物は無いときほど欲しくなり、いざあると不要になる。
それはほとんどの物に対していえることで、今自分の前に積みあがっている大量の金も例外ではなかった。
子供の頃から裕福に育ち、今では大企業の社長という地位を持っている。
当然、金なんて腐るほどある。仮に燃やしても燃やす勢いより入ってくる量の方が多いだろう。
これだけあると、使うに使えなくなってしまう。
理由は簡単、使いたいと思っていたところにはもう使い尽くしてしまったからである。
別荘は何軒も買い、車も日替わりで乗り換えられるほどある。
ばら撒いてやってもいいくらいだが、それをしたところで世間は自分を善人とは思わない、酔狂と思われるだけだ。
月並みな表現であるが本当に退屈で味気ない日々である。
もう少し若いころは雌を抱いたこともあるが、それはみんなこの金を目当てに近付いてきたものばかり。
金はいくらでもくれてやったが、おもしろくも何ともなかったのだ。
そんなある日思いついたのが、雌を拉致してたっぷりといたぶってやろうという試みだ。
もちろんそれは犯罪であり、やってはいけないことなのだが
犯罪で裁かれるのは一般人だけだ、警察が来たら札束で二、三発ひっぱたいてやればおとなしく帰る。
むしろ逆であった。俺は警察の幹部クラスの人物ともパイプがある、金を出せば適当な雌を捕まえるくらいしてくれるだろう。
思い立ったが吉日とばかりに、俺は癒着のある警官を自宅まで呼び出した。
「これはこれはエンペルト様、いつもお世話になっております・・・
癒着というより、服従と言った方が正しかったか。
普段は罪を憎んで人を憎まずと豪語している世の警察がこのざまである。
言い忘れていたがこいつの言うとおり、俺の種族はエンペルト、代々皇族だった・・・という言い伝えは残っているが、この地位を思えばあながち嘘ではないかもしれない。
「堅苦しい挨拶はいらん、それより頼みがある」
「こ、今回はどのような御名目で・・・?」
「容姿の良い雌を連れてこい、種族や年齢は任せる」
同族の雌はもとより、知っているだいたいの種族の雌は抱いたことがある。
自分から指定するより、思いも寄らない種族の雌が来てくれた方がおもしろい。
そう思って俺はこの警官に任せることにした。
警察犬というのはいるが、ほとんどの警察の職員は俺の犬だ。
つくづく、無い者には金というのは魅力的な物体らしい。
雌も服従させるのは簡単だったが、金と宝石以外で服従させるのは今回が初めてになるだろう。
ここ数年、雌に飽きて御無沙汰だった俺の逸物が久しぶりにいきり立ってくるのを感じていた。
一週間も経たないうちに先日の警官から俺の家に連絡が来、すぐに向かうよう指示すると半時ほどで到着した。
初めての雌の調教を前に興奮を隠しきれなかったが、警官が連れてきた雌をみて興奮はすっと引いてしまった。
「おいおい、俺は警官を連れてこいとは言ってないぞ?」
警官が連れてきたのは同業者、つまり同じ警官である。
警官なんて調教する以前から俺の犬も同然だからおもしろくない、そう言って雌の交換を要求した。
「いえ、実はこいつは署内でエンペルト様へ反逆的な態度を示しておりまして・・・」
「反逆?どういうことだ」
「金で全てを解決するなんて間違っている・・・だとか、ようするに綺麗事を宣っているんですよ」
引いてしまっていた興奮が再び蘇ってきた。
俺の財力や権力は知れ渡っているはずだが、それでも尚俺に刃向かおうとする。
目の前に突き出してみないことにははっきりとは言えないが、こいつは金で靡かない雌の可能性は十分にある。
そしてそういう奴ほど、落としていく楽しみがあるというものだ。
「う~む・・・」
しかし、いざ調教するとなると俺は困ってしまう。
世の調教師と言われる奴らと違い、俺は調教なんて生まれてこの方したことがないし、道具もない。
せいぜい縛っておく為のロープや鎖、ペット用の首輪があるくらいだ。
いわゆる淫具というものや、雌をおかしくする薬なんてこの家には一つもないのだ。
まあ、最初はそこまでしなくても良いだろう、とりあえずは調教以前に、この俺に楯突いた雌にお仕置きが必要だ。
「署に雄はどのくらい居る?」
「特に事件が起きてなければこの時間ですと十・・・二十人くらいでしょうか」
「そいつらを全員呼んでこい、五分以内にな」
「は、はい!行ってきます!」
奴に雄を呼びに行かせているうちに、俺は連れてこられた雌を調べていた。
種族はピジョット、鳥の分際で俺への異を唱えるとは良い度胸だ・・・ん?俺も一応鳥か。
薬か何かが効いているのか体を揺すっても呻くだけで起きる気配がない。
容姿はそこそこと言ったところだが、まあ石を投げれば当たる程度の雌だろう。
こいつは俺の初の調教作品となるわけだし、そこら辺の雌とは何か違いを持たせないといけない。
とはいえその『違い』をどうしようか見当もつかない、決めあぐねている頃、外で車の音がした。
「遅い、三分遅刻だ」
「も、申し訳ありません・・・それにしてもこんなに雄を集めて、どうするんですか?」
「俺はまだあのピジョットをどうしようか決まっていない、その間お前等で輪姦しろ、とりあえずは俺に楯突いたお仕置きだ」
雌を犯せると聞いただけで大半の雄から喝声が上がった、こいつらそんなに嬉しいのか?
適当に犯しておくよう指示して、俺は雌を調教するための道具を買いに行くことにした。
もちろんコンビニやデパートで売っているようなものではないだろうが、そこは自画自賛だが俺の人脈がある。
肉体改造を研究している科学者と、風俗店のマスターの二人をあたるだけで、十分すぎる情報が集まった。
どちらも頭はややいかれ気味だが信頼できることは確かだった、肉体改造もしたことがあるし、風俗店は昔お世話になった。
ここで言うところのソースは俺。というやつである。
それぞれから適当に今あるものを譲ってもらい、家に帰る頃には一時間以上経っていた。
ピジョットはどうなっているだろうか、期待しながら家に入ると玄関からもう精液の臭いがした。
「戻ったぞ・・・随分派手にやったな」
「ええ、でもこいつ、まだ反省していないようですよ」
ピジョットの方に目を向けると、なるほどまだ気迫十分な目でこちらを見ている。
全身精液濡れで首に犬用のリードと首輪がついていなければ、の話だがな。
「あんたが・・・エンペルト・・・!」
「喋る元気があるとは感心だな、案外慣れているのか?」
「黙れ!あんたみたいな悪党・・・私は絶対認めないぞ!」
やれやれ、つくづく強情な雌らしい。
とはいっても所詮は一匹の雌にすぎないわけであり、俺は車の中で思いついたことを早速試すことにした。
ピジョットの胴体めがけて冷凍ビームを撃ってやると、顔を残してほとんどの部分は凍り付いてしまった。
「ひぃ!?つ・・・つめた・・・ぃい・・・」
「そりゃあ冷たいだろう、氷だからな」
やはり予想通りだ。
俺のような種族は別として、大半の鳥たちは冷気には弱い。
電気にも弱いらしいのだが、俺も苦手だしなにより冷気ならば自前で出すことができる、だから冷気にした。
「さ・・・むぃ・・・死んじゃ・・・う」
「暖めてほしいか?ほしければ『暖めてください、エンペルト様』といいな」
「ぐ・・・だれ・・が・・・あんたなんかに・・・」
口では気丈なことを言っているが、顔をあんなに青くしているのを見ると限界がくるのは時間の問題だろう。
気温が低いだけでも割と堪えると聞いていたが、全身氷づけとなればまさに地獄を見るような気分のはずだ。
それを確証付けるように、ものの五分もしないうちにピジョットは口を開いた。
「暖めて・・・くださ・・・い・・・エンペルトさま・・・」
もうちょっと耐えると思ったのだが、所詮雌なんてこんなものか。
だが俺は約束を破る雄ではない、約束通りとっておきの方法で暖めてやることにした。
「よーし、暖めてやるぞ」
「あ・・・!!な、なによ・・・それは・・・!」
ピジョットが驚いたのも無理はない、俺は暖めると言ってすぐに服を脱ぎ、逸物をさらけ出したからだ。
しかし本当に驚いているのはおそらくこの行為自体ではなく、俺の股間にぶら下がっている逸物の方にだろう。
さっき話した科学者に受けた改造というのは逸物の巨大化である。
本人いわく改造ではなく、改造を超えた『魔』改造らしいのだが、その二つの線引きはいまいちわからない。
とはいえそんな大層な冠詞を付けるだけあり、改造された俺の逸物は常人のそれとは似ても似つかないものになっていた。
分厚い包皮に包まれ、俺の体より大きいのではないかと思うようなサイズになり、それに比例して玉袋の方も凄まじい大きさと重量になっている。
このピジョットの穴に入れようものなら、体を貫通して口から出てきてもおかしくないほどだ。
これでは雌と交尾なんて出来ないだろうと最初は思ったが、案外金を出せば股を開くものであった。
それで何人の雌局部を使い物にならなくしたかはもう覚えていない。
そんな逸物がいきなり目の前に突き出されたら、驚くのは当たり前だろう。
「見て分からないか?俺のチンコだよ」
「っ・・・何でそんなもの出すのよ!」
「暖めてほしいって言ったろ?たっぷりと俺の小便を浴びせてやるよ、暖かいぜ?」
拒絶されているのは目に見えていたので、俺は返事を待つことなくピジョットに向けて放尿した。
ジョボジョボとお世辞にも綺麗ではない音をたてて俺の逸物から放たれる黄色い液体は、氷をゆっくりと溶かしていく。
どれだけ喚くか期待していたが、どうやら尿を浴びる不快感より氷が溶かされていく快感のほうが勝っているのか、放尿を終えるまでピジョットは口を開かなかった。
「黙って浴びてるとはな、そんなに小便が好きならあいつらにも引っかけてもらえよ」
「・・・!す、好きなわけな・・・や、やめてっ!ぁ・・・ああぁ・・・!」
言葉の抵抗など何の役にもたたず、周囲の雄は俺の一声で次々にピジョットに向けて放尿していく。
俺の家に着たばかりの時はフサフサの羽毛に包まれていた体が、今は精液と尿に濡れてしまっている。
放尿を終えたやつらを全員下がらせると、部屋にはピジョットのすすり泣く声が響くだけだった。
「うっぅ・・・ひどい・・・」
「まあ、俺に逆らおうとする奴はこうなるってわけだ」
もう落ちてしまい、俺を認めないまでも反抗はしなくなっているだろうが、それだけで満足は出来ない。
こいつは近い将来俺の性奴隷になってもらわないといけないのだから、俺にしてもらったことを『ひどい』などと言うようでは全然駄目だ。
「よし、お前等一つ賭けをしないか?」
「賭け・・・ですか?」
「俺のチンコをこいつに入れて、口から出てくるかこないかを予想しろ、当たっていた方には一人十万やるよ」
一同は一斉に盛り上がるが、聞いていたピジョットの方は俺にすがりついて拒絶する。
当然そんなものは無視し、奴らの意見がまとまったのを見たところで、いよいよ交尾とも言えないような交尾が始まる。
ピジョットの方は輪姦されていたのだから前戯は不要だろうが、俺のほうはまだスタンバイしていない。
前戯をするのは雌の役目である、俺は巨大な逸物をピジョットの顔に押しつけてやった。
「うえぇっ!?臭・・・い!」
押しつけられた瞬間、縄で縛られているのにも関わらず俺の逸物からとびのいた。
とびのくほどの悪臭を放っているというのだろうが、それは俺の計算通りである。
包茎はモテないだとかいうのは、自分から雌を求めていかなければならない雄にだけ言えることで、放っておいても勝手に雌が寄ってくる俺は違う。
俺は自ら改造・・・いや『魔』改造か知らないが、それによりこの巨大な逸物をすっぽり覆う分厚い包皮をつけたのだ。
包皮は中に恥垢をため込み、洗っていない中身は剥けば凄まじい悪臭を放つだろう。
そこで俺は雌に言ってやる、「こいつを綺麗にしたら金をやろう」と、その時の雌の葛藤を見るのが楽しいのだ。
「早く皮を剥いて、中身を綺麗にしろ」
「で、できるわけないでしょう!こんな汚いもの!」
「したくないならいいが、その汚いものはあと数分後にお前の体内に入るんだぞ?」
「う・・・ぐ・・・」
金とこの雄を舐めることを天秤にかけるなら、プラスとマイナスの葛藤であるが、今回はマイナスとマイナスの葛藤である、さぞ悩むことだろう。
ようやく覚悟したピジョットが俺の逸物の包皮を剥くと、黄色みを帯びた恥垢がベッタリとくっついていて、見るからに汚れていると分かる。
大きいものでは丸めておにぎりにでもできそうなそれを、少しずつついばんでいくピジョットの姿は、俺の理想とする奴隷像に一歩近付いていた。
初めは拒絶していたものの、この強烈な臭いと食べたことはないがおそらく酷いであろう味の前にもはや味覚や嗅覚は麻痺しているのか、数分経った頃には作業のように淡々と俺の恥垢をピジョットは食べていた。
恥垢が落とされ大分綺麗になった逸物をピジョットの股間に押し当ててやると、虚ろだった目が再び色を取り戻し、狂ったように「やめて」と叫び出す。
やめてと言われてやめてくれる奴はよほどの善人だろう、生憎俺は自他共に認める悪人である、そんな慈悲をかける気はない。
「安心しろ、壊れた雌は数え切れないが、死んだ雌は今のところいない」
「い、いや・・・やめて・・・やめ・・ギュピィイイイィイイ!!!」
問答無用でねじ込んでやると、雛の頃のような甲高い鳴き声を出した。
構わずピジョットの腹部あたりを掴み腰に力をこめてドスっと突いてやると、それに合わせるように腹が逸物の形に膨らみ、口から吐寫物と混ざって泡を噴く。
段々と押し込むのに力が必要になってきたが、それでも確実に奥へ奥へと逸物は入っていく。
大分入ったと思うところでもう一度思い切り、ピジョットの中を突き上げる。
「・・・グゲェエッ!!!」
「ん・・・?おお、貫通したな」
ピジョットがヒキガエルのような声を上げたところで確認してやると、見事に口から俺の逸物の先端が顔を出していた。
すでにピジョットは白目を剥いていておそらく意識は無いだろうが、気絶できる刺激には上限がある、過度の刺激では気絶を通り越し、覚醒する。
ここで言う過度の刺激と言えばもう見当は付いているだろう、俺はピジョットを掴む手に力を入れ、より太い逸物の根本まで体内に通すことにした。
「ぁ・・・が・・・ひぎ・・・」
案の定根本まで入れてやると、再びうめき声を聞くことができた。
顎がはずれている上喉を雄が貫通しているから声が出ないのだろうが、声が出せるなら凄まじい声を上げることだろう。
しかし交尾というのは入れて終わりではない、きちんと出す物を出すところまでを交尾と言う。
根本にあるピジョットの体を掴むと、自慰の時のようにその体を上下させ、雄を刺激していく。
さながら生きた貫通型オナホールといったところだろうか。
「グエッ!・・・グェエ・・・ゴゲッ・・・」
相変わらず汚い鳴き声で鳴くピジョットをよそに、俺は快感を求めてどんどん激しくこのオナホールを動かす。
遂に絶頂がくると分かった瞬間、先端をちょうどピジョットの体内に納める位置に動かし、そこでビュクビュクと射精をした。
全身の穴という穴から俺の精液を垂れ流すピジョットだが、この巨大な金玉に見合う量にはまだ全然足りず、部屋の床に溜まるような量を出してようやく俺の射精は収まった。
逸物を引き抜いてみると顎ははずれ、秘所は無惨に裂けた状態でぽっかりと広がり、中の肉壁がピクピクと痙攣しているのが見えた。
俺の掴む力が強かったのか羽毛も大分抜けてしまい、ただでさえ精液と尿にまみれていた体がより一層惨めなものになっていた。
部屋にできた精液の海に、ボロ布のようになったピジョットの体を投げ捨て、賭けに勝った者たちに約束通りの金を配る。
金に満足して警官が帰ったあと、この部屋に残るのは大量の精液と気絶したピジョットの体だけだった。
俺は床に溜まった精液を手にすくい、酷くネバつくそれを口に運び、啜る。
「くくく・・・やはり俺の子種は最高の美酒だといえるな」
自分の精液を旨いと感じたときは、自分自身おかしくなったと感じていた。
しかし、皇帝たる俺ならば、精液だろうと美酒になるのだろうとすぐに自己解決した。
はたから見れば俺は既に酔狂などという域は通り越しているのだろうが、そこには金では買えないおもしろさが溢れている。
今回の交尾で恐らく、このピジョットに恐怖感を植えつけることは出来ただろう、今後は何かを拒否するというのなら、また交尾をするぞ?と一言言ってやれば良い。
精液の海に浸るピジョットをよそに、ワイングラスに注いだ自分の精液を自分の逸物の臭いを肴に飲み干しながら、俺は今までにない期待を感じ屋敷中に響く声で高笑いをしていた。
ピジョットを初めて犯した日から三日が経った。
思惑通り交尾することを脅しの材料に使ってやったところ、ピジョットは見かけ上での服従を見せていた。
しかしこれでは所詮、脅しによって服従を見せているだけで本当に俺に服従したわけではない。
- 調教という調教もせず、三日間放っておいたのだから当たり前だが。
どうも俺は自分から調教すると言うことがまだ出来ないようなので、またしても警察の奴らに世話になることにする。
電話一本入れてやれば十分もしないうちに家にくる、まさにデリバリーポリスという感じだ。
今回は警官たちを使うのではなく、俺自身が警察の方に赴くことにした、当然だが自首するわけではない。
「ここが死刑囚達の牢ですが・・・」
「そうか、ご苦労」
俺が選んだのは犯罪者たちを使うことだった。
警察の奴らは俺の犬とはいえ、ふつうの神経しか持っていない、俺の命令以上のことをやってくれるとは思えない。
その点犯罪者ども、まじてここの牢に入ってるような奴らは、大量殺人犯から強姦魔までよりどりみどりだ。
一番奥にある一番厳重な牢屋の前に行くと、中に居るバンギラスがこっちを凄みの効いた目でにらんできた。
「・・・何の用だ」
「ほう、二十人以上の雌を監禁して強姦した後殺害、それで死刑判決・・・か」
俺がこのバンギラスの罪状を読み上げてやると、少し驚いたようにしたが、すぐにまた元通り睨み付けてきた。
奴からすれば死刑である自分をあざ笑いに来た警官にでも思われているのだろうか、少しするとそっぽを向かれてしまい、全く反応がない。
だがこいつに反応をさせるのは簡単だ、こいつというよりここに居る全員の心を鷲掴みに出来る魔法の言葉が俺にはある。
「出してやろうか?」
「!!?・・・どういう意味だ?」
「そのままの意味だ、ここから出してやろうって言ってるんだ、ただし俺の家で働く条件付きでな」
「働く・・・ふん、どうせ奴隷のようn・・・」
ぐちぐちとうるさい奴は札束で黙らせるのが俺のやり方だ。
懐にあった札束を二、三個牢屋の中に投げ込んでやると、言い返そうとしてきたバンギラスはすっかり黙ってしまった。
毎度のことだが、金で人を黙らせる瞬間というのは面白い。
あっけにとられているバンギラスに追い打ちをかけるように俺は言葉を畳みかけた。
「一日それだけやる、仕事も楽なものだ、悪い条件じゃあないだろう?」
「あんた・・・何者だ、何をたくらんでる?」
「俺が何者かどうか、何をたくらんでいるかなんてどうでもいいだろう、その中に入っていたらお前はいずれ死ぬ、俺に付いてくれば可能性はある、どうだ」
「わかった・・・」
死と生存を秤にかけさせればほとんどの者は後者に傾く、まして俺は今この場でバンギラスにさっきの札束をつかませてやった。
大金を掴ませたまま見るだけで高級とわかる車に乗せてやり、運転しながら仕事内容について話す。
一匹の雌を屈服させてほしいということ、それが終わったら家のガードマンにでもなってくれと話す。
その仕事をしてくれれば牢で言ったとおりの給料を出す、そして最後に一つ
「特別な条件・・・がある?」
「ああ、それについては詳しくは話せない、今この場でイエスかノーか決めてもらおう」
「今更ノーなんて言うかよ、どうにでもしろって言うんだ」
やはりこういう決断を迫られる場面になると、警官なんかより犯罪者のほうが余程度胸があり、話している方も気持ちがいい。
二人を乗せた車は街一番と言われる大病院の前で止まった、ここには俺を改造した科学者が居る、それもよりによって院長という身分で。
内装は綺麗で、実際に設備や医師達の技術も良く、ここで肉体改造の研究がされていると知る者は俺以外にはほとんど居ない。
皆平和な顔をして入院しているが、実は定期的に患者が間引きされて院長の研究に利用されているとんでもない病院だ。
院長室に入ると雌のキュウコンが眼鏡をかけて書類をまとめている所だった、彼女が紛れもないここの院長であり、俺の逸物を改造した張本人でもある。
俺が入ってきたのに気がついたのか、彼女は作業を止め、にっこりとこちらに微笑み掛けてきた。
普通の雄ならば一発で魅了される美貌に、母親から受けるような穏やかな笑み、この裏側に肉体改造を平気で行うような黒い顔が隠されて居ると誰が読めるだろうか。
彼女に近寄り、薬で眠らされている間に改造手術を受けたのは俺だけではないはず・・・。
「遊びに来たぜ、院長さん」
「あら・・・懐かしい顔ね、てっきり次に会うのは天国かと思っていたのに」
一つだけいえることは、俺も彼女も死んだ後に行ける場所は天国じゃなくて地獄だ。
「三日前会ったばかりじゃないか・・・?」
「ふふ、そんな昔のことは覚えてないわ、それより今日は何の用事?」
この様子を見る限り覚えていておちょくっているのだろう、俺はすぐにそう分かった。
彼女も金は腐るほど持っているから、数少ない俺が対等に話す相手であり、話を始めたら少しの油断もできない、うっかりするとすぐに彼女の話術に取り込まれる。
「被研体連れてきた、足りないんだろ」
「また付き合ってくれるのね、今度はどこをいじってほしいのかしら?」
「俺じゃなくてこっちの奴だ」
まだ俺を改造する気だったようだが、今回はちゃんとかわしてバンギラスの方を指さす。
目の前の美女や被献体という単語にやや困惑気味であったが、これが俺の言う条件だということはすぐに理解してくれたのか、とくに騒ぎ立てる様子もなくキュウコンに体を観察されている。
俺が言えることでもないが、彼女は相当の色狂いである。
改造したばかりの俺の逸物が最初に貫いたのが彼女の体であり、俺のほうが先に音を上げさせられたほどだ。
このバンギラスもかなり良い体をしているが故に、彼女はどう改造するか以上に、改造した後自分がどう犯されるかを想像して居るに違いない。
「うん、健康状態に問題はなさそう、すぐにやっちゃって良いのかしら?」
「ああ、お前が暇ならすぐにでも頼む」
「任せておいて、あっと驚かせてあげるわ」
そう言って彼女はバンギラスと二人で院長室の奥の扉へと消えていった。
手術中のランプが灯る前に二、三度バンギラスの悲鳴が聞こえた気がするが・・・気のせいだろう。
院長室の本棚に並ぶ怪しげな本を読みふけっているうちにいつの間にか半日が過ぎ、手術中のランプが消えたと思うと二人そろって戻ってきた。
「終わったのか?」
「ええ、大成功よ、久しぶりに魔改造なんてしちゃったわ・・・」
相変わらず改造と魔改造の違いはよく分からない、思い切って彼女に聞いたところ、本来魔改造というのは施術後数日で体に限界が来て命を落とす手の物らしい。
今では研究が進んだおかげでそんな危険ではなくなっていて、魔をつけるかどうかは気分次第のようだが、俺に施した時はそこまで進んでいなかったらしい。
さて、改造の結果を見てみるとこれは一目で分かった、バンギラスの背中からいわゆる触手が何本も生えており、これなら魔を付けるのも頷ける。
どうやらドククラゲの触手を改造した物を埋め込んだらしいが、それが体内へ自由に収納できたり数メートルにまで伸ばせる原理は不明だ。
しかしバンギラス自身は驚いては居るものの嫌がっている様子はなく、むしろ今後この触手で雌をいたぶれるという期待の方が勝っているのか、彼は上機嫌だった。
用件は済ませたのでキュウコンに別れを告げ、あとは家に帰るだけと言うところでバンギラスが俺に話しかけてきた。
「なあ・・・エンペルト、さっきも聞いたがあんた一体何者だ?死刑囚の俺を簡単に牢から出せたり、あんな素敵なお友達が居たりさ」
「お前達と同じ犯罪者さ、違いは金があるかないかだけだ」
「・・・あんたに一つ頼みがあるんだが」
最終更新:2012年12月24日 16:49