カタカタ。
カタカタカタ。
カタカタカタカタ。
ッターン!!
カタカタカタ。
カタカタカタカタ。
ッターン!!
「───行ったか。
装置は問題なく作動しているな。
これであの子達は無事に新しい世界に行く事ができたはずだ。……良かった……!」
装置は問題なく作動しているな。
これであの子達は無事に新しい世界に行く事ができたはずだ。……良かった……!」
安心した途端に身体の力が抜け、
ガクリと膝から崩れ落ちる。
ガクリと膝から崩れ落ちる。
「……力を使い果たしてしまったか。
いよいよ、最期の時が近いな……」
いよいよ、最期の時が近いな……」
「オイオイどうした、へばってンのか?
それならアチキも、ちょいとここで
休ましとくれヨ」
それならアチキも、ちょいとここで
休ましとくれヨ」
誰もいないと思っていた真っ暗な研究室に、突然誰かの影が見えた。
聞き慣れた声と口調。
そんな、まさか……。
聞き慣れた声と口調。
そんな、まさか……。
「御滴っ!?お前、何をしてる!?
皆と一緒に行ったんじゃなかったのか!?」
「へへ、流石の純蔵もアチキの時間停止にゃ
気付かなかったか。こりゃ気分がいいや」
「冗談を言っている場合か!!
すぐに向こうに飛ばしてやるから準備を……」
「あンな、何のためにアチキがあの場から離れたと
思ってるんでィ。アチキもお前さんと同じ、
やりたい事をやったのサ。
だからもう、向こうに行く必要はねェ」
皆と一緒に行ったんじゃなかったのか!?」
「へへ、流石の純蔵もアチキの時間停止にゃ
気付かなかったか。こりゃ気分がいいや」
「冗談を言っている場合か!!
すぐに向こうに飛ばしてやるから準備を……」
「あンな、何のためにアチキがあの場から離れたと
思ってるんでィ。アチキもお前さんと同じ、
やりたい事をやったのサ。
だからもう、向こうに行く必要はねェ」
「…………そうか、お前……符号を使って、
はもはもちゃんを……!」
「そういうこった。……流石に時間を巻き戻すのは
骨が折れるねェ。残った命をぜーんぶ使っちまった」
はもはもちゃんを……!」
「そういうこった。……流石に時間を巻き戻すのは
骨が折れるねェ。残った命をぜーんぶ使っちまった」
「……なぁ、御滴。
お前は私よりも先に、青空学園にいたよな。
どうだった?あの子達との学園生活は」
「ハ、なんでィ、任務遂行こそが至上命題だとかなんとか言ってたヤツが、そんな事に興味あんのかィ?」
「茶化すなよ。もう残り少ない命だ、
本音も隠さずに話そうじゃないか」
お前は私よりも先に、青空学園にいたよな。
どうだった?あの子達との学園生活は」
「ハ、なんでィ、任務遂行こそが至上命題だとかなんとか言ってたヤツが、そんな事に興味あんのかィ?」
「茶化すなよ。もう残り少ない命だ、
本音も隠さずに話そうじゃないか」
「……そうさなァ。アチキもお前さんと同じで、最初は
あの子供達にさほど興味なんてなかった。
ただDr.に言われた事をこなすために学園に潜入して、
あいつらの……はも蔵の作戦をサポートするって
お役目を果たすだけだと思ってたサ。でもヨ、
あんな状況でも誰かを責めたり自棄になったりせずに
真っ直ぐに生きてるあいつらを見て、いつの間にか
自分もあいつらの本当の仲間になりたい……って
思っちまった。何もかもニセモノのアチキの話にも、
楽しそうに耳を傾けてくれるあいつらの事を、
守りたいって本気で思うようになってたのサ」
あの子供達にさほど興味なんてなかった。
ただDr.に言われた事をこなすために学園に潜入して、
あいつらの……はも蔵の作戦をサポートするって
お役目を果たすだけだと思ってたサ。でもヨ、
あんな状況でも誰かを責めたり自棄になったりせずに
真っ直ぐに生きてるあいつらを見て、いつの間にか
自分もあいつらの本当の仲間になりたい……って
思っちまった。何もかもニセモノのアチキの話にも、
楽しそうに耳を傾けてくれるあいつらの事を、
守りたいって本気で思うようになってたのサ」
かつてここに居た頃には見せた事のない優しい目をして、
御滴はゆっくりと思い出を慈しむように語る。
御滴はゆっくりと思い出を慈しむように語る。
「そしたらお前さんがやって来て……
こんなアチキの姿を見たら怒るだろうなァって
思ってたら、いつの間にかお前さんまで
優しい目になっちまってるんだもんナァ。
全く大した奴らだヨ、あいつらは」
「ふふ、同感だ。仮初の命と与えられた力を除けば
何も残らないような私達に、こんなに暖かい心を
芽生えさせたんだからな。
あの子達は符号とは関係なくすごい力を持っている。
彼女らならきっとどんな世界でも明るくやっていけるさ」
こんなアチキの姿を見たら怒るだろうなァって
思ってたら、いつの間にかお前さんまで
優しい目になっちまってるんだもんナァ。
全く大した奴らだヨ、あいつらは」
「ふふ、同感だ。仮初の命と与えられた力を除けば
何も残らないような私達に、こんなに暖かい心を
芽生えさせたんだからな。
あの子達は符号とは関係なくすごい力を持っている。
彼女らならきっとどんな世界でも明るくやっていけるさ」
───あぁ、こんなに晴れやかな気持ちになったのは
生まれて初めてだ。……僅か数年の命だったが、
こうして誰かの役に立てたのなら、悪くない人生だったと
言えるんじゃなかろうか。
生まれて初めてだ。……僅か数年の命だったが、
こうして誰かの役に立てたのなら、悪くない人生だったと
言えるんじゃなかろうか。
「ふ、ふふっ、ふふふ、良いねぇ。
女子トーク。仲良きことは美しき哉、だ。
もう女子なんて齢じゃあないかも知れないが、
私も混ぜてくれないかな」
女子トーク。仲良きことは美しき哉、だ。
もう女子なんて齢じゃあないかも知れないが、
私も混ぜてくれないかな」
………………え。
…………この、声は。
そんな、まさか…………。
…………この、声は。
そんな、まさか…………。
「ど…………Dr.…………?」
「……どういう事でィ。
オタク、死んだんじゃなかったのか?」
「……どういう事でィ。
オタク、死んだんじゃなかったのか?」
「くく……私の禁忌符号をナメてもらっちゃ困るな。
御滴ちゃん、キミはさっき、
はもはもちゃんを蘇らせてくれただろう?
だから私もまた、こうして蘇ることができたのさ。
……ま、とはいえ、この夢の世界は
流石にもう保たない。
例え私が生きていても、もう間もなく世界が消えるのは
止めようもないけれどね」
御滴ちゃん、キミはさっき、
はもはもちゃんを蘇らせてくれただろう?
だから私もまた、こうして蘇ることができたのさ。
……ま、とはいえ、この夢の世界は
流石にもう保たない。
例え私が生きていても、もう間もなく世界が消えるのは
止めようもないけれどね」
計画は失敗し、自らも間もなく世界ごと
消えるというのに……Dr.の表情はどこか晴れやかだ。
話す言葉にも、嘘はないように聞こえる。
消えるというのに……Dr.の表情はどこか晴れやかだ。
話す言葉にも、嘘はないように聞こえる。
「なんだか、嬉しそうだな?Dr.」
「ん?あぁ、もちろんさ。今の私にとって
最悪の結末は『女児達がこの世界ごと消えてしまう事』だ。それが回避できたのなら、文句はないさ。
計画はものの見事に失敗したがね。
なに、それもまた一興という物だよ」
「ん?あぁ、もちろんさ。今の私にとって
最悪の結末は『女児達がこの世界ごと消えてしまう事』だ。それが回避できたのなら、文句はないさ。
計画はものの見事に失敗したがね。
なに、それもまた一興という物だよ」
揺れがまた一段と大きくなる。
そろそろ、本当に終わりか。
私にとってはまさしく、儚い夢だった。
そろそろ、本当に終わりか。
私にとってはまさしく、儚い夢だった。
「……名残惜しいが、そろそろか。
さぁーて、最後のひと仕事をするとしよう」
さぁーて、最後のひと仕事をするとしよう」
……ひと仕事?
一体何を…………と思っていると、Dr.は
時空転移装置をカタカタと弄り始めた。
一体何を…………と思っていると、Dr.は
時空転移装置をカタカタと弄り始めた。
「Dr.?今更何を……」
「ん?決まってるじゃないか。
君たちを、はもはもちゃん達と同じ世界に送り届けるのさ。
君たちには辛い思いばかりさせてしまった。
最後くらい、親らしい事をしないとね」
「ん?決まってるじゃないか。
君たちを、はもはもちゃん達と同じ世界に送り届けるのさ。
君たちには辛い思いばかりさせてしまった。
最後くらい、親らしい事をしないとね」
「なっ、私たちを、向こうに……!?
何をバカな!私たちはそもそももう死にかけだ、
そんな事をしたって無駄だ!
それに、仮定符号を持った私たちが別世界に行けば、
世界のバランスが崩れて……」
何をバカな!私たちはそもそももう死にかけだ、
そんな事をしたって無駄だ!
それに、仮定符号を持った私たちが別世界に行けば、
世界のバランスが崩れて……」
「そんな事はもう全部分かっているとも。
私を誰だと思ってるんだい?
狂気の天才マッドサイエンティスト、Dr.マッドだよ?
……君たちの符号はね、そもそもこの世界でしか
使えないんだよ。だから向こう側に行けば自然と消滅する。
君たちは、『ただの女の子』になるんだ。
そして、身体の不調も符号の使い過ぎから来ている。
符号が消滅すれば、そのうち体調も元に戻るさ。
───さぁ、準備完了だ。
行っておいで、私の可愛い子供たち」
私を誰だと思ってるんだい?
狂気の天才マッドサイエンティスト、Dr.マッドだよ?
……君たちの符号はね、そもそもこの世界でしか
使えないんだよ。だから向こう側に行けば自然と消滅する。
君たちは、『ただの女の子』になるんだ。
そして、身体の不調も符号の使い過ぎから来ている。
符号が消滅すれば、そのうち体調も元に戻るさ。
───さぁ、準備完了だ。
行っておいで、私の可愛い子供たち」
グォン、グォン、
グォングォングォン……!
グォングォングォン……!
装置が再び起動し、私達は光に包まれる。
身体が宙に浮き、周りの景色が見えなく
なっていく。
身体が宙に浮き、周りの景色が見えなく
なっていく。
「まっ、待て!!私は、貴女を置き去りにして
自分だけ助かるなんてできない!!
叛旗は翻したが、それでも貴女は私の創造主なんだ!!」
「……ふふ。嬉しい事を言ってくれる
じゃないか。でもね、純乃ちゃん。
君なら私の気持ちが分かるだろう?
何しろ君はついさっき、
私と同じ事をしたばかりじゃないか」
「………………!!」
自分だけ助かるなんてできない!!
叛旗は翻したが、それでも貴女は私の創造主なんだ!!」
「……ふふ。嬉しい事を言ってくれる
じゃないか。でもね、純乃ちゃん。
君なら私の気持ちが分かるだろう?
何しろ君はついさっき、
私と同じ事をしたばかりじゃないか」
「………………!!」
光の隙間から、
Dr.の晴れやかな笑顔が見えた。
Dr.の晴れやかな笑顔が見えた。
…………あぁ。きっと。
私もあの時、あんな顔をしていたんだろう。
Dr.のあんな笑顔は、生まれて初めて見た。
私もあの時、あんな顔をしていたんだろう。
Dr.のあんな笑顔は、生まれて初めて見た。
「───さようなら。Dr.」
「……オタクの事は、
ぜってェに忘れねェヨ」
「……オタクの事は、
ぜってェに忘れねェヨ」
バシュウウゥン!!!!
……………………
………………………………
…………………………………………
────────────
私には、何もなかった。
平行世界への移動を繰り返し、
辿り着いた、この夢の世界。
辿り着いた、この夢の世界。
そこは強い願いが本物になる、
まさに夢のような場所だった。
まさに夢のような場所だった。
ここならきっと、私が思い描いた
理想の世界を実現できる。
そう思っていた。
理想の世界を実現できる。
そう思っていた。
……だけど、蓋を開いてみれば。
上手くいかない事ばかりだった。
上手くいかない事ばかりだった。
邪魔者として排除しようとした
のじゃロリ猫は死を偽装して難を逃れ。
のじゃロリ猫は死を偽装して難を逃れ。
子供達を助け、永遠の理想郷に導く役割を
与えた純乃や御滴は子供達の側に付き。
与えた純乃や御滴は子供達の側に付き。
……そして、たった1人。
何があっても絶対に生きていて欲しいと
願っていた少女は。
私を拒絶し、自殺した。
何があっても絶対に生きていて欲しいと
願っていた少女は。
私を拒絶し、自殺した。
これのどこが夢の世界なのだ!!と、
私の運命を憎んだ事もあった。
私の運命を憎んだ事もあった。
…………だけど、今になって考えてみれば。
巡り巡って、私の願いは……
巡り巡って、私の願いは……
最後には、叶ったのだ。
子供達は、力を合わせて
私というラスボスを倒し、
見事、平和な世界へと脱出する事ができた。
私というラスボスを倒し、
見事、平和な世界へと脱出する事ができた。
はもはもちゃんも、
純乃ちゃんも、
御滴ちゃんも。
純乃ちゃんも、
御滴ちゃんも。
誰一人死ぬ事なく、
無事に大団円を迎えた。
無事に大団円を迎えた。
そう。
私はようやく気付いたのだ。
私はようやく気付いたのだ。
『人を別世界へと移動させる能力』
『時間の流れを操作する能力』
『時間の流れを操作する能力』
私の願いが実体化した子供達の能力は、
最初から、この時のためにあったのだ!
最初から、この時のためにあったのだ!
……私の願いは、
最初から叶っていたのだ。
最初から叶っていたのだ。
それに気付かずに、
道化のように踊っていた
自分自身が恥ずかしい。
道化のように踊っていた
自分自身が恥ずかしい。
しかし、私自身の存在もまた、
この大団円のための舞台装置だった、
というわけだ。
この大団円のための舞台装置だった、
というわけだ。
ふふ、
それも、ひとつのありようだってわけだね。
全く、よく出来た『夢の世界』だとも!
それも、ひとつのありようだってわけだね。
全く、よく出来た『夢の世界』だとも!
「さぁ、皆の元に戻るんだ。
───今度こそ、道を間違えちゃ
いけないよ。
───今度こそ、道を間違えちゃ
いけないよ。
わ た し
アリアちゃん」
アリアちゃん」
それは、ひとつのありようで EX 完