あの母親から相談を受けた時点で
ある程度予期していた事ではあったが、
事件の調査はかなり難航した。
何しろ、手がかりが全くない。
あの時感じた強い妖力の気配も、
数日経った今となっては微かにしか感じられない。
件の妖はワシらが調査を始めた事に勘付いたのか、
完全に鳴りを潜めてしまっている。
ある程度予期していた事ではあったが、
事件の調査はかなり難航した。
何しろ、手がかりが全くない。
あの時感じた強い妖力の気配も、
数日経った今となっては微かにしか感じられない。
件の妖はワシらが調査を始めた事に勘付いたのか、
完全に鳴りを潜めてしまっている。
しかし都の中では、少しずつある変化が起きていた。
人々が「消える子供達」の噂話をし始めたのだ。
あの母親の息子だけでなく、自分の子供も
数日前にいなくなった、と言う母親や
その友人の話もちらほらと聞こえてきた。
どこまでが本当かは分からないが、
調べてみる価値はある。そう思っていた、矢先。
人々が「消える子供達」の噂話をし始めたのだ。
あの母親の息子だけでなく、自分の子供も
数日前にいなくなった、と言う母親や
その友人の話もちらほらと聞こえてきた。
どこまでが本当かは分からないが、
調べてみる価値はある。そう思っていた、矢先。
「ば、化け物だ!!化け物が出たぞー!!」
その声は都の外れ、東南区域に響き渡った。
「ムッ…何か起きておるな。行くぞ神楽坂、
もしかしたら例の妖が遂に姿を見せたのかも知れん!」
「そう簡単に行くとは思えんがな……。
奴はここ数日の私達の調査にも全く引っかからない程
用心深い奴ぐぇっ!!!分かったから
襟を引っ張るな馬鹿猫!!!」
ぐだぐだとうるさい神楽坂を引きずり、
声のした方へと向かう。時刻はまだ夕刻、
妖の支配する時間帯ではないが……
とにかく騒ぎの原因を確認せねばの。
「ムッ…何か起きておるな。行くぞ神楽坂、
もしかしたら例の妖が遂に姿を見せたのかも知れん!」
「そう簡単に行くとは思えんがな……。
奴はここ数日の私達の調査にも全く引っかからない程
用心深い奴ぐぇっ!!!分かったから
襟を引っ張るな馬鹿猫!!!」
ぐだぐだとうるさい神楽坂を引きずり、
声のした方へと向かう。時刻はまだ夕刻、
妖の支配する時間帯ではないが……
とにかく騒ぎの原因を確認せねばの。
ザワザワザワ…………。
東南区域のさらに奥、鬱蒼とした竹林の入り口付近に、
先刻の叫び声を聞きつけてか大勢の人集りができている。
「のうのう、何があった?化け物はどこにおるんじゃ?」
「ん、なんだいあんた……ってうおっ!!
あんた何なんだその見た目!
そっちが化け物じゃねぇか!!」
「失敬じゃのぉ、ワシは化け物ではあるが
(あまり)人を襲ったりはしない、
(基本的には)無害な妖じゃ!一緒にするでないわ!!」
「あ、そ、そう……まぁ、それなら良いけどよ」
(良いのか……?)
ぽつりと神楽坂が何か呟いた気がするが、
無視して話を続ける。
「それで、さっきの声は何だったんじゃ?
化け物が出たとか何とか言うておったが」
「さぁな。竹林の方からの声を聞きつけて、
俺たちも今来たところさ」
「なるほどの。それじゃ、確かめに行ってみるとするか」
「お、おい、アンタら竹林に入るつもりか!?
何かいるかも知れねぇんだぞ!」
「カカカ、ワシらの心配かの?それなら無用じゃ、
妖の事は妖に任せておくがよい」
先刻の叫び声を聞きつけてか大勢の人集りができている。
「のうのう、何があった?化け物はどこにおるんじゃ?」
「ん、なんだいあんた……ってうおっ!!
あんた何なんだその見た目!
そっちが化け物じゃねぇか!!」
「失敬じゃのぉ、ワシは化け物ではあるが
(あまり)人を襲ったりはしない、
(基本的には)無害な妖じゃ!一緒にするでないわ!!」
「あ、そ、そう……まぁ、それなら良いけどよ」
(良いのか……?)
ぽつりと神楽坂が何か呟いた気がするが、
無視して話を続ける。
「それで、さっきの声は何だったんじゃ?
化け物が出たとか何とか言うておったが」
「さぁな。竹林の方からの声を聞きつけて、
俺たちも今来たところさ」
「なるほどの。それじゃ、確かめに行ってみるとするか」
「お、おい、アンタら竹林に入るつもりか!?
何かいるかも知れねぇんだぞ!」
「カカカ、ワシらの心配かの?それなら無用じゃ、
妖の事は妖に任せておくがよい」
夕陽も暮れ始め、
薄暗くなってきた竹林の中を進んで行く。
今のところ妖の瘴気は感じられないが、
何かの気配は確かにある。
ただの獣か、或いは…………。
薄暗くなってきた竹林の中を進んで行く。
今のところ妖の瘴気は感じられないが、
何かの気配は確かにある。
ただの獣か、或いは…………。
「ぐわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
「んぬぉおおおう!?!?
ななななんじゃあああああ!?!?!?」
突然足元から『何か』が凄まじい叫び声を上げながら
飛び出して来た!!
流石のワシも驚いて素っ頓狂な声を上げてしまう。
ななななんじゃあああああ!?!?!?」
突然足元から『何か』が凄まじい叫び声を上げながら
飛び出して来た!!
流石のワシも驚いて素っ頓狂な声を上げてしまう。
「ぷっ……くく、あっはっはっはっは!!
『なんじゃあああああ!?』だってよ!!
なっさけねぇ悲鳴だなぁ!」
……今まさに飛び出して来た『何か』が、
こちらを指差してけらけらと笑い転げている。
粗末な着物を纏った童のようじゃが、
微かに妖の匂いがする。
「全く、驚かせおって……オヌシ何者じゃ?
見たところ、ヒトではないようじゃが」
「あん?オイラが何者かって?
いいぜ、教えてやらぁ!!聞いて驚け、
オイラは泣く子も黙る天下の大鬼、
『彼岸童子』様だ!!」
『なんじゃあああああ!?』だってよ!!
なっさけねぇ悲鳴だなぁ!」
……今まさに飛び出して来た『何か』が、
こちらを指差してけらけらと笑い転げている。
粗末な着物を纏った童のようじゃが、
微かに妖の匂いがする。
「全く、驚かせおって……オヌシ何者じゃ?
見たところ、ヒトではないようじゃが」
「あん?オイラが何者かって?
いいぜ、教えてやらぁ!!聞いて驚け、
オイラは泣く子も黙る天下の大鬼、
『彼岸童子』様だ!!」
……………………
………………………………
…………………………………………
「彼岸童子ぃ?聞いた事もない名じゃのぉ。
鬼と言えば確かに妖の中でも一際群を抜いて
有名な存在じゃが……オヌシがその鬼じゃとは
ど〜にも思えんのじゃが」
「へっ、オイラはこれから有名になンだよ!
この都を足がかりにして、全国に名を轟かせるんだ!
そうすりゃ、もっともっと強くなれっからな!」
「大した野望だが……その割に、
都の中でもお前の事はさほど噂にはなっていないぞ。
今は『消える子供達』の方が重要なようだ。
お前、その件について何か知らんのか?」
神楽坂はじろり、と彼岸童子の方を睨んだ。
まさか此奴が犯人じゃとは思うていまいが、
せめて何か情報を得られれば良いのじゃが。
鬼と言えば確かに妖の中でも一際群を抜いて
有名な存在じゃが……オヌシがその鬼じゃとは
ど〜にも思えんのじゃが」
「へっ、オイラはこれから有名になンだよ!
この都を足がかりにして、全国に名を轟かせるんだ!
そうすりゃ、もっともっと強くなれっからな!」
「大した野望だが……その割に、
都の中でもお前の事はさほど噂にはなっていないぞ。
今は『消える子供達』の方が重要なようだ。
お前、その件について何か知らんのか?」
神楽坂はじろり、と彼岸童子の方を睨んだ。
まさか此奴が犯人じゃとは思うていまいが、
せめて何か情報を得られれば良いのじゃが。
「子供が消える……?知らねぇな。
オイラはそんな事で有名にはなりたくねぇ。
ヒトの子なんぞ好きじゃねぇが、
あいつらがオイラ達を恐れてくれねぇと、
妖は力を失っちまうんだからな」
こやつ……物を知らん小僧じゃと思うておったが、
なかなかどうしてヒトと妖の関わり方を分かっておる。
分別の付く妖は好きじゃ。
「なら、この都に他の妖がいるかどうかは
知っているか?私達はまだここに来たばかりで、
情報が足りん。何でも良い、子供達を助けるためだ」
真剣な目をして、言葉を紡ぐ神楽坂。
いつの間にか、随分とこの都に愛着が湧いたようじゃの。
嬉しい限りじゃな。
「ン、そうか。アンタらの気持ちは分かったよ。
オイラもここに住んで精々三十年ってところだが、
知ってる事は教えてやる。
───だが気ィ付けな。ここは、魔を喰らう都だ」
オイラはそんな事で有名にはなりたくねぇ。
ヒトの子なんぞ好きじゃねぇが、
あいつらがオイラ達を恐れてくれねぇと、
妖は力を失っちまうんだからな」
こやつ……物を知らん小僧じゃと思うておったが、
なかなかどうしてヒトと妖の関わり方を分かっておる。
分別の付く妖は好きじゃ。
「なら、この都に他の妖がいるかどうかは
知っているか?私達はまだここに来たばかりで、
情報が足りん。何でも良い、子供達を助けるためだ」
真剣な目をして、言葉を紡ぐ神楽坂。
いつの間にか、随分とこの都に愛着が湧いたようじゃの。
嬉しい限りじゃな。
「ン、そうか。アンタらの気持ちは分かったよ。
オイラもここに住んで精々三十年ってところだが、
知ってる事は教えてやる。
───だが気ィ付けな。ここは、魔を喰らう都だ」