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セレス・ヴィ・レベラソール

セレス・ヴィ・レベラソール
作:@Freeton2
生年月日 宇宙新暦4385年6月19日
年齢 16アストラ歳(星年齢)
出生地 セトルラーム共立連邦
出身校 聖ルドラトリス連邦軍大学
所属政党 学園社会党
階級 連合体首相
異名 清音謀聖


概要

 セレス・ヴィ・レベラソール(Ceres Vi Revelasor)は、ユピトル学園主権連合体の政治家である。
かつては、ユピトリー王国の女王として国を興した建国者にあたる。共立公暦1000年現在は、代表理事を支えて行政府を率いる立場にある。

自己紹介

 ごきげんよう、皆様。私、セレス・ヴィ・レベラソールと申します。今はユピトルで首相のお仕事を預かっていますけれど、どうぞ気軽にセレスと呼んでくださいね。ふふっ、こうしてお会いできて、本当にうれしいです。この国はね、遠くから流れ着いた人たちが、互いの手を取り合って作った場所なんですよ。学生さんも、先生方も、転移者の皆さんも、ここでは明日を一緒に組み立てる仲間です。私ももとは、隣の国から渡ってきた一人なんですよ。故郷で暮らした年月より、この国で過ごした年月のほうがずっと長くなりました。流れ着いた人の心細さは、少しは分かるつもりです。好きなものは、学生さんたちとのおしゃべりと、甘さ控えめの焼き菓子。差し入れは大歓迎ですけれど、首相府の決まりで、お返しがお手紙だけになってしまうのが残念ですね。……実を言うと、私、この国の決まりごとをたくさん作ってきた張本人なんです。うまくいったものもあれば、後になって頭を抱えたものもあって。序列の仕組みも、その一つですね。頑張る人の背中を押すための物差しが、いつの間にか誰かの肩に載る重しになっていないか、今でも寝る前によく考えます。上を目指す子の足場は崩したくないし、一番下で膝を抱えている子の手も離したくない。欲張りでしょう? でも、Jumir Alia、最上の高貴さとは責任のことだと、この国の子供たちに教えてきたのは私ですから、自分が一番守らないとね。新しく学園に来た方も、遠い故郷を懐かしんでいる方も、困ったことがあったら遠慮なく声をかけてください。首相府の扉は、見た目ほど重くありませんから。これからどうぞ、よろしくね!

来歴

 セレス・ヴィ・レベラソールは、新秩序世界大戦のさなか、セトルラーム共立連邦のツォルマリア人居住区に生まれ、戦時の混乱の中で少女時代を過ごした。幼い頃から地域の互助組織に加わり、避難民への物資の配給に立つかたわら、戦災孤児の保護にも奔走している。連邦軍の大学で学業を修めた後、宇宙新暦4498年、連邦主力の去った空白の宙域に漂流難民が集まり始めたと知って現地に渡り、食料と医薬品を運ぶ非公式の支援網を組み上げた。同4502年にはエールミトナ星系で難民の自警組織に加わり、散らばった居住地を暗号通信で結んで、補給物資の確保を指揮している。同4525年、セトルラーム艦隊が再編入の動きを見せると、セレスは国を追われた暴徒を糾合して抵抗軍を組織し、30年に及ぶ闘争の指揮を執った。戦闘の合間には難民キャンプに仮設学校を開き、読み書きに加えて共立社会の理念を子供たちに教えている。闘争の末にユピトリー王国が成立すると、女王に即位したセレスは、本国の独裁者ヴァンス・フリートンを説き伏せ、学園国家の建設を認めさせた。

 旧宗主国の民主化を経て国際社会の支援が本格化した後、共立公暦50年頃には、各星系の文化を映した学園網の設計に自ら当たり、転移者の知識も教育に取り入れた。同80年、自主独立を掲げる自由運動党の結党に加わり、序列規定を導入する議論にも名を連ねた。同100年にユピトル学園主権連合体が成立すると、初代の代表理事として人材の発掘に力を注ぎ、任期を終えた後は首相の座に移って、党の顔として政権を率いた。数世紀に及ぶ一強の間、建国の英雄と仰がれる一方で、党内でセレスの意見は年を追って通りにくくなった。同978年、国内に突如現れた転移勢力同士がベルリン戦争を始めると、介入の法的根拠を欠く政府は手をこまねき、文明共立機構の介入圧力が強まるに任せている。我慢の尽きたセレスは長年の党を離れて学園社会党に移り、同年の政権交代を経て新たな与党の総裁に迎えられると、首相の座を保ったまま戦争への介入に踏み切った。戦った転移勢力は、後に学区として連合体に編入されている。移籍後は党内の左派共立グループを率い、学区間の資源配分を見直しながら、ウォールムレジスタンスとの紛争を話し合いで解く場を設けてきた。

人物

 セレスの気性は、初対面の相手にも気さくに声をかける柔らかさを持ち、局面の変わり目では一転して場を掌握する厳しさを見せる。ツォルマリア人の互助の輪で育った経験から、自分の望みを後回しにして集団の暮らしを先に量る癖が身に付いた。それでいて、学生から転移者まで出自の散らばった住民一人ひとりの夢を、時間をかけて丁寧に聞き取る。戦火の中で配給の列に立った少女時代が、どれほど追い詰められた局面でも次の一手を探す楽天家の芯を育てた。序列に向けるセレスの眼差しは、制度を設けた当事者の自責に根を持つ。競争を学びの原動力に据える仕組みは今も堅持しており、上位を目指す学生の道筋を守る立場も、党を移る前後で一貫している。一方、最下層に押し込められた学生の生活を支える給付については、党内の反対を押し切ってでも枠を広げようとする。序列の撤廃を訴える勢力とは真っ向から対立する反面、同じ勢力が持ち込む最底辺の窮状の訴えには、面会の時間を割いて耳を傾ける。セレス自身は、制度を壊して逃げる道も、制度に目をつぶって守る道も、建国者に許された選択肢の外にあると考えている。公人としての責任を私情に優先させる習い性から、友人との約束が公務に押し流される場面は、年に幾度も訪れる。暮らしぶりは質素で、華美な装いを遠ざけ、空いた時間には学園図書館で近古代の文献を読み漁る。学生たちを招いて開く気軽な茶会では、冗談を交えて場を和ませる顔をのぞかせる。胸に掲げる信念は、教育を自由の翼とし、誰もが自分だけの空を飛べる社会を築くことにある。一度決めた信念を曲げる場面の少なさは周囲を手こずらせ、頑固さの底には、戦乱で失われた命と希望を取り戻したい熱が、少女時代のまま燃え続けている。

人間関係

 セレスの交友は、建国の戦火をくぐった古い縁に、首相に就いてから結んだ公務の縁が折り重なって広がっている。

 連邦軍の戦略部門を離れて抵抗軍の門を叩いたアルトは、セレスが最も長く背中を預けてきた戦友である。はるか昔の時代に生まれた古参兵が、年若い指導者の下に就くと決めた経緯について、アルト自身は口数を減らし、問われるたびに話題を別に移す。抵抗軍の編成に際して、セレスは正規の軍学を修めたアルトに兵站の組み方を学び、暴徒の寄せ集めを部隊の形に整える手順の多くは、二人の夜更けの図上演習から生まれた。作戦会議で意見が割れると、セレスは最後に必ずアルトの顔を窺い、黙って頷くか首を傾げるかで腹を決めた。建国の英雄と仰がれた後も、アルトは陛下の敬称も首相の肩書も脇に置き、抵抗軍の頃の呼び方で通している。連合体の成立後、軍人の道に区切りを付けたアルトが学び直しを志した際、初代代表理事の座にあったセレスは推薦状を書こうと申し出たが、アルトは申し出を丁重に断り、一人の受験生として序列の審査に臨んだ。自由運動党の看板に据えられていた時期、党の決定に不満を溜めたセレスが本音を打ち明けられた相手は、事実上アルト一人であった。外交官に転じたアルトが旧宗主国との交渉の最前線から寄越す報告は、首相府の机にも写しが届き、交渉の行方を案じる文面が、共立同盟への加盟を巡るセレスの判断を少しずつ動かしていった。年長のメレザ・レクネールにセレスを最初に引き合わせたのもアルトであり、三人が顔を揃える席では、二人の昔話の食い違いを訂正する役に回る。訂正された側が揃って反論し始めると、アルトは黙って席を立ち、茶を淹れ直しに行く。

 旧宗主国の大統領ヴァンスは、女王となったセレスが最初に向き合った交渉相手であり、今なお互いの手の内を知り尽くした間柄にある。王国の成立直後、独裁の座にあったヴァンスとの交渉に臨むにあたって、セレスは連邦が4500年代初頭に始めた教育人材への資金供与を調べ上げ、独裁政権が自ら掲げた看板に沿う形で構想を差し出す段取りを整えた。交渉の席で、セレスは学園国家が育てた人材を連邦にも還す見通しを示し、教育の話を投資の話に置き換えて建設の承認を引き出した。連邦の政変を経てヴァンスが選挙で大統領に返り咲いた後も、二人の会談は当時の交渉の続きの体を成している。連邦の側では首相ゾレイモスと組む双頭体制が長く続き、会談の卓にも両者が揃って就く場面が多いものの、建国当時の交渉の席で向き合った相手は、セレスにとって今も大統領ただ一人である。セレスにとってのヴァンスは、独立を認めさせた相手であり、同時に旧暦の圧政を知る生き証人でもある。仮設学校の時代から、セレスは旧宗主国の独裁を教材に取り上げ、ヴァンスの名も明かして子供たちに語ってきた。首脳会談の席に限っては、同じ話題を封じたまま議題を進める。会談でセレスが出された紅茶を手付かずのまま話を始めるとき、譲歩を拒む合図だと、ヴァンスは長年の付き合いから心得ている。ヴァンスが先に茶を勧め直して話題を変えれば、その日の交渉は長引き、勧め直しの前にセレスが頷けば、結論は早々に出る。政変の後、民政のもとで返り咲いたヴァンスが福祉の拡充を掲げた際、セレスは祝意の書簡に、ユピトルの給付制度の資料を束ねて添えた。独立の承認文書に並んだ二人の署名は、エールミトナの記念館に今も掲げられている。

 連邦の筆頭公爵として民主化を主導したアリウスは、セレスにとって独立の後ろ盾となった恩人であり、同時に常に警戒を研ぎ澄ませて向き合う相手でもある。大戦の最中に連邦の居住区で育ったセレスにとって、艦隊を率いて帰還した救国の将の名は、配給の列で耳にした噂話として最初に胸に刻まれた。宇宙新暦4895年、改革派を率いてヴァンスの政権に引導を渡したアリウスは、旧植民地の自立を連邦の再建の条件に数え、王国の領域拡張に向けた国際支援の扉を開いた。女王の身で『共立連邦の君主』に礼を尽くした最初の会見で、セレスは独立の承認に謝意を述べ、ユピトルの教育は連邦の手の届く外に置くと明言している。承認の見返りについて、アリウスは話題を最後まで伏せたまま会見を終えており、伏せた理由を、セレスは今も測りかねている。

 普段は構成国の政治を静観するアリウスが、ひとたび動けば一つの政権が倒れる事実を、セレスは旧宗主国の政変を通じて目の当たりにしてきた。アリウスの率いるロフィルナ連邦共同体は、ロフィルナ王国を巡る加盟国同士の不和を抱え、連邦への不満を募らせる加盟国の中には、ユピトルと繋がりを持つ国もある。旧宗主国の植民地支配を巡る歴史認識でも、王国の扱いでも連邦と対立を続けるユピトルの首相として、セレスは君主個人への礼節を尽くしながら、共同体の不和の陰でアリウスが何を思い描いているのかを、政治の領域では今も見定めようと目を凝らしている。アリウスの側はセレスを気に入っているらしく、公式の書簡の末尾には決まって私的な一文が添えられる。一文に込められた意図を読み解く作業は首相府の恒例となっており、解読の結論は毎回、判断を保留する旨の短い返信に落ち着く。アリウスの近況は、彼女自身に目をかけられているメレザの口を通じてセレスの耳に入ることが多い。

 母校を同じくする遥かな先達で、『共立連邦のツォルマリア人』という出自も共有するメレザは、セレスが公職の肩書を外して語らえる親しい友人である。文明共立機構の常任最高議長の職と、一国の首相の職は、ときに政治の上で利害をぶつけ合う。第一次レクネール体制が定めたソルキア解釈の運用は時代とともに移り変わり、メレザが議長の座を離れていた時期に厳しさを増した経緯を持つ。ベルリン戦争の折にユピトルへ向けられた介入圧力も、厳格化した運用のもとで強まったものであり、解釈の在り方を巡る意見の交換は今も二人の間で続く。現実を見据えるハト派の議長も、内政への干渉を警戒する首相も、互いの立場の違いを承知しており、私的な席には公務の議論を持ち込む量を加減している。メレザが塔の警備を解いて迎え入れる古い友人の一人にセレスも数えられ、多忙な二人が顔を合わせる場は、議長の書庫で古い文献を広げる午後に限られる。大戦を逃げ延びた先達の昔語りに、セレスは連邦の居住区で過ごした自らの少女時代を重ね、二人の話は戦時の配給の味から始まることが多い。植物性の食事を貫くメレザを訪ねる際、セレスは首相府の庭で採れた豆を手土産に携えていく。召喚の代償として少しずつ記憶を失うメレザのため、セレスは会うたびに前回の話題を短く書き留めて手渡してきた。メレザが日課として付ける記録の余白には、セレスの筆跡で綴られた覚え書きが年ごとに増えている。人権に触れる冗談に眉をひそめるメレザの性分を知るセレスは、序列の話題を持ち出す際、いつも以上に言葉を選ぶ時間をかける。

 隣国の首相ゾレイモスは、奔放な元首の脇で行政府を預かる境遇を分かち合う同業者であり、セレスが肩の力を抜いて政治を語れる、得難い相手である。二人とも若くして武器を取った経歴を持ち、戦場を知る者同士の会話は、外交辞令を省いた率直な言葉で交わされる。星間機構の地獄を知る年長の相手を前にすると、セレスは会談の冒頭だけ後輩の礼を取り、議題に入ると対等の口調に切り替える。連邦が各国に投資契約の縮小を働きかけた時期、外交の舵は大統領が握り、内政を受け持つ隣国の首相は交渉の表舞台の外に置かれていた。セレスが首相同士の回線で送り続けたのは、制裁を重ねた場合にユピトルへ進出した連邦企業が失う収益の試算であり、試算は外交文書の体裁を避け、経済統計の照会への回答として届けられている。受け取った側は、連邦企業の減収が税収を細らせ、消費者給付の財源に響く見通しとして数字を組み直し、内政の報告の形で大統領の机に載せた。給付の財源を巡る報告であれば、首相の職責の内に収まる。

 消費の促進を政権の柱に据える大統領は、財源の目減りを自らの支持の土台に関わる懸案として受け止めた。制裁が軽い段階で止まるまで、首相同士の通話は週ごとに続いている。利権を持つ事業者を給付の制度から仕分けてきた隣国の首相の手腕は、最下層の学生への給付を組み立てるセレスにとって格好の手本であり、制度の設計が行き詰まるたびに、ルドラトリスの首相府に照会の書簡が送られる。私用回線に年長の友からの着信が入る日は、決まって大統領の新たな失言が報じられた翌日にあたる。独裁的な人物を頼りにする現状に揺れる相手の葛藤を、セレスは党の看板に祭り上げられていた自らの過去と重ね合わせ、心中を言い当てては、辛辣な物言いを笑って受け止める。大統領の不始末に手を焼く話が向こうから切り出されれば、セレスは代表理事の即断に追われる苦労で応じ、首脳会談の後の雑談は、互いの相方を巡る苦労話の品評に移っていく。雑談の中身は双方の首相府で固く伏せられており、記録係の職員は、会談の終了を告げる挨拶の直後に筆記具を置くよう申し渡されている。

 転移者として帝国で暮らした後に留学してきたカエデは、共立公暦994年にセレスが代表理事の候補に抜擢した相手である。二人の最初の面会は、留学先の学園を視察した首相が、訓練場の片隅で剣の手入れをしていた留学生に声をかけたことに始まる。声の主を学園の職員と思い込んで剣を磨き続けた留学生は、名乗りを聞くや慌てて立ち上がり、手入れ用の油を首相の靴に零した。闘争競技で名を上げた若者に目を留めた理由は、戦いの腕前に加えて、別の世界から流れ着いた出自にもあった。ベルリン戦争の後、転移勢力を学区として迎え入れた国の舵取りには、旧世界の記憶を携えた元首が要ると、セレスは戦争への介入を決めた頃から考え続けていた。任期の満了を当然の区切りとして受け止める淡白さも、権力に居座る危うさを避ける資質として評価の内に数えられている。党の看板として長く担がれた自らの経験が、肩書を身軽に手放せる若者に国の頂点を預ける決断を後押しした。帝国での暮らしが転移者の権利を巡る厳しい考えを育てたことを知るセレスは、帝国に関わる話題を切り出す際、必ず本人の顔色を先に確かめる。在任の四年を通じて、セレスは代表理事と首相の外遊が同じ週に重なる日程を避け続け、国を空ける週には必ずどちらかが首都に残る段取りを組んだ。退任の挨拶に訪れた前代表理事を、セレスは首相府の職員名簿の空欄を示して引き留めたものの、相手は恩師の勧めに従い、郷里のアケノミヤ学区で武装公務員の道を選んだ。以来、治安の報告書にカエデの署名を見つけるたびに、セレスは本文に目を通す前に署名の筆圧を確かめ、元気でいるかを推し量っている。

 カエデの後任として代表理事に就いたエレイナは、セレスが党を移って政権交代を果たした同978年に生を受けた世代であり、セレスは前任から続く協力の枠組みごと新たな代表理事を迎えた。同998年、共立同盟への加盟が代表理事の手で打ち出されると、セレスは建国の経緯を踏まえ、旧宗主国との対立の歴史も顧みて、国民感情が賛否で割れている現状を重く見た末に、慎重論に立った。独立以来の武装中立を手放せば、独立戦争を戦った世代の支持者に背を向けることになる。それでも、外交問題がこのままエスカレートすれば国が危うくなると悟り、最後は渋々ながら同調している。党内の反対派を説き伏せて回った代表理事が、最後の説得の相手に選んだのは左派共立グループを率いるセレスであり、協議は夜を徹して重ねられた。同調を決めた翌朝、セレスは独立戦争の戦没者名簿に目を通してから閣議に臨んだ。

 加盟が決まった後、閣議の議事録には、慎重論を唱えた経緯も議論の全容とともに書き残すよう、首相の名で指示が出されている。トローネ皇帝と私的な対話を重ねる代表理事の外交を、セレスは列強の結束に楔を打つ手立てとして後押ししており、対話の席に持参する贈答品の選定にも首相府の知恵を貸している。ウォールム・エリアへの隔離制裁についても、学区への交付金の停止を続ける代表理事の判断を追認しつつ、保健委員会を通じて住民個人に届く給付だけは別枠で残すよう、セレスは予算の組み替えを求めてきた。学区の財政が帝国の出資に寄り掛かる中で、国の手が住民の暮らしに届く経路を一本残しておく狙いも、組み替えの要求には込められている。代表理事の決断が速ければ速いほど、首相府の予算担当は徹夜の回数を増やす。牽制役に求められる距離の取り方を、セレスは年若い国家元首を相手に今も手探りで測り続けている。

戦闘能力

 序列の頂点にあたるグランド・マスターの格付けを持つセレスは、建国の英雄の名に加えて現役の術者としての腕前を今も保ち、己の技量一つで戦場に立つ。

春属性

 春属性の術式は、四大元素を扱う汎用性と引き換えに威力を抑えた設計を持ち、強い効果を引き出せる術者は、道を極めた一握りの求道者に数えられる。セレスも求道者の一人に数えられ、穏やかなシートの流れを保ったまま、一個の部隊を丸ごと覆う規模で大気と土を動かす。術の選び方は戦場の条件で決まり、湿った大気の漂う地では水分を集めて霧を広げる。乾いた平原に布陣する際には、土を掘り起こして防壁の列を築く。土の術式では地中の鉱物を選り分けて防壁の芯に据え、砲撃に耐える硬さを土塁に与えており、風の術式は味方の足を速める追い風に回される。火の術式は野営地の炊事と信号に充てることが多く、水の錬成は、補給の細った抵抗軍の兵に飲み水を行き渡らせる手段にもなった。霧の粒の細かさは戦況に応じて加減され、敵の照準器を曇らせる濃さと、味方が互いの影を見分けられる薄さが使い分けられる。霧は術式を切った後も戦場に漂い続けるため、春のシートを閉じて心属性に移った後も、敵の視界は塞がれたまま保たれる。媒介エネルギーの見極めは士官教育で学んだ地形の読み方と一体であり、大気の湿りと土の締まり具合を布陣の前に確かめる手順が、若い頃から身に付いている。媒介の尽きた宙域では、春属性に備わる代替の手法を用い、自らの体に蓄えた水分と熱を削って術を起こす。代償は重く、長引いた戦闘の後には高熱に伏せる日々が続いたものの、補給の途絶えた抵抗軍の艦内で防壁を張り続けた経験が、後の宙域戦の糧となった。抽象的な高位技術を相手取る局面では、春の術式を地形の下拵えに回し、正面からの対抗は心属性に委ねる。

心属性

 上位属性に分類される心属性は、音を媒介に精神に働きかける術式群であり、僅かな媒介エネルギーで発動できる利点を持つ。セレスの操る音は、かすかな揺らぎに抑えられており、敵が術に気付く頃には、陣の中で判断の拍子が狂い始めている。作用の及ぶ範囲は一人の兵から艦隊の乗員全体にまで広がり、敵陣には戦意を剥ぐ揺らぎを、味方の陣には集中を保つ揺らぎを、一枚のシートの上で書き分ける。包囲された味方の陣に向けては、恐慌を鎮める低い揺らぎを流し続け、撤退の順番を最後まで守らせる。心属性の揺らぎは術者の消耗が緩やかであり、長期の包囲戦でも、昼夜を通して敵陣に流し続けられる。精神干渉に備えた敵の術者を相手取る際には、揺らぎの拍子を絶えず組み替え、術の癖を敵に掴ませる前に崩しにかかる。音を伝える大気の欠けた宙域では、揺らぎを艦体の振動に乗せて敵艦の乗員に届ける手法を編み出し、接舷戦の直前に敵の甲板を浮き足立たせてきた。術の働きは精神の領域に向けられたものであっても、認識を歪められた敵は幻の伏兵に備えて陣形を崩し、戦場の形そのものが術者の望む形に寄っていく。現実改変を伴う異能を前にした際、セレスは味方の認識の連続を保つ術式を張り、改変の前後で起きた事象を味方に見届けさせる。改変の痕跡を掴んだ味方の証言は、反撃の起点を探る材料として指揮に組み込まれる。抽象的な戦闘技術への対抗は心属性に期待される役割の筆頭であり、独立闘争の時代、異能を振るう敵将と渡り合う中で、セレスはこの用法を実地で磨いてきた。

術式制御

 春と心は言語コードを異にし、二つの術式を同時に走らせる運用は令咏術の原則の外にある。属性を切り替えるたびに別のホログラムシートを組み直す手順が要り、並の術者であれば、組み直しの間に戦場の流れを一拍分手放す。セレスは走っているシートを切る直前までに次の詠唱を書き終え、切った瞬間に次の術式を立ち上げて、組み直しの間隙を詰める。上位の術者に許されたこの手順を、口頭の詠唱と書き込みの操作を並行させる形で磨き上げた結果、切り替えの継ぎ目は敵の目に映る前に閉じられる。書き込んだ内容を取り消す操作にも長けており、戦況が読みと食い違えば、完成間際の詠唱を捨てて別の術式に書き換える判断が速い。序列審査の実技でも、審査官の前で二属性の往復を一息に演じ切った。同じ春属性の内側では、複数のシートを繋いで発動の時機を揃える技法も併用し、霧の展開と土壁の隆起を同じ拍に合わせて、戦場の景色を一息に塗り替える。シートを組み直す手順は目を閉じたままでも辿れる型にまで落とし込まれており、抵抗軍の若い術者たちも、同じ型を繰り返して切り替えの速さを身に付けた。首相となった今も、執務に就く前に切り替えの型を繰り返す鍛錬を日課としている。独立闘争の後半、喉を傷めて声を失った時期には、書き込みの操作だけで二つの属性を回し続け、詠唱に頼る術者の倍の手数でシートを繰った。魔導法具の類を脇に置き、シートを組む速さと書き込みの正確さだけで二つの属性を行き来する運用は、どの戦場の条件にも通用し、補給の途絶えた抵抗軍の戦い方にも適っていた。

実戦

 セレスの戦い方の骨格は、士官候補生の頃に叩き込まれた軍学に、30年に及ぶ独立闘争の前線で積んだ場数を重ねて形づくられた。集団戦では、霧と土の壁で戦場を区切り、敵の部隊を互いに孤立させる。分断された敵には心の揺らぎを浴びせて判断を遅らせ、包囲を狭めながら退路を一本だけ残して降伏を促す。敵の指揮官を狙う局面では、揺らぎを指揮系統の結節点に集めて命令の伝達を乱し、統制の崩れた部隊から順に割っていく。降伏を勧める使者の役には、セレス自身が立つことが多かった。退路の先には武装を解いた兵を受け入れる陣が必ず用意されており、抵抗軍の捕虜の多くは、後に王国の建設に加わる人手となった。犠牲を最小に抑える運用は、寡兵で大軍と渡り合った抵抗軍の台所事情から生まれたものであり、兵の補充が常に後手に回る戦場で、敵兵を無傷で味方に変える算段は、戦力の勘定に直結していた。一対一で火力を競う局面は避けるものの、単身で包囲された際の立ち回りは歴戦の兵の水準にあり、足元の土を崩して敵の足場を奪い、揺らいだ敵の間を霧に紛れて抜けていく。術と並ぶ護身の備えとして、士官教育で修めた格闘の型も身に留めており、術の切り替えの一瞬を狙って間合いを詰めてきた相手は、組み打ちの末に地面に転がされる。市街戦に臨む際には、住民の避難路を先に確保してから布陣を定める手順を守り通し、戦火に巻き込む住民の数を抑えてきた。前線の指揮官として幾度も敵中に取り残されながら、セレスが生還を重ねてきた事実は、抵抗軍の兵の間で語り草となった。

主なスキル

間取り霧(まどりぎり)
 春属性の霧を壁状に立ち上げ、戦場を幾つもの区画に割る技。区画の境に張った霧を開け閉めして、敵の部隊を狙った場所に誘い込み、味方だけが知る通り道を霧の間に残しておく。

畝返し(うねがえし)
 足元の土を幾筋もの畝の形に掘り起こし、塹壕と土塁を一息に築く技。畝の向きは風上に揃えられ、土塁の間の溝は、後から広げる霧を敵陣へ導く通り道を兼ねる。

身銭焚き(みぜにだき)
 媒介の尽きた宙域で、自らの体を資源に春属性の術式を起こす技。削る順番は汗の水分、呼気の湿り、体温の順に定められており、最後の段に手を付けた戦いの記憶は、本人が語りたがる話題の外に置かれている。

半拍ずらし
 心属性の揺らぎで敵の時間感覚を半拍だけ遅らせる技。遅れた感覚のまま動く敵は、攻撃の機を僅かに外し続け、味方の反撃に先手を譲る。

点呼の声
 現実改変に備えて味方の陣に張る心属性の術式。揺らぎには兵ごとの符丁が織り込まれ、改変の混乱に紛れて入り込んだ偽の味方は、点呼への応答の有無で炙り出される。

退き唄(ひきうた)
 包囲した敵の胸中に、退却の合図と聞き紛う揺らぎを響かせる技。揺らぎの節回しは敵軍が実際に用いる撤退喇叭の拍に合わせて書き換えられ、敵兵の足は、残された一本の退路へ自然に向かう。

継ぎ譜(つぎふ)
 春と心の術式を継ぎ目を消した形で繋ぎ合わせる技。一枚目のシートの終わりと二枚目の起こりを同じ拍に重ねるため、霧が晴れきる前に揺らぎが敵陣に届き、敵は二つの術を一続きの攻撃として受け止める。

語録

「あら?もうおこしになられたのね。はじめまして。私のことはセレスと呼んでください。今回、懇談会のお相手をさせて頂きます。」
 約束の刻限の前に首相府に着いた、学生代表の一団に。

「配給の列で覚えたことは一つだけ。最後尾の人の顔を、先に見ておくこと。先頭の人は、放っておいても自分で声を上げますから」
 首相就任の会見で、政治信条を問われて。

「予算書は恋文と同じですよ。数字の並びに、書いた人の本音が全部出てしまうの」
 首相府に配属されたばかりの職員に、予算案の読み方を手ほどきして。

「女王だった頃の衣装?全部、仮設学校のカーテンになりました。丈がちょうど良かったんです」
 建国記念の展示に、王国時代の衣装を借りたいと申し出た学芸員に。

「負けた子に『次』を用意しておくのは、勝った子に拍手するより難しいの。だから国がやるんです」
 学生同士の決闘を観戦した後、記者に感想を求められて。

「年寄り扱いされるのは平気ですけれど、置物扱いされるのは我慢できないの」
 古参の党員から、名誉職への就任を勧められて。

「若い人に国を任せる仕組みを作ったのは私ですもの。任せた相手に振り回されるくらいで、ちょうど帳尻が合うのよ」
 代表理事の急な方針転換に追われる日々を、秘書官に気遣われて。

「序列表の一番下の欄は、私が線を引いたんです。だから、あの欄に名前が載っている子のことは、私が一番よく覚えていなくてはいけないの」
 最下位の学生の名簿を毎期取り寄せる理由を、秘書官に尋ねられて。

「霧は便利ですよ。隠したいものも、見せたいものも、濃さ一つで決められますから。……ええ、議会の話ではありませんよ?」
 軍大学校での講演の締め括りに、術の使い方を問う士官候補生に。

「負けたことのない人の『大丈夫』は、信用しないことにしているの。私は何度も負けてきましたから、あなたの報告書の穴がよく見えるのよ」
 選挙戦の情勢を「負け筋なし」と報告してきた党の参謀に。

「怒ってはいませんよ。ただ、今日の議事録を、あなたのお母様にもお送りしようかと考えているだけです」
 答弁の最中に野次を重ねた若手の議員に、にこやかな顔のまま。

「転移してきた方に最初にお渡しするのは、地図と、温かい食事と、帰りたいと口にしていい権利。この三つの順番は、変えないでくださいね」
 転移者の受け入れ窓口を視察した折、職員の配る案内冊子に目を通して。

「英雄なんて、生き残った人の中で一番声が大きかっただけですよ。声の小さかった人たちの分まで働くのが、声の大きい者の務めです」
 建国記念日の記者会見で、記者から英雄と持ち上げられて。

エピソード

  • 戦場の地形を一目で読み切るセレスも、改装を終えたばかりの首相府では三日続けて道に迷った。四日目に警備員が物置で首相を見つけて以来、廊下の曲がり角には、首相自身の手書きの矢印が貼られている。
  • 首相府の庭に住み着いた野良猫が、閣議資料の束を寝床に選んで昼寝を始めた。猫の眠りを優先すると決めたセレスは閣議の開始を半刻遅らせ、待たされた閣僚たちは、資料の上で丸まる猫を囲んで順番に写真を撮った。
  • ホログラムシートを一息に書き換える術者も、党の会議に導入された電子投票の端末には手を焼き、三度続けて棄権の扱いで票を記録した。以来、党の採決の日には、首相の隣に端末の操作係が一人付き添う決まりが設けられた。
  • 学生の間で流行する対戦型の遊戯で、全国順位の上位に居座る匿名の強豪がいた。閣議の最中に首相の端末から対戦の催促を告げる通知音が鳴り響き、強豪の正体が判明した翌日、首相府には対戦の申し込みが連日束になって届いた。
  • 独立闘争の前線で敵陣を平然と歩いたセレスも、小さな甲虫だけは大の苦手としている。執務机に甲虫が舞い降りた瞬間、首相は反射的に春属性の術を走らせ、執務室は霧で真っ白に塗り込められ、甲虫は霧の晴れた窓辺で悠々と羽を休めていた。
  • 子供たちから届く手紙に、セレスは一通ずつ手書きで返事を送っている。首相の筆跡は癖が強く、返信を受け取った子供の多くが、書かれた内容を尋ねる二通目の手紙を送ってくるため、首相府の郵便係は往復書簡の整理に追われている。
  • 誕生日を祝う職員の計画を、セレスは予算書に紛れ込んだ見慣れた菓子店の請求から早々に見抜いていた。当日の首相は精一杯の驚き顔を作って部屋に入ったものの、驚く間合いが早すぎたせいで、準備の途中にあった職員たちと鉢合わせる結果に終わった。
  • 音を操る術で戦場を掌握してきたセレスは、歌となると音程が大きく外れる。党の慰労会で一曲を披露した後、音程の外れは相手の予測を外す戦術であると真顔で説明し、聞いていた党員たちは、どこまでが冗談なのかを最後まで測りかねた。
  • 学生の間で流行る言い回しを演説に取り入れようと、セレスは意味の確認を後回しにして一語を盛り込んだ。言葉の使い方は本来の意味から少し外れており、演説の切り抜きは学生の間で繰り返し再生されたものの、首相本人は再生の多さを好評の証と受け止めて上機嫌であった。
  • 休日の市場に変装して出かけたセレスは、帽子と眼鏡で顔を隠したつもりで焼き菓子の屋台の列に並んだ。前に並んでいた幼い子に名前を言い当てられて正体が明らかになり、屋台の主人は首相の注文した分に、同じ数の菓子をおまけとして袋に詰めた。

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最終更新:2025年06月09日 23:17