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エレイナ・フィルトヴァール

エレイナ・フィルトヴァール
作:ChatGPT @Freeton2の 元絵
生年月日 共立公暦978年5月12日
年齢 22歳(共立公暦1000年時点)
出生地 セトルラーム共立連邦
民族 ロフィルナ人
所属 ユピトル学園主権連合体
リンベルーク・アカデミア
学園社会党
階級 学生理事会代表理事
序列:G.M.
在任 共立公暦996年~
異名 逆鱗雷撃


概要

 エレイナ・フィルトヴァールは、ユピトル連合の学生理事会を率いる代表理事である。
セトルラーム共立連邦から渡ってきた留学生で、国を背負う切れ者の顔と、学園屈指の変態の顔を、一人の身体に同居させている。

自己紹介

 はじめまして。私が代表理事のエレイナ・フィルトヴァールです。面倒な話は抜きにして気楽にしてね。……さて、と、君も異世界からの転移者って聞いてるけど、状況はどこまで把握してるのかな?うーん、その様子だと殆ど何も知らされてなさそうだね。あ、大丈夫だよ、私がフォローするからね。とりあえず、学生として入学希望とのことだから、説明するけど、当面の生活費は心配しなくても大丈夫。今の君にできることは、これから勉強して、この世界でやっていけるだけの力を付けることだからね。……そう言われても、って感じだね。さっきも言ったけど、私がフォローするから安心して?質問、感想、意見など、なんでも受け付けるからね。気楽に聞いてね!……あ、それと、ひとつだけ聞いてもいい?君、人を叱るのって得意?論破とか、する方?……ううん、なんでもない。今のは忘れて。副官がすごい顔でこっち見てるから。

来歴

 エレイナの半生は、セトルラームの辺境コロニーから学園国家の頂点まで、ほぼ一直線に駆け上がった道のりである。生まれはテルスヴィン星区ヘルトラッド公国の2番コロニーで、幼年学校の頃から成績は群を抜いていた。政治家を志した原点は、幼い頃に連れて行かれた講演会で、壇上のヴァンス・フリートン大統領に心を撃ち抜かれたことにある。後に「天敵」と呼ぶことになる相手が、実は人生最初の推しだったわけで、本人はこの話を振られると全力で話題を逸らす。教師の勧めでルドラトリス大学付属の少年学校(中等学校に相当)へ進むと、在学中はさして目立たなかったものの、国際政治への関心だけは着実に育っていった。卒業の時点で留学に必要な試験を全て突破しており、渡航費用の免除を受けてリンベルーク大学の門をくぐっている。留学後は母国での成績を買われて風紀委員長に就き、続けて軍事委員長を務め上げ、十八歳という異例の若さで東雲楓の後任として代表理事に選ばれた。ラボラトリー相当の卒業資格を得た後も大学に籍を置き続け、学生理事会の統率を今日まで続けている。在任中の大仕事は、独立以来の武装中立路線を捨てて共立同盟への加盟を決めたことで、反発する党内の重鎮を一人残らず丸め込んだ。同じ期間に、副官の胃薬の消費量も右肩上がりを続けている。

人物

 国民の中には「政治を推し活感覚で語るな」と批判する者もおり、日夜激烈な圧力(誹謗中傷+α)が寄せられている。渦中の張本人は気にするどころか欲情し、大真面目で、副官いわく「もう諦めている」とのこと。


*1

気質

 普段のエレイナは、底抜けに明るく思いやりに満ちた人物として慕われている。人と打ち解けるのが得意で、説得の最終兵器として交渉の席へ投入される場面も珍しくない。緊急時には即座に状況を分析して決断を下す実行力があり、滅多なことでは動じないため、完璧人間と誤解されがちである。本人いわく、重度の寂しがり屋で、人と過ごしている方が安心できるという。本当か?「情けない父親」の姿を見て育った反動からか、自ら渦中に飛び込む癖があり、多くの友人をやきもきさせてきた。外交の席では諸外国の首脳を相手に毅然とした態度を貫き、天敵とされる連邦大統領の圧力に対しても、慎重に言葉を選んで*2再考を求める粘り強さを見せる。性格の芯には、生まれ育ったセトルラームの流儀、すなわち実績で人を測り、約束は必ず契約で固める習いが据わっている。部下への頼み事から焼きそばパンの貸し借りに至るまで、エレイナは全てを書面に落とす。困ったことに、この几帳面さは「自分を叱っていい権利」にまで及んでおり、罵倒の語彙や強さの等級を定めた契約書が、執務室の引き出しに何通も眠っている。

性癖

 問題はそこから先にある。自分が説得上手である反面、誰かに説得されたり怒られたりすると分からせプレイモードに突入し、興奮し始める謎の性癖を抱えている。それも、反論できなくなればなるほど感じてしまう質の悪いやつで、誰にも理解されない奇行として報じられた。過去に経験した特別な出来事が関係しているらしいのだが、本人が多くを語らないため、真相は謎のベールに包まれたままである。逆に誰かを説き伏せた場合も、成し遂げた気分で高揚してしまう。攻めても受けても昂るのだから、もはや隙がない。厄介なのは、発動の引き金が政治の現場に山ほど転がっていることである。予算の差し戻し、野党の追及、外国首脳の恫喝と、代表理事の職務は叱責と反論の連続で、本人にとっては毎日がご褒美の詰め合わせになっている。重要な交渉の前には、副官が相手国の発言予定を洗い出し、エレイナが昂りそうな言い回しに赤線を引いた資料を手渡すのが恒例となった。本人はその資料を「予習用」と称して熱心に読み込んでおり、対策としての効果は疑わしい。就任時点で、この世の終わりのような人生哲学を得て久しく、全てが手遅れであることを周辺に悟らせた(副官の談)。

『好みのタイプですか❓️そうですねぇ~……筋肉ムキムキマッチョマンで、厳しくて、土方っぽくて、汚いけど、圧倒的な包容力と人生経験を感じさせる。そんな素敵なおじさんが好きですね。それでいて髭面だったりすると言う事なしかな。きゃー!言っちゃった言っちゃった~』

……赤面顔を両手で覆いウネウネし始めるなど。

遊理部問題

 遊理部との縁は、部の設立申請にまで遡る。通常なら風紀委員会の段階で却下されるはずの申請が通ったのは、部長スーラの謎の将来性に当代代表たるエレイナが昂ったためで、アケノミヤ市長の気まぐれな支持表明も後押しとなった。下々への説明を厭うた時の風紀委員長が、学生理事会の許可を得る形で合意に至ったというから、生みの親の一人と言っても差し支えない。以来、部長からは事あるごとに勧誘を受けており、本人も入部届を自作するほどノリノリである。正規怪人への昇格条件が「部長を十分に楽しませること」と聞いた際には、就任演説よりも熱のこもった自己推薦文を書き上げた。しかし、風紀委員会は学生理事会の隷下にあり、懲罰独居房の常連を部長に戴く集団へ国家元首が籍を置けば、監督する側とされる側が一人の身体に同居してしまう。入部の話が持ち上がるたびに副官が割って入り、エレイナの怪人番号は今日に至るまで空欄のままである。部員の側でも、代表理事の出入りを歓迎する派と、風紀委員会の巡回が倍に増えることを恐れる派に割れている。

人間関係

 少年学校時代に令咏魔術分野を教わった恩師。良識人として知られるメレザから社会通念の何たるかを叩き込まれたはずだが、副官は首を傾げる。「どうしてそうなった」と。術の面では、四属性のシートを淀みなく繋ぐ基礎を徹底して仕込まれており、大勢を相手取る際の高速詠唱は、この時期の反復練習の賜物である。現在の二人は、共立機構の議長と加盟国の元首という公の間柄にあり、公式の会議ではエレイナも模範的な代表理事として振る舞う。その反動か、私的な茶会では気が緩むらしく、今のメレザがエレイナの政治活動をどう評価しているかは横に置くとして、腐れ縁は途切れず続いている。あらゆる事件に苦悩するメレザに、変質者の処し方を助言したこともある。一方、恋人()のパルノスをメレザが生理的に受け付けないため、茶会の席で恋愛の話題は禁句となった。議長職の重圧に胃を痛める恩師へ、エレイナは差し入れと称して自国の案件を持ち込んでは、茶会の空気を凍らせている。

 14歳の頃、魔を騙って暴れ回っていたエレイナに仕置きを与えた張本人。強さの何たるかを教わった尊敬の対象である。当人はメレザと契約を結んだ身で、主の許可なく牙城を出られないため、エレイナは恩師の屋敷を訪ねるたびに課題を託し、報告に現れた当人を待ち構える段取りを組んでいる。課題を突きつけては完全論破され、魂ごと痺れる悦びに浸るのが恒例で、当人の側では、あくまで健全な問答の範疇に留めているつもりらしい。困ったことに、この男は挑戦者の力量に合わせて力を加減する主義を貫いており、受けた攻撃を撃ち返すエレイナの戦法とは相性が悪い。どれだけ挑発しても本気の一撃をもらえず、手加減された分だけ反撃の元手も目減りしていく。本人にとっては、論戦で完敗し、実戦で焦らされる、二重の意味で理想の相手と言える。

「あなたが関わっている、その人物、ガチもんのヤバい存在ですよ……」(とある先輩の談)

 論理や法律の次元を越え、気合と根性だけで全てを吹き飛ばすコックスおじさんの生き様に痺れ、自ら弟子入りを願い出た。ロフィルナ流の盃にあたるグラスを授けられかけたところで、副官が全力で制止している。呼び名にもうるさい相手で、初対面の折に「コックスおじさんと呼べ」と命じられたエレイナは、その場で三回復唱して満足げに頷いた。説き伏せにかかっても「俺に説教していいのはアリウスの姉貴だけだ」と突っぱねられ、エレイナは、それすらも嬉しいらしい。拳を交えた経験もあり、量子防壁ごと殴り抜ける波動の拳を受けた際には、思わず本気の悲鳴を上げている。受けた威力を撃ち返そうにも、変異した肉体は打たれるほど若返るため、利子付きの返済が相手の健康増進に消えていく。国同士の関係は決して良好とは言えず、公の交渉では副官が矢面に立つことも多いが、私的な敬愛だけは一貫して揺らいでいない。

 共立公暦996年、メレザ主催の私的な茶会で知り合った。尊大な態度を取られた際に、生物音響学的な意味で分からせたのが親睦のきっかけとなり、以後は対等な関係に落ち着いている。二人を結ぶ最大の共通項は、意外にもヴァンス・フリートンである。トローネにとっては季節の贈り物を交わす気の合うおじさんで、選挙のたびに得票率をからかう相手でもある。茶会では、トローネが大統領への嫌がらせの手口を披露し、エレイナが嫌がらせを受ける側の心境を熱っぽく想像しながら聞き入るという、噛み合っているのかいないのか分からない会話が延々と続く。恋人のパルノスが帝国への入国を拒まれている件についても、エレイナは一度だけ陳情を試み、笑顔のまま却下されている。国同士の関係はさておき、個人的には気持ちの良い話相手で、顔を合わせるたびに口論の勝ち負けを数え合っている。どんな関係ですか?(副官の談)

 前任の代表理事で、大学の先輩にあたる。基本的には何でも話せる仲で、在任中から互いにフォローし合ってきたものの、帝国を巡る立場だけは大きく隔たっている。対外穏健派として帝国とも付き合いを重ねるエレイナの傍らで、召喚の一件を拉致と言い切る楓は、帝国の名が出るだけで表情を消す。トローネ皇帝との茶会の土産話を始めた途端、楓の相槌は途切れ、話は職務の用件に引き戻される。叱責なら喜んで受け取るエレイナも、黙って流される扱いだけは持て余しており、先輩の前では茶会の話題を控える癖がついた。転移者を迎える案内役も楓から引き継いだ仕事の一つで、新入生に向けた口上には、先輩の言い回しがところどころ残っている。雷使い同士でもあり、術の話になると二人の話はいつまでも続く。もっとも、戦い方は正反対である。奇襲の連撃で短期決着を好む楓が相手では、殴られてから本番を迎えるエレイナの反撃の元手が溜まる前に、勝負が終わってしまう。エレイナの側は「もっとゆっくり殴って」と注文を付け、楓の側は聞き流す。卒業後の楓はアケノミヤで保安隊の指揮を執っており、今も時折、職務の相談を持ち込む。恋愛の話題を何より嫌う楓にとって、エレイナの色恋沙汰を聞かされる時間は最大の苦行であり、話が恋人の数に及んだ時点で通信が切られるのが常である。

 現アケノミヤ市長で、一年生時代の恩師。楓にとっても恩師にあたり、歴代の代表理事二人を育てた格好になる。豊富な政治経験から、隣国の大統領を相手に交渉できる数少ない理解者の一人であり、エレイナは会談の前夜に電話で相談を持ちかけることがある。時折、酒を飲み交わす仲でもあるが、席ではエレイナが政治の愚痴をこぼし、金坂が空中都市計画の夢を語り、互いに相手の話を半分も聞いていない。学園総務として市政を預かる金坂からは、突拍子もない開発計画が学生理事会へ次々と上がってくる。副官が頭を抱える案件ほどエレイナは面白がって読み込み、実現性の低い箇所を容赦なく指摘する。論破された金坂が「ほな作り直してきますわ」と笑って引き下がるたびに、エレイナは少しだけ羨ましそうな顔をする。

 連合体首相。大人たちの投票で選ばれ、代表理事の職務を支えつつ、必要とあらば牽制する立場にある。かつて楓を代表理事候補に抜擢した人物でもあり、エレイナは前任から首相との関係ごと引き継いだ形になる。実務の相性は抜群で、代表理事が方針を示し、首相が議会と予算を整える分担は、学園社会党政権の屋台骨となっている。ところが、首相が本来の職責どおり苦言を呈すれば呈するほど、代表理事の機嫌が良くなるという構造上の欠陥を抱えている。牽制役が牽制するたびに相手が元気になるのでは、制度の設計者も想定していなかったに違いない。首相の側は、エレイナを叱らずに軌道修正させる話法の開発に追われており、疑問形と感謝の言葉だけで方針転換を促す技術は、首相府の職員の間で密かに研究対象となっている。

 国の最高峰を煽り散らかし、分からせの洗礼を浴びた数少ない後輩。懲りずに煽り続ける根性をエレイナはいたく気に入っており、煽られるたびに律儀に昂っている。スーラにとっては、これが誤算だった。普段の標的は顔を赤くして怒るか、呆れて相手にしなくなるかのどちらかで、煽るほど嬉しそうに身を乗り出してくる相手は初めてだったのである。以来、煽りの切れ味を試す実験台として重宝する一方、どれだけ攻めても喜ばれるばかりで勝った気がしないと、部室でぼやいている。幼い頃にメレザに救われた過去を持つ点でも二人には縁があり、恩師の話題になると珍しく揃って大人しくなる。遊理部への勧誘が最もしつこい相手でもあり、エレイナも毎回、目を輝かせて話に乗るため、副官にとっては最も警戒すべき後輩として名簿の先頭に記されている。

 天敵の実の娘。同じ年にユピトルへ渡ってきた縁がある。親の名前で紹介されることを嫌うシーナに対し、エレイナは顔を合わせるたびに「Fおじの」と言いかけて飲み込んでいる。飲み込めなかった回数については、シーナの側が記録をつけているらしい。二人の間には妙な共通点もあり、約束を必ず書面に残す習慣は、同じセトルラーム育ちの流儀として揃っている。シーナが権力の腐敗を撃つ歌を書いていると知ったエレイナは、国家元首として真っ先に撃たれる候補に名乗りを上げ、自分を題材にした曲の制作を正式な依頼書で申し込んだ。依頼書は封も切られずに返送されたが、エレイナは返送の速さそのものを脈ありと解釈している。雷属性の使い手同士でもあり、術理の話であれば、シーナも短時間だけ付き合う。

 シャンルリ王国の首相でありながら、ユピトルに学籍を置く学生。序列ではG.M.とM.F.、国の格では首脳同士という食い違いから、学内で出くわすと、どちらの礼式で挨拶すべきか毎回二人で固まる。授業の合間に本国の決裁を回すヨークと、講義の合間に学生理事会の書類を捌くエレイナは、学業と国政の二足の草鞋を履く者同士で、休み時間の廊下は即席の愚痴の交換所と化している。ヨークが「一国の長が十六の子らに混じって座る」しんどさを語れば、エレイナは「一国の長が叱ってもらえない」寂しさで返し、話は毎回どこにも着地しない。遊理部の正規怪人でもあり、番号を持たないエレイナが最も羨ましがっている相手である。部長に腹を撫でられながら書類にサインさせられる話を聞いた際には、心底から羨ましがってヨークを困惑させた。

 雷属性を学ぶ軍服姿の受講生。感電の痺れを「気合が足りん証拠」と受け止める兵一郎と、「ご褒美」と受け止めるエレイナとで、解釈は正反対ながら、痺れを恐れない一点で意気投合した。元軍事委員長のエレイナに対し、兵一郎は上官への礼を崩さず、廊下ですれ違うたびに踵を揃えて敬礼する。エレイナの側は、せっかくの軍人なのだから軍隊式に怒鳴りつけてほしいと再三頼み込んでいるが、「婦女子を怒鳴りつけるは軍人の恥」との一点張りで、願いは一度も叶っていない。代わりに渡されたのは、軍人勅諭を墨書した半紙で、エレイナはこれを執務室の壁に貼り、叱られた気分に浸る材料にしている。風紀委員会の巡回に目を付けられている点も共通しており、軍服を見るたびに足を速める委員たちは、代表理事の敬礼返しを見て毎回判断に迷うことになった。

 人の内心を読むのが得意な後輩。初対面で性癖を一目で見抜かれており、以後のセラニーヤは副官の同盟者として立ち回っている。会議の場でエレイナが平静を装っていても、昂りの兆しは仕草の端々に出るらしく、セラニーヤは同席するたびに副官へ目配せで警報を送る。遊理部の止め役を自任するだけあって、代表理事の入部騒ぎが持ち上がった際にも、部長を宥める側に回った。心理学を学ぶ身として、エレイナは格好の観察対象でもあり、聞き取りの席では感情の揺れた場面を細かく書き留めている。本人は研究に協力できるのが嬉しいらしく、進んで叱られた時の心境を語るのだが、記録が増えるほどセラニーヤの眉間の皺も深くなっていく。差し入れのお菓子は形が面白いことで知られており、エレイナに渡される分だけは、なぜか毎回やたらと落ち着いた形に整えられている。

 遊理部の副部長。一度だけ愛読書を尋ねたことがあるが、返ってきた答えを聞いて以降、エレイナからの質問は途絶えた。叱られても罵られても昂る代表理事にとって、シレヴィの穏やかな物腰の奥にある静けさは、唯一まともに効いてしまう種類の圧である。怒鳴られるのは歓迎でも、にこやかに刃物の銘を紹介されると素直に背筋が伸びるらしく、本人も理由を説明できずにいる。副官にとっては思わぬ発見で、エレイナの暴走を止める切り札として、副部長の名前を口にするだけの手を何度か使った。シレヴィの側に悪意は一切なく、むしろ部長の破天荒ぶりに悩む者同士、代表理事の苦労には同情的である。序列の最下層から這い上がった経歴を持つシレヴィの話を、エレイナは政策の参考として聞きたがっているが、面と向かうと背筋が伸びたまま言葉が出ず、話は毎回挨拶で終わっている。

 恋人兼愛人?執務中に謎の空を飛び歩く潜水艦で凸され、わけのわからない愛の告白を受けてときめいてしまった。以後は恋人3号として迎えられ、艦内では通信係を務めている。常駐しているわけではなく、必要な時に簀巻きにされてユピトルから連れ出される。国家元首が定期的に拉致される事態を受け、副官は代表理事の不在時に備えた職務代行の手順書を独自に作り上げた。手順書の第一項は「本人を探さない」である。簀巻きの状態でも公務の連絡には応じるため、閣議の最中に潜水艦(パルニウム水+α)の機関音が通信へ混じることもある。こういう類のイカれたおっさんが好きらしい。守備範囲広すぎやろ(副官の談)。パルノスの側は、執務室へ凸するたびに恩師メレザの警戒網を気にしており、屋敷の周辺だけは大きく迂回する航路を取っている。

K160リヴォリャーツィヤ
 恋人仲間にして、特殊な潜水艦(特異収集局案件)の家主。本人からは「エレやん」と勝手に呼ばれている。艦内では攻撃手のリャーリャと通信係のエレイナが隣り合う配置で、敵艦への挨拶と称した変質ミサイルの発射と、発射直後の各国への弁明通信が、ほぼ同時に始まるのが恒例となった。一国の元首が弁明を担当する以上、通信の文面は無駄に外交文書の体裁が整っており、受け取った側の混乱に拍車をかけている。事あるごとにいけない話題をふっかけるのはエレイナの方だが、リャーリャは「体育会系のノリっスね!」と明るく受け流すため、話はいつもどこかへ流れていく。パルノスを巡って二人が張り合うことはなく、悲しみに暮れた家主がウォッカを呷り始めた際には、エレイナが隣で相槌を打つのが習いになった。

 恋人兼百合仲間にして、一線を越えた仲。メレザの屋敷で顔を合わせることが多く、変な意見をぶつけ合っては、分からせたり分からせられたりの地獄プレイに花を咲かせているのだとか(副官の談)。人の嘘を見抜くのが得意なキユラの前では、エレイナも昂りを隠しようがなく、隠す気もないため、二人の会話は異様なほど率直に進む。過去の大罪と同一視されることを何より嫌うキユラに対し、エレイナは旧暦の話題を一切持ち出さず、今のキユラとだけ向き合っている。一方で、エレイナが崇拝するゴールバドは、キユラにとって許しがたい存在でもあり、屋敷では二人の間に暗黙の禁句が一つ設けられた。エレイナがうっかり尊敬の念を口にしかけた日には、キユラの周囲のホログラムが一斉に乱れ、その日の地獄プレイは普段より数段激しくなったという。

戦闘能力

 エレイナの戦い方は、令咏術の基本四属性に上位属性の雷(ライトニング・スクリプト)を重ねた、序列最上位らしい理詰めの反撃型である。要するに、殴られてからが本番。雷のデフレクトで受け止めた攻撃を、素粒子のトンネル効果で内側へ透過させ、相手の一撃そのものを媒介エネルギーとして取り込んで撃ち返す。受けた攻撃が強ければ強いほど返す一撃も重くなるため、全力で挑んだ相手ほど酷い目に遭う。受け流した弾体を雷の転送で相手の背後へ送り返す芸当もこなし、正面の防御を固めた相手が後頭部から自分の弾を食らう光景は、学内の闘争競技ではもはや見慣れたものになった。主な技は三つで、いずれも名前がふざけている。利子付き返済(トンネル・リバーサル)は、取り込んだエネルギーに自前の雷を上乗せして返す基本の反撃で、利率は本人の気分で決まる。お説教受付中(デフレクト・オープン)は、構えを解いて相手の全攻撃を招き入れる誘い技で、傍目には無防備に殴られているようにしか見えない。全額分からせ放電は、それまでに溜め込んだ分を一度に解き放つ締めの一撃で、使った後の本人は大抵、恍惚とした顔で膝をついている。

 代償も相応に重い。事象のベクトルを操るたびに大量の情報が頭へ流れ込み、常人なら気絶しかねない苦痛に苛まれる。ところが、エレイナの場合は痛めば痛むほど演算が冴え渡るという困った体質で、性癖と戦闘能力が最悪の形で噛み合っている。副官は試合の観戦を頑なに拒んでいる。弱点も、融通の効かなさに尽きる。一度に大勢を相手取る場面では雷を温存せざるを得ず、基本四属性のホログラムシートを繋いだ高速詠唱で凌ぐことになる。冬のシールドと雷のデフレクトは同時に扱えないため、切り替えの隙を詠唱の速さで潰すのが腕の見せどころで、この芸当ができる点がG.M.たる所以とされる。もっと厄介なのは、撃ってこない相手である。攻撃を受けなければ反撃の元手が溜まらないため、様子見に徹する持久戦にはめっぽう弱い。本人曰く「焦らしが一番効く」。加えて、学術決闘では下位の相手に負けると序列を譲る決まりがあるため、論破されたくても負けられないという、本人にとっては拷問に近い制約まで背負っている。

 闘争競技では、過ぎた悪戯娘の挑発を正面から受け止め、溜まった分を利子付きで返済して全てを分からせた。
*3

語録

「大丈夫。責任は全て私が取るし、あなたに迷惑はかけないから。安心して言われたことを実行してね」
 共立同盟への加盟に反発する党内重役に。独立の精神を問われる決断で、過去数世紀にわたる武装中立路線を転換させた。

「私の焼きそばパンを食べたのは誰?今なら厳重注意で許してあげるから正直に申し出なさい!」
 楽しみにしていた昼食を盗まれ、学生理事会の執務室から全学放送で。名乗り出た犯人は、そのまま購買へ走らされた。

「ありがとう。……えーっと、なになに、今度のお願いは無茶振りなやつでないことを祈るけどぉ?」
 帝国政府の「要請」に。副官いわく、「絶対、無茶振り期待してるだろ」

「ウォールムレジスタンスねぇ……ロッフィーじゃあるまいし、何とかしたいところだけども」
 ウォールム校に対する隔離政策について。副官いわく、「ロッフィー呼ばわりやめろ」

「説得、確認、成立と、やることが多いね。それにまたFおじと会談するの?うーん、たのしみー!w」
 山積する問題や天敵との交渉にあたって、良からぬ期待をしており。普通に怒られました。副官いわく、「Fおじ言うな」。

「どうしよう?あたし、色々合意しちゃうかも……」
 ロフィルナ王国との外交交渉において、鼻息が荒く。……全てを察したエレイナの副官は自ら公の戦場へと赴き、Bの大宰相を相手に代理(修羅)の役目を果たした。

「さすが大宰相と言うべきか……色々極めてるし、つか、極道そのものだよね。……やばい、ちょっと興奮してきた。今からイッていいですか❓」
 あまりよろしくない国同士の関係は横に置いておくとしても、コックスおじさんへの憧れが抑えられない様子。そして吐息が荒い。副官いわく、「だめに決まってんだろ」()

「私をこんなふうにしたのはあなたでしょう?こんな体にしておいて。ひどいです。傷つきました……」
 私的な課題を突っぱねたゴールバドに。レクネール議長の御前で、完全に誤解を招く発言。副官が火消しに追われた。

「ああもうっ……なっさけないなぁ!このいくじなし!けだもの!変態!童貞!なに泣いてんのさ!」
 普段はセクハラ発言満載だけど、いざという時の軽いキッスしかできなかった純朴変態おじさんに。副官いわく、「なんだその関係」。

「指導者たるもの、炎上して然るべきでしょ?あなたはフリー素材になるべき人間。分かりましたね?」
 諸々の事後処理に追われて泣き言を漏らすセ連邦のゾレイモス首相に。普通にキレられました。

「国際外交は性癖です。我が国として、どの政策を推すべきか?あなた達一人一人の投票にかかっていますっ!」
 学園を揺るがす伝説の迷言となり、エレイナに対する皆の印象を後戻りできないところまで確定させた。副官いわく、「もうだめだこの人」。

「議題その一、国家予算。議題その二、私への罵倒。議題その二から始めます。異論は罵倒の形で受け付けます」
 定例の学生理事会にて。議長席から開会を宣言した。副官が議事次第を物理的に差し替えた。

「遊理部入れて!No.51号!番号が無理なら負の数でもいい!マイナス一号でも虚数号でもいい!代表理事?辞める辞める、二秒で辞める!」
 勧誘に来たスーラに、机の上へ乗り上げて。副官の手で入部届と辞表が同時にシュレッダーへ送られた。

「首相、今の叱責、録音していいですか?寝る前に聴くので。あ、BGMは要りません。首相の声だけで十分です」
 予算案の不備を指摘しに来たレベラソール首相に。翌日から、首相の指摘は全て無記名の書面で届くようになった。

「痛い痛い痛い!情報が!ベクトルが!脳に直接入ってくる!……最高。もっと撃って。全部返すから。利子は私の気分で決めるけど」
 闘争競技にて、相手の最大火力をまともに受けて。対戦相手は勝敗が決する前に泣きながら棄権した。

「構えよ(オン・ガード)!さあ論破して!今!私を!木っ端微塵に!……え、負けたら序列が下がる?じゃあ私が負けたらあなたがG.M.ね。おめでとう。代表理事も譲るね。私はあなたの椅子になるから」
 学術決闘の最中、下級生の反論に身悶えしながら。高天原が判定を無期限保留にした。

「Fおじ~!今日の圧、ちょっと弱くない?もっと国家規模で潰しに来てよ!こっちは小国なんだからさ、全力で踏まれないと失礼でしょ!」
 ヴァンス・フリートン大統領との首脳会談の冒頭で。副官が通すのを拒否した。

「シーナさん!お父様のサングラス、一日だけ借りられない?かけて寝たい。……じゃなくて、外交上の研究資料として!」
 廊下ですれ違ったシーナ・フリートンに。以後、シーナは廊下の反対側を歩くようになった。

「キサラム首相、首脳会談しよ❤……議題は国交、場所は部室、ドレスコードは腹出し。スーラちゃんが撫でる係ね」
 ヨーク・キサラムに。シャンルリ王国側の随行員が即座に帰国の準備を始めた。

「契約書持ってきたよ!私を論破していい権利、全三十七条!第十二条、罵倒の語彙は三種以上!第二十条、途中で優しくしたら違約金!第三十七条、この契約書自体を論破しても可!」
 決闘を申し込んできた下級生に。下級生は条文を読み切れず、その場で決闘を取り下げた。

「この国の未来は明るいです!なぜなら私が暗いから!明暗の収支は取れている!以上、所信表明を終わります!」
 就任演説の締め括りに。原稿には一行も書かれていなかった。

「負けるのは大好き。叱られるのも踏まれるのも大好き。でもね、この国を負けさせる奴だけは許さない。……はい、じゃあ三十分で全委員会動かして。遅れた人は後で私が褒めます。ねっとりと」
 有事の緊急閣議にて。三十分後、全委員会の対応策が出揃っていた。遅れた委員は一人もいなかった。

エピソード

学園生活

  • 14歳で中二病を発症した折、自作の角と四十頁に及ぶ名乗りの口上を携えて魔王を騙り、夜ごと暴れ回っていた。口上の途中で本物に出くわし、四十頁の全てを朗読し終えるまで黙って待たれたうえで、酷い仕打ちを受けた。自作の角は没収されたまま戻らず、今も相手の手元にあるのかを確かめる勇気は本人にない。
  • 軍事委員長時代、学徒防衛隊が平和維持軍へ挑戦状を叩きつける恒例の行事で、文面の起草を自ら買って出た。全力で叩き潰してほしい旨の要望書は本文より長くなり、最終的には索引付きの別冊として綴じられた。平和維持軍からは試合の受諾と、別冊の誤字を赤字で指摘した添削済みの一冊が返送され、エレイナは赤字の箇所を一晩かけて読み返した。
  • 新しく迎えた転移者の学生が、廊下で上級生の不良たちに絡まれている場面に、案内役として居合わせた。エレイナは不良たちの言い分を一人ずつ復唱させたうえで、互いの言い分が食い違う点を順番に突き、最後には不良同士が口論を始めて、絡まれた側を置き去りにした。十分後、仲違いを収めてほしいと不良たちの側から頭を下げに来たため、エレイナは仲裁の条件として、転移者の学生の荷物持ちを一週間務めさせた。
  • アケノミヤの路上で壺を売りつけてきた占い師に、エレイナは相手の話術を一つずつ実演付きで解説し返し、そのまま占い師の生い立ちから今朝の朝食までを当ててみせた。当てるたびに声を弾ませる代表理事の前で占い師は泣き崩れ、壺の代金を逆に支払って店を畳んだ。エレイナは受け取った代金でその壺を買い取り、分からせた記念の品として執務室の棚に飾っている。
  • 修了論文の口頭審査で、主査の教授が理論の根幹に異議を唱え、審査室の空気は一時凍りついた。エレイナは教授自身の著書の脚注から反証を拾い上げ、異議が著書の第三章と両立しない筋道を黒板一面に図解した。審査は合格で終わり、翌年に改訂された教授の著書では、第三章が差し替えられ、謝辞の欄に元審査対象者の名前が加わっていた。
  • 学内討論大会の決勝で、三連覇を狙う討論部の主将が、代表理事の政策を題材に選んで挑んできた。エレイナは主将の論点を開始十分で全て認めたうえで、認めた論点を積み上げると主将自身の結論が成り立たなくなる筋道を示し、残りの時間を主将の沈黙に充てさせた。討論部は翌月から代表理事との対戦記録を練習の題材に採用し、部員の間では、最初に全部認められたら負け、が合言葉になった。
  • 母校の少年学校へ講演に招かれた際、在学時代の素行を校長に叱ってもらう時間を講演枠の中に設けさせた。ところが保存されていた当時の記録は、目立たない模範生の評価で埋め尽くされており、校長は叱る材料を探して壇上で書類をめくり続けた。講演の時間は書類の捜索だけで尽き、エレイナは表彰状を一枚持たされて帰途についた。

政務

  • 代表理事選挙の公開討論会で、自分の弱点を網羅した資料を対立候補へ事前に配り、存分に叩いてほしいと頭を下げた。対立候補は罠を疑って一言も批判できず、討論は両者が互いを褒め合う形で終わった。その様子に好感を持った各学区の選挙人団の票が雪崩を打ち、エレイナは大差で当選したが、当選証書を受け取る顔は終始不満げだった。
  • 風紀委員会に配属されたばかりの新人が、代表理事の上着の着崩しを服装規定の違反として執務室まで指摘しに来た。エレイナは当該条文の起草経緯を議事録の頁番号付きで読み上げ、条文の不備を七箇所挙げたうえで、新人自身の制服が改正前の規定に基づく型であることまで指摘した。新人はその場で規定の改正案を書き上げて提出し、エレイナは論破の余韻で頬を染めたまま、起案者の欄に新人の名前を書き添えた。
  • 学園の設備更新を巡り、星間企業の営業担当が、保守費用を割高に積んだ契約書を学生理事会へ持ち込んだ。エレイナは細則の文言を一語ずつ読み解き、保守費用の算定式が企業側の公開資料と食い違う箇所を、担当者の目の前で計算し直してみせた。担当者は本社に電話をかけて算定式の誤りを認め、帰り際には代表理事の計算用紙を社内研修に使わせてほしいと申し出た。
  • 予算の増額を求めて執務室を包囲した運動部連合に、エレイナは満額回答を即答し、その場で各部の主将に翌期の成果目標を自筆で書かせ、書いた数字を本人の口で三回復唱させた。期末、未達の部の主将は一人ずつ執務室に呼ばれ、自分の書いた目標を自分の声で読み上げる録音を延々と聞かされ、エレイナはその横で頬を上気させながら深く頷き続けた。翌年の予算要求書は、全ての部が自主的に前年の半額で提出してきた。
  • 購買の納入業者と結託して部費を掠めた委員を聴取した際、エレイナは一言も責めず、手口の見事さを褒めちぎりながら細部の質問を重ねた。得意になった委員が帳簿の偽装から隠し口座の暗証番号まで嬉々として解説し終えたところで、エレイナは全ての発言が全学放送で流れていたことを告げ、委員の顔から血の気が引いていく様を見届けながら、椅子の上で静かに身悶えした。調書の作成係は、放送の書き起こしに署名欄を付け足すだけで仕事を終えた。
  • 連合議会の答弁で、野党が追及を一切控えて代表理事を干上がらせる作戦に出た。耐えかねたエレイナは答弁席を降りて野党席の空いた椅子に座り、自らの政策の矛盾を三十分にわたって追及し、答弁席に戻って自分への反論を始めたところで議長に退場を命じられた。野党は作戦成功と沸いたものの、翌週の答弁では代表理事が退場を狙って初手から野党席に座っており、議長は開会の宣言より先に退場を命じる羽目になった。
  • 就任一年目、執務室に脅迫状が届いた。エレイナが語彙の選び方と罵倒の順序を絶賛する返信を送り、続編の執筆まで依頼したところ、差出人は二通目を書く代わりに風紀委員会へ自首してきた。取り調べの調書の動機の欄には、返事が怖かった、の一行だけが記された。
  • 学園祭で代表理事を叱れる屋台を出店し、叱責の語気が強いほど料金が安くなる料金表を掲げた。怒鳴るほど安くなる仕組みが評判を呼び、行列の最後尾には、喉を傷めた客に飲み物を売る屋台が勝手に店を出した。収益は学生理事会の年間交際費を上回り、翌年の実行委員会は出店規約に代表理事の出店を禁じる一条を加えた。
  • 休暇を三年分溜め込んだ副官に、エレイナは休まなかった場合の業務損失を試算した資料を突きつけた。資料は副官が過去に口にした全ての言い逃れを一件ずつ潰す構成で、最終頁には副官がこれから言いそうな言い訳を一字一句当てた一覧まで綴じられており、頁をめくるたびに言葉を失う副官の横で、代表理事の鼻息は荒くなる一方だった。休暇届への署名が済んだ瞬間、副官より先にエレイナが達成感で机に突っ伏していた。
  • 副官が初めて取った三日間の休暇の間、エレイナを止める者は一人もいなかった。休暇明けの副官が恐る恐る執務室を開けると、懸案の決裁三十件が非の打ち所のない形で処理されており、問題は代表理事が三日間なにも食べていなかったことだけだった。副官は以後、休暇の申請書に、自分の代理として食事の配膳係を指名する欄を書き加えた。

外交

  • 若くして隣国の大統領との首脳会談に臨んだ際、交渉は韻を踏んだ応酬の外交ラップバトルへ転がり込み、エレイナは全ての小節で言い負かされた。負けるたびに顔色が良くなり、会談が終わる頃には本人だけが肌艶を増していた。連邦側の記録官は議事録を韻の配置ごと書き起こす羽目になり、共同声明の草案にはなぜか小節線が引かれていた。
  • 天敵との会談を終えたフリートン大統領は、帰りの車中で側近に向かい、あの娘は末恐ろしい、ALIUSと張り合える狂気かもしれないと漏らした。以後の会談には必ず首相を同席させるようになったが、エレイナは同席者が一人増えた分だけ圧も増えると解釈した。会談の前夜は興奮で寝付けなくなり、副官が子守唄代わりに予算書を読み聞かせている。
  • 連邦系の通信社の記者が、定例会見で代表理事の失言を引き出そうと誘導尋問を重ねた。エレイナは質問の一つずつに、当の記者が過去に書いた記事の矛盾を日付順に突き合わせる形で答え、会見の後半は記者の側が自分の記事を弁明する時間になった。通信社は翌朝の紙面に訂正記事を三本掲載し、エレイナは切り抜いた三本を執務室の机に並べて、朝から上機嫌だった。
  • カードゲームで先輩を負かした隣国の首相へ、仇討ちの決闘状を外交文書の体裁で送りつけた。普通に断られたものの、エレイナは断りの書簡を一行ずつ吟味して叱責の成分を抽出し、抽出結果を学生理事会の議事録に添付した。連邦の首相府からは翌月以降、定型文のみで組まれた返信しか届かなくなった。
  • 帝国官房に性癖の迫真部分を記録した映像を握られ、外交の席で脅しの材料に使われた。脅された瞬間に性癖が発動したエレイナは、映像の高画質版と撮影者の演出意図を書面で請求し、帝国側の担当官が自ら資料を引っ込めた。残りの協議は副官が一人で片付けた。
  • セトルラームを公式訪問した折、大統領の専属医の診療所へ私的な健康診断を予約し、口の悪い問診を三時間にわたって堪能した。医師の側は罵声のたびに患者の脈拍が上がることに気づき、途中から丁寧語に切り替えたため、エレイナは診察の後半を無言で耐え抜く羽目になった。持ち帰った診断書は、所見欄の敬語を一語ずつエレイナ自身の手で赤く囲んだ状態で、学生理事会に提出された。
  • とある星間会合で、大国の代表が小国の発言を遮っては持論を延々と繰り返した。エレイナは議事規則の奥から、手続き動議の審議時間を議事を止めた側の持ち時間から差し引く条項を掘り起こし、一時間に四十七回の動議を提出して、当の代表が口を開くたびに持ち時間が蒸発していく状態を作り上げた。発言権を失った代表がマイクの前で黙り込む姿を、エレイナは最前列で恍惚と眺め続け、会合の記録に残った代表の発言は咳払い三回だけだった。
  • 学園を子供の国と揶揄した来訪使節団の随員を、エレイナは自ら案内役を買って出て、学徒防衛隊の作戦会議室へ連れて行った。十六歳の委員たちに囲まれ、自国の防衛計画の穴を一時間にわたって質問攻めにされた随員は、最後には委員たちの指摘を手帳に書き写しながら礼を述べる側に回っており、エレイナはその手帳を横から覗き込んで恍惚の吐息を漏らしていた。帰国後に提出された随員の報告書は、学園の呼称を記した箇所だけが三回書き直されていた。

遊理部

  • 遊理部の悪党募金推進本部に、自分を悪党として登録する申請書を提出した。取り立てに現れたエリカ・キリシマは、課の規則に従えば物理的な手段へ移る場面で、相手が喜ぶだけと察して素手のまま引き上げ、エレイナは制裁金を自ら窓口まで納めに行った。手書きの領収書は今も執務室の金庫に収められ、本部の帳簿では国家元首が最大の寄付者に名を連ねている。
  • 部の物理的話し合い課に、代表理事の執務室への殴り込みを正式に依頼した。課の規則では相手が言い淀んだ瞬間に拳が出るため、エレイナは課員全員を相手に二時間、一度も言い淀まずに課の存在意義を論破し続け、先に言葉に詰まった班長エリカの肩を、規則どおり自分の拳で軽く小突いた。息を弾ませた代表理事が次回の依頼日を尋ねる頃には、課員は全員床に座り込み、議事録を拳で書く方法を思い出せなくなっていた。
  • 土下座外交局の局員が風紀委員会へ詫びに来た日、委員会を隷下に置く学生理事会の長として同席していたエレイナは、謝られる側の席を離れて局員の列に加わり、床に額を擦りつけた。委員長は国家元首に頭を下げられた格好となり、謝罪を受け入れるより先に代表理事を起こす作業に追われた。局員たちは帰り際、膝当ての予備を一組、代表理事に進呈していった。
  • 叱責文を一通書いてほしいと始末書量産工房に依頼したところ、謝る文章しか書いたことのない工房員たちは三日三晩悩み抜いた。納品されたのは、代表理事に百通りの言い回しで頭を下げる謝罪文の束で、叱責の成分はどこにも含まれていなかった。全文を読み終えたエレイナは、謝られる側の居心地の悪さを生まれて初めて味わったと語り、工房に割増料金を支払った。
  • 爆心地ワークショップの見学に訪れた際、パワーボウリングのピン役を自ら志願し、レーンの奥に直立した。投げ込まれた球を雷のデフレクトで受け止めた瞬間に反撃の癖が出てしまい、球は投手の側へ逆走して、レーンごと部室の壁を抜いた。爆発後処理班の出動記録には、原因の欄に初めて部長以外の名前が書き込まれた。
  • スーラの招きで講師が泣いて帰る会の壇上に立ち、外交交渉の実務を講じた。部員たちは例によって論理を三段跳びした質問を真顔でぶつけたが、問いが常軌を逸するほど講師の顔は上気し、最後には講師の側から追加の質問を懇願した。会の始まって以来、講師が笑顔で帰り、部員が泣いて帰ったのは、この一回きりである。
  • 教室への抜き打ち視察でマキラスの肩を背後から叩いたところ、驚いた彼の足元から白い塊が噴き上がり、エレイナは首まで埋まった。謝ろうと駆け寄るたびにマキラスが代表理事の顔を見て驚き直し、白い塊は謝罪の回数だけ積み増された。副官と部員総出の掘り出しは半日がかりとなり、マキラスは掘り出しの間ずっと、離れた物陰から謝罪の言葉を唱え続けた。
  • 懲罰独居房の視察に入ったエレイナは、居住環境の改善予算をその場で計上し、寝具と書見台を新調させた。改装後の房は寮より快適と評判になり、軽微な違反で入房を志願する学生が風紀委員会の窓口に列を作った。委員会は予算を返上して旧来の設備に戻し、常連の部長だけが、改装前のほうが実家らしいと喜んだ。

ギャラリー

作:AIピクターズ
作:@Freeton2
作:@Freeton2
作:同左

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最終更新:2026年10月03日 15:21

*1 作:ChatGPT

*2 諸説ある。本当に言葉を選んでいるのか?

*3 作:@Freeton2