「りょ、亮? またおっきく……なってるんだけど……」
「……」
「さっき出したばっかなのに……げ、元気なんだね……?」



718 :名無しさん@ピンキー:2006/11/15(水) 03:08:44 ID:qw9q1r6b

「も、もっかいしたいなら、いいよ。アタシもまだ……大丈夫だから」
「(そーいや、まだ俺しかイってなかったもんな……)」

不覚にも智香より先にフェラでイカされちまったしな。
アレだ、智香的にもやっぱ……なのか? こーいう場合、最後までヤるべきなんだろうか?
ムード的にはそういう感じっぽいけど……大丈夫なんだろうか。

「……いいのか?」
「うん……ハセヲに胸、吸われてたあたりから――――」

そう言って智香は俺の手を取った。最初は胸に触れさせて、次に腹、更に下腹部……。
暗くてよく見ぇねぇけど、確かに指先に智香の茂みのジャリって感触を感じる。
……ついでに何かネチャネチャしたもんの感触も。

「アタシも、我慢できなくなってたし……?」
「そ、そっか」

何か今俺すげー安心したのな。
こんなコトこの歳になるまでやったことないから、正直ちょい心配してたし。
智香のココがこんなになってるってことは……そういうことでいいんだよな?
感じなきゃ、こんなのが出るわきゃねぇんだし……。

「んじゃ、えと……いいんだな」

本人がいいって言ってんなら大丈夫だろ、多分。
や、俺も初めてだからコンディションとかよく分かんねーけど。

「枕に頭、置け」
「こう……?」

改めて見ると智香の身体のラインはホントに綺麗だ。
出るとこは出てて、へっこむとこはへっこんでる感じでバランスが良いっつぅか。
ネットじゃ強気なクセに実際は結構女の子してるってことも可愛い。
ほぼ冗談のつもりで送ったフラワーギフトでここまで関係が発展するとか、
あの時は全然考えてなかったからな……世の中、何がどうなるか分かんねぇ。

「ね、亮」
「ん」
「挿れる前にさ……もっかいキスしよ」
「……」

一瞬、迷った。
智香はさっきまで俺のを舐めたり咥えてたりしてたワケで
(別に俺のが汚いとかそういうの考えると、自己嫌悪になるからあえて考えたくないが)。
まぁでも……どうでも良かったんだ、んなコトは。

「んっ……」
「ぅ……あむ……はっ……!」

この際だからもっと刺激的にキスしてやった。
舌入れて、空いた手で胸掴んで、口を離した後も首の周りにいっぱいキスしてやる。
明日起きたら俺と同じ様に鏡見て、顔真っ赤にしやがれ。

「っは、はっ、はっ……亮、なんかキスの仕方、段々エッチになってるよ……!」
「智香がエロいから俺もエロくなってんの。分かれ」



719 :名無しさん@ピンキー:2006/11/15(水) 03:09:41 ID:qw9q1r6b

「これだけ濡れてりゃ大丈夫だよな……」

脚を開かせてもう一度確認してみる。
腿を掴んだ時、智香の身体がブルッと震えたのが俺の腕にも伝わった。
智香の脚、細いっちゃ細いが腿とか尻は肉付きがいいんだよな……。
どっかで聞いた話なんだが、どこぞの人食い人種は人間を食う時には
尻の肉と腿の肉を優先的に食うんだそうだ……軟そうだもんな。

「智香」
「いいよ……来ても……」

念のために智香が暴れないよう、片一方の手を布団に押さえつけてある。
もう片っぽも挿れ終わったら押さえる予定。
拒否されるかもとは思いはしたけど、智香は文句も言わずに俺に従ってる。
……俺、別にこういう趣味はねぇんだけどな。
シャロン・ストーンの「氷の微笑」って映画知ってるか?
女流小説家と刑事のベッドシーンで、女が刑事をベッドにスカーフで縛り付けるシーンがあんだ。
今、何となくそれ思い出した。相手を押さえつけるのって、征服欲みたいな感じで興奮すんだな……知らなかった。

「くぁ……」
「あっ……痛っ……! すご……熱……!」

部屋の窓は結局締め切ったまんまだ。
俺も智香も汗だくになりながらこんなコトやってる。
俺の顎の辺りから滴った汗が、智香の腹に落ちて雫になってゆっくり引力に引かれて落ちてゆく。
智香はしきりに「痛い」とか「熱い」みたいな聞き取れるかどうかも分からない小さな声で叫ぶ。
進もうとする毎に肉壁みたいなのが邪魔すんだけど、それが堪らなく気持ち良い。
これってアレか。締まりがいい、とかそういうことなのか?

「やべ……すげぇ、イイ……」
「はぁ……んっ……あっ、ぁ……!」

智香の中も十分に熱かった。
でも俺はともかく智香本人はそうでもないらしい。
暴れるって程でもないんだが、それでも痛さで我を忘れてる……そんな感じ。
目から涙さえ流してた……やっぱ相当痛いのか。

「智香、痛いのか?」
「ぁ……ふ……んぅ……痛ぃ……!」
「……抜くか?」
「だ、大丈夫……もうちょっと待って……そしたら……落ち着くから……」

うっすらと智香の額には脂汗が浮かんでいる。
やや引きつった笑いを見せながら智香は大丈夫と俺に言った。
……ホントに大丈夫なんだな?
ここまで来たら俺も……最後までやっちまうんだからな。

「アタシも……根性見せなきゃ……ね?」
「……分かった」

とりあえず、押さえてた手は離してみる。
どうせなら俺だって、コイツの自由にさせてやりたい。

「背中に手、廻したい……」
「ん……これで廻せるか?」
「アリガト……ちょっとずつ、落ち着いてきたかな……」



720 :名無しさん@ピンキー:2006/11/15(水) 03:10:41 ID:qw9q1r6b

「今さ」
「あん?」
「こうやって……今のアタシ達みたいに……エッチしてる人、何人くらい……いるんだろうね」
「さーな。日本だけでも相当な数なんじゃないか」

しかも今は夏休みだし。

「愛があるからセックスする?」
「する奴もいるだろうし、しない奴もいるだろ」
「亮は……どっち?」
「……愛は注いでる、つもり……だけど」

自分でもちょい意味不明だな。
俺の場合は……親の愛情ってのがよく分かんねぇ。
両親は俺よりも仕事の方が大事なんじゃねぇのか、って気もしてたしな、小さい頃は。
俺もある意味、愛に飢えてるとか? キャラじゃねぇよ、ソレ。
俺ってそんなに女々しい奴だったか? 違うだろ、何か違ーよ。

「じゃあ……アタシが痛いのも、亮の愛?」
「お、おぅ(多分……)」
「ん……なら……もうちょっと、我慢してみよっかな……」

心なしか智香の身体の強張りが緩くなった様だった。
試しにゆっくり前後に俺のを引いてみるとさっきまで程、智香は痛がる素振りを見せない。
俺達の繋がった部分がぶつかる度に智香が出した愛液が反動で飛び散って行く。
糸を引く時もあるし、そのまま俺や智香の腹に飛んでくる時もあった。
これだけしても、もう智香から搾り出す様な呻き声は聞こえて来ない。
少し時間はかかったぽいが、何とか慣れてくれたみたいだな……良かった。

「ち、智香……平気か」
「うん……まだちょっとお腹、痛いけど……へーき」
「……初めてだったのか?」
「う、うん……」

突き上げた時、俺の先端が何かをこじ開ける様な……そんな感覚があった。
これだけ可愛けりゃ中学くらいから誰かと付き合っててもおかしくないだろうに。

「なかなかね、いないんだ」
「何が?」
「アタシの理想に叶うオトコ」

そりゃお前の理想って“強い男”だろ?
てか智香の場合、男も女も骨太であるべきつぅ精神からして時代錯誤な気がするぞ。
今のネット社会じゃそんな連中、居るかどうかも怪しい。

「……俺は理想に叶ったってことか」
「でなきゃ、こんな恥ずかしいこと……させてあげないよ」

背中に廻された智香の手に力がギュッと篭る。
何か……そんなに信頼されてたのか、俺。自分でも驚きなんだが。

「それにね」
「?」
「亮が……ハセヲの声がね、聞こえたから……アタシは今、ここに居る」
「……?」
「聞こえたよ、ハセヲの声。だからアタシも『あぁ、還らなきゃなぁ……』って……」



721 :名無しさん@ピンキー:2006/11/15(水) 03:11:25 ID:qw9q1r6b

……そうだった。
未帰還者になった志乃や揺光を取り戻すために、俺は……俺達は……。
死に物狂いで、真実を追いかけ続けたあの日々が……もう遠い昔の残照の様に感じる。
まだ1年しか経ってねぇってのに……。

「届かない声なんて、きっとない」
「それ……」
「誰かさんの受け売り」
「……仲間失くすのは、もう嫌だっただけだって」

ただ、志乃を失った時と違うのは―――――俺を支えてくれた人達の心が視えたこと。
がむしゃらに突っ走るだけじゃダメだってことを、大勢の人が俺に教えてくれた。
……コイツも含めて。

「アタシ、亮のこと大事にしたいし、されたい」
「俺も……そう思ってる」
「なら、さ……最後まで、しよ?」
「……あぁ」

布団に何が飛び散ろうが、染み付こうが、もう関係なかった。
客間の中に俺と智香の押し殺した様な、呻きだか喘ぎだかも分かんねぇ声が響く。
智香の膣内で擦れる感覚は堪らなく俺の高揚感を煽り、射精を促すには十分過ぎた。
一度挿れてからかなり経つのに、俺はまだ射精せずに踏みとどまっている。
ずっとこの感覚に浸ってたい、そう思わせるくらい、智香の中が気持ちよすぎるから。

「ぅく……!」
「りょ……ん……また、イキそ……っ?」
「あ……ぁ……!」
「い、よ……っ、アタシも……は、ぁ……イ……そ……!」

つーか、もう真っ白なのな。
何も考えられないって、こういうことなんだとしみじみ思う。
とにかく出したい、出したい、智香の中で出したい、思い切りブチ撒けたい、って本能だけで動いてる感じ。
智香もそれは同じっぽくて、最初は俺しか腰動かしてなかったのに今は一緒に動いてんの。
どんどん速くなって、熱病にかかったみたいにどっちの身体も熱い。

「智香っ、智香……ぁ……!」
「さ、さっきより、深っ……りょ、すご……!」
「く……ぁ……っ、あぁっ!!!」
「! あっ、あっ、あぁ、っあぁああぁっぁあああぁ!!!」

ついに決壊した。
どっちも口から出るのは「あーあー」って言葉だけ、ホントそれ以外出ねぇの。
俺が射精して智香の膣内に出す度に、智香も身体震わせて身悶えてるし。
つか、これ気持ちよすぎ。こんな気分のいい射精マジ初めてだっての……すげぇ疲れたけど。

「亮……す、すご……さっきも出したのに……またいっぱい……」
「はぁっ……はぁっ……射精して、息切れしたの……これが最初、かもな……」
「アタシも……なんか、飛んじゃうみたいだった……はぁ……でも、すごい良かったな……」
「……そだな」
「布団……汚しちゃったね……今日は、どうしよっか……?」
「……何処にも出掛けたくねぇ、かも」
「えっ……?」
「智香と……もっと、いっぱいしたい」



722 :名無しさん@ピンキー:2006/11/15(水) 03:12:30 ID:qw9q1r6b

********************




夏休みが明けて、2学期が始まったある日の午後。

「ふぅん。まぁ何にせよ、ハセヲとは上手く行ってんだな」
「うん。おかげさまで」
「ま、遠距離でも大丈夫だろ。あたしは応援してるから」
「潤香……」

いつもの倉本智香と仁村潤香の放課後。
こうやって図書館の控え室で紅茶を飲みながらお菓子を食べる日々。
もっとも潤香は3年なので来年にはもういなくなってしまう、こんな光景が続くのも後数ヶ月。

「あんたが東京から買ってきたおみやげも、もう食べつくしちゃったなぁ」
「食べすぎだっての……」

さっき食べたもんじゃ煎餅が最後の東京みやげだった。
相変わらず潤香の行儀は悪く、お菓子のカスが付いた指を舐め、しゃぶって油を落とすのを好む。
だが毎日お菓子ばかり食べているにも関わらず、彼女にはニキビやシミの類は相変わらず見られない。
黙っていれば綺麗で知的でクールな仁村先輩は健在である。

「しかしアレだね。あんなに不順異性交遊を否定してた割には、まさか初日から……」
「う、うるさい! 仕方ないじゃん!」
「ピル渡しといて良かっただろ?」
「……そ、それは……まぁ……うん」

潤香の先見の明はさすがだった。
ハセヲと智香をくっ付けるため、あれやこれやと裏で色々とした甲斐があると言うもの。
やや遠回りになったものの、まさに計画通り。

「それは置いといて、だ。智香、こっち来なよ」
「え、な、何で?」
「いいから」
「? んっ……んーっ!?」
「ん……ちゅ……はむ……」

何が起きたのか?
あっという間に智香は潤香に羽交い絞めにされ、壁に押し付けられたまま唇を奪われてしまっていた。
さすがにこんな展開は予想できなかったのか、智香は目を見開いたまま唖然とするばかり。
それでも潤香のキスは止まることなく智香の唇を吸い続けて……数十秒後にやっと開放されるのだった。

「はぁっ、はぁ……なななな何すんのさっ!?」
「んー。間接キス」
「どっ、どーいうことかって聞いてるんだけど!」
「あんた、ハセヲといっぱいキスしたんでしょ?
 だったらあんたとキスすれば、あたしもハセヲとキスしたことになるじゃん」
「なっ……!?」

勝ち誇った様な潤香の笑み。
彼女にキスをされたのは、東京に行く前を含めるとこれで2度目。

「言っただろ、智香。あたしの助っ人代は高く付くってね」

そして智香は思う。あぁアタシはやっぱり、この先輩には敵いそうにないなぁと……。



723 :名無しさん@ピンキー:2006/11/15(水) 03:13:35 ID:qw9q1r6b

後日談―――――――――――。


『さあ! いよいよ竜賢宮タイトルマッチも、残るは宮皇戦のみとなりました!
 宮皇戦のゲスト解説にはギルド【プロジェクトG・U】の長、ぴろし3にお越しいただいております!』
『うむ! 諸君、私がぴろし3だ!』
『さて、ぴろし3。宮皇のハセヲチームですが、
 試合中に謎の怪光線を発したり変身したりと何かと話題ですよね。しかし一般プレイヤーより
「チートではないのか?」と指摘が寄せられています! それらについてどうお考えになりますか!?』
『トリック、全てトリックである! 一般プレイヤーの目は欺けても、この私の目は誤魔化せないのである!』

「チッ……馬鹿の世界宮皇め」
「ほっとけ、天狼。どうせ一般PCには理解できっこねーんだ……だろ、太白」
「然り。我々は我々の戦いを身を投じる、それだけのこと」

竜賢宮タイトルマッチ戦、メンバーは俺、天狼、太白の3人だ。
正直、イコロに所属するのは宮皇の肩書きとかが面倒で嫌だったんだが……
智香に説得されてしょうがなく所属してる(ただし、ギルマスは俺じゃねぇけど)。

『で、では気を取り直しまして……激戦を勝ち抜き、宮皇に挑戦するのは揺光チーム! 
 双剣士の揺光選手、鎌闘士のカール選手、撃剣士の三郎選手! いずれも劣らぬ美少女揃い! 
 リーダーの揺光選手、サブリーダーのカール選手はそれぞれ紅魔宮・碧星宮の元宮皇でもあります!』

「天狼と太白はあたしが引き付ける。思い切りハセヲと戦いな、揺光」
「酷っ。カールゥ、私達でしょ」
「ネカマは黙ってろ」
「何だかんだでアンタ達って仲良いよね……」

俺達の対戦相手は揺光達だ。
よくよく考えると紅魔宮で戦って以来、揺光と戦ったことなかったんだよな。
しかもあの時は憑神が発動したせいで、実力で勝ったとは言えねぇ戦いだったし……。

「ハセヲ、手加減したら承知しないぞ」
「すると後が怖いからなw」

離れていても《The World》でならいつでも会える。
俺は別に遠距離恋愛でも良いって言ったんだが、智香の奴はどうしても東京の大学に行きたいらしい。
来年の受験に備えてカールから勉強見てもらったりしてるそうだ。

「ハセヲと揺光の戦いの邪魔はさせない。あんたの相手は、あたし」
「碧星宮・元宮皇のカール……相手にとって不足は無い」
「あたしは強いよ、電柱狼」

「やっほ、太白。私のこと覚えてる?」
「何処かでお会いしたことが会ったかね、お嬢さん」
「ほら。痛みの森のイベントであんたに“寄生”呼ばわりされた美少女ー!」
「……こいつは失礼した。では君が、私のウォーミングアップを手伝ってくれるのかな?」

『それでは竜賢宮タイトルマッチ宮皇戦、試合開始ィ――――――――――――――――ッ!!!!!』

将来どうなるかなんて分かんねぇ。
でも、俺はやっぱ智香と一緒に遊んでる時が一番楽しい。
何つーか、上手く言えねーけど……楽しいんだ、ホントに。
だから俺も智香の気持ちに応えてやらなくちゃいけねぇと思う。
どんなカタチであれ、それが“好き”ってことだろ、なぁ?

今はまだ、旅の途中。                             【 揺光ルート:True End カールルート:Bad End 】
最終更新:2007年11月25日 10:12