青空小学校林間学校3班
更新日:2020/07/07 Tue 22:30:18
『鐘明家は母系制だ』
その本にはまずそう記されていた。
『すべからく入り婿で、家督はたとえ男が生まれていても女児が継いでいる』
家系図が記録されているページを見れば一目瞭然だった。
『この家に生まれた男児は必ず太郎と名付けられている』
『家系図には入り婿の名前も元の家の名前すら記述されず、男児の名前は書かれただけで、その後新しく家族を作ったかもわからなかった。この家系では男と言う物の存在が雑である』
その本にはまずそう記されていた。
『すべからく入り婿で、家督はたとえ男が生まれていても女児が継いでいる』
家系図が記録されているページを見れば一目瞭然だった。
『この家に生まれた男児は必ず太郎と名付けられている』
『家系図には入り婿の名前も元の家の名前すら記述されず、男児の名前は書かれただけで、その後新しく家族を作ったかもわからなかった。この家系では男と言う物の存在が雑である』
愛歩は家系図と言うものにあまり詳しくなかったが、一般的には枝葉が伸びるような図になるはずだ。しかしこの家系図はほとんどまっすぐ、一本の幹で出来ている。
よく見たら家督を継ぐ女性の名前もあ.い.う.え等の25文字から繰り返しで付けられているではないか。
ふうん…と思って先祖かもしれない人物達の名前をざっと眺めていく。
あは亜道、かは加那、さは才子、たは民子…おかしな名前ばかりだ。
『こうしてこの一族は母系制を保っていた』
チャイムが鳴り、愛歩は思わず唸った。
本はまだ最初も最初の方だ。本当に読みたかった本も読めなかったし。
『怪猫誘拐譚』と『奇怪喫茶逢魔時』。愛歩はこの二冊を参考資料として借りてきていた。そしてもう一つ、『鐘明家・その血の呪い』もだ。
大石夫妻の娘を見つけたいと言う思いと、鐘明家の事について調べたいという思いがぶつかり合っている。
よく見たら家督を継ぐ女性の名前もあ.い.う.え等の25文字から繰り返しで付けられているではないか。
ふうん…と思って先祖かもしれない人物達の名前をざっと眺めていく。
あは亜道、かは加那、さは才子、たは民子…おかしな名前ばかりだ。
『こうしてこの一族は母系制を保っていた』
チャイムが鳴り、愛歩は思わず唸った。
本はまだ最初も最初の方だ。本当に読みたかった本も読めなかったし。
『怪猫誘拐譚』と『奇怪喫茶逢魔時』。愛歩はこの二冊を参考資料として借りてきていた。そしてもう一つ、『鐘明家・その血の呪い』もだ。
大石夫妻の娘を見つけたいと言う思いと、鐘明家の事について調べたいという思いがぶつかり合っている。
「おーい!アユミン!アユミーン!」
「ふえ、あ、何、むらサメちゃん」
同級生の呼ぶ声にドキリとする。考え事をしていたせいで、宇佐美先生の言葉を聞いていなかったのだ。
「しっかりせぇよ。来週の林間学校の事やで」
「林間学校……?」
「おう、森の中いって、カレー作ったりキャンプファイアーしたりな」
むらサメはそこまで言ってハッとした。
「あーでもな、希望者だけだから。キャンプファイアーとかは」
「そ、そっか。ところで、その林間学校がどうしたの?」
「それで一緒に寝たり行動する班決めを今からするっちゅう話やねん」
愛歩は辺りを見てぽかんとした。授業中だと言うのに、皆立ち上がって喋っている。
「で、アユミン。よかったらうちと組まへん?」
「え、いいの…?」
「当たり前やろ!友達なんやから!」
自分の胸をドンと叩くむらサメを、愛歩はとてもたくましく思ったのだった。
「ふえ、あ、何、むらサメちゃん」
同級生の呼ぶ声にドキリとする。考え事をしていたせいで、宇佐美先生の言葉を聞いていなかったのだ。
「しっかりせぇよ。来週の林間学校の事やで」
「林間学校……?」
「おう、森の中いって、カレー作ったりキャンプファイアーしたりな」
むらサメはそこまで言ってハッとした。
「あーでもな、希望者だけだから。キャンプファイアーとかは」
「そ、そっか。ところで、その林間学校がどうしたの?」
「それで一緒に寝たり行動する班決めを今からするっちゅう話やねん」
愛歩は辺りを見てぽかんとした。授業中だと言うのに、皆立ち上がって喋っている。
「で、アユミン。よかったらうちと組まへん?」
「え、いいの…?」
「当たり前やろ!友達なんやから!」
自分の胸をドンと叩くむらサメを、愛歩はとてもたくましく思ったのだった。
「班決めだから後三人必要なんや」
「そうなんだ」
つかつか歩いていくむらサメ。愛歩も立ち上がってついていく。
「きゅーばんちゃーん!」
「わ、わ」
むらサメが勢い良く飛び付いたのは、紫髪の女の子、慶光院九だった。
「もう、むらサメちゃんったらはしゃぎすぎだよ~!」
「あはは、だって楽しみなんだもん!ね、一緒の班にならへん?」
「もちろんいいよ、他に人は?」
「あ、私!」
愛歩は素早く名乗り出た。
「あ、確かえっと……?」
「愛歩だよ。よろしく。えっと?」
「きゅーばんでいいよ!よろしくね愛歩ちゃん」
こうして愛歩ときゅーばんは握手を交わすのだった。
「そうなんだ」
つかつか歩いていくむらサメ。愛歩も立ち上がってついていく。
「きゅーばんちゃーん!」
「わ、わ」
むらサメが勢い良く飛び付いたのは、紫髪の女の子、慶光院九だった。
「もう、むらサメちゃんったらはしゃぎすぎだよ~!」
「あはは、だって楽しみなんだもん!ね、一緒の班にならへん?」
「もちろんいいよ、他に人は?」
「あ、私!」
愛歩は素早く名乗り出た。
「あ、確かえっと……?」
「愛歩だよ。よろしく。えっと?」
「きゅーばんでいいよ!よろしくね愛歩ちゃん」
こうして愛歩ときゅーばんは握手を交わすのだった。
「あと二人かぁ」
きゅーばんの呟きに、愛歩は虹富玲亜の姿を探して歩いた。が、玲亜はライジングや水無月美奈、音羽初と組むらしい。少し残念に思いながらも、むらサメときゅーばんのグループに戻っていったのだった。
きゅーばんの呟きに、愛歩は虹富玲亜の姿を探して歩いた。が、玲亜はライジングや水無月美奈、音羽初と組むらしい。少し残念に思いながらも、むらサメときゅーばんのグループに戻っていったのだった。
「あ、あのさ」
三人が固まっていると、紫色の髪をツインテールにした子が話しかけてきた。後ろには眼鏡をかけた子も立っている。
「この間はごめん!」
ツインテールっ娘は謝った。が、愛歩には心当たりがなかった。
「えっと、天号ちゃんと何かあったっけ?」
「え~?!」
「ご、ごめん。金曜日の事あんまり覚えてなくてさ……」
謝ってくれた天号に、愛歩は逆に申し訳なかった。
「あ、じゃあさ、一緒の班になってくれない?」
愛歩はむらサメときゅーばんに目で訴えると、二人とも頷いてくれた。
「それでさ、親交を深められると嬉しいんだけど」
天号は隣にいた眼鏡っ娘ーーー古代ナオに相談した。
「ど、どうする古代ちゃん」
「私は天号ちゃんにまかせるから」
古代は天号の目を見ることなく答えた。
「じゃ、じゃあ愛歩ちゃん。よろしくね」
こうして5年1組林間学校3班は完成したのだった。
三人が固まっていると、紫色の髪をツインテールにした子が話しかけてきた。後ろには眼鏡をかけた子も立っている。
「この間はごめん!」
ツインテールっ娘は謝った。が、愛歩には心当たりがなかった。
「えっと、天号ちゃんと何かあったっけ?」
「え~?!」
「ご、ごめん。金曜日の事あんまり覚えてなくてさ……」
謝ってくれた天号に、愛歩は逆に申し訳なかった。
「あ、じゃあさ、一緒の班になってくれない?」
愛歩はむらサメときゅーばんに目で訴えると、二人とも頷いてくれた。
「それでさ、親交を深められると嬉しいんだけど」
天号は隣にいた眼鏡っ娘ーーー古代ナオに相談した。
「ど、どうする古代ちゃん」
「私は天号ちゃんにまかせるから」
古代は天号の目を見ることなく答えた。
「じゃ、じゃあ愛歩ちゃん。よろしくね」
こうして5年1組林間学校3班は完成したのだった。