リプレイから検証するナイソーリのギミック制御
概要
モンスターによるスキルの使用は特定のルールによってコントロールされている。代表的なものは、モンスターのAI状態(待機、追尾、攻撃など)、スキルのクールダウンタイム、スキルの使用確率である。ボスモンスターの場合は、残存ヒットポイント割合を参照し、その減少に応じて段階的にスキル使用が解禁される、といった事例も珍しくない。
しかし、グレートモンスターについては、その制御はやや複雑である。それらはアグロというマスクパラメータを有しており、またレイジという状態変化を行う。グレートモンスターのスキル頻度やダメージ強度が、これらのステータスを参照している可能性が公式に示唆されている。しかしその詳細は不明である。ここではナイソーリのスキル使用タイムラインから、ギミック使用の規則性と、それに関与する諸要因について検討した。
使用したリプレイファイル
Discord-JP/#プレイ動画に投稿されたリプレイファイルを使用した。2020/10/29~2020/11/02に撮影されたファイルよりランダムに抽出し、うちエラーを起こすことなく再生可能であったファイル7個を用いた。いずれのもパーティーのコアメンバーは共通である。討伐所要時間は10~15minで、リプレイ間に大きな差はない。
(ファイル名冒頭数字が図中リプレイファイル番号、ファイル名冒頭数字を除外したファイル名がDiscordに投稿されたファイル名)
タイムコースの概観
上記リプレイファイルより読み取ったタイムコースを下図に示した。縦軸が時間経過を示し、上方向がゼロ秒である。使用されたスキルの種類については、青色でファンタズマルウェーブ、ピンク色でチャーミングアルアー、オレンジ色でセイレーンズソングをマーキングした。これらのスキル列と並行し塗られた赤色は、ナイソーリがレイジ状態にあったことを示している。
レイジモードの規則性
討伐が途中失敗となったリプレイ2とリプレイ11を除くと、いずれのリプレイでも、2回のレイジ(赤色)が記録されている。仮に、1回目のレイジを#1レイジ、2回目を#2レイジとすると、レイジ状態にある秒数は#1レイジ80~90sec、#2レイジ140~170secとなった。2レイジ(正確にはレイジ移行スキルであるロアー)間のインターバルは210~380secであり、リプレイ間で大きくばらついた。
公式の記載によれば、アグロの保有量が一定値を上回ったとき、グレートモンスターはレイジ状態に移行する。レイジ状態の解消後、アグロを生成しない一定秒数を経過したのち、再びアグロ生成し、レイジを再使用する。上記のタイムラインでは#1レイジは180~240sec頃から使用開始されるが、レイジ再使用には210~380secを要する。この差は公式が記載するアグロ非発生期間と、他スキルの使用解禁による与ダメージ速度の低下に起因すると推測できる。一方、与ダメージ速度が高いパーティーでは、#2レイジ状態とならず討伐を完了することが珍しくない。これはアグロ再生成のタイミングで残存するヒットポイントが少ないため、それ以降、生成されうるアグロがレイジ使用に満たないためと推測される。効率的なファーミングを行うためには、これを満たすダメージ速度を達成することが有利となる。
ギミックの周期性
チャーミングアルアー
チャーミングアルアー(上図ピンク色)の再使用までの秒数をカウントし、頻度分布を示した(下図)。57~60secに明瞭な頻度のピークがあり、クールダウンタイムによる制御が明らかになった。これより長いインターバルでの再使用が記録されているが、これにはナソリのテレポートやプレイヤーの死亡による記録の中断に原因するノイズデータが含まれている。一方、チャーミングアルアーはナソリの索敵範囲外や一部の行動阻害状態(要解明)でも使用される。この仕様によりノイズ下でも明瞭なインターバルが記録されたと推測する。
ファンタズマルウェーブ
同様に、頻度分布を示した(下図)。21~27secに分布のピークを認めるが、それより短いインターバルが多数記録された。これはクールダウンタイム以外の要因による制御を示唆する。そこで、際立って短いインターバル(7~12sec)を記録したウェーブを概観図中で黄色にマーキングしたところ、いずれもレイジ状態での記録値であった。ナイソーリがレイジ状態にあるとき、ウェーブの再使用インターバルが短縮する可能性が提示された。
セイレーンズソング
データ数が少なく、周期性を検討するには至らなかった。しかし、セイレーンズソングの使用(プレイヤーへのエフェクト付与と音符設置)からカウントダウン完了(インタラクト失敗プレイヤーへのダメージ発生)までのカウント秒数に変動があることを認めた。すなわち、ほとんどのカウントでは15~16secであるが、10~11secとなるケースが少数例あった。10~11secを記録したセイレーンズソングを概観図中で緑色にマーキングすると、いずれもレイジ状態での記録値であった。しかし、レイジ状態でもカウント15~16secとなる事例も記録されており、レイジ状態は必ずしもカウントダウン秒数を短縮しなかった。
公式によれば、一部のスキル解説について、このスキルはグレートモンスターがレイジ状態にあるとき強化される(This ability becomes stronger )とある。また、レイジ状態にはグレートモンスターそれぞれについて異なる2バージョンがあり、強化の方向性が異なることも記載されている。
以上を踏まえると、ナイソーリが特定のレイジ状態(タクティカルまたはテリトリアルのどちらか一方)にあるとき、ファンタズマルウェーブのクールダウンが減少し、セイレーンズソングの猶予カウントが短縮する可能性がある。アタックスピードやダメージの変化からいずれのレイジ状態にあるのかを把握し、仮説との整合性を検証する必要がある。
ギミックの周期性を把握することは、それへと対処するうえで大きなアドバンテージとなる。また、それに寄与する要因を解明することは、要因の調整を通じてグレートモンスターのギミックをコントロールしうる可能性を秘めている。これらを探り当てるには、実践における直観と、リプレイファイルからのデータ抽出、両方向からのアプローチが必要である。
最終更新:2020年11月08日 14:11