| 生年月日 |
西暦2000年5月12日 (地球年) |
| 年齢 |
26歳 共立公暦1000年時点. |
| 出生地 |
日本国大坂府大坂市 (転移前) |
| 人種 |
黄色人種 |
| 所属組織 |
アケノミヤ学区 陸上保安隊 |
| 最終階級 |
3等陸尉 |
| 異名 |
雷速斬刀 ツンデレのK氏 恋バナキラー |
概要
カエデ・シノノメ(東雲楓)は、
ユピトル連合の代表理事を務めた
転移者である。
任期を終えた現在は、
アケノミヤ学区の新大坂市警に籍を置き、特別機動保安隊の一隊を預かっている。
自己紹介
わざわざ名乗るまでもないと思うけど、ようこそ、ユピトルへ。私が案内担当の東雲楓です。……それで、早速なんだけどさ、どういう経緯でここに飛ばされてきたのか教えてくれる?……心配しなくても大丈夫だよ。これでも一応、守秘義務を課されているわけだし。……
神の気まぐれによるものか、
事象災害の影響か知らないけれど、既に説明されてる通り
転移者には何かしらの異能に目覚めるケースが多いのね。私の場合は、たまたま電気を操る素養があって、ちょっとした訓練を重ねただけ。不満かしら?でも、これが現実なの。貴方も私も、もう元の世界に帰ることはできないんだよ。……だから、稼ぐ手段を考えないとね。それが、この世界で暮らしていくことになる、貴方の目標だよ。理解できたかな?
来歴
カエデ・シノノメは、高校の卒業を間近に控えた時期、恋人と談笑していた中央区の公園で
事象災害に巻き込まれ、街ごと
共立世界へ運ばれた。降り立った先は
ユミル・イドゥアムの王宮で、言葉と土地勘を一から身につける暮らしが、そこから始まった。暮らしの足場を固める苦労が続くうち、
転移者の権利を巡って厳しい考えを抱くようになった。共立公暦993年(19歳)、
闘争競技の対セトルラーム戦で勝利を収めると、才能を見出されてユピトルへの留学資格を得ている。翌994年(20歳)には
セレス・ヴィ・レベラソールと出会い、代表理事の候補に抜擢されたのち、総選挙を制して就任を果たした。在任中の同996年(22歳)、
かつての恋人とアケノミヤで再会したものの、
学園序列の内と外に分かれた立場が溝を残し、二人の間には距離が置かれた。同998年(24歳)、任期の満了をもって卒業したカエデは、すでに学園序列の頂点にあたるグランド・マスターの称号を得ており、各界から寄せられる誘いを前に進路を熟慮した。同じ年には恋人と再び顔を合わせたが、関係は程なく疎遠に戻っている。隣国
セトルラームでの生活も一時は候補に挙がったが、恩師の
金坂憲二に地元アケノミヤでの就職を勧められ、恋人との決別を選んだ。以後は、代表理事の任期中に培った判断と剣の腕を生かす場として、武装公務員の道を歩んでいる。
召喚の儀
カエデの転移の裏には、
連合帝国の
帝国執政院で議題に上った指揮官の欠員がある。数か月後に
共立連邦との
闘争競技を控えた執政院では、帝国宙軍の戦闘機実験艦隊を率いる席が空いており、補充の当てを探しあぐねていた。駆逐艦を中心に編まれた実験艦隊は、戦闘機の運用を試す改革の途上にあり、対艦巨砲の流儀で育った将官たちは、指揮を引き受ける役回りを揃って避けた。皇帝の身辺を守る
近衛騎士団は、陛下の搭乗に備えた編成を既に固めており、騎士団長の
セルブラーナが議場で示した通り、欠員を埋める当ては宙軍の外でも尽きていた。
宰相である中央評議会議長が出場艦隊の削減を進言すると、しばし思案した
トローネ皇帝は、皇帝個人に忠誠を誓う
惑星統括AIアンデラの人型端末を手招きして解決を委ねた。
アンデラが術式を唱えるやスフィア王宮の議場に魔法陣が開き、下校途中の公園で恋人の傍を離れたばかりのカエデが、その中心に立っていた。直後に公園一帯を呑み込んだ
事象災害は、恋人を別の地へ運び去った。アンデラは主君に向けて、艦隊を指揮できる人物を作り上げたと報告しており、言葉の中身は皇帝とアンデラの間で共有されたまま、カエデ本人は今も知る立場の外に置かれている。選定の条件として示されたのは、帝国艦の推進機に流す
雷属性の術式を扱える素養と、旧来の艦隊教義に染まる前の判断力であり、呼び出された当人の意思を問う手順は、初めから省かれていた。議場を守る騎士たちは、皇帝の御前に突如として現れた見知らぬ少女に槍を向け、身元の確認が済むまでの備えとして包囲を保った。場を収めたのは、基地を巡る議論の参考人として呼ばれていた
ラヴァンジェ諸侯連合体の
騎士団長フャウである。少女一人を囲む騎士たちに一喝を浴びせて槍を収めさせると、フャウは素性を答えあぐねる少女を一瞥し、『後は自分でどうにかしろ』と言い残して議場を去った。包囲が解けた後、カエデの手元に残ったのは、本人の頭越しに決められた実験艦隊の指揮官の席だけであった。
留学の経緯
カエデがユピトルの学籍を得るまでの歩みは、召喚の儀に働いた超常の力と、帝国で過ごした日々に積もった憎悪の双方に根を張っている。外界からの跳躍を阻む
神々の防壁の内側に、惑星統括AIの術式だけで旧世界の人間を呼び寄せる芸当は、世界の理に照らせば道筋を欠いていた。アンデラの呼びかけに応じ、防壁の向こうへ手を伸ばしたのは、
十三原理の一柱にして主神の座にある
界律原理・アルヴェファーンであったとされる。界律は、かつて
一握りの選抜者だけを方舟に乗せて母星を発った過去を持ち、運ぶ者を上の側で選んで理由は当人に伏せる流儀を、神の位に就いた後も持ち続けている。艦隊を率いる器を求めた術式の条件は、選別を好む界律の性向と重なり合い、選定の針は、恋人の隣で胸の内の言葉を呑み込んでいた少女の上で止まった。アンデラの報告にある作り上げたという言葉も、防壁を越える間に界律の手で器が整えられ、雷を扱う素養が身体に刻み込まれた経緯を指すと見れば、辻褄が合う。高位の儀式が防壁に負荷をかけて災厄を呼び込む性質も知られており、公園一帯を呑み込んだ
事象災害を、召喚の余波と見る説も立つ。呼び出された先で待っていたのは、帝国宙軍の指揮官という肩書きと、異能を持つ
転移者として内務省の人員管理の帳簿に載る暮らしであった。
実験艦隊の旗艦に据えられたカエデは、推進機に雷の術式を流す手順を叩き込まれ、
闘争競技の日取りから逆算して組まれた訓練の中で、艦隊の指揮を一から覚え込んだ。帝国に向ける憎悪は、この時期に根を下ろしている。一方的な召喚を本人は拉致と言い切り、恋人と家族から引き剥がされた歳月を、帝国に対する生涯の貸しとして数えている。故郷の街を呑み込んだ現象についても、カエデは儀式の余波と断じており、公式の見解を持ち出されると、黙って席を立つ。帝国の名が会話に上れば表情が消え、皇帝の名が出る場では決まって口を閉ざした。安さで知られる帝国製の家電も、甘さで名高い帝国の缶詰も、カエデの暮らしからは悉く締め出され、詰所の備品に帝国製の刻印を見つけた日には、同等品との差し替えを自ら書類にして回している。神の気まぐれを疑う言葉を口にする日もあるものの、恨みの矛先は、名指しできる相手である帝国に据えられたままである。帝国を離れる糸口になったのは、闘争競技の勝利を機に
ユピトルから届いた留学の打診であった。帝国の側は、異能の高等教育を重んじる自国の方針に沿い、留学で得た知見を持ち帰らせる前提で送り出しを認めた。カエデは出国の手続きが済むまで本心を顔の奥に仕舞い込み、帝国の港を離れる船の中で初めて、片道の旅路と決めていた胸の内を明かした。帝国の見込んだ帰還の日取りは、留学先で代表理事の座に就いたことで宙に浮き、カエデは今も、
『次にユミル・イドゥアムの土を踏むのは帝国が地図から消える日を見届ける時だ』と周囲に言い放っている。
人物
カエデの気性は、平時こそ常識の範囲に収まるものの、良くも悪くもあっさりしており、相手によっては当たりのきつい人物と受け取られる。感情を表に出すのが苦手な反面、照れを隠す素振りだけは周囲の目に留まりやすく、からかいの種にされるたびに、本人は
強く否定してきた。態度が一変するのは恋愛の話題に触れた瞬間で、とりわけ
元カレの名前が挙がる場面では、普段の落ち着きが一息に崩れる。元恋人の件を除けば、ごく普通の人物として周囲に受け入れられる。色恋の話題は次第に避けられるようになり、経歴の細部について本人に尋ねる声も、年を追って細っている。冷静に損得を計算してから動く一方、いざ事が起これば、カエデは胸の内の熱を即座に行動に移す一面をのぞかせる。上司としては厳格に振る舞いながら、部下の成長に重きを置き、訓練の後には一人ずつの動きを振り返らせる指導に時間を割く。叱責の言葉は短く、改善の筋道だけは具体的に示すため、指導を受けた者ほど判断を仰ぎに来る頻度が高い。戦いの外では、エンジニアおよびプログラマーとしても
共立人材派遣機構でランク7に相当する評価を受けており、保安隊の職務と並行して、技術面の依頼を請け負っている。
人間関係
代表理事の後任にあたるエレイナは、大学の後輩でもあり、同じ対外穏健派として在任の前後を通じて互いの仕事を補い合ってきた。転移者を迎える案内役も、カエデが退任に際して譲った務めの一つで、新入生に向けた口上には先輩の言い回しが残っている。雷属性を扱う者同士、術式の組み方に話が及ぶと、会合の議題は脇へ追いやられる。
学園序列の頂点に並ぶ称号を持ちながら、戦い方は正反対に振れ、奇襲で決着を急ぐカエデとの手合わせは、打たれてから反撃に転じる後輩の備えが整う前に片が付く。仲の良さに影を落とすのは、後輩が
トローネ皇帝と私的な茶会で顔を合わせ、対等な話し相手として付き合っている事実である。帝国の名に表情を消すカエデにとって、信を置く後輩が皇帝と笑い合う光景は呑み込みがたい棘であり、茶会の土産話が始まった途端に相槌は途切れ、話は職務の用件に引き戻される。恋人を複数抱える近況の報告も苦行の一つで、話が恋人の数に及んだ時点で通信を切る習いになった。棘を胸に残したまま、二人の付き合いは、学区の治安と学生理事会の判断を繋ぐ相談を重ねる形で今日に至る。
転移の瞬間まで隣で談笑していた元恋人が、懸賞稼業で身を立てる竜崎である。竜崎の降り立った先は
ロフィルナ王国の荒野で、二人は消息の途絶えた数年を、別々の土地で過ごした。カエデが闘争競技で才能を見出された993年は、竜崎が傭兵の一団を離れ、単独で懸賞首を追い始めた年にも重なる。代表理事を退いた後の再会で、竜崎はカエデの肩書きを気遣うあまり、一歩引いた物腰を最後まで貫いた。対等な相手として向き合うことを望んでいたカエデの目には、気遣いの一つ一つが距離の表明に映り、再会の喜びはやがて苛立ちに塗り替えられた。竜崎は現在もアケノミヤの周辺を拠点に稼業を続けており、保安隊の扱う事件と、追う獲物が重なる場合もある。職務の書類に元恋人の名を見つけた日のカエデは、照会の手続きを部下に回したうえで、決裁の判だけを荒い手つきで押す。
学生時代の恩師で、現在はアケノミヤの市長を務める金坂は、エレイナも教え子に持ち、歴代の代表理事二人を育てた人物にあたる。アケノミヤでは市長が学区の代表である学園総務を兼ねるため、代表理事の在任中、カエデは連合議会の学生会議で恩師と向き合う立場にも置かれた。教え子として師の言葉に耳を傾ける顔と、国家元首として学区の要望をさばく顔を、場面ごとに切り替える日々が任期の最後まで続いている。卒業後は恩師の市政を足元から見守る立場に移り、市長の執務室に招かれる用件も、講義の続きから治安の報告に様変わりした。変わり者との評判が立つ恩師は、思い付いた催しを唐突に市政に持ち込む癖があり、警備の組み直しに追われる役目は、市警に籍を置くカエデの側に回ってくる。報告の後に恩師の昔話に付き合わされる役回りも、学生時代から引き継がれたままである。
代表理事の任期を通じて政権の実務を分け合った相手が、連合体首相のセレスである。在任中のカエデが政策の大筋を決めると、予算の配分と議会での根回しは首相の手で整えられ、決定の多くが滞りなく実行に移された。政治の駆け引きを面倒がる代表理事にとって、議会工作を引き受ける首相は、任期を乗り切るための要であった。一方で、教職者を中心とする大人の票を背に負う首相には、代表理事の行き過ぎを諫める役目もあり、急ぎ足の決断が首相の進言で練り直された場面も、在任中に幾度か訪れている。議会の答弁では、首相が数字を示し、代表理事が結論を述べる順番が定着していった。首相は
セトルラームの出身で、
転移直後のカエデが暮らした土地の事情にも通じ、転移者の処遇を巡る議論の折には、同地の実情が二人の間の話題に上った。カエデが任期を終えて去った後も首相の座は据え置かれ、後任のエレイナを支える側に回っている。
隣国セトルラームの連邦首相ゾレイモスとの縁は、カードゲームでの苦い敗戦から始まった。移動の合間に札を広げる趣味を首相は人目から隠していたものの、
ヴァンス・フリートン大統領はとうに気付き、両国の親善交流の席で代表理事のカエデを挑発して、首相との対局に誘い込んだ。闘争心に火を点けられたカエデの前に座ったのは、改暦以前の戦争を知る年長の政治家で、年若い代表理事を相手にしても、首相は自らの流儀を最後まで貫いた。盤上の攻防の末、カエデは正面から打ち負かされている。敗戦の話が広まり、首相の名が一躍知れ渡ると、ユピトルの側からゾレイモスに招待が相次ぎ、首相の私的な楽しみは、両国の交流の席に引き出されることになった。挑発に乗せられた経緯はカエデ自身も承知しており、後任のエレイナが雪辱を買って出た一件を経た今も、再戦の機会を窺い続けている。
カエデの雷壁を正面から突き破った稀な相手として、後輩のスーラの名が挙がる。
序列の評定ではミッテル・プリインターメディエーターの資格を得た後輩で、
闘争競技の実力も平均をやや上回る程度と評されるものの、劣勢から情熱一つで盛り返す粘りには定評がある。競技の場で対峙した折、スーラは夏属性の術に情熱を乗せた剣技を繰り出し、張り巡らせた壁を真正面から抜いてみせた。壁を抜かれた直後、カエデは間髪を入れて連撃に移り、後輩が次の構えを取る前に勝負を決めている。勝敗の後も、後輩が持ち出す奇策には冷めた目を向け、怒りの蓄積が極まると内なる精神ごと燃やし尽くすという奥の手の話を聞かされた際には、自滅の技だと一言で片付けた。
大和魂を掲げる転移者に師事して拳の型まで学び始めた後輩の近況も、カエデの耳には届いているが、感想は短い相槌で済まされた。
アリスとの出会いは、ユピトルと
アリス・インテンションの親善交流の場にさかのぼる。
転移者戦争を生き延びた経歴にカエデは敬意を抱き、人付き合いに迷った際には助言を仰いでいる。助言の中身は、部下との距離の測り方に及ぶ場合が多く、隊を預かる身になってからは相談の頻度も増えた。旧世界を失って
共立世界に渡った身の上は二人に共通し、転移直後の苦労を語り合える相手として、カエデが肩の力を抜いて話せる貴重な存在でもある。お返しに対人戦闘の手ほどきを申し出たカエデは、奇襲の初手から畳み掛けるまでの手順を実演してみせたものの、戦いの技は自分の性分の外にあるとの感想が返り、指南の申し出は空振りに終わった。二人が後にした旧世界は、情勢の成り立ちからして食い違っても、共立世界で育んだ友情は、互いに親友と呼べる間柄にまで深まっている。
界律の手から生まれ、身一つで過酷な世界に放り出された過去を持つルスタリエは、カエデに加護を授けた当人でもある。帝国に呼び出された理由を知る手立てを欠いていたカエデは、上位の存在に直接問い質す道を求め、原理の座に通じるとされる
クランナム・ステルの攻略に挑んだ。最奥で待っていたルスタリエは、上の都合で放り出された者同士の匂いをカエデに嗅ぎ取り、問いの答えの代わりに加護を手渡している。憐れみの言葉を何より嫌う原理は、同情を口にする代わりに力を渡す形を選び、選んだ側が別にいたことだけを短く仄めかした。真相の全容を伏せたまま置かれた一言は、カエデの口から
神の気まぐれを疑う言葉を引き出す種になった。カエデの側も、加護を施しとして受け取る扱いを嫌い、力を授けた原理とは対等な取引相手の距離を保っている。憐れみを嫌う者同士の間柄は、言葉少なのまま、塔の最奥で交わした短いやり取りの延長に続いている。
戦闘能力
駆動剣術
カエデの剣技は、転移を機に目覚めた電気の素養を
令咏術の上位属性である
雷属性で制御し、通電した刀身を電磁の力で振り抜く型を土台に据える。踏み込みの一歩にも同じ加速がかかるため、構えた相手が間合いを測り終える頃には、刃は既に懐まで届いている。雷属性の術式が備える転送の働きを斬撃に組み込み、振り下ろす途中で刀身の行き先を相手の死角に移す芸当も、実戦で繰り返し用いてきた。刃の合間に放つ雷撃は、量子ベクトルの操作によって弾丸を上回る速さで走り、相手の身のこなしを先読みしながら進路を曲げる。一瞬で深手を負わせる威力を目にした者からは、チートの類と誤解される場合も多い。戦い方は奇襲の連撃に寄っており、初手で崩した相手から立て直しの暇を奪ったまま、一気に畳み掛けて勝負を決める。反面、距離を保ったまま様子見を続ける相手には、初手の奇襲が空を切る場面も生じる。
術式制御
カエデは術式の制御にエンジニアとしての素養を持ち込み、雷属性に付きまとう感電の危険を、詠唱の組み立ての段階で摘み取っている。令咏術の発動には、周囲に浮かぶホログラムシートに詠唱で書き込み、別のシートを繋いで発動の頃合いを調える工程が伴う。頻繁に用いる術式を部品の単位で組み上げておき、戦況に応じて連結するだけで発動に至る手順を整えており、連撃の合間に挟まる詠唱は短く済む。守りの側では、雷のデフレクトで身の回りに壁を張り、正面から迫る攻撃を受け止める。壁の許容を上回る一撃が迫った場合、観測エフェクトで攻撃の実体を捉え、身をかわして間合いの外に逃れる。保安隊の職務では、雷撃の出力を落として相手の筋肉を一時的に麻痺させ、命を残したまま制圧する運用に切り替えている。
実戦
カエデが実戦で切り札とするのは、
クランナム・ステルの攻略を経て
巡繋原理から授かった加護で、追い詰められた局面を迎えると、一時的な覚醒状態に移る。覚醒の間は術式の出力と剣速が平時の水準を大きく上回るものの、発動の契機は局面の側に委ねられており、平時の戦術は加護を抜きにした形で組み立てる。短期の決着を前提にした戦い方の裏返しとして、戦闘が長引けば体力の消耗が重くのしかかり、相手との相性次第では守勢に回る局面も出てくる。学術決闘には下位の者に敗れた側が序列を譲る決まりがあり、最上位の称号を持つカエデのもとには、称号を狙う挑戦が次々と持ち込まれる。挑戦の大半は構えの直後に決着するため、観戦した者が実力の全容を掴む前に勝負が終わり、評価は割れたまま今に至る。
語録
「政治?興味ない。私より出来る人間がいるなら、いつでも譲るけど?必要に応じて必要なことをするだけだからね」
公務員としての意識を問われて。
「私の過去に触れた者は皆ころす。恋バナしてもころすし、詮索したらころすから」
学園報道部の質問攻めに遭って。
「なんでもないわよ。……なんでもないっつってんだ!!この野郎、やんのかこらっ!」
雑談中に赤面したことを指摘されて。なお、元カレの話題。
「そんなに気になるなら、カードゲームで勝負をしよう。勝ったら教えてあげるよ?」
過去の素性に関して食い下がる記者に。
「まがりなりにも隊の指揮を預かる、この私が良いと言っているんだ。誰にも文句は言わせない」
裁きを恐れる部下に。
「始末書は書く。書くけど、犯人を捕まえてからね」
管轄の外まで追跡した件を、上官に咎められて。
「序列が欲しいなら挑戦は受けるよ。ただ、構えた瞬間に終わってても文句は言わないで」
序列を狙う学生から、決闘を申し込まれて。
「褒めても何も出ないって。……出ないってば。ほら、報告書は今日中」
救出任務の後、部下に礼を言われて。
「グランド・マスター?肩書きで犯人が大人しくなるなら、名札にでかでかと書いとくけど」
称号を誇る気はあるのかと、記者に問われて。
「電気代?私に請求するのは筋違いでしょ。こっちは発電してる側なんだから」
詰所の経費削減を、会計担当に求められて。
「泣くのは後。今は走って。落ち着いたら、ちゃんと話は聞くから」
「屋台が残ってたのは褒めてあげる。値段が三倍なのは許さないけど」
帰郷した折、地元のたこ焼き屋台で。
「期待はしてない。だから、裏切られても別に困らない」
新任の部下に、抱負を聞かれて。
「元の世界の話?してもいいけど、コンビニの新作の話くらいしか出てこないよ」
転移前の世界の様子を、新入生に尋ねられて。
エピソード
- スフィア王宮に降り立った直後、カエデが謁見の間で最初に覚えた現地の言い回しは、命令の決まり文句であった。挨拶の言葉を覚える前から『命令』を口にする転移者の少女は、現地の住人たちにすっかり顔を覚えられ、やがて市場の一角で交渉の手伝いを頼まれる側に回った。
- ユピトルから留学の打診を初めて受けた日、カエデは話のうますぎる勧誘を詐欺と疑い、差し出された名刺を相手の手元に突き返した。翌日には学園の正式な書状が宿に届き、カエデは詫びの文面を考えながら、書状を手にしたまま宿の前を何度も往復した。
- 失われた旧大坂市の面影を探して、カエデはユピトルへ渡った後にアケノミヤ学区を訪ねた。見知った通りの名を残したまま、建物の一つ一つが入れ替わった街並みを前に、カエデは地図を握りしめて立ち尽くし、長い沈黙に沈んだ。見覚えのある看板を探して通りを歩き回るうちに日は傾き、帰りの便を一本見送った。
- 城東区で年老いた両親と兄弟に再会したカエデは、互いの無事を喜び合った。喜びの輪の中で、弟が自分の年齢を追い越していると知ると、カエデはかける言葉を探して目を泳がせた。再会の席の勘定は、年上になった弟が姉に代わって払い、カエデは礼を言う順番を最後まで決めかねた。
- 代表理事に就いた初日、カエデは学生理事会に上がってきた議題を片端から即決し、予定の刻限を大きく残して会議を散会させた。議事録を任された書記は、結論だけが一行ずつ並んだ記録を前に頭を抱え、翌週の会議からは、議題ごとに即決の理由を書き添える欄が設けられた。
- 保安隊の古い通信機をカエデが自ら改修したところ、受信の感度が上がり過ぎて、隣の詰所で交わされる雑談まで拾うようになった。雑談の中身は隊員たちの恋愛相談で、感度を戻す調整が終わるまでの間、カエデは夜勤の明けまで他人の色恋を延々と聞かされる羽目になった。
- 逃走車両を止めるためにカエデが放った雷撃は、狙いの車両と一緒に、交差点の信号機までまとめて沈黙させた。復旧の作業員が到着するまでの間、カエデは交差点の中央に立ち、手信号で車の流れをさばき続けた。翌日の報告書では、追跡の経過を記した欄の後ろに、交通整理の顛末が長々と続いた。
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最終更新:2026年09月26日 18:24