if 夢
更新日:2021/05/10 Mon 22:12:47

五年三組の大石姉妹、とっても仲の良い姉妹として有名です。
果たして、今日はどのような日々が二人を待ち受けているのか……少し覗いてみましょうか?
果たして、今日はどのような日々が二人を待ち受けているのか……少し覗いてみましょうか?
「サキお姉ちゃん、玉子が上手く割れないよ!」
「うーん、ちょっと貸してみて」
どうやらこの姉妹、クッキーを焼こうとしているようです。
妹のアユムが、姉のサキに玉子の入ったボールを渡します。
妹のアユムが、姉のサキに玉子の入ったボールを渡します。
「あちゃあ、殻が入っちゃってるよ。うーん、これはもう一回やり直した方がいいかな……」
今度は私が、と、サキが玉子を割り、ボールの中に落とします。
「お、サキお姉ちゃん、凄いね!めっちゃ綺麗!」
「ふっふーん、お姉ちゃんだからね」
自慢げなサキは泡立て器を引っ張りだし、ボールの中にいれます。
「しっかり押さえとくから」
「うむ、よきにはからえ」
銀のボールが飛んでいかないようにしっかりと固定している妹に向かって、姉は歴史の時間に習った言葉を使って感謝を伝えました。(厳密に言えば、感謝の言葉ではありませんが、サキはありがとうのつもりで言っております。)
カッカッカと、ボールと泡立て器がぶつかる小気味よい音がして、段々とバターと砂糖と玉子が混ざっていきます。
銀のボールが飛んでいかないようにしっかりと固定している妹に向かって、姉は歴史の時間に習った言葉を使って感謝を伝えました。(厳密に言えば、感謝の言葉ではありませんが、サキはありがとうのつもりで言っております。)
カッカッカと、ボールと泡立て器がぶつかる小気味よい音がして、段々とバターと砂糖と玉子が混ざっていきます。
「わんわん!」
「あ、ブルーベルが鳴いてる」
キッチンの外で、この家の愛犬のブルーベルが鳴きました。大好きなサキが近くにいなくて、不安なのでしょうか?
「そうだね、でもどうしよう……でもお母さんからキッチンにはいれないよう言われてるしなぁ」
アユムの呟きに、サキは胸を張ります。
「古いアニメにはこんな諺があるのよ、『バレなきゃ犯罪じゃない』」
キッチンに連れてきたブルーベルは、両親の心配も分かっているとばかりに、おとなしくしておりました。しっかりじっと座っておりますし、抜け毛一本ありません。
「ええっと、次の行程は……」
アユムは持っていたスマートフォンで段取りを確認します。今は何でもネットの時代です。紙で書かれたレシピ本等は使いません。
二人は、クックパッドの指示通り、ボールの中身を手のひらサイズにこねり始めました。
「見てみて、ブルーベル作った~♪」
「サキお姉ちゃん凄い……!あ、でも私だって……!いつも登校中に出会う黒猫さん作ったんだよ!」
「おお、アユムも凄いじゃん!」
そんな風に遊びながら作り続けて数十分。ようやくボールの中身全てを手のひらサイズに練り直す事が出来ました。
「ええっと、手順5! ラップをして30分~1時間冷蔵庫で寝かせます。麺棒がかけやすい様に厚みはつけずにラップした方が、後の作業がしやすいです……だってー」
「ええ、一時間も?!」
サキは思わず大きな声を上げました。その顔には焦りの表情が見えます。
「そんなに待ってたら、お母さん帰ってきちゃう……!折角の母の日なのに……!」
「そうだね……うーん、寝かせずに、このままオーブンに入れちゃう?折角ブルーベルや黒猫さんを作ったんだもん。潰しちゃうなんて、勿体ないし」
「そだね、じゃあ、いれちゃおう!」
あらあら大変。大石姉妹は、レシピの手順を無視して、先に進んでしまいました。
二人はクッキーの原型をオーブンに入れ、タイマーの歯車を回し、その前にピンクと紺色の丸椅子を持ってきて座りました。
二人はクッキーの原型をオーブンに入れ、タイマーの歯車を回し、その前にピンクと紺色の丸椅子を持ってきて座りました。
「お母さん、まだ帰ってこないよね?」
「た、多分」
「あ~あ、こんな事なら、もっと早くからクッキー作り始めてれば良かったよぅ」
「うん……大切な事をする前に、マリオパーティなんかやらなきゃ良かったかもね」
170度のオーブンで15分程焼いていると、いい匂いが漂ってきました。
中を覗いてみると、周りにうっすら焼き色がついていて、美味しそうでした。
取り出してみると、なんとも美味しそうに出来上がったクッキーが、二人の目に写るのを誇らしげに待っていました。
中を覗いてみると、周りにうっすら焼き色がついていて、美味しそうでした。
取り出してみると、なんとも美味しそうに出来上がったクッキーが、二人の目に写るのを誇らしげに待っていました。
「うわぁ、サキお姉ちゃん!美味しそうだね!」
「そうだね、アユム。お母さんが帰ってくる前に、ラッピングしよ」
「は~い!」
二人はクッキーを綺麗なピンク色の包み紙にくるみ、紺色のリボンで縛ります。
「なんとか出来たね~」
「お母さん、喜んでくれるといいなぁ」
自信なさげなアユムを勇気づけるように笑いかけたサキは、とある提案をします。
「ねえ、このクッキー、めちゃくちゃ余っちゃったから、他の子達にもお裾分けしにいこうよ!」
アユムは明るい顔に戻って言います。
「いいね!みどりさんやカコさんにほのかさん、イチゴ君達に……」
「それにれもんについでにたろう、あ、あとみれいにも渡しにいこう!お母さんが帰ってこないうちに!」
サキはアユムの手を取り、大好きな愛犬ブルーベルを呼びました。
「行くよブルーベル。散歩!」
玄関から物音がして、元気な女の子の笑い声と、犬の息と走る音。鍵をかける音もして、そうして大石家からは誰もいなくなりました。
「………あ………夢」
プラムは変な汗をかき、起き上がりました。隣では自分の妹のピオーネが眠っております。(ロリポップ姉妹は、七つのベッドを寄せ集めて皆で眠るのです)
「マロロン、起きてる?」
「いぬぬわん!」
プラムが声をかけると、一番の親友は直ぐに答えてくれます。
「ちょっと散歩に行こうよ」
「いぬぬわん!」
プラムはパジャマから着替え、いつもの制服を着ると、オウマがトキの店の方へと入っていきます。
頭の中では、今日出会った変な子の事で一杯です。
頭の中では、今日出会った変な子の事で一杯です。
「こんな歪んだお菓子なんていらない!」
プラムが作った無花果のタルトを盆からはたき落とした彼女は、涙を流していた。
あれは一体、何だったのだろうか?
そういえば、夢の中の女の子と、あの子は一緒の顔をしていた。
自分はどうだったろうか?自分は……?
あれは一体、何だったのだろうか?
そういえば、夢の中の女の子と、あの子は一緒の顔をしていた。
自分はどうだったろうか?自分は……?
誰かが自分を呼ぶ声がして、プラムは振り返った。
「あ、マリネッタじゃん。どうしたの?そんな怖い顔して」
後ろには、同じ喫茶の店員、マリネッタ・クインゼルが恐ろしい顔で立っていた。
マリネッタは冷たい目を崩す事無く、プラムに近付くと、プラムの耳の近くで、こう囁いた。
マリネッタは冷たい目を崩す事無く、プラムに近付くと、プラムの耳の近くで、こう囁いた。
「まさか、思い出したんじゃないわよね?」
「思い出す?何を?」
怪訝そうに顔をしかめるプラムを、マリネッタは疑うようにじっと見た。
「まあ、こうすればいいのよね」
マリネッタは手をかざし、プラムの目の前でふった。
「《《ロスト》》無くせ、《《眠れスリープ》》」
途端、プラムは糸が切れた人形のように床に崩れ落ち、規則正しい寝息を立て始めた。
マリネッタはそれを軽々とお姫様だっこ、ロリポップ姉妹の寝室に戻ろうとして、見えた。
彼女の愛犬、ブルーベル、いや、マロロンが牙を剥き出し、唸っている。
マリネッタはその姿を鼻で笑った。
マリネッタはそれを軽々とお姫様だっこ、ロリポップ姉妹の寝室に戻ろうとして、見えた。
彼女の愛犬、ブルーベル、いや、マロロンが牙を剥き出し、唸っている。
マリネッタはその姿を鼻で笑った。
「何よ、別に傷付けて無いわよ」
マリネッタはお人形のようなプラムを抱きしめ、部屋に引き返すのだった。
(そう、例え何があったって、ピオーネの夢は壊させない。例え誰かに罵られようとも、例え悪魔にとりつかれても、例えこの恋と愛が報われなくても、ピオーネだけは守って見せる。マスターとも、約束したしね)
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