7. 明かされる、真実
朝。清々しい、晴れ渡った良い天気だ。
わたし達が教室で朝ごはんを食べていると、
えるちゃんが慌てた様子で駆け込んで来た。
「み、みんな……!
あの、えぇと、き、来て欲しいのっ……!」
どうもただ事じゃなさそうだ。
わたし達はご飯もそのままに、
えるちゃんについて行く。
わたし達が教室で朝ごはんを食べていると、
えるちゃんが慌てた様子で駆け込んで来た。
「み、みんな……!
あの、えぇと、き、来て欲しいのっ……!」
どうもただ事じゃなさそうだ。
わたし達はご飯もそのままに、
えるちゃんについて行く。
『ザザー…………えぇ、こちらの方は問題ありません……ザザッ……そちらは……』
以前、えるちゃんが直してくれた通信機だ。
どうやら遠くの無線電波をたまたまキャッチしたらしい。
「男の人の声だ……。まだ、無事な人がいたんだね」
「ちょっと待って。これってもしかして……」
『ザザッ……はい。作業は順調です。
残すは最後の段階のみです、Dr.』
「ドクター!?今ドクターって言ったよね!?」
「これ……Dr.マッドと、部下の兵士の無線通信なんじゃないかな。このまま聞いてれば、有益な情報が手に入るかも!」
『それじゃ、後は任せたよ。ザザーッ……
詰めの作業はこっちでやっとくからさ』
こっちは、Dr.マッドの声……だよね。
何かの作業が大詰めになっている、という事なのだろうか。
「む…………これはいかん。
予想以上に、事態の進行が早いようじゃ」
いつの間にか後ろにのじゃ猫ちゃんが立っていた。いつも捉えどころのないニヤニヤ顔をしている彼女が、いつになく真剣な表情だ。
以前、えるちゃんが直してくれた通信機だ。
どうやら遠くの無線電波をたまたまキャッチしたらしい。
「男の人の声だ……。まだ、無事な人がいたんだね」
「ちょっと待って。これってもしかして……」
『ザザッ……はい。作業は順調です。
残すは最後の段階のみです、Dr.』
「ドクター!?今ドクターって言ったよね!?」
「これ……Dr.マッドと、部下の兵士の無線通信なんじゃないかな。このまま聞いてれば、有益な情報が手に入るかも!」
『それじゃ、後は任せたよ。ザザーッ……
詰めの作業はこっちでやっとくからさ』
こっちは、Dr.マッドの声……だよね。
何かの作業が大詰めになっている、という事なのだろうか。
「む…………これはいかん。
予想以上に、事態の進行が早いようじゃ」
いつの間にか後ろにのじゃ猫ちゃんが立っていた。いつも捉えどころのないニヤニヤ顔をしている彼女が、いつになく真剣な表情だ。
「ついに時は来た、かの。……皆、聞いてくれんか!」
のじゃ猫ちゃんが声を張り上げ、無線機の周りに集まっていた女児達は何事かと顔を上げる。
「急な話ですまんが、今の無線を聞く限り、予想以上にDr.の作戦は進んでおるようじゃ。早急に止めねば、取り返しのつかない事になりかねん。
というわけで出発の準備をするんじゃ!今から皆でDr.マッドの本拠地に乗り込む!!」
「い、今からぁ!?いくらなんでも早すぎるよ!心の準備ってものが……」
のじゃ猫ちゃんが声を張り上げ、無線機の周りに集まっていた女児達は何事かと顔を上げる。
「急な話ですまんが、今の無線を聞く限り、予想以上にDr.の作戦は進んでおるようじゃ。早急に止めねば、取り返しのつかない事になりかねん。
というわけで出発の準備をするんじゃ!今から皆でDr.マッドの本拠地に乗り込む!!」
「い、今からぁ!?いくらなんでも早すぎるよ!心の準備ってものが……」
ふと。
のじゃ猫ちゃんの後ろに、
純乃ちゃんが歩み寄っているのが見えた。
あんなところで、何をして────。
のじゃ猫ちゃんの後ろに、
純乃ちゃんが歩み寄っているのが見えた。
あんなところで、何をして────。
「───『異界侵門』」
ズォッ!!!
ズォッ!!!
「ぬぉっ!?」
純乃ちゃんの手から、小さなブラックホールのような渦が出たかと思いきや、のじゃ猫ちゃんがそこに飲み込まれて行く。
「なっ、何をしてるのっ!?純乃ちゃん!!」
「……見て、分からないか?この厄介者を別の世界へ飛ばしてしまうのさ。殺せないのなら、消し去るまでってね」
「ぬぅっ……ぐ!!貴様……Dr.マッドの、手下じゃったのかっ……!!」
黒い重力の渦に飲まれつつも、なんとか出ようともがくのじゃ猫ちゃん!
早く、助けないと……!!
「ハ、私が彼女の手下?バカを言うな。
私はただ、この世界を救いたいだけさ」
「ぐぐぐぅ……!!」
既に、のじゃ猫ちゃんの下半身はブラックホールに飲まれてしまっている。
みんなが慌てて駆け寄ろうとするが、
「近付くな!!私に近付けば、お前達も異界へ飛ばしてやるぞ?」
純乃ちゃんが手のひらをこちらに向ける。
それを見て、皆思わずたじろいでしまう。
純乃ちゃんの手から、小さなブラックホールのような渦が出たかと思いきや、のじゃ猫ちゃんがそこに飲み込まれて行く。
「なっ、何をしてるのっ!?純乃ちゃん!!」
「……見て、分からないか?この厄介者を別の世界へ飛ばしてしまうのさ。殺せないのなら、消し去るまでってね」
「ぬぅっ……ぐ!!貴様……Dr.マッドの、手下じゃったのかっ……!!」
黒い重力の渦に飲まれつつも、なんとか出ようともがくのじゃ猫ちゃん!
早く、助けないと……!!
「ハ、私が彼女の手下?バカを言うな。
私はただ、この世界を救いたいだけさ」
「ぐぐぐぅ……!!」
既に、のじゃ猫ちゃんの下半身はブラックホールに飲まれてしまっている。
みんなが慌てて駆け寄ろうとするが、
「近付くな!!私に近付けば、お前達も異界へ飛ばしてやるぞ?」
純乃ちゃんが手のひらをこちらに向ける。
それを見て、皆思わずたじろいでしまう。
「ワシの事は良い!!
それよりも聞け、子供達!
Dr.マッドの本拠地は…………天川学園の地下じゃ!!!
なんとしてもそこに辿り着き……奴を倒せ!良いな!!絶対に成し遂げるのじゃぞ!!」
「くっ……この、しつこい奴め……!!」
純乃ちゃんが力を込めると渦の勢いがさらに増し、のじゃ猫ちゃんの身体は一気に引きずり込まれて行く。
それよりも聞け、子供達!
Dr.マッドの本拠地は…………天川学園の地下じゃ!!!
なんとしてもそこに辿り着き……奴を倒せ!良いな!!絶対に成し遂げるのじゃぞ!!」
「くっ……この、しつこい奴め……!!」
純乃ちゃんが力を込めると渦の勢いがさらに増し、のじゃ猫ちゃんの身体は一気に引きずり込まれて行く。
ズォッ…………!!!
のじゃ猫ちゃんの姿は、
完全に渦に飲み込まれ、消えた。
後に残ったのは……力を使いすぎたのか、
息切れを起こした純乃ちゃんだけだった。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!
これで、邪魔者は消えた……!
この世界は、守られたのだ……!!」
完全に渦に飲み込まれ、消えた。
後に残ったのは……力を使いすぎたのか、
息切れを起こした純乃ちゃんだけだった。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!
これで、邪魔者は消えた……!
この世界は、守られたのだ……!!」
「何を、言ってんだ……お前ええぇっ!!」
ドゥッ!!!
みっちゃんが激昂して声を上げる。
彼女の激しい怒りに呼応してか、『女児力』が身体からオーラのように溢れ出ている。
「のじゃ猫ちゃんが、何をしたって言うんだ!!
アタシたちの事をずっと助けてくれた……
守ってくれてたんだぞ!!返せ!!
のじゃ猫ちゃんを……返せよッ!!!」
「奴はどことも知れん異世界へと飛ばした。戻す事はできないさ。
……お前達は、自分が何をやっているのか分かっているのか?そんなに、この世界を滅ぼしたいのか!?」
世界を、滅ぼす?
わたし達は、Dr.マッドを倒して世界を救いたいだけで……。
「…………ハ。めでたい連中だ。
本当に何も知らないのか。
あの化け猫に、何も教えてもらえなかったんだな…………ぐふっ!?」
その時。
純乃ちゃんの腹に、神楽坂さんの拳がめり込んでいた。
「…………あなた、知っていたのね。
それじゃ、私達の事を許せないのも、
当然よね。……ごめんなさい」
「きさ……ま…………」
ドサッ……。
どうやら、気を失ったようだ。
ドゥッ!!!
みっちゃんが激昂して声を上げる。
彼女の激しい怒りに呼応してか、『女児力』が身体からオーラのように溢れ出ている。
「のじゃ猫ちゃんが、何をしたって言うんだ!!
アタシたちの事をずっと助けてくれた……
守ってくれてたんだぞ!!返せ!!
のじゃ猫ちゃんを……返せよッ!!!」
「奴はどことも知れん異世界へと飛ばした。戻す事はできないさ。
……お前達は、自分が何をやっているのか分かっているのか?そんなに、この世界を滅ぼしたいのか!?」
世界を、滅ぼす?
わたし達は、Dr.マッドを倒して世界を救いたいだけで……。
「…………ハ。めでたい連中だ。
本当に何も知らないのか。
あの化け猫に、何も教えてもらえなかったんだな…………ぐふっ!?」
その時。
純乃ちゃんの腹に、神楽坂さんの拳がめり込んでいた。
「…………あなた、知っていたのね。
それじゃ、私達の事を許せないのも、
当然よね。……ごめんなさい」
「きさ……ま…………」
ドサッ……。
どうやら、気を失ったようだ。
「……………………」
「…………神楽坂さん、あの……」
「全てを、話すわ。
今まで黙っていたこと、言えなかったこと。
場所を、変えましょう。
みんな、着いてきて」
「…………神楽坂さん、あの……」
「全てを、話すわ。
今まで黙っていたこと、言えなかったこと。
場所を、変えましょう。
みんな、着いてきて」
……………………
………………………………
…………………………………………
コツ、コツ、コツ……。
薄暗い階段を、ゆっくりと降りて行く。
この先にある部屋は、ひとつだけだ。
神楽坂さんが、長い間閉じ籠っていた部屋。
わたし達にとっては、日常が終わりを告げ、全てが始まった場所。
薄暗い階段を、ゆっくりと降りて行く。
この先にある部屋は、ひとつだけだ。
神楽坂さんが、長い間閉じ籠っていた部屋。
わたし達にとっては、日常が終わりを告げ、全てが始まった場所。
「……不思議ね。
この部屋には数百年の間ずっといたのに、たった数年外で暮らしただけで懐かしく感じるなんて」
感慨深そうに、神楽坂さんは部屋の中を見渡す。あまりしっかり見た事はなかったけど、注連縄が巻かれた岩があったり、所々にお札が貼ってある以外はごく普通の、古めかしい部屋だった。
「さて、何から話しましょうか。……あぁ、とりあえず彼女……純乃ちゃんは手足を縛って閉じ込めておいたわ。しばらく目を覚まさないでしょうし、ひとまず安全だと思う」
「あの……のじゃ猫ちゃんを、助ける事はできないんですか……?」
おずおずと、猫丸ちゃんが手をあげる。
4年前にも、こうやって猫丸ちゃんが質問してたなぁと、ふと思った。あの時と今では、状況はまるで違うけれど。
「…………えぇ。純乃ちゃんの符号の詳細は分からないけれど、あれはどう考えても普通の力じゃない。異世界に飛ばした、というのは恐らく本当の事。
だとしたらあの猫を助ける事は、残念ながら不可能、と言わざるを得ないわ。私達には、次元に干渉する力はないから」
「そんな!こんな形でお別れなんて……!
わたし達、まだお礼も何も、言えてないのに……!!」
と、自分で言いながら、堰を切ったように涙が溢れ出してしまった。
みんなの前では、ぜったいに泣かないと決めていたのに……!
「う……うぅっ……!!のじゃ猫ちゃん……!ごめんなさい、ごめんなさい…………!!
助けてあげられなくて、ごめんなさいっ……!!」
「……そうやって別れを悲しんでくれる子がいるだけで、きっとアイツは喜ぶわ。だから、アイツのためにも……先に進みましょう。話を、続けるわね」
神楽坂さんはこちらを見て一瞬優しい目をしたけれど、すぐに真剣な顔に戻って話を始めた。
この部屋には数百年の間ずっといたのに、たった数年外で暮らしただけで懐かしく感じるなんて」
感慨深そうに、神楽坂さんは部屋の中を見渡す。あまりしっかり見た事はなかったけど、注連縄が巻かれた岩があったり、所々にお札が貼ってある以外はごく普通の、古めかしい部屋だった。
「さて、何から話しましょうか。……あぁ、とりあえず彼女……純乃ちゃんは手足を縛って閉じ込めておいたわ。しばらく目を覚まさないでしょうし、ひとまず安全だと思う」
「あの……のじゃ猫ちゃんを、助ける事はできないんですか……?」
おずおずと、猫丸ちゃんが手をあげる。
4年前にも、こうやって猫丸ちゃんが質問してたなぁと、ふと思った。あの時と今では、状況はまるで違うけれど。
「…………えぇ。純乃ちゃんの符号の詳細は分からないけれど、あれはどう考えても普通の力じゃない。異世界に飛ばした、というのは恐らく本当の事。
だとしたらあの猫を助ける事は、残念ながら不可能、と言わざるを得ないわ。私達には、次元に干渉する力はないから」
「そんな!こんな形でお別れなんて……!
わたし達、まだお礼も何も、言えてないのに……!!」
と、自分で言いながら、堰を切ったように涙が溢れ出してしまった。
みんなの前では、ぜったいに泣かないと決めていたのに……!
「う……うぅっ……!!のじゃ猫ちゃん……!ごめんなさい、ごめんなさい…………!!
助けてあげられなくて、ごめんなさいっ……!!」
「……そうやって別れを悲しんでくれる子がいるだけで、きっとアイツは喜ぶわ。だから、アイツのためにも……先に進みましょう。話を、続けるわね」
神楽坂さんはこちらを見て一瞬優しい目をしたけれど、すぐに真剣な顔に戻って話を始めた。
「Dr.マッドの目的は、以前猫が話したわね。
だけどあれは、正確には正しくないの。
『女児だけの世界を、永遠に存続できる物にする事』、これが彼女の願いよ。そしてその『女児だけの世界』は、まだ完成していない」
「それって、わたし達の他にも生存者がいるからですか?」
「いいえ。そうではないの。
『この世界』は、そもそもまだ未完成。
───ここは、Dr.マッドの夢の中なのよ」
だけどあれは、正確には正しくないの。
『女児だけの世界を、永遠に存続できる物にする事』、これが彼女の願いよ。そしてその『女児だけの世界』は、まだ完成していない」
「それって、わたし達の他にも生存者がいるからですか?」
「いいえ。そうではないの。
『この世界』は、そもそもまだ未完成。
───ここは、Dr.マッドの夢の中なのよ」