……………………
………………………………
…………………………………………
それから、3年の月日が流れた。
わたし達はのじゃ猫ちゃんのサバイバル能力や
神楽坂さんのアドバイスのおかげで、
なんとか生き延びる事ができている。
神楽坂さんの結界能力はほとんどエネルギーを使わず
半永久的に持続可能というとんでもないもので、
拠点の心配をせずに食料や水の確保だけに
集中できたのは大きかった。
わたし達はのじゃ猫ちゃんのサバイバル能力や
神楽坂さんのアドバイスのおかげで、
なんとか生き延びる事ができている。
神楽坂さんの結界能力はほとんどエネルギーを使わず
半永久的に持続可能というとんでもないもので、
拠点の心配をせずに食料や水の確保だけに
集中できたのは大きかった。
わたし達が住む青空町に住んでいたほとんどの人は
学園に張られた結界の中に避難させる事ができ、
今は青空学園自体が小さな集合住宅のような
状態になっていた。
数百人が暮らすには少し手狭ではあるけれど……
皆が支え合い、希望を捨てずに頑張ってきたから、
今まで大きなパニックもなく
無事に過ごして来れているのだ。
学園に張られた結界の中に避難させる事ができ、
今は青空学園自体が小さな集合住宅のような
状態になっていた。
数百人が暮らすには少し手狭ではあるけれど……
皆が支え合い、希望を捨てずに頑張ってきたから、
今まで大きなパニックもなく
無事に過ごして来れているのだ。
2年前に外部との連絡にも成功し、
外では世界の各地に地下シェルターが作られ、
他の人々は皆そこに避難していると知った。
なにやらエイリアンに対抗するための
秘密兵器が製造されているとの噂もある。
きっとまた以前の平和な生活が戻ってくる!
そう信じて、わたし達は何とか頑張れている。
外では世界の各地に地下シェルターが作られ、
他の人々は皆そこに避難していると知った。
なにやらエイリアンに対抗するための
秘密兵器が製造されているとの噂もある。
きっとまた以前の平和な生活が戻ってくる!
そう信じて、わたし達は何とか頑張れている。
「ライジングちゃん、身体の調子はどう?」
「うん、大分良くなってきたよ。
やっぱり日光を浴びるのはいいねー!
生きてる!って感じがするよ」
「うん、大分良くなってきたよ。
やっぱり日光を浴びるのはいいねー!
生きてる!って感じがするよ」
学校の屋上。
ここ数日ライジングちゃんの符号の調子が
良くないという事で、とりあえず日光浴をしてみたら
どうだろう、という話になったのだ。
安直すぎでは?とか言わないように。
ここ数日ライジングちゃんの符号の調子が
良くないという事で、とりあえず日光浴をしてみたら
どうだろう、という話になったのだ。
安直すぎでは?とか言わないように。
「でも、どうしたんだろうね。
今までこんな事、一度もなかったのに……」
ぽつりと呟く猫丸ちゃん。
ライジングちゃんの符号『暁天』は
わたし達にとってもかなり重要な存在だ。
文字通り暗闇を照らす光であり、
いざという時のエネルギー源にもなり、
元気がない人に力を分け与える事もできる。
汎用性の高さゆえライジングちゃんの消耗も激しく、
頼りすぎるのはやめようと定例学級会でも
決められたところだったのだ。
今までこんな事、一度もなかったのに……」
ぽつりと呟く猫丸ちゃん。
ライジングちゃんの符号『暁天』は
わたし達にとってもかなり重要な存在だ。
文字通り暗闇を照らす光であり、
いざという時のエネルギー源にもなり、
元気がない人に力を分け与える事もできる。
汎用性の高さゆえライジングちゃんの消耗も激しく、
頼りすぎるのはやめようと定例学級会でも
決められたところだったのだ。
「だいじょうぶだいじょうぶ!
力はちょっと調子が悪いけど、わたし自身は絶好調だし!
気にするほどの事じゃないよ!」
「それならいいけど……無理はしないでね?
ライジングちゃん、みんなのためにって多少の無理なら
平気でするんだもん。それに頼るのも良くないし、
こういう時こそ助け合わなきゃ」
「うん、そうだね。ちょっと最近
頑張りすぎちゃってるかもだけど……
まだ油断はできない状態だもの、
気を抜くわけにはいかないよ」
力はちょっと調子が悪いけど、わたし自身は絶好調だし!
気にするほどの事じゃないよ!」
「それならいいけど……無理はしないでね?
ライジングちゃん、みんなのためにって多少の無理なら
平気でするんだもん。それに頼るのも良くないし、
こういう時こそ助け合わなきゃ」
「うん、そうだね。ちょっと最近
頑張りすぎちゃってるかもだけど……
まだ油断はできない状態だもの、
気を抜くわけにはいかないよ」
ライジングちゃんは、みんなを引っ張ってくれる
太陽のような存在だ。
集団で暮らすための問題解決は先生たちや
青空町の議員だった人たちがやっているけれど……
学園の生徒や子供たちにとってリーダーと呼べるのは
間違いなく彼女だし、わたしもそう思っている。
だけど彼女に負担をかけすぎるのは良くないし、
自分たちもここで暮らす子供たちの中では
すっかり年上組になってしまった。
太陽のような存在だ。
集団で暮らすための問題解決は先生たちや
青空町の議員だった人たちがやっているけれど……
学園の生徒や子供たちにとってリーダーと呼べるのは
間違いなく彼女だし、わたしもそう思っている。
だけど彼女に負担をかけすぎるのは良くないし、
自分たちもここで暮らす子供たちの中では
すっかり年上組になってしまった。
結界の中で生まれた子供もいる。
この小さな学園は、新しい社会を形成しつつあるのだ。『力』を使う事ができる稀有な存在であるわたしたちが
頑張らなくてはいけない。
この小さな学園は、新しい社会を形成しつつあるのだ。『力』を使う事ができる稀有な存在であるわたしたちが
頑張らなくてはいけない。
「そろそろ日没だね。ライジングちゃん、猫丸ちゃん、
明日の食料を採りに行こう」
「うん。今日は少し足を伸ばして、
裏山の方まで行ってみよう」
「おーけー!じゃあわたしが道を照らすから……」
「ううん、こないだ作った松明を使うから、
ライジングちゃんは体力を温存してて。
いつまた不調になるか、分からないでしょ?」
「う……面目ない……」
「あっごめんっ、そういう意味じゃないの!
ライジングちゃんは無理しないでってこと!」
今日の食料調達担当はわたしたち3人。
いつも一緒にいる馴染みのメンバーだから安心感がある。
日が沈めばエイリアン達は船に戻る。
夜の間、地球は人間の世界に戻るのだ。
明日の食料を採りに行こう」
「うん。今日は少し足を伸ばして、
裏山の方まで行ってみよう」
「おーけー!じゃあわたしが道を照らすから……」
「ううん、こないだ作った松明を使うから、
ライジングちゃんは体力を温存してて。
いつまた不調になるか、分からないでしょ?」
「う……面目ない……」
「あっごめんっ、そういう意味じゃないの!
ライジングちゃんは無理しないでってこと!」
今日の食料調達担当はわたしたち3人。
いつも一緒にいる馴染みのメンバーだから安心感がある。
日が沈めばエイリアン達は船に戻る。
夜の間、地球は人間の世界に戻るのだ。
「そういえばこないだシェルターの人が通信で言ってた、
秘密兵器ってどうなったんだろうねー?
これでエイリアンに対抗できる、って
自信ありそうだったけど」
「うーん……気にはなるけど、
期待しすぎるのも良くないんじゃないかな。
エイリアンってすごく強いらしいし、
人間を一瞬で消せちゃう武器も持ってるって話だし…」
実のところ、わたしたちはまだ
エイリアンの実物を見た事がない。
巨大な円盤が空を飛んでいる様子は確認できるけれど、
昼の間は外を出歩く事はないし、
結界の中から見張っていても学園周辺に
エイリアンが現れた事はないからだ。
通信で話した人も、実物は見た事がなく、
話に聞いた程度だという。
しかし円盤から行われる砲撃だけでも十分な脅威であり、
夜の間も円盤に近付くのは避けているようだ。
秘密兵器ってどうなったんだろうねー?
これでエイリアンに対抗できる、って
自信ありそうだったけど」
「うーん……気にはなるけど、
期待しすぎるのも良くないんじゃないかな。
エイリアンってすごく強いらしいし、
人間を一瞬で消せちゃう武器も持ってるって話だし…」
実のところ、わたしたちはまだ
エイリアンの実物を見た事がない。
巨大な円盤が空を飛んでいる様子は確認できるけれど、
昼の間は外を出歩く事はないし、
結界の中から見張っていても学園周辺に
エイリアンが現れた事はないからだ。
通信で話した人も、実物は見た事がなく、
話に聞いた程度だという。
しかし円盤から行われる砲撃だけでも十分な脅威であり、
夜の間も円盤に近付くのは避けているようだ。
ガサガサッ!
(ッ!なにかいる。2人とも伏せて!)
(この辺りに大きな動物なんていなかったはずなのに…)
(食料になりそうなら捕まえよう。やばそうな相手なら
わたしが引きつけるから、2人は逃げて……)
(もうっ、そういうのはナシにしようって、
こないだ決めたでしょ?
逃げるならはもはもちゃんも入れて3人で!)
ガサッ。
(ッ!なにかいる。2人とも伏せて!)
(この辺りに大きな動物なんていなかったはずなのに…)
(食料になりそうなら捕まえよう。やばそうな相手なら
わたしが引きつけるから、2人は逃げて……)
(もうっ、そういうのはナシにしようって、
こないだ決めたでしょ?
逃げるならはもはもちゃんも入れて3人で!)
ガサッ。
「きゅ?」
出てきたのは、小さな茶色い影。
これは……。
出てきたのは、小さな茶色い影。
これは……。
「こ、子熊……?」
「こんなところに熊なんて今までいなかったよね……?」
「2人とも下がって!子熊がいるところには、
大体一緒に母親が……!!」
「こんなところに熊なんて今までいなかったよね……?」
「2人とも下がって!子熊がいるところには、
大体一緒に母親が……!!」
「グオオオオオ!!!」
「ででで、出たああああ!!!」
「猫丸ちゃん、待って!!
背を向けて逃げたら逆効果だよ!!落ち着いて!!」
「お、おおぉ、落ち着くって言っても……!」
「だいじょうぶ。わたしとライジングちゃんの
『力』なら、いざとなれば多分やり合える。
でもここはゆっくり逃げよう。
刺激しないように、ゆっくりだよ」
「猫丸ちゃん、待って!!
背を向けて逃げたら逆効果だよ!!落ち着いて!!」
「お、おおぉ、落ち着くって言っても……!」
「だいじょうぶ。わたしとライジングちゃんの
『力』なら、いざとなれば多分やり合える。
でもここはゆっくり逃げよう。
刺激しないように、ゆっくりだよ」
顔を合わせたまま、そろりそろりと後ろに下がる。
足元で子熊がきゅーきゅーと鳴きながら
うろうろしているけど、気にしている余裕はない。
このままもう少し距離を取れれば、
なんとか逃げられる……!
足元で子熊がきゅーきゅーと鳴きながら
うろうろしているけど、気にしている余裕はない。
このままもう少し距離を取れれば、
なんとか逃げられる……!
「グオオオオオオオ!!!」
「きゃあああああああっ!!!」
熊が大きく咆哮し、
こちらに向かって猛然とダッシュして来た!!
子熊を襲われると思ったのだろうか……
なんてどうでもいい事を考えている間に、
目の前に熊の大きな手、が……!!
「きゃあああああああっ!!!」
熊が大きく咆哮し、
こちらに向かって猛然とダッシュして来た!!
子熊を襲われると思ったのだろうか……
なんてどうでもいい事を考えている間に、
目の前に熊の大きな手、が……!!
「はもはもちゃん!危ない!!」
「『思い込み超装甲
(スーパーアーマーイマージュ)』!!!」
「『思い込み超装甲
(スーパーアーマーイマージュ)』!!!」
ガキィィィン!!!!!!
すんでのところで熊の爪を防いでくれたのは……
みっちゃんだ!!
「みっちゃん!来てくれたんだね!」
「あぁ!ヒーロー仲間を見捨てるわけないだろ!!」
みっちゃんだ!!
「みっちゃん!来てくれたんだね!」
「あぁ!ヒーロー仲間を見捨てるわけないだろ!!」
ズズズズズ…………。
地面から、なにかが這い出てくる。
これは、もしかして……。
地面から、なにかが這い出てくる。
これは、もしかして……。
「……さぁ、お家にお帰り。大人しく帰ってくれないと、
この子たちが何をするか分からないよ……?」
よみちゃんと、『お友達』だ……!
ただならぬ気配を察知してか、
熊の親子はすごすごと森へ帰って行った。
さ、流石だ……。
この子たちが何をするか分からないよ……?」
よみちゃんと、『お友達』だ……!
ただならぬ気配を察知してか、
熊の親子はすごすごと森へ帰って行った。
さ、流石だ……。
「ふふ、はもはもちゃん、昔はこの子達を見るだけで
気絶してたのに。もう平気になったんだね」
「平気では、ないけどね…………」
うねうねと蠢く巨大な蟲達を後ろ目に見ながら、
わたし達は裏山を後にした。
今回の成果は道すがらに採っていた山菜だけになってしまったけど、致し方ない。
気絶してたのに。もう平気になったんだね」
「平気では、ないけどね…………」
うねうねと蠢く巨大な蟲達を後ろ目に見ながら、
わたし達は裏山を後にした。
今回の成果は道すがらに採っていた山菜だけになってしまったけど、致し方ない。
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…………………………………………
こうしてわたし達の学園サバイバル生活は過ぎて行った。
今振り返れば、この生活は大変ではあったけど
楽しい時間だったと思う。
今振り返れば、この生活は大変ではあったけど
楽しい時間だったと思う。
だけど。
この平和も、そう長くは続かなかった。
この平和も、そう長くは続かなかった。
わたし達は通信越しに『機人』が完成したという
報告を受けた。エイリアンを排除し、地球を人類の手に
取り戻すための掃討作戦が開始されるのだと。
わたし達はその作戦に巻き込まれないよう、
学園にしばらく閉じこもるつもりだった。
だけど、食料はずっと籠城できるほど多くなく、
だんだんとみんなの間に苛立ちが募って行った。
特に大人たちは、「こんな生活をするくらいなら、
シェルターの方に行けば良かった」
「機人は人間を襲わないのだから、夜の間なら
家に帰っても問題ないはず」と口々に声を上げ始め、
わたし達には彼らを止める事ができなかったのだ。
報告を受けた。エイリアンを排除し、地球を人類の手に
取り戻すための掃討作戦が開始されるのだと。
わたし達はその作戦に巻き込まれないよう、
学園にしばらく閉じこもるつもりだった。
だけど、食料はずっと籠城できるほど多くなく、
だんだんとみんなの間に苛立ちが募って行った。
特に大人たちは、「こんな生活をするくらいなら、
シェルターの方に行けば良かった」
「機人は人間を襲わないのだから、夜の間なら
家に帰っても問題ないはず」と口々に声を上げ始め、
わたし達には彼らを止める事ができなかったのだ。
それからだんだんと、学園を離れる人達が出始めた。
家に戻ると言って出て行く人、シェルターへ向かうと
言い残して旅立つ人、機人がエイリアンを倒すところを
見たいと言って出て行く人。
……皆、学園には戻らなかった。
神楽坂さんの蝙蝠達に彼らの行方を探してもらったりも
したけれど、答えはどうもはっきりしない。
神楽坂さんは、わたし達に何かを隠しているようだった。
それでも、わたし達はこの危機から守ってもらった
大きな恩がある。彼女を疑う事だけはしたくなかった。
家に戻ると言って出て行く人、シェルターへ向かうと
言い残して旅立つ人、機人がエイリアンを倒すところを
見たいと言って出て行く人。
……皆、学園には戻らなかった。
神楽坂さんの蝙蝠達に彼らの行方を探してもらったりも
したけれど、答えはどうもはっきりしない。
神楽坂さんは、わたし達に何かを隠しているようだった。
それでも、わたし達はこの危機から守ってもらった
大きな恩がある。彼女を疑う事だけはしたくなかった。
そうこうしているうちに通信機から
『機人によるエイリアンの掃討作戦が終了した』
という報告があった。ついにこの生活から解放される!
とわたし達は浮き足立ったけれど……
のじゃロリ猫ちゃんも神楽坂さんも
「今はまだここを出ない方が良い」の一点張りで、
幽閉という程ではないけれど、わたし達を外には
出してくれなかった。こうなってはわたし達の間にも
疑念が持ち上がってしまう。
「もう外にはエイリアンはいないはずなのに、
どうして出してくれないのだろう?」
と、皆が疑心暗鬼になり始めていた、その時だった。
『機人によるエイリアンの掃討作戦が終了した』
という報告があった。ついにこの生活から解放される!
とわたし達は浮き足立ったけれど……
のじゃロリ猫ちゃんも神楽坂さんも
「今はまだここを出ない方が良い」の一点張りで、
幽閉という程ではないけれど、わたし達を外には
出してくれなかった。こうなってはわたし達の間にも
疑念が持ち上がってしまう。
「もう外にはエイリアンはいないはずなのに、
どうして出してくれないのだろう?」
と、皆が疑心暗鬼になり始めていた、その時だった。
『機人が暴走している─────』
この言葉を最後に、外部との通信は途絶えた。
程なくして、青空町から銃声や砲撃音が聞こえ始め、
何人かの大人が学園へと助けを求めて逃げ延びて来た。
「こんな何もない場所にいつまでもいられるか」
と吐き捨てて出て行った人達だ。
わたし達は受け入れようとしたけれど、神楽坂さんは
「これは、あなた達のためなのよ」と苦しげに言い、
彼らを結界の中には入れなかった。
「見るな。オヌシらが知る必要はない」と
のじゃ猫ちゃんに遠ざけられ、
彼らがどうなったのかを知る事はできなかった。
だけど、学園のすぐ近くで銃声や悲鳴が聞こえて……
わたし達は必死で耳を塞ぐことしかできなかった。
この言葉を最後に、外部との通信は途絶えた。
程なくして、青空町から銃声や砲撃音が聞こえ始め、
何人かの大人が学園へと助けを求めて逃げ延びて来た。
「こんな何もない場所にいつまでもいられるか」
と吐き捨てて出て行った人達だ。
わたし達は受け入れようとしたけれど、神楽坂さんは
「これは、あなた達のためなのよ」と苦しげに言い、
彼らを結界の中には入れなかった。
「見るな。オヌシらが知る必要はない」と
のじゃ猫ちゃんに遠ざけられ、
彼らがどうなったのかを知る事はできなかった。
だけど、学園のすぐ近くで銃声や悲鳴が聞こえて……
わたし達は必死で耳を塞ぐことしかできなかった。
どうして。
どうして。
どうして。
こんな事になってしまったのだろう。
どうして。
どうして。
こんな事になってしまったのだろう。
────────────
「…………おい、おい!はもはも!
なにボケーっとしてんだ。学園に着いたぜ」
「え、あ、ごめん。ちょっと夢を見てた」
「夢ぇ?ったく、こんな時に呑気なこった。食料は
確保できなかったが、『電池』はいくつか見つけた。
これでもうしばらくは保つだろうぜ」
なにボケーっとしてんだ。学園に着いたぜ」
「え、あ、ごめん。ちょっと夢を見てた」
「夢ぇ?ったく、こんな時に呑気なこった。食料は
確保できなかったが、『電池』はいくつか見つけた。
これでもうしばらくは保つだろうぜ」
機人の襲撃から逃れたわたし達は、
再び青空学園に戻ってくる事ができた。
今回わたしとアもちゃんは食料や、
わたし達が『電池』と呼んでいる、機人のバッテリーを
探すために外に出ていたのだった。
機人のバッテリーはちょうど自動車のそれと同じくらいの
大きさながら容量は桁違いで、学園内で使用する電力を
1ヶ月ほど賄う事ができる。
「助かったわ。結界を維持するのにエネルギーは
要らないけれど、電力だけはどうにもならないもの。
これだけ集めるのは大変だったでしょう。
さ、ゆっくり休んで」
神楽坂さんはいつも通り優しい声でわたし達を
労ってくれる。つい最近まで前と同じくあの階段下の
小部屋に閉じこもっていたけれど、ここ数日は
時々学園内を出歩くようになっていた。
吸血鬼なのに日光平気なんだ……。
再び青空学園に戻ってくる事ができた。
今回わたしとアもちゃんは食料や、
わたし達が『電池』と呼んでいる、機人のバッテリーを
探すために外に出ていたのだった。
機人のバッテリーはちょうど自動車のそれと同じくらいの
大きさながら容量は桁違いで、学園内で使用する電力を
1ヶ月ほど賄う事ができる。
「助かったわ。結界を維持するのにエネルギーは
要らないけれど、電力だけはどうにもならないもの。
これだけ集めるのは大変だったでしょう。
さ、ゆっくり休んで」
神楽坂さんはいつも通り優しい声でわたし達を
労ってくれる。つい最近まで前と同じくあの階段下の
小部屋に閉じこもっていたけれど、ここ数日は
時々学園内を出歩くようになっていた。
吸血鬼なのに日光平気なんだ……。
機人の暴走から、およそ1年が経った。
通信機器を改造したラジオから時々聞こえてくるのは、
一部の子供達がやっているらしい有志のラジオ放送。
機人がどの辺りにどれくらいの数いるのか、
自分たちが今どこにいるのか、食料のありそうな場所など
様々な情報を発信してくれている。
ラジオなのでこちらから呼びかける事はできないけれど、
彼らがいる地域へ行って助けてあげるべきでは、
という話も出ている。
通信機器を改造したラジオから時々聞こえてくるのは、
一部の子供達がやっているらしい有志のラジオ放送。
機人がどの辺りにどれくらいの数いるのか、
自分たちが今どこにいるのか、食料のありそうな場所など
様々な情報を発信してくれている。
ラジオなのでこちらから呼びかける事はできないけれど、
彼らがいる地域へ行って助けてあげるべきでは、
という話も出ている。
しかし、ただでさえ食料が足りない今、
彼らを迎え入れたところで待っているのは飢えだ。
幸いここは山がほど近く、水については川から
安定的に確保する事ができる。しかし山菜やキノコなどの
森の資源は既に尽きかけ、学園の内部に作った畑で
作っている野菜もそこまでの量はない。
何よりもここにはタンパク質……さらに言えば
肉が足りないのだ。育ち盛りの子供にとって、
これはとてもきつい。
だけど牛や豚、鶏などの動物が都合よく
そこら辺にいるわけもないし、森で狸などを捕まえて
食べるのがせいぜいなんだけど……
もうそれもここ数ヶ月お目にかかっていない。
彼らを迎え入れたところで待っているのは飢えだ。
幸いここは山がほど近く、水については川から
安定的に確保する事ができる。しかし山菜やキノコなどの
森の資源は既に尽きかけ、学園の内部に作った畑で
作っている野菜もそこまでの量はない。
何よりもここにはタンパク質……さらに言えば
肉が足りないのだ。育ち盛りの子供にとって、
これはとてもきつい。
だけど牛や豚、鶏などの動物が都合よく
そこら辺にいるわけもないし、森で狸などを捕まえて
食べるのがせいぜいなんだけど……
もうそれもここ数ヶ月お目にかかっていない。
何よりも大きな原因は、数ヶ月前にのじゃロリ猫ちゃんが
行方不明になった事だ。
のじゃ猫ちゃんは時折結界から抜け出し、
どこかから牛や豚を丸ごと持ってきてくれていた。
下処理までしてくれていたので、それまでわたし達が
肉に困る事はほとんどなかったのだ。
しかし彼女は「また良い肉を持ってきてやる。
楽しみに待っとるが良いぞ」と言い残して外に出たのを
最後に、消息を絶った。
神楽坂さんに探知できないか聞いても、
複雑な表情で首を振るだけだった。
行方不明になった事だ。
のじゃ猫ちゃんは時折結界から抜け出し、
どこかから牛や豚を丸ごと持ってきてくれていた。
下処理までしてくれていたので、それまでわたし達が
肉に困る事はほとんどなかったのだ。
しかし彼女は「また良い肉を持ってきてやる。
楽しみに待っとるが良いぞ」と言い残して外に出たのを
最後に、消息を絶った。
神楽坂さんに探知できないか聞いても、
複雑な表情で首を振るだけだった。
もう、限界なのかも知れない。
こんなところでいつまでも暮らしていけるなんて、
そもそも夢物語だったんだ。
希望を捨ててはいけない、とみんなには言い聞かせて
来たけれど、もう希望なんてどこにも見当たらない。
こんなところでいつまでも暮らしていけるなんて、
そもそも夢物語だったんだ。
希望を捨ててはいけない、とみんなには言い聞かせて
来たけれど、もう希望なんてどこにも見当たらない。
「はもはもちゃん、少し良いかしら」
「え?うわぁっ!」
気付くと、すぐ横に神楽坂さんの顔があった。
「あっ、ごめんなさい。驚かすつもりはなかったのよ」
「い、いえ、わたしの方こそごめんなさい」
「はもはもちゃん、最近ちゃんと寝ているかしら?
気にすると思って蝙蝠たちはあまり飛ばしていないから、
みんなの様子を見れていないの」
少し心配そうに、わたしの顔を覗き込む神楽坂さん。
まるでお母さんのような優しさに、
つい気が緩みそうになってしまう。
「だ、大丈夫です!わたしそんなに寝なくても
平気っていうか、みんな大変なのにわたしだけ
ぐっすり寝るわけには行かないし」
「平気なわけないでしょう!クマが出来てるわよ。
女の子がそんな無理をしないの。大変な時こそ
支え合わなきゃいけないんだから、
自分1人で無理をしようとしないで。こんな時くらい
誰かを頼ったっていいのよ」
「わ、わたしは無理なんて……」
「え?うわぁっ!」
気付くと、すぐ横に神楽坂さんの顔があった。
「あっ、ごめんなさい。驚かすつもりはなかったのよ」
「い、いえ、わたしの方こそごめんなさい」
「はもはもちゃん、最近ちゃんと寝ているかしら?
気にすると思って蝙蝠たちはあまり飛ばしていないから、
みんなの様子を見れていないの」
少し心配そうに、わたしの顔を覗き込む神楽坂さん。
まるでお母さんのような優しさに、
つい気が緩みそうになってしまう。
「だ、大丈夫です!わたしそんなに寝なくても
平気っていうか、みんな大変なのにわたしだけ
ぐっすり寝るわけには行かないし」
「平気なわけないでしょう!クマが出来てるわよ。
女の子がそんな無理をしないの。大変な時こそ
支え合わなきゃいけないんだから、
自分1人で無理をしようとしないで。こんな時くらい
誰かを頼ったっていいのよ」
「わ、わたしは無理なんて……」
言い終えるよりも先に、ぎゅっと優しく抱き締められる。
「あなたは本当に優しい子ね。
……私はここで一番の年長者なのに、ただ結界を
張っている事しかできなくて、ごめんなさい……!
だけどお願いだから、無茶をして
自分を傷つけるような事はやめて。
睡眠も休息も、立派な仕事なのよ。
あなたがいなくなったら、みんな悲しむわ」
「あなたは本当に優しい子ね。
……私はここで一番の年長者なのに、ただ結界を
張っている事しかできなくて、ごめんなさい……!
だけどお願いだから、無茶をして
自分を傷つけるような事はやめて。
睡眠も休息も、立派な仕事なのよ。
あなたがいなくなったら、みんな悲しむわ」
そっか。
わたしは、ひとりじゃないんだ。
誰かを頼ったって、いいんだ。
こんなに心配してくれている人がいるのに、
わたしは無理して、大丈夫だって虚勢を張って、
余計に心配をかけてるだけじゃんか。
わたしは、ひとりじゃないんだ。
誰かを頼ったって、いいんだ。
こんなに心配してくれている人がいるのに、
わたしは無理して、大丈夫だって虚勢を張って、
余計に心配をかけてるだけじゃんか。
「うっ、うぅっ……ううううう…………!
ごめんなさい、わたし、ずっと無理して……
心配かけて、ごめんなさい……!!」
「謝らなくたっていいのよ。
さぁ、全部吐き出しちゃいなさい。
辛いこと、悲しいこと、ぜーんぶ。
そうすればきっともっと楽になるわ」
「うわああああああああん!!
ほんとは、もっと"……もっとみ"んな"と
おべんきょうしてたかった!!
あそ"んでたかったよぉ!!
なのに、こんなことになって"、わたし……
がんばらなき"ゃって!!みんなをま"もりたいからっ、
がんばらなきゃってずっと……!!
うわああああああああああああああ!!!」
ごめんなさい、わたし、ずっと無理して……
心配かけて、ごめんなさい……!!」
「謝らなくたっていいのよ。
さぁ、全部吐き出しちゃいなさい。
辛いこと、悲しいこと、ぜーんぶ。
そうすればきっともっと楽になるわ」
「うわああああああああん!!
ほんとは、もっと"……もっとみ"んな"と
おべんきょうしてたかった!!
あそ"んでたかったよぉ!!
なのに、こんなことになって"、わたし……
がんばらなき"ゃって!!みんなをま"もりたいからっ、
がんばらなきゃってずっと……!!
うわああああああああああああああ!!!」
わたしは、4年ぶりに、泣いた。
泣いて泣いて、神楽坂さんの服が
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになるくらい泣きじゃくった。
泣いて泣いて、神楽坂さんの服が
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになるくらい泣きじゃくった。
すんすんと、鼻をすする。
まだ涙は溢れてくるけど……
気持ちはだいぶ落ち着いたと思う。
「もう、大丈夫?」
「はい……あの、ありがとうございます。
わたし、少し休ませてもらう事にします」
「ええ、それが良いわ。無理は禁物よ。
きっとみんなも分かってくれるはず」
神楽坂さんの言う通り、休みたいと言ったらみんな笑顔で「もちろんいいよ」と言ってくれた。
わたしは自分で気付いていないけど頑張りすぎだと、
みんなずっと思っていたようだ。
少しだけ、眠ろう。
いい夢が、見られるといいな……。
まだ涙は溢れてくるけど……
気持ちはだいぶ落ち着いたと思う。
「もう、大丈夫?」
「はい……あの、ありがとうございます。
わたし、少し休ませてもらう事にします」
「ええ、それが良いわ。無理は禁物よ。
きっとみんなも分かってくれるはず」
神楽坂さんの言う通り、休みたいと言ったらみんな笑顔で「もちろんいいよ」と言ってくれた。
わたしは自分で気付いていないけど頑張りすぎだと、
みんなずっと思っていたようだ。
少しだけ、眠ろう。
いい夢が、見られるといいな……。